特許第6297492号(P6297492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297492止血特徴を備えた外科用ステープルアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297492
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】止血特徴を備えた外科用ステープルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   A61B17/072
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-531918(P2014-531918)
(86)(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公表番号】特表2014-533124(P2014-533124A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012056033
(87)【国際公開番号】WO2013043674
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】13/240,074
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ワン・イ−ラン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー・マシュー・シー
(72)【発明者】
【氏名】ジングマン・アロン・オー
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−289883(JP,A)
【文献】 特開2009−189849(JP,A)
【文献】 特開2009−000531(JP,A)
【文献】 特開2006−043451(JP,A)
【文献】 特開2012−187400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具装置であって、
(a)ハンドル部分と、
(b)発射バーを収納するシャフトと、
(c)アンビルと、下部つかみ具と、前記ハンドル部分及び前記シャフトによって生成された長手方向閉鎖運動に反応するステープル留め及び切断アセンブリと、を備えるエンドエフェクタと、
(d)取り外し可能なカートリッジであって、前記下部つかみ具が前記カートリッジを受容するように構成され、前記カートリッジが、
(i)ハウジングと、
(ii)前記ハウジング内に配設される複数のステープルと、
(iii)前記複数のステープルの上に配設され、アパーチャを画定するデッキであって、各アパーチャが各ステープルの上に実質的に配設される、デッキと、を備える、取り外し可能なカートリッジと、
(e)前記アンビルに受容されるように構成された、ファスナーを備える取り外し可能なファスナーインサートと、を備え、
前記ファスナーが非外傷的であり、かつ、生体適合性材料を前記ファスナーインサートに取り付けるために、前記生体適合性材料を貫通して延出することなく前記生体適合性材料に挿入されるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記生体適合性材料が、次の材料:イプシロン−カプロラクトングリコリド、ウシ囲心嚢、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリグラクチン、ポリジオキサノン、ポリグリコネート、乳清蛋白質、セルロースガム、でん粉、ゼラチン、シルク、ナイロン、ポリプロピレン、編組ポリエステル、ポリブテステル、ポリエチレン、及びポリエーテルエーテルケトンのうちの少なくとも1つから成る群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記生体適合性材料が、フィブリン又はトロンビンのうちの1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記生体適合性材料が、止血剤、シーラント、又は接着剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ファスナーが、フックを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記フックが、前記生体適合性材料内でループ形成体に取り付けられて前記材料を前記アンビルに保持するよう構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記カートリッジが、遠位端においてファスナーインサートを備え、前記ファスナーインサートがファスナーを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ファスナーが、前記生体適合性材料に取り付けられて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ファスナーが、前記生体適合性材料内でループ形成体に取り付けられて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成されるフックを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記カートリッジの近位端が、ファスナーを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ファスナーが、前記生体適合性材料内でループ形成体に取り付けられて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成されるフックを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ファスナーが、フックを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記生体適合性材料が、バットレスを構成し、かつ前記バットレスがフィブリン又はトロンビンのうちの一方を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
外科用器具であって、
(a)ハンドル部分と、発射バーを収納するシャフトと、
(b)前記ハンドル部分及び前記シャフトによって生成される長手方向閉鎖運動に反応するステープル留め及び切断アセンブリと、
(c)前記ハンドル部分に接続され、アンビル及び下部つかみ具を備えるエンドエフェクタであって、前記アンビルが開口部を画定し、前記下部つかみ具がカートリッジを受容するように構成される、エンドエフェクタと、
(d)前記カートリッジのハウジングに配設される複数のステープルであって、前記エンドエフェクタが閉鎖位置にあるときに前記長手方向閉鎖運動に反応して前記アンビルが前記ステープルを形成するように構成される、複数のステープルと、
(e)前記複数のステープルの上に配設され、アパーチャを画定するデッキであって、各アパーチャが各ステープルの上に実質的に配設される、デッキと、
(f)前記アンビルにおける前記開口部内に取り外し可能に受容されるように構成される、複数のフックを備えるファスナーインサートであって、前記フックが生体適合性材料に取り付けられるように構成される、ファスナーインサートと、
