【文献】
Hsu et al,"Characterization of microsecond tuning speed in miniature fiber Fabry-Perot tunable filters",Optical Fiber Communications Conference 1995 OSA Technical Digest Series (Optical Society of America, 1995),米国,1995年,Vol.8,p.18-19,OFC '95 Technical Digest, TuE4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの量子井戸が、InGaAs、GaAs、AlGaAs、InGaP、AlInGaAs、およびInGaAsPから成る化合物群から選択される少なくとも1つである、
請求項10に記載のチューナブルレーザ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の原理による例示の実施形態の説明は、記載される説明全体について考察された部分である添付図面と併せて読まれることを意図する。本明細書に開示する発明の実施形態の記載においては、方向または配向の言及は単に便宜的なものであり、本発明の範囲を限定することを全く意図していない。「下」、「上」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「上へ」、「下へ」、「上側」、「下側」ならびにそれらの派生語(たとえば、「水平に」、「下方へ」、「上方へ」など)の相対的用語は、説明される、あるいは説明中に図面に示される配向を指すものと解釈すべきである。これらの相対的用語は単に説明のためであり、特に指摘されないかぎり装置が特定の配向で構成または動作されることを要求するものではない。「装着」、「固着」、「接続」、「結合」、「相互接続」やそれらに類似する用語は、特に明示されないかぎり、構造物が、介在構造物ならびに可動または固定連結具または関係を通じて直接的または間接的に相互に固定または固着されることを指す。さらに、本発明の特徴と利点を例示の実施形態を参照して説明する。したがって、本発明は、特に、単独で、または組み合わせて存在し得る特徴のいくつかの可能な非限定的組み合わせを示す例示の実施形態に限定すべきではない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0043】
本開示は、現在企図されるような発明を実行する最適な態様について記載している。本明細書は限定的に理解されることを意図せず、添付図面を参照して単に例示のための発明例を示し、当業者に本発明の利点と構造を提言するものである。図面全体を通じて、同様の参照符号は同様または類似の部分を指す。
【0044】
図1〜
図3は本発明に係る短共振器チューナブルレーザの好適な実施形態の特性を示す。
図1に示すように、レーザ100は第1のミラー130と第2のミラー140との間に介在するゲイン領域110と同調領域120とを備える。レーザ発振動作をサポートするエネルギーは、レーザの当業者によって周知なとおり光または電気ポンピングの形でゲイン領域に供給することができる。さらに、一方のミラーに隣接する、好ましくは金、金−スズ、インジウムなどの金属、またはインジウム含有半田から成る伝熱性熱拡散層150を、チューナブル短共振器レーザの平均出力パワーを増大させるために採用することができる。GaAs基板上の垂直共振器レーザの場合、たとえば、基板バイアをエッチングし、第2のミラー上で停止し、基板バイアを通じて第2のミラーに熱拡散層を堆積させることができる。
【0045】
図1を参照すると、同調領域の有効光路長の調節によってレーザ波長が同調される。レーザは第1のミラーを通じて放出される波長チューナブル放射を放出する。標準的な放出パワースペクトル200は、
図2に示すように波長の関数として放出されるパワーである。スペクトルは、各波長でのチューナブル放出および強度での波長範囲を表す。波長チューナブル放出は中心波長220を有する波長放出範囲210全体に及ぶ。
図1に示す好適な実施形態では同調領域は調節可能な空隙であり、光路が屈折率の調節によって変更できる液晶または半導体などのその他の実施形態も可能である。
【0046】
図1の短共振器チューナブルレーザの好適な一実施形態は垂直共振器レーザ(VCL)であるが、短共振器端面発光レーザを含むがそれに限定されないその他の実施形態も採用可能である。垂直共振器レーザの当業者にとって周知なとおり、VCLは、複数の光源を必要とする光学システムにとって有効な一体形の一次元および二次元アレイとして製造することができる。最近のウェハ規模の光学製造技術は、レーザエミッタアレイだけでなく、これらのアレイからの光学機器の製造をサポートする光学部品の精密な配置を可能にする。
