(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は車両用シートSの斜視図であり、
図2はクリップ部材5が取り付けられたシートパッド3の平面図であり、
図3は
図2のIII−III線におけるシートパッド3の断面図であり、
図4はシートパッド3に一部が埋設されるクリップ部材5の側面図である。
【0016】
図1に示すように車両用シートSは、乗員が腰掛けるクッションパッド1と、乗員の背中を支えるバックパッド2とを備えている。クッションパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂から構成されるシートパッド3(
図3参照)と、シートパッド3の上面側の被装着面3aに被せられるシートカバー4と、シートカバー4をシートパッド3に取り付けるクリップ部材5とを備えている。なお、図示は省略するが、バックパッド2もクッションパッド1とほぼ同様に構成されている。
【0017】
図2に示すように、シートパッド3の被装着面3a(
図3参照)には溝部6が形成されている。本実施の形態では、溝部6は、シートパッド3の左右両側の土手部に沿ってそれぞれ前後方向に延在する2本の前後方向溝部6aと、左右方向に延在する2本の左右方向溝部6bとを備え、左右方向溝部6bは両端が前後方向溝部6aに連通する。前後方向溝部6a及び左右方向溝部6bは、それぞれ前後方向溝部6a及び左右方向溝部6b(溝部6)の長手方向に沿って互いに所定の間隔をあけてクリップ部材5(埋設部材)が取り付けられている。なお、溝部6の配置はこれに限定されない。
【0018】
図3に示すようにシートパッド3の被装着面3aに形成された溝部6は、所定の深さを有している。溝部6は、シートカバー4の一部を収容するための部位である。シートカバー4のうち溝部6に沿う部分には、その部分を溝部6内に引き込んで係止するための係止具7が裏面に取り付けられている。係止具7は、シートカバー4に縫着または接着等により接続された接続部8と、接続部8からシートカバー4の裏面側に延出したフック部9とを備えている。フック部9の先端側には、互いに反対方向に張り出した一対の係合部10が設けられている。係合部10は、フック部9の基端側ほどフック部9からの張り出し幅が大きくなるテーパ形状に形成されている。
【0019】
係止具7は、溝部6の延在方向と略平行方向に連続して延在する。即ち、フック部9の基端側は溝部6の延在方向と略平行方向に延在する垂壁状に形成されており、その一方の側面および他方の側面の先端縁に沿ってそれぞれ係合部10が連続して形成されている。
【0020】
クリップ部材5は、係止具7を係止することで溝部6内にシートカバー4の一部を吊り込み状態で保持するための部材である。クリップ部材5は、シートパッド3に埋設される埋設部11と、埋設部11から突設されると共に溝部6内に延在する一対の延出片12(係止部の一部)と、一対の延出片12のそれぞれ先端側から互いに接近する方向に突設される爪部13(係止部の一部)と、一対の延出片12のそれぞれ先端側から互いに離反する方向に突設されるガイド片14とを備え、それらが弾性を有する合成樹脂または金属により一体に構成される。
【0021】
埋設部11は、クリップ部材5をシートパッド3の溝部6内に固定するための部位であり、略平板状に形成されると共に厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が形成されている。埋設部11は貫通孔(図示せず)が形成されているので、シートパッド3を構成する発泡合成樹脂が貫通孔内に入り込み、そのアンカー効果により埋設部11がシートパッド3に強固に保持される。
【0022】
延出片12は、埋設部11の一面側から突設される一対の薄板状の部位であり、所定の間隔をあけて対向し、延出片12間の間隔が、先端側の方が基部側より大きくなるように湾曲して形成される。延出片12は、薄板状に形成されることで互いに接近する方向および離反する方向に弾性変形可能に構成される。
【0023】
爪部13は、シートカバー4の裏面に設けられた係止具7の係合部10を係止するための部位であり、延出片12の長手方向(
図3紙面垂直方向)に亘って設けられている。爪部13の上面(
図3上側の面)は、爪部13の先端に向かうにつれて下位(溝部6の底側)となるように下降傾斜している。また、爪部13の下面(埋設部11側の面)は、爪部13の基部(延出片12側)に近づくにつれて上位となるように(埋設部11から離れるように)上昇傾斜している。
【0024】
ガイド片14は、係止具7の係合部10を爪部13間に挿入するときにガイドとして機能する部位であり、延出片12の長手方向(
図3紙面垂直方向)に亘って設けられている。ガイド片14は、互いに対向する延出片12の先端側から離反する方向に突設されている。ガイド片14が設けられているので、係止具7をクリップ部材5に取り付けるときに、フック部9が延出片12と溝部6の内壁との間に入り込んでしまって係合部10と爪部13とをスムーズに係合できなくなる不具合を防止できる。
【0025】
ガイド片14は、上面(
図3上側の面)が略水平となるように形成され、ガイド片14の下面(埋設部11側の面)は、ガイド片14の基部(延出片12側)から先端に向かうにつれて上位となるように(埋設部11から離れるように)上昇傾斜している。
図4に示すようにクリップ部材5の延出片12及びガイド片14は、側縁12a,14aが、埋設部11から離れるほど長手方向(
図4左右方向)の長さが小さくなるテーパ形状に形成されている。また、ガイド片14の延出片12からの突出長(張出長さ)は、爪部13の延出片12からの突出長(張出長さ)より小さく設定されている。
【0026】
次に
図5及び
図6を参照して、シートパッド3を発泡成形するための成形型20について説明する。
図5は本発明の第1実施の形態におけるシートパッド3の成形型20の平面図であり、
図6は成形面形成部材30の斜視図である。なお
図5では、成形型20のうちシートパッド3の被装着面3aが形成される下型を図示し、その下型との間でキャビティを形成する上型の図示は省略する。
【0027】
図5に示すように、成形型20は、シートパッド3の被装着面3aの成形面21a(図
7参照)を構成する型底部21と、型底部21の外周縁に亘って立設される型壁部22と、型底部21の複数箇所(本実施の形態では4箇所)に凸起状に立設される凸部23と、凸部23によって位置決めされる成形面形成部材30とを備えて構成される。本実施の形態では、成形面形成部材30は、シートパッド3の溝部6の深さ方向の少なくとも一部を成形するための部材である。
【0028】
図5及び
