特許第6297405号(P6297405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297405
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20180312BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J11/06
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-100710(P2014-100710)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-218200(P2015-218200A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隼人
(72)【発明者】
【氏名】根岸 豊
(72)【発明者】
【氏名】須藤 洋
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−117011(JP,A)
【文献】 特開2009−221329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/00
C09J 9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)を含有する組成物。
(1)下記(1−1)〜(1−4)を含有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー
(1−1)炭素数1〜7の飽和炭化水素をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、
(1−2)炭素数9〜12の飽和脂環式炭化水素基をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、
(1−3)水酸基含有(メタ)アクリレート、
(1−4)多官能(メタ)アクリレート、
(2)重合開始剤、
(3)還元剤、
(4)蛍光剤
【請求項2】
更に、(5)エラストマー成分を含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(4)蛍光剤がクマリン誘導体及び/又はオキサゾール誘導体である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)の合計100部質量部中、(1−1)5〜50質量部、(1−2)1〜30質量部、(1−3)20〜70質量部、(1−4)5〜50質量部を含有する請求項1〜3のうちの1項記載の組成物。
【請求項5】
組成物を第一剤と第二剤の二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤を含有する請求項1〜4のうちの1項記載の二剤型組成物。
【請求項6】
組成物を第一剤と第二剤の二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤及び(4)蛍光剤を含有する請求項1〜5のうちの1項記載の二剤型組成物。
【請求項7】
組成物が硬化性樹脂組成物である請求項1〜6のうちの1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のうちの1項記載の組成物を含有する接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のうちの1項記載の組成物が塗布された被着体に紫外線を照査することにより、組成物の塗布状況を確認する確認方法。
【請求項10】
第一剤と第二剤を重ね合わせた後に紫外線を照査することにより、請求項5又は6記載の組成物の塗布状況を確認する確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
常温下短時間で硬化する常温速硬化型接着剤への要求は、省力化、省資源及び省エネルギー等のために年々増大する傾向にある。従来、常温速硬化型接着剤として例えば、第二世代のアクリル系接着剤(SGA)が知られている(特許文献1)。
【0003】
SGAは二剤型であるが、二剤の正確な計量を必要とせず、不完全な計量や混合、時には二剤の接触だけでも、常温で数分又は数十分で硬化するため、作業性に優れる。しかもSGAは剥離接着強さや衝撃接着強さが高く、ハミ出し部分の硬化も良好であるために広く用いられている。
【0004】
最近では、被着体が小型化し、微少量の接着剤組成物を塗布することが求められている。微少量の接着剤組成物をする手段として、接着剤組成物を微少量の液として飛ばし、被着体に噴霧、塗布し、接着する非接触型のドットディスペンサーが提案されている。
【0005】
省力化の点で、製造工程を自動化することが求められている。製造工程を自動化し、微少量の接着剤組成物を塗布する際には、二剤の接着剤が被着体上で接触したことを正確に判断することが重要である。
【0006】
二剤の混合を視覚的に確認する手段として、顔料を混合し、二剤が相互に補色の関係をなすことが提案されている(特許文献2)。しかしながら、微少量の接着剤組成物を塗布する場合、顔料程度では二剤の接着剤の色がほぼ同じに視認され、被着体上で接触したか判断出来ない課題があった。
【0007】
蛍光剤を含有する組成物が提案されている(特許文献3〜4)。しかしながら、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーの成分を特定することにより、接着性と視認性を両立することについて、特許文献3〜4には記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−7753号公報
【特許文献2】特開平3−197580号公報
【特許文献3】特開平5−331438号公報
【特許文献2】特開2004−244585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、下記(1)〜(4)を含有する組成物であり、
(1)下記(1−1)〜(1−4)を含有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマー
