特許第6297451号(P6297451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297451
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20180312BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20180312BHJP
   G01F 23/36 20060101ALI20180312BHJP
   G01F 23/76 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   F02M37/00 301R
   F02M37/10 C
   F02M37/00 301L
   F02M37/10 G
   G01F23/36
   !G01F23/76 Z
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-171442(P2014-171442)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44643(P2016-44643A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】福井 達紀
(72)【発明者】
【氏名】東 慎也
(72)【発明者】
【氏名】村越 勇一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝享
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晶大
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 建介
(72)【発明者】
【氏名】石田 英智
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184760(JP,A)
【文献】 特開2006−009729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0020289(US,A1)
【文献】 米国特許第05272918(US,A)
【文献】 特開平11−264353(JP,A)
【文献】 米国特許第06000913(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−37/22,
B60K 11/00−15/10,
G01F 23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの開口部に取り付けられる蓋部材と、ポンプを備えるポンプユニットと、前記蓋部材と前記ポンプユニットとを連結する連結部とを備え、前記ポンプユニットは前記連結部に対して回転移動可能に連結される燃料供給装置であって、
前記ポンプユニットには燃料の残量を検出するために使用される燃料残量検出装置が取り付けられており、前記燃料残量検出装置は、電気配線が接続されるゲージ本体と、前記ゲージ本体に対して相対移動可能に取り付けられているアーム部と、前記アーム部の先端側に取り付けられたフロートを備えており、
前記ポンプユニットを前記燃料タンクに挿入する際には、前記連結部に対して前記ポンプユニットが回転自在な状態で前記蓋部材を把持して吊り上げた状態とされ、
前記蓋部材の吊り上げ状態では、前記ポンプユニットが垂れ下がり、前記フロートが前記アーム部と共に垂れ下がり、
前記蓋部材の吊り上げ状態で垂れ下がる前記フロートが前記ポンプユニットのベース部の下端よりも上方に位置する燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記連結部は、少なくともその一部が移動することにより、前記ポンプユニットと前記蓋部材との距離を変更可能に連結する燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記ポンプユニットは、前記連結部又は前記ポンプユニットの何れか一方に形成される連結軸が、他方に形成される連結孔に挿通された状態で、前記ポンプユニットが前記連結部に対して相対移動可能に接続される燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記ポンプユニットには前記ポンプユニットの底面と交差する方向に延びる凸部を備えており、前記凸部が燃料タンクに設けられた円形の開口部内に配置されたポンプユニットの移動範囲を規制することにより、前記開口部の縁に前記ゲージ本体が当接することを抑制する燃料供給装置。
【請求項5】