図6に示すように成形面形成部材30は、型底部21に対して突条状に形成されると共に平面視して梯子状に形成される突条部31と、突条部31の長手方向に所定の間隔をあけて複数箇所に凹設されると共にクリップ固定治具40が収容される収容部32とを備えている。本実施の形態では、成形面形成部材30はアルミニウム製であり、突条部31が一体に形成されている。収容部32に収容されたクリップ固定治具40は、ビス等によって突条部31に固着される。
【0029】
次に
図7を参照して成形面形成部材30について説明する。
図7は
図5のVII−VII線における成形型20の断面図である。成形面形成部材30は、突条部31の底部に凹部33が凹設される。凹部33は、突条部31の長手方向(
図7紙面垂直方向)に所定の間隔をあけて複数箇所に形成されており、鉄等の磁性体製の磁性部材34が凹部33に挿着される。凹部33に磁性部材34が挿着された突条部31の底面31aは、磁性部材34と面一な略平面状に形成される。
【0030】
成形型20は、型底部21に隆起して載置部24が設けられる。載置部24は、突条部31が載置される部位であり、突条部31の底部が載置部24の上面(当接面24a)に当接される。載置部24は、載置部24の上端面である当接面24aが、突条部31の底面31aに密接するように平面状に形成される。載置部24の短手方向(
図7左右方向)の側面は、突条部31の短手方向の側面と滑らかに連なるように湾曲面状に形成される。
【0031】
載置部24は、突条部31の凹部33に挿着された磁性部材34に対応する位置に、孔部24bが凹設される。孔部24bは、載置部24の長手方向(
図7紙面垂直方向)に所定の間隔をあけて複数箇所に形成されており、電磁石のコア(磁心)25が挿着される。コア25は、突条部31に設けられた磁性部材34を磁力によって吸着することで、成形面形成部材30を載置部24に固定するための強磁性体である。なお、
図7では、コア25に巻回されるコイル等の図示は省略する。電磁石のスイッチ(図示せず)をオンしてコイルに電流を流すことで磁性部材34がコア25に吸着され、載置部24に成形面形成部材30が固定される。一方、スイッチをオフしてコイルへ電流を流さないようにすることで、磁性部材34がコア25から脱離する。
【0032】
図5に戻って、型底部21に対する成形面形成部材30の位置決め手段について説明する。成形型20は、型底部21の4箇所に凸部23が凸起状に立設される。凸部23は、成形面形成部材30の突条部31の長手方向端部が当接される第1面23a、第2面23b及び第3面23cを備えている。第1面23a、第2面23b及び第3面23cは、いずれも型底部21に対して略垂直に立設される面であり、第1面23a及び第3面23cは、それぞれ成形型20の前後方向(
図5上下方向)に互いに対向する。
【0033】
互いに対向する第1面23aの間隔(前後方向の距離)は、成形型20の左右方向(
図5左右方向)右側に向かうにつれて漸次小さくなるように設定される。同様に、互いに対向する第3面23cの間隔(前後方向の距離)は、成形型20の左右方向(
図5左右方向)右側に向かうにつれて漸次小さくなるように設定される。また、前後方向(
図5上下方向)に対向する第3面23cの間隔は、前後方向に対向する第1面23aの間隔より小さくなるように設定されている。第2面23bは、第1面23a及び第3面23cに連接されると共に、成形型20の前後方向に延設される面である。
【0034】
成形面形成部材30は、突条部31の前後方向に第1端面31
b、第2端面31
c及び第3端面31
dが形成されている。成形面形成部材30の第1端面31
b、第2端面31
c及び第3端面31
dは、成形型20の型底部21に突設された第1面23a、第2面23b及び第3面23cにそれぞれ密接される面である。第1端面31
b及び第3端面31
dがそれぞれ第1面23a及び第3面23cに密接されることで、主に第1面23a及び第3面23cに対する成形面形成部材30の前後方向の移動が規制され、第2端面
31cが第2面23bに密接されることで、第2面23bに対する成形面形成部材30の右方向の移動が規制される。これにより、成形型20の型底部21に対して成形面形成部材30が位置決めされる。成形型20の型底部21に対して成形面形成部材30を位置決めした後、電磁石のスイッチ(図示せず)をオンすることで磁性部材34がコア25に吸着され、載置部24に成形面形成部材30が固定される。
【0035】
次に
図8から
図10を参照してクリップ固定治具40について説明する。まず、
図8及び
図9を参照してクリップ固定治具40の構成について説明する。
図8(a)はクリップ固定治具40の平面図であり、
図8(b)はクリップ固定治具40の側面図であり、
図9(a)は
図8(a)のIXa−IXa線におけるクリップ固定治具の断面図であり、
図9(b)は
図8(b)のIXb−IXb線におけるクリップ固定治具40の断面図である。
【0036】
図8(a)及び
図8(b)に示すようにクリップ固定治具40は側面視して横長の略直方体状に形成される部材である。本実施の形態では、クリップ固定治具40は鉄鋼材料から一体に構成されている。
図8(a)から
図9(b)に示すように、クリップ固定治具40は、底部41と、底部41の外縁の全周に亘って立設される壁部42,43とを備え、壁部42,43の底部41側に係合孔部44が形成される。
【0037】
底部41は、壁部42,43を連結してクリップ固定治具40の機械的強度を確保するための部位であり、平面視して矩形の盤状に形成される。壁部42は、底部41の長辺側の一対の外縁に立設される部位であり、互いに対向する壁部42の内壁面42a(
図9(b)参照)は、壁部42の上端から底部41に向かうにつれて狭くなるように傾斜している。壁部42は、クリップ固定治具40が収容部32に収容される場合に、突条部31の長手方向に沿って配置される部位である。
【0038】
壁部43は、底部41の短辺側の一対の外縁に立設される部位であり、互いに対向する壁部43の内壁面43a(
図9(a)参照)は、壁部43の上端から底部41に向かうにつれて狭くなるように傾斜している。壁部43は、壁部42と比較して肉厚に形成されており、厚さ方向(
図8(a)紙面垂直方向)に貫通する孔部43bが形成されている。孔部43bは、雌ねじが内面に螺刻されている。孔部43bに螺着された皿ボルト(図示せず)が突条部31に締結されることにより、収容部32(
図5参照)に収容されたクリップ固定治具40が突条部31に固着される。壁部42,43により囲まれることで底部41の上方に、クリップ部材5の延出片12が収容される収容空間SPが形成される。
【0039】
