特許第6297467号(P6297467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297467
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20180312BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F04D29/66 M
   F04D29/28 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-218590(P2014-218590)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-84758(P2016-84758A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 征也
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−074352(JP,A)
【文献】 特開2006−207481(JP,A)
【文献】 特開2012−207600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
上ケーシングと下ケーシングとからなるケーシングと、
前記上ケーシングと下ケーシングの間に前記羽根車を収納し、
モータによって回転する前記羽根車の回転に伴って吸込み口から吸入した空気を前記上ケーシングと前記下ケーシングの間に介装された支柱を除いた側面に形成された吹出し口から外方に向けて排出する遠心ファンであって、
前記モータは前記下ケーシングに形成した凹部の底面に装着され、
前記羽根車は環状のシュラウドと複数の羽根と主板とハブから構成され、
前記主板は前記下ケーシングと対向する面に環状の溝が形成され、前記凹部に収納された回路基板の前記主板側に実装された電子部品の一部が前記溝の中に収納され、
前記環状のシュラウドは中央に前記吸込み口となる開口を有する円筒部を具備し、
前記環状のシュラウドの径方向断面は前記円筒部の下端を頂点とし、環状のシュラウドの最外周縁を通る放物線状の曲面にて形成され
前記回路基板の半径方向の寸法が前記環状のシュラウドの前記吸込み口となる開口の半径方向の寸法よりも大きいとともに、さらに、前記回路基板を収納する前記凹部の半径方向の寸法が、前記回路基板の半径方向の寸法よりも大きく、
前記主板が前記複数の羽根を前記下ケーシング側に露出しないように設けられ、
前記吸込み口から吸入した空気は前記環状のシュラウドと前記主板との間から外方に吹き出されることを特徴とする遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機として、遠心ファンが知られている。従来の遠心ファンとして、ケーシングが上ケーシングと下ケーシングとからなり、上ケーシングと下ケーシングの間に羽根車を収納し、この羽根車の回転に伴って吸い込み口から吸入した空気を上ケーシングと下ケーシングの間の側面に形成された吹き出し口から外方に向けて排出する遠心ファンが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、遠心送風機において、シュラウドの径方向の断面形状を円弧状に形成することによってシュラウドの内径から外径にかけての風速の変化を直線状にして送風機の効率を向上させる遠心ファンが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−015849号公報
【特許文献2】特開2006−009669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の遠心ファンは、四角形のケーシングの側面で、上ケーシングと下ケーシングの間に吹き出し口が形成されている。このため、羽根車の外周から空気を吹き出す際、ケースの側壁に衝突することがないので、衝突音による騒音を招かない。また、下ケーシングが羽根車の主板の機能を兼ねた構成によって、羽根車の主板を廃止すると共に、下ケーシングに形成した凹部にモータ、回路基板を収納している。この結果、下ケーシングより上部の寸法を薄くできる構成となっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の遠心ファンでは、機器や装置への取付け空間の制約から遠心ファンの全高が指定された場合、必ずしも薄型化の要求に応えることができない。下ケーシングが羽根車の主板の機能を兼ねた構成であるが、羽根の下面と下ケーシングの隔壁部との間のギャップは遠心ファンの風量特性に大きく影響を及ぼすため、大きくすることができず、適切に設定される必要がある。このため、各部品の寸法精度を高精度に管理する必要があり、必然的に部品コストが高くなるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の遠心送風機は、シュラウドの径方向の断面形状を円弧状に形成することによってシュラウド36の内径から外径にかけての風速の変化を直線状にして送風機の効率を向上できる構成となっている。
