特許第6297496号(P6297496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297496
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】車載用電池システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20180312BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180312BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20180312BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20180312BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20180312BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20180312BHJP
   H01M 10/66 20140101ALI20180312BHJP
【FI】
   B60R16/04 H
   B60R16/04 Y
   H01M2/10 S
   H01M10/613
   H01M10/6566
   H01M10/6553
   H01M2/10 J
   H01M10/625
   H01M10/66
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-544249(P2014-544249)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2013006234
(87)【国際公開番号】WO2014068896
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-238298(P2012-238298)
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】大隅 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 薫
(72)【発明者】
【氏名】常定 昭伸
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英樹
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−152087(JP,A)
【文献】 特開2010−208461(JP,A)
【文献】 特開2007−259530(JP,A)
【文献】 特開2004−112900(JP,A)
【文献】 特開2006−281805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6553
H01M 10/6566
H01M 10/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、
前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、
を備え、
前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続され、
前記第2蓄電モジュールは、車両のエンジンルーム内において、ウィンドウ洗浄液タンクに熱的に接続されることを特徴とする車載用電池システム。
【請求項2】
鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、
前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、
前記第1蓄電モジュール及び前記第2蓄電モジュールが載置されるトレイと、
を備え、
前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続され、
前記第1蓄電モジュール及び前記第2蓄電モジュールは、車両のエンジンルーム内に設けられ、
車両外部からエンジンルーム内に流入する外気を前記第2蓄電モジュールまで導く板状のガイド部材であって、前記トレイから下方に向かって延在している、該ガイド部材をさらに備えることを特徴とする車載用電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関を駆動源とする車両には、スタータモータ等の各種電気負荷へ電力供給する鉛蓄電池が搭載されている。鉛蓄電池は、ニッケル蓄電池やリチウムイオン蓄電池等の高出力、高エネルギ密度の高性能蓄電池に比べて安価であるものの、頻繁な充放電に対する耐久性が低い。特にアイドルストップ機能を備える車両では、鉛蓄電池が頻繁に放電されることとなり早期劣化が懸念される。また、車両の回生エネルギによりオルタネータを発電させて充電する場合、鉛蓄電池が頻繁に充電されることになるため、早期劣化がより一層懸念される。これらの懸念に対し、鉛蓄電池を高性能蓄電池に置き換えるだけでは、大幅なコストアップを招く。
【0003】