係合孔部44は、壁部42,43の底部41側に形成される長孔であり、壁部42の長手方向(
図8(a)左右方向)に亘って壁部42の厚さ方向(
図8(a)上下方向)に貫通形成されると共に、壁部43の内壁面43aの幅方向両側から壁部43の厚さ方向(
図8(a)左右方向)に向かって切り込まれている。
図9(b)に示すように、壁部42の
内壁面42aと外面とに亘って貫通形成された係合孔部44の上縁は、壁部42の外面から内壁面42aに向かうほど上位となるように形成される。なお、係合孔部44の長さ(
図8(a)左右方向寸法)は、ガイド片14(
図4参照)の長さ(
図4左右方向寸法)より大きく設定されている。
【0040】
凹欠部45は、壁部42の底部41側の外面側が凹欠された部位である。凹欠部45は、側面視して横長の矩形状に形成されており、上縁が係合孔部44の上縁と同一とされ、左右の縁部が係合孔部44の両端の外側に位置する。凹欠部45が形成されているので、壁部42を肉薄にすることができ、壁部42に係合孔部44を容易に貫通形成できる。
【0041】
次に
図10を参照してクリップ部材5が固定されたクリップ固定治具40について説明する。
図10は互いに固着されたクリップ固定治具40及びクリップ部材5の断面図である。なお、
図10は成形型20(
図5参照)に装着された突条部31の長手方向と直交する方向の断面図である。クリップ固定治具40は、突条部31に凹設された収容部32に底部41を下にして収容される。収容部32に収容されたクリップ固定治具40の壁部42の上端側の外面は、突条部31の側面と略面一に設定される。突条部31が、壁部42に対して大きなアンダーカットとなることを防ぎ、発泡成形されたシートパッド3の脱型性を確保するためである。
【0042】
図10に示すようにクリップ固定治具40は、互いに対向する内壁面42a間の間隔が、壁部42の上端側では、ガイド片14の先端同士を結んだ幅(
図10左右方向寸法)より広く設定されている。そのため、壁部42,43の内側にクリップ部材5の延出片12を挿入すると、壁部42の上端側では内壁面42aにガイド片14を接触させないようにできる。また、互いに対向する内壁面43a(
図9(a)参照)間の間隔が、壁部43の上端側では、延出片12の先端側の長さ(
図4左右方向寸法)より小さく設定されている。さらに、互いに対向する内壁面42a,43a間は、壁部42,43の上端から底部41に向かうにつれてそれぞれ間隔が狭くなるように傾斜しているので、クリップ固定治具40とクリップ部材5との干渉を防ぎ、壁部42,43の内側(収容空間SP)にクリップ部材5の延出片12を挿入し易くできる。
【0043】
内壁面42a間の間隔は、壁部42の底部41側では、ガイド片14の先端同士を結んだ幅(
図10左右方向寸法)より狭く設定されている。延出片12は互いに接近する方向および離反する方向に弾性変形可能に構成されているので、ガイド片14が底部41に近づくにつれて内壁面42aにガイド片14の先端が押され、延出片12は互いに接近する方向に弾性変形する。これにより、内壁面42aの対向方向(
図10左右方向)に対してクリップ部材5の延出片12の移動が制限されるので、壁部42間(突条部31(
図5参照)の幅方向)に対してクリップ部材5を位置決めできる。
【0044】
また、内壁面43a(
図9(a)参照)間の間隔は、壁部43の底部41側では、延出片12及びガイド片14の先端側の長さと略同一に設定されている。これにより、内壁面43aの対向方向(
図10紙面垂直方向)に対してクリップ部材5の延出片12の移動が制限されるので、壁部43間(突条部31(
図5参照)の長手方向)に対してクリップ部材5を位置決めできる。
【0045】
クリップ固定治具40に挿入されたクリップ部材5のガイド片14が、壁部42に形成された係合孔部44の位置に到達すると、互いに接近する方向に弾性変形された延出片12が互いに離反する方向に復元され、係合孔部44にガイド片14が挿入され係合される。このときに壁部42,43の上端縁の全周が、クリップ部材5の埋設部11に当接する。その結果、クリップ固定治具40の高さ方向(
図10上下方向)に対するクリップ部材5の移動が制限される。よって、クリップ固定治具40の高さ方向に対してクリップ部材5を位置決めできる。
【0046】
以上のように、クリップ固定治具40の収容空間SPにクリップ部材5の延出片12を挿入するだけで、クリップ部材5をクリップ固定治具40に対して水平方向および高さ方向に位置決めできる。壁部42,43と延出片12とのクリアランスが大きいので、クリップ固定治具40の収容空間SPにクリップ部材5の延出片12を挿入する作業は非常に容易である。よって、成形面形成部材30へクリップ部材5を固定する作業性を向上できる。
【0047】
なお、成形面形成部材30へクリップ部材5を固定する作業は、成形型20によってシートパッド3を発泡成形する前に、成形面形成部材30を成形型20から取り外した状態で行われる。成形面形成部材30にクリップ部材5を固定する工程(クリップ部材固定工程)のスピードは、成形型20によってシートパッド3を発泡成形する工程(発泡成形工程)のスピードと比較して遅いので、シートパッド3を発泡成形する前に、予めクリップ部材5を固定した成形面形成部材30を多数準備しておく。クリップ部材5を固定した成形面形成部材30を成形型20に装着する工程(部材装着工程)のスピードは、シートパッド3の発泡成形のスピードより速いので、クリップ部材5を固定した成形面形成部材30を準備できれば、シートパッド3の発泡成形に合わせて設定されたライン速度を維持できる。
【0048】
成形面形成部材30へクリップ部材5を固定する場合には、まず、電磁石のスイッチ(図示せず)をオフした状態で、凸部23を基準にして成形面形成部材30の位置決めを行い、成形型20の載置部24に成形面形成部材30を載置する。次いで、電磁石のスイッチをオンして、磁性部材34をコア25に吸着させ、載置部24に成形面形成部材30を固定する。この状態でシートパッド3(
図3参照)が発泡成形される。クリップ部材5は、クリップ固定治具40に対して水平方向および垂直方向に位置決めされているので、発泡合成樹脂材料が発泡するときにクリップ部材5が移動してしまうことを防止できる。その結果、定められた位置にクリップ部材5の一部(埋設部11)を埋設できる。
【0049】
また、壁部42,43の上端縁の全周が、クリップ部材5の埋設部11に当接するので、シートパッド3の発泡成形時に、発泡成形体の一部がクリップ固定治具40の収容空間SP内に進入してしまうことを防止できる。発泡成形体の一部がクリップ固定治具40の収容空間SP内に進入して延出片12や爪部13に付着すると、シートカバー4(