を備え、前記発射バーが、前記材料を切断するために前記アンビルと前記カートリッジとの間を移動するように動作可能であり、
前記ステープルが、前記長手方向閉鎖運動に反応し、前記材料を貫通して前記アンビルに向かって駆動されるように動作可能であり、
前記フックが非外傷的であり、かつ、前記生体適合性材料を前記ファスナーインサートに取り付けるために、前記生体適合性材料を貫通して延出することなく前記生体適合性材料に挿入されるように構成されている、器具。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一部の状況では、内視鏡外科用器具は、より小さい切開が、手術後の回復時間及び合併症を低減し得るために、従来の開腹外科装置よりも好ましい場合がある。したがって、幾つかの内視鏡外科用器具は、トロカールのカニューレを介して所望の手術部位に遠位エンドエフェクタを定置するのに好適であり得る。これらの遠位エンドエフェクタは、多くの方法で組織に係合して診断又は治療効果を達成し得る(例えば、エンドカッター、把持具、カッター、ステープラー、クリップ適用器具、アクセス装置、薬物/遺伝子治療送達装置、及び超音波、RF、レーザなどを使用するエネルギー送達装置)。内視鏡外科用器具は、エンドエフェクタとハンドル部分との間に、臨床医によって操作されるシャフトを有することがある。かかるシャフトは、所望の深さへの挿入とシャフトの縦軸の周りの回転を可能にし、それにより患者内のエンドエフェクタの位置決めが容易になる。エンドエフェクタの位置決めは、1つ又は2つ以上の関節動作ジョイント若しくは特徴部を含めることによって更に促進されることができ、シャフトの長手方向軸に対してエンドエフェクタを選択的に関節動作するか又は他の方法で偏向することを可能にする。
【0002】
内視鏡外科用器具の例としては、外科用ステープラーが挙げられる。かかるステープラーの幾つかは、組織層をクランプし、クランプした組織層を切断し、組織層を通してステープルを打ち込むことによって組織層の切断された端の近くで組織層をともに実質的に封着するように動作可能である。単に例示的な外科用ステープラーは、1989年2月21日に発行された「Pocket Configuration for Internal Organ Staplers」と題される米国特許第4,805,823号、1995年5月16日に発行された「Surgical Stapler and Staple Cartridge」と題される米国特許第5,415,334号、1995年11月14日に発行された「Surgical Stapler Instrument」と題される米国特許第5,465,895号、1997年1月28日に発行された「Surgical Stapler Instrument」と題される米国特許第5,597,107号、1997年5月27日に発行された「Surgical Instrument」と題される米国特許第5,632,432号、1997年10月7日に発行された「Surgical Instrument」と題される米国特許第5,673,840号、1998年1月6日に発行された「Articulation Assembly for Surgical Instruments」と題される米国特許第5,704,534号、1998年9月29日に発行された「Surgical Clamping Mechanism」と題される米国特許第5,814,055号、2005年11月15日に発行された「Surgical Stapling Instrument having Articulation Joint Support Plates for Supporting a Firing Bar」と題される米国特許第6,964,363号、2005年12月27日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating an E−Beam Firing Mechanism」と題される米国特許第6,978,921号、2006年1月24日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having a Spent Cartridge Lockout」と題される米国特許第6,988,649号、2006年2月21日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having Separate Distinct Closing and Firing Systems」と題される米国特許第7,000,818号、2006年9月26日に発行された「Surgical Instrument Incorporating an Articulation Mechanism having Rotation about the Longitudinal Axis」と題される米国特許第7,111,769号、2006年12月5日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having a Firing Lockout for an Unclosed Anvil」と題される米国特許第7,143,923号、2007年12月4日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multi−Stroke Firing Mechanism with a Flexible Rack」と題される米国特許第7,303,108号、2008年5月6日に発行された「Surgical Stapling Instrument Incorporating a Multistroke Firing Mechanism Having a Rotary Transmission」と題される米国特許第7,367,485号、2008年6月3日に発行された「Surgical Stapling Instrument Having a Single Lockout Mechanism for Prevention of Firing」と題される米国特許第7,380,695号、2008年6月3日に発行された「Articulating Surgical Stapling Instrument Incorporating a Two−Piece E−Beam Firing Mechanism」と題される米国特許第7,380,696号、2008年7月29日に発行された「Surgical Stapling and Cutting Device」と題される米国特許第7,404,508号、2008年10月14日に発行された「Surgical Stapling Instrument having Multistroke Firing with Opening Lockout」と題される米国特許第7,434,715号、2010年5月25日に発行された「Disposable Cartridge with Adhesive for Use with a Stapling Device」と題される米国特許第7,721,930号、及び、2008年11月25日に発行された「Surgical Instrument with Articulating Shaft with Rigid Firing Bar Supports」と題される米国特許第7,455,208号に開示されている。これらの米国特許のそれぞれの開示内容が本明細書に参考により組み込まれている。参考として上述した外科用ステープラーは、内視鏡手技において使用されるものとして記載されているが、かかる外科用ステープラーは、開口手技及び/又は他の非内視鏡手技でも使用することができることを理解されたい。
