(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるプリンタおよび記録方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
まず、この発明にかかる実施の形態のプリンタの構成について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態のプリンタの構成を示す説明図である。
図1において、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100は、記録媒体に対する記録処理をおこなう記録部101を備えている。
【0023】
プリンタ100においては、単票紙および連続紙を記録媒体として用いることができる。単票紙は、あらかじめ所定の大きさに裁断してある記録媒体であって、具体的には、A4サイズの用紙、B5サイズの用紙などによって実現することができる。連続紙は、長尺状の記録媒体であって、たとえば、長さ方向に沿ってロール状に巻回された形態や、所定の長さごとに互い違いに折り畳まれた形態などがある。単票紙、連続紙については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0024】
記録部101は、インパクト方式による記録動作をおこなう。インパクト方式の記録動作をおこなう記録部101は、インパクトプリントヘッド102とプラテン103とを備えている。インパクトプリントヘッド102は、この発明にかかるプリントヘッドを実現する。インパクトプリントヘッド102とプラテン103とは、
図1において符号110を付した仮想線で示される、記録媒体の搬送経路を間にして対向配置されている。
【0025】
インパクトプリントヘッド102は、主走査方向、すなわち、プリンタ100の幅方向であって
図1における紙面表裏方向を軸心方向とするキャリッジシャフト104に沿って往復移動可能に設けられている。キャリッジシャフト104は、主走査方向を軸心方向とする略円柱形状をなす。
【0026】
この実施の形態においては、以降、記録部の記録動作に際して記録媒体が移動する方向に平行な方向を、適宜、副走査方向として説明する。また、この実施の形態においては、以降、プリンタ100内において搬送される記録媒体の記録面に平行な面内において副走査方向に交差(この実施の形態においては直交)する方向を、適宜、主走査方向として説明する。
【0027】
インパクトプリントヘッド102は、束ねられた複数のワイヤを備えている。インパクトプリントヘッド102における複数のワイヤの先端は、マトリクス状に配列されている。複数のワイヤは、それぞれ独立してプラテン103側に突出可能とされている。インパクトプリントヘッド102の構成については図示を省略する。
【0028】
インパクト方式の記録部101を用いた記録処理に際しては、インパクトプリントヘッド102とプラテン103との間に記録媒体(
図3〜
図8における符号Pを参照)、および、図示を省略するインクリボンを介在させる。この場合、記録部101は、インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤを選択的に記録媒体に打ち付け、ワイヤの圧力によりインクリボンのインクを記録媒体に転写することによって小さな点(ドット)を打ち出す。
【0029】
インクリボンは、インパクトプリントヘッド102の移動範囲全体にわたって、プラテン103に対向するように設けられている。これにより、インパクトプリントヘッド102は、主走査方向における位置にかかわらず、インクリボンを介してプラテン103に対向している。
【0030】
インクリボンは、無端帯形状をなし、図示を省略するリボンカセットなどによって支持されている。リボンカセットは、インクリボンを繰り出すとともにリボンカセット内にインクリボンを巻き取る巻き取り機構や、リボンカセット内においてインクリボンに浸漬させるインクを備えている。
【0031】
リボンカセットは、記録動作に際して、主走査方向の一端側(あるいは他端側)においてインクリボンの巻き取りをおこなうリボン巻き取り軸に連結され、リボン巻き取り軸を回転させることによって、インクリボンの繰り出しおよび巻き取りをおこなう。リボン巻き取り軸には、ヘッド駆動用モータ(
図2における符号209を参照)が連結されている。
【0032】
インパクト方式の記録部101は、小さな点(ドット)を連続して打ち出すことによって、文字などを記録する記録動作をおこなう。この実施の形態において、記録とは、打ち出した小さな点(ドット)によって文字をあらわす場合に限らず、記号、符号、図形などのような、文字以外をあらわす場合も含む。
【0033】
プリンタ100においては、たとえば、圧力が加えられることによって当該圧力が加えられた部分が発色する、いわゆる感圧方式の記録媒体を用いてもよい。この場合、インクリボンの介在を不要とし、ワイヤの圧力を直接記録媒体に伝達し、当該圧力によって小さな点(ドット)を打ち出すことにより、記録動作をおこなうことができる。
【0034】
プラテン103は、インパクトプリントヘッド102の移動範囲全体にわたってインパクトプリントヘッド102に対向するように設けられている。プラテン103は、記録動作に際してインパクトプリントヘッド102のワイヤの圧力が加えられる記録媒体を、搬送経路110を間にしてインパクトプリントヘッド102とは反対側から支持する。
【0035】
搬送経路110における記録媒体の搬送方向に沿って、記録部101の一方側には、第1のローラ対105が設けられている。第1のローラ対105は、搬送経路110を間にして対向配置された2つのローラ105a、105bによって構成される。第1のローラ対105を構成する2つのローラ105a、105bは、いずれも、主走査方向に平行な軸心を中心として、当該軸心周りに回転可能とされている。第1のローラ対105は、主走査方向に沿って複数対設けられている。
【0036】
第1のローラ対105において、一方のローラ105aは、搬送用モータなどの駆動源(