【0047】
一実施形態で採用される短共振器は、共振器長に反比例する広い自由スペクトル領域(FSR)を実現する。本実施形態は、本発明では
図2に示す中心波長の5%超のFSRを開示する。
図3に示すように、自由スペクトル領域は、
図1の層によって画定される光共振器のレーザ発振方向での透過ピーク間、または縦モード間の距離として定義される。チューナブルレーザの最大連続モード−無ホッピング単一モード同調範囲はFSRによって制限される。よって、中心波長の5%であるFSRを有するレーザは、中心波長の5%である最大同調範囲を有すると予測できる。同調領域の光路長の最大達成可能変化、またはゲイン領域の利用可能なゲイン帯域幅などのその他の考慮事項も、連続単一モード同調範囲をより小さなFSRに制限する場合があるが、FSRは上限を表す。
【0048】
好適な実施形態では、反射防止コーティングがゲイン領域と同調領域との間に配置されて、装置内の反射を防止し、同調範囲を拡張する。この反射防止コーティングは、同調領域が空気であり、ゲイン領域が半導体である好適なケースでは、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などの材料の1/4波長とすることができる。
【0049】
図1は、上側ミラー130が、(Tayebati,P.、Wang,P.、Vakhshoori,D.ら、「単一空間モードの半対称共振器チューナブル微少電気機械VCSEL」、IEEE Photonics Technology Letters、10(12)、1679〜1681(1998))に記載されるように1つの湾曲ミラーと1つの平坦ミラーを含む半対称共振器を形成するように湾曲させることができることも示している。その理由は、短共振器と大型FSRは単一縦動作を促進するが、湾曲ミラーはさらに単一横モード動作も促進し、このことは撮像および分光用途にとって重要だからである。湾曲ミラーの機能は、
図1に示すように共振器内マイクロレンズ160によっても達成することができる。通常、マイクロレンズ160または湾曲ミラー130のいずれかを使用することができるが、両者の組み合わせも使用することができる。マイクロレンズは、(Strzelecka,E.M.、Robinson,G.D.、Coldren,L.A.ら、「反応性イオンエッチングにおけるマスクパターン転写による半導体内の屈折マイクロレンズの製造」、Microelectronic Engineering、35(1−4)、385〜388(1997))に記載され、当業者にとって既知であるように、レジストまたはポリマー材料をリフローした後、その形状を下の材料にパターン転写することによって形成することができる。同様に、湾曲ミラーは、リフローおよびパターン転写技術、上側ミラーの堆積、犠牲層の除去によって犠牲層を構築することで形成することができる。このようなプロセスにおける犠牲層は好ましくはシリコンまたはゲルマニウムから成り、リフローされたレジスト層のパターン転写はCF4/酸素ガス混合物を用いた誘導結合型プラズマエッチングによって達成される。犠牲層に結果として生じる表面の曲率はこれらのガスの比の関数であり、この比を直接最適化することで調節可能である。
【0050】
図1に示すチューナブル短共振器レーザの単一横モード動作を達成するには、湾曲ミラー曲率半径と、2つのミラー間のゲイン領域と同調領域との合計厚とを入念に制御する必要がある。InPベースの素材から成る半導体ゲイン領域を使用する1310nm近傍の空隙同調領域と動作の場合、一般的な寸法はゲイン領域厚が約1ミクロン、空隙厚が約1.6μm、ミラー曲率半径が約1mmである。レーザの製造および設計の当業者であれば、この範囲で数値を調節して、特定の波長レジームにおいて特定の設計に関してより具体的な数値を達成することができる。これらに近いパラメータを使用すると40〜50dBの単一縦横モード圧縮となる。
【0051】
一実施形態に係る短共振器レーザによって達成される単一縦横モード動作は、極めて長い動的コヒーレンス長を有する光源を可能にする。このコヒーレンス長は動的動作下で100mmを超える。コヒーレンス長はレーザ線幅に反比例する。長コヒーレンス長は、狭スペクトル特徴の測定を必要とする分光用途において重要である。掃引光源光コヒーレンス断層撮影(SS−OCT)などの撮像用途では、長コヒーレンス長は長撮像範囲に相当する。
図5は、
図1によるチューナブルレーザの60kHzでの反復掃引によって得られるSS−OCTシステムのコヒーレンス長の検出制限測定値を示し、FSRは中心波長の約8〜9%であり、コヒーレンス長の測定値としてOCT点広がり関数を使用している。50mmでの実質的な振幅低下がないことは、コヒーレンス長が100mmを超えることを示している。この測定方法はSS−OCTの当業者にとっては周知である。
