(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297495
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】浸透圧活性膣送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20180312BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20180312BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
A61M31/00
A61M37/00
A61K9/52
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-539372(P2014-539372)
(86)(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公表番号】特表2015-501191(P2015-501191A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】FI2012051064
(87)【国際公開番号】WO2013064745
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】20116073
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】513105797
【氏名又は名称】バイエル・オサケユキテュア
【氏名又は名称原語表記】Bayer Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ブラハト
(72)【発明者】
【氏名】マンヤ・アホラ
(72)【発明者】
【氏名】ハッリ・ユカライネン
(72)【発明者】
【氏名】ピルヨ・クルテスオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッキ・リューティカイネン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ストルト
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭56−049883(JP,B1)
【文献】
特表2002−532406(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0055408(US,A1)
【文献】
特表2001−526939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
A61K 9/52
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透圧活性膣リングであって、
前記リングの少なくとも一部が、膣腔に存在する水または外部水性流体の流れは通すことができるが、前記リング内部にある組成物は通すことができないポリマー組成物から作られた膜で覆われ、
前記膜が、前記リングの外径と同じか、または大きな内径を有する管状ポリマーセグメントの形態である、浸透圧活性膣リングであって、
その本体が、
−1種類以上の治療活性物質からなる組成物を含む少なくとも1つの区画と、
−水および水性生物流体と相互作用し、外部流体に対して濃度勾配を作り出すか、または膨潤もしくは膨張して浸透圧を作り出すことができる浸透性組成物と、
−1種類以上の治療活性物質からなる前記組成物を含む前記区画から、前記本体の外側表面へと延びる少なくとも1つの経路と
を備え、
前記治療活性組成物および前記浸透性組成物が同じ区画にあり、
前記少なくとも1つの区画が、前記管状ポリマーセグメントの内側にあることを特徴とする浸透圧活性膣リング。
【請求項2】
本体材料が、医薬活性物質の拡散障壁を構成し、シロキサンポリマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリアクリロニトリル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリイソブチレンを含むポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS、SIS)およびスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SIBS)、ポリエステルからなる熱硬化性プラスチックまたはポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロースの群から選択される、請求項1に記載の浸透圧活性膣リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達システムの分野に関する。さらに具体的には、本発明は、膣腔に治療活性物質を制御放出するための浸透圧活性膣内送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
膣リングは、女性の膣領域に1つ以上の医薬活性物質を局所的または全身的に放出するための医療用デバイスの魅力ある形態である。このシステムは、女性が自分で装着し、さらに自分で取り外すのに適している。拡散制御式システムは、成功しており、文献に広く記載されている。
【0003】
溶解した形態で活性物質を含有する膣リングでは、活性物質の放出は、主に、フィックの拡散第1法則にしたがって起こる。懸濁しているが、溶解していない活性物質を含有するシステムでは、時間経過に伴う物質の移動は、以下のヒグチの式によって支配される。
式中、M
tは、時間t内に放出される活性物質の量であり、Dは、ポリマーを通過する活性物質の拡散係数であり、C
0は、担体マトリックス中の薬物の合計濃度であり、C
sは、ポリマー中の薬物の溶解度であり、Aは、物質が拡散する面積である。
【0004】
溶解に適用するとき、フィックの法則は、以下のように表されてもよい。
式中、Dは拡散係数であり、Aは表面積であり、C
sは、ポリマーへの薬物の溶解度であり、C
bは、バルク中の薬物の濃度であり、hは、拡散層の厚みである。C
bがC
sよりかなり小さい場合、いわゆる「シンク(sink)条件」が成り立ち、この式は、
に帰着する。
【0005】