図2における符号207を参照)に連結されている。第1のローラ対105において、他方のローラ105bは、2つのローラ105a、105bの間に記録媒体が存在しない場合は一方のローラ105aに当接するように設けられている。他方のローラ105bは、一方のローラ105aの回転にともなって当該一方のローラ105aとともに回転する。
【0037】
第1のローラ対105は、一方のローラ105aと他方のローラ105bとの間に記録媒体が介在する場合、一方のローラ105aと他方のローラ105bとが当接する位置において当該記録媒体を挟み込む。他方のローラ105bは、この状態で一方のローラ105aが回転することによって、搬送経路110中を搬送される記録媒体との摩擦によって回転する。
【0038】
搬送経路110における記録媒体の搬送方向に沿って、記録部101の他方側には、第2のローラ対106が設けられている。第2のローラ対106は、搬送経路110を間にして対向配置された2つのローラ106a、106bによって構成される。第2のローラ対106を構成する2つのローラ106a、106bは、いずれも、主走査方向に平行な軸心を中心として、当該軸心周りに回転可能とされている。第2のローラ対106は、主走査方向に沿って複数対設けられている。
【0039】
第2のローラ対106において、一方のローラ106aは、搬送用モータなどの駆動源(
図2における符号207を参照)に連結されている。第2のローラ対106において、他方のローラ106bは、2つのローラ106a、106bの間に記録媒体が存在しない場合は一方のローラ106aに当接するように設けられている。他方のローラ106bは、一方のローラ106aの回転にともなって当該一方のローラ106aとともに回転する。
【0040】
第2のローラ対106は、一方のローラ106aと他方のローラ106bとの間に記録媒体が介在する場合、一方のローラ106aと他方のローラ106bとが当接する位置において当該記録媒体を挟み込む。他方のローラ106bは、この状態で一方のローラ106aが回転することによって、搬送経路110中を搬送される記録媒体との摩擦によって回転する。
【0041】
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100のハードウエア構成について説明する。
図2は、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100のハードウエア構成を示す説明図である。
図2において、プリンタ100は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、通信I/F(インターフェイス)204と、サーミスタ205と、位置検出センサ206と、搬送用モータ207と、ワイヤ制御部208と、ヘッド駆動用モータ209を備えている。プリンタ100が備える各部201〜209は、バス200によって接続されている。
【0042】
CPU201は、プリンタ100の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。また、ROM202は、印字停止すべき規定温度に関する情報や、印字再開すべき規定温度に関する情報を記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。RAM203は、たとえば記録データに基づくドットパターンを展開する際に使用される。
【0043】
印字停止すべき規定温度は、記録動作に際して、当該記録動作を中断する判断基準となるインパクトプリントヘッド102の温度であって、インパクトプリントヘッド102の過熱によってインパクトプリントヘッド102が備えるヘッドコイルが焼損のおそれ(危険)がない温度に設定される。印字停止すべき規定温度は、ヘッドコイルが焼損する温度よりも低い温度に設定することができる。
【0044】
印字再開すべき規定温度は、中断した記録動作を再開する判断基準となるインパクトプリントヘッド102の温度であって、たとえば、印字停止すべき規定温度よりも低く設定することができる。印字再開すべき規定温度を印字停止すべき規定温度よりも低く設定することにより、中断した記録動作を再開後、すぐに再度中断することを防止できる。
【0045】
通信I/F204は、プリンタ100に接続された、図示を省略する外部装置との間におけるデータの入出力を司る。プリンタ100に接続される外部装置は、プリンタ100に対して、当該プリンタ100における記録動作の実行を指示するコマンドや、当該コマンドにしたがって記録媒体に記録するデータなどを含む記録データを出力する。プリンタ100と外部装置とは、有線接続されていてもよく、無線接続されていてもよい。
【0046】
CPU201は、通信I/F204を介して外部装置から受け付けた記録データに基づいて、ドットパターンをRAM203に展開したり、ワイヤ制御部208やヘッド駆動用モータ209に対して駆動制御信号を出力したりする。通信I/F204は、たとえば、位置検出センサ206からの出力信号に基づいてCPU201がプリンタ100における異常を検出した場合に、CPU201の制御により、外部装置に対してエラー信号を出力してもよい。
【0047】
サーミスタ205は、インパクトプリントヘッド102の温度に応じて出力が変化する。サーミスタ205は、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体によって実現することができる。サーミスタ205およびサーミスタ205を用いた温度検出方法については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0048】
位置検出センサ206は、搬送経路110における所定の位置に設けられ、当該所定の位置における記録媒体の有無に応じて出力が変化する。位置検出センサ206は、たとえば、記録部101による記録位置と第1のローラ対105との間に設けられ、第1のローラ対105から記録部101の記録位置に向かって搬送される記録媒体の先端位置を検出する。また、位置検出センサ206は、たとえば、記録部101の記録位置から第1のローラ対105側に向かって搬送される記録媒体の後端位置を検出することができる。