【0003】
様々な種類の外科用ステープル器具及び関連構成要素が作製され使用されてきたが、本発明者ら以前には、付属の請求項に記載されている本発明を誰も作製又は使用したことがないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書に組み込まれると共に本明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を示すものであり、上記の本発明の一般的説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
図1A】関節動作していない位置にあるエンドエフェクタを有する関節動作外科器具の斜視図を示す。
図1B】関節動作位置にあるエンドエフェクタを有する図1Aの手術器具の斜視図を示す。
図2図1A及び図1Bの手術器具の開いたエンドエフェクタの斜視図を示す。
図3A】発射バーが近位位置にある、図2の線3−3に沿って得られた図2のエンドエフェクタの側断面図を示す。
図3B図2の線3−3に沿って得られた図2のエンドエフェクタの側断面図を示すが、発射バーが遠位位置にある状態を示している。
図4図2の線4−4に沿って取られた図2エンドエフェクタの端末断面図を示す。
図5図2のエンドエフェクタの分解斜視図を示す。
図6】組織に位置付けられかつ組織において1回起動された、図2エンドエフェクタの斜視図を示す。
図7図2のエンドエフェクタのアンビルのバージョン及びアンビルの開口部内に受容のために構成された、ファスナーインサートの部分斜視図を示す。
図8図2のエンドエフェクタのカートリッジのバージョンの部分斜視図を示す。
図9図7のアンビル及び図8のカートリッジ、及びエンドエフェクタに装着されたバットレス含む、図2のエンドエフェクタのバージョンの部分側面図を示す。
図10】組織修復組成物をバットレスから組織へ解放するために、装着されたバットレス、エンドエフェクタが組織に位置付けされかつ組織内で起動された状態のエンドエフェクタの斜視図を示す。
【0005】
各図面は、いかなる意味においても限定的なものではなく、図に必ずしも示されていないものを含め、本発明の異なる実施形態を様々な他の方法で実施し得ることも考えられる。本明細書に組み込まれその一部をなす添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示すものであり、説明文とともに本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明は図に示される正確な構成に限定されない点が理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施例の以下の説明は、本発明の範囲を限定するために用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が以下の説明から当業者には明らかとなろう。以下の説明は、実例として、本発明を実施するために企図される最良の形態の1つである。明らかなように、本発明は、本発明から逸脱することなく、他の様々な明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明文は、例示的な性質のものであって限定的なものと見なすべきではない。
【0007】
I.例示の外科用ステープル
図1図6は、外科手術を行うために、図1Aに示すような非関節動作状態でトロカールカニューレ通路を通って患者の体内の手術部位まで挿入するように寸法決めがされている、例示的な外科ステープル留め及び切断器具(10)を図示している。外科ステープル留め及び切断の器具(10)は、実施部分(22)へ接続されたハンドル部分(20)を含み、後者は関節動作機構(11)において遠位方向に終端するシャフト(23)と、遠位方向に装着されたエンドエフェクタ(12)と、を更に備える。一旦関節動作機構(11)及びエンドエフェクタ(12)がトロカールカニューレ通路を通って挿入されると、関節動作機構(11)は、関節動作制御部(13)によって図1Bに示すように、遠隔で関節動作されてよい。そのようにして、エンドエフェクタ(12)は、所望の角度から又は他の理由のために、臓器の背後に到達する又は組織に近づくことができる。本明細書では、「近位」及び「遠位」といった用語は、器具(10)のハンドル部分(20)を握っている臨床医を基準として使用されていることを理解されたい。したがって、エンドエフェクタ(12)は、より近位のハンドル部分(20)に対して遠位である。便宜上、また説明を明確にするため、本願では「垂直」及び「水平」といった空間的な用語を図面に対して使用する点も更に認識されるであろう。しかしながら、手術器具は、多くの配向き及び位置において使用され、これらの用語は、制限的及び絶対的であることが意図されない。
【0008】
この例のエンドエフェクタ(12)は下部つかみ具(16)及び枢動可能なアンビル(18)を含む。ハンドル部分(20)はピストル把持部(24)を含み、臨床医がピストル把持部(24)に向かって閉鎖トリガー(26)を枢動して引くことにより、エンドエフェクタ(12)の下部つかみ具(16)に向かってアンビル(18)のクランプすなわち閉鎖が引き起こされる。そのようなアンビル(18)の閉鎖は、ピストル把持部(24)に対する閉鎖トリガー(26)の枢動に応じてハンドル部分(20)に対して長手方向に移動する最も外側の閉鎖スリーブ(32)を通じてもたらされる。閉鎖スリーブ(32)の遠位の閉鎖リング(33)は、実施部分(22)のフレーム(34)によって間接的に支持される。関節動作機構(11)において、閉鎖スリーブ(32)の近位閉鎖チューブ(35)は遠位の閉鎖リング(33)と連通する。フレーム(34)は、関節動作機構(11)を介して下部つかみ具(16)に柔軟に装着されて、単一の平面での関節動作を可能にする。フレーム(34)はまた、発射トリガー(28)からの発射運動を発射バー(14)に伝えるためにシャフト(23)を通って延在する発射駆動部材(図示せず)を長手方向に摺動可能に支持する。発射トリガー(28)は、閉鎖トリガー(26)より更に外側寄りにあり、以下に詳細に説明するように、これが臨床医によって枢動式に引かれると、エンドエフェクタ(12)にクランプされている組織にステープルが打ち込まれ、組織が切断される。その後、解放ボタン(30)を押してエンドエフェクタ(12)から組織を解放する。
【0009】
