(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297527
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/22 20060101AFI20180312BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20180312BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20180312BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20180312BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
A61K8/22
A61K8/44
A61K8/19
A61Q5/04
A61Q5/10
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-164298(P2015-164298)
(22)【出願日】2015年8月22日
(65)【公開番号】特開2017-39682(P2017-39682A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年3月14日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503462062
【氏名又は名称】若林 勇人
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】若林 勇人
【審査官】
松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−316231(JP,A)
【文献】
特開2004−315410(JP,A)
【文献】
特開2007−008892(JP,A)
【文献】
特許第5739053(JP,B2)
【文献】
特開2001−288054(JP,A)
【文献】
特開平02−076807(JP,A)
【文献】
特開2012−171952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イ)ノンジアミン系のカラー剤と、
ロ)pH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤、および
ハ)35%過酸化水素水からなる酸化剤をそれぞれ1:0.6:1から1:1:1で混合した染毛剤を毛髪に適用し、
ニ)次いで50℃〜80℃で、20分〜50分間加熱した後、
ホ)更に、酸化剤を毛髪に適用して、5分〜10分間乾燥する、
ことにより、染毛のみならず縮毛矯正、ストレートパーマ、カールを含むパーマネント処理を可能としたことを特徴とする染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法。
【請求項2】
前記ノンジアミン系のカラー剤が、ヘアカラー染料(HC染料)、白髪染め用染料から選ばれてなることを特徴とする請求項1記載の染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法。
【請求項3】
前記ロ)のpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤が、pH10.0程度の水酸化カリウムもしくは塩基性アミノ酸から選ばれてなることを特徴とする請求項1または2記載の染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法。
【請求項4】
前記塩基性アミノ酸が、アルギニンもしくリジンから選ばれてなることを特徴とする請求項3記載の染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法。
【請求項5】
前記ロ)のpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤が、前記染毛剤100重量%に対して10〜60重量%添加されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は理美容院で使用する環境負荷を低減した染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来毛髪の染毛はカラー剤の有効成分としてパラフェニレンジアミン等の酸化染料を含む染毛剤第一剤と、過酸化水素等の酸化剤を含む染毛剤第二剤とを1:1で混合し、カラー剤有効成分を髪に浸透させたのち、酸化染料を髪の内部で酸化重合させることにより髪を染色していた。
【0003】
そして前記酸化染料を含む染毛剤第一剤は染料の酸化を防ぐため、酸素透過性がないアルミニウムチューブに充填されている。その内容量は一人当たりの毛髪の毛染めに必要な60gから80gほどでチューブの内容積は65ccから85ccである。
またチューブに使用されるアルミニウムの一本あたりの重量は7gから9gである。
【0004】
最近では特開2001−226238号公報(特許文献1参照)あるいは特開2003−55173号公報(特許文献2参照)で開示されているように、第一剤と第二剤の混合割合を1:3〜1:5や1:5〜1:20にする試みがなされ明るく染まる染毛剤第一剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−226238号公報
【特許文献2】特開2003−55173号公報
【特許文献3】特開2010−180196号公報
【特許文献4】特願2014−247418号(特許第5739053号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記染毛剤第一剤および染毛剤第二剤を混合する従来の染毛方法においては、以下のような手順を採用していた。
1)染毛剤第一剤(カラー剤)および染毛剤第二剤(酸化剤)を混合して毛髪に塗布する。
2)塗布した染毛剤を水洗する。
3)染毛剤第二剤(酸化剤)で処理する。
また特開2010−180196号公報(特許文献3参照)においては以下のような手順が提案されている。
1)染毛剤第一剤(カラー剤)および染毛剤第二剤(還元剤)を混合して毛髪に塗布する。