(1−1)炭素数1〜7の飽和炭化水素をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、
(1−2)炭素数9〜12の飽和脂環式炭化水素基をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、
(1−3)水酸基含有(メタ)アクリレート、
(1−4)多官能(メタ)アクリレート、
(2)重合開始剤、
(3)還元剤、
(4)蛍光剤
【0011】
更に、(5)エラストマー成分を含有する該組成物であり、(4)蛍光剤がクマリン誘導体及び/又はオキサゾール誘導体である該組成物であり、(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)の合計100部質量部中、(1−1)5〜50質量部、(1−2)1〜30質量部、(1−3)20〜70質量部、(1−4)5〜50質量部を含有する該組成物であり、組成物を第一剤と第二剤の二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤を含有する該二剤型組成物であり、組成物を第一剤と第二剤の二剤に分け、第一剤が少なくとも(2)重合開始剤を含有し、第二剤が少なくとも(3)還元剤及び(4)蛍光剤を含有する該二剤型組成物であり、組成物が硬化性樹脂組成物である該組成物であり、該組成物を含有する接着剤組成物であり、該組成物が塗布された被着体に紫外線を照査することにより、組成物の塗布状況を確認する確認方法であり、第一剤と第二剤を重ね合わせた後に紫外線を照査することにより、該組成物の塗布状況を確認する確認方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、例えば、接着性と視認性が大きい接着剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用する(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマーは、(1−1)炭素数1〜7の飽和炭化水素をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、(1−2)炭素数9〜12の飽和脂環式炭化水素基をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレート、(1−3)水酸基含有(メタ)アクリレート、(1−4)多官能(メタ)アクリレートを含有する。ここで、単官能(メタ)アクリレートとは、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物をいい、多官能(メタ)アクリレートとは、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物をいう。
【0015】
(1−1)炭素数1〜7の飽和炭化水素をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、炭素数1〜4の飽和炭化水素をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0016】
(1−2)炭素数9〜12の飽和脂環式炭化水素基をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0017】
(1−3)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、水酸基含有単官能(メタ)アクリレートが好ましい。水酸基含有単官能(メタ)アクリレートの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0018】
(1−4)多官能(メタ)アクリレートとしては、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する多官能(メタ)アクリレートや、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等の芳香族環構造を有する多官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族分岐構造を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、脂肪族分岐構造を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0019】
(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)の使用量は、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)の合計100部質量部中、(1−1)5〜50質量部、(1−2)1〜30質量部、(1−3)20〜70質量部、(1−4)5〜50質量部が好ましく、(1−1)20〜40質量部、(1−2)5〜15質量部、(1−3)30〜50質量部、(1−4)10〜30質量部がより好ましい。
【0020】
本発明で使用する(2)重合開始剤の中では、(3)還元剤と化学反応することにより、ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、安定性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0021】
(2)重合開始剤の使用量は、(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。0.1質量部未満だと硬化速度が遅延化するおそれがあり、20質量部を越えると貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0022】
本発明で使用する(3)還元剤は、(2)重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する公知の還元剤であれば使用できる。(3)還元剤としては例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体、遷移金属塩等が挙げられる。
【0023】