フィックの法則は、表面を所与の方向に通過する拡散速度(rate of diffusion)が、濃度勾配に正比例することを示唆しており、濃度勾配が大きいほど、拡散速度が大きい。拡散速度は、表面積に正比例し、拡散が起こる膜の表面積が大きいほど、拡散速度が大きい。このことは、セルの大きさを制限する一因子である。最後に、拡散速度は、距離に反比例し、拡散速度は、距離が離れると急激に小さくなる。したがって、拡散は、短い距離でのみ有効である。
【0006】
両方の場合に、時間単位あたり高速で活性物質を放出するには、以下の少なくとも1つの条件が必要である。
−大きなシステム表面。
−活性物質の大きな拡散係数。
−システム表面と適用部位との間の高い濃度勾配。
【0007】
異なる拡散性に起因して、時間単位あたりポリマーを通過する特定の医薬活性物質の放出速度は、拡散制御式システムでは制限される場合がある。例えば、比較的水溶性の薬物または分子の大きさ/体積/重量が大きすぎる薬物は、ポリマー材料中で薬物を放出するのに十分な程の可溶性がない場合がある。
【0008】
治療濃度での比較的親水性の物質、水溶性薬物または高分子作用物質の放出を達成するために、いくつかの戦略が記載されている。
【0009】
疎水性ポリマー中における親水性物質の溶解度を高めるために、ポリマー材料を変えることができる。
【0010】
マトリックスシステムでは、原薬(drug substance 医薬品有効成分ともいう)を非常に高濃度(20% w/wを超える)で含むことができる。このようなシステムでは、原薬は、デバイス全体に分配される。原薬の充填量が高く、かつ、リングデバイス表面で原薬が利用可能であると、少なくとも適用(装着)後の初期の間は放出速度(release rate)が比較的大きい。しかし、強力で高価な治療高分子または水溶性薬物をマトリックスリングにこのような高い充填量で組み込むことは、費用の点から効果的ではない。デバイス表面から放出が起こるため、マトリックスリングのバルク中にあるかなりの量の原薬が放出されず、リングのバルク中に保持される場合がある。
【0011】
水溶性放出向上剤をマトリックスリングに組み込んで、水/流体がリングに取り込まれると、組み込まれた水溶性作用物質または高分子作用物質の放出が促進されるようにすることができる。しかし、原薬の放出速度をかなり高くするには、高充填量の水溶性放出向上剤が必要である。さらに、デバイス内に水溶性放出向上剤によってかなりの水/流体が取り込まれると、デバイスの過剰な膨潤および膨張が起こり、その元々の形状および大きさをもはや維持できなくなる場合がある。このような膨潤および膨張は、膣壁に過剰な圧力をもたらし、デバイスが使用に適さないものとなる。
【0012】
水溶性作用物質または高分子作用物質の持続性放出は、皮下移植可能なデバイスから得られている。そこでは、水溶性薬物または高分子と、水溶性放出向上剤とを、ポリマー製の鞘で部分的に封止されたシリコーンエラストマーコアに組み込んでおり、原薬と放出向上剤を含むコアの末端が外の環境にさらされている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、および非特許文献8)。原薬の放出は、周囲の媒体または体液をコアに取り込み、次いで、水溶性放出向上剤が溶解し、除去され、同時に原薬が溶解し、放出されることによって達成される。原薬を膣投与するという観点から、組織に移植するように特定的に開発されたデバイスは、その大きさおよび構造の形に起因して、膣内に保持されないように思われる。
【0013】
Warner−Chilcottによる特許文献1は、膣内薬物送達デバイスであって、前記デバイス本体の外側に少なくとも1つの開口部を規定する少なくとも1つの流路を有する疎水性担体材料を備えるデバイスに関する。この少なくとも1つの流路は、少なくとも1つの薬物含有インサートを受け入れるようになっている。この少なくとも1つの薬物含有インサートは、膣投与に適した、薬学的に有効な量の少なくとも1つの作用物質を放出することができ、約1%〜約70%の少なくとも1つの水溶性放出向上剤を含有している。薬物および水溶性放出向上剤はインサート担体材料に分散している。このインサート担体材料は、疎水性担体材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。前記膣内薬物送達デバイスを使用するとき、少なくとも1つの薬物含有インサートは、前記デバイス本体の前記外側に露出する。
【0014】
浸透圧活性システムは、拡散制御式の活性物質放出システムの代替例をあらわす。例えば、Alzaによる特許文献2は、浸透デバイスであって、有益な作用物質および浸透性ポリマー、場合により浸透性作用物質(osmagent)を含む第1の浸透性組成物を含む区画を取り囲む壁を備え、前記組成物が、(2)浸透性ポリマーと場合により浸透性作用物質を含む第2の組成物を含む配列と接触した、デバイスに関する。前記壁を通る少なくとも1つの経路は、浸透デバイスの外側と、浸透デバイスから有益な作用物質を送達するための有益な作用物質を含有する第1の浸透性組成物とを接続する。浸透デバイスは、好ましくは、(3) 溶解度が原因で、浸透分注システムから制御された速度で既知の量を送達するのが困難な有益な作用物質を送達するのに有用であり、(4)治療上非常に活性があり、浸透分注システムから制御された速度で少量分注される有益な作用物質を送達するのに有用である。
【0015】
数ある用途の中でも特に膣で使用するための浸透圧活性システムは、早くも1974年にALZA Corp.のTheeuwesおよびHiguchiによって特許文献3に原理的に記載されているが、本願発明者が気づいている限りでは、商業的な開発は行われていなかった。対照的に、経口用途および胃腸での用途での浸透性システムは開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第WO2009/003125号
【特許文献2】米国特許第4765989号
【特許文献3】米国特許第3,845,770号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】M. Kajihara et al, J. Cont. ReI. 66 (2000) 49-61
【非特許文献2】M. Kajihara et al, J. Cont. ReI. 73 (2001) 279-291
【非特許文献3】J.M. Kemp et al, Vaccine 20 (2002) 1089-1098
【非特許文献4】S.A. Lofthouse et al, Vaccine 20 (2002) 1725-1732
【非特許文献5】M. Maeda et al, J. Cont. ReI. 84 (2002) 15-25