【0052】
用途によっては、コヒーレンス長を低減して、光学システムにおける望んでいない反射からの干渉を除去することが有益である。コヒーレンス長は雑音波形を同調領域または光源変調する振幅または相を追加することによって調節することができる。外部手段はたとえば時間拡散器とすることができる。
【0053】
一実施形態では、同調領域の光路長の印加同調信号に対する周波数応答は、約1kHzを超える6dB帯域幅を有する。通常、この6dB帯域幅はDCから開始されるが、いくつかのゼロ以外の周波数から開始することもできる。1kHz帯域幅は、(Gierl,C.、Gruendl,T.、Debernardi,P.ら、「102nm連続単一モード同調での表面微細加工チューナブル1.55mu m−VCSEL」、Optics Express、19(18)、17336〜17343(2011))に記載される電熱同調などの従来技術で採用されるその他の種類の同調機構と本発明とを区別する。同調領域が空隙である好適なケースでは、空隙は、静電力を通じて空隙を収縮させるMEMSベースアクチュエータによって同調させることができる。MEMSベース同調機構は、(Jayaraman,V.、Cole,G.D.、Robertson,M.ら、「150nm連続同調範囲を備える高掃引速度1310nmのMEMS−VCSEL」、Electronics Letters、48(14)、867〜9(2012))に記載されるように500kHzを超える6dB帯域幅を有することが実証されている。後述するように、MEMS−アクチュエータの帯域幅は1MHzを越えるまで拡張することができる。このような広帯域幅のおかげで、DC〜1MHz超の周波数範囲での反復掃引動作が可能になる。また、様々な走査速度での非反復的波長同調も可能になる。単独のレーザ源内でレーザの基本同調周波数を変動させることができると、機器はそれぞれが好適な同調速度を有する様々な用途にとって適切になる。たとえば、微弱な分光信号の測定は低走査速度を必要とし、強力な分光信号は動的な時間影響を捕捉できるように監視され得る。SSOCTでの多数の用途は、撮像分解能および撮像範囲と撮像速度とのトレードオフを可能にする可変走査周波数からも恩恵を受けることができる。
【0054】
空隙のMEMS同調が本発明の好適な実施形態であるが、別の実施形態は、(米国特許第6263002号明細書)に記載されるように圧電アクチュエータを通じて空隙を同調することができる。この構造は
図11にも示され、上側ミラー1110が圧電アクチュエータに配置され、空隙1120によってゲイン領域1130と下側ミラー1140から分離している。第1のミラー1110は空隙1120の同調領域、ひいてはレーザ発振波長を変更する圧電制御によってゲイン領域1130に対して移動させられる。この構造において、第1のミラーは、ポンプ放射を送出し、レーザ放射を回収することができるファイバに装着される。圧電同調はMEMS同調の帯域幅よりも通常小さな数kHzの帯域幅を提供することもできるが、より大きな空隙変化も生成することができ、二方向性となり得る。3端子装置を通じてMEMS装置で二方向同調を取得することもできる。さらに別の実施形態では、圧電同調とMEMS同調はいずれも低速の大ストローク同調機構と高速の小ストローク同調機構との組み合わせを提供するために使用される。これらの同調機構は、さらに半導体におけるキャリヤ注入同調などのその他の同調機構とも組み合わせることができる。
【0055】
同調領域は様々な波形で駆動して、各種用途のために短共振器レーザから様々な波長軌道対時間を生成することができる。たとえば、同調領域は基本周波数を有する反復波形で駆動して、掃引光源光コヒーレンス断層撮影(SSOCT)などの用途のための波長の周期的変動対時間を生成することができる。周期的波形は正弦波あるいは任意の波形として、線形波長掃引対時間または時間に伴う任意の波長軌道を生成することができる。同調領域の応答は印加波形に対して非線形としてもよい。従来例は、静電駆動メンブレンの移動が印加電圧の自乗として変動するMEMSである。この場合、線形移動を生成するには、MEMSアクチュエータの非線形応答に相当する印加波形を予め歪ませる必要がある。任意の波形をMEMS応答を線形化するように生成することは、MEMS装置駆動の当業者にとっては周知であり、その線形化原理を他の同調機構にも適用することができる。
【0056】
同調領域に適用される波形は通常、代表例として半導体または液晶の物理路長の変化または屈折率の変化のいずれであっても、同調領域および同調機構の性質そのものに応じた印加電圧または電流対時間の変動である。たとえば、超低質量のMEMSベースの同調素子を使用すると、連続掃引と非連続掃引の両方でレーザ波長を掃引するのに必要なパワーが低減される。MEMS同調素子の使用には、導かれる電流が非常に小さな駆動電圧が必要である。