図3参照)の裏面に設けられた係止具7を爪部13に係止する作業(シートパッド3にシートカバー4を装着する作業)が困難になる場合がある。これを防止できるので、シートパッド3にシートカバー4を装着する作業性を確保できる。
【0050】
発泡成形によってクリップ部材5が埋設されたシートパッド3を成形型20から脱型するときも、電磁石のスイッチはオンに維持して、載置部24に成形面形成部材30が吸着された状態を維持する。成形型20からシートパッド3を脱型すると同時に、成形面形成部材30(クリップ固定治具40)とクリップ部材5とを分離するためである(取外し工程)。
【0051】
シートパッド3を成形型20から脱型するときには、クリップ固定治具40に対してクリップ部材5が上方(
図10上側)に向かって移動される。そうすると係合孔部44に係合したガイド片14は、係合孔部44の上縁に押されて弾性変形しながら延出片12の先端を支点にして回動する。その結果、ガイド片14が係合孔部44から離脱して、クリップ固定治具40とクリップ部材5とが分離される。
【0052】
なお、壁部42の
内壁面42aと外面とに亘って貫通形成された係合孔部44の上縁は、壁部42の外面から内壁面42aに向かうほど上位となるように傾斜しているので、係合孔部44に係合したガイド片14を比較的小さい力で離脱させることができる。その結果、クリップ部材5が埋設された部位でシートパッド3が破損することを防止できる。
【0053】
さらに、ガイド片14は、下面(埋設部11側の面)が、ガイド片14の基部(延出片12側)から先端に向かうにつれて埋設部11から離れるように傾斜している。そのため、クリップ固定治具40に対してクリップ部材5が上方(
図10上側)に向かって移動されるときに、係合孔部44に係合したガイド片14を離脱させ易くできる。
【0054】
また、ガイド片14の延出片12からの突出長(張出長さ)が、爪部13の延出片12からの突出長(張出長さ)より小さく設定されているので、ガイド片14の突出長が爪部13の突出長より大きい場合と比較して、係合孔部44からガイド片14を離脱させるときに、延出
片12の先端を中心とするガイド片14の回動量を小さくできる。これにより、発泡成形されたシートパッド3を成形型20から脱型するときに、係合孔部44からガイド片14を離脱させ易くできる。
【0055】
シートパッド3の脱型と同時にクリップ部材5をクリップ固定治具40から離脱させた後、電磁石のスイッチをオフして、載置部24に埋設されたコア25による成形面形成部材30に埋設された磁性部材34の吸着を解除する(固定力低下工程)。これにより、成形面形成部材30を載置部24から軽微な力で取り外すことができる(取外し工程)。載置部24から取り外された成形面形成部材30は、再びクリップ部材5が固定され(クリップ部材固定工程)、シートパッド3の発泡成形のために繰り返し使用される。
【0056】
なお、発泡成形されたシートパッド3の溝部6の内壁面には、載置部24の当接面24aに突条部31の底面31aが接触する境界に対応したスジが、溝部6の長手方向に亘って形成される。しかし、このスジは微細な凹凸なので、シートパッド3の品質に影響を与えない。
【0057】
次に
図11から
図15を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、成形面形成部材30が梯子状に一体形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、成形面形成部材60が分割して構成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図
11は第2実施の形態における成形型50の平面図である。
【0058】
図11に示すように、成形型50は、型底部21の複数箇所(本実施の形態では4箇所)に凸起状に立設される凸部23,51と、凸部23,51によって位置決めされる成形面形成部材60とを備えて構成される。成形面形成部材60は、長手方向の両端部が凸部23,51にそれぞれ係合して位置決めされる一対の縦突条部61と、一方の縦突条部61の短手方向(
図11左右方向)側面の2箇所から他方の縦突条部61に向かって突設される突設部62と、長手方向の両端部が突設部62に係合して位置決めされる一対の横突条部64とを備えている。成形面形成部材60は、直線状に形成される縦突条部61及び横突条部64の組み合わせにより、全体として梯子状に形成される。
【0059】
クリップ固定治具70が収容される収容部63,65は、それぞれ縦突条部61及び横突条部64の長手方向に所定の間隔をあけて複数箇所に凹設される。本実施の形態では、成形面形成部材60は合成樹脂製であり、収容部63,65に収容されたクリップ固定治具70は、ビス等によって縦突条部61及び横突条部64に固着される。
【0060】
次に
図12を参照して成形面形成部材60について説明する。
図12は
図11のXII−XII線における成形型50の断面図である。なお、横突条部64は縦突条部61と同様に構成されているので、
図12では縦突条部61について説明し、横突条部64の説明は省略する。
【0061】
図12に示すように成形型50は、成形面形成部材60が載置される載置部24の短手方向(
図12左右方向)両側が、載置部24の長手方向(
図12紙面垂直方向)に亘り上方(
図12上側)に向かって突条状に凸起する凸起部26を有している。一方、縦突条部61は、凸起部26を受け入れる凹陥部61aが短手方向側面に凹設されている。縦突条部61が載置部24に載置されると、凸起部26の上端面26aは、縦突条部61に凹設された凹陥部61aの上端面に密接される。第1実施の形態と同様に、載置部24に設けられたコア25により磁性部材34が吸着されることで、縦突条部61は載置部24に固定される。
【0062】
シートパッド3を発泡成形するときには、コア25及び磁性部材34によって載置部24に縦突条部61を吸着した後、発泡合成樹脂材料(液状原料)を成形型50(下型)に注入する。成形型50(下型)に上型(図示せず)を被せて型閉じした後、発泡合成樹脂材料を発泡させる。凸起部26は、載置部24の長手方向に亘って短手方向両側が突条状に凸起するので、凸起した分だけ型
底部21(成形面21a)から離れた位置で成形面形成部材60に凸起部26の上端面26aを当接させることができる。成形面形成部材60に当接する凸起部26の位置が型
底部21から離れるにつれて、シートパッド3が発泡成形されるときの発泡合成樹脂材料(液状原料)の粘性が高くなるので、凹陥部61aと凸起部26の上端面26aとの隙間に発泡合成樹脂材料を浸入させ難くできる。その結果、第1実施の形態における成形型20と比較して、シートパッド3の溝部6にバリを生じ難くできる。