【非特許文献6】H. Maeda et al, Int'l. J. Pharm. 261 (2003) 9-19
【非特許文献7】M. Kajihara et al, Chem. Pharm. Bull. 51 (2003) 15-19
【非特許文献8】H. Maeda et al, J. Cont. ReI. 90 (2003) 59-70
【発明の概要】
【0018】
(発明の目的)
本発明の目的は、浸透圧活性膣送達システム(osmotically active vaginal delivery system)であって、その本体が、
−1種類以上の治療活性物質からなる組成物を含む少なくとも1つの区画と、
−水および/または水性生物流体と相互作用し、外部流体に対して濃度勾配を作り出すか、または膨潤もしくは膨張して浸透圧を作り出すことができる浸透性組成物を含み、治療活性物質を含む区画と同じか、または異なる少なくとも1つの区画と、
−1種類以上の治療活性物質からなる前記組成物を含む前記区画から、前記本体の外側表面へと延びる少なくとも1つの経路と、
−場合により、1つ以上の膜であって、それぞれが前記送達システムの少なくとも一部を覆う膜と
を備え、
該膜が、膣腔に存在する水または外部水性流体の流れは通すことができるが、前記送達システム内部にある組成物は通すことができないポリマー組成物で作られている、膣送達システムを提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、比較的長期間、例えば、複数日または複数週(1〜7日間、1〜14日間または1〜28日間、またはそれより長く)にわたって、膣内投与に適した薬学的に有効な量の少なくとも1つの治療活性物質を放出することができ、それによって、投薬頻度を少なくすることができる、浸透圧活性膣送達システムを提供することである。本明細書で使用する場合、「薬学的に有効な量」という用語は、望ましい予防結果または治療結果をもたらすのに必要な薬物の量を指す。
【0020】
したがって、本発明の目的は、動物(特にヒト)の膣腔に長期間にわたって有益な作用物質を制御された状態で送達するための浸透圧活性膣送達システムを提供することである。
【0021】
使用者は、膣領域からこの送達システムを一時的に、かつ短時間だけ取り外すことができ、その結果、取り外している間はこのシステムから感知できるほどの量の活性物質は放出されないが、このシステムを膣領域に再び挿入した後は、すぐに活性物質の放出が続くであろう。
【0022】
これらすべての目的は、驚くべきことに、本発明の浸透圧活性システムを単に選択することによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、2つの区画を備えた、膣で使用する前の状態にある膣送達システムを示す。治療活性物質を含む組成物(1)は、区画(2)に配置されている。活性物質を含まない膨潤性または膨張性組成物(3)は、区画(4)に配置されている。区画(2、4)は、管状ポリマーセグメント(5)によって互いに接続しており、例えば、区画(2、4)の末端を、この区画の外径と本質的に等しいか、またはわずかに大きな内径を有する管状の膜のセグメントに挿入し、複合接着剤(6)によって完全に末端を密封することによって、送達システムの選択された部分を覆う。少なくとも1つの出口経路(7)は、治療活性物質を含む区画のおおよそ中央に設けられる。
【
図2】
図2は、膣で使用中の状態にある
図1のシステムを示す。膨潤性組成物(3)は、水または体液を吸収して、他の区画(2)に向かって(他の区画(2)の中に)大きく膨張しており、その際に、活性物質を含む組成物(1)を、経路(7)を通してシステムの外へと押し出している。
【
図3】
図3は、同様に、2つの区画を備え、膣で使用する前の状態にある膣送達システムを示す。活性物質を含む組成物(1)は、区画(2)に配置されている。活性物質を含まない膨潤性組成物(3)は、区画(4)に配置されている。区画(2、4)は、2個の管状ポリマーセグメントによって互いに接続しており、送達システムを部分的に覆う。区画(2)には、出口経路(7)が設けられ、
図1とは異なり、この区画の一端に配置されている。開口部(7)に近い位置にある障壁層(8)は、2種類の組成物(1、3)が直接接触するのを防ぐ。
【
図4】
図4は、膣で使用中の状態にある
図3のシステムを示す。膨潤性組成物(3)は、水または体液を吸収して、他の区画(2)に向かって(他の区画(2)の中に)大きく膨張しており、その際に、活性物質を含む組成物(1)を経路(7)を通してシステムの外へと押し出している。膨潤性配合物(3)は、一方の側のみから区画(1)に浸透する。なぜなら他の方向への浸透は、もう一方の端にある障壁層(8)によって妨げられるからである。
【
図5】
図5は、
図1のシステムの原理にしたがって構築されたシステムを示すが、相違点は、2つの区画(2、4)が、組成物(1,3)が空隙(10)によって接続点で直接接触するのを避ける態様で、改変された中間片(9)によって接続されている点である。
【
図6】
図6は、1つの区画(1)を備えた、膣で使用する前の状態にある膣送達システムを示す。膨潤性組成物(2)は、区画の一端に配置され、一方、管のほとんどの部分は、治療活性作用物質を含む組成物(3)で満たされている。区画(1)の両端は、送達システムの一部を覆っている管状ポリマーセグメント(11)を用いて互いに接続されている。この区画の他端(膨潤性組成物から離れた端部)は、経路(7)を備える。
【
図7】
図7は、膣で使用中の
図6で示される膣送達システムを示す。膨潤性組成物(2)は、水の吸収によって膨張し、その結果、経路(7)を通って活性物質を放出させている。
【
図8】
図8は、1つの区画(1)を備え、膣で使用する前の状態にある膣送達システムを示す。膨潤性組成物(2)は、その区画の一端に配置され、一方、管のほとんどの部分は、医薬活性作用物質を含む組成物(3)で満たされている。この区画の両端は、プラグ(12)によって閉じられ、また、送達システムの一部を覆っている管状ポリマーセグメント(5)を用いて互いに接続されている。この区画の他端(膨潤性組成物から離れた端部)は、経路(7)を備える。特別な特徴として、膨潤性組成物と、活性物質を含有する組成物が、移動可能なプラグ(ここでは球(13)の形態)によって分離されている。
【
図9】
図9は、膣で使用中の
図8で示される膣送達システムを示す。膨潤性組成物(2)は、水の吸収によって膨張し、経路(7)を通して特定量の活性物質をこの膣送達システムから放出させている。膨潤性組成物は、膨張したときに、プラグ(13)を経路(7)に向かって押し出している。