これに対し、オルタネータ等の発電機と、発電機で発生した電力を充電可能な鉛蓄電池と、鉛蓄電池に対して電気的に並列接続され、発電機で発生した電力を充電可能であり、かつ、鉛蓄電池に比べて出力密度又はエネルギ密度の高い第2蓄電池と、を備えた車載電池装置が知られている(特許文献1参照)。このように、鉛蓄電池に加えて高性能蓄電池である第2蓄電池を備えることで、鉛蓄電池の劣化抑制とコストダウンとの両立を図ることができる。すなわち、例えばアイドルストップ中における電気負荷への電力供給や回生充電は、高性能蓄電池が優先的に実施することで、鉛蓄電池の劣化軽減を図ることができる。一方、車両を駐車する場合等、長時間に亘って要求される電力供給は、安価な鉛蓄電池が優先的に実施することで、高性能蓄電池を小容量化してコストアップ抑制を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−176958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、鉛蓄電池と補助電源としての蓄電部とを備える従来の車載用電池システムには、蓄電部の充放電効率の向上を図る上で改善の余地があることを見出した。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載用電池システムにおける蓄電部の充放電効率の向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、車載用電池システムである。当該車載用電池システムは、鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、を備える。前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続される。前記第1蓄電モジュール及び前記第2蓄電モジュールは、車両のエンジンルーム内に設けられる。前記第2蓄電モジュールは、前記第1蓄電モジュールよりもエンジンから遠い側に配置される。
【0008】
本発明の他の態様もまた、車載用電池システムである。当該車載用電池システムは、鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、を備える。前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続される。前記第2蓄電モジュールは、車両のエンジンルーム内において、ウィンドウ洗浄液タンクに熱的に接続される。
【0009】
本発明の他の態様もまた、車載用電池システムである。当該車載用電池システムは、鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、を備える。前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続される。前記第1蓄電モジュール及び前記第2蓄電モジュールは、車両のエンジンルーム内に設けられる。また、当該車載用電池システムは、車両外部からエンジンルーム内に流入する外気を前記第2蓄電モジュールまで導くガイド部材をさらに備える。
【0010】
本発明の他の態様もまた、車載用電池システムである。当該車載用電池システムは、鉛蓄電池を含む第1蓄電モジュールと、前記鉛蓄電池よりエネルギ密度が高い蓄電部を含む第2蓄電モジュールと、を備える。前記鉛蓄電池及び前記蓄電部は、回生エネルギを電力に変換する発電部に対して電気的に並列接続される。前記第2蓄電モジュールは、車両構造体に熱的に接続される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車載用電池システムにおける蓄電部の充放電効率の向上を図る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る車載用電池システムを模式的に示す斜視図である。
図2】第2蓄電モジュールを模式的に示す斜視図である。
図3】実施形態1に係る車載用電池システムを含む電気ブロック図である。
図4】実施形態1に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。
図5】実施形態2に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。
図6】実施形態3に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。
図7】実施形態4に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(実施形態1)
まず、本実施形態を具体的に説明する前に、基礎となった知見を説明する。本発明者は、鉛蓄電池と、高性能蓄電池を有する蓄電部とを備える車載用電池システムにおいて、蓄電部を、鉛蓄電池とともに車両のエンジンルーム内に設置することに思い至った。蓄電部をエンジンルーム内に配置することで、鉛蓄電池と蓄電部を近接して配置し、これにより配線抵抗の影響を少なくすることができ、その結果、蓄電部の充放電効率を向上させることができる。また、例えば蓄電部を車両の居住スペース(車室)に設置した場合に起こる、居住スペースの狭小化や、発電機であるオルタネータあるいは鉛蓄電池との配線接続の複雑化を抑制することもできる。しかしながら、エンジンルームには、高温熱源となるエンジンが配置されている。そのため、エンジンルーム内は比較的高温な環境となっており、蓄電部をエンジンルーム内に配置した場合、蓄電部の温度が上昇し、高温状態での充放電により蓄電部の寿命が著しく低下するおそれがある。本出願人は、このような知見をもとに、本実施形態に係る車載用電池システムを開発するに至った。
