特許第6297415号(P6297415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297415
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】濁水処理システムおよび濁水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20180312BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20180312BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C02F1/44 K
   B01D65/02 520
   C02F11/12 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-110769(P2014-110769)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-223569(P2015-223569A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】509320737
【氏名又は名称】一般社団法人グリーンディール推進協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】志方 洋介
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−000559(JP,A)
【文献】 特開2005−224687(JP,A)
【文献】 特開平09−168727(JP,A)
【文献】 特開2000−325998(JP,A)
【文献】 特開2012−096142(JP,A)
【文献】 特開平02−026699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C02F 11/00 − 11/20
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理システムであって、
底面が開放されたろ過用底面開放型躯体と、
前記ろ過用底面開放型躯体内に全てが収容されるように配置された、ろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過膜と、
前記ろ過膜に接続された真空吸引手段と、
を備え、
処理対象の前記濁水の懸濁物質の濃度が高い領域に前記ろ過用底面開放型躯体の少なくとも下部と、前記ろ過膜の全てとが浸漬するように配置して、前記真空吸引手段により前記ろ過膜を真空吸引することによって前記ろ過膜の内部に負圧を発生させて前記ろ過膜の表面に前記懸濁物質を付着させることを特徴とする濁水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の濁水処理システムであって、
さらに、前記ろ過膜に接続された送気手段を備えることを特徴とする濁水処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の濁水処理システムであって、
さらに、前記ろ過用底面開放型躯体および前記ろ過膜を昇降可能な昇降手段を備えることを特徴とする濁水処理システム。
【請求項4】
懸濁物質を含む濁水を処理する濁水処理方法であって、
底面が開放されたろ過用底面開放型躯体内に全てが収容されるように配置された、ろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過膜を用い、
処理対象の前記濁水の懸濁物質の濃度が高い領域前記ろ過用底面開放型躯体の少なくとも下部と、前記ろ過膜の全てとが浸漬するように配置して、前記ろ過膜を真空吸引することによって前記ろ過膜の内部に負圧を発生させて前記ろ過膜の表面に前記懸濁物質を付着させることを特徴とする濁水処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の濁水処理方法であって、
真空吸引を停止した後、前記ろ過膜の内部に送気することにより前記ろ過膜の表面に付着した懸濁物質を剥離することを特徴とする濁水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁水を浄化するための濁水処理システムおよび濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等で発生する濁水の処理や、比較的小規模の閉鎖水域の浄化に伴う濁水の処理には、排水中の懸濁物質(SS成分、例えば、粘土、シルト、セメント成分等の微細土や、植物プランクトン、動物プランクトン、食品、食品残渣等)の除去や固化、脱水が避けられない要件である。
【0003】