燃料タンクの開口部に取り付けられる蓋部材と、ポンプを備えるポンプユニットと、前記蓋部材と前記ポンプユニットとを連結する連結部とを備え、前記ポンプユニットは前記連結部に対して回転移動可能に連結される燃料供給装置であって、
前記ポンプユニットには燃料の残量を検出するために使用される燃料残量検出装置が取り付けられており、前記燃料残量検出装置は、電気配線が接続されるゲージ本体と、前記ゲージ本体に対して相対移動可能に取り付けられているアーム部と、前記アーム部の先端側に取り付けられたフロートを備えており、
前記ポンプユニットには前記ポンプユニットの底面と交差する方向に延びる凸部を備えており、前記凸部が燃料タンクに設けられた円形の開口部内に配置されたポンプユニットの移動範囲を規制することにより、前記開口部の縁に前記ゲージ本体が当接することを抑制する燃料供給装置。
【請求項6】
請求項4乃至5の何れか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記ゲージ本体は前記ポンプユニットに備えられた前記凸部の側面に取り付けられており、前記凸部は前記ゲージ本体よりもベース部の外周側に配置されている燃料供給装置。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記ゲージ本体は前記ポンプユニットに備えられた前記凸部の側面に取り付けられており、前記凸部にはカバー部を備えており、
前記ゲージ本体が前記カバー部と前記ベース部との間に配置されている燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関する。詳しくは、自動車等の車両に搭載される燃料タンク内の燃料を内燃機関に供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料供給装置を燃料タンクに取り付けることは広く知られている。この際、燃料タンクの上面部に設けた開口部から燃料供給装置の一部を挿入して取り付けることも広く知られている。また、特許文献1に記載されているように、燃料供給装置に設けたポンプユニットが回転可能となるように構成することも知られている。また、燃料タンクに蓄えられた燃料の残量を検知するために、ポンプユニットにセンダーゲージといわれる燃料残量検出装置を取り付けることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−184760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においても、なお改良の余地がある。特許文献1に記載の燃料供給装置であると、燃料供給装置を燃料タンクに取り付ける際に、燃料残量検出装置が燃料タンクの底面部や開口部の縁に衝突する恐れがあった。燃料残量検出装置が燃料タンクに衝突して変形などが生じると、燃料残量検出装置が予定していた機能を十分に発揮できなくなる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、燃料供給装置に設けられた燃料残量検出装置が燃料タンクに衝突することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段をとる。先ず、第1の発明は、燃料タンクの開口部に取り付けられる蓋部材と、ポンプを備えるポンプユニットと、前記蓋部材と前記ポンプユニットとを連結する連結部とを備え、前記ポンプユニットは前記連結部に対して回転移動可能に連結される燃料供給装置であって、前記ポンプユニットには燃料の残量を検出するために使用される燃料残量検出装置が取り付けられており、前記燃料残量検出装置は、電気配線が接続されるゲージ本体と、前記ゲージ本体に対して相対移動可能に取り付けられているアーム部と、前記アーム部の先端側に取り付けられたフロートを備えており、前記連結部に対して前記ポンプユニットが回転自在な状態で前記蓋部材を把持して吊り上げた状態では、前記フロートが前記ポンプユニットのベース部の下端よりも上方に位置する燃料供給装置である。
【0007】
この第1の発明によれば、燃料残量検出装置の構成要素であるフロートではなく、ポンプユニットのベース部のほうが燃料タンクに当接することになるため、フロートの破損やアーム部の変形などを抑制することが可能となり、燃料残量検出装置は予定されている機能を発揮することが可能となり得る。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記連結部は、少なくともその一部が移動することにより、前記ポンプユニットと前記蓋部材との距離を変更可能に連結する燃料供給装置である。
【0009】