【0015】
図1は、実施形態1に係る車載用電池システムを模式的に示す斜視図である。図2は、第2蓄電モジュールを模式的に示す斜視図である。図3は、実施形態1に係る車載用電池システムを含む電気ブロック図である。なお、図2では、一部の配線の図示を省略し、第2蓄電モジュールの内部構造を破線で図示している。
【0016】
実施形態1に係る車載用電池システムは、内燃機関を駆動源とする車両に搭載される電池システムである。当該車両は、停止すると内燃機関が自動的に停止し、ブレーキペダルを離すなどの発進動作を行うと内燃機関が再始動するアイドリングストップ機能を有することが好ましい。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車載用電池システム1は、第1蓄電モジュール10と、第2蓄電モジュール20と、を備える。第1蓄電モジュール10は、鉛蓄電池12(図3参照)、及び鉛蓄電池12を収容する第1筐体14を含む。鉛蓄電池12は、周知の鉛蓄電池のセルがケースに収容された従来公知の鉛蓄電池であり、その構造は特に限定されない。具体的には、鉛蓄電池12を構成する単セルでは、負極活物質として鉛、正極活物質として二酸化鉛が用いられ、電解液として硫酸が用いられる。鉛蓄電池12は、複数の当該単セルを電気的に直列接続することで構成される。また、第1蓄電モジュール10は、第1筐体14の上部において露出する負極端子16a及び正極端子16bを有する。以下では適宜、負極端子16a及び正極端子16bを外部端子16と総称する。
【0018】
第2蓄電モジュール20は、鉛蓄電池12よりエネルギ密度(Wh/kg)が高い蓄電部22、及び蓄電部22を収容する第2筐体24を含む。
【0019】
蓄電部22は、例えばリチウムイオン蓄電池や水素電池等で構成されている。例えば、蓄電部22を構成する蓄電池がリチウムイオン蓄電池である場合、蓄電池は周知のリチウムイオン蓄電池のセル構造であればよく、特に限定されない。例えば、リチウムイオン蓄電池を構成する単セルでは、正極活物質としてコバルト酸リチウムなどのリチウム金属酸化物、負極活物質としてカーボンなどの炭素材料が用いられ、電解液として炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの有機電解液が用いられる。リチウムイオン蓄電池は、複数の当該単セルを電気的に直列接続することで構成される。本実施形態の蓄電部22は、10個の円筒形の蓄電池23で構成されている。なお、蓄電池23の個数や形状、配置は特に限定されない。例えば、蓄電池23の形状は角形であってもよい。なお、本実施形態の蓄電部22を構成する蓄電池としては、リチウムイオン蓄電池のほかにニッケル水素蓄電池を用いることもできる。ニッケル水素蓄電池は、リチウムイオン蓄電池と比較して、高温状態での充放電による劣化耐性が高い。そのため、蓄電部22をニッケル水素蓄電池で構成した場合は、蓄電部22の寿命低下をさらに抑制することができる。
【0020】
各蓄電池23は、配線26により互いに電気的に直列接続されて、第2筐体24内に収容されている。第2筐体24の上部において配線26の一部が露出して、負極端子28aを形成している。また、第2筐体24の上部において配線26の一部が露出して、正極端子28bを形成している。以下では適宜、負極端子28a及び正極端子28bを外部端子28と総称する。第2蓄電モジュール20の外部端子28には、接続部材30の一端側が接続されている。接続部材30の他端側は、第1蓄電モジュール10の外部端子16に接続されている。これにより、第1蓄電モジュール10と第2蓄電モジュール20とが互いに連結されている。なお、接続部材30は絶縁性を備える。したがって、第2蓄電モジュール20の外部端子28と第1蓄電モジュール10の外部端子16とは、互いに絶縁された状態で接続部材30により連結されている。
【0021】
本実施形態では、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20はともに直方体形状であり、互いの主表面が平行となるように配置されて連結されている。第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、互いの主表面が接触するように配置されてもよい。なお、第1蓄電モジュール10と第2蓄電モジュール20の連結方法は、特にこれに限定されない。
【0022】
図3に示すように、車載用電池システム1の鉛蓄電池12及び蓄電部22は、回生エネルギを電力に変換するオルタネータ230(発電部)、スタータモータ240及び車両側電装ユニット250に対して電気的に並列に接続されている。この他、車載用電池システム1は、電圧検出回路122、CPU124及び制御回路126を有する。電圧検出回路122は、蓄電部22の電圧を検出する。CPU124は、電圧検出回路122によって検出された電圧や、車両の運転状況に応じて、制御回路126にスイッチ類(スイッチ90、92)のオンオフを指示する。制御回路126は、CPU241からの指示に従って、スイッチ類のオンオフを実行する。例えば、電圧検出回路122、CPU124及び制御回路126は、第2蓄電モジュール20に組み込まれている。