【0063】
次に
図13及び
図14を参照して、成形面形成部材60に取り付けられるクリップ固定治具70及びクリップ部材80について説明する。
図13(a)はクリップ固定治具70の平面図であり、
図13(b)はクリップ固定治具70の側面図であり、
図13(c)は
図13(b)のXIIIc−XIIIc線におけるクリップ固定治具70の断面図であり、
図14はクリップ部材80の断面図である。
図14に示すようにクリップ部材80は、ガイド片14(
図3参照)が省略されている以外は、第1実施の形態で説明したクリップ部材5と同一の構成を有している。
【0064】
図13(a)から
図13(c)に示すように、クリップ固定治具70は側面視して横長の略直方体状に形成される部材であり、底部41と、底部41の外縁の全周に亘って立設される壁部42,43と、底部41に立設される立設部71とを備えている。立設部71は、壁部42,43と所定の間隔をあけて壁部42と平行となるように底部41の中央に立設される突条状の部位であり、壁部42と対向する対向方向の厚さが先端側ほど小さくなるテーパ状に形成されている。立設部71には、壁部42と対向する両側面に、爪部13と係合する係合凹部72が形成される。係合凹部72は、立設部71の両側面の高さ方向の略中間位置に凹設される。
【0065】
次に
図15を参照してクリップ部材80が固定されたクリップ固定治具70について説明する。
図15は互いに固着されたクリップ固定治具70及びクリップ部材80の断面図である。なお、クリップ固定治具70が固着される成形型の図示は省略する。
【0066】
図15に示すように、成形型(図示せず)に装着されたクリップ固定治具70にクリップ部材80を固定するために、クリップ固定治具70の収容空間SPにクリップ部材80の延出片12を挿入する。収容空間SPにクリップ部材80の延出片12が挿入されると、立設部71が爪部13間に挿入される。爪部13が係合凹部72の位置に到達すると、延出片12の弾性変形により爪部13が係合凹部72に係合する。このときに壁部42,43の上端縁の全周が、クリップ部材80の埋設部11に当接する。その結果、クリップ固定治具70の高さ方向(
図15上下方向)に対するクリップ部材80の移動が制限される。
【0067】
一方、クリップ固定治具70の壁
部42の対向方向(
図15左右方向)に対するクリップ部材80の移動は、弾性変形する延出片12間に立設部71が挟入されることにより制限される。また、クリップ固定治具70の壁
部43の対向方向(
図13(a)左右方向)に対するクリップ部材80の移動は、壁
部43間の底部41側の寸法と延出片12の寸法とのクリアランスにより制限される。よって、クリップ固定治具70の水平方向および高さ方向に対してクリップ部材80を位置決めできる。
【0068】
以上のように、クリップ固定治具70の収容空間SPにクリップ部材80の延出片12を挿入するだけで、クリップ部材80をクリップ固定治具70に対して水平方向および高さ方向に位置決めできる。壁部42,43と延出片12とのクリアランスが大きいので、クリップ固定治具70の収容空間SPにクリップ部材80の延出片12を挿入する作業は非常に容易である。よって、クリップ部材80の固定作業の作業性を向上できる。
【0069】
また、成形面形成部材60は縦突条部61及び横突条部64に分割されているので、第1実施の形態における成形面形成部材30と比較して、汎用性を向上できる。縦突条部61及び横突条部64によって成形面形成部材60が構成されているので、形状や寸法、固着されたクリップ固定治具70の数等の異なる縦突条部および横突条部を組み合わせることで、異なる成形面形成部材を組み立てられるからである。
【0070】
なお、第2実施の形態では縦突条部61及び横突条部64に成形面形成部材60が分割されているので、成形型50に成形面形成部材60を装着する動作は、第1実施の形態と比較して増加する。しかし、予め縦突条部61及び横突条部64にクリップ部材80を取り付けておくので、シートパッド3の発泡成形前にクリップ部材80を成形型50に直接取り付ける場合と比較して、成形型50へクリップ部材80を取り付ける時間を大幅に短縮できる。その結果、第1実施の形態と同様に、発泡成形のスピードに合わせて設定されたライン速度を無理なく維持できる。
【0071】
次に
図16を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、成形面形成部材30,60の突条部31及び縦突条部61が、短手方向(
図7及び
図12左右方向)に亘って載置部24に密接される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、載置部24の短手方向(
図16左右方向)両側に突設される凸起部27は突条部31に当接するが、載置部24の短手方向内側と突条部31との間に隙間が設けられる場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明したものと同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図16は第3実施の形態における成形型90の断面図(突条部31の短手方向)である。
【0072】
図16に示すように成形型90は、成形面形成部材30が載置される載置部24の短手方向(
図16左右方向)両側が、載置部24の長手方向(
図16紙面垂直方向)に亘り上方(
図16上側)に向かって突条状に凸起する凸起部27を有している。載置部24の短手方向内側であって凸起部27間に、凸起部27の上端面27aより底面の位置が低く設定された凹溝28が、載置部24の長手方向(
図16紙面垂直方向)に亘って形成される。凹溝28は、突条部31の凹部33に挿着された磁性部材34に対応する位置に、孔部28aが凹設される。孔部28aは、凹溝28の長手方向(
図16紙面垂直方向)に所定の間隔をあけて複数箇所に形成されており、電磁石のコア(磁心)25が挿着される。
【0073】
シートパッド3を発泡成形するときには、載置部24に成形面形成部材30を載置した後、コア25及び磁性部材34によって載置部24に突条部31を吸着する。載置部24は凸起部27及び凹溝28が形成されているので、突条部31の底面31aに凸起部27の上端面27aは当接するが、凹溝28と底面31aとは隙間が形成される。次いで、発泡合成樹脂材料(液状原料)を成形型90(下型)に注入する。成形型90(下型)に上型(図示せず)を被せて型閉じした後、発泡合成樹脂材料を発泡させる。凸起部27の上端面27aが底面31aに接触するので、第1実施の形態と比較して、載置部24側が底面31aに接触する面積を小さくできる。その結果、同じ磁力であれば第1実施の形態と比較して、凸起部27によって底面31aに作用する面圧を大きくできるので、底面31aと凸起部27の上端面27aとの隙間に発泡合成樹脂材料を浸入させ難くできる。その結果、第1実施の形態における成形型20と比較して、シートパッド3の溝部6にバリを生じ難くできる。