この第2の発明によれば、連結部は、前記ポンプユニットと前記蓋部材との距離を変更可能に連結するものであるため、ポンプユニットが燃料タンクに当接してから更に押し込むように蓋部材を下方に移動させる取り付け態様となるものである。その分ポンプユニットは、燃料タンクに押し付けられることになりやすい構成である。そのような態様の燃料供給装置であっても、フロート部が燃料タンクの底面部に当接することが回避されているため、フロート部の破損を気にせずに蓋部材を速やかに燃料タンクに取り付けることが可能となり得る。また、ポンプユニットを燃料タンクの底面部に固定することが可能となり得る。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ポンプユニットは、前記連結部又は前記ポンプユニットの何れか一方に形成される連結軸が、他方に形成される連結孔に挿通された状態で、前記ポンプユニットが前記連結部に対して相対移動可能に接続される燃料供給装置である。
【0011】
この第3の発明によれば、連結部に対してポンプユニットが相対移動する際には連結軸が連結孔に接しながら移動することが可能であるため、ポンプユニットは揺動するように移動し得るものである。そのため、ポンプユニットが燃料タンクの底部との接触位置を変更しながら移動しうるものである。そのような態様であっても、フロート部が燃料タンクの底面部に当接することが回避されているため、フロート部の破損を気にせずに蓋部材を速やかに燃料タンクに取り付けることが可能となり得る。また、ポンプユニットを燃料タンクの底面部に固定することが可能となり得る。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、前記ポンプユニットには前記ポンプユニットの底面と交差する方向に延びる凸部を備えており、前記凸部が燃料タンクに設けられた円形の開口部内に配置されたポンプユニットの移動範囲を規制することにより、前記開口部の縁に前記ゲージ本体が当接することを抑制する燃料供給装置である。
【0013】
この第4の発明によれば、燃料タンクの開口部の縁に対してゲージ本体が衝突することが抑制される。したがって、燃料残量検出装置の不具合を抑制することが可能となり得る。
【0014】
第5の発明は、燃料タンクの開口部に取り付けられる蓋部材と、ポンプを備えるポンプユニットと、前記蓋部材と前記ポンプユニットとを連結する連結部とを備え、前記ポンプユニットは前記連結部に対して回転移動可能に連結される燃料供給装置であって、前記ポンプユニットには燃料の残量を検出するために使用される燃料残量検出装置が取り付けられており、前記燃料残量検出装置は、電気配線が接続されるゲージ本体と、前記ゲージ本体に対して相対移動可能に取り付けられているアーム部と、前記アーム部の先端側に取り付けられたフロートを備えており、前記ポンプユニットには前記ポンプユニットの底面と交差する方向に延びる凸部を備えており、前記凸部が燃料タンクに設けられた円形の開口部内に配置されたポンプユニットの移動範囲を規制することにより、前記開口部の縁に前記ゲージ本体が当接することを抑制する燃料供給装置である。
【0015】
この第5の発明によれば、燃料タンクの開口部の縁に対してゲージ本体が衝突することが抑制される。したがって、燃料残量検出装置の不具合を抑制することが可能となり得る。
【0016】
第6の発明は、第4又は第5の何れかの発明において、前記ゲージ本体は前記ポンプユニットに備えられた前記凸部の側面に取り付けられており、前記凸部は前記ゲージ本体よりもベース部の外周側に配置されている燃料供給装置である。
【0017】
この第6の発明によれば、凸部はゲージ本体が開口部の縁に接することを抑制するように機能する。しかも、当該凸部はゲージ本体を取り付けるために使用されるものであることから、凸部を有効に利用することが可能となる。
【0018】
第7の発明は、第4乃至第6の何れかの発明において、前記ゲージ本体は前記ポンプユニットに備えられた前記凸部の側面に取り付けられており、前記凸部にはカバー部を備えており、前記ゲージ本体が前記カバー部と前記ベース部との間に配置されている燃料供給装置である。
【0019】
この第7の発明によれば、凸部はゲージ本体が開口部の縁に接することを抑制するように機能する。しかも、当該凸部はカバー部を備えるものであることから、凸部がベース部から突出する高さを抑制することが可能となりうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、燃料供給装置に設けられた燃料残量検出装置が燃料タンクに衝突することを抑制することが可能となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の燃料供給装置の斜視図である。