【0023】
スイッチ90は、蓄電部22と車両側電装ユニット250との間の分岐点A1と、鉛蓄電池12とオルタネータ230との間の分岐点A2との間に設置されており、スイッチ90のオンオフにより、蓄電部22とオルタネータ230との間の通電、遮断が切り替えられる。スイッチ92は、分岐点A1と蓄電部22との間に設けられており、スイッチ92のオンオフにより、蓄電部22とスイッチ90及び車両側電装ユニット250との間の通電、遮断が切り替えられる。
【0024】
オルタネータ230は、クランク軸の回転エネルギを電力に変換する。スタータモータ240は、内燃機関の始動時にクランク軸を回転させるモータである。スタータモータ240は、分岐点A2とオルタネータ230との間の分岐点A3に接続されている。分岐点A3とスタータモータ240との間にスイッチ94が設けられている。スイッチ94のオンオフにより、スタータモータ240への通電、遮断が切り替えられる。スイッチ94のオンオフは図示しないECUによって制御される。
【0025】
車両側電装ユニット250は、ナビゲーションシステムやオーディオ機器などのように、供給電力の電圧が安定していることが要求される電気負荷やヘッドライト、ワイパ、空調装置の送風ファンなどの一般的な電気負荷である。
【0026】
(回生充電時)
車両の減速時に生じる回生エネルギにより、鉛蓄電池12及び蓄電部22を充電する場合には、スイッチ90がオンにされる。鉛蓄電池12は回生エネルギが生じている間、逐次充電が行われ、満充電に近い状態に保たれる。一方、電圧検出回路122によって検出された蓄電部22の電圧が所定の下限電圧より低くなっている場合にスイッチ92がオンにされ、スイッチ92がオンにされている間に蓄電部22が充電される。なお、回生エネルギによる充電動作時には、スイッチ94はオフにされ、スタータモータ240は放充電回路から切り離される。
【0027】
(通常放電時)
上述した回生エネルギによる充電動作時以外のエンジン運転時には、スイッチ90、スイッチ94がともにオフにされる。一方、電圧検出回路122によって検出された蓄電部22の電圧が所定の下限電圧以上である場合には、スイッチ92がオンにされ、蓄電部22の電力が車両側電装ユニット150に供給される。
【0028】
(アイドルストップ時およびスタータモータ作動時)
エンジンが自動停止されたアイドルストップ時及びエンジンが始動する際のスタータモータ作動時では、スイッチ94がオンにされ、スイッチ90がオフにされる。また、スイッチ92はオンにされる。これにより、蓄電部22及び車両側電装ユニット250はオルタネータ230及びスタータモータ240から切り離され、蓄電部22からスタータモータ240への放電が生じることが防止される。この状態で、電圧検出回路122によって検出された蓄電部22の電圧が所定の下限電圧以上である場合には、スイッチ92がオンにされ、蓄電部22の電力が車両側電装ユニット250に供給される。
【0029】
続いて、本実施形態に係る車載用電池システム1の設置態様について説明する。図4は、実施形態1に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。図4では、車両100のエンジンルーム102内部を平面視した状態を示している。車両100は、車室101の車両前方側にエンジンルーム102が設けられている。
【0030】
車両100のエンジンルーム102内には、車載用電池システム1、エンジン104(内燃機関)、ラジエータ106、ファン108、ウィンドウ洗浄液タンク110等が収容されている。エンジン104、ラジエータ106、ファン108、及びウィンドウ洗浄液タンク110は、従来公知のものである。
【0031】
第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内に並べて設けられている。そして、第2蓄電モジュール20は、第1蓄電モジュール10よりもエンジン104から遠い側に配置されている。このように、第2蓄電モジュール20を、熱源となるエンジン104から離間させることで、エンジン104から第2蓄電モジュール20への伝熱を抑制することができる。その結果、第2蓄電モジュール20が有する蓄電部22の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態では、エンジン104と第2蓄電モジュール20とは、第1蓄電モジュール10を挟んで配置されている。すなわち、エンジン104と第2蓄電モジュール20との間に第1蓄電モジュール10が配置されている。これにより、熱容量が比較的大きい第1蓄電モジュール10によって、エンジン104から第2蓄電モジュール20への伝熱の少なくとも一部を遮断することができるため、蓄電部22の温度上昇をより確実に抑制することができる。また、蓄電部22の充放電によって発生する熱を、第1蓄電モジュール10に伝達させることができるため、蓄電部22の温度上昇をより確実に抑制することができる。
【0033】