【
図10】
図10は、膣送達システム(1)を示し、治療活性物質を含有する組成物および浸透性組成物は両方とも、この送達システムを部分的に覆っている管状ポリマーセグメント(5)内の区画(14aおよび14b)に配置されている。出口経路(7)が、これらの区画からこの送達システムの外側表面まで延びている。送達システムの残りの本体は、少なくとも部分的にポリマー組成物を含み得る。前記区画は、膜を通して組成物を注入することによって充填または再充填することができる。
【
図11】
図11は、膣送達システム(1)を示し、治療活性物質を含有する組成物および浸透性組成物は、両方とも同じ区画(14)に配置されている。この場合には、組成物は、本体の内寸に対応するあらかじめ選択された形状および寸法を有する固体形態にプレス加工されている。出口経路(7)が、前記区画から送達システムの外側表面まで延びている。送達システムの残りの本体は、少なくとも部分的にポリマー組成物を含み得る。
【
図12】
図12は、実施例5にしたがって調製した膣送達システムによって得られる放出プロフィールを示す。放出試験は、実施例6〜9で論じる。
【
図13】
図13は、実施例5にしたがって調製した膣送達システムによって得られる放出プロフィールを示す。放出試験は、実施例6〜9で論じる。
【
図14】
図14は、実施例5にしたがって調製した膣送達システムによって得られる放出プロフィールを示す。放出試験は、実施例6〜9で論じる。
【
図15】
図15は、実施例5にしたがって調製した膣送達システムによって得られる放出プロフィールを示す。放出試験は、実施例6〜9で論じる。
【0024】
本発明は、浸透圧活性膣送達システムであって、その本体が、
−1種類以上の治療活性物質からなる組成物を含む少なくとも1つの区画と、
−水および/または水性生物流体と相互作用し、外部流体に対して濃度勾配を作り出すか、または膨潤もしくは膨張して浸透圧を作り出すことができる浸透性組成物を含み、治療活性物質を含む区画と同じか、または異なる少なくとも1つの区画と、
−1種類以上の治療活性物質からなる前記組成物を含む前記区画から、前記本体の外側表面へと延びる少なくとも1つの経路と、
−場合により、前記送達システムの少なくとも一部を覆う1つ以上の膜と
を備え、
該膜が、膣腔に存在する水または外部水性流体の流れは通すことができるが、前記送達システム内部にある組成物は通すことができないことを特徴とする浸透圧活性膣送達システムを提供する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、膣送達システムは、本体と、1個の区画とを備え、前記区画は、浸透性組成物と、1種類以上の治療活性物質の組成物とを含む。この膣送達システムは、前記区画から、膣送達システムの外側表面へと延びる少なくとも1つの経路をさらに備える。
【0026】
本発明の別の実施形態によれは、膣送達システムは、本体と、2個の区画とを備える。一方の区画は、1種類以上の治療活性物質の組成物を含み、他方の区画は、水および/または水性生物流体と相互作用し、外部流体に対して濃度勾配を作り出すか、または膨潤もしくは膨張して浸透圧を作り出すことができる浸透性組成物を含む。また、膣送達システムは、前記1種類以上の治療活性物質の組成物を含む区画から、この膣送達システムの外側表面へと延びる少なくとも1つの経路を備える。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、膣送達システムは、本体と、1種類以上の治療活性物質の組成物を含む少なくとも1つの区画と、浸透性組成物を含み、前記治療活性物質を含む区画と同じか、または異なる少なくとも1つの区画と、前記1種類以上の治療活性物質の組成物を含む区画から、この膣送達システムの外側表面へと延びる少なくとも1つの経路と、この膣送達システムの少なくとも一部を覆う1つ以上の膜層とを備える。
【0028】
膣送達システムの本体は、膣腔に存在する水または外部水性流体の流れを通すことができるが、システムの内部にある組成物を通すことができないポリマー組成物を備える。前記本体のポリマー組成物は、その中に前記1個以上の区画があらかじめ選択された大きさを有する空洞の形態で配置されたポリマーマトリックスであるか、または、前記1個以上の区画の外壁を画定する管状ポリマー壁である。管状の本体は、デバイスの機械特性および/または区画の大きさを調整するために、ポリマー組成物によって少なくとも部分的に満たされ得る。
【0029】
場合により、送達システムは、膣腔に存在する水または外部水性流体の流れは通すことができるが、システムの中にある組成物は通すことができない適切なポリマー組成物で作られる少なくとも1つの膜層を備える(すなわち、前記膜は半透膜である)。この膜は、送達システム全体を覆っていてもよく、またはシステムの一部のみを覆っていてもよく、それによって、延長度は変化し得る。さらなる実施形態では、膜層は、区画の外径と本質的に同じか、またはわずかに大きな内径を有する管状ポリマーセグメントである。この膣送達システムを製造する場合、区画の端部が、例えば、これらのセグメントに挿入され、リング状の膣送達システムが作成される。
【0030】
膜層が膣送達システムの一部を覆う場合、区画、特に1種類以上の治療活性物質の組成物と浸透性組成物とを含む区画、例えば、GITS(胃腸管用治療システム)のような浸透性カプセルをこの膜の内側に導入することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態は、治療活性物質を含む組成物を、あらかじめ選択された形状を有する固体形態(錠剤)にプレス加工し、浸透性組成物と同じ区画に配置した膣送達システムである。固体形態へのプレス加工の前に、浸透性組成物を、好ましくは活性物質と混合し、得られた浸透性錠剤を、出口経路を備える半透膜で覆う。膣内送達システムの本体の経路は、膜の経路に合うように配置される。
【0032】
治療活性物質を、あらかじめ選択された形状を有する固体形態にプレス加工し、浸透性組成物と同じ区画に配置する別の好ましい実施形態では、浸透性組成物は、活性物質を取り囲む層の形態であるか、または、活性物質の内側に配置され、2つの組成物の固体での組み合わせが、出口経路を備える半透膜に取り囲まれる。膣内送達システムの本体の経路は、この半透膜の経路に合うように配置される。
【0033】
治療活性物質と浸透性組成物とが同じ区画にある別の好ましい実施形態では、浸透性組成物を含む層と、治療活性物質を含む層とを、圧縮によって接合し、半透膜でコーティングされた錠剤型のコアを形成する。半透膜は、錠剤の薬物層側に出口経路を備える。膣内送達システムの本体の経路は、この膜の経路と合うように配置される。
