(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のセンサ部が加速度センサを含んでおり、該第一のセンサ部および前記計測手段が前記ジャイロセンサによって検出される前記第一肢部の角速度に基づいて該加速度センサによって検出される重力加速度方向に対する該第一肢部の角度を計測する請求項1に記載の角度センサ装置。
前記第一のセンサ部によって前記第一肢部の角度が三次元で検出されると共に、前記第二のセンサ部によって前記第二肢部の該第一肢部に対する相対角度が一次元で検出される請求項1〜3の何れか一項に記載の角度センサ装置。
前記曲げセンサが誘電性の弾性材で形成された誘電膜の両面に導電性の弾性材によって変形可能に形成された一対の電極膜が設けられたセンサ本体を有しており、該一対の電極膜が前記計測手段に接続されている請求項1〜4の何れか一項に記載の角度センサ装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行や腕の曲げ伸ばしなどの動作を補助する関節運動補助具が提案されており、このような関節運動補助具では、装用者の動作に応じた適切な補助力を及ぼすために、センサを用いて装用者の動作を検出する必要がある。例えば、特開2013−70785号公報(特許文献1)に示された歩行支援装置では、下肢の各部にそれぞれ姿勢や反力を検出するセンサが取り付けられており、それらセンサの検出結果に基づいて下肢の動作が把握されて、適切な補助力が下肢の各部に及ぼされるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1のような複雑な構造を有する歩行支援装置が提案されている一方で、本出願人は、特開2012−192013号公報(特許文献2)において、簡易な構造で容易に着脱可能な関節運動補助具を提案している。即ち、特許文献1の構造では、装置の脱着が面倒で補助力を簡便に得難いと共に、多数のアクチュエータやセンサを備えた装置自体が極めて高価になると考えられるからである。このような関節運動補助具では、センサ自体とそれを制御する計測手段を含む角度センサ装置が、関節運動補助具の着脱や装用状態での動作を著しく妨げない簡単な構造で、且つ優れた検出精度を実現し得るものであることが望ましい。
【0004】
ところが、特許文献2の構造において、動作を検出するために使用するセンサなどは、あくまでも例示に留まるものであって、第一,第二の肢部の動作を測定する角度センサ装置において、採用するセンサの種類や配置、数などに更なる検討の余地があった。
【0005】
なお、特許文献2の関節運動補助具は、屈伸運動の補助を主に考慮するものとされていることから、補助力を設定するためのセンサにおいて、第一肢部の動作を三次元的に検出する能力は必ずしも求められていなかった。しかしながら、装用者の動作の状態をより高度に検出することが求められる場合もあり、第一肢部の自由度の大きな動作を三次元的に検出し得るセンサの採用も検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、簡単な構造によって第一肢部と第二肢部の角度をそれぞれ精度良く検出することができる、新規な構造の角度センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第一の態様は、第一肢部の角度と、該第一肢部と第二肢部とを繋ぐ関節部の角度とを、計測可能とされた角度センサ装置であって、前記第一肢部に装着される第一の取付部を備えており、該第一の取付部には該第一肢部の角速度を検出するジャイロセンサを含んだ第一のセンサ部が設けられていると共に、該第一の取付部には該第一のセンサ部に接続されて該第一肢部の角度の計測を実行する計測手段が設けられている一方、前記第二肢部に装着される第二の取付部を備えており、該第一の取付部と該第二の取付部に跨って延びて前記関節部の角度を検出する曲げセンサを含んだ第二のセンサ部が設けられていると共に、該第二のセンサ部が該第一の取付部への取付端側で該計測手段に接続されて、該計測手段が該第二のセンサ部によって該関節部の角度を計測可能とされていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた角度センサ装置によれば、第一のセンサ部に角速度を検出するジャイロセンサを採用することで、第二の肢部側の関節部と反対側の関節を跨ぐように第一のセンサ部を配することなく、第一の肢部の角度を計測することができる。