また、第2蓄電モジュール20は、第1蓄電モジュール10よりも車室101に近い側に配置されている。本実施形態の車両100は、車室101の前方にエンジンルーム102が設けられているため、第2蓄電モジュール20は第1蓄電モジュール10よりも車両後方側に配置されている。このように、第2蓄電モジュール20を第1蓄電モジュール10よりも車両内側、第1蓄電モジュール10を第2蓄電モジュール20よりも車両外側に配置することで、車両100が他車両や障害物に衝突した場合に、第2蓄電モジュール20が破損してしまう可能性をより一層低減させることができる。その結果、車載用電池システム1の安全性をより高めることができ、ひいては車両100の安全性をより高めることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る車載用電池システム1において、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内に設けられている。そして、第2蓄電モジュール20は、第1蓄電モジュール10よりもエンジン104から遠い側に配置されている。これにより、熱源となるエンジン104から第2蓄電モジュール20の蓄電部22を離間させることができる。そのため、高温のエンジンルーム内において蓄電部22の温度が上昇することを抑制でき、高温状態での充放電による蓄電部22の寿命低下を抑制することができる。そのため、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20を車両100のエンジンルーム102内に配置して、蓄電部22の充放電効率を向上させることができ、これにより車載用電池システム1の充放電性能の安定化を図ることができる。
【0035】
(実施形態2)
実施形態2に係る車載用電池システムは、車載用電池システムの設置態様が異なる点を除き、実施形態1に係る車載用電池システムの構成と共通する。以下、実施形態2に係る車載用電池システムについて実施形態1と異なる構成を中心に説明する。図5は、実施形態2に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。図5では、車両100のエンジンルーム102内部を平面視した状態を示している。
【0036】
本実施形態に係る車載用電池システム1において、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内に並べて設けられている。そして、第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内において、ウィンドウ洗浄液タンク110の近傍に配置され、ウィンドウ洗浄液タンク110に熱的に接続されている。ウィンドウ洗浄液タンク110は、ウィンドウ洗浄液を収容しているため熱容量が比較的大きい。そのため、第2蓄電モジュール20の蓄電部22で発生した熱を熱容量の比較的大きいウィンドウ洗浄液タンク110に伝達して、蓄電部22を冷却することができる。
【0037】
このように、ウィンドウ洗浄液タンク110を蓄電部22の冷却に利用することで、蓄電部22の温度上昇をより抑制することができる。その結果、高温状態での充放電による蓄電部22の寿命低下と、蓄電部22の充放電性能の低下を抑制することができ、ひいては車載用電池システム1の充放電性能の安定化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態において第2蓄電モジュール20は、エンジン104までの距離R1よりもウィンドウ洗浄液タンク110までの距離R2が近い位置に設けられている。すなわち、蓄電部22は、熱源となるエンジン104から離間し、熱容量の大きいウィンドウ洗浄液タンク110に近接している。これにより、蓄電部22の冷却効率を向上させることができる。なお、第2蓄電モジュール20は、ウィンドウ洗浄液タンク110に接触することが好ましい。第2蓄電モジュール20をウィンドウ洗浄液タンク110に接触させることで、蓄電部22で発生した熱をウィンドウ洗浄液タンク110により確実に伝達させることができる。
【0039】
(実施形態3)
実施形態3に係る車載用電池システムは、車載用電池システムの設置態様が異なる点を除き、実施形態1に係る車載用電池システムの構成と共通する。以下、実施形態3に係る車載用電池システムについて実施形態1と異なる構成を中心に説明する。図6は、実施形態3に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。図6では、車両100のエンジンルーム102内部を側面視した状態を示している。
【0040】
本実施形態に係る車載用電池システム1において、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内に並べて設けられている。第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、載置用トレイ112に載置された状態で、固定部材114によって載置用トレイ112に固定されている。
【0041】