この要件に対応できる脱水固化技術としてフィルタープレスの活用が一般的であるが、装置が大規模な加圧装置であり、前処理設備を含む広い設置面積が要求される。また、大容量(例えば、濾室容積5m以上)のフィルタープレスを使用する場合、運搬、組み立て、試運転、調整、基礎工事等のため、準備期間に例えば0.5〜1ヶ月程度の日数が必要となり、短期間の現場の濁水処理には適さない。大容量になるにしたがって濾室数が多くなり(例えば、100室以上)、ケーキの剥離および濾布の洗浄等に多大な時間を要し、作業のサイクルタイムが大幅に長くなる(例えば、4〜6時間以上)。
【0004】
また、フィルタープレスは、凝集剤撹拌槽、凝集沈降分離水槽、pH調整槽、中和槽等より構成される濁水処理設備を必要とし、連続処理をする場合は、処理中の濁水を貯留する大容量の濁水槽が必要となる。さらに、凝集剤が排出脱水ケーキに混入するため、多くの場合、産業廃棄物としての処分が必要となり、再資源化の観点からも、コスト面でも課題となっている。
【0005】
凝集剤等の薬品を使用しない濁水処理装置としては、例えば、特許文献1には、ろ過槽内に分離膜を配設した膜モジュールを浸漬し、膜モジュールの二次側を吸引することによる吸引圧、あるいは水面のヘッド差による圧力を膜間差圧として膜モジュールによるろ過を行う汚濁水のろ過方法において、膜モジュールの二次側より一次側へエアーを通気させることにより、膜モジュールの洗浄処理を行う汚濁水のろ過方法が記載されている。
【0006】
従来の濁水処理システムでは、図5に示すように、上部、下部および側面を覆われたろ過槽50内に上下方向に長い短冊型のろ過膜52が複数配置されており、ろ過膜52の表面の上下方向に付着ケーキのムラが生じ、そのムラがケーキの脱水効率の向上を妨げていた。ろ過槽50内でのスラリーは、懸濁物質の粒径に比例して沈降が起こり、下部の懸濁物質濃度が時間とともに増加して高濃度となり、上部は低濃度になるので、図6に示すように、ろ過膜52の上部ではほとんどケーキが付着しないまま、水成分だけを吸引しつづけるが、一方、ろ過膜52の下部では過剰にケーキが付着する。したがって、真空吸引は主として上部で働き、下部のケーキの中の水分の吸出し効果を妨げることになる。特に下部のクリーム状のケーキ(例えば付着厚さ30mm以上)の含水率は例えば70〜80重量%程度と高く、時間をかけて気中乾燥しても、上部の部分から大気を吸いこむので、真空となりにくく、乾燥が困難であった。一方、正常に付着した(部分付着厚さ10mm程度)の含水率は例えば50〜60重量%程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−168727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、濁水処理を効率的に行うことができる濁水処理システムおよび濁水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、懸濁物質を含む濁水を処理するための濁水処理システムであって、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体と、前記ろ過用底面開放型躯体内に全てが収容されるように配置された、ろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過膜と、前記ろ過膜に接続された真空吸引手段と、を備え、処理対象の前記濁水の懸濁物質の濃度が高い領域に前記ろ過用底面開放型躯体の少なくとも下部と、前記ろ過膜の全てとが浸漬するように配置して、前記真空吸引手段により前記ろ過膜を真空吸引することによって前記ろ過膜の内部に負圧を発生させて前記ろ過膜の表面に前記懸濁物質を付着させる濁水処理システムである。
【0010】
また、前記濁水処理システムにおいて、さらに、前記ろ過膜に接続された送気手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記濁水処理システムにおいて、さらに、前記ろ過用底面開放型躯体および前記ろ過膜を昇降可能な昇降手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、懸濁物質を含む濁水を処理する濁水処理方法であって、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体内に全てが収容されるように配置された、ろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過膜を用い、処理対象の前記濁水の懸濁物質の濃度が高い領域前記ろ過用底面開放型躯体の少なくとも下部と、前記ろ過膜の全てとが浸漬するように配置して、前記ろ過膜を真空吸引することによって前記ろ過膜の内部に負圧を発生させて前記ろ過膜の表面に前記懸濁物質を付着させる濁水処理方法である。
【0013】
また、前記濁水処理システムにおいて、真空吸引を停止した後、前記ろ過膜の内部に送気することにより前記ろ過膜の表面に付着した懸濁物質を剥離することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体を用い、懸濁物質の濃度が高い領域にろ過膜を配置することによって、濁水処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る濁水処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおけるろ過膜の配置の一例を示す概略上面図である。