一方、第二のセンサ部に曲げセンサを採用して、曲げセンサを第一の取付部と第二の取付部の間に跨がって配することで、関節部の角度を簡単な構造で検出可能としつつ、第二のセンサ部を第一の取付部に取り付けられた計測手段に容易に接続することができる。このように、第一のセンサ部を構成するジャイロセンサと、第二のセンサ部を構成する曲げセンサとを、組み合わせて採用したことにより、それら第一, 第二のセンサ部への給電や検出信号の演算処理などを実行する計測手段を、第一の取付部に集約的に設けることが可能とされる。その結果、計測手段による肢部の拘束範囲が抑えられると共に、構造が極めて簡略化されて装用が容易になる。加えて、ジャイロセンサを計測手段の演算装置などと同じ基板上に実装する等して、更なる小型軽量化を図ることも可能となる。なお、一軸の角速度のみを検出するジャイロセンサを採用することもできるが、例えば、角速度を三軸で検出可能なジャイロセンサを採用すれば、第一肢部の姿勢をより高度に計測することもできる。
【0011】
さらに、第一の取付部を第一肢部に取り付けると共に、第二の取付部を第二肢部に取り付けることにより、複数のセンサを個別に着脱することなく、角度センサ装置を人体などに着脱することができる。従って、角度センサ装置を長期間に亘って断続的に使用する場合などにも、着脱作業の負担が低減される。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に従う構造とされた角度センサ装置において、前記第一のセンサ部が加速度センサを含んでおり、該第一のセンサ部および前記計測手段が前記ジャイロセンサによって検出される前記第一肢部の角速度に基づいて該加速度センサによって検出される重力加速度方向に対する該第一肢部の角度を計測するものである。
【0013】
第二の態様によれば、第一のセンサ部に加速度センサを設けることにより、加速度センサによって検出される重力加速度方向を、第一肢部の角度の基準方向として設定することができることから、任意の姿勢で検出を開始しても、第一肢部の向きを有効に検出することができる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された角度センサ装置において、前記計測手段が前記加速度センサの検出結果に基づいて前記ジャイロセンサの較正を実行するものである。
【0015】
第三の態様によれば、ジャイロセンサの検出信号に基づいて算出される重力加速度方向にノイズなどによる誤差が生じても、加速度センサによって検出される実際の重力加速度方向に基づいた較正を実行することにより、長期間の計測であっても優れた計測精度を維持することができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された角度センサ装置において、前記第一のセンサ部によって前記第一肢部の角度が三次元で検出されると共に、前記第二のセンサ部によって前記第二肢部の該第一肢部に対する相対角度が一次元で検出されるものである。
【0017】
第四の態様によれば、三軸の角速度を検出可能なジャイロセンサを採用することにより、第一肢部の動きの自由度が大きい場合にも、角速度を三次元で検出可能とされて、第一肢部の角度を高度に計測することができる。従って、人体において、股関節や肩関節によって三次元の複雑な動作が許容される大腿部や上腕部の角度を、有効に計測することが可能となる。一方、人体において、膝関節や肘関節によって一次元の簡単な屈伸運動のみを許容される下腿部や前腕部の角度は、曲げセンサを含む簡単な構造の第二のセンサ部によって、複雑な演算処理を要することなく簡易に計測することができる。
【0018】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された角度センサ装置において、前記曲げセンサが誘電性の弾性材で形成された誘電膜の両面に導電性の弾性材によって変形可能に形成された一対の電極膜が設けられたセンサ本体を有しており、該一対の電極膜が前記計測手段に接続されているものである。
