(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のばね−減衰機構が、前記前部リンク及び後部リンクの下部間に掛け渡される減衰部材又は弾性部材のいずれか少なくとも一方を含む下部接続機構により構成されている請求項1記載の座席構造。
前記下部接続機構は、その前部が、前記前部連結パイプに前部が固定された前部連結リンクの後部に軸支され、その後部が、前記後部連結パイプに後部が固定された後部連結リンクの前部に軸支されている請求項4記載の座席構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、ベースネットを2つのトーションバーにより弾性的に支持することによって、自動車用座席等のクッション部材として従来一般に用いられているウレタン材と比較し、より薄手のものを使用し、ヒップポイント(H.P.)をウレタン材使用のものより下げているにも拘わらず、使用者に異物感を与えることなく、着座動作時において十分なストローク感を発揮することができる。また、走行時の入力振動に対して、2つのトーションバーが機能するため、高い振動吸収特性を発揮することができる。特に、特許文献1では、アームによって前後に回転する支持フレームの回転支点となるトーションバーを、後部トーションバーユニットでは、支持フレームの上方に設定し、前部トーションバーユニットでは、支持フレームの下方に設定するなどの工夫を施している。それにより、通常走行時における入力振動による小さな荷重変動にしては前部トーションバーユニットが主として作用し、ある程度大きな荷重変動に対しては、前部及び後部トーションバーユニットが双方とも十分に機能するようになっている。しかしながら、振動吸収特性や衝撃吸収特性等については常に改善が求められている。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、簡単な構造でありながら、通常走行時において高い振動吸収特性を発揮できることに加え、衝撃によってより大きな荷重変動が生じた場合の衝撃吸収特性のさらなる向上を図ることができる座席用クッション部材支持機構及び該座席用クッション部材支持機構を含んだ座席構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の座席用クッション部材支持機構は、 シートクッション部のクッション部材を弾性的に支持する座席用クッション部材支持機構であって、トリガーとなる変位が入力される第1のばね−減衰機構と、前記第1のばね−減衰機構に入力される変位に応じたばね−減衰特性を発揮する第2のばね−減衰機構とを有し、前記第1のばね−減衰機構と前記第2のばね−減衰機構とが、積層方向に配置されると共に、リンクを介して接続され、前記第1のばね−減衰機構と前記第2のばね−減衰機構とが直列の位置関係で設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記シートクッション部に、座席の前後方向に所定間隔をおいてかつ座席の幅方向に沿って設けられる前部トーションバー及び後部トーションバーを有すると共に、前記リンクとして、前記前部トーションバーに中途部が連結されて、前記前部トーションバーを中心に上部及び下部が前後方向に回動可能に設けられる前部リンクと、前記後部トーションバーに中途部が連結されて、前記後部トーションバーを中心に上部及び下部が前後方向に回動可能に設けられる後部リンクとを有し、前記第1のばね−減衰機構が、前記前部トーションバー及び後部トーションバーと、前記前部リンク及び後部リンクの上部間に掛け渡されるクッション部材とにより構成されていることが好ましい。
前記第2のばね−減衰機構が、前記前部リンク及び後部リンクの下部間に掛け渡される減衰部材又は弾性部材のいずれか少なくとも一方を含む下部接続機構により構成されていることが好ましい。
【0008】
前記前部リンク及び後部リンクは、前記前部トーションバー及び後部トーションバーに沿って、それぞれ複数連結されており、複数の前記前部リンクの上部に、前部支持フレームが座席の幅方向に沿って支持され、複数の前記後部リンクの上部に、後部支持フレームが座席の幅方向に沿って支持され、前記前部支持フレーム及び後部支持フレーム間に、前記クッション部材が掛け渡されていることが好ましい。
複数の前記前部リンクの下部に、前部連結パイプが座席の幅方向に沿って支持され、複数の前記後部リンクの下部に、後部連結パイプが座席の幅方向に沿って支持され、前記下部接続機構が、前記前部連結パイプ及び後部連結パイプ間に配設されていることが好ましい。