第3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチル−2−チオ尿素、ベンゾイルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、N,N−ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素等が挙げられる。チオ尿素誘導体の中では、エチレンチオ尿素が好ましい。遷移金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、バナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。遷移金属塩の中では、ナフテン酸銅が好ましい。これらの1種以上を使用しても良い。これらの中では、チオ尿素誘導体及び/又は遷移金属塩が好ましく、チオ尿素誘導体と遷移金属塩の併用がより好ましい。チオ尿素誘導体と遷移金属塩を併用する場合、その使用割合は、チオ尿素誘導体と遷移金属塩の合計100質量部中、質量比で、チオ尿素誘導体:遷移金属塩=55〜95:5〜45が好ましく、70〜90:10〜30がより好ましい。
【0024】
(3)還元剤の使用量は(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100質量部に対して0.05〜15質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。0.05質量部未満だと硬化速度が遅いおそれがあり、15質量部を越えると貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0025】
本発明で使用する(4)蛍光剤としては、例えば、紫外線の照射により発光する化合物が挙げられる。蛍光剤としては、クマリン誘導体、オキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が挙げられる。市販の蛍光剤としては、Kayalightシリーズ(日本化薬製)、Hakkolシリーズ(昭和化学工業製)等が挙げられる。蛍光剤としては、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーや還元剤と反応しない物が好ましい。蛍光剤の中では、クマリン誘導体及び/又はオキサゾール誘導体が好ましい。
【0026】
(4)蛍光剤の使用量は(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましく、0.005〜1.0質量部がより好ましく。0.01〜0.5質量部が最も好ましく。0.05〜0.3質量部が尚更好ましい。0.001質量部未満だと二剤を重ね合わせた時に視認できないおそれがあり、5質量部を越えると接着性が低下するおそれがある。
【0027】
本発明では接着性と微少塗布性を向上させるために、(5)エラストマー成分を使用することが好ましい。
【0028】
(5)エラストマー成分とは、常温でゴム状弾性を有する高分子物質をいい、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに溶解又は分散できるものが好ましい。
【0029】
本発明で使用する(5)エラストマー成分としては、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、並びに、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、線状ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びブタジエンゴム等の各種合成ゴム、天然ゴム、スチレン−ポリブタジエン−スチレン系合成ゴムといったスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン−EPDM合成ゴムといったオレフィン系熱可塑性エラストマー、並びに、カプロラクトン型、アジペート型及びPTMG型といったウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールマルチブロックポリマーといったポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン−ポリオールブロック共重合体やナイロン−ポリエステルブロック共重合体といったポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、並びに、塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマー成分は相溶性が良ければ、1種以上を使用してもよい。
【0030】
又、末端メタクリル変性したポリブタジエンも使用できる。
【0031】
これらの中では、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーに対する溶解性や接着性の点で、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体及び/又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムが好ましく、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムの併用がより好ましい。メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムを併用する場合、その使用割合は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体とアクリロニトリル−ブタジエンゴムの合計100質量部中、質量比で、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体:アクリロニトリル−ブタジエンゴム=55〜95:5〜45が好ましく、70〜90:10〜30がより好ましい。
【0032】
(5)エラストマー成分の使用量は、(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100重量部に対して、5〜40重量部が好ましく、15〜25重量部がより好ましい。5重量部未満だと粘度、微少塗布性、接着性が低下するおそれがあり、40重量部を越えると、粘度が高すぎて作業上不都合が生じるおそれがある。
