(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297394
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ビード部材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/48 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
B29D30/48
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-83832(P2014-83832)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-202648(P2015-202648A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀貴
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−187218(JP,A)
【文献】
特開昭60−219038(JP,A)
【文献】
特開平10−291261(JP,A)
【文献】
特開2013−216070(JP,A)
【文献】
特開平08−156131(JP,A)
【文献】
特開2012−179854(JP,A)
【文献】
特開平10−226454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するビード部材の製造方法であって、
押出機から湾曲させた状態で押し出して供給される前記ビードフィラーの先端部を吸着パッドにより吸着して保持する工程と、
保持した前記ビードフィラーの先端部を、回転テーブル上に保持された前記ビードワイヤーの外周に近接させる工程と、
前記ビードワイヤーを周方向に回転させながら前記ビードフィラーを供給して、前記ビードワイヤーの外周に前記ビードフィラーを巻き付ける工程と、
前記ビードフィラーの後端部を前記先端部に接合させる工程と、を備えることを特徴とするビード部材の製造方法。
【請求項2】
前記ビードフィラーを巻き付ける工程において、前記ビードフィラーの先端部は前記吸着パッドにより保持された状態であることを特徴とする請求項1に記載のビード部材の製造方法。
【請求項3】
前記ビードフィラーを巻き付ける工程において、前記ビードフィラーは、前記ビードワイヤーの外周に向かって押圧されることを特徴とする請求項1又は2に記載のビード部材の製造方法。
【請求項4】
円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するビード部材の製造装置であって、
前記ビードフィラーを湾曲させた状態で押し出して供給する押出機と、
前記ビードワイヤーを保持して周方向に回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルに設けられ、前記ビードフィラーを載置可能な円環状の載置面と、
前記載置面から外側へ突出して前記ビードフィラーを吸着可能な吸着パッドと、
前記押出機から供給される前記ビードフィラーの先端部を前記吸着パッドで吸着して保持し、保持した前記ビードフィラーの先端部を前記ビードワイヤーの外周に近接させるように前記吸着パッドを制御する制御装置と、を備えることを特徴とするビード部材の製造装置。
【請求項5】
前記載置面の上方に設けられ、前記ビードフィラーを前記載置面に案内するガイドローラを備えることを特徴とする請求項4に記載のビード部材の製造装置。
【請求項6】
前記吸着パッドは、前記ビードフィラーの先端部を保持したまま前記回転テーブル内に収納可能であることを特徴とする請求項5に記載のビード部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するビード部材の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造において、円環状のビードワイヤーの外周に、所定長さのビードフィラーを巻き付けて端部同士を接合することで円環状とし、ビード部材を製造する方法が知られている。しかし、一般的に、所定の断面形状を有するビードフィラーを直線状に押し出し、ビードワイヤーの外周に巻き付ける方法が多く用いられており、ビードワイヤーに巻き付ける際、ビードフィラーの内外周差により張力が発生するため、外周部が撓む若しくは薄くなる、接合部が剥がれる、又は余分な切削ゴムが発生する等の問題があった。
【0003】