【0074】
また、発泡成形のときに生じたバリ等がシートパッド3から離脱し、欠片として載置部24に落下して、仮に、凸起部27の上端面27aと突条部31の底面31aとの間に挟まった場合には、その欠片の厚みの分だけ上端面27aと底面31aとの間に隙間が生じる。その隙間に発泡合成樹脂材料が浸入すると、発泡成形されたシートパッドにバリが生じる。これに対し本実施の形態では、載置部24に凹溝28が凹設されているので、載置部24に落下した欠片が凹溝28に入る可能性がある。そのため、凹溝28を有しない場合と比較して、凸起部27の上端面27aと突条部31の底面31aとの間に欠片が挟まる可能性を小さくすることができる。これにより、凸起部27の上端面27aと突条部31の底面31aとの間に欠片が挟まることによりバリが生じる可能性を小さくできる。
【0075】
また、載置部24の短手方向(
図16左右方向)において、凸起部27の長さ(左右の凸起部27の合計長さ)は凹溝28の長さより小さく設定されている。即ち、凸起部27の上端面27aが底面31aに当接する面積は、平面視における凹溝28の面積より小さく設定される。これにより、凸起部27の長さ(左右の凸起部27の合計長さ)が凹溝28の長さより大きく設定される場合と比較して、上端面27aの面積を小さくできるので、上端面27aと底面31aとの間に欠片が挟まる可能性を小さくできる。その結果、凸起部27の上端面27aと突条部31の底面31aとの間に欠片が挟まることによるバリを生じ難くできる。
【0076】
次に
図17を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、載置部24の当接面24aと突条部31の底面31aとがいずれも平面状に形成される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、一対の凸起部29が載置部24に突設される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図17は第4実施の形態における成形型100の断面図(突条部31の短手方向)である。
【0077】
図17に示すように成形型100は、載置部24の短手方向(
図17左右方向)外側に向かうにつれて上昇傾斜する傾斜面29aを有する一対の凸起部29が、載置部24に突設されている。凸起部29は、載置部24の長手方向(
図17紙面垂直方向)に亘って突条状に形成されている。一方、成形面形成部材110は、凸起部29の傾斜面29aに密接される傾斜面110aが形成されている。傾斜面110aは、突条部31の短手方向外側から短手方向内側に向かうにつれて下降傾斜する面として形成されている。
【0078】
シートパッド3を発泡成形するときには、コア25及び磁性部材34によって載置部24に突条部31を吸着した後、発泡合成樹脂材料(液状原料)を成形型100(下型)に注入する。成形型100(下型)に上型(図示せず)を被せて型閉じした後、発泡合成樹脂材料を発泡させる。凸起部29は、載置部24の短手方向外側に向かうにつれて上昇傾斜する傾斜面29aを有し、載置部24の長手方向に亘って突条状に凸起するので、上昇傾斜した分だけ、成形面21aから離れた位置で突条部31に凸起部29の短手方向外側縁部を当接させることができる。突条部31に当接する凸起部29の短手方向外側縁部の位置が成形面21aから離れるにつれて、シートパッド3が発泡成形されるときの発泡合成樹脂材料(液状原料)の粘性が高くなるので、傾斜面29aと傾斜面110aとの隙間に発泡合成樹脂材料を浸入させ難くできる。その結果、第1実施の形態における成形型20と比較して、シートパッド3の溝部6にバリを生じ難くできる。
【0079】
また、凸起部29は、載置部24の短手方向外側に向かうにつれて上昇傾斜する傾斜面29aが形成されており、突条部31は、突条部31の短手方向内側に向かうにつれて下降傾斜する傾斜面110aを有しているので、載置部24の凸起部29内の定位置に成形面形成部材110を装着させ易くできる。一対の凸起部29間に突条部31を案内できるからである。
【0080】
次に
図18及び
図19を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、複数のクリップ部材5,80を溝部6に埋設するための成形面形成部材30,60,110について説明した。これに対し第5実施の形態では、複数のスラブ132,133(埋設部材)をシートパッド3に埋設するための成形面形成部材130について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0081】
図18は第5実施の形態における成形型120の平面図であり、
図19は
図18のXIX−XIX線における成形型120の断面図である。なお、
図18では、成形型120のうちシートパッド3の被装着面3aが形成される下型を図示し、その下型との間でキャビティを形成する上型の図示は省略する。
【0082】
図18に示すように成形型120は、型底部21に突条部121が突設されている。突条部121は、シートパッド3に溝部6を形成するための部位である。突条部121は、型底部21の前後方向(
図18上下方向)に延びる2本の前後方向突条部122と、左右方向(
図18左右方向)に延びると共に両端が前後方向突条部122に連設される左右方向突条部123とを備えている。前後方向突条部122及び左右方向突条部123は、それぞれ複数箇所にクリップ固定治具40が取り付けられる。
【0083】
成形面形成部材130は、成形型120の成形面の一部を形成する部材であり、シートパッド3の複数箇所に埋設される複数(本実施の形態では4つ)のスラブ132,133が着脱可能に固定される。スラブ132,133は、圧縮特性が、シートパッド3を構成する軟質フォームとは異なる軟質フォームであり、直方体状に形成されている。本実施の形態では、成形面形成部材130はアルミニウム製の板状の部材であり、突条部131が一体に形成される。突条部131は、シートパッド3に溝部6を形成するための部位であり、クリップ固定治具40が取り付けられている。
【0084】