図3】本発明の実施形態に係る濁水処理システムのろ過膜におけるケーキの付着状況を示す概略側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る濁水処理システムにおけるろ過膜の構成の一例を示す概略図である。
図5】従来の濁水処理システムにおけるろ過膜を示す概略図である。
図6】従来の濁水処理システムのろ過膜におけるケーキの付着状況を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の実施形態に係る濁水処理システムの一例の概略構成を図1に示し、その構成について説明する。本実施形態に係る濁水処理システム1は、主に、濁水をろ過処理し、ろ過水を確保し、かつろ過物のケーキを作製するために用いられる。濁水処理システム1は、濁水をろ過するための、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体10と、ろ過用底面開放型躯体10内に配置された、ろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過膜12と、中空状のろ過膜12の内部に接続された真空吸引手段としての真空吸引装置14とを備える。濁水処理システム1は、中空状のろ過膜12の内部に接続された送気手段としての送気装置16をさらに備えていてもよい。
【0018】
図1の濁水処理システム1において、処理対象の濁水に底面が開放されたろ過用底面開放型躯体10の少なくとも下部が浸漬され、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域に少なくとも1つのろ過膜12が配置されている。ろ過膜12は、中空状のろ過膜12の内部と接続された配管18、配管22、および配管22から分岐した配管24により、バルブ28を介して真空吸引装置14の吸引側と接続され、配管22から分岐した配管26により、バルブ30を介して送気装置16の送気側と接続されている。配管22,24は、真空吸引経路として機能し、配管22,26は、送気経路として機能する。図1の例では、濁水処理システム1は5つのろ過膜12を有するが、ろ過膜12の数は少なくとも1つであればよく、これに限定されるものではない。
【0019】
例えば、図2にろ過用底面開放型躯体10の上面から見たろ過膜12を示すように、例えば長い短冊型の中空状の少なくとも1つのろ過膜12の長手方向がろ過用底面開放型躯体10の略水平方向に配置されるようにする。各ろ過膜12の一端側はそれぞれのろ過膜12内部と接続された配管18により互いに接続され、配管18は図1の配管22につながり、真空吸引装置14および送気装置16と接続されている。各ろ過膜12の他端側は、配管20により互いに接続されている。そして、図1に示すように、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域にろ過膜12が浸漬するように配置されている。短い短冊型の中空状のろ過膜12の長手方向をろ過用底面開放型躯体10の略垂直方向に配置し、高濃度領域にろ過膜12が全て浸漬するように配置してもよい。
【0020】
次に、濁水処理システム1の動作および濁水処理方法について図1および図2を参照して説明する。
【0021】
図1のように、被処理濁水領域32内の被処理濁水34は、スラリーの沈降分離により上下方向で濃度差が生じ、上方向には懸濁物質(SS)濃度の比較的低い低濃度水が、下方向にはSS濃度が比較的高い高濃度水が存在することになる。底面が開放されたろ過用底面開放型躯体10の少なくとも下部を被処理濁水34に浸漬し、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域にろ過膜12が例えば全て浸漬するように配置する。次に、バルブ28を開状態、バルブ30を閉状態として、真空吸引装置14を作動させて真空吸引を開始する。真空吸引されることによって、中空状のろ過膜12の内部に負圧が発生し、ろ過膜12によって被処理濁水34のろ過処理が行われる(真空吸引ろ過工程)。ろ過膜12によりろ過処理されたろ過水は、それぞれ配管18,22,24を通して系外へ排出される。一方、ろ過物である懸濁物質等は、ろ過膜12の表面に付着される。
【0022】