2)塗布した染毛剤を水洗する。
3)酸化剤で処理する。
しかしながら前記いずれの方法においても、カラー処理には約30分間を要し、また中間水洗のためには約20分間を要しており、術者の負担のみならず被施用者も長時間拘束されるという多大な負担を課すことが必要であり、その軽減が望まれていた。
また、前記の染毛方法ではダメージの時間が長く、毛髪が痛むという欠点があり、しかも染毛剤第一剤(カラー剤)および染毛剤第二剤(還元剤)を混合して毛髪に塗布する方法では、染毛剤として安定した効果が得られないという問題があった。
【0007】
そこで本発明者は、特願2014−247418号(特許第5739053号公報、特許文献4参照)において、イ)カラー剤と、ロ)28%アンモニア水を9〜20%および重炭酸アンモニウムを2〜5%含有する還元剤、およびハ)35%過酸化水素水からなる酸化剤をそれぞれ1:0.54:1〜1:1:1で混合した染毛剤を毛髪に適用し、次いで60℃で15〜20分間加熱した後、過酸化水素水を含有する酸化剤を毛髪に適用することを特徴とする染毛方法を提案した。
【0008】
しかしながら、前記発明はパラフェニレンジアミン等の酸化染料を使用しているため、被施用者にアレルギーの反応が出やすいため、その改善が求められていた。
この発明は、前記パラフェニレンジアミン等の酸化染料を不要として被施用者の負担のみならず、術者の負担をも大幅に軽減することができ、かつ安定した染毛効果が得られる
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわちこの発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に使用する染毛剤は、イ)ノンジアミン系のカラー剤と、ロ)pH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤、およびハ)35%過酸化水素水からなる酸化剤を混合して使用することを特徴とするものである。
【0010】
この発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に使用する染毛剤において、前記ノンジアミン系のカラー剤が、酸化染料もしくはヘアカラー染料(HC染料)、白髪染め用染料から選ばれてなることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に使用する染毛剤において、前記ロ)のpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤が、pH10.0
〜pH11.0の水酸化カリウムもしくは塩基性アミノ酸から選ばれてなることをも特徴とするものである。
【0012】
この発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に使用する染毛剤において、前記塩基性アミノ酸が、アルギニンもしくリジンから選ばれてなることをも特徴とするものである。
【0013】
この発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法に使用する染毛剤において、前記ロ)のpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤が、前記混合液からなる染毛剤100重量%に対して10〜60重量%添加されてなることをも特徴とするものである。
【0014】
この発明の
染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法において、イ)ノンジアミン系のカラー剤と、ロ)pH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤、およびハ)35%過酸化水素水からなる酸化剤を混合した染毛剤を毛髪に適用し、
次いで
50℃〜80℃で、20分〜50分間加熱することにより、染毛のみならず縮毛矯正、ストレートパーマ、カールを含むパーマネント処理を可能としたことを特徴するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明者は従来例の前記欠点を解消し、ノンジアミン系のカラー剤を使用することによって被施用者のアレルギーによるかぶれやかゆみ等が生じることを防ぐだけでなく、パーマ剤との併用によって着色とパーマをかけることが可能となって、白髪染めとカールをかけることとを同時に達成することができる染毛剤を用いた染毛兼パーマネント処理方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明における染毛方法のフローチャートである。
【
図2】従来方法における染毛方法のフローチャートである。
【
図3】別の従来方法における染毛方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明における染毛方法のフローチャートである。
本発明の染毛方法においては、まず以下の3剤(a〜c)を混合し、毛髪に塗布する。
a)還元剤(トリートメント含有可)
還元剤としてはpH10以上の強アルカリ水溶液が好適に使用できる。ちなみに、市販されているアンモニアは28%アンモニア水として広く使用されているため以下の説明にはその濃度で説明する。
本発明に使用するpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤は28%アンモニア水 9〜20%(アンモニアとして2.5%〜5.6%)並びに重炭酸アンモニウム2〜5%であり、アンモニア単独使用と比べるとアンモニア量を低減できる為pHを下げることができ頭皮への刺激と刺激臭の低減ができる。
28%アンモニア水の配合量が9%以下では染まりが悪く、20%以上では頭皮への刺激が強くまた刺激臭が強く好ましくない。重炭酸アンモニウムが2%以下では染まりが悪く、5%以上では容器への腐食性が強く好ましくない。
その他の還元剤としては、髪に対してロットに巻くことによりカールがかけられるパーマネント機能を備えた、例えばチオグリコール酸塩、システイン、システアミン、ブチロラクトンチオール、亜硫酸塩(サルファイト)、チオグリセリンが好適に使用することができる。