前記下部接続機構は、その前部が、前記前部連結パイプに前部が固定された前部連結リンクの後部に軸支され、その後部が、前記後部連結パイプに後部が固定された後部連結リンクの前部に軸支されていることが好ましい。
前記前部リンク及び後部リンクは、それぞれ略L字に形成され、互いに背中合わせとなる向きで配設されていることが好ましい。
前記下部減衰機構が、前記前部リンク及び後部リンクの下部間に複数掛け渡されており、複数の前記下部減衰機構が、減衰部材のみの組み合わせで構成されるか、弾性部材のみの組み合わせで構成されるか、又は、減衰部材と弾性部材の組み合わせで構成されることが好ましい。
前記下部接続機構を構成する減衰部材は、磁気ダンパー、摩擦ダンパー又はオイルダンパーの少なくとも1種を用いて構成することができる。また、前記下部減衰機構を構成する弾性部材は、コイルスプリングを用いて構成することができる。
前記前部リンク及び後部リンクの上部間に掛け渡される前記クッション部材が、前記シートバック部を構成する上下に複数配設されるクッション部材の中で、下層に位置するベースネットであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の座席構造は、座席の幅方向に所定間隔をおいて設けられる一対のサイドフレームを備えたクッションフレームと、前記クッションフレームに支持されるクッション部材とを有してなるシートクッション部を備えた座席構造であって、前記クッション部材が、前記座席用クッション部材支持機構に支持されており、前記座席用クッション部材支持機構を構成する前部トーションバー及び後部トーションバーが、前記クッションフレームにおける一対のサイドフレーム間に掛け渡されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、第1のばね−減衰機構と第2のばね−減衰機構とが、積層方向に配置されると共に、リンクを介して接続され、第1のばね−減衰機構と第2のばね−減衰機構とが直列の位置関係で設けられている。そのため、第1のばね−減衰機構にトリガーとなる振動や衝撃などの変位が入力されると、その入力によって第2のばね−減衰機構が作用する。この際、本発明では、第1のばね−減衰機構と第2のばね−減衰機構とが直列の位置関係で設けられているため、両者を合わせたばね系は、ばね定数kが小さくなり、減衰系は、増大する方向となり、ダッフィング型の非線形特性を備えた系となる。そのため、振動吸収特性、衝撃吸収特性共に改善される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示した実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一の実施形態に係る座席用クッション部材支持機構200を含んだ座席構造1の要部を示す側面図であり、
図2〜
図8は座席用クッション部材支持機構200の詳細を示した図である。
【0013】
本実施形態の座席構造1はシートクッション部2及びシートバック部3を備えた自動車用の特に運転席又は助手席用のものであり、車体のフロア(設置面)に座席の幅方向に所定間隔をおいて配設されるスライドアジャスタ4,4を介してシートクッション部2が取り付けられている。
【0014】
シートクッション部2は、スライドアジャスタ4,4のアッパーレール4a,4aに連結される一対のサイドフレーム21,21を備えたクッションフレーム20を有している。各サイドフレーム21,21は、アッパーレール4a,4aの外側に位置する外側プレート21a,21aと、アッパーレール4a,4aの内側に位置し、前部寄りに配置される前部内側プレート21b,21bと、アッパーレール4a,4aの内側に位置し、後部寄りに配置される後部内側プレート21c,21cとを備えている。
【0015】
一対のサイドフレーム21,21の前端間及び後端間には、それぞれパイプからなる前部フレーム22、後部フレーム23が掛け渡されているが、前部フレーム22の各端部は、前部内側プレート21b,21b及び外側プレート21a,21aを貫通して配設され、後部フレーム23の各端部は、後部内側プレート21c,21c及び外側プレート21a,21aを貫通して配設されている。さらに、前部フレーム22の若干後方には、補強パイプ24が掛け渡されている。補強パイプ24は、前部内側プレート21b,21bを各端部が貫通してさらにアッパーレール4a,4aを貫通して配設されている。このように、各サイドフレーム21,21をアッパーレール4a,4aを挟んで、外側に位置するプレート(符号21a,21a)と内側に位置するプレート(符号21b,21b及び21c,21c)を設け、さらに、前部フレーム22、後部フレーム23及び補強パイプ24をこれらに貫通するように配設することでクッションフレーム20に高い剛性を付与している。