図2図5は、数多くの機能を実行するために光線発射バー(14)を取り入れているエンドエフェクタ(12)を図示している。図3A〜3Bに最もわかりやすく図示されているように、発射バー(14)は横断方向に配向された上部ピン(38)と、発射バーキャップ(44)と、横断方向に配向された中間ピン(46)と、遠位側に提供された切断エッジ(48)と、を含む。上部ピン(38)は、アンビル(18)のアンビルポケット(40)の内部に位置付けられており、移動可能である。発射バーキャップ(44)は、下部つかみ具(16)を通じて形成されたチャネルスロット(45)(図3Bに図示)を通じて延在する発射バー(14)を有することによって、下部つかみ具(16)の下側表面と摺動可能に係合する。中間ピン(46)は、下部つかみ具(16)の上面と摺動可能に係合して、発射バーキャップ(44)と協力動作する。これによって、発射バー(14)は、発射中にエンドエフェクタ(12)の間隔を確実に維持し、クランプされる組織の最少量の状態でのアンビル(18)と下部つかみ具(16)との間に生じる可能性のあるピンチングを克服し、クランプされた組織の過剰量の状態でのステープルの不良形成を克服する。
【0010】
図2は、近接して位置付けられた発射バー(14)、及び未使用のステープルカートリッジ(37)を下部つかみ具(16)のチャネルの中に着脱可能に装着できるように開放位置まで旋回しているアンビル(18)を示す。図4〜5に最もわかりやすく示されているように、この例のステープルカートリッジ(37)はカートリッジ本体(70)を含み、カートリッジ本体は上部デッキ(72)を提供し、下部カートリッジトレー(74)と連結されている。図2に最もわかりやすく示されているように、ステープルカートリッジ(37)の部分を通じて垂直スロット(49)が形成されている。また、図2には、垂直スロット(49)の一方の側に上部デッキ(72)を通じて形成された3列のステープルアパーチャ(51)及び、垂直スロット(49)の他方の側に上部デッキ(72)を通じて形成された3列のステープルアパーチャ(51)が図示されている。再び図3〜5を参照すると、楔形スレッド(41)及び複数のステープルドライバ(43)がカートリッジ本体(70)とトレー(74)との間に捉えられており、楔形スレッド(41)がステープルドライバ(43)に対して近位に位置付けられている。楔形スレッド(41)はステープルカートリッジ(37)の内部で長手方向に移動可能であり、一方、ステープルドライバ(43)はステープルカートリッジ(37)の内部で垂直方向に移動可能である。ステープル(47)もまたカートリッジ本体(70)の内部に、対応するステープルドライバ(43)の上に位置付けられる。具体的には、それぞれのステープル(47)はステープルドライバ(43)によってカートリッジ本体(70)の内部で垂直方向に駆動されて、関連付けられたステープルアパーチャ(51)を通してステープル(47)を外へと駆動する。図3A〜3B及び図5に最もよく図示されているように、楔形スレッド(41)がステープルカートリッジ(37)を介して遠位方向に駆動されるにつれて楔形スレッド(41)はステープルドライバ(43)を上方に付勢する傾斜カム表面を表示する。
【0011】
図3Aのようにエンドエフェクタ(12)が閉じられている状態で、上部ピン(38)を長手方向のアンビルスロット(42)に入れることによって、発射バー(14)がアンビル(18)と係合して前進させられる。押しブロック(80)は、発射バー(14)の遠位端に位置して、発射バー(14)がステープルカートリッジ(37)を通じて遠位側に前進するにつれて押しブロック(80)が楔形スレッド(41)を遠位側に押すように、楔形スレッド(41)と係合するように構成される。そのような発射中に、発射バー(14)の切断エッジ(48)がステープルカートリッジ(37)の垂直スロット(49)に入り、ステープルカートリッジ(37)とアンビル(18)との間にクランプされている組織を切断する。図3A、3Bに示すように、ミドルピン(46)及び押しブロック(80)は共に、ステープルカートリッジ(37)内のスロット(49)へ進入することによって、ステープルカートリッジ(37)を起動させ、楔形スレッド(41)を駆動してステープルドライバ(43)と上向きカム接触(camming contact)させて、その結果としてステープルアパーチャ(51)を通してステープル(47)を外へ駆動してかつアンビル(18)の内側表面上でステープル形成ポケット(53)と接触を形成する。図3Bは、組織の切断及びステープル留めを完了後に遠位方向に完全に移動された発射バー(14)を図示する。
【0012】
図6は、組織(90)を貫通する1回のストロークを介して作動されたエンドエフェクタ(12)を示す。ステープルドライバ(43)が切断エッジ(48)によって生成された切断線の各側の上に組織(90)を通して交互の3列のステープル(47)を駆動している間に、切断エッジ(48)は組織(90)を切り開いた。この例では、ステープル(47)が全て切断線とほぼ平行に向いているが、ステープル(47)は任意の好適な配向に位置付けることができることを理解されたい。この例では、最初のストロークが完了した後にエンドエフェクタ(12)をトロカールから後退させ、使用済みのステープルカートリッジ(37)を新しいステープルカートリッジと交換し、その後に、エンドエフェクタ(12)を再びトロカールを通して挿入して、ステープル留めする部位に到達し、更なる切断及びステープル留めを行う。所望の量の切断及びステープル(47)が提供されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。トロカールを通じた挿入及び後退を可能にするためにアンビル(18)を閉じる必要がある場合があり、ステープルカートリッジ(37)の交換を容易にするためにアンビル(18)を開く必要があり得る。
【0013】
それぞれの作動ストローク中に、ステープル(47)が組織を通じて駆動されるのと実質的にほぼ同時に切断エッジ(48)が組織を切断可能であることを理解されたい。この例では、切断エッジ(48)はステープル(47)の駆動にごくわずかに遅れて進むので、ステープル(47)は、切断エッジ(48)が組織の同じ区域を通過する直前に組織を通じて打ち込まれるが、この順序を逆にすることができること、又は、切断エッジ(48)が隣接するステープルと直接同期されてもよいことを理解されたい。図6は、2層(92、94)の組織(90)において起動されるエンドエフェクタ(12)を示しているが、エンドエフェクタ(12)が単層の組織(90)を通じて又は2層(92、94)以上の組織を通じて起動されてもよいことを理解されたい。また、切断エッジ(48)が作り出した切断線に隣接するステープル(47)の形成及び位置付けが、切断線で組織を実質的に封着することができ、したがってその切断線での出血及び/又は他の体液の漏出を、低減若しくは予防することができることも理解されたい。器具(10)が使用され得る他の好適な設定は、本明細書の教示に鑑みれば、当業者には明らかとなろう。
【0014】
米国特許第4,805,823号、米国特許第5,415,334号、米国特許第5,465,895号、米国特許第5,597,107号、米国特許第5,632,432号、米国特許第5,673,840号、米国特許第5,704,534号、米国特許第5,814,055号、米国特許第6,978,921号、米国特許第7,000,818号、米国特許第7,143,923号、米国特許第7,303,108号、米国特許第7,367,485号、米国特許第7,380,695号、米国特許第7,380,696号、米国特許第7,404,508号、米国特許第7,434,715、及び/又は米国特許第7,721,930号の教示のいずれかに従って器具(10)が構成され得る及び動作可能であり得ることを理解されたい。
【0015】