また、車載用電池システム1は、車両外部からエンジンルーム102内に流入する外気を第2蓄電モジュール20まで導くガイド部材40を備える。ガイド部材40は、例えば板金等で形成された整流板である。車両100の走行中などに、ラジエータグリル等に設けられた開口部103からエンジンルーム102内に流入する空気Wは、ガイド部材40に沿ってエンジンルーム102内を進み、第2蓄電モジュール20に吹き付けられる。なお、ガイド部材40は、シャシ下方を流れる空気を第2蓄電モジュール20に導いてもよい。
【0042】
このように、ガイド部材40によって外気を第2蓄電モジュール20に吹き付けることで、蓄電部22の冷却効率をより一層高めることができる。これにより、蓄電部22の温度上昇を抑制することができる。そしてその結果、蓄電部22の充放電効率の低下を抑制することができ、ひいては車載用電池システム1の充放電性能の安定化を図ることができる。なお、ガイド部材40は、第2蓄電モジュール20に加えて第1蓄電モジュール10にも外気を導いてもよい。これにより、第1蓄電モジュール10の冷却効率も高めることができるため、蓄電部22で発生した熱を第1蓄電モジュール10に伝達することで蓄電部22を冷却する構成においては、蓄電部22の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0043】
(実施形態4)
実施形態4に係る車載用電池システムは、車載用電池システムの設置態様が異なる点を除き、実施形態1に係る車載用電池システムの構成と共通する。以下、実施形態4に係る車載用電池システムについて実施形態1と異なる構成を中心に説明する。図7は、実施形態4に係る車載用電池システムの設置態様を示す模式図である。図7では、車両100のエンジンルーム102内部を平面視した状態を示している。
【0044】
本実施形態に係る車載用電池システム1において、第1蓄電モジュール10及び第2蓄電モジュール20は、車両100のエンジンルーム102内に並べて設けられている。そして、第2蓄電モジュール20は、ボディとシャシとを含む車両構造体116に熱的に接続されている。本実施形態の第2蓄電モジュール20は、車両構造体116に直に接触するように配置されており、これにより車両構造体116に熱的に接続されている。
【0045】
第2蓄電モジュール20を車両構造体116に熱的に接続させることで、蓄電部22で発生した熱を車両構造体116に伝達させることができる。これにより、蓄電部22の温度上昇を抑制することができる。その結果、高温状態での充放電による蓄電部22の寿命低下と、蓄電部22の充放電効率の低下を抑制することができ、ひいては車載用電池システム1の充放電性能の安定化を図ることができる。
【0046】
また、車載用電池システム1は、第2蓄電モジュール20の外部端子28と車両構造体116とを電気的に接続する端子接続部材32を備える。端子接続部材32は、例えばバスバーであり、外部端子28を車両構造体116のシャシに接続する。端子接続部材32が接続される外部端子28は、例えば負極端子28aである。したがって、本実施形態の第2蓄電モジュール20は、端子接続部材32を介しても車両構造体116に熱的に接続されている。
【0047】
第2蓄電モジュール20の外部端子28を車両構造体116に接続させた場合には、外部端子28をグランドに接続することができるとともに、蓄電部22で発生した熱を端子接続部材32を介して車両構造体116に伝達させることができる。これにより、蓄電部22の温度上昇を抑制でき、高温状態での充放電による蓄電部22の寿命低下抑制、蓄電部22の充放電効率の低下抑制、及び車載用電池システム1の充放電性能の安定化を図ることができる。
【0048】
なお、第2蓄電モジュール20が車両構造体116に直に接触することによる第2蓄電モジュール20及び車両構造体116の熱的な接続と、端子接続部材32を介した第2蓄電モジュール20及び車両構造体116の熱的な接続とは、いずれか一方のみであってもよい。
【0049】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうるものである。また、上述した各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の範囲に含まれうる。
【0050】
上述の各実施形態では、蓄電部22は蓄電池23を有するが、特にこれに限定されない。例えば、蓄電部22は、電気二重層コンデンサ等のコンデンサ(キャパシタ)であってもよい。
【0051】
また、車載用電池システム1の他の配置態様として、第2蓄電モジュール20を、車両100のエンジンルーム102内における操舵ハンドルの近傍に配置してもよい。エンジンルーム102内の操舵ハンドル近傍の領域は、比較的空間が多く空気が流れやすい。そのため、第2蓄電モジュール20を操舵ハンドルの近傍に配置することで、蓄電部22をより効率的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車載用電池システム、 10 第1蓄電モジュール、 12 鉛蓄電池、 16 外部端子、 20 第2蓄電モジュール、 22 蓄電部、 28 外部端子、 32 端子接続部材、 40 ガイド部材、 100 車両、 101 車室、 102 エンジンルーム、 104 エンジン、 110 ウィンドウ洗浄液タンク、 116 車両構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7