【0034】
本体のポリマー組成物、膜、または本体を満たすために用いられる材料は、水の流速(water flux rate)を望ましい範囲に保持するように膣腔に存在する水または外部水性流体の流れは通すことができるが、浸透圧活性剤(オスモジェント、osmogent)または治療活性物質またはイオンが送達システムでの拡散によって失われないように、また貯蔵中に、活性物質を含む本体の部分から、活性物質を含まない部分への活性物質の望ましくない移動が非常に遅くしか起こらないように、システム内の組成物の流れを実質的に通すことができない材料からなる。
【0035】
ポリマー組成物は、デバイスの外部および内部の環境の両方に対して安定であるべきである。また、デバイスの動作寿命の間、寸法の完全性(integrity)を保持するのに十分なほど剛性でなければならず、最後に、生体適合性を有していなければならない。
【0036】
ポリマー組成物の材料は、好ましくは、シロキサンポリマー、ポリウレタン(PU、PUR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリイソブチレン等の炭化水素ポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS、SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SIBS)、および他のポリオレフィンの群から選択される薬学的に許容され得るエラストマーである。膨潤性区画の場合、高い水蒸気透過率(WVTR)のために、好ましくは、PUまたはシロキサンポリマーが用いられる。これにより、膣適用部位で、水蒸気を膨潤性マトリックスに迅速に取り込むことができる。
【0037】
しかし、ポリエステル等の熱硬化性プラスチックまたはポリカーボネート、可塑化されていない酢酸セルロース、可塑化された酢酸セルロース、強化した酢酸セルロース、セルロースジアセテートおよびセルローストリアセテート、エチルセルロースなどを使用することも可能である。
【0038】
浸透性組成物は、好ましくは、経路から離れている。区画または組成物は、互いに接触していてもよいが、組成物同士が互いに接触するのを防ぐために、システムの組成物を通さない生体適合膜または障壁層によって分離されていてもよい。不透膜または障壁層は、例えば、ポリマー層、空隙、または鋼鉄、チタン、ガラスまたはテフロンから作られる球または円筒であり得る。適切な障壁ポリマーは、当業者に公知であり、例えば、食品産業または医薬製品における包装に用いられるBarexもしくはSurlyn、または鋼鉄、チタン、ガラス、テフロンなどである。元々の棒状に形成されたポリマー組成物の両端は、製造中に、アダプター片によって互いにしっかりと接続されてもよく、アダプター片が送達システムの内部における組成物の直接的な接触を防ぐ。アダプター片は、好ましくは、医薬活性物質のための拡散障壁を構成する生体適合材料から作られ、例えば、テフロン、シロキサンポリマー、テフロンのコポリマー、およびシロキサンポリマー、ポリアクリロニトリルおよびオレフィンの群から選択される。
【0039】
組成物は、ゲル、ペーストもしくは懸濁液の形態、または液体、半固体もしくは固体状態であってもよく、治療活性物質や浸透活性物質に加え、薬学的に許容され得る賦形剤および/または担体を含み得る。活性物質を含む組成物が固体または半固体の、温度25℃で自由に流動しない状態で存在する場合、該組成物は、好ましくは本体温度37℃で液体形態をとる。
【0040】
治療活性組成物は、外部流体に可溶なものであってもよく、それ自体が、その流体に対して本体材料にわたって浸透圧勾配を示すものであってもよい。一般的に、完全に不溶性またはわずかに可溶性の活性物質を、流体に対する必要な浸透圧を作り出すことができる浸透性組成物と混合するか、またはそれと一緒に使用する。
【0041】
送達システムが膣の中に配置される場合、水または外部水性流体は、本体材料または管状ポリマーセグメントを通して吸収される。浸透性組成物への水の吸収は、前記材料を透過する水蒸気によっても起こり得る。結果として、浸透性組成物が膨張し、それによって、治療活性組成物を含む配合物、溶液または懸濁液が生成され、一定速度で少なくとも1つの経路を通って放出されるだろう。放出は、外部流体に対する濃度勾配によって行われる。デバイスが、活性作用物質を含む組成物および浸透性組成物のための別個の区画を備える場合、後者は、膨張性駆動部材として機能し、活性作用物質(活性剤)によって占められる体積を減らすように作動し、それによって、長時間にわたって制御された速度でデバイスから作用物質を送達する。活性物質は、溶液および/または懸濁液の形態でデバイスから放出されるだろう。
【0042】
放出速度は、一般的に、ポリマー組成物の水透過性、水が吸収される面積、材料の厚み、経路の寸法および数、浸透性組成物の選択によって調整することができる。選択されたポリマー組成物は、システムの内側から組成物を実質的に通さないので、活性物質の放出は、拡散によっては、起こらないか、または無視できる程度にしか起こらず、したがって、活性物質の放出は、ポリマー組成物中の活性物質の拡散係数に依存しない。
【0043】
典型的な膣リングの寸法の範囲内で、前記区画(1個または複数個)は、任意の長さまたは大きさを有することができ、示される図によって限定されることを意図しない。区画の大きさおよび区画中の各組成物の充填量は、送達システムの意図した用途に基づいて選択されるだろう。一般的に、高い充填量の治療活性物質によって、長期間送達することができるか、またはシステムから放出される物質をより高い用量とすることができ、一方、浸透性組成物の充填量が大きいと、濃度勾配、リングのそれぞれの部分での膨潤または膨張の増大をもたらし、その結果、活性物質を含む組成物は、もっと迅速に送達システムから出されることになる。例えば、送達システムが、数時間から7日間の期間内に活性物質を放出することを意図している場合、同じ区画に両方の組成物を有するシステムにおいては、浸透性作用物質の量は治療活性物質の量より多くあるべきであり、組成物が別個の区画にある場合には、浸透性組成物を含む区画は、治療活性物質を含む区画より大きくあるべきである。それぞれの場合において、活性物質が長期間(1週間〜数ヶ月)放出されねばならない場合、同じ区画に両方の組成物を有するシステムにおいては、活性物質の量は浸透性作用物質の量よりも多くあるべきであり、組成物が別個の区画にある場合は、活性物質を含む区画は、浸透性組成物を含む区画よりも大きくあるべきである。