【0016】
座席用クッション部材支持機構200は、上記クッションフレーム20を備えたシートクッション部2に組み込まれる。座席用クッション部材支持機構200は、座席構造1の前後方向に所定間隔をおいて、ヒップポイント(H.P.)を挟んだ位置に設けられる前部トーションバー210、後部トーションバー220等を有して構成される。
【0017】
前部トーションバー210は、前部フレーム22と補強パイプ24によって支持された前部内側プレート21b,21bの前端寄りの位置に掛け渡される。本実施形態では、
図7に示したように、前部トーションバー210の一方(例えば座席左側)の端部210aを、左側に配置された前部内側プレート21bに固定して前部トーションバー210のねじり変形の固定端とする。
【0018】
後部トーションバー220は、後部内側プレート21c,21c間に掛け渡される。具体的には、後部内側プレート21c,21cには、ヒップポイント(H.P.)よりも後部フレーム23寄りにおいて、下方に突出させた突片21d,21dが一体に設けられており、この突片21d,21d間に掛け渡される。後部トーションバー220も、
図7に示したように、本実施形態では座席左側の端部220aを左側に位置する後部内側プレート21cの突片21dに固定して配設される。
【0019】
前部トーションバー210の各端部210a,210b付近であって、前部内側プレート21b,21bの内側に、前部リンク211,212が支持される。前部リンク211,212は、
図1及び
図4から明らかなように、側面から見て、略L字状に形成され、その中途部211a,212aが前部トーションバー210に支持される。この際、上部211b,212bが中途部211a,212aよりも若干上方で前方に位置し、下部211c,212cが中途部211a,212aよりも下方に位置する向きで装着される。また、本実施形態では、
図7に示したように、右側に配置される前部リンク212が、前部トーションバー210の右側の端部210bに連結され、左側に配置される前部リンク211は、前部トーションバー210の固定端である左側の端部210a回りを自由回転できるように設けられる。
【0020】
左右の前部リンク211,212の上部211b,212b間には、略コ字状の前部支持フレーム213が掛け渡される。前部支持フレーム213の各端部は、前部リンク211,212の上部211b,212bに溶接等により固定される。従って、前部支持フレーム213を上下に動かす力が作用すると、前部支持フレーム213は左右の前部リンク211,212と共に、前部トーションバー210との接続位置を中心として回動するが、右側の前部リンク212の上部212bが回動することにより、前部トーションバー210の右側の端部210bが固定端である左側の端部210aを中心として同方向にねじられ、前部トーションバー210の弾性が機能する。
【0021】
後部トーションバー220の各端部220a,220b付近であって、後部内側プレート21c,21c及び突片21d,21dの内側に、後部リンク221,222が支持される。後部リンク221,222も、
図1及び
図4から明らかなように、側面から見て、略L字状に形成され、その中途部221a,222aが後部トーションバー220に支持される。この際、上部221b,222bが中途部221a,222aよりも若干上方かつ後方に位置し、下部221c,222cが中途部221a,222aよりも下方に位置する向きで装着される。従って、前部リンク211,212及び後部リンク221,222は、いずれも略L字状に形成されるが、それぞれの上部211b,212b及び221b,222bが互いに逆方向に突出する背中合わせとなる向きで装着されることになる。また、本実施形態では、
図7に示したように、右側に配置される後部リンク222が、後部トーションバー220の右側の端部220bに連結され、左側に配置される後部リンク221は、後部トーションバー220の固定端である左側の端部220a回りを自由回転できるように設けられる。
【0022】
左右の後部リンク221,222の上部221b,222b間には、後部支持フレーム223が掛け渡される。そして、後部支持フレーム223を上下に動かす力が作用すると、後部支持フレーム223は左右の後部リンク221,222と共に、後部トーションバー220との接続位置を中心として回動するが、右側の後部リンク222の上部222bが回動することにより、後部トーションバー220の右側の端部220bが、固定端である左側の端部220aを中心として同方向にねじられ、後部トーションバー220の弾性が機能する。
【0023】