下記特許文献1では、リボン状ゴム材を支持ディスク上で巻回しつつ積層することで、ビードワイヤーの外周側にビードフィラーを成形している。特許文献1では、直線状に押し出したゴム部材をビードワイヤーの外周側に巻き付けているが、ゴム部材が細いリボン状をしているため内外周差による張力は比較的小さい。しかし、リボン状ゴム部材を支持ディスクに押圧してビードフィラーの形状に成形しているため、ビードフィラーが支持ディスクに圧着されて、成形後の脱型が困難となる。
【0004】
下記特許文献2では、回転自在なプレート上にビードワイヤーを配設しておき、プレートを回転させながらビードワイヤーの外周面に紐状又は帯状の低粘度化したゴム状弾性材料を供給するとともに、該ゴム状弾性材料をダイスによってビードワイヤーに押圧させながらプレートを一周以上回転させて所定形状のビードフィラーを成形している。この方法では、ビードフィラーがプレートにも押圧されて圧着されるため、成形後の脱型が困難となる。また、ビードフィラーの内外周差による張力も完全には解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−76233号公報
【特許文献2】特開2002−187218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、ビードフィラーの内外周差による張力を抑制でき、かつビードフィラー成形後の脱型が容易であるビード部材の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明に係るビード部材の製造方法は、
円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するビード部材の製造方法であって、
供給装置から湾曲した状態で供給される前記ビードフィラーの先端部を吸着パッドにより吸着して保持する工程と、
保持した前記ビードフィラーの先端部を、回転テーブル上に保持された前記ビードワイヤーの外周に近接させる工程と、
前記ビードワイヤーを周方向に回転させながら前記ビードフィラーを供給して、前記ビードワイヤーの外周に前記ビードフィラーを巻き付ける工程と、
前記ビードフィラーの後端部を前記先端部に接合させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るビード部材の製造方法は、供給装置から湾曲した状態で供給されるビードフィラーを、回転するビードワイヤーの外周に巻き付けることで、ビードフィラーの曲率を保持したままビードワイヤーの外周に巻き付けることができるため、ビードフィラーの内外周差による張力を抑制できる。さらに、ビードフィラーをビードワイヤーに巻き付ける際、供給装置から供給されるビードフィラーの先端部を吸着パッドにより吸着して保持し、保持したビードフィラーの先端部をビードワイヤーの外周に近接させるため、ビードフィラーの先端部をビードワイヤーに対して正確に位置決めすることができる。また、本発明では、所定の断面形状を有するビードフィラーをビードワイヤーに直接巻き付けているため、ビードフィラーを回転テーブルに強く押圧して成形する必要はなく、ビードフィラー成形後の脱型も容易である。その結果、本発明のビード部材の製造方法によれば、ビードフィラーの内外周差による張力を抑制でき、かつビードフィラー成形後の脱型が容易となる。
【0009】
前記ビードフィラーを巻き付ける工程において、前記ビードフィラーの先端部は前記吸着パッドにより保持された状態であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ビードフィラーをビードワイヤーの外周に巻き付ける際に、ビードワイヤーに対するビードフィラーの位置がずれることがない。
【0011】
前記ビードフィラーを巻き付ける工程において、前記ビードフィラーは、前記ビードワイヤーの外周に向かって押圧されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ビードフィラーが回転テーブルに対して押圧されて圧着されることがないため、ビードフィラー成形後の脱型も容易である。
【0013】
また、本発明に係るビード部材の製造装置は、
円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するビード部材の製造装置であって、
前記ビードフィラーを湾曲した状態で供給する供給装置と、
前記ビードワイヤーを保持して周方向に回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルに設けられ、前記ビードフィラーを載置可能な円環状の載置面と、
前記載置面から外側へ突出して前記ビードフィラーを吸着可能な吸着パッドと、