【0049】
搬送用モータ207は、CPU201からの駆動制御信号に基づいて、第1のローラ対105における一方のローラ105aおよび第2のローラ対106における一方のローラ106aの回転を駆動制御する。搬送用モータ207は、CPU201からの駆動制御信号に基づいて、第1のローラ対105における一方のローラ105aおよび第2のローラ対106における一方のローラ106aを正転させたり、逆転させたりする。
【0050】
搬送用モータ207は、たとえば、ステップモータによって実現することができる。この実施の形態においては、第1のローラ対105、第2のローラ対106、搬送用モータ207などによって、搬送機構を実現することができる。
【0051】
ワイヤ制御部208は、CPU201からの駆動制御信号に基づいてインパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤにそれぞれ対応する素子に選択的に通電し、該当するワイヤをプラテン103側に突出させる。
【0052】
ヘッド駆動用モータ209は、インパクトプリントヘッド102を主走査方向に往復動させる駆動力を発生する。ヘッド駆動用モータ209は、CPU201からの駆動制御信号に基づいて正転駆動および逆転駆動するよう制御され、主走査方向に沿って、インパクトプリントヘッド102を往動させたり復動させたりする。ヘッド駆動用モータ209は、たとえば、ステップモータによって実現することができる。
【0053】
ヘッド駆動用モータ209は、上記のリボン巻き取り軸を回転させる駆動力を発生する。ヘッド駆動用モータ209は、CPU201からの駆動制御信号に基づいて駆動制御され、リボン巻き取り軸を回転させることによって、インクリボンの繰り出しおよび巻き取りをおこなう。ヘッド駆動用モータ209は、たとえば、ステップモータによって実現することができる。
【0054】
記録媒体に対する記録動作に際して、CPU201は、搬送用モータ207を駆動制御するとともにヘッド駆動用モータ209を回転駆動しながら、インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤにそれぞれ対応する素子に選択的に通電する。搬送用モータ207を駆動制御することにより、第1のローラ対105における一方のローラ105aおよび第2のローラ対106における一方のローラ106aが回転し、記録媒体を所定方向に搬送することができる。
【0055】
ヘッド駆動用モータ209を回転駆動することにより、インパクトプリントヘッド102を主走査方向に往復動させることができる。インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤにそれぞれ対応する素子に選択的に通電することにより、当該インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤを選択的にプラテン103側に突出させることができる。この実施の形態において、インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤへの通電は、主走査方向における一端側から他端側に向かってインパクトプリントヘッド102が移動するように、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動している間におこなう。
【0056】
これにより、記録動作に際しては、記録媒体を副走査方向に沿って搬送するとともにインパクトプリントヘッド102を主走査方向に移動させながら、ワイヤを選択的に突出させ、1ライン分ずつ印字をおこなうことができる。記録動作にかかる制御は、RAM203をワークエリアとして使用しながらROM202に記憶された制御プログラムをCPU201が実行することによっておこなう。この実施の形態においては、CPU201、ROM202およびRAM203などによって、この発明にかかる制御部を実現することができる。
【0057】
(プリンタ100の動作状態ごとの記録媒体の位置)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の、動作状態ごとの記録媒体の位置について説明する。
図3および
図4は、記録動作を開始する状態のプリンタ100を示す説明図である。
図3においては、
図1と同様に、プリンタ100を側方から見た状態を示している。
図4においては、
図3におけるA矢視図を示している。
【0058】
図3および
図4において、記録動作を開始する状態のプリンタ100においては、記録媒体Pの先端部分が、記録部101による記録位置に位置付けられている。より詳細には、記録動作を開始する状態のプリンタ100においては、記録媒体Pにおける記録開始位置が記録部101による記録位置に位置付けられ、その分、記録媒体Pの先端が記録媒体Pにおける記録開始位置よりもプリンタ100の背面側に位置付けられている。
【0059】
プリンタ100は、
図3および
図4に示した状態から記録動作を開始する。具体的には、上記のように、記録動作に際しては、外部装置から受け付けた記録データに基づいて、記録媒体Pを副走査方向に沿って搬送するとともにインパクトプリントヘッド102を主走査方向に移動させながら、ワイヤを選択的に突出させ、1ライン分ずつ印字をおこなう。
【0060】
図5および
図6は、記録動作中の状態のプリンタ100を示す説明図である。
図5においては、
図1や
図3と同様に、プリンタ100を側方から見た状態を示している。
図6においては、
図5におけるA矢視図を示している。
図5および
図6において、記録動作中の状態のプリンタ100においては、記録媒体Pの先端部分が、記録部101による記録位置を通過し、当該記録位置よりもプリンタ100における背面側に位置付けられている。
【0061】
図7および
図8は、冷却動作時の状態のプリンタ100を示す説明図である。
図7においては、
図1、
図3および
図5と同様に、プリンタ100を側方から見た状態を示している。
図8においては、
図7におけるA矢視図を示している。
【0062】
図7および