前部リンク211,212の下部211c,212c及び後部リンク221,222の下部221c,222cの各間には、下部接続機構が掛け渡される。本実施形態では下部接続機構として、減衰部材であるダンパー230,230を用い、座席の左右のそれぞれに配設している。ダンパー230,230は、ピストン等の可動部が筒状部材231,231に対して相対移動する直動式のものを用いることが好ましい。本実施形態では、
図1及び
図4等に示したように、筒状部材231,231を座席の前部側となるように、可動部に連結されるロッド部材232,232を座席の後部側となるように配置しているが、逆向きに配置してももちろん構わない。ダンパー230,230の前部(本実施形態では筒状部材231,231の端部231a,231a)を前部リンク211,212の下部211c,212c側に連結し、ダンパー230,230の後部(本実施形態ではロッド部232,232の端部232a,232a)を後部リンク221,222の下部221c,222c側に連結して、設置面(ここでは車体フロア)に略平行に配置される。
【0024】
また、本実施形態では、前部リンク211,212の下部211c,212c間に、前部連結パイプ240を掛け渡し、この前部連結パイプ240に後方に突出する前部連結リンク241,242の前部を幅方向に所定間隔をおいて溶接等により固着している。また、後部リンク221,222の下端221c,222c間に、後部連結パイプ250を掛け渡し、この後部連結パイプ250に前方に突出する後部連結リンク251,252の後部を幅方向に所定間隔をおいて溶接等により固着している。そして、各ダンパー230,230の前部である筒状部材231,231の端部231a,231aが前部連結リンク241,242の後部241a,242aに相対回転可能に軸支され、各ダンパー230,230の後部であるロッド部232,232の端部232a,232aが後部連結リンク251,252の前部251a,252aに相対回転可能に軸支される。
【0025】
なお、ダンパー230,230は所定の減衰力を発揮できるものでればよく、例えば、磁気ダンパー、オイルダンパー、摩擦ダンパー等を用いることができる。但し、それぞれ速度依存性などの特性が異なるため、適用する座席構造の用途等(例えば、運転席用、助手席用、高級車用、スポーツカー用等)によって使い分けることができる。また、2種類以上併用することも可能である。また、筒状部材231に対してロッド部材232が相対的に伸縮するいずれの方向でも所定の減衰力が機能する双方向タイプのものを用いることもできるし、荷重の負荷方向に変位する際に抜重方向よりもより大きな減衰力が働くように設定可能なタイプを用いることも可能である。
【0026】
クッションフレーム20には、シートクッション部2のクッション部材が配設される。クッション部材の構成は限定されるものではないが、本実施形態では、クッションフレーム20に張って設けられ、上下に複数枚積層されるクッション部材を有してなる。例えば、一対のサイドフレーム21,21間に、二次元の布帛(編物、織物、ネット状のもの等)、二次元の布帛に薄いウレタン材を積層した構造のもの、若しくは、三次元の布帛(立体編物、立体織物等)、又は、それらに弾性糸が適宜含まれた構成のものを上層のクッション部材として配設し、その下層に同じくクッション部材を構成するベースネット40を配設した構造である。そして、このベースネット40の前部40a及び後部40bが、前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223にそれぞれ連結される。
【0027】
ベースネット40は、前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223に、前部40a及び後部40bを巻き付けて一枚タイプとして配設してもよいが、本実施形態では、ベースネット40を、前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223に上側から下側へと掛け回した後、端縁同士を前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223間の中途部で連結部材41を用いて連結している(
図4参照)。これにより、ベースネット40は、上下2層で配設されることになり、底付き防止機能等を高めることができる。なお、ベースネット40を構成する材料も、上層のクッション部材と同様のものを用いることができるが、減衰機能が高いことから立体編物、あるいは、弾性糸を含んだ二次元の布帛を用いることが好ましい。
【0028】