ろ過膜12の表面に、汚泥等の懸濁物質が付着すると通水性が低下し、ろ過水の量が減少する。そこで、図示しない昇降手段によりろ過用底面開放型躯体10およびろ過膜12を被処理濁水から引き上げ、真空吸引を続行した状態で、ろ過膜12は気中乾燥状態となる(気中乾燥工程)。その後、バルブ28を閉状態として真空吸引を停止させ、バルブ30を開状態とした後、送気装置16を作動させて送気を開始する。ろ過膜12の内部に空気等の気体を圧送するとろ過膜12の表面より気体が排出され、ろ過膜12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(剥離工程)。ろ過膜12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、送気装置16を停止する。以上の真空吸引ろ過工程、気中乾燥工程および剥離工程を繰り返すことにより、濁水処理が行われる。ろ過膜12の表面から剥離したケーキは、含水率が低く、容易に搬送することができ、また用途に応じて再利用することも可能である。
【0023】
上記の通り、従来の濁水処理システムでは、図5に示すように、上部、下部および側面を覆われたろ過槽50内に上下方向に長い短冊型のろ過膜52が配置されており、ろ過膜52の表面の上下方向に付着ケーキのムラが生じ、そのムラがケーキの脱水効率の向上を妨げていた。このような状況を改良すべく、本発明者らは、上記の通り、ろ過膜12の配置を変更し、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域にろ過膜12が浸漬するように配置した。
【0024】
底面が開放されたろ過用底面開放型躯体を用い、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域にろ過膜12を配置することによって、中空状のろ過膜12の内部に負圧が発生し、濁水処理を効率的に行うことができる。すなわち、高濃度領域の懸濁物質等が吸い上げられ、図3に示すようにろ過膜12の表面に略均一に効率よく吸着され、濁水処理を効率的に行うことができる。また、真空吸引によるろ過と圧気による付着物の剥離を1つの装置でコンパクトに実現することができる。これにより、付帯設備の削減と装置の簡素化および自動化とにより設備コストのより一層の低減と作業性の向上が可能となる。
【0025】
また、本処理方法では、凝集剤を用いなくてもよいため、凝集剤撹拌槽、pH調整槽、中和槽などの水槽を設ける必要がなく、設備の軽減につながる。凝集剤等の添加物を含まないため、ケーキを産業廃棄物処理する必要がなく、オンサイトで再利用可能となり、コスト低減効果も高い。
【0026】
ここで、高濃度領域とは、懸濁物質(SS)濃度が10重量%以上の領域のことをいい、低濃度領域とは、懸濁物質(SS)濃度が0.2重量%未満の領域のことをいう。
【0027】
ろ過用底面開放型躯体10は、底面が開放され、上部および側面が被処理濁水を遮蔽する遮蔽物で覆われた構成のものであればよく、特に制限はない。例えば、樹脂等で構成された、底面が開放された長方体形状、直方体形状、円柱形状等の形状のものが挙げられる。このような構成のろ過用底面開放型躯体により、簡易な構成でろ過用底面開放型躯体10内に配置した中空状のろ過膜12の内部に負圧を発生させることができる。
【0028】
濁水処理に用いられるろ過膜12は例えば布材で、水分は通すが、所定の大きさの懸濁物質等は通さないろ過機能を有し、さらに内側に空気等の気体が注入されると内部から外側に気体を排出するように適度な通気性を備えている。ろ過膜12の形状および材質は、被処理濁水から懸濁物質を捕捉、分離することができるものであればよく、特に制限はない。ろ過膜12の形状および材質は、処理対象となる被処理濁水の性状、含まれる懸濁物質等の性状等に応じて選択すればよい。ろ過膜12の形状は、中空状のものであればよく、特に制限はないが、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状等の筒型形状や、板形状、球形状、多角形形状等であり、板形状が好ましい。ろ過面積を大きくするためには、できるだけろ過材が膨らまないような構成とし、できるだけ多くのろ過材をろ過用底面開放型躯体内に設置するとよい。
【0029】
例えば、図4に示すような、1つ以上のろ室36を有する板形状のろ過膜12を用いることができる。図4に示すろ過膜12は、ろ布を溶着部38によって貼り合わせて1つ以上のろ室36が形成された構成となっている。ろ過膜12によりろ過処理されたろ過水は、各ろ室36内から集水管として働く配管18を通って排出されるようになっている。各ろ室36にはろ過水が通過するための流路を形成した板状等のパネル材等を挿入してもよい。
【0030】
ろ過膜12の種類、孔径、厚さ、設置数、膜面積等を変更することにより、可変型の装置として、被処理濁水34の濃度変化や処理量の増減等に対応することができる。
【0031】
ろ過膜12は、懸濁物質の濃度が高い高濃度領域に浸漬するように配置するが、少なくともろ過面積の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは全て(100%)が、高濃度領域に浸漬するように配置すればよい。ろ過面積の30%未満しか浸漬しないと、ケーキが付着する領域に比べてほとんどケーキが付着しない領域が多くなり、ろ過膜の上部ではほとんどケーキが付着しないまま、水成分だけを吸引しつづけて、効率が悪くなる。
【0032】