【0057】
反復波長掃引に加えて、同調領域は、外部トリガまたは任意の反復または非反復波形に応答して非反復波形によって駆動することができる。この例は、爆発、化学反応、または生物学的事象などの事象直後の材料の透過、吸収、または反射スペクトルを測定することが有効である過渡分光に見られる。さらに、非反復走査は新たな動作モードも簡易化することによって、対象外の大領域によって分離されるいくつかの狭い領域をレーザを用いて最適に識別することができる。その1例が、大領域が高速で走査される際に大領域によって分離される狭分光特徴の一連の低速走査である。好ましいケースのMEMS同調では、多数の新たな動作モードが、レーザ同調速度の高速な加速および減速を可能にする超低質量の同調素子によって実現され得る。
【0058】
外部トリガに応答する走査に関して、本発明のMEMS実施例の利点を、市販のThorlabsモデルSL1325−P16掃引光源レーザ(短共振器レーザではない)と比較して明らかにする。この従来技術のレーザは10mm
2全体を測定する共振走査光格子を同調素子として使用することで、本発明の低質量MEMS素子に対して低速の応答時間を提供する。本発明に係る一実施形態では、超低質量の同調素子は動作パラメータの柔軟性、たとえばレーザの外部事象に対する応答速度やレーザが外部事象の結果として同調される波長領域を向上させる。レーザの動作を外部事象と同期させることが望ましい場合、この柔軟性が新たな動作モードを提供する。
【0059】
レーザを広域に対応可能な同調プロファイルにわたって同調させることで、多くの用途の需要を満たすようにレーザの性能を調節することができる。たとえば、ある用途では、レーザが光学素子の波長依存性を測定するために使用されている場合、レーザ波長を時間的に線形に走査することが望ましく、光コヒーレンス断層撮影のような別の用途では、周波数で均等に間隔をおいて配置されたサンプルで最適な測定が行われる場合、レーザを光周波数的に線形に走査することが望ましいであろう。
【0060】
分光は、非常に柔軟な同調プロファイルが有用であるもう1つの例を提供する。多くの分光用途では、不均等に間隔をおいて配置された複数の可変線幅線をある範囲の波長全体にわたって測定することが必要である。信号対雑音比全体を最大化するため、情報が多い(たとえば、多数のより細い線)スペクトル領域では低走査速度、情報が存在しないまたは少ないスペクトル領域では高走査速度が必要である。
図4は1330〜1365nm範囲での吸湿スペクトルの1例を示す。
【0061】
上述したような多数の用途で、現在の領域に関するチューナブル短共振器レーザの同調領域は、位置または波長フィードバックのない開ループで駆動することができる。しかしながら、波長安定性がより重要なその他の用途では、フィードバック制御を採用することができる。これは、波長が特定の原子吸収線またはその他の原子基準に固定される静的動作において有効になり得る。もしくは、波長は最初に原子基準に固定してから、次に既知のフリンジスペーシングを有するファブリーペローまたはマッハツェンダー干渉計などの、オフセット距離を測定する別の素子を用いてこの基準からオフセットさせることができる。動的動作では閉ループ制御も有効になり得る。
【0062】
図6は、本発明に係る閉ループ制御の好適な実施形態を示す。図示するように、チューナブル短共振器レーザから放出される光の一部は、プリズム、回折格子、光フィルタ、または光干渉計などの素子を含むことができる波長感知素子610に分割される。プリズムまたは回折格子などの分散素子の場合、検出器アレイなどの位置感知素子が分散素子と組み合わされて、回折角または屈折角を検出し、所望の位置から波長オフセットを推定し、この誤差信号を同調駆動波形620に供給する。用途が、送出される固定波長または一連の固定波長を除く特定の波長を必要としない場合、波長分散素子と位置感知素子を分散素子の較正なしに使用することができる。光フィルタの場合、光検出器によって測定されるようなフィルタの透過または反射を使用して、所望のロック位置から波長オフセットを決定し、誤差信号を同調領域駆動波形に戻す。動的閉ループ動作は、(Roos,P.A.、Reibel,R.R.、Berg,T.ら、「精密度量用途のための超広帯域光学チャープ線形化」、Optics Letters、34(23)、3692〜3694(2009))の
図1に示す従来技術のレーザのように誤差信号を走査することによって実行することができる。閉ループ制御は、変動性を生み出す可能性のある自然共鳴をはるかに下回る速度で同調領域を駆動す際に特に有効である。たとえば、100kHzで駆動される500kHz共鳴のMEMSアクチュエータは変動しやすく、閉ループ制御によってより良好な同調を行うことができる。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係る1310nmで動作する短共振器レーザの好適な実施例のいくつかの細部を示し、