図2】実施例1の燃料供給装置を燃料タンク内に挿入していることを表す概念図である。
図3】実施例1におけるポンプユニットと燃料タンクの開口部との関係を表す図である。ただし、燃料タンク内からポンプユニットが見える様子を表している。
図4】実施例2における燃料供給装置を左側から見た概念図である。
図5】実施例2における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図6】実施例3における燃料供給装置を左側から見た概念図である。
図7】実施例3における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図8】実施例4における燃料供給装置を左側から見た概念図である。
図9】実施例4における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図10】実施例5における燃料供給装置を左側から見た概念図である。
図11】実施例5における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図12】実施例6における燃料供給装置の斜視図である。
図13】実施例7における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図14】実施例7におけるポンプユニットと燃料タンクの開口部との関係を表す図である。ただし、燃料タンク内からポンプユニットが見える様子を表している。
図15】実施例7のゲージ本体の配置を変更したポンプユニットと燃料タンクの開口部との関係を表す図である。ただし、燃料タンク内からポンプユニットが見える様子を表している。
図16】実施例8における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図17】実施例9における燃料供給装置を左側から見た概念図である。
図18】実施例9における燃料供給装置を前側から見た概念図である。
図19】実施例9におけるポンプユニットと燃料タンクの開口部との関係を表す図である。ただし、燃料タンク内からポンプユニットが見える様子を表している。
図20】実施例9の燃料供給装置を燃料タンク内に挿入していることを表す概念図である。
図21】従来の燃料供給装置を燃料タンク内に挿入していることを表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態について、適宜図面を用いながら説明する。なお、本明細書における前後方向、上下方向、左右方向などの方向は、図1などに示したXが前方向、Yが左方向、Zが上方向と規定する。例えば、通常、燃料供給装置1の蓋部材2が位置する側が上側でポンプユニット4が位置する側が下側となる。また、ポンプユニット4が回転する回転軸方向が左右方向である。また、当該回転軸方向に直交するとともに、上下方向に直交する方向が前後方向である。
【0023】
本実施の形態における燃料供給装置1は乗物に搭載されるものである。特に、乗物の中でも車両に搭載されるものである。燃料供給装置1は、車両の床面よりも下方に配置した燃料タンク7に取り付けられるものであり、燃料タンク7内の液体燃料を図示しない内燃機関に送液するために使用されるものである。
【実施例1】
【0024】
本実施例における燃料供給装置1は、燃料タンク7の上面部71に設けられた開口部72に取り付けられる蓋部材2と、燃料タンク7内の燃料を外部に送液するために使用されるポンプ41を備えたポンプユニット4と、蓋部材2とポンプユニット4を連結するために使用される連結部3と、燃料タンク7における燃料の残量を検出するために使用される燃料残量検出装置48とを備えている。ポンプユニット4は、燃料タンク7の底面部73に設置されるものであり、燃料タンク7の開口部72に蓋部材2を取り付けることにより、燃料タンク7の開口部72を閉じることが可能であるとともに、ポンプユニット4を燃料タンク7の底面部73に沿って設置可能なものである。
【0025】
本実施例の蓋部材2は、燃料タンク7の開口部72を覆うことになるセットプレート部21を備えている。略円盤形状のセットプレート部21には、ポンプユニット4から送液された燃料を燃料タンク7外に導くために使用される吐出ポート23が備えられている。またセットプレート部21には、電気配線の接続のために使用される電気コネクタ24が備えられている。燃料タンク7の開口部72は通常円形であるため、蓋部材2のセットプレート部21も平面視で略円形となるように形成されている。燃料タンク7に設けられた円形の開口部72の周囲には図示しない樹脂製のリングが取り付けられており、燃料タンク7と蓋部材2との間に隙間が生じることを抑制している。
【0026】