ここで、本実施形態は、上記の構成を備えるため、外部振動や衝撃によってクッション部材であるベースネット40、前部トーションバー210及び後部トーションバー220によって第1のばね−減衰機構が構成され、それらの積層方向に配置されたダンパー230,230によって第2のばね−減衰機構が構成される。すなわち、外部振動や衝撃が入力されると、第1のばね−減衰機構であるベースネット40、前部トーションバー210及び後部トーションバー220が変位する。この変位がトリガーとなって、前部リンク211,212及び後部リンク221,222を介して、第1のばね−減衰機構と直列の位置関係である第2のばね−減衰機構であるダンパー230,230の減衰力が作用する。本実施形態では、第2のばね−減衰機構としてダンパー230,230を用いているため、第1のばね−減衰機構及び第2のばね−減衰機構における減衰系は、減衰係数が大きくなって減衰比が増大することになる。その結果、特に衝撃吸収特性の改善に貢献できる。
【0029】
また、本実施形態は、上記の構成を備えているため、クッション部材であるベースネット40を前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223に掛け渡した際の初張力(例えば、初張力を低くすることにより、減衰力を高めることができる)、下部接続機構として選択される減衰部材であるダンパー230,230の特性(磁気ダンパー、摩擦ダンパー等の種類や、機能する減衰力の大きさ等、また、後述の実施形態のように、コイルスプリング等の弾性部材を用いた場合にはそのばね特性、あるいは、弾性部材と減衰部材との組み合わせ方等によって機能する所定の特性)、前部リンク211,212における前部トーションバー210との接続位置からベースネット40との接続位置である前部支持フレーム213までの距離、後部リンク221,222における後部トーションバー220との接続位置からベースネット40との接続位置である後部支持フレーム223までの距離、前部リンク211,212における前部トーションバー210との接続位置からダンパー230,230との接続位置となる前部連結パイプ240までの距離、後部リンク221,222における後部トーションバー220との接続位置からダンパー230,230との接続位置となる後部連結パイプ250までの距離のうち、いずれか少なくとも一つの要素を調整して所望の値に設定することで、ベースネット40に入力される荷重変動に対して、リミットスイッチなどの電気的要素の制御によることなく、パッシブな機械的特性を種々の特性に調整することができる。その結果、例えば、低周波の衝撃性振動に対する特性向上に重点をおいた構成としたり、高周波振動に対する特性向上に重点をおいた構成としたりするなど、種々の特性の機構を簡易な構成で提供することができる。
【0030】
次に、本実施形態の具体的な作用を
図8〜
図11を用いて説明する。人が座席構造1に着座した状態において、走行中に凹凸を乗り越えるなどして衝撃力が入力されて所定以上の大きな荷重変動(ダンパー230に、減衰力を発揮させる伸縮動作が生じる程度以上の荷重変動)が生じたとすると、ヒップポイント(H.P.)を中心として下方に大きな負荷がかかる。すると、ベースネット40は、
図8の実線の位置からヒップポイント付近を中心として大きく下方に変位し、前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223を
図8の二点鎖線及び
図9に示したように内方に変位させる。前部支持フレーム213及び後部支持フレーム223の内方へ変位するため、同期して、前部リンク211,212の上端211b,212bが内方(
図8の時計方向)に、後部リンク221,222の上端221b,222bも内方(
図8の反時計方向)に、いずれも所定角度回動する。本実施形態では、右側の前部リンク212及び後部リンク222が前部トーションバー210及び後部トーションバー220の右側の端部210b,220bに連結されているため、前部トーションバー210及び後部トーションバー220は、左側の端部210a,220aを中心として右側の端部210b,220bが同方向にねじられる。これにより、前部トーションバー210及び後部トーションバー220の弾性がまず機能する。
【0031】