図9および
図10は
図7の実施例のいくつかの追加の性能上の特徴を実証している。
図7は、垂直共振器レーザ(VCL)のサブセットである垂直共振器表面発光レーザ(VCSEL)として構成された半導体レーザを示す。VCLは下方または上方、VCSELは上方に、つまり基板と反対の方向に放出する。
図7のVCSELは、低および高屈折率材料の交互する1/4波長層から成る2つの分布型ブラッグ反射器(DBR)ミラー710および720を採用する。DBRは両方のミラーにとって好ましいが、従来技術のレーザで使用されるようなハイコントラスト回折格子を採用することもでき、その例が(Chase,C.、Rao,Y.、Hofmann,W.ら、「1550nmハイコントラスト回折格子VCSEL」、Optics Express、18(15)、15461〜15466(2010))に記載されている。
【0064】
図1の第2のミラー140に対応する
図7の下側ミラー710は、GaAsおよびアルミニウム酸化物(AlxOy)の交互する1/4波長層から成る。この種のミラーは、(MacDougal,M.H.、Daptakus,P.D.、Bond,A.E.ら、「AlxOy−GaAs DBRのVCSELの設計および製造」、IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics、3(3)、905〜915915(1997))に記載されるようにGaAs/AlAsのエピタキシャル成長スタックの側方酸化によって形成される。GaAs/AlxOyミラーは少数のミラー周期の高反射率および広帯域幅を有する。光が
図7のように上側ミラー外で結合されるとき、後部ミラーの好適な数のミラー周期は6または7の周期であり、99.9%超の理論的に無損失の反射率を実現する。このミラーの他の実施例では、AlGaAs中のアルミニウム含有量が約92%未満であるAlGaAs/AlxOyを使用することができるため、AlAsの側方酸化中に感知できるほど酸化してAlxOyを形成しない。低率材料のためGaAsの代わりにAlGaAsを使用することは、低率材料のバンドギャップを増大させて、レーザ発振波長、またはレーザが光ポンピングされる場合にはポンプ波長で非吸収とするのに有効である。
【0065】
図1の第1のミラー130に対応する
図7の上側の懸架ミラー720は、SiO
2やTa
2O
5などの低および高屈折率堆積材料を互い違いに配置することによって構成される。その他の堆積材料も使用することができ、TiO
2、HfO
2、Si、Ag、Al、Au、ZnS、ZnSe、CdF
2、Al
2F
3、およびCdSからなる群を含むがそれらに限定されない。これらの材料は電子ビーム蒸着、イオンビームスパッタリング、プラズマ支援堆積、または当業者にとって周知のその他の手段によって堆積させることができる。たとえば、それぞれ1.46/2.07の屈折率を有し、約700nm〜約1600nmの範囲を中心とする10周期のSiO2/Ta
2O
5周期ミラーの場合、ミラー設計の当業者によって算出されるように、理論的に無損失の反射率が中心波長の少なくとも10%の範囲にわたって99.5%を超える。
【0066】
図7の実施例はMEMS駆動を利用して、空隙同調領域の厚さを制御し、装置の出力波長を1310nmの範囲に制御する。図示するアクチュエータ接触子730、740間に電圧を印加して、空隙を収縮し、レーザをより短い波長に同調させる。図示するMEMS構造は、剛体支持構造750と懸架上側ミラー720が配置される懸架変形可能誘電メンブレン760とから成る。誘電メンブレン760の上側は金属化されて、アクチュエータ接触子730、740によって静電力を印加させることができる。メンブレン自体は透光性であり、懸架ミラーの下方で動作し、懸架ミラーと一体化され、構造的に懸架ミラーの反射率に寄与する。理想的には、メンブレン厚は放出される同調放射の中心波長では、1/4波長の奇数倍である。600〜2500nm範囲など、関連の多数の波長にとって、理想的な厚さは約3/4波長である。
【0067】
好適な実施形態では、誘電メンブレンは、応力処理されて所望の周波数応答を生成することができる頑丈な材料の窒化ケイ素である。理想的には、窒化ケイ素は約100〜約1000MPaの範囲の引張り応力を有する。この応力範囲は、後述するように応力によって増大させることができるMEMSアクチュエータの最下位桁共振周波数を実現する。引張り応力が好ましいが、圧縮応力も採用することができ、さほど好ましくないものの、MEMS解放後のメンブレンの反りにつながる。他の著者らは、たとえば(Matsui,Y.、Vakhshoori,D.、Peidong,W.ら、「65nm超、最大14mW出力パワーの長波長チューナブル垂直共振器表面発光レーザの完全偏波モード制御」、IEEE Journal of Quantum Electronics、39(9)、1037〜10481048(2003))に記載されるようにこのボーイングを有効活用して半対称共振器を作製した。