【0044】
送達システムは、活性物質を含む組成物を含む区画の内側から、この送達システムの本体の外側表面へと延びる少なくとも1つの経路を備えることで、治療活性物質をこの送達システムの外側に有効に放出することができる。したがって、活性物質を含む組成物は、経路に近く、浸透性組成物は、経路から離れて配置される。
【0045】
「経路」という用語は、本明細書で使用する場合、浸透システムから作用物質または薬物を放出させるのに適した手段および方法を含み、デバイスの本体または膜を通って治療活性物質を含む区画に至る1つ以上の、開口部、オリフィス、穴、多孔性要素、中空繊維、微細流路、毛細管、微孔性インサート、孔、微孔性オーバーレイ、またはボアなどを含む。経路は、例えば、機械的穿孔、レーザー穿孔、浸食可能な要素の浸食、抽出、溶解によって、圧痕法によって、または透過性の壁に浸出可能な物質を使用することによって、または当該技術分野で公知の他の適当な技術によって形成され得る。レーザードリルは、ミリメートル未満の大きさの穴を製造するために十分に確立されたものである。経路は、任意の形状、例えば、丸型、三角形、正方形、楕円などであり得る。活性物質を含む区画が、透過性コーティングを有する固体形態、または別個の出口経路を備える収納膜である場合、本体の経路は、好ましくは、固体組成物の上方に配置され、経路は、互いに合致するように配置される。
【0046】
当業者に公知の多種多様な組成物を、浸透性組成物(すなわち、水および水性生物流体と相互作用し、外部流体に対する濃度勾配を作り出すか、または膨潤もしくは膨張して浸透圧を作り出すことができる組成物)として使用することができる。
【0047】
浸透圧の面で効果的な化合物または浸透圧の面で効果的な溶質を、治療活性作用物質または浸透性ポリマーと混合して、デバイスから浸透圧によって送達される治療活性作用物質を含む組成物を形成することができる。
【0048】
治療活性物質のための別個の区画を備える送達システムにおいても、浸透圧の面で効果的なポリマーを使用して、経路を通して、前記物質の流体または懸濁液を標的臓器へと送るのに必要な静水圧を作り出すことができる。浸透性溶質は、この溶質を作用物質または浸透性ポリマーと均一にまたは不均一に混合し、次いで、これらを貯蔵容器つまりレザバーに投入することによって、使用することができる。溶質および浸透性ポリマーは、レザバー内に流体を吸収して、ゲル状の溶質の溶液を生成し、送達システムから送達されるときに、溶解していないか、または溶解した治療活性物質をシステムの外側に輸送する。
【0049】
浸透を誘発するのに適した水溶性化合物、すなわち、浸透性作用物質(osmotic agents)またはオスモジェント(osmogents)としては、薬局方で言及されるあらゆる薬学的に許容され得る水溶性化合物、および薬理学的に不活性な水溶性化合物が挙げられる。浸透を誘発するために用いられる作用物質の例としては、無機塩、例えば、塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、リン酸水素リチウム、リン酸水素ナトリウムまたはリン酸水素カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素カリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸リチウム、有機酸塩、例えば、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム、コハク酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸ナトリウム;コハク酸マグネシウム、酒石酸、炭水化物、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース;アルファ−d−ラクトース一水和物、水溶性アミノ酸、例えば、グリシン、ロイシン、アラニンまたはメチオニン、尿素などおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
浸透性組成物を形成するのに適した浸透性ポリマーは、水および水性生物流体と相互作用し、平衡状態まで膨潤または膨張する親水性ポリマーである。これらのポリマーは、水中で膨潤する能力を示し、ポリマー構造内に吸収された水のかなりの部分を保持する能力がある。これらのポリマーは、非常に高度に膨潤または膨張する(通常は、2〜50倍の体積増加を示す)。これらのポリマーは、架橋していなくても架橋していてもよく、植物由来、動物由来または合成由来であってもよい。有機ポリマーオスモジェントの例としては、例えば、セルロースポリマー、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ビニルピロリドンポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドンまたはクロスポビドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ(ヒドロキシメタクリル酸アルキル)、アニオン性およびカチオン性のヒドロゲル;ポリ電解質錯体;ポリ(ビニルアルコール)、無水マレイン酸とスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンとのコポリマーを細かく分割した分散物を形成することによって製造される水不溶性で水膨潤性のコポリマー、N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマーなどが挙げられる。他の浸透性ポリマーとしては、ヒドロゲルを生成するポリマー、例えば、酸性カルボキシポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドポリマーおよびより高級なポリマー;デンプングラフトコポリマー、アクリレート、縮合したグルコース単位からなる多糖、例えば、ジエステル架橋したポリグルカン、寒天、アルギネート、カラゲナン、グアーゴム、微生物多糖類、例えば、デキストラン、ゲランガム、キサンタンガムなどが挙げられる。ポリマー膨潤剤は、上記の1つ以上の膨潤性親水性ポリマーを含み得る。多くの場合、2種類の親水性ポリマーの混合物により、望ましい制御された膨潤性がもたらされる。オスモジェントは、通常は、過剰な量で存在し、任意の物理形態、例えば、粒子、粉末、顆粒などであり得る。特に好ましいのは、高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)および食塩水(NaCl)の混合物である。