真空吸引装置14としては、真空吸引できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、真空ポンプ、エジェクタ等が挙げられ、高い真空度と高排気量を有する装置が好ましい。エジェクタの真空発生機能を活用することにより、省エネ型のシステムを構築することができる。
【0033】
送気装置16としては、空気等の気体を送気できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、コンプレッサ等が挙げられる。
【0034】
被処理濁水領域32は、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体10の少なくとも下部を浸漬可能であればよく、特に制限はない。例えば、被処理濁水を貯留する被処理濁水槽にろ過用底面開放型躯体10を浸漬して、濁水処理を行ってもよいし、被処理濁水槽を設けずに、溜池、農業用水路、養殖池等の閉鎖水域や、池、河川、湖等の処理対象にろ過用底面開放型躯体10を直接浸漬して濁水処理を行ってもよい。本実施形態に係る濁水処理システムでは、底面が開放されたろ過用底面開放型躯体10を用いることにより、処理対象にろ過用底面開放型躯体10およびろ過膜12を直接浸漬して濁水処理を効率的に行うことが可能となる。
【0035】
処理対象となる被処理濁水としては、例えば、土木・建築現場等で発生する濁水、河川・湖沼・池・運河等の底質改善や浚渫に伴う濁水、土壌洗浄後の濁水、粘土・シルト等を含む濁水、セメント成分等の化学物質を含む濁水、アオコ等の植物プランクトンや、赤潮等の動物プランクトン等を含む濁水、味噌、醤油等の食品や、酒粕、果汁の絞り滓等の食品残渣等を含む濁水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、放流レベルから飲料水の確保まで多様な濁水処理が可能である。
【0036】
被処理濁水の性状によっては、真空吸引ろ過工程に前段でサイクロンまたはスクリュウコンベア等の分級手段を設置して、事前処理の分級処理を行ってもよい。
【0037】
システムの規模、被処理濁水の性状等にもよるが、例えば、ろ過時間3分〜10分、気中乾燥時間5分〜7分、ケーキ剥離時間1分〜2分程度で、1作業サイクルは10分〜20分程度もあれば十分に含水率45〜60重量%程度のケーキを得ることができる。これはフィルタープレスの標準作業サイクル2〜6時間(逆洗浄時間を含む)に比べて10倍〜20倍程度の処理能力を有するので、同一処理能力として、装置重量、所要装置面積(フィルタープレスの30〜50%程度)の大幅な削減が可能である。システムの設置工事は0.5日〜2日程度でよい。
【0038】
本実施形態に係る濁水処理システム1により、濁水処理のプロセスである、分級による事前処理、沈降分離等によるスラリーの濃縮処理およびろ過処理、濃縮スラリーの脱水固化処理の工程を1つのシステムで処理することができる。
【0039】
本実施形態に係る濁水処理システム1は、さらに、ろ過用底面開放型躯体10およびろ過膜12を昇降可能な昇降手段として昇降装置を備えてもよい。例えば、ろ過用底面開放型躯体10およびろ過膜12を含む基幹装置を車両等に搭載したオントラック型のシステムとし、設置位置に運搬し、ろ過用底面開放型躯体10およびろ過膜12を昇降装置により被処理濁水に浸漬してから、システムを稼動すればよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
ろ過用底面開放型躯体(幅800mm×長さ800mm×高さ500mm、底面が開放)および長い短冊型の中空状ろ過膜(幅600mm×高さ250mm×8枚×両面=ろ過面積2.4m)を備えるろ過システムを用いた。ろ過膜にコンプレッサ(吐出量265L/分、2.2kW)およびエジェクタ(駆動水量:70L/min、駆動圧力:4.5MPa)を接続した。
【0042】
このシステムを用いて、被処理濁水(SS濃度5重量%)を入れた被処理濁水槽下部のSS濃度の高い高濃度領域(SS濃度20重量%)に、上記ろ過膜の長手方向がろ過用底面開放型躯体の略水平方向に配置されるようにして、ろ過膜を全て(ろ過面積の100%)を浸漬した。エジェクタを起動させ、真空吸引を行うと、2〜3分程度で厚く略均質なケーキ(10〜20mm)が付着して、5分程度の気中真空乾燥を行ったところ、良好な脱水性能で、表面で含水率55重量%、内部で47重量%であり、剥離も良好であった。1時間当たり5回以上のサイクルでケーキの製造が可能となり、性能が大幅に向上し、よりコンパクトな脱水装置を実現することができた。
【0043】
このように、実施例のシステムを用いることにより、濁水処理を効率的に行うことができた。また、省スペース型のコンパクトな濁水処理システムを実現することができた。
【符号の説明】
【0044】
1 濁水処理システム、10 ろ過用底面開放型躯体、12,52 ろ過膜、14 真空吸引装置、16 送気装置、18,20,22,24,26 配管、28,30 バルブ、32 被処理濁水槽、34 被処理濁水、36 ろ室、38 溶着部、50 ろ過槽。
図1
図2
図3
図4
図5
図6