【0019】
第五の態様によれば、関節部を跨ぐように延びて配設される曲げセンサが、柔軟な誘電膜の両面に弾性的な電極膜を設けられたセンサ本体を備えており、センサ本体の全体が弾性的に曲げ変形可能とされた柔軟な構造とされている。これにより、センサ本体の曲げ変形に伴う静電容量の変化などに基づいて関節部の角度を検出する際に、関節部の動きがセンサ本体によって妨げられるのを防ぐことができる。特に、誘電膜だけでなく電極膜も弾性材で形成されていることから、長期間に亘って曲げ変形が繰り返し生ぜしめられても、優れた耐久性が発揮される。
【0020】
本発明
では、第一〜第五の何れか一つの態様に記載された角度センサ装置において、前記第一肢部が大腿部とされていると共に、前記第二肢部が下腿部とされており、前記第一のセンサ部および前記第二のセンサ部と前記計測手段とによって、歩行動作の周期と歩行速度と歩幅と歩行動作の段階との少なくとも一つが検出される
ようにしても良い。
【0021】
このような態様によれば、本発明に係る角度センサ装置を脚部に適用することにより、装用者の歩行状態を優れた精度で計測することができる。しかも、第一の取付部と第二の取付部を膝関節の両側に対して着脱することで、角度センサ装置を容易に着脱できることから、長期間に亘って断続的に計測する場合にも装用者の負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第一のセンサ部がジャイロセンサを含んで構成されていると共に、第二のセンサ部が曲げセンサを含んで構成されており、ジャイロセンサが第一の取付部に取り付けられていると共に、曲げセンサの両端部が第一の取付部と第二の取付部の各一方に取り付けられている。これにより、第一のセンサ部と第二のセンサ部によって第一肢部と第二肢部の角度を計測する計測手段を、第一の取付部に集約的に設けることができて、装置の小型化や軽量化、構造の簡略化などが図られる。しかも、第一の取付部を第一肢部に装着すると共に、第二の取付部を第二肢部に装着することで、角度センサ装置を容易に装用可能であり、着脱作業による装用者の負担が軽減される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1には、本発明の第一の実施形態としての角度センサ装置10が、脚部12への装着状態で示されている。角度センサ装置10は、第一の取付部14と第二の取付部16を備えている。そして、角度センサ装置10は、第一の取付部14が第一肢部としての大腿部18に装着されると共に、第二の取付部16が第二肢部としての下腿部20に装着されて、大腿部18の鉛直方向に対する角度と、膝関節22の角度とを、計測できるようになっている。なお、
図1では、下方が重力加速度方向とされており、図中に一点鎖線で示すように、鉛直方向が上下方向とされている。
【0026】
より詳細には、第一の取付部14は、本実施形態では大腿部18に外挿可能なリング状とされており、布やエラストマなどで形成されて、大腿部18の動作(変形)を妨げない程度の伸縮性を有していることが望ましい。なお、第一の取付部14を帯状として、端部を面ファスナやフック、スナップなどによって連結することで、大腿部18に巻き付けて大腿部18の太さに応じたリング状としても良い。
【0027】
また、第一の取付部14には、第一のセンサ部24が取り付けられている。この第一のセンサ部24は、ジャイロセンサ26と加速度センサ28を含んで構成されている。ジャイロセンサ26は、一般的なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサであって、三軸回りの回転の角速度を検出可能な三軸角速度センサとされている。加速度センサ28は、ジャイロセンサ26と同様にMEMSセンサであって、三軸方向の加速度を検出可能な三軸加速度センサとされている。なお、第一のセンサ部24は、ジャイロセンサ26と加速度センサ28で構成されており、股関節を跨いで胴部に取り付ける必要がない。
【0028】
さらに、第一の取付部14には、計測手段30が取り付けられている。計測手段30は、第一のセンサ部24の検出信号を処理する演算装置32と、第一のセンサ部24および演算装置32に電力を供給する電源33とを、備えている。なお、第一のセンサ部24と演算装置32は、同一基板上に実装されて、電源33によって作動に必要な電力を供給され得る。