本実施例の燃料供給装置1は、連結部3が伸縮可能に構成されている。連結部3は蓋部材2に取り付けた棒部材35と棒部材35に沿って移動可能なジョイント部36とを備えている。当該棒部材35はセットプレート部21が広がる面方向に対して直交するように伸びるものである。また、ジョイント部36と蓋部材2との間には弾性力を発揮可能な部材としてスプリング53を備えている。当該スプリング53は、蓋部材2とポンプユニット4が所定の間隔よりも近接した際に、蓋部材2とポンプユニット4を離間させるように付勢可能なものである。したがって、ポンプユニット4の底面が燃料タンク7の底面部73に接した状態から更に蓋部材2を燃料タンク7の底面部73に近づけるように移動させる間にスプリング53は縮むことになる。このスプリング53が縮んだ状態が維持されると、ポンプユニット4が燃料タンク7の底面部73に対して押し続けられた状態が維持されることになる。なお、スプリング53からの付勢力は連結部3からポンプユニット4に設けられた係合部49に伝えられ、当該係合部49を燃料タンク7の底面部73に押し付けるように働く。
【0027】
本実施例の燃料供給装置1には、蓋部材2の下方にポンプユニット4が備えられている。本実施の形態のポンプユニット4は、燃料を送液するために使用されるポンプ41と、前記ポンプ41を載置するために使用されるベース部42とを備えている。本実施の形態のベース部42は略平板状に形成されており、ベース部42の一側面が燃料タンク7の底面部73と対向するように配置されるものである。ベース部42は燃料貯留部やサブタンクなどとも称されることがある部分であり、ベース部42はポンプ41が取り付けられるアッパベース421と、燃料タンク7の底面部73に接するロアベース422と、アッパベース421とロアベース422に挟まれるろ過部材423により構成されている。アッパベース421にはポンプ41と接続される吸引口4211が設けられており、ろ過部材423を通過した燃料をポンプ41により吸引することが可能な構成とされている。
【0028】
ロアベース422には格子が施された開口である底面開口(図示せず)が備えられている。ロアベース422を燃料タンク7の底面部73に接した状態で配置した場合でも、底面開口から燃料を吸い込むことができるように脚部4222が設けられている。また、アッパベース421の外周はロアベース422の外周よりも一回り小さく構成されており、ろ過部材423を挟み込まない状態においてはアッパベース421とロアベース422との間に隙間が生じるように構成されている。当該隙間は燃料をベース部42内に導入することが可能な隙間である。本実施例においては、アッパベース421の一側面をろ過部材423により覆うように配置しているため、当該隙間からベース部42内に侵入する燃料についても、ろ過部材423を通過した上でポンプ41まで到達する。
【0029】
ポンプユニット4には、燃料の送液圧力を調整するために使用される圧力調整弁43が取り付けられている。圧力調整弁43はポンプ41から伸びている弁支持部411に取り付けられている。圧力調整弁43で圧力が調整された燃料は、ホース51や吐出ポート23などを介して内燃機関に送られる。
【0030】
本実施例のポンプユニット4のベース部42には、アッパベース421側に燃料残量検出装置48が備えられている。燃料残量検出装置48は、電気配線が接続されているゲージ本体481と、ゲージ本体481に対して回動可能に設けられたアーム部482と、アーム部482の自由端側に設けられるフロート483とを備えている。当該フロート483は図1の白抜き矢印で示すように動くことが可能であり、燃料の液面高さにあわせてフロート483の位置が定められる。また、当該フロート483の位置によりアーム部482の位置が定められる。当該アーム部482とゲージ本体481との相対位置により、ゲージ本体481における電気的な抵抗値が定まり、燃料の残量を検出することが可能となるものである。
【0031】
本実施の形態における連結部3とポンプユニット4は連結部3に設けられた連結孔31にポンプユニット4に設けられた連結軸45を挿入して接続されており、連結部3とポンプユニット4が相対移動可能に構成されている。したがって、本実施の形態の燃料供給装置1を蓋部材2を持って吊り上げた場合、連結部3に対してポンプユニット4が回動するように移動する。この際、ポンプユニット4のベース部42の一端側が燃料タンク7の底面部73に対向することになるが、そのベース部42の一端側よりも上側に燃料残量検出装置48が位置する配置構成となっている(図2参照)。
【0032】