上述のように、それらの特許のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。器具(10)に提供することができる更に他の例示的な修正例は、後でより詳しく述べられる。以下の教示が器具(10)に採用される種々の適切な方法は、当業者に明らかであろう。同様に、以下の教示を本明細書で引用された特許の様々な教示と組み合わせることができる種々の適切な方法は、当業者に明らかであろう。また、以下の教示が、本明細書で引用された特許に教示された器具(10)又は装置に限定されないことを理解されたい。以下の教示は、外科用ステープラーとして分類されない器具を含む様々な他の種類の器具に容易に適用することができる。以下の教示を適用することができる種々の他の適切な装置及び環境は、本明細書の教示を鑑みて当業者に明らかであろう。
【0016】
II.例示の代替のバットレスを有するアンビル及びカートリッジ
図7〜10は、アンビル(99)及びカートリッジ(101)を含み、それらのいずれもが例示のバットレス(142)と連結されてよい、例示の代替のエンドエフェクタ(121)を示す。エンドエフェクタ(121)は、後述の場合を除き前述のエンドエフェクタ(12)と同様である。アンビル(99)は、後述の場合を除き前述のアンビル(18)と同様である。更に、カートリッジ(101)は、後述の場合を除き前述のカートリッジ(101)と同様である。そこで、アンビル(99)及びカートリッジ(101)は、アンビル(18)及びカートリッジ(37)の作動に関して前述したのと同様の方法で器具(10)を用いて作動されてよい。
【0017】
A.例示のアンビルファスナーインサート
図7は、矢印(A)の方向にファスナーインサート(100)の受容のために構成されたアンビル(99)を示す。特に、アンビル(99)は、アンビルスロット(42)の遠位端(103)において開口部(102)を含む。開口部(102)は、ファスナーインサート(100)を受容しかつ保持するように構成される。開口部(102)は、上部部分(104)及び底部部分(106)を含み、底部部分(106)は上部部分(104)の下に配設されかつ幅が上部部分(104)より狭い。上部部分(104)は、アンビル(99)の内部上面(108)、反対側レッジ表面(110)、及びそれらの間に位置付けされた第1の内部側壁(112)によって画定される。底部部分(106)は、レッジ表面(110)から突出しかつその下に配設される第2の内部側壁(114)、及び第2の内部側壁(114)の間に配設される後部壁(116)によって画定される。
【0018】
ファスナーインサート(100)は、上面(118)と、遠位壁(120)と、近位壁(122)とを含む。近位壁(122)は、矢印(A)の方向に開口部(102)内へ受容される。遠位壁(120)及び近位壁(122)の両方が、向かい合って位置付けされた上部部分及び下部部分を含む。第1の長手方向壁(124)は、遠位壁(120)と近位壁(122)の上部部分の間に位置付けされている。第2の長手方向壁(126)は、遠位壁(120)と近位壁(122)の上部部分の間に位置付けされている。横方向壁(128)は、遠位壁(120)及び近位壁(122)の上部部分と下部部分との間の境界の区域を画定するために第1の長手方向壁124及び第2の長手方向壁126の端部の間に位置付けされる。底部表面(130)は、第2の長手方向壁(126)の下部端部の間に配設されかつ遠位壁(120)及び近位壁(122)によって上面(118)から分離される。フック(132)は、底部表面(130)に対して略垂直の方向に底部表面(130)から下方に突出している。
【0019】
ファスナーインサート(100)は、加工現場、手術部位において、若しくは他の場所で開口部(102)内へ挿入され成形された、一体型ピースを備えてよい。ファスナーインサート(100)が、開口部(102)内へ受容されるとき、ファスナーインサート(100)の上面(118)は開口部(102)の内部上面(108)に当接するように構成される。ファスナーインサート(100)の第1の長手方向壁(124)は、開口部(102)の上部部分(104)の第1の内部側壁(112)に当接するために摺動自在に受容されるように構成される。ファスナーインサート(100)の横方向壁(128)は、開口部(102)上部部分(104)のレッジ表面(110)に当接するために摺動自在に受容されるように構成される。同時に、ファスナーインサート(100)の第2の長手方向壁(126)は、ファスナーインサート(100)の近位壁(122)が開口部(102)の後部壁(116)に当接するまで底部部分(106)の第2の内部側壁(114)に当接するために摺動自在に受容されるように構成される。
【0020】
ファスナーインサート(100)が、前述のように、開口部(102)内に受容されるとき、フック(132)は非外傷的に位置付けられ、これによって、更に後述するように、使用中に、バットレス材料が載置されることになる組織に対して外傷を引き起こさずに、フックは、装着されたバットレス(142)内でループ型形成体(loop-type formations)に留められる。特に、フック(132)、及び後述のフック(140、148)は、装着されたバットレス(142)内にループ型形成体を作る小さい繊維へのみ接続しかつ任意のクランプされた組織(90)へは接続しない。
【0021】
B.例示の下部つかみ具用のカートリッジ
図8は、ファスナーインサート(134)が手術部位における使用前に取り外し可能なカートリッジ(101)の遠位端(136)の先端部として成形されるようにファスナーインサート(134)とともに製造される取り外し可能なカートリッジ(101)のバージョンを示す。ファスナーインサート(134)は、カートリッジ(101)が下部つかみ具(16)内に受容されるとき、アンビル(99)に向かい合う上面(138)を含む。フック(140)は、上面(138)に対して略垂直の方向にファスナーインサート(134)の上面(138)から突出する。フック(132)と同様に、フック(140)が、装着されたバットレス(142)内にループ型形成体を作る小さい繊維に接続しかつエンドエフェクタ(121)によってクランプされたいずれの組織(90)にも接続しない。
【0022】
C.例示のエンドエフェクタ及びバットレスアセンブリ
図9に示されるように、本例のバットレス(142)は、アンビル(99)及びカートリッジ(101)にそれぞれ装着されるようにアンビル部分(144)及びカートリッジ部分(146)を含む。アンビル部分(144)及びカートリッジ部分(146)は、単一のバットレス(142)でなく2つの別個のバットレスを代替的に形成してよい。単一のバットレス(142)の場合、エンドエフェクタ(121)へのバットレスの追加の機械的装着を提供するためにカートリッジ(101)は、カートリッジ(101)の近位部分にフック(148)を追加的に含み得る。フック(132,140)と同様に、フック(148)は装着されたバットレス(142)内でループ型形成体を作るより小さい繊維に接続しかついずれのクランプされた組織(90)には接続しない。図9は、アンビル(99)及びカートリッジ(101)の両方に装着されたバットレス(142)を示す。代替的に、バットレス(142)は、アンビル(99)又はカートリッジ(101)の片方のみに装着する。
【0023】