【0033】
本発明では、空気に接している部分の硬化を迅速にするために各種パラフィン類を使用することができる。パラフィン類としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、蜜ろう、ラノリン、鯨ろう、セレシン及びカンデリラろう等が挙げられる。
【0034】
パラフィン類の使用量は、(1)(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100質量部に対して、0.01〜3質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。0.01質量部未満だと空気に接している部分の硬化が悪くなるおそれがあり、3質量部を越えると接着性が低下するおそれがある。
【0035】
この他に粘度や流動性を調整する目的でクロロスルホン化ポリエチレン、ポリウレタン、スチレン−アクリロニトリル共重合体及びポリメチルメタクリレート等の熱可塑性高分子、並びに、微粉末シリカ等も使用してもよい。
【0036】
本発明で使用する硬化性樹脂組成物は、そのまま接着剤組成物として用いることができるが、更に好ましい実施態様として、二剤型の接着剤組成物として使用できる。この場合、(2)重合開始剤が第一剤に、(3)還元剤が第二剤に、それぞれ含有する二剤型の形態とすれば良い。(4)蛍光剤は、(2)重合開始剤との反応を避ける点で、予め第二剤に混合することが好ましい。その他の成分は適宜二剤に混合することができる。接着剤組成物として使用直前に、第一剤と第二剤を接触させて硬化させれば良い。
【0037】
二剤を重ね合わせた時に、接着剤組成物を視認する方法としては、例えば、紫外線を照射(例えば、ブラックライト等により波長365nm付近の光を照射)する方法が挙げられる。例えば、接着剤組成物や、接着剤組成物を塗布した被着体に、紫外線を照射することにより、二剤を重ね合わせた接着剤組成物の中で、蛍光剤を含有する接着剤組成物だけが可視状態となり、二剤目の塗布位置や塗布量といった塗布状態が確認できる。二剤を重ね合わせるとは、例えば、第一剤の表面に第二剤を塗布したり、第二剤の表面に第一剤を塗布したりすることをいう。塗布する方法としては、噴霧する方法も含まれる。
【0038】
蛍光剤を含有する接着剤組成物から発する蛍光を、目視又はカメラで確認し、これを画像処理することで接着剤組成物の塗布の合否を判断することができる。
【0039】
本発明で使用する接着剤組成物は、非常に小さい部品への塗布が可能である。二剤型の接着剤組成物においては、接着剤組成物を二剤のうちの一方又は両方を、微少量ずつ飛ばすことで、塗布を行うことができる。
【実施例】
【0040】
(実験例)
【0041】
表1の使用量で各物質を混合し、第一剤と第二剤からなる接着剤組成物を調製した。特記しない限り、第一剤と第二剤を等量混合した。接着剤組成物について、各種物性を評価した。各成分の使用量の単位は質量部で示した。各種物性は次の通り測定した。結果を表1に併記した。
【0042】
(成分)
特記しない限り、市販品を使用した。
アクリロニトリル−ブタジエンゴムとしては、商品名「DN612P」(日本ゼオン社製)を使用した。商品名「DN612P」はランダム共重合体である。
メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体としては、商品名「カネエース B−513」(カネカ社製)を使用した。
蛍光剤としては、以下のものを使用した。
商品名「Kayalight OS」はオキサゾール誘導体である(日本化薬社製)。
商品名「Hakkol P」はクマリン誘導体である(昭和化学工業社製)。
【0043】
(各種物性)
(引張り剪断接着強さ(剪断強度))
JIS K−6850に準拠した。一枚の試験片(100×25×5mmのSPCC)の片面に二剤を混合した接着剤組成物を塗布し、もう一方の試験片(100×25×5mmのSPCC)と直ちに重ね合わせて貼り合わせた後、室温で24時間養生し、これを引張り剪断接着強さ測定用試料とした。尚、接着剤組成物層の厚さを均一化するため、粒径125μmのガラスビーズを接着剤組成物に微量添加した。引張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0044】
(ブラックライト照射後の状態確認)
第一剤を塗布した試験片を目視で確認した後、第二剤を第一剤の表面に塗布した。第一剤と第二剤が重ね合せた状態であることが、第一剤のみ塗布した状態と区別できるか、ブラックライト照射により確認した。評価は、10個の試験片を用いて評価し、区別できた個数を記載した。
【0045】
(蛍光剤の接着剤に対する溶解性確認)
蛍光剤を第二剤に混合した時の溶解性について目視で確認した。評価は以下の通りである。蛍光剤を混合した第二剤を一時間撹拌した。その後第二剤を10個の容器に分け取り、10個の容器中、蛍光剤が溶解しなかった容器の個数を記載した。蛍光剤が溶解しなかった状態とは、蛍光剤が均一に混合しなかったり、蛍光剤が析出したりする状態をいう。
【0046】
【表1】



【0047】
表から以下のことが認められる。本発明の接着剤組成物は、接着性と視認性が大きい。蛍光剤の使用量を、第二剤中の(メタ)アクリル酸誘導体モノマー100質量部に対して、0.01〜0.5質量部にする場合、特に0.05〜0.3質量部にする場合、接着性と視認性が特に大きい。蛍光剤を使用しない場合、視認性が得られない(実験例7)。蛍光剤の代わりに、顔料(酸化チタン)を使用する場合、視認性が得られない(実験例8)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、以下の特徴を有する。本発明は、SGA特有の性能である、正確な計量が不要であり、接着バランスに優れるといった特性を維持できる。本発明で使用する接着剤組成物は、スタティックミキサーのような二剤を混合する部品を必要とすることなく、硬化できる。本発明は、接着性が良好である。本発明は、ハネムーン接着を行った際に、異なる二剤の塗布が視認できる。本発明は、組成物を微少量塗布しただけでも、二剤の混合や塗布といった状況を視認できる。本発明の二剤型接着剤組成物は、第一剤を塗布した後に第二剤を重ね合せた際、光照射により、塗布状況を確認できる。