ところで、燃料供給装置1を吊り上げた際に、図21に示す従来技術のようにベース部42の一端よりも下側に燃料残量検出装置48のフロート483が位置してしまうと、フロート483が燃料タンク7の底面部73と衝突することが生じうる。一方、本実施例は、燃料供給装置1を吊り上げた際に燃料残量検出装置48がベース部42の一端よりも上側に位置するものである。したがって、燃料タンク7の中で燃料タンク7の底面部73に当接することになるのは、燃料残量検出装置48ではなく、ベース部42ということになる。ベース部42は、燃料タンク7に当接した後に徐々にロアベース422側が燃料タンク7に沿うように倒れこむ。そのため、アッパベース421側に配設した燃料残量検出装置48が、燃料タンク7の底面部73と勢い良く衝突することは抑制される。したがって、フロート483やアーム部482が燃料タンク7と衝突することに起因する燃料残量検出装置48の破損が抑制される。
【0033】
本実施例においては、フロート483やアーム部482はロアベース422の底面側に突出することが無いように移動範囲を規制しているため、フロート483やアーム部482が燃料タンク7の底面部73に衝突することは実質的に回避できる構成となっている。
【0034】
本実施例の燃料供給装置1は、ポンプユニット4を開口部72に挿入する際に生じうる不具合についても考慮している。具体的には、ポンプユニット4を燃料タンク7内に挿入する際に燃料残量検出装置48のゲージ本体481が燃料タンク7の開口部72の縁75に衝突することを抑制可能な構成を採用している。より具体的には、ポンプユニット4の底面が広がる面に対して交差する方向に延びるように設けた凸部61がポンプユニット4の移動範囲を規制することにより、ゲージ本体481が開口部72の縁75に当接することを抑制可能な構成としている。
【0035】
ポンプユニット4のベース部42にはゲージ本体481を取り付けるために、アッパベース421から伸びるように略平板状の取り付け部を設けている。当該取り付け部はポンプユニット4の底面が広がる面に対して交差する方向に延びる凸部61として設けられており、当該取り付け部に対してゲージ本体481が取り付けられた状態ではゲージ本体481が開口部72の縁75に衝突することを回避することが可能に構成されている(図3参照)。本実施例においては取り付け部にカバー部611を備えている。カバー部611は燃料供給装置1を燃料タンク7に装着した際に燃料残量検出装置48よりも蓋部材2側に配置される部位であり、当該カバー部611とベース部42との間に燃料残量検出装置48が挟まれているような構成である。ベース部42から当該カバー部611の先端までを考えると、ベース部42の底面と直交する方向には側面視略L字形状の凸部61が形成されていることになる。
【0036】
本実施例においては、凸部61の構成要素であるカバー部611を開口部72の縁75に当接可能なように形成し、開口部72内に位置するポンプユニット4の移動範囲を規制している。このようにポンプユニット4の移動範囲が規制されていることにより、開口部72内に位置するゲージ本体481が開口部72の縁75に当接することが回避される。
【実施例2】
【0037】
次に実施例2について説明する。実施例1との主な相違点は、ベース部42の前側側方にフロート保護部441を備えたことであるため、以下においては、その点を中心に説明する。本実施例においては、実施例1とは異なり、板状のフロート保護部441がベース部42の前側側方に突出するように形成されている(図4及び図5参照)。このような部位もベース部42の一部であり、当該フロート保護部441がフロート483よりも先に燃料タンク7の底面部73に当接するように構成されている。本実施例のフロート保護部441はベース部42の底面が延長されるように左右方向に広がる板状の部位である。このような部位を形成すると、ゲージ本体481を後方側に配置することも、フロート483が取り付けられるアーム部482を短くすることも必要でなくなるため、燃料残量検出装置48の配置構成の自由度を高めることが可能となり得る。
【0038】
フロート保護部441の先端と連結軸45との距離はフロート483の先端と連結軸45との距離よりも長くしており、フロート保護部441がフロートよりも先に燃料タンク7の底面部73に当接することがなされるように構成されている。
【0039】
本実施例においてはアーム部482を概略L字状に形成しており、ポンプユニット4と対向する位置にフロート483を配置することを可能としている。本実施例のフロート保護部441はアッパベース421の上端面より下方に配置されるように構成しており、燃料の残量を検出しやすくしている。なお、フロート保護部441が存在することによりフロート483が燃料タンク7の底面部73と当接することが回避できれば良いため、フロート保護部441は板状とする必要性は無い。
【実施例3】
【0040】