【0068】
図7に示す典型的な好適な実施形態は1310nmで動作するように構成される。したがって、この構造は、ゲイン領域に少なくとも1つの量子井戸を備えるInPベース多量子井戸(MQW)領域を使用する。下側完全酸化GaAs/Al
xO
yミラーはInPの代わりにGaAs上で成長するため、InPベースのMQW領域は、(Jayaraman,V.、Mehta,M.、Jackson,A.W.ら、「トンネル接合を有する高パワー1320nmウェハ接合VCSEL」、IEEE Photonics Technology Letters、15(11)、1495〜14971497(2003))に記載される固定波長1310nmVCSELの場合のように、ウェハ接合プロセスによってGaAsベースの完全酸化ミラーに結合させなければならない。多量子井戸領域は好ましくは、歪みの範囲が1〜1.5%である複数の圧縮歪みAlInGaAs量子井戸から成る。別の実施形態では、約1310nmを放出し、GaAs上で成長してウェハ接合の必要性を排除するGaInNAs量子井戸を使用することができる。しかしながら、AlInGaAs量子井戸は高ゲインであり、波長がより柔軟であるために好ましい。
【0069】
図25および
図26は、
図7の1310nmチューナブル短共振器レーザの好適な実施例を製造するのに使用される製造シーケンスの主要ステップを示す。650〜2300nmの波長帯での装置のプロセスは、ミラーとゲイン領域を1ステップでエピタキシャル成長させることができるため、GaAsベース装置が
図25に示す第1のウェハ接合ステップを必要としないことを除き、同じように進めることができる。
図25に示すように、1310nmまたはInPに成長される活性領域を使用する任意の波長で、第1のステップ2510は、InP基板にエピタキシャル成長されるMQW領域とGaAs基板にエピタキシャル成長されるGaAs/AlAsミラー構造とのウェハ接合を含む。このプロセスは、従来技術の研究者らによって(Black,A.、Hawkins,A.R.、Margalit,N.M.ら、「ウェハ融合:材料の問題と装置の結果」、IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics、3(3)、943〜951(1997))により詳細に記載されるように、約570℃で約15分間圧力を印加することによって達成することができる。MQWとミラー構造はウェハ接合境界面で接合される。接合後、第2のステップ2520で、InGaAs停止エッチング層上にHCLベースのエッチング停止を使用してInP基板が除去される。その後、硫酸ベースのエッチングによってエッチング停止層が除去される。
【0070】
第3の一連のステップ2530において、好ましくはチタンを終端として次のステップでのゲルマニウムの接着を促進する下側MEMS接触子と、反射防止コーティングとが堆積およびパターン化され、GaAs/AlAsミラー構造の酸化のために穴がエッチングされる。酸化はAlAsをAl
xO
yに変換して6または7周期の高反射ミラーを形成する。ミラー酸化後、ゲルマニウム犠牲層が第4のステップ2540で堆積され、ゲルマニウムは光発振領域に湾曲面を有するように構成される。この湾曲面は、酸素を豊富に含んだCF
4/O
2誘導結合型プラズマエッチングプロセスを使用するフォトレジストリフローおよびパターン転写プロセスによって形成される。
図26は、第5の一連のステップ2550において、どのように窒化ケイ素メンブレン層、上側アクチュエータ接触子、上側懸架ミラーがゲルマニウム犠牲層上に堆積およびパターン化されるかを示す。上側接触層は好ましくはアルミニウムである。
【0071】
第6の一連のステップ2560において、ゲルマニウム犠牲層が二フッ化キセノン(XeF
2)ガスを用いて解放され、縁部に剛体ゲルマニウム支持構造を有する懸架構造を形成する。ゲルマニウム解放前に上側および下側アクチュエータの金属と結合する、
図7に示すワイヤ接合パッドが堆積されて、解放前の処理を完了させる。アクチュエータの崩壊を招くおそれがあるため、解放後の処理は通常推奨されない。多くの場合、ゲルマニウムメンブレンの解放前に、素子をダイシングし、パッケージング用のサブマウントにワイヤ接合することが好ましい。
【0072】