使用中、図9に示されるように、バットレス(142)はファスナーインサート(100)に関して前述したフック(132)を介してアンビル(99)に装着され得る。バットレス(142)は、カートリッジ(101)に関して前述した、ファスナーインサート(136)のフック(140)の反対端に装着される。バットレス(142)はまた、アンビル(99)及びカートリッジ(101)のそれぞれの近位端(152、154)に対して中間の近位部分(150)においてフック(148)に装着される。バットレス(142)とフック(132、140、148)との間の装着は、フック及びループ型の装着又は締結である。すなわち、フック(132、140、148)は、バットレス(142)を含む材料においてループ型形成体へ締結する。本明細書における教示を鑑みて当業者にとって明らかである他の締結方式は、本開示の範囲内である。
【0024】
後述のように、バットレス(142)の部分を組織(90)上に解放するために発射バー(14)がバットレス(142)を通して駆動するとき、フック(132、140、148)が、アンビル(99)及びカートリッジ(101)に対してバットレス(142)を確実に保持する保持特徴部として機能する。ステープル(47)がアンビル(99)に向かってかつバットレス(142)を通して駆動されるとき、ステープル(47)は相当量のバットレス(142)をエンドエフェクタ(121)から取り除くのに十分な力を提供しかつ、バットレス材料の取り除かれた量を、組織(90)の切断されてステープル留めされた区域の周りに実質的に均等に分配する。フック(132、140、148)によって提供される保持の側面が無ければ、取り除かれた量の材料は、他の方法では、均等に分配されない可能性があるだろう。更に、エンドエフェクタ(121)が組織(90)にクランプされる前にエンドエフェクタ(121)のそれぞれの側にバットレス材料を保持するためにフック(132、140、148)を介して力が提供されない場合、アンビル(99)の側など、エンドエフェクタ(12)の片側上の取り除かれなかったバットレス材料が、他の側、例えばカートリッジ(101)の側から取り除かれなかったバットレス材料にくっつく大きな可能性があり得る。
【0025】
アンビル(99)がエンドエフェクタ(121)の下部つかみ具(161)を用いて組織(90)の層(92、94)を共にクランプするときバットレス(142)をスライスしかつ材料をバットレス(142)から組織(90)上へ解放するために、発射バー(14)が、前述のように、アンビルスロット(42)を通って発射されてもよい。同時に、前述したように、カートリッジ(101)からのステープル(47)は、アンビル(99)上のステープルポケットに向かって上方へ及びバットレス(142)を通して駆動され得、バットレス(142)は、組織(90)の切断及びステープル留めから追加の血液の損失を防止するために組織(90)の層(92、94)に互いに装着し、かつ固定するステープル内に形成される。
【0026】
そこで、外科用ステープル(47)は、上記に開示された方法で器具(10)などの外科用器具によって組織(90)内へ駆動されるとき、外科用ステープル(47)は図10に示される組織を圧迫、接続、及び保持する。バットレス(142)の材料は、手術部位における出血量を低減することによって組織修復を補助するために圧迫された組織に接触しかつ組織上に解放する。バットレス(142)は、血液を凝固させるのを補助しかつ組織(90)に沿って切断された及び/又はステープル留めされた手術部位における出血を低減する、例えば、止血剤を含む材料から構成されてよい。追加的に又は代替的に、バットレス(142)は、後述のように組織修復を補助するように動作可能である生分解性高分子を含み得る。また追加的に又は代替的に、バットレス(142)の材料はステープル(47)による組織(90)の機械的な装着の健全性を補強してもよい。外科用ステープル(47)は、鉄、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、及び/又はチタンから選択された材料を備えてよい。勿論、任意の他の好適な材料が使用されてもよい。
【0027】
D.例示のバットレス
バットレス(142)は、繊維状パッド、発泡体(例えば、開放又は閉鎖セル)、マトリックス、メッシュ、又は例として、開示が参照により本明細書に組み込まれている2009年5月14日に発行され「Surgical Fastening Device with Initiator Impregnation of a Matrix or Buttress to Improve Adhesive Application」と題する米国特許出願第2009/0120994号の教示に従って、別の構造体を含み得る。材料は、接着剤を材料に引き込むウィッキング(吸い込み)特性を誘起し、かつ開口部に接着剤がない状態を維持して、組織に適用された後に組織がこれら開口部を通って成長できるようにする多孔を含んでもよい。バットレス(142)を形成するために使用されてもよい他の好適な構造体は、本明細書の教示を鑑みて当業者にとって明らかであろう。
【0028】
バットレス(142)を形成する材料は、例えば、血液を凝固させ、かつ手術部位における出血量を低減する補助となるフィブリン又はトロンビンなどの添加剤又は止血剤を含み得る。かかる添加剤の止血能力はまた、接着剤及びシーラントなどの添加剤の利用にも寄与し得る。上記薬剤は、手術部位において血液を凝固させるのを補助することができ、それにより、例えば、かかる血液を取り囲んでいる組織をくっつけるのが可能となり、また、ステープル留めされた組織部位に沿った漏れを防止することが可能である。
【0029】
このような添加剤又は試薬は、血小板乏血漿(PPP)、多血小板血漿(PRP)、でん粉、キトサン、アルギネート、フィブリン、多糖類、セルロース、コラーゲン、ウシコラーゲン、ゼラチン−レゾルシン−フォルマリン接着剤、酸化セルロース、ムラサキガイ系接着剤、ポリ(アミノ酸)、アガロース、アミロース、ヒアルロナン、ポリヒドロキシン酪酸(PHB)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクタン(PCL)、及びそれらのコポリマー、VICRYL(登録商標)(Ethicon,Inc.,Somerville,N.J.)、MONOCRYL material、PANACRYL(Ethicon,Inc.,Somerville,N.J.)などの薬液及び/又はバットレス構成成分、及び/又は各材料の組み合わせを含む、生物学的材料と混合されかつ創傷又は欠陥部位へ導入されるのが好適な任意の他の材料を、更に含み得るが、これらに限定されない。追加の例示の材料は、天然又は遺伝子改変の吸収性ポリマー又は合成吸収性ポリマー、若しくはそれらの混合物を含み得る。天然若しくは遺伝子工学による吸収性ポリマーの例としては、タンパク質、多糖及びこれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質は、プロトロンビン、トロンビン、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ヘパリナーゼ、第X/Xa因子、第VII/VIla因子、第IX/IXa因子、第XI/XIa因子、又は第XII/XIIa因子、組織因子、バトロキソビン、アンクロッド、エカリン、フォンヴィレブランド因子、コラーゲン、エラスチン、アルブミン、ゼラチン、血小板表面糖タンパク質、バソプレシン、バソプレシンアナログ、エピネフリン、セレクチン、凝血原毒液、プラスミノゲン活性化物質阻害物質、血小板活性化因子、止血活性を有する合成ペプチド、及び/又はそれらの組み合わせを含む。