図8において、冷却動作時の状態のプリンタ100においては、記録媒体Pが、記録部101による記録位置から退避した位置に位置付けられている。この実施の形態においては、冷却動作時の状態のプリンタ100においては、記録媒体Pの先端が、記録部101による記録位置と第1のローラ対105との間に位置付けられている。
【0063】
(プリンタ100の処理手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の処理手順について説明する。
図9、
図10、
図11および
図12は、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100の処理手順を示すフローチャートである。
【0064】
図9のフローチャートに示した処理は、プリンタ100が、外部装置から出力された記録データを受け付けた場合におこなわれる、記録動作の処理手順を示している。
図9のフローチャートにおいて、まず、外部装置から出力された記録データを受け付けるまで待機する(ステップS901:No)。ステップS901において、記録データを受け付けた場合(ステップS901:Yes)、受け付けた記録データに基づいて、ドットパターンをRAM203に展開する(ステップS902)。
【0065】
つぎに、搬送用モータ207を正転駆動して(ステップS903)、記録媒体Pにおける記録開始位置が記録部101による記録位置に位置付けられるように、記録媒体Pを搬送する。ステップS903においては、たとえば、位置検出センサ206からの出力信号に基づいて、記録部101による記録位置と第1のローラ対105との間において記録媒体Pの先端位置を検出してから、当該記録媒体Pにおける記録開始位置が記録部101の記録位置に位置付けられるまでの所定量、記録媒体Pが搬送されるように、搬送用モータ207を正転方向に駆動する。
【0066】
つぎに、ステップS901:Yesにおいて受け付け、ステップS902においてRAM203に展開した記録データに基づいて、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動しながら、インパクトプリントヘッド102に通電する(ステップS904)。ステップS904においては、たとえば、主走査方向における一端側から他端側に向かってインパクトプリントヘッド102が移動するように、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する。そして、1ライン分の記録データに基づいて、主走査方向におけるインパクトプリントヘッド102の位置に応じて、インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤにそれぞれ対応する素子に選択的に通電する。これにより、1ライン分の記録動作がおこなわれる。
【0067】
つぎに、1ライン分の記録データに基づく1ライン分の記録動作が完了したかを判断する(ステップS905)。ステップS905において、1ライン分の記録動作が完了していない場合(ステップS905:No)、ステップS904へ移行する。一方、ステップS905において、1ライン分の記録動作が完了した場合(ステップS905:Yes)、つぎの1ライン分の記録データがあるか否かを判断する(ステップS906)。
【0068】
ステップS906において、つぎの1ライン分の記録データがある場合(ステップS906:Yes)、ステップS903へ移行する。この場合、ステップS903においては、1ライン分、搬送用モータ207を正転駆動する。
【0069】
これにより、記録媒体Pが1ライン分搬送され、つぎの1ライン分の記録データに基づいて、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動しながら、インパクトプリントヘッド102が備える複数のワイヤにそれぞれ対応する素子に選択的に通電し、つぎの1ライン分の記録動作がおこなわれる。このように、プリンタ100においては、つぎの1ライン分の記録データがなくなるまで、すなわち、ステップS901:Yesにおいて受け付けた記録データに基づく記録動作が終了するまで、搬送用モータ207を1ライン分ずつ駆動しながら、ワイヤ制御部208とヘッド駆動用モータ209とを駆動することによって記録動作がおこなわれる。
【0070】
一方、ステップS906において、つぎの1ライン分の記録データがない場合(ステップS906:No)、搬送用モータ207を所定量駆動制御して(ステップS907)、一連の処理を終了する。ステップS907においては、たとえば、記録媒体Pとして単票紙を用いている場合は、当該単票紙が搬送経路110の外へ排出されるまで搬送用モータ207を駆動制御する。また、ステップS907においては、たとえば、記録媒体Pとして連続紙を用いている場合は、最後に記録した1ラインが、第2のローラ対106よりも、記録部101の記録位置から離間するまで搬送用モータ207を駆動制御する。
【0071】
図10のフローチャートに示した処理は、プリンタ100が、上記の
図9のフローチャートに示した処理を実行している間、すなわち記録動作をおこなっている間、並行しておこなわれる。
図10のフローチャートに示した処理は、記録動作が開始された場合に開始される。
【0072】
図10のフローチャートにおいて、まず、
図9のフローチャートに示した処理により搬送された、記録媒体Pの搬送量を算出する(ステップS1001)。ステップS1001においては、一連の記録データに基づいておこなわれる、一連する記録動作における記録媒体Pの搬送量を算出する。ステップS1001においては、たとえば、
図9のステップS901:Yesにおいて記録データを受け付けてからの記録媒体Pの累積の搬送量を算出する。記録媒体Pの搬送量は、たとえば、
図9のステップS901:Yesにおいて記録データを受け付けてから、搬送用モータ207を正転駆動するために供給したステップ数に基づいて算出することができる。
【0073】
つぎに、ステップS1001において算出した搬送量を記憶して(ステップS1002)、一連の処理を終了する。ステップS1002においては、算出した搬送量を、たとえば、RAM203などに記憶する。ステップS1002において記憶した搬送量は、つぎの記録データを受け付けた場合はリセットされ、あらたに算出される。