【0051】
この送達システムは、非常に異なる種類の治療活性物質(非常に親水性の物質、非常に親油性の物質を含む)からの多くの活性物質のために使用することができる。活性物質は、水または水性流体に可溶性であってもよいが、わずかに可溶性であってもよく、または不溶性であってもよい。
【0052】
治療活性物質という用語は、本明細書で使用する場合、送達システムから膣腔内に送達され、望ましい予防結果または治療結果をもたらすことができる任意の有益な作用物質または化合物、またはそのプロドラッグを含む。この作用物質は、膣投与に適し、局所的または全身的にその効果を発揮する限り、有機または無機、親水性または親油性であってもよい。外部流体中の物質の溶解度は、不溶性から非常に可溶性までさまざまであり得る。典型的な薬物としては、限定されないが、タンパク質、例えば、ペプチドおよびポリペプチド、RNAシステムまたはDNAシステムの分子、ワクチン、およびその組み合わせが挙げられる。
【0053】
少なくとも、治療活性物質を含む区画のために選択される組成物は、好ましくは、水分の取り込みの影響下、または膣適用部位での高温度下で、自由に流動する状態を取る組成物である。治療活性物質は、組成物中で種々の形態をとることができ、例えば、帯電していない分子、分子複合体、当該技術分野で公知の薬理学的に許容され得る塩、エステル、エーテルおよびアミドが挙げられる。酸性物質の場合、金属、アミンまたは有機カチオンの塩;例えば、四級アンモニウムを使用してもよい。水不溶性物質は水溶性誘導体の形態で使用してもよく、それがこのシステムから放出されるとき、例えば、酵素による開裂、加水分解、pHの変化または他の代謝プロセスによって、元々の生物学的活性な形態に変換される。治療活性物質は、溶解した形態または溶解していない形態、または懸濁した形態を取ることができるが、少なくとも一部が溶解していない、懸濁した形態が好ましい。より多くの量の活性物質をシステムに導入することができるからである。
【0054】
組成物は、さらなる医薬賦形剤をさらに含んでいてもよく、医薬賦形剤としては、限定されないが、固体配合物および顆粒を製造するときに用いられる賦形剤、例えば、バインダー、滑沢剤、滑剤、分散剤、着色剤、希釈剤またはフィラー、圧縮賦形剤、滑剤など、ならびにコーティングとして使用するのに適した材料が挙げられる。
【0055】
浸透デバイスに組み込まれる薬物の量は、特定の薬物、望ましい治療効果および薬物が放出される時間の長さによって広範囲に変動する。区画の寸法および相対的割合、ならびに薬物充填量を変えて、種々の治療のための投薬レジメを作成することができ、デバイスに組み込まれる薬物の量について、臨界上限は存在しない。さらに、下限は、薬物の活性、また放出時間の長さに依存するだろう。したがって、デバイスによって放出される治療有効量の薬物の範囲を定義するのは現実的ではない。
【0056】
送達システムには、治療活性物質が完全に送達された時点を調べるための手段が備えられてもよい。この手段には、例えば、活性物質を含む組成物および浸透性組成物の、互いに異なり簡単に区別可能な色を含み得る。好ましい実施形態では、活性作用物質と親水性ポリマーは、対照的な色を有する。本体は、色を簡単に観察できるように十分に透明に作られてもよい。
【0057】
浸透圧活性送達システムは、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、ポリマー組成物を押出成形して、コアまたは管を形成し、コアまたは管を望ましい態様で、治療活性作用物質と浸透圧活性作用物質(浸透圧活性剤)の組成物で満たして、送達システムの本体を形成することができる。最後に、区画(1つまたは複数)を備える本体の末端片を接続し、例えば、本体の末端片を管状ポリマーセグメント(1つまたは複数)(すなわち、適切な長さおよび本体の外径と本質的に同じまたはわずかに大きい内径を有する1つまたは複数のポリマー管)に挿入し、次いで、複合接着剤によって末端を完全に密封することによって、膣投与に適した送達システム(好ましくは膣リング)を形成する。管状本体の末端を、この管状本体の内径に対応する直径を有する適切なアダプター片を用いて接続することもできる。アダプター片は、送達システムの内部にある組成物同士の直接的な接触を防ぐ材料からなっていてもよい。
【0058】
経路は、例えば、針またはレーザー穿孔(ドリリング)を用いて作られる。
【0059】
活性物質を、浸透性組成物および賦形剤と混合し、プレス加工して、本体の内径に対応する寸法を有する固体にしてもよい。活性物質および他の配合物形成成分および適切な溶媒を、従来の方法(例えば、ボールミルによる粉砕、カレンダー加工、撹拌またはロールミルによる粉砕)によって混合して、固体または半固体にし、次いで、プレス加工してあらかじめ選択した形状にしてもよい。次いで、浸透性組成物を含む組成物の層は、活性物質配合物の層と接触した状態で結ばれ、この2つの層は、ポリマー組成物で囲まれる。層形成は、従来の2層錠剤プレス加工技術によって達成することができる。プレス加工した形状を成型、噴霧または浸漬して、壁形成材料にすることによって、壁を付与できる。
【0060】
固体組成物を膜管または管状ポリマーセグメントに挿入してもよく、その後、管または本体の末端を、それぞれ上述のように接続する。デバイスの機械特性を調整し、または変えるために、膜管は、少なくとも部分的に適切なポリマー組成物で満たされ得る。
【実施例】
【0061】
(実施例1 浸透圧活性ポリウレタンカプセルの製造)
2成分樹脂の樹脂および触媒を比率1:1で混合する(bredderpox(登録商標)R12GB von Breddermann)。発熱反応が始まったら、直径が8 mmの磁気撹拌棒をこの混合物に3〜4センチメートル、2〜3時間浸して、棒の上に薄い樹脂の層を得る。樹脂が十分に硬化した後(約12時間)、カプセルを長さ3 cmに切断する。カプセルの相手側部分は、直径が6 mmの棒を用いて、同様に製造する。このカプセルを、着色剤としての酸化鉄(0.977重量%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5.006%)、ステアリン酸マグネシウム(0.244%)、ポリエチレンオキシド(64.591%)および塩化ナトリウム(29.182%)を含む浸透性組成物250 mgで満たす。大きな方のカプセルを、キャップとして使用し、接着剤でシールし、最後に、活性物質ZK 246965(11β−フルオロ−17α−メチル−7α−{5−[メチル(8,8,9,9,9−ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)19.22mgをLabrafilおよびLabrasol(比率7:18)の混合物中に含む組成物を、そのカプセルにドリルで開けた小さなオリフィスから注入することによって、カプセル中の残った空間をその組成物で満たす。