次に実施例3について説明する。実施例3と実施例2との主な相違点は、フロート保護部442の配置であるため、以下においては、その点を中心に説明する。本実施例においては、実施例1とは異なり、板状のフロート保護部442がベース部42の前側側方に突出するように形成している(図6及び図7参照)。しかも、板状のフロート保護部442はフロート483の側方に配置されることが可能なように構成している。このような部位もベース部42の一部であり、当該フロート保護部442がフロート483よりも先に燃料タンク7の底面部73に当接するように構成されている。
【0041】
本実施例の構成であると、フロート483の下方にベース部42が配置されていない構成であるため、実施例2と比較し、より燃料タンク7の底面部73付近の燃料を検出することが可能となり得る。なお、本実施例においてもフロート保護部442を板状とする必要性は無い。
【実施例4】
【0042】
次に実施例4について説明する。実施例4と実施例2及び実施例3との主な相違点は、フロート保護部443の外形であるため、以下においては、その点を中心に説明する。本実施例においては、実施例1とは異なり、屈曲した板状のフロート保護部443がベース部42の前側側方に突出するように形成している(図8及び図9参照)。しかも、フロート483の下方及び側方を覆うようにフロート保護部443を形成している。
【0043】
本実施例のフロート保護部443の場合、前側から見た側面視で略L字形状となっている。したがって、フロート保護部443の強度を確保しやすい構造となっている。
【実施例5】
【0044】
次に実施例5について説明する。実施例1との主な相違点は、フロート483の配置である。また、それに併せてベース部42の左側の側方にフロート保護部444を備えたことである。以下においては、上記相違点を中心に説明する。本実施例においては、実施例1〜4とは異なり、フロート483がベース部42の左側に突出するように形成されている(図10及び図11参照)。このような形態だけでもフロート483とベース部42との位置関係上、フロート483が燃料タンク7の底面部73に当接することが抑制される。
【0045】
本実施例においては板状のフロート保護部444がベース部42の左側に突出するように形成され、フロート483の下面を覆うように配置されている。このようなフロート保護部444を設けることで、蓋部材2が傾いた状態であってもフロート483が燃料タンク7の底面部73に当接することが抑制される。
【実施例6】
【0046】
次に実施例6について説明する。実施例1との主な相違点は、燃料残量検出装置48の配置であるので、以下においては、上記相違点を中心に説明する。実施例1〜5においては、連結軸45が延びる方向、つまりは左右方向を中心軸としてアーム部482が回転するように燃料残量検出装置48を配置しているが、本実施例においては、当該燃料残量検出装置48の向きを略90度変えるように構成している(図12参照)。したがって実施例1〜5とは異なり、アーム部482が左右方向に延びるように配置されており、フロート483はベース部42の右側に突出するように形成されている。当該フロート483は燃料の液面にあわせて白抜き矢印で示したように移動可能とされている。
【0047】
実施例6においてもベース部42が燃料タンク7の底面部73に当接する構成とするため、燃料供給装置1を吊り上げた際に燃料残量検出装置48がベース部42の一端よりも上側に位置するように配置している。したがって、フロート483が燃料タンク7の底面部73に当接することが抑制される。
【実施例7】
【0048】
次に実施例7について説明する。実施例1との主な相違点は、凸部62の形状であるので、以下においては、上記相違点を中心に説明する。実施例1においては、カバー部611を形成するため側面視L字形状の凸部61を形成しているが、本実施例においてはカバー部611を設けていない構成としている。本実施例における凸部62は、ベース部42の底面と略直交する方向に板状の部位が伸びるように形成されている(図13参照)。当該構成であっても、図14に示すように円形の開口部72に対してポンプユニット4の移動を規制する役割を果たすものとなっている。
【0049】
本実施例の凸部62には燃料残量検出装置48のゲージ本体481が取り付けられているが、ゲージ本体481は凸部62のポンプユニット4の中央側よりの側面に取り付けられている。つまり、燃料タンク7に装着された状態における平面視において、ゲージ本体481よりも凸部62のほうが、ポンプユニット4の外周側に位置するように配置されている。したがって、凸部62の長さが長くなることを抑制することが可能となる。本実施例においては図14に示すように凸部62の先端のほうがゲージ本体481よりもベース部42から離間するように構成しているが、ゲージ本体481よりも凸部62をポンプユニット4の外周側に配置することにより、図15に示すように、ゲージ本体481のほうが凸部63の先端よりもベース部42から離間するように構成することが可能となる。