【0074】
図11のフローチャートに示した処理は、プリンタ100が、上記の
図9のフローチャートに示した処理を実行している間、すなわち記録動作をおこなっている間、並行しておこなわれる。
図11のフローチャートに示した処理は、記録動作が開始された場合に開始される。
【0075】
図11のフローチャートにおいて、まず、サーミスタ205からの出力値に基づいて、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達したか否かを判断する(ステップS1101)。ステップS1101においては、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達していない場合(ステップS1101:No)、継続して、サーミスタ205からの出力値に基づいて、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達したか否かを判断する。
【0076】
ステップS1101において、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達した場合(ステップS1101:Yes)、記録動作中断処理を起動して(ステップS1102)、一連の処理を終了する。
【0077】
図12のフローチャートに示した処理は、上記の
図11のフローチャートにおけるステップS1102の処理によって開始される。
図12のフローチャートに示した処理は、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達した場合に、
図9のフローチャートに示した処理に割り込んで開始される。
【0078】
図12のフローチャートにおいて、まず、
図9のフローチャートに示した処理によって実行中の記録動作を中断する(ステップS1201)。ステップS1201においては、ヘッド駆動用モータ209を停止して、主走査方向におけるインパクトプリントヘッド102の移動を停止させるとともに、インパクトプリントヘッド102への通電を停止する。これにより、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達した場合は、主走査方向におけるインパクトプリントヘッド102の位置にかかわらず、記録動作が停止される。
【0079】
つぎに、ステップS1201において記録動作を中断した中断位置を記憶する(ステップS1202)。ステップS1202においては、たとえば、1ライン分の記録動作に際して、主走査方向における一端側から他端側へ向かってインパクトプリントヘッド102を移動させる場合、当該一端側からステップS1201において記録動作を中断するまでに、当該インパクトプリントヘッド102の移動のためにヘッド駆動用モータ209に供給したステップ数を記憶する。
【0080】
また、ステップS1202においては、たとえば、ステップS1201において停止されるまでに打ち出したドット、あるいは、つぎに打ち出されるドットの位置を記憶する。また、ステップS1202においては、たとえば、ステップS1002において記憶した搬送量に基づいて、副走査方向において、記録動作を中断した位置を記憶する。
【0081】
つぎに、ステップS1002において記憶した搬送量に基づいて、一連する記録動作を開始した位置から中断した位置までの記録媒体Pの搬送量が、あらかじめ定められた所定搬送量以上であるか否かを判断する(ステップS1203)。ステップS1203において、搬送量が所定搬送量以上である場合(ステップS1203:Yes)、ステップS1208へ移行する。
【0082】
ステップS1203において、搬送量が所定搬送量以上ではない、すなわち搬送量が所定搬送量未満である場合(ステップS1203:No)、搬送用モータ207を逆転駆動する(ステップS1204)。ステップS1204においては、インパクトプリントヘッド102が冷却位置に達するまで(ステップS1205:No)、搬送用モータ207を逆転駆動する。
【0083】
冷却位置は、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとが、副走査方向において重複しない位置関係となる位置であり、この実施の形態においては、インパクトプリントヘッド102の位置が固定されていることから、記録媒体Pが記録部101の記録位置から退避した位置とする。また、この実施の形態においては、記録媒体Pが連続紙であることを想定し、記録媒体Pの先端が、記録媒体Pが記録部101の記録位置から退避するまで、当該記録媒体Pを記録動作における搬送方向とは逆方向に搬送した位置とする。これにより、記録媒体Pが連続紙であっても単票紙であっても、記録媒体Pを記録部101の記録位置から退避した位置に位置付けることができる。
【0084】
ステップS1205において、インパクトプリントヘッド102が冷却位置に達した場合(ステップS1205:Yes)、逆転駆動している搬送用モータ207を停止する(ステップS1206)。これにより、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとが、副走査方向において重複しない位置関係になるように、記録部101の記録位置に対する記録媒体Pの位置を移動させることができる。そして、これにより、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとが、副走査方向において重複しない位置関係になるように、互いの相対的な位置関係を調整することができる。
【0085】