【0029】
演算装置32は、ジャイロセンサ26および加速度センサ28の検出信号に基づいて、重力加速度方向や、鉛直方向に対する大腿部18の傾斜角度(θ,ψ,φ)を、算出する。以下に、大腿部18の傾斜角度(θ,ψ,φ)の算出方法の一例を示す。なお、以下の説明において、ジャイロセンサ26が検出する三軸回りの角速度(ω)をω=(ω
1 ,ω
2 ,ω
3 )、大腿部18の姿勢を示す四元数(クォータニオン)(Q)をQ=(q
1 ,q
2 ,q
3 ;q
0 )とする。
【0030】
先ず、大腿部18の動き(姿勢の変化)は、ジャイロセンサ26によって角速度として検出される。そして、ジャイロセンサ26の検出信号に基づいて、大腿部18の姿勢変化(位置ベクトルの回転)による四元数の時間変化が、以下の[数1]のように算出される。
【0032】
次に、[数2]に示すように、四元数を方向余弦行列(DCM)に変換する。
【0034】
また、方向余弦行列と三軸回りの回転角度であるオイラー角(θ,ψ,φ)との関係は、[数3]のようになる。
【0036】
そして、[数2]と[数3]からオイラー角が算出される。以上により、演算装置32は、ジャイロセンサ26が検出する角速度に基づいて、大腿部18の角度を三次元で算出することができる。
【0037】
なお、例えば、角度センサ装置10を装用した静止状態で第一のセンサ部24を起動させて、加速度センサ28によって重力の作用方向(鉛直方向)を検出させることにより、検出された鉛直方向が大腿部18の角度の基準軸とされて、大腿部18の鉛直方向に対する傾斜角度が上記の処理によって算出される。また、第一のセンサ部24が変位(回転)することにより、第一のセンサ部24に対する重力の作用方向が変化することから、演算装置32は、[数4]によって、第一のセンサ部24に対する重力の向きをジャイロセンサ26の検出信号に基づいて算出する。このような鉛直方向の算出処理を長時間に亘って繰り返すと、実際の鉛直方向に対する誤差が徐々に大きくなることから、例えば、大腿部18の静止時に加速度センサ28によって鉛直方向を検出して、検出結果を実際の鉛直方向として置き換える処理を適宜に実行することが望ましい。要するに、加速度センサ28の検出結果を利用して、鉛直方向の較正を適宜に行うことができる。
【0039】
さらに、例えば、ジャイロセンサ26と加速度センサ28を組み合わせた計測において、拡張カルマンフィルタやパーティクルフィルタなどのセンサフュージョンアルゴリズムを採用すれば、ノイズなどに起因するジャイロセンサ26の検出誤差を低減して、大腿部18の角度を長時間に亘って優れた精度で計測することもできる。
【0040】
一方、第二の取付部16は、本実施形態では下腿部20に外挿可能なリング状とされており、第一の取付部14と同様に、布やエラストマなどで形成されて、下腿部20の筋肉の変形を妨げない程度の伸縮性を有していることが望ましい。なお、第二の取付部16は、第一の取付部14と同様に、帯状とされて、端部が面ファスナやフック、スナップなどによって連結されることで、下腿部20の外径に応じたリング状として下腿部20に巻き付けられるようにしても良い。
【0041】
第一の取付部14と第二の取付部16は、膝関節22に対して各一方側に配されて、所定の距離だけ相互に離隔している。そして、膝関節22の屈伸による角度変化を検出する第二のセンサ部34を構成する曲げセンサ36が、第一の取付部14と第二の取付部16に跨って延びて配されている。
【0042】
曲げセンサ36は、具体的な構造を特に限定されるものではないが、例えば、誘電性の弾性体で形成された誘電膜38の表裏に、導電性の弾性材で形成された一対の電極膜40,42が被着された、積層構造のセンサ本体44を備える構造とされている。このセンサ本体44は、安定した湾曲形状を呈するように矩形などの一定断面形状で長さ方向に直線的に延びる板状や棒状を有しており、その具体的な構造は、前述の特開2009−20006号公報にも記載されていることから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