しかしながら、特許文献2に記載の遠心送風機は、家電機器、OA機器等の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに用いられる送風機は低騒音が強く要求されており、シュラウドの径方向の断面形状を単に円弧状に形成したのみでは、必ずしも低騒音とはならない。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みて行われたものであり、四角形のケーシングの側面で、上ケーシングと下ケーシングの間に吹出し口が形成された遠心ファンにおいて、薄型化を図ると共に、騒音の発生を低減することができる遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の遠心ファンは、羽根車と、上ケーシングと下ケーシングとからなるケーシングと、前記上ケーシングと下ケーシングの間に前記羽根車を収納し、
モータによって回転する前記羽根車の回転に伴って吸込み口から吸入した空気を前記上ケーシングと前記下ケーシングの間に介装された支柱を除いた側面に形成された吹出し口から外方に向けて排出する遠心ファンであって、前記モータは前記下ケーシングに形成した凹部の底面に装着され、前記羽根車は環状のシュラウドと複数の羽根と主板とハブから構成され、前記主板は前記下ケーシングと対向する面に環状の溝が形成され、前記凹部に収納された回路基板に実装された電子部品の一部が前記溝の中に収納され、前記環状のシュラウドは中央に前記吸込み口となる開口を有する円筒部を具備し、前記環状のシュラウドの径方向断面は前記円筒部の下端を頂点とし、環状のシュラウドの最外周縁を通る放物線状の曲面にて形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、四角形のケーシングの側面で、上ケーシングと下ケーシングの間に吹出し口が形成された遠心ファンにおいて、薄型化を図ると共に、騒音の発生を低減することができる遠心ファンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る遠心ファンの断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る遠心ファンの上ケーシング側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
図1は、本発明の実施形態に係る遠心ファンの断面図である。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、本発明の実施形態に係る遠心ファンの上ケーシング側から見た平面図である。
【0013】
(遠心ファンの構造について)
遠心ファン100の基本構造は、特許文献1に記載された構造と略同じで、ケーシング130は上ケーシング131と下ケーシング132から構成され、上ケーシング131と下ケーシング132の間に羽根車140を収納し、モータ110によって回転する羽根車140の回転に伴って吸込み口136から吸入した空気を上ケーシング131と下ケーシング132の間に介装された支柱139を除いた側面に形成された吹出し口137から外方に向けて排出する遠心ファンである。
【0014】
モータ110は下ケーシング132に形成した凹部133の底面134に装着され、モータ110の下インシュレータ123に装着された回路基板125も凹部133の中に収納されている。モータ110はアウターロータ型のブラシレスDCモータである。軸受保持部113の内側に一対の軸受114、115が装着され、ロータ112を構成するシャフト117を回転可能に支持している。引用符号127はシャフト117に装着したE型止め輪であり、軸受114には図示しない付勢部材にて予圧が付勢されている。
【0015】
軸受保持部113の外側にはステータ111が配設されている。ステータ111はコアを所定枚数、積層してなるステータコア120と、ステータコア120の軸方向両側から装着された上インシュレータ122と下インシュレータ123からなるインシュレータ121と、インシュレータ121を介してステータコア120に巻回されたコイル124とから構成されている。コアは環状ヨークから径外方に延伸する複数の突極を備えており、コアを積層させてステータコア120が構成されている。軸受保持部113をステータコア120の中央に形成された開口に嵌合させ、軸受保持部113の外側にステータ111が配設されている。コイル124はインシュレータ121を介して突極部分に巻回されている。
【0016】
ロータ112はシャフト117と、シャフト117に装着されたカップ状態のロータヨーク118と、ロータヨーク118の内側に固着された環状のマグネット119から構成されている。ステータコア120の外周面はマグネット119の内周面にエアギャップを隔てて対向配置されている。下インシュレータ123には回路基板125が装着されている。軸受保持部113の下端側にはフランジ116を備え、下ケーシング132に形成した凹部133の底面134の開口に軸受保持部113の下端を嵌合させると共に、ねじ等の締結材151によって3箇所でフランジ116と締結している。
【0017】
羽根車140は環状のシュラウド141と複数の羽根142と主板143とハブ144から構成されており、環状のシュラウド141と羽根142は一体成型にて形成されている。
また、主板143とハブ144は一体成型にて成形されている。そして、羽根142の下端を主板143に形成した凹部に嵌め込み、羽根142の下端に一体成型時に形成されたピンを凹部に形成した貫通孔に嵌着させ、ピン先端を熱カシメ(または溶着)することで接合している。
【0018】