このpH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤は染毛剤100%に対して10〜60%の割合で配合することにより、毛髪のタンパク質を切断して開き、カラー剤を毛髪に浸透させる作用がある。
【0018】
b)カラー剤(アルカリ主体)
カラー剤には以下のものから数種類の有効成分が処方配合される。
本発明においては、酸化染料に代えて、ノンジアミン系のHC染料や塩基性染料が使用される。
HC(ヘアカラー)染料は比較的分子量が小さく、酸性染料や塩基性染料と比べると毛髪内部まで浸透することができる。しかし、HC染料は酸性染料などのように毛髪とイオン結合するわけではなく、分子間の力のみで吸着しているために、酸性染料、塩基性染料に比べると色落ちしやすい傾向にある。
塩基性染料は、アミノ基や置換アミノ基 (−NHR,−NRR' ) を含み,酸性基 (−SO3H 基など) を含まない水溶性染料である。水溶液中で色素部がカチオンとなるので,カチオン染料とも呼ばれる。ジフェニルメタン系染料,トリフェニルメタン系染料,フェナジン系染料,特に−NH2 基を有するモノアゾ染料に属するものが多い。
【0019】
処方構成は油相としてポリオキシエチレンアルキルエーテルに代表される乳化剤、セタノールに代表される高級アルコール等固形油性成分、流動パラフィンに代表される液体油性成分等が適宜配合されるが、このほかカチオン界面活性剤、油脂、ワックスシリコン誘導体等、通常乳化に使用する原料で構成される。
【0020】
c)酸化剤:H2O2(トリートメント含有可)
酸化剤は染料を酸化重合するために過酸化水素水を配合し、カラー剤と容易に混合できるようカラー剤と油分の組成を共通にするとよい。
過酸化水素水の配合量は市販されている35%過酸化水素水が好適に使用できる。この酸化剤は元の毛髪の色素を破壊することにより、脱色性を良好にする作用がある。
還元剤とカラー剤、酸化剤等の混合比率は1:1:1〜2:1:1が望ましい。1:1:1以下では毛髪への刺激が強すぎ、2:1.1:1以上ではカラー剤が少なすぎて調色時の作業性が悪い。
【0021】
本発明の染毛方法では以下のような処理を行う。
1)ノンジアミン系のカラー剤と、pH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤、および過酸化水素水を含有する酸化剤からなる本発明の染毛剤を、それぞれ1:0.6:1から1:1:1で混合した染毛剤を毛髪に適用する。
前記pH10以上の強アルカリ水溶液を主とする還元剤は、毛髪のタンパク質を切断して開き、カラー剤を毛髪に浸透させ、毛髪からカラー剤が抜けにくく、しかも不純物が排出しやすくなるのである。
副次的な効果としては、添加したトリートメント(補修成分)の浸透力が大きくなる。
酸化剤を用いることにより、黄色や橙色等のアジア人特有の芯に残る色素を壊すことができ、欧米人のように透き通らせて、いわゆる半透明カラーが可能になる。
また、活性酸素を抑制(コントロール)する作用をも奏することができるものである。
なお、前記カラー剤については、明色系や暗色系のカラー剤を一度に配合することができる。
2)次いで加熱処理を施す。約80℃のときは20分〜約50℃のときは50分間の条件下で加熱する。
この加熱は、前記配合の染毛剤が毛髪により迅速に作用するようにすることを主眼とするものである。すなわち、この加熱によって「還元剤により毛髪のタンパク質を切断して開く」という作用が促進され、カラー剤を毛髪に迅速に浸透させることができる。
3)次いで、過酸化水素水を2.1%含有する酸化剤を毛髪に適用する。
これを5分〜10分間適用することにより、毛髪のカラー剤による発色が完了する。
4)最終的に水洗する。
【0022】
参考までに、
図2および
図3に従来例のフローチャートを示す。
<第1の従来例のフローチャートの説明>
図2に第1の従来例を示す。
1)染毛剤第一剤(カラー剤)および染毛剤第二剤(酸化剤)を混合して毛髪に塗布し、約30分間放置する。
2)塗布した染毛剤を中間水洗する。所要時間は約20分である。
3)次いで染毛剤第二剤(酸化剤)を毛髪に適用する。
これを5分〜10分間適用することにより、毛髪のカラー剤による発色が完了する。
4)最終的に水洗する。
【0023】
<第2の従来例(特許第5739053号公報)のフローチャートの説明>
図3に第2の従来例を示す。
1)イ)カラー剤と、ロ)28%アンモニア水を9〜20%および重炭酸アンモニウムを2〜5%含有する還元剤、およびハ)35%過酸化水素水からなる酸化剤をそれぞれ1:0.54:1〜1:1:1で混合した染毛剤を毛髪に塗布し、約30分間放置する。
2)次いで60℃で15〜20分間加熱する。
3)過酸化水素水を含有する酸化剤を毛髪に適用する。
これを5分〜10分間適用することにより、毛髪のカラー剤による発色が完了する。
4)最終的に水洗する。
【0024】
<ノンジアミンカラーを使用した効果>
以上のように、本発明の染色方法においては、ジアミン系カラー剤の使用を不要としたことによりカラー剤の施術を受ける被施用者の負担となっていたアレルギー反応がなくなるという顕著な作用効果を奏するものである。
例えば、白髪染めを行うカラー処理においては、従来例では30分+20分(水洗)を要していたところ、本発明の染色方法の適用により、パーマを同時に掛けたり、くせ毛を直すことができるようになり、美容院における全体の時間が短縮されて被用者の負担が大幅に軽減できた。
【0025】
[実施例]
実施例1,2、比較例1,2の処方、調整法ならびに染毛剤の混合比は次の表1の通りである。
【表1】
カラー剤と還元剤および酸化剤を所定の混合比で合計100gになるようヘアーカラー用の混合皿にとり均一になるまで攪拌混合し、刷毛で頭髪に塗布したのち、約50℃で50分間、例えば毛髪をロットに巻き付けて加熱する。
その後酸化剤を毛髪に適用して、5分〜10分間乾燥すると発色が完了する。
【0026】
前記実施例1,2および比較例1,2の効果について下記項目を調べたところ、以下のような結果が得られた。
【表2】
染色における本発明の効果とは、従来例におけると同等の鮮明さを備えていて、十分な色持ちが得られるというものである。
また、パーマを同時に掛けることができるということの効果とは、縮毛矯正、ストレートパーマ、カールを染色と同時に掛けることをいい、もちろん染色と同時にくせ毛を直すこともできる。