図7に示す好適な実施形態のゲイン領域の設計は装置性能にとって重要である。構造が光ポンピングされる場合、量子井戸は光定常波のピークと位置合わせして、従来技術の(Corzine,S.W.、Geels,R.S.、Scott,J.W.ら、「周期的ゲイン構造を有するファブリ−ペロー表面発光レーザの設計」、IEEE Journal of Quantum Electronics、25(6)、1513〜1524(1989))に記載されるように周知の周期的ゲイン効果を通じてゲインを向上させることができる。もう1つの周期的ゲインの利点は、量子井戸間の広い間隔が歪みの蓄積を防止し、歪み補正の必要性を低減することである。図示する1310nmチューナブルVCSELにとって理想的なポンプ波長は約850〜1050nmの範囲である。光ポンピング構造では、3つの量子井戸を3つの別々の定常波ピークに配置することができ、ピーク間の領域はinPに略格子整合されたAlInGaAsと、入射ポンプ放射を吸収する成分とによって形成することができる。よって、ゲイン領域は吸収領域から分離され、吸収領域の光生成キャリヤはゲイン領域に分散する。もしくは、構造のFSRは単独の定常波ピークに3つの量子井戸を配置することによって増大させることができる。この場合、引張り歪みAlInGaAsを有する圧縮歪みAlInGaAs井戸の歪み補正が必要になる場合がある。吸収は量子井戸でのみ発生するため、より薄い吸収領域が生成される。このような構造は光ポンピング装置においてより多くのポンプパワーを必要とするが、より広い同調範囲を提供する。単独定常波ピークに3つの量子井戸を使用する
図7の実施例は、
図9の同調結果に示すように中心波長の12.3%を表す1310nm近傍で161nmのFSRを有する構造を可能にした。この装置の連続単一モード同調範囲は、
図9に示し後で詳述するように150nmであった。
図9は、超広域チューナブルMEMS−VCSELの静的および動的同調応答を示す。1372nmでの長波長スペクトル910は1211nmで完了モードを表し、共振器の161nmのFSRを示す。曲線920は500kHzでの正弦波掃引下の時間平均スペクトルを表す。静的応答も動的応答もいずれも、150nm全体にわたる連続単一横縦モードレーザ発振動作を実証している。1310nm装置での140〜170nmの範囲のFSRにより、掃引光源光コヒーレンス断層撮影システムに極めて適した装置同調が提供される。大型のFSRはレーザの同調範囲を増大させる手段としてだけではなく、後述するように他のチューナブル短共振器レーザからの同調プロファイルを追加できるようにレーザのデューティファクタを低減する手段としても望ましい。たとえば、レーザのゲイン帯域幅がFSRの50%未満に制限され、FSR全体が掃引される場合、レーザは自動的に掃引の半分超オフになり、(Klein,T.、Wieser,W.、Eigenwillig,C.M.ら、「1050nmフーリエドメインモードロックレーザでの超広域網膜撮像用メガヘルツOCT」、Optics Express、19(4)、3044〜30623062(2011))に記載されるように、別のレーザからの掃引または掃引の時間遅延コピーを挿入する余地を残す。
【0073】
極めて広い同調範囲(中心波長の10%超)にわたってレーザ発振を維持することが望ましい場合、(米国特許第7671997号明細書)に記載されるようにより広い量子井戸を使用することによって井戸に第2の閉込量子状態を含めることで量子井戸のゲインを拡大することが有益である。なお、採用される
図9の結果をもたらす幅広のFSR構造は、レーザ発振動作中にミラー間に形成される光定常波のピークの数によって特徴付けることができる。
図9の結果は、下側ミラーと懸架ミラー間の共振器に5つの定常波ピークを有する構造によってもたらされた。5つ未満の定常波ピークに共振器の厚さを低減することで、1310nm装置の場合200nmに近い大きなFSRをもたらすことができる。
図8は、たとえば2つのミラー間に4つの定常波ピークを有する1310nm設計の場合のレーザ発振軸に沿った屈折率対深度の変動を示す。
図8の左側の周期的構造は完全酸化ミラーを表し、
図8の右側の周期的構造は窒化ケイ素メンブレンである厚い第1の層を含む懸架誘電ミラーを表す。ミラー間のMQWゲイン領域および空隙同調領域も
図8に示す。
【0074】
上述の段落に記載の特徴は1310nm範囲のVCSELにのみ適用されるのではなく、同様の原理が、GaAsベースのミラー領域と併せてInPベースのゲイン領域を使用可能な1150〜2500nm波長帯全体にわたって適用され得る。1200〜1400nm範囲は、内視鏡用途、血管の撮像、癌の撮像などの多くの掃引光源光コヒーレンス断層撮影用途にとって特に重要である。1800〜2500nm範囲はガス分光法にとって重要である。この後者の範囲は好ましくは、インジウムリン化物基板上に圧縮歪みInGaAs量子井戸を使用する。
【0075】
図23は