さらに、本実施形態に係る曲げセンサ36において、誘電膜38と一対の電極膜40,42からなる積層構造を有するセンサ本体44には、積層方向の一方の面に対して変形規定部材46が重ね合わされて固着されている。
【0044】
特に本実施形態では、誘電膜38と一対の電極膜40,42が何れも薄肉の短冊シート形状とされており、それらと略同じ薄板形状の変形規定部材46が用いられ、一方の電極膜42の全面に対して変形規定部材46が重ね合わされて密着状態で固着されている。これにより、変形規定部材46が、センサ本体44と一体化されており、センサ本体44と変形規定部材46とが一体的に変形せしめられるようになっている。
【0045】
かかる変形規定部材46は、外力が及ぼされた際に安定した所定形状へ変形可能とされた弾性材であり、センサ本体44に比して初期形状の保持力と変形形状の安定性が優れている。好適には、10N等の荷重の入力が予定される領域において引張や圧縮の変形が実質的に無視される程に小さく、直交3軸方向のうちの一方向だけの断面二次モーメントが他方向に比して格段に小さくされることで、外力が及ぼされた際に当該一方向の曲げ変形が安定して生ぜしめられるようにされる。
【0046】
具体的には、薄肉の矩形平板形状とされることにより、板面に直交する曲率半径をもって湾曲形状に変形する曲げ変形が安定して生ぜしめられるようにすることができる。また、断面二次モーメントが全長に亘って一定となる形状を採用することで、所定の曲げモーメントが外力として及ぼされた際に、長手方向の全長に亘って略一定の曲率で湾曲変形するようにできる。
【0047】
さらに、安定した変形態様を確保するためには、少なくともセンサ本体44よりも大きな曲げ剛性を有するが、装用する関節の動きに対して違和感を与えない程度に小さく設定することができる。具体的な材質は特に限定されるものでないが、ポリイミドやポリエチレン等の薄肉の樹脂プレートや薄肉のバネ鋼などの金属プレートも採用可能である。
【0048】
また、電気安定性を考慮して絶縁材とすることが好適であるが、例えば導電性の材質からなる変形規定部材46を採用することも可能である。その場合には、電極膜42と変形規定部材46との間に絶縁膜を介在させて電気的に絶縁する他、変形規定部材46を介して、電極膜42に給電等したり、変形規定部材46を直接に誘電膜38に重ね合わせて固着することにより変形規定部材46で電極膜42を構成することも可能である。
【0049】
このような構造とされた曲げセンサ36は、長さ方向の一方の端部が第一の取付部14に取り付けられていると共に、他方の端部が第二の取付部16に取り付けられており、膝関節22の側方に配されている。これにより、曲げセンサ36は、人体の肢部の関節部位に装用されて、関節の屈曲に伴って湾曲変形されることとなり、
図1の例示では、大腿部18に対する下腿部20の動きによって発生する膝関節22の角度変化に伴って、湾曲変形するようになっている。
【0050】
なお、曲げセンサ36は、それを構成するセンサ本体44および変形規定部材46の板厚方向が人体の前後方向とされて、板面に直交する曲率半径をもって湾曲変形するように装用される。
【0051】
また、曲げセンサ36は、股関節の屈曲に伴う外力の作用により、その長さ方向の両端に同等の曲げモーメントが及ぼされることで全体として略一定の曲率をもった円弧形状に弾性変形されるようになっている。具体的には、
図1に示されているように、センサとして機能する曲げ変形領域の長さ方向の両端が入力点とされることで、長さ方向の中央点が屈曲点となる膝関節22と略一致するように設定されている。
【0052】
これにより、大腿部18と下腿部20が略直線的に伸ばされた膝関節22の伸長状態から、
図1に示すように下腿部20を大腿部18に対して傾斜させた屈曲状態をとることで、曲げセンサ36には、両端間で円弧状の湾曲が生ぜしめられることとなる。そして、この湾曲状態の曲率半径が、膝関節22の屈曲角度(δ)に対応した値をとることになる。
【0053】
なお、膝関節22の屈曲に伴って曲げセンサ36に生ぜしめられる変形態様は、曲げセンサ36の変形態様が変形規定部材46で規定されていることにより、数学的な演算式を用いたモデルによって近似的に表すことが可能である。特に変形規定部材46によって変形態様を規定することで、実用的に良好な精度と演算処理可能な効率化を実現し得る演算モデルを構築することが可能とされる。