成形面形成部材130は、左右方向に位置する側縁130aが、型底部21に突設された2つの突条部122の内側面に密接され、前方に位置する端縁130bが、突条部123の後側面に密接される。また、成形面形成部材130は、後方に位置する端縁130cが、型底部21の成形面21aに密接される。
【0085】
図19に示すように型底部21は、2つの突条部122の内側に凹所21b(載置部)が凹設されている。成形面形成部材130は、側縁130a、端縁130bを突条部122,123に密接させつつ凹所21bに収装され、成形型120の成形面の一部を形成する。なお、成形面形成部材130は、磁力や減圧による吸引力等を利用して、凹所21b(載置部)に着脱可能に固定される。また、スラブ132,133は、成形面形成部材130に設けられた針等の刺衝部材(図示せず)によって、成形面形成部材130に着脱可能に固定される。
【0086】
第5実施の形態によれば、シートパッドを製造する場合には、まず、成形面形成部材130を成形型120から取り外した状態で、成形面形成部材130にスラブ132,133を固定する(埋設部材固定工程)。次いで、スラブ132,133が固定された成形面形成部材130を成形型120に取り付け、成形面形成部材130により成形面21aの一部を形成する(部材装着工程)。成形面形成部材130を成形型120に取り付けることで複数のスラブ132,133を成形型120に取り付けることができるので、成形型120に直接、複数のスラブ132,133を取り付ける場合と比較して、取り付け速度を向上できる。
【0087】
次に、成形型120によりシートパッド3を発泡成形して、シートパッド3にスラブ132,133を埋設する(発泡成形工程)。スラブ132,133はシートパッド3と一体化されるので、発泡成形されたシートパッド3の脱型と同時に、スラブ132,133は自然に成形面形成部材130から取り外される(取外し工程)。脱型後、成形面形成部材130を成形型120から取り外し、成形型120による成形ラインとは別に、成形面形成部材130にスラブ132,133を取り付ける。スラブ132,133を取り付けた成形面形成部材130を、シートパッド3の成形数に必要な数だけ予め準備しておけば、シートパッド3の発泡成形に合わせて設定されたライン速度を維持できる。
【0088】
次に
図20及び
図21を参照して第6実施の形態について説明する。第1実施から第5実施の形態では、シートパッド3の被装着面3a(表面)が形成される下型(成形型20,50,90,100,120)に、クリップ部材またはスラブ(埋設部材)が配置される場合について説明した。これに対し第6実施の形態では、下型141との間でキャビティを形成してシートパッドの裏面を形成する上型144に、ワイヤ151(埋設部材)が配置される場合について説明する。
図20は第6実施の形態における成形型140の平面図であり、
図21は
図20の矢印XXI方向視における成形面形成部材150の平面図である。なお、
図21では、成形面形成部材150の周囲に存在する上型144の図示を省略している。
【0089】
図
20に示すように成形型140は、下型141及び上型144を備えて構成されている。下型141は、上部が開口した略箱状の部材であり、シートパッド3の表側を成形する成形面142が形成されており、その周縁にパーティング面143が形成される。上型144は、下型141の成形面142を密閉可能な蓋状に形成される部材であり、シートパッド3の裏側を成形する成形面145の周縁に、下型141との合わせ面となるパーティング面146が形成される。
【0090】
上型144は、成形面145に凹設される載置部145aを有している。載置部145aは、成形面形成部材150が固定される部位である。載置部145aは、磁力や減圧等による吸引力を利用して成形面形成部材150を固定する。
【0091】
図21に示すように成形面形成部材150は、平面視が矩形状に形成されるアルミニウム製の板状の部材であり、複数のワイヤ151が固定される。ワイヤ151は、成形面形成部材150に埋設された磁石(図示せず)により、成形面形成部材150に着脱可能に固定される。
【0092】
成形型140を用いてシートパッドを成形するときには、まず、下型141に対して上型144を開いた状態で、上型144に形成された載置部145aに、複数のワイヤ151が固定された成形面形成部材150を取り付ける。次に、シートパッドの原料である発泡合成樹脂材料(液状原料)を下型141の成形面142に注入し、パーティング面143,146を合わせて型閉じした後、発泡させ成形する。所定の時間キュアした後、型開きして成形されたシートパッドを脱型する。その結果、成形面形成部材150に取り付けられていたワイヤ151が埋設されたシートパッドが得られる。ワイヤ151がシートパッドの裏面側に埋設されることで、シートパッドの剛性が調整される。
【0093】
第6実施の形態によれば、成形面形成部材150を成形型140から取り外した状態で、成形面形成部材150に複数のワイヤ151を固定し、その成形面形成部材150を成形型140に取り付けることで、複数のワイヤ151を成形型140に取り付けることができる。そのため、成形型140に直接、複数のワイヤ151を取り付ける場合と比較して、取り付け速度を向上できる。ワイヤ151を取り付けた成形面形成部材150を、シートパッドの成形数に必要な数だけ予め準備しておけば、シートパッドの発泡成形に合わせて設定されたライン速度を維持できる。
【0094】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた形状は一例であり、他の形状を採用することは当然可能である。
【0095】
上記各実施の形態では、クッションパッド1を構成するシートパッド3を成形する成形型20,50,90,100について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、バックパッド2を構成するシートパッドを成形する成形型に適用することは当然可能である。
【0096】
上記第1実施の形態から第5実施の形態では、クリップ固定治具40,70を成形面形成部材30,60と別部材にする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、クリップ固定治具40,70を成形面形成部材30,60,130と一体に形成することは当然可能である。この場合、クリップ固定治具40,70と一体に形成される成形面形成部材30,60,130は、クリップ部材5の着脱による摩耗や発錆を防ぐため、ステンレス鋼製とするのが好適である。
【0097】