前部リンク211,212及び後部リンク221,222が上記のように回動するため、前部リンク211の下部211c,212c及び後部リンク221,222の下部221c,222cは、いずれも離間方向に所定角度回動する。前部リンク211の下部211c,212cには、ダンパー230,230の筒状部材231,231の端部231a,231aが前部連結パイプ240及び前部連結リンク241,242を介して連結され、後部リンク221,222の下端221c,222cは、ダンパー230,230のロッド部材232,232の端部232a,232aが後部連結パイプ250及び後部連結リンク251,252を介して連結されているため、各下部211c,212c及び221c,222cがそれぞれ離間方向に回動すると、筒状部材231,231に対してロッド部材232,232が相対的に伸長する。それにより、ダンパー230,230の磁気やオイルの粘性等による減衰力によって、衝撃力を吸収する。従って、所定以上の荷重変動を伴う衝撃力に対しては、ベースネット40による減衰力とダンパー230,230による減衰力を共に機能させることができる。反動によってベースネット40が上方に変位すると、前部リンク211,212及び後部リンク221,222は前部トーションバー210及び後部トーションバー220の復帰力により上記と逆方向に回動する。それにより、ダンパー230,230は、筒状部材231,231に対してロッド部材232,232が相対的に収縮する方向に変位する。このとき、双方向で減衰力が働くダンパー230,230であれば、前部リンク211,212及び後部リンク221,222は上記と逆方向に回動する際も減衰力が働き、それらの動きを遅動させることができる。なお、人体が上方に変位する抜重方向では、ダンパー230,230の減衰力を負荷方向よりも小さく設定できるものを用いることも可能であることは上記したとおりである。
【0032】
一方、走行時の通常の振動入力(上記の衝撃力よりは振幅の小さい微振動等)においては、その振動入力によってベースネット40に対する上記よりも小さな荷重変動(ダンパー230が伸縮動作しないか、伸縮動作をしても僅かな伸縮量で減衰力を発揮するに至らない程度の荷重変動)が生じる。この荷重変動によってはダンパー230は実質的に伸縮動作しないため、ほぼ剛体として一つのリンク部材の如くの作用となる。従って、
図10に示したように下方向に荷重がかかったとすると、前部リンク211,212は二点鎖線及び
図11に示したように、時計回りに回動するが、ダンパー230が伸縮しないため、前部リンク211,212の下部211c,212cに引っ張られてダンパー230は前方に移動する。ダンパー230は長さがほとんど変わらないため後部リンク211,212の下部221c,222cを前方に引っ張る。そのため、後部リンク221,222は、
図10の実線で示した姿勢から、
図10の二点鎖線及び
図11に示した姿勢へと、前部リンク211,212と同じ時計回りに回動する。ダンパー230は、前部連結リンク241,242を介して前部リンク211,212の下部211c,212cに連結され、後部連結リンク251,252を介して後部リンク221,222の下部211c,222cに連結されているため、
図10の実線で示した設置面に略平行な姿勢から、
図10の二点鎖線及び
図11に示したロッド部材232,232側が筒状部材231,231よりも高くなる若干斜めの姿勢へと変位する。小さな荷重変動が繰り返されると、このような運動が繰り返され、前部トーションバー210及び後部トーションバー220の弾性により振動吸収がなされる。
【0033】
なお、上記した作用を発揮しやすくするため、前部リンク211,212は、荷重がかかった際にヒップポイント側に力の向きが確実に生じるように、略L字状の内角が鈍角となっていることが好ましい。また、後部リンク221,222の回転中心となる後部トーションバー220が連結される位置は、後部リンク221,222の下部221c,222c寄りであることが好ましい。これにより、小さな振動入力の際に、後方(時計回り)に回動しやすくなる。
【0034】
図12及び
図13は、本発明の他の実施形態を示し、前部リンク211,212の下部211c,212cと、後部リンク221,222の下部221c,222cとの間に、第2のばね−減衰機構を構成する下部接続機構としてコイルスプリング260,260を配設している。具体的には、前部連結パイプ240及び後部連結パイプ250にそれぞれ係合用ブラケット245,245,255,255を座席の幅方向に所定間隔をおいて設け、前後に対応する係合用ブラケット245,255間にそれぞれコイルスプリング260,260を配設している。
【0035】
本実施形態によれば、前部リンク211,212及び後部リンク221,222を介して、すなわち、第1のばね−減衰機構を構成するベースネット40及び各トーションバー210,220に対して、第2のばね−減衰機構を構成するコイルスプリング260,260が直列配置のばね系となる。その結果、2つのばね系を合わせたばね定数はそれぞれ単独で用いた場合のばね定数よりも低くなり、減衰比が増大する。従って、本実施形態では、ばね系の直列配置の組み合わせにより、非線形のばね特性をもたせることができ、高周波特性の改善に貢献できるだけでなく、衝撃性振動に対する特性改善にも貢献できる。