【0054】
具体的には、以下の条件(1)〜(5)の各条件を一定にする簡略化条件を適宜に採用することで、効率的な演算モデルを得ることができる。
(1)曲げセンサ36の曲げ変形領域は全長に亘って曲率が一定。
(2)曲げセンサ36の曲げ変形領域は全長に亘って断面形状が一定。
(3)曲げセンサ36の変形規定部材46への重ね合わせ側の面は曲げ変形の有無に拘わらず寸法が一定。
(4)曲げセンサ36は曲げ変形の有無に拘わらず体積が一定。
(5)曲げセンサ36の断面では曲げ変形に際しての幅方向の寸法変化率と高さ方向の寸法変化率との相対比が一定。
【0055】
これらの条件(1)〜(5)は少なくとも一つを採用し、また要求される精度や演算能力等を考慮して適宜に複数を組み合わせて採用することができる。特に(1)〜(5)の全ての条件を組み合わせて採用することで、演算モデルの簡略化が図られる。
【0056】
また、電極膜40,42の第一の取付部14側の端部が演算装置32に電気的に接続されており、曲げセンサ36の検出信号が演算装置32によって演算処理されて、膝関節22の関節角度(δ)が算出されるようになっている。なお、膝関節22は、屈伸だけを許容される関節であることから、誘電膜38と電極膜40,42の積層方向の曲げ角度だけを一次元的に検出する曲げセンサ36によって、関節角を有効に計測することができる。
【0057】
このように、センサの検出結果に基づいて角度の演算処理を行う演算装置32が、第一のセンサ部24と第二のセンサ部34で互いに共通とされて、大腿部18に装着される第一の取付部14に取り付けられている。更に、第一, 第二のセンサ部24,34や演算装置32などに電力を供給する電源33も、演算装置32と共に第一の取付部14に取り付けられている。要するに、演算装置32や電源33を含んで構成されて第一, 第二のセンサ部24,34による角度の計測を可能とする計測手段30が、第一の取付部14側に集約されて配設されており、本実施形態では、第二の取付部16が曲げセンサ36の他方の端部を下腿部20に取り付けるためにのみ設けられている。
【0058】
このような本実施形態に従う構造とされた角度センサ装置10によれば、第一,第二のセンサ部24,34と計測手段30とによって、大腿部18の重力加速度方向に対する角度と、膝関節22の角度とが、それぞれ計測される。しかも、大腿部18に取り付けられる第一の取付部14に計測手段30が集約配置されて、下腿部20に装着される第二の取付部16を軽量且つコンパクトな構造とすることができる。従って、角度センサ装置10は、大腿部18に比して筋力が小さい下腿部20に重量を大きく分担させることなく装用可能とされており、装用者の体感重量を低減できる。しかも、計測手段30の配設によって拘束される領域を狭くできると共に、装用のし易さも向上し得る。
【0059】
また、第一のセンサ部24が三軸のジャイロセンサ26と加速度センサ28を組み合わせて構成されており、自由度の大きな大腿部18の角度を三次元で計測することができることから、大腿部18の姿勢、換言すれば股関節の角度を、より正確に計測することができる。しかも、ジャイロセンサ26および加速度センサ28は、股関節を跨いで胴部と大腿部18に取り付ける必要がなく、大腿部18に集約的に配することが可能であり、角度センサ装置10の脚部12への装用の容易化や、角度センサ装置10の小型化とそれに伴う脚部12への装用範囲の最小化などが実現されると共に、歩行時等に装用者の手が第一のセンサ部24に当たるのを防ぐこともできる。加えて、MEMSセンサであるジャイロセンサ26と加速度センサ28は、演算装置32と同じ基板上に実装可能であり、より集約された態様で第一の取付部14に配することができる。
【0060】
さらに、第二のセンサ部34が柔軟な曲げセンサ36で構成されており、一自由度の屈伸を許容される膝関節22の角度を十分な精度で計測することができる。しかも、第二の取付部16にジャイロセンサや加速度センサを配する場合に比して、下腿部20に基板や電源などを配する必要がなく、下腿部20への装着部分の軽量化や小型化が図られる。