【0062】
(実施例2 浸透圧活性シロキサンカプセルの製造)
比率10:1のElastosil AおよびB (Elastosil M 4641 Aおよび4641 B)をシクロヘキサン10部と混合する。直径が8 mmのガラス棒をその混合物に浸して棒上に薄いポリマー層を得、完全に重合した後、カプセルを長さ3 cmに切断する。カプセルを500 mgの浸透性組成物で満たし、これを、同じ直径を有し、プラグの中央部にオリフィスを有するシロキサンプラグで閉じ、接着剤で密封する。最後に、活性物質ZK 246965(11β-フルオロ-17α-メチル-7α−{5−[メチル(8,8,9,9,9−ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)28.08mgをLabrafilおよびLabrasolの混合物中に含む組成物を、前記オリフィスから注入することによって、カプセル中の残った空間をその組成物で満たす。
【0063】
(実施例3 浸透圧活性膣リングの製造)
リング形状のシステムを製造する。それは、内径が2 mmで外径が4 mmのポリウレタン管(Norres製のNoreflex PUR 401 MHF)を使用したものである。12センチメートルの管の両端を2成分接着剤(bredderpox(登録商標)R12GB von Breddermann)でシールすることよって、その管をリング形態に加工する。気泡の生成を避けることによって、着色剤としての酸化鉄(0.977重量%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5.006%)、ステアリン酸マグネシウム(0.244%)、ポリエチレンオキシド(64.591%)および塩化ナトリウム(29.182%)を含む浸透性組成物100 mg、および活性物質ZK 246965(11β−フルオロ−17α−メチル−7α−{5−[メチル(8,8,9,9,9−ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)8.08 mgを含む組成物404 mgを、リングにドリルで開けた小さなオリフィスから注入することによって、それぞれの管をそれらの組成物で満たす。
【0064】
(実施例4 浸透圧活性膣リングの製造)
内径が2 mmで外径が4 mmのシロキサン管(60Shore Art.-Nr.707112020050、ESSKA GmbH製)を用いることによって、リング形状のシステムを製造する。12センチメートルの管の両端を2成分接着剤(Elastosil M 4641 AおよびElastosil M 4641 B)でシールすることによって、その管をリング形態に加工する。気泡の生成を避けることによって、着色剤として酸化鉄(0.977重量%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(5.006%)、ステアリン酸マグネシウム(0.244%)、ポリエチレンオキシド(64.591%)および塩化ナトリウム(29.182%)を含む浸透性組成物100 mg、および、活性物質ZK246965(11β−フルオロ−17α−メチル−7α−{5−[メチル(8,8,9,9,9−ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)9.46 mgを含む組成物473 mgを、リングにドリルで開けた小さなオリフィスから注入することによって、それぞれの管をそれらの組成物で満たす。
【0065】
(実施例5)
以下の一般的な記載にしたがって、浸透圧制御式の膣送達システムを調製した。
【0066】
シリカを充填したシリコーンエラストマーをシートに形成し、実験室の油圧プレスにて、200℃、圧力100〜200barを用いて架橋した。その後、エラストマーを真空オーブン内で、105℃で1.5時間、約200mbarの減圧を用いてさらに硬化した。シートを厚みが0.5、1.0および2.0 mmになるようにプレス加工した。形成したこれらのシートをパンチを用いて丸い片に切断し、適用可能な場合、その片にパンチで丸い穴をあけた。
【0067】
有益な作用物質を含有する錠剤を、エラストマーが錠剤の側面に枠を形成するような様式で、シリコーンエラストマーシートのあらかじめ作成した穴に押し込んだ。錠剤がシリコーンエラストマーに完全に埋め込まれるために、上シートと下シートとを、シリコーン接着剤を用いてエラストマー枠に糊付けした。埋め込まれた錠剤を図に示す。
【表1】
【0068】
(実施例6)
浸透圧制御式の(つまり、浸透圧が制御される)膣送達システム番号3および番号8を実施例5にしたがって調製し、放出試験を行った。有益な作用物質の初期濃度は、20 mg(番号3)または60 mg(番号8)であり、
図12からわかるように、放出速度に顕著な影響を与えない。しかし、有益な作用物質の初期濃度がより高いと、長期間にわたる放出プロフィールがもたらされるだろう。
【0069】
(実施例7)
浸透圧制御式の膣送達システム番号6および番号8を実施例5にしたがって調製し、放出試験を行った。合計濃度のパーセンテージに変換した放出量を
図13に示す。この実験は、下膜の厚みにかかわらず、同様の放出プロフィールが得られることを示す。したがって、放出速度を犠牲にすることなくより剛性の高い製品が必要な場合には、より厚いエラストマー膜を使用することができる。
【0070】
(実施例8)
浸透圧制御式の膣送達システム番号6および番号9を実施例5にしたがって調製し、放出試験を行った。合計濃度のパーセンテージに変換した放出量を
図14に示す。埋め込まれた錠剤番号9は、その他の点で埋め込まれた錠剤6と同じであるが、迅速に水を取り込めるように下膜に4 mmの穴を有している。この実験は、埋め込まれた錠剤への水の取り込みを制御することによって、放出プロフィールを望ましいレベルに調整することができることを示す。
【0071】
(実施例9)
浸透圧制御式の膣送達システム番号3および番号10を実施例5にしたがって調製し、放出試験を行った。合計濃度のパーセンテージに変換した放出量を
図15に示す。この実験は、コーティング無しの錠剤を用いることによって、放出プロフィールを大きく高めることができることを示す。