また多糖には、セルロース、アルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロース硫酸、カルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キチン、カルボキシメチルキチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アルギネート、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、グリコーゲン、デキストラン、デキストラン硫酸、カードラン、ペクチン、プルラン、キサンタン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸類、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルキトサン、キトサン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、カラギーナン類、キトサン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、ポリ−N−グルコサミン、ポリマンヌロン酸、ポリグルクロン酸、ポリグルロン酸、及び上記のいずれかの誘導体を挙げることができる。合成の吸収性ポリマーの例としては、脂肪族ポリエステルポリマー、共重合体、及び/又はこれらの組み合わせを挙げることができる。脂肪族ポリエステルは、典型的には、乳酸、ラクチド(L−、D−、メソ形、及びD、L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、及びトリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)を含むが、これらに限定されないモノマーの開環重合において合成される。
【0030】
幾つかのバージョンでは、バットレス(142)は、薬液を含有するために生体適合性担体を備えてよい。好適な担体としては、例えば、生理的緩衝液、流動性を有するゲル溶液、食塩水、及び水を挙げることができる。ゲル溶液の場合、組織修復組成物は、標的部位で送達される前は流動性を有するゲルの形態であってもよく、又は、標的部位で送達された後にゲルを形成して適所に留まってもよい。流動性を有するゲル溶液は、1種又は2種以上のゲル化物質を含んでもよく、添加された水、食塩水、又は生理的緩衝液を有してもよく、又は有さなくてもよい。好適なゲル化物質には、生体物質及び合成物質が含まれる。例示のゲル化材料には、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、及びその他の材料(例えば、アルギン酸塩、架橋アルギン酸塩、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキサイド)−ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリル酸塩、又はモノステアロイルグリセロールco−琥珀酸塩/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、並びに前述の任意の組み合わせが挙げられる。
【0031】
図10は、本明細書に記載された例示のバットレス(142)を組織(90)に適用してバットレス(142)の部分を組織修復組成物として組織(90)上に載置するためにエンドエフェクタ(12)を使用した一例を示す。前述したかかる適用の後、組織(90)上に載置されたバットレス(142)は、組織(90)の層(92、94)を固定するステープル(47)上で実質的に取り囲み及び/又はステープル(47)上を塗布してよい。
【0032】
本明細書で述べる教示、表現、実施形態、例などのいずれの1つ又は2つ以上も、本明細書で述べる他の教示、表現、実施形態、例などのいずれの1つ又は2つ以上とも組み合わせることができることを理解されたい。したがって、下記に述べる教示、表現、実施形態、例などは、互いに独立であると考えられるべきでない。本明細書の教示を組み合わせることができる種々の適切な方法は、本明細書の教示を考慮して当業者には容易に明らかになるであろう。こうした修正及び変形は特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0033】
前述の装置の変形物は、ロボット支援された医療処置及び方法での用途だけでなく、医療専門家によって行われる従来の医療処置及び方法での用途を有することができる。
【0034】
前述した変形物は、1回の使用後に処分するように設計されることができ、又はそれらの形態は、複数回使用するように設計することができる。諸形態は、いずれの場合も、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整することができる。再調整することは、装置を分解すること、それに続いて特定の部品を洗浄及び交換すること、並びにその後の再組み立てすることとの任意の組み合わせを含んでよい。特に、装置の幾つかの変形物は分解されてもよく、また、装置の任意の個数の特定の部片又は部品が、任意の組み合わせで選択的に交換されるか、あるいは取り外されてもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換の際、装置の幾つかの変形物は、再調整用の施設で、又は処置の直前にユーザによって、その後の使用のために再組み立てされてよい。装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることが、当業者には理解されよう。このような技術の使用、及びその結果として得られる再調整された装置は、全て、本出願の範囲内にある。
【0035】
単に例として、本明細書で説明した形態は、手術の前及び/又は後に、滅菌してもよい。1つの滅菌技術では、装置は、プラスチック又はTYVEKバッグなど、閉められかつ密閉された容器に入れられる。次いで、容器及び装置は、γ放射線、X線、又は高エネルギー電子など、容器を透過し得る放射線場に置かれてもよい。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させることができる。次に、滅菌された装置は、後の使用のために、滅菌した容器内に保管してもよい。装置はまた、限定されるものではないが、β若しくはγ放射線、エチレンオキシド、又は水蒸気を含めて、当該技術分野で既知の任意の他の技術を使用して滅菌されてもよい。
【0036】
本開示の様々な形態について図示し説明したが、本明細書で説明した方法及びシステムの更なる適応が、当業者による適切な変更により、本発明の範囲を逸脱することなく達成され得る。そうした可能な改変例の幾つかについて述べたが、その他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上記に論じた実施例、形態、幾何学的図形、材料、寸法、比率、工程などは、例示的なものであり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲において考慮されるべきであり、本明細書及び図面において示し、説明した構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具装置であって、