つぎに、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する(ステップS1207)。ステップS1207においては、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまで(ステップS1208:No)、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する。また、ステップS1207においては、インパクトプリントヘッド102の往復動範囲において、主走査方向の一端側から他端側までの間を、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまで、インパクトプリントヘッド102が往復動作するように、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する。
【0086】
上記のステップS1203:Yesを経由した場合、ステップS1208においては、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとの副走査方向における相対的な位置関係の調整をおこなわず、インパクトプリントヘッド102の位置を固定した状態で、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまで待機する。
【0087】
ステップS1208において、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回った場合(ステップS1208:Yes)、インパクトプリントヘッド102を復帰位置に移動させる(ステップS1209)。ステップS1209においては、たとえば、上記のステップS1203:Noを経由した場合、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動するとともに、搬送用モータ207を正転駆動することによって、インパクトプリントヘッド102を復帰位置に位置付ける。
【0088】
また、ステップS1209においては、たとえば、上記のステップS1203:Yesを経由した場合、インパクトプリントヘッド102の副走査方向における位置(ライン)は記録動作を中断した位置(ライン)と同じであるため、ヘッド駆動用モータ209のみを回転駆動することによって、インパクトプリントヘッド102を復帰位置に位置付ける。
【0089】
復帰位置は、ステップS1201において記録動作を中断したときのインパクトプリントヘッド102の位置に基づいて定められる。具体的には、たとえば、1ライン分の記録データに基づく1ライン分の記録動作の途中で当該記録動作を中断した場合、副走査方向において、中断した位置と同じラインであって、主走査方向において、中断した位置よりも一端側に所定ステップ数移動した位置が復帰位置とされる。また、具体的には、たとえば、1ライン分の記録データに基づく1ライン分の記録動作を完了した時点で当該記録動作を中断した場合、主走査方向において、インパクトプリントヘッド102の往復動範囲のもっとも一端側の位置が復帰位置とされる。
【0090】
主走査方向において、復帰位置は、一端側から他端側に移動するインパクトプリントヘッド102の移動速度が、記録動作をおこなう速度まで加速するために要する加速距離以上、中断した位置よりも一端側に移動した位置とする。これにより、中断した位置から記録動作を再開した場合に、中断せずに記録動作をおこなった場合と同等の記録品質を確保することができる。
【0091】
これにより、インパクトプリントヘッド102は、ステップS1201において中断した記録動作と同じラインに位置付けられる。より詳細には、インパクトプリントヘッド102は、ステップS1201において中断した記録動作と同じラインであって、当該中断した位置よりも一端側に所定ステップ数移動した位置に位置付けられる。この実施の形態において、上記のステップS1001において算出し、ステップS1002において記憶する記録媒体Pの搬送量は、ステップS1209において搬送用モータ207を正転駆動した分の搬送量は含まない。
【0092】
つぎに、インパクトプリントヘッド102が一端側から他端側に移動する方向に、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する(ステップS1210)。ステップS1210においては、インパクトプリントヘッド102が記録再開の位置に達するまで(ステップS1211:No)、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する。ステップS1210においては、インパクトプリントヘッド102が記録再開の位置に達するまでに、記録動作をおこなう速度まで加速するように、ヘッド駆動用モータ209を回転駆動する。記録再開の位置は、ステップS1202において記憶した、記録動作を中断した中断位置によって実現することができる。
【0093】
ステップS1211において、インパクトプリントヘッド102が記録再開の位置に達した場合(ステップS1211:Yes)、上記の
図9のフローチャートに示した処理、すなわち記録動作を、ステップS1201の処理によって中断した位置から再開させ(ステップS1212)、一連の処理を終了する。
【0094】
(中断時のインパクトプリントヘッド102の停止位置)
つぎに、記録動作の中断時のインパクトプリントヘッド102の停止位置について説明する。
図13は、記録動作の中断時のインパクトプリントヘッド102の停止位置を示す説明図である。
【0095】
図13において、実線で示されたアルファベットは記録済みであることを示し、点線で示されたアルファベットは未記録であることを示している。
図13においては、実線および点線で示されたアルファベットを記録する記録データに基づく記録動作の中断時のインパクトプリントヘッド102の停止位置を示している。また、
図13において、符号1301で示す四角形は、インパクトプリントヘッド102が備えるワイヤの打ち付け位置の範囲を示している。
【0096】
図13に示すように、上記の
図12のフローチャートにおけるステップS1201において記録動作を中断すると、実際には、インパクトプリントヘッド102は、記録動作時の移動速度から減速して停止するため、記録動作を中断した位置から減速距離1300分移動した位置で停止する。
【0097】
上記の