【0036】
なお、本実施形態においても、ベースネット40の初張力、コイルスプリング260,260等の弾性力、各リンク211,212,221,222における各トーションバー210,220からベースネット40又はコイルスプリング260,260の接続位置までの長さ等の調整によって、種々の特性を付与することができる。
【0037】
図14及び
図15は、本発明のさらに他の実施形態を示し、前部リンク211,212の下部211c,212cと、後部リンク221,222の下部221c,222cとの間に、第2のばね−減衰機構を構成する下部接続機構としてダンパー230A,230Bとコイルスプリング260との組み合わせからなるものを配設している。具体的には、ダンパー230A,230Bを、前部連結リンク242,242、後部連結リンク252,252を介して、前部連結パイプ240及び後部連結パイプ250の幅方向両側付近に配置し、その略中央に係合用ブラケット245,255を介してコイルスプリング260を掛け渡している。また、一方のダンパー230Aは磁気ダンパーを用い、他方のダンパー230Bは、磁気ダンパーよりも減衰力の大きい摩擦ダンパーを用いている。
【0038】
本実施形態によれば、第2のばね−減衰機構を構成するコイルスプリング260が第1のばね−減衰機構との関係で直列配置のばね系要素となり、ダンパー230A,230Bが第1のばね−減衰機構との関係で直列配置の減衰系要素となる。そのため、それぞれ単独の場合と比較し、ばね定数が低下して減衰係数が大きくなるため、減衰比がさらに増大する。従って、共振点をより低周波帯域に移行し、高周波の振動吸収特性が高くなるという特性を奏する。
【0039】
(試験例)
座席用クッション部材支持機構200として、第2のばね−減衰機構を構成する下部接続機構が異なる次の4種類を準備した。すなわち、
図1〜
図11に示した両側部付近に配置される2組のダンパー230,230としていずれも磁気ダンパーを用いたタイプ(ケース1)、
図12及び
図13に示した両側部付近に配置される2本のコイルスプリング260,260を配設したタイプ(ケース2)、
図1〜
図11に示した両側部付近に配置される2組のダンパー230,230としていずれも摩擦ダンパーを用いたタイプ(ケース3)、
図14及び
図15に示した磁気ダンパー230A、摩擦ダンパー230B及びコイルスプリング260の組み合わせを用いたタイプ(ケース4)を準備した。なお、第2のばね−減衰機構を構成する下部接続機構以外の構成は、第1のばね−減衰機構を構成するベースネット40の初張力、前部トーションバー210及び後部トーションバー220のばね特性等を含めていずれも全く同じである。
【0040】
これらの座席用クッション部材支持機構200に、
図16に示したように、シートクッション部2のベースネット40上に他のクッション材(立体編物等)を設け、さらに表皮2aで被覆し、同じく、シートバック部3もクッション材(立体編物等)を設けて表皮3aで被覆して座席構造1とした。この座席構造1を加振機上にセットし、シートクッション部2のヒップポイント直下に加速度センサ2bを取り付けて被験者を着座させ、衝撃振動特性、振動伝達率の測定を行った。衝撃吸収特性は
図17に示した入力波形を衝撃振動として入力した。結果を
図18及び
図19に示す。
【0041】
図18に示したように、衝撃振動特性は、ケース1の場合で、入力波形の最大値約1.3Gに対して約0.5G低下しており、高い衝撃吸収特性を示した。ケース2、ケース3、ケース4はそれよりさらに低下しており、第1のばね−減衰機構に第2のばね−減衰機構を直列配置すると、衝撃吸収特性の改善に大きく貢献できる。また、
図19に示した振動伝達率から、磁気ダンパーを用いたケース1は、共振点が5Hz未満に位置して、内臓共振点の存在する6〜8Hzの周波数帯よりも低かった。摩擦ダンパーを用いたケース3は、共振点がケース1よりも若干高めの5.5Hz付近であるが振動伝達率が低かった。一方、コイルスプリング260を用いたケース2及びケース4は、いずれも、共振点が3〜4Hzと低く、しかも7Hz以上の高周波帯域においても振動伝達率は低かった。
【0042】
これらのことから、第2のばね−減衰機構を構成する下部接続機構の種類、組み合わせ等によって種々の特性をもった座席構造を提供することできることがわかる。
【0043】
なお、上記した説明では、自動車の座席に適用した場合を例にとり説明しているが、振動が入力される環境で使用される座席、例えば、航空機、列車、船舶などの座席において本発明を適用することも可能である。