羽根142は全て同じ形状で、環状のシュラウド141の一方面から軸方向に延伸した形状で、回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状となっている後向き羽根(いわゆる、ターボ型)である。主板143はカップ状のハブ144の外周面から半径方向に延伸した略円板状である。カップ状のハブ144の内側にモータ110のロータヨーク118を嵌合(又は接着)させ、ハブ144に形成した複数のボス145をカップ状のロータヨーク118の底面に形成した複数の貫通穴にそれぞれ嵌合させ、ボス145の先端を熱カシメすることで両者を結合させることで、ロータ112に羽根車140が装着される。また、主板143の底面(下ケーシング132と対向する面側)には環状の溝146(凹部)が形成されている。
【0019】
環状シュラウド141の中央には吸込み口136を構成する開口が形成されている。
羽根車140の回転に伴って吸込み口136から吸い込まれた空気は、羽根142の間を通過して羽根車140の外周縁にスムーズに案内された後、環状シュラウド141と主板143との間から外方に吹き出される。
【0020】
環状シュラウド141の中央には吸込み口136となる開口を有する円筒部141aが形成されている。そして、環状シュラウド141の径方向断面は、二次関数(所謂、放物線)に基づく曲面を有し、環状シュラウド141の厚さは略均等の厚さで形成されている。従って、環状シュラウド141の上面も略放物線状に形成されている。開口の直径Dは、ファンの設計要求における最大静圧に基づいて決定され、羽根車140の吹出し口137の軸方向に高さ寸法Hは、ファンの設計要求における最大流量に基づいて決定される。これらの所定の値を基に、A点とB点の座標が決定される。そして、円筒部141aの下端のB点を頂点とし、環状シュラウド141の最外周縁のA点と、円筒部141aの下端のB点の2点を通る放物線状に形成されている。
【0021】
環状シュラウド141の径方向断面は、二次関数(所謂、放物線)に基づく曲面を有している。この結果、円筒部141aの下端のB点から環状シュラウド141の最外周縁のA点の間における隣接する羽根間の断面積がなめらかに漸増し、羽根車140の羽根142の間に吸い込まれた空気は、環状シュラウド141の曲面によって、吸い込まれた空気に乱れが生じることなく吹出し口137にスムーズにガイドされる結果、騒音を低減することができる。
【0022】
表1は、環状シュラウド141が放物線状に形成された実施例の遠心ファン100と、環状シュラウド141が1つの円弧で構成された曲面を有する比較例の遠心ファンにおける騒音レベルを測定した結果である。測定結果は、同じ回転数において、周波数範囲が20KHzでの騒音レベルを測定した値である。表1に示すように、比較例の遠心ファンの騒音レベルが59.5dB(A)に対して、本願実施例の遠心ファンの騒音レベルは56.7dB(A)である。このように、本願実施例の遠心ファンは比較例の遠心ファンに比べて騒音レベルを約3dB低減できる。
【表1】
【0023】
上ケーシング131の上面側には複数の凹部138(肉盗み部)が形成されている。上ケーシング131と下ケーシング132の結合は、上ケーシング131と下ケーシング132の間に支柱139を介装し、支柱139をねじ等の締結材150で締結して結合させている。具体的には、支柱139は上ケーシング131と一体成型にて形成されており、支柱139に形成した下穴にタッピンねじを締め付けて締結している。なお、締結手段はこれに限定されない。例えば、下ケーシング132側からねじ(またはボルト)を支柱139の貫通穴に挿通し、上ケーシング131側からナットで固定する構成であっても勿論よい。下ケーシング132の外周部は、軸方向に折り曲げられた側板135となっている。この側板135が設けられていることにより、下ケーシング132の剛性を高めることができる。なお、ケーシング130の形状は四角形に限定されない。四角形以外の多角形でも、円形でも構わない。
【0024】
回路基板125にはモータ110を駆動制御するための部品や制御ICなどの電子部品126が実装されている。このため、限られた空間で回路基板125に実装された電子部品126と羽根車140の干渉(接触)を防止するために、主板143の底面(下ケーシング132と対向する面側)には環状の溝146(凹部)が形成されている。この環状の溝146(凹部)に電子部品126の一部が収容されるので、電子部品126と羽根車140の干渉(接触)を防止し、薄型化を図っている。
【0025】
羽根142の下面には主板143を備えており、従来のような下ケーシングが羽根車の主板を兼用した構成ではない。このため、下ケーシング132をプレスで製作した場合であっても寸法精度(平面度)を高精度に管理する必要がない。この結果、コストを低減できる。
【0026】
羽根車140は主板143を備えるため、部品点数が増えるが、従来のように下ケーシング132が羽根車の主板を兼用する構造では、下ケーシング132をプレスで製作した場合、寸法精度(平面度)を高精度に管理する必要があり、この方がコスト高となる。
【0027】
環状シュラウド141の径方向断面は、二次関数(所謂、放物線)に基づく曲面を有する。羽根車140の羽根142の間に吸い込まれた空気は、環状シュラウド141の曲面によって吸い込まれた空気に乱れが生じることなく吹出し口137にスムーズにガイドされる結果、騒音を低減することができる。
【0028】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0029】
100 遠心ファン
110 モータ
125 回路基板
126 電子部品
130 ケーシング
131 上ケーシング
132 下ケーシング
133 凹部
136 吸込み口
139 支柱
140 羽根車
141 環状シュラウド
141a 円筒部
142 羽根
143 主板
144 ハブ
146 環状の溝
図1
図2
図3