図12のフローチャートにおけるステップS1202において記憶する中断位置は、インパクトプリントヘッド102が実際に停止した位置とすることができる。この場合、減速距離1300に基づいて、記録媒体Pへのワイヤの打ち付けを中断した位置、すなわち、ステップS1201において停止されるまでに打ち出したドット、あるいは、つぎに打ち出されるドットの位置を記憶することができる。上記の
図12のフローチャートにおけるステップS1202において記憶する中断位置は、インパクトプリントヘッド102の減速を開始した位置であってもよい。
【0098】
(復帰位置の一例)
つぎに、復帰位置の一例について説明する。
図14は、インパクトプリントヘッド102の復帰位置の一例を示す説明図である。上記のように、復帰位置は、記録動作をおこなう速度まで加速するために要する加速距離以上、中断した位置よりも一端側に移動した位置とする。
図14に示すように、1ライン分の記録データに基づく記録動作を、主走査方向におけるもっとも他端側のドットを打ち出した後に中断した場合、記録動作の再開の位置は、つぎの1ラインの、主走査方向におけるもっとも一端側のドットの打ち出しを開始する位置よりも、加速距離1400分離間した位置となる。
【0099】
(記録動作の再開の位置)
つぎに、記録動作の再開の位置の一例について説明する。
図15は、インパクトプリントヘッド102の記録動作の再開の位置の一例を示す説明図である。
図15に示すように、記録動作の再開の位置は、上記の復帰位置から、主走査方向において一端側から他端側に移動するインパクトプリントヘッド102の移動速度が、記録動作をおこなう速度まで加速する位置であって、記録動作を中断した位置よりも、主走査方向において一端側とする。
【0100】
上記のように、加速距離を考慮して復帰位置を定めることにより、記録動作の再開の位置においては、記録動作の中断により記録媒体Pへのワイヤの打ち付けを中断した位置において、インパクトプリントヘッド102の移動速度が、記録動作をおこなう速度まで達している。これにより、中断した位置から記録動作を再開した場合に、中断せずに記録動作をおこなった場合と同等の記録品質を確保することができる。
【0101】
上述した実施の形態においては、冷却動作時の状態のプリンタ100においては、記録媒体Pの先端が、記録部101による記録位置と第1のローラ対105との間に位置付けられるように、当該記録媒体Pの位置を調整する例について説明したが、冷却動作時の状態のプリンタ100における記録媒体Pの位置はこれに限るものではない。たとえば、記録媒体Pが単票紙である場合、記録媒体Pの後端位置が、記録部101による記録位置と第2のローラ対106との間に位置付けられるように、当該記録媒体Pの位置を調整するようにしてもよい。
【0102】
以上説明したように、この実施の形態のプリンタ100は、副走査方向に沿って記録媒体Pを搬送する搬送機構を実現する第1のローラ対105、第2のローラ対106および搬送用モータ207と、これらのローラ対によって搬送される記録媒体Pに対して記録動作をおこなう、当該副走査方向に交差する主走査方向に沿って往復動可能に設けられたプリントヘッドを実現するインパクトプリントヘッド102と、を備えている。また、この実施の形態のプリンタ100は、インパクトプリントヘッド102の温度に応じて出力が変化するセンサを実現するサーミスタ205と、サーミスタ205からの出力値に基づいて第1のローラ対105および第2のローラ対106およびインパクトプリントヘッド102を駆動制御して記録動作をおこなう制御部を実現するCPU201、ROM202およびRAM203と、を備えている。
【0103】
また、この実施の形態のプリンタ100は、サーミスタ205からの出力値に基づいて、記録動作中に、インパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達した場合、進行中の記録動作を中断し、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとが副走査方向において重複しない位置関係になるように、当該プリントヘッドと当該記録媒体Pとの相対的な位置関係を調整した状態で当該インパクトプリントヘッド102を往復動作させる。
【0104】
そして、この実施の形態のプリンタ100は、サーミスタ205からの出力値に基づいて、往復動作中に、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回った場合、進行中の記録動作を中断した位置に基づく記録再開の位置関係になるように、当該インパクトプリントヘッド102と当該記録媒体Pとの位置関係を調整し、中断した進行中の記録動作を再開するようにしたことを特徴としている。
【0105】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、記録動作中にインパクトプリントヘッド102の温度が印字停止すべき規定温度に達すると、当該記録動作を中断して、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまでインパクトプリントヘッド102を往復動作させることにより、インパクトプリントヘッド102を迅速に冷却(空冷)することができる。これによって、インパクトプリントヘッド102の過熱に起因してヘッドコイルが焼損することを防止できる。
【0106】
また、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、インパクトプリントヘッド102の冷却に際して、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとの副走査方向における位置関係を互いに重複しない位置関係になるように調整した状態でインパクトプリントヘッド102を往復動作させることにより、冷却中のインパクトプリントヘッド102が記録媒体Pに擦れて記録媒体Pが汚れることを防止できる。これによって、良好な記録品質を確保することができる。
【0107】
このように、この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、インパクトプリントヘッド102の過熱に起因するヘッドコイルの焼損を防止し、かつ、インパクトプリントヘッド102を迅速に冷却することによって記録動作開始から完了までの時間短縮を図るとともに、冷却中のインパクトプリントヘッド102との擦れによる記録品質の低下を防止することによって良好な記録品質を確保することができる。