なお、成形面形成部材30,60,130,150をアルミニウム製や合成樹脂製、ステンレス鋼製のものに限定するものではなく、可撓性を有するゴム状弾性体等により形成することは当然可能である。
【0098】
上記第1実施の形態では、クリップ固定治具40の底部41が盤状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。底部41は、壁部42,43と連結されることでクリップ固定治具40の機械的強度を確保する目的で設けられるので、機械的強度が若干低下しても良い場合には、底部41を環状にすることは当然可能である。底部41を環状にする場合には、壁部42,43の下端に底部が設けられる。この場合、ガイド片14は壁部42の下端に設けられた底部の下面に係合させることが可能である。また、第1実施の形態と同様に壁部42に係合孔部44を形成し、係合孔部44にガイド片14を係合させるようにすることは当然可能である。
【0099】
上記第2実施の形態では、係合凹部72が形成された立設部71が底部41に立設されるクリップ固定治具70について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、他のクリップ固定治具を採用することは当然可能である。他のクリップ固定治具としては、例えば、クリップ部材80の爪部13が係合される係合孔部が底部41に形成されるものが挙げられる。この場合、係合孔部は、互いに平行となるように底部41の2箇所に形成される長孔であり、長手方向を壁部42に沿わせて底部41の厚さ方向に貫通形成される。
【0100】
上記第1実施の形態から第4実施の形態では、成形型20,50,90,100の成形面21aから隆起した載置部24に成形面形成部材30,60,110が装着される場合について説明した。しかし、載置部24が成形面21aに対して隆起することは、必ずしも必要ではない。成形面形成部材30,60,110の高さを適宜設定することで、シートパッド3に形成される溝部6の深さとの関係で、載置部24の高さが必然的に定められるからである。
【0101】
上記第1実施の形態から第4実施の形態では、載置部24に装着される成形面形成部材30,60,110を電磁石の吸引力によって固定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものでなく、他の固定手段によって成形面形成部材30,60,110を載置部24に固定することは当然可能である。他の固定手段としては、永久磁石による磁力を利用する手段、減圧による吸引力を利用する手段、クランプによる締付力を利用する手段、成形型に設けられた掛止部に掛止する等の公知の種々の手段を用いることができる。
【0102】
上記第1実施の形態から第4実施の形態では、成形面形成部材30,60,110を電磁石の吸引力によって載置部24に固定する場合について説明した。そのため、電磁石のスイッチを切り換えることによって、載置部24に対する成形面形成部材30,60,110の固定力を可変にできる。しかし、成形面形成部材30,60,110の固定力を可変にする手段は、電磁石により成形面形成部材30,60,110を吸引するものに限られるわけではない。例えば、減圧による吸引力を利用して成形面形成部材30,60,110を載置部24に固定する場合には、圧力の大きさを可変にすることで、吸引力を可変にできる。また、クランプによる締付力を利用して成形面形成部材30,60,110を載置部24に固定する場合には、クランプを開放したり締め付けたりすることで、締付力(固定力)を可変にできる。
【0103】
なお、載置部24に対して成形面形成部材30,60,110を固定する力を可変にすることは、必ずしも必要ではない。例えば、永久磁石による磁力を利用して載置部24に成形面形成部材30,60,110を固定する場合には、発泡成形および脱型のときに成形面形成部材30,60,110が載置部24に固定される一方、磁力に抗する外力を付与することで載置部24から成形面形成部材30,60,110が離脱されるように、磁力の大きさを設定できる。
【0104】
また、発泡成形のときに成形面形成部材30,60,110が載置部24に固定される一方、脱型のときにシートパッド3と一緒に載置部24から成形面形成部材30,60,110が離脱されるように、永久磁石の磁力の大きさを設定することもできる。この場合には脱型のときに、シートパッド3に埋設されたクリップ部材5,80を介して成形面形成部材30,60,110が載置部24から離脱されるので、脱型後、シートパッド3から成形面形成部材30,60,110を取外す作業が必要となる。このときには、成形面形成部材は複数に分割されているもの(成形面形成部材60)が好ましい。成形面形成部材60を分割して取り外し易くできるからである。さらに、複数に分割された成形面形成部材60は、縦突条部61及び横突条部64が、可撓性を有するゴム状弾性体から構成されていることが好ましい。ゴム状弾性体の可撓性を利用して、シートパッド3から縦突条部61及び横突条部64を取り外し易くできるからである。
【0105】
上記第3実施の形態では、凹溝28を載置部24に設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、載置部24に凹溝28を設ける代わりに、突条部31の底部に凹溝を設けることは当然可能である。この場合も凹溝によって、バリ等の欠片を挟み込み難くできる。また、第1実施の形態、第2実施の形態および第4実施の形態において、成形面形成部材30,60,110及び載置部24の少なくとも一方に凹溝を設けることは当然可能である。
【0106】
上記各実施の形態では、シートパッド3に埋設される埋設部材としてクリップ部材5,80、スラブ132,133、ワイヤ151を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の埋設部材を採用することは当然可能である。他の埋設部材としては、例えばフェルト等の不織布、合成樹脂製等の線状体、3次元的に絡み合う複数の繊維によって形成される立体的な網状構造体が挙げられる。なお、上記実施の形態では、ワイヤ151(埋設部材)は、シートパッド3の裏面側に埋設されるものを説明したが、シートパッド3の表面側(溝部6近傍)に埋設されるワイヤ(クリップ部材を係止するもの)に適用することは当然可能である。
【0107】
上記実施の形態では、成形面形成部材30,60,110,130,150にそれぞれ1種類(同じ種類)の埋設部材が固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。シートパッドの仕様に応じて、成形面形成部材を、埋設部材の複数種が着脱可能に固定される構造にすることは当然可能である。