【0061】
以上のように、ジャイロセンサ26と加速度センサ28で構成された第一のセンサ部24と、曲げセンサ36で構成された第二のセンサ部34とを、適切に組み合わせて採用することにより、小型化や軽量化を実現しながら、股関節および膝関節22の可動範囲に応じたセンシングが実現されて、大腿部18および下腿部20の角度を高度に計測することができる。
【0062】
また、脚部12に装着される角度センサ装置10によって計測される大腿部18の鉛直方向に対する角度および膝関節22の角度に基づいて、例えば、装用者の歩行動作の周期と、歩行動作の段階(遊脚期や立脚期など)と、歩行速度と、歩幅との少なくとも一つを把握できるようになっている。これにより、装用者の歩行動作に関する情報を、簡易な構造で着脱容易な角度センサ装置10によって、簡単に得ることができる。なお、歩行速度(v)は、方向余弦行列(DCM)と加速度センサ28の検出する加速度(α)とによって、[数5]で算出される。
【0064】
さらに、角度センサ装置10は、それ単体で装用されて、上記の如き歩行動作情報の収集と分析などに用いられ得る一方、特開2012−192013号公報に示された関節運動補助具などと組み合わせて採用されることにより、脚部や腕部に及ぼされる補助力の制御などにも用いられ得る。また、関節運動補助具と組み合わせて採用される場合には、第一の取付部14や第二の取付部16は、関節運動補助具で構成され得る。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、計測手段30の具体的な構成は、前記実施形態の記載によって限定的に解釈されるものではない。例えば、計測手段30に無線通信装置を設けて、計測結果を外部の処理装置(パーソナルコンピュータなど)に無線で送信できるようにしても良い。
【0066】
また、第一のセンサ部24の構成は、あくまでも例示であって、例えば、ジャイロセンサ26を補助する補助センサとして、加速度センサ28に加えて或いは代えて地磁気センサを採用することもできる。更に、膝関節22の角度を検出する第二のセンサ部34としては、曲げセンサ36単体で構成されるものに必ずしも限定されず、他のセンサと組み合わせることで検出精度の向上などを図ることもできる。
【0067】
さらに、加速度センサ28などの補助センサを設けるのに代えて或いは加えて、ジャイロセンサ26の出力を基準位置で初期化するスイッチなどの原点出し手段を設けても良い。この場合、ジャイロセンサ26の出力の初期化後は、ジャイロセンサ26が出力する角速度を積分して位置(角度)を求めることも可能である。
【0068】
また、第二のセンサ部34を構成する曲げセンサ36は、前記実施形態に示された静電容量型の柔軟センサには限定されない。即ち、米国特許第5,086,785号公報に記載された角度センサや、光ファイバーを用いたゴニオメータ(例えば、バイオメトリクス社製のゴニオメータ)など、曲げ変形によって関節部の角度を計測可能な各種公知のセンサが採用可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、本発明に係る角度センサ装置10を脚部12に適用した例を示したが、腕部に適用することも可能である。即ち、上腕部を第一肢部とすると共に、前腕部を第二肢部とし、それら上腕部と前腕部を繋ぐ肘関節を関節部として、前記実施形態と同様の角度センサ装置10を装着せしめることにより、上腕の角度と肘関節の角度とを計測することができる。なお、第一の取付部14を下腿部20又は前腕部に取り付けると共に、第二の取付部16を大腿部18又は上腕部に取り付けても良い。
【0070】
また、第一の取付部14と第二の取付部16の具体的な構造は、特に限定されるものではなく、第一肢部と第二肢部に装着可能とされていれば良い。具体的には、例えば、第一肢部や第二肢部を覆う着衣などに面ファスナやスナップなどによって取り付けられるようになっていても良く、必ずしも外挿状態で装着される必要はない。
【0071】
前記実施形態では、第一のセンサ部24および計測手段30と第二のセンサ部34が、何れも脚部12の外側の側面に配されており、歩行動作などを妨げ難くされているが、動作に問題が生じなければ、肢部の前面や背面、内側の側面などに配しても良い。