【実施例8】
【0050】
次に実施例8について説明する。実施例7との主な相違点は、凸部64の配置であるので、以下においては、上記相違点を中心に説明する。実施例7においては、ポンプユニット4のうち連結部3が配置される側に凸部64を設けるように構成しているが、本実施例は、それとは逆側であって、連結部3が配置されない側に凸部64を設けるように構成している(図16参照)。本実施例においても実施例7と同様に、ゲージ本体481よりも凸部64のほうが、ポンプユニット4の外周側に位置するように配置している。本実施例においても実施例7と同様に、凸部64がポンプユニット4の移動範囲を規制することによりゲージ本体481が開口部72の縁75に衝突することを抑制している。
【実施例9】
【0051】
次に実施例について説明する。実施例7との主な相違点は、凸部65の配置であるので、以下においては、上記相違点を中心に説明する。本実施例においては、ゲージ本体481を取り付ける部位とは別に凸部65を設けている(図17及び図18参照)。本実施例における凸部65はポンプユニット4の左右方向の中央付近に設けられており、当該凸部65の先端はポンプ41の上方に位置することが可能なように構成されている。
【0052】
本実施例の凸部65に関してもポンプユニット4の移動範囲を規制するために設けられるものであり、開口部72内に位置するポンプユニット4の移動範囲を規制することで、ゲージ本体481が燃料タンク7の開口部72の縁に当接することを抑制可能としている(図19参照)。
【0053】
本実施例の凸部65は燃料供給装置1を燃料タンク7に挿入する際のガイドとしても機能する。燃料供給装置1を燃料タンク7に挿入する際には、先ずポンプユニット4を開口部72に挿入させる(図20参照)。凸部65にはベース部42の底面が広がる面に対して傾斜するように設けられる傾斜面641がガイド部として設けられており、ポンプユニット4が開口部72を通過する際に、当該ガイド部を開口部72の縁に当接させて移動させることで、ポンプユニット4が挿入方向に移動できない状態となることなくスムーズに移動させることが可能となる。
【0054】
以上、いくつかの例を用いて実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施形態のほか、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、吸着材を充填したキャニスタ部を蓋部材に設けるものとすることも可能である。この場合、連結部はキャニスタ部と、ポンプユニットを連結する構成とすることが可能である。なお、キャニスタ部が備えられて蓋部材であったとしても、連結部はセットプレート部とポンプユニットを連結する構成とすることが可能である。
【0055】
ベース部におけるろ過部材は必須のものではないため、ろ過部材が無い構成とすることも可能である。この場合、ベース部以外の部位にろ過部材を設けることも可能であるし、ポンプが吸引する燃料が清浄に保たれているのであれば、燃料供給装置にはろ過部材を設けないものとすることも可能である。
【0056】
連結部とポンプユニットを相対移動可能に接続する構成は、連結部に設けられた連結孔にポンプユニットに設けられた連結軸を挿入して接続されていることに限らず、ポンプユニットに設けられた連結孔に連結部に設けられた連結軸を挿入して接続する構成とすることも可能である。
【0057】
ゲージ本体を保護するために設けられる凸部は板状の形態ではなく、棒状などの各種形態とすることも可能である。また、凸部は一つだけ設ける構成とする必要性はなく、複数個設けることで相互関係によりゲージ本体を保護するものとすることも可能である。
【0058】
また、乗物としては、車両であることに限らず、飛行機やヘリコプターなど空中を飛行する乗物や、船舶や潜水艇など海面や海中などを移動する乗物としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 燃料供給装置
2 蓋部材
3 連結部
4 ポンプユニット
7 燃料タンク
21 セットプレート部
31 連結孔
41 ポンプ
42 ベース部
45 連結軸
48 燃料残量検出装置
61 凸部
62 凸部
63 凸部
64 凸部
65 凸部
71 上面部
72 開口部
73 底面部
481 ゲージ本体
482 アーム部
483 フロート
図1
図2
図3
図4
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