前記供給装置から供給される前記ビードフィラーの先端部を前記吸着パッドで吸着して保持し、保持した前記ビードフィラーの先端部を前記ビードワイヤーの外周に近接させるように前記吸着パッドを制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るビード部材の製造装置は、供給装置から湾曲した状態で供給されるビードフィラーを、回転テーブルとともに回転するビードワイヤーの外周に巻き付けることで、ビードフィラーの曲率を保持したままビードワイヤーの外周に巻き付けることができるため、ビードフィラーの内外周差による張力を抑制できる。さらに、ビードフィラーをビードワイヤーに巻き付ける際、供給装置から供給されるビードフィラーの先端部を吸着パッドにより吸着して保持し、保持したビードフィラーの先端部をビードワイヤーの外周に近接させるため、ビードフィラーの先端部をビードワイヤーに対して正確に位置決めすることができる。また、本発明では、所定の断面形状を有するビードフィラーをビードワイヤーに直接巻き付けているため、ビードフィラーを回転テーブルに強く押圧して成形する必要はなく、ビードフィラー成形後の脱型も容易である。その結果、本発明のビード部材の製造装置によれば、ビードフィラーの内外周差による張力を抑制でき、かつビードフィラー成形後の脱型が容易となる。
【0015】
本発明に係るビード部材の製造装置において、前記載置面の上方に設けられ、前記ビードフィラーを前記載置面に案内するガイドローラを備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、載置面に載置されたビードワイヤーの外周にビードフィラーを精度よく巻き付けることができる。
【0017】
本発明に係るビード部材の製造装置において、前記吸着パッドは、前記ビードフィラーの先端部を保持したまま前記回転テーブル内に収納可能であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、吸着パッドがガイドローラと干渉するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るビード部材の製造装置を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、ビード部材の製造装置の全体構成を示す斜視図である。本発明の製造装置1は、円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するためのものである。
【0021】
図2は、ビード部材10を一部破断させて示した斜視図である。ビード部材10は、円環状のビードワイヤー11と、断面が略三角形状のゴムからなる円環状のビードフィラー12とから構成されている。円環状のビードフィラー12は、押出機から前記断面形状を有するゴムを押し出し、一定の長さに切り出し、その端部同士を接合することで成形されている。このとき、押出機から所望の曲率を有するように湾曲させた状態でゴムを押し出し、その曲率を保持したまま円環状としてビードフィラー12を成形するのが好ましい。
【0022】
本発明の製造装置1は、少なくとも、ビードフィラーを供給する供給装置2と、回転テーブル3と、制御装置(不図示)とを備えている。
【0023】
供給装置2は、ビードフィラー12を湾曲した状態で回転テーブル3に供給することができる。本実施形態では、供給装置2の一例として、湾曲したビードフィラー12の下面を支持しながら回転する複数の搬送ローラから構成されるローラコンベアを示している。
【0024】
供給装置2は、上方から吊り下げられた支柱21と、螺旋状の搬送面を構成するように支柱21の周囲に螺旋状に並べて配置され、ビードフィラー12の下面を支持しながら回転して搬送する複数の搬送ローラ22と、を備えている。ここで、搬送面は、支柱21を中心として周囲を取り囲むように上方から下方へ螺旋状に延びており、ビードフィラー12を上方から下方へ螺旋状に搬送することができる。複数の搬送ローラ22は、上方から下方へ向けて円周方向に少しずつずらした位置に順次配置されており、並べられたローラ面22aが螺旋状の搬送面を構成する。なお、
図1では、複数の搬送ローラ22の一部のみを示している。
【0025】
本実施形態の回転テーブル3は、円盤状をしている。ただし、回転テーブル3は、必ずしも円盤状である必要はない。回転テーブル3は、回転軸の周りで、任意の回転速度にて回転することができる。
【0026】
回転テーブル3には、ビードワイヤー保持部31が設けられており、円環状のビードワイヤー11を内周側から保持することができる。回転テーブル3を回転させることで、保持したビードワイヤー11を周方向に回転させることができる。
【0027】
ビードワイヤー保持部31の外周側には、ビードフィラー12を載置可能な円環状の載置面32が設けられている。供給装置2から湾曲した状態で供給されたビードフィラー12をその曲率を保持したまま載置面32上に載せることができる。