【0108】
また、この実施の形態のプリンタ100は、記録媒体Pの搬送経路110とインパクトプリントヘッド102との間に位置付けられるインクリボンを備え、インパクトプリントヘッド102は、インクリボンを介して、記録媒体Pに対して複数本のワイヤを選択的に突出させることによりインパクト方式による記録動作をおこなうことを特徴としている。
【0109】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、冷却のためにインパクトプリントヘッド102を往復動作させた場合にも、インパクトプリントヘッド102の往復動作に起因してインクリボンが記録媒体Pに擦りつけられたり接触したりすることによって、記録媒体Pにおける意図しない部分にインクが付着し、これが汚れとなることを防止することができる。
【0110】
これによって、インパクトプリントヘッド102を迅速に冷却することによって記録動作開始から完了までの時間短縮を図るとともに、冷却中のインパクトプリントヘッド102との擦れによる記録品質の低下を防止することによって良好な記録品質を確保することができる。
【0111】
また、この実施の形態のプリンタ100は、第1のローラ対105、第2のローラ対106および搬送用モータ207を駆動制御して、インパクトプリントヘッド102の記録位置から記録媒体Pを退避させることにより、当該インパクトプリントヘッド102と当該記録媒体Pとの相対的な位置関係を調整することを特徴としている。
【0112】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、インパクトプリントヘッド102の冷却のための格別な機構を設けることなくインパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとの位置関係を調整することができる。これにより、プリンタ100を大型化することなく、ヘッドコイルの焼損を防止し、かつ、インパクトプリントヘッド102を迅速に冷却することによって記録動作開始から完了までの時間短縮を図るとともに、冷却中のプリントヘッドとの擦れによる記録品質の低下を防止することによって良好な記録品質を確保することができる。
【0113】
また、インパクトプリントヘッド102の冷却機能を備えていないプリンタ100と比較して、部品点数や、プリンタ100の製造工程数が増加することを抑え、部品の管理にかかるコストや、インパクトプリントヘッド102の冷却機能を備えたプリンタ100の製造にかかるコストを抑えることができる。
【0114】
また、この実施の形態のプリンタ100は、進行中の記録動作を中断した場合、一連する記録動作を開始した位置から中断した位置までの搬送機構による記録媒体Pの搬送量が所定搬送量未満である場合、インパクトプリントヘッド102と記録媒体Pとが副走査方向において重複しない位置関係になるように、当該プリントヘッドと当該記録媒体Pとの相対的な位置関係を調整した状態で、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回ったか否かを判断する。一方、搬送量が所定搬送量以上である場合、進行中の記録動作を中断した位置にインパクトプリントヘッド102を位置付けた状態で、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回ったか否かを判断するようにしたことを特徴としている。
【0115】
この発明にかかる実施の形態のプリンタ100によれば、一連する記録動作を開始した位置から所定搬送量以上記録媒体Pを搬送している状態で記録動作を中断した場合、インパクトプリントヘッド102の位置を中断した位置に固定した状態で、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまで待機し、インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回った場合に、記録動作を再開することができる。
【0116】
これにより、副走査方向においてインパクトプリントヘッド102と重複しない位置まで記録媒体Pを搬送する時間や、当該位置まで搬送した記録媒体Pを一連の記録動作を中断した位置まで搬送する時間、すなわち、インパクトプリントヘッド102の冷却のための記録媒体Pの搬送にかかる時間を考慮して冷却の方法を選択し、適切な方法でインパクトプリントヘッド102を冷却することができる。
【0117】
また、インパクトプリントヘッド102を往復動作させた場合に当該インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまでの時間と、記録媒体Pを退避させずに当該記録媒体Pおよびインパクトプリントヘッド102の位置を記録動作の中断時の位置に固定した状態で当該インパクトプリントヘッド102の温度が印字再開すべき規定温度を下回るまでの時間とを考慮して冷却の方法を選択し、適切な方法でインパクトプリントヘッド102を冷却することができる。
【0118】
これによって、プリンタ100を大型化することなく、インパクトプリントヘッド102を迅速に冷却することによって記録動作開始から完了までの時間短縮を図るとともに、冷却中のインパクトプリントヘッド102との擦れによる記録品質の低下を防止することによって良好な記録品質を確保することができる。
【0119】
なお、この実施の形態で説明した記録方法は、記録媒体の搬送機構と、プリントヘッドと、プリントヘッドの温度に応じて出力が変化するセンサと、を備えたプリンタの制御部などのコンピュータで、あらかじめ用意されたプログラムを実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行されるものであってもよい。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。