(a)ハンドル部分と、
(b)発射バーを収納するシャフトと、
(c)アンビルと、下部つかみ具と、前記ハンドル部分及び前記シャフトによって生成された長手方向閉鎖運動に反応するステープル留め及び切断アセンブリと、を備えるエンドエフェクタと、
(d)取り外し可能なカートリッジであって、前記エンドエフェクタが開放位置にあるとき前記下部つかみ具が前記カートリッジを受容するように構成され、前記カートリッジが、
(i)ハウジングと、
(ii)前記ハウジング内に配設される複数のステープルと、
(iii)前記複数のステープルの上に配設され、アパーチャを画定するデッキであって、各アパーチャが各ステープルの上に実質的に配設される、デッキと、を備える、取り外し可能なカートリッジと、
(e)前記アンビル内に受容されるように構成された、ファスナーを備える取り外し可能なファスナーインサートと、を備える、外科用器具装置。
(2) 前記ファスナーが、生体適合性材料に装着されるように構成される、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記生体適合性材料が、次の材料:イプシロン−カプロラクトングリコリド、ウシ囲心嚢、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリグラクチン、ポリジオキサノン、ポリグリコネート、乳清蛋白質、セルロースガム、でん粉、ゼラチン、シルク、ナイロン、ポリプロピレン、編組ポリエステル、ポリブテステル、ポリエチレン、及びポリエーテルエーテルケトンのうちの少なくとも1つから成る群から選択される、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記生体適合性材料が、フィブリン又はトロンビンのうちの1つを含む、実施態様2に記載の装置。
(5) 前記生体適合性材料が、止血剤、シーラント、又は接着剤のうちの少なくとも1つを含む、実施態様2に記載の装置。
【0038】
(6) 前記ファスナーが、フックを備える、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記フックが、生体適合性材料内でループ形成体に装着されて前記材料を前記アンビルに保持するよう構成される、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記カートリッジが、遠位端においてファスナーインサートを備え、前記ファスナーインサートがファスナーを備える、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記ファスナーが、生体適合性材料に装着されて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成される、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記ファスナーが、生体適合性材料内でループ形成体に装着されて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成されるフックを備える、実施態様8に記載の装置。
【0039】
(11) 前記カートリッジの近位端が、ファスナーを備える、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記ファスナーが、生体適合性材料内でループ形成体に装着されて前記材料を前記カートリッジに保持するように構成されるフックを備える、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記ファスナーが、フックを備える、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記ファスナーが、非外傷的であり、かつ生体適合性材料に、前記生体適合性材料を貫通して延出しないで装着されるように構成される、実施態様1に記載の装置。
(15) 前記生体適合性材料が、バットレスを構成し、かつ前記バットレスがフィブリン又はトロンビンのうちの一方を含む、実施態様1に記載の装置。
【0040】
(16) 外科用器具を用いて接着剤を解放しかつ活性化させる方法であって、前記外科用器具がエンドエフェクタと、ハンドル部分と、シャフトとを含み、前記エンドエフェクタが、下部つかみ具及びアンビルを含み、前記下部つかみ具が取り外し可能なカートリッジを受容するように構成され、前記器具が前記ハンドル部分及び前記シャフトによって生成される長手方向閉鎖運動に反応するステープル留め及び切断アセンブリを含み、前記方法が、
(a)前記アンビルにおける開口部内にファスナーインサートを受容する工程と、
(b)前記ファスナーインサートにバットレスを装着する工程と、
(c)前記ステープル留め及び切断アセンブリの切断特徴部を前進させるために前記長手方向閉鎖運動を生成する工程と、
(d)前記バットレスを通して前記切断特徴部を駆動する工程と、
を備える、方法。
(17) 前記切断特徴部が、発射バーの一部である、実施態様16に記載の方法。
(18) バットレスを前記ファスナーインサートに装着する前記工程が、前記ファスナーインサート上の1つ又は2つ以上のフックを前記バットレス内の1つ又は2つ以上のループ形成体に装着する工程を備える、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記バットレスが、生体適合性材料を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 外科用器具であって、
(a)ハンドル部分と、発射バーを収納するシャフトと、
(b)前記ハンドル部分及び前記シャフトによって生成される長手方向閉鎖運動に反応するステープル留め及び切断アセンブリと、
(c)前記ハンドル部分に接続され、アンビル及び下部つかみ具を備えるエンドエフェクタであって、前記アンビルが開口部を画定し、前記エンドエフェクタが開放位置にあるときに前記下部つかみ具がカートリッジを受容するように構成される、エンドエフェクタと、
(d)前記カートリッジのハウジングに配設される複数のステープルであって、前記エンドエフェクタが閉鎖位置にあるときに前記長手方向閉鎖運動に反応して前記アンビルが前記ステープルを形成するように構成される、複数のステープルと、
(e)前記複数のステープルの上に配設され、アパーチャを画定するデッキであって、各アパーチャが各ステープルの上に実質的に配設される、デッキと、
(f)前記アンビルにおける前記開口部内に受容するように構成される、複数のフックを備えるファスナーインサートであって、前記フックが生体適合性材料を受容するように構成される、ファスナーインサートと、
を備え、前記発射バーが、前記材料を切断するために前記アンビルと前記カートリッジとの間を移動するように動作可能であり、かつ
前記ステープルが、前記長手方向閉鎖運動に反応し、前記材料を貫通して前記アンビルに向かって駆動されるように動作可能である、外科用器具。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10