【0028】
回転テーブル3には、載置面32から外側へ突出するように吸着パッド33が設けられている。吸着パッド33は、
図1に示す突出位置と、この突出位置から後退する後退位置との間で変位可能である。後退位置における吸着パッド33は、載置面32より下方に位置し、回転テーブル3に収納される。
【0029】
吸着パッド33の先端は、吸着面となっており、不図示の真空ポンプ等の吸排気手段による吸排気によって、ビードフィラー12に対して吸着状態と吸着解除状態とに切り替え可能に構成されている。
【0030】
載置面
32の上方には、ビードフィラー12を載置面32に案内するガイドローラ34が設けられている。ガイドローラ34の回転軸は、載置面32に対して傾斜している。
【0031】
さらに、搬送装置1は、不図示の制御装置を備えており、この制御装置は、回転テーブル3の回転、吸着パッド33の吸着や昇降などの各動作を制御することができる。制御装置による詳しい制御については後述する。
【0032】
以下に、本発明に係るビード部材の製造方法について説明する。本発明に係るビード部材の製造方法は、円環状のビードワイヤーの外周に、所定の断面形状を有するビードフィラーを巻き付けてビード部材を製造するためのものである。
【0033】
ビード部材の製造方法は、少なくとも、ビードワイヤー11を周方向に回転させながら供給装置2からビードフィラー12を供給して、ビードワイヤー11の外周にビードフィラー12を巻き付ける工程と、巻き付けたビードフィラー12の後端部を先端部に接合させる工程と、を備える。
【0035】
予め、
図1に示すように、ビードワイヤー保持部31により回転テーブル3にビードワイヤー11を固定する。回転テーブル3は、供給装置2の搬送方向2dの最下流の搬送ローラ22よりもさらに下流側に吸着パッド33が位置するように停止されている。
【0036】
初めに、
図4Aに示すように、回転テーブル3を停止した状態で、供給装置2から湾曲した状態でビードフィラー12の供給を開始する。このとき、吸着パッド33は、後退位置にあり、回転テーブル3に収納されている。
【0037】
そして、ビードフィラー12の先端部12aが吸着パッド33の上方に到達したとき、
図3A、
図4Bに示すように、吸着パッド33を載置面32から外側へ突出させ、ビードフィラー12の先端部12aの下面を吸着して保持する。
【0038】
次いで、
図4Cに示すように、吸着パッド33を後退させながら、回転テーブル3の回転を開始する。このとき、吸着パッド33は、ビードフィラー12の先端部12aを吸着したままである。吸着パッド33を回転テーブル3に収納されるまで後退させることにより、
図3B、
図4Dに示すように、保持したビードフィラー12の先端部12aを、回転テーブル3上に保持されたビードワイヤー11の外周に近接させる。
【0039】
その後、
図3Cに示すように、ビードワイヤー11を周方向に回転させながらビードフィラー12を供給して、ビードワイヤー11の外周にビードフィラー12を徐々に巻き付けていく。そして、
図4E、
図4Fに示すように、1周分のビードフィラー12をビードワイヤー11の外周に巻き付ける。
【0040】
ビードフィラー12をビードワイヤー11の外周に巻き終わると、
図4Gに示すように、回転テーブル3の回転を停止させ、ジョイントステッチャー35を用いてビードフィラー12の後端部12bを先端部12aに接合させる。
【0041】
また、製造装置1は、
図5に示すような圧着ローラ36を備えている。圧着ローラ36は、ビードフィラー12に対して径方向内側へ向かう力を与えることができ、これによりビードフィラー12をビードワイヤー11に圧着することができる。なお、ビードフィラー12の圧着は、ビードフィラー12の巻き付け中に同時に行っても、ビードフィラー12の巻き付けが終わった後に行ってもよい。
【0042】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、供給装置2の一例としてローラコンベアを示しているが、これに限定されない。例えば、湾曲させた状態でビードフィラー12を押し出すことのできる押出機を用いて、湾曲したビードフィラー12を回転テーブル3に直接供給するようにしてもよい。
【0043】
(2)1つの供給装置2に対し、回転テーブル3を2つ用意し、交互に供給装置2からビードフィラー12を供給するようにしてもよい。これにより、ビード部材10を製造するサイクルタイムを短縮することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 製造装置
2 供給装置
3 回転テーブル
10 ビード部材
11 ビードワイヤー
12 ビードフィラー
32 載置面
33 吸着パッド
34 ガイドローラ