図7と似ているが、代わりに約1060nmの波長帯で動作する別のMEMSチューナブルVCSELを示す。1310nmのVCSELと同様、この装置は下側ミラーとして完全酸化AlGaAs/Al
xO
yミラー2310を採用する。この下側ミラーのAlGaAs層のアルミニウム含有量は好ましくは光ポンピング構造におけるポンプビームの吸収を防止するように10%超であり、理想的には約850nmのポンプ波長を有する。この場合、ゲイン領域の圧縮歪みInGaAs量子井戸は完全酸化ミラーと同じGaAs基板上にエピタキシャル成長するため、ウェハ接合は不要である。
図23のような非ウェハ接合構造は、約600nm〜約1150nmの範囲で波長範囲にアクセスする他の量子井戸構造を有するように構成される。これらは、InGaAsの他に、AlInGaP、AlInGaAs、InGaAsP、InGaP、AlGaAs、GaAsを含むがそれらに限定されない。GaAs量子井戸は約800〜870nm範囲で使用され、AlGaAs井戸は約730〜800nm範囲で使用される。AlInGaPとInGaPは約600〜730nm範囲、代替材料のInGaAsPまたはAlInGaAsは約800〜900nm範囲で使用される。700〜1100nmの波長帯は特にSSOCT眼科撮像と酸素感知に関連し、約990〜1110nmの範囲の波長帯は眼科学に最も関連する。
【0076】
1310nm構造の場合と同様、周期的ゲインを
図23の構造でも採用することができる。990〜1110nm範囲では、共振器の3つの定常波ピークに、ポンプ放射を吸収し、量子井戸に分散する電子と正孔を生成するGaAs障壁によって分離される3つのInGaAs量子井戸2320を有する周期的ゲイン構造を使用することが有益である。標準的な量子井戸幅は6〜12nmであり、標準的なインジウムパーセントは約20%である。約8nmより大きな量子井戸幅は第2の閉じ込め量子状態と拡張ゲインにつながる。このアプローチを使用する構造は、1060nm近傍で100nmの同調範囲を示す
図24の同調結果を実現した。この構造のFSRは約100nm、または中心波長の約9.4%である。FSRは1310nm構造のように、単独の定常波ピークにすべての量子井戸を配置する、あるいは2つの定常波ピークに4つの量子井戸を配置することによって10%超へ増大させることができる。これらの後者のケースでは、従来技術の固定波長VCSEL(Hatakeyama,H.、Anan,T.、Akagawa,T.ら、「InGaAs/GaAsP−MQWを備える高信頼性/高速1.1−mu m−範囲VCSEL」、IEEE Journal of Quantum Electronics、46(6)、890〜897(2010))に記載されるように、引張り歪みGaAsPを有するInGaAsの歪み補正を採用することができる。
【0077】
図7に示す構造と
図24に示す構造はいずれも、
図9および
図24の関連結果にそれぞれ示すように、装置のFSRの90%を超える同調範囲を達成する。さらに、
図9および
図24は主要ピークから1〜3nm離れた肩部として表される横モードの抑圧も示しており、通常は主要ピークで40dBより下である。単一横モードポンプビームを採用する光ポンピング構造では、ポンプビームが
図1の半対称共振器の光軸に沿って良好に整合されている場合、横モード抑圧は同調範囲全体にわたって45dB超まで増加させることができる。
【0078】
図7、
図9、
図23、
図24に示す実施形態の特定の実施例は、GaAsおよびInP基板に関連する材料と波長帯を採用する。本発明のいくつかの実施形態を実行するために他の材料も使用することができる。たとえば、従来技術の研究者らが(Kashani−Shirazi,K.、Bachmann,A.、Boehm,G.ら、「電気ポンピングされるcw−動作GaSbベースのVCSEL用活性領域のMBE成長」、Journal of Crystal Growth、311(7)、1908〜1911(2009))において固定波長VCSELを用いて実行したように、約2000〜2500nm中赤外範囲でのチューナブル放出はGaSb基板上の材料を用いて獲得することができる。もしくは、固定波長VCSELを使用する研究者らが(Higuchi,Y.、Omae,K.、Matsumura,H.ら、「電流注入によるGaN系垂直共振器表面発光レーザの室温CWレーザ発振」、Applied Physics Express、1(12)、(2008))に記載するように、400〜550nm範囲で動作する本発明の一実施形態に係るチューナブル短共振器レーザはGaN基板上で成長した材料を用いて実現することができる。400〜700nmの可視範囲での本発明の実施形態の実施例は、光度量器具や生物学的および医学的分光の用途を有する。
【0079】
上述のすべての波長帯にとって好適な一実施形態は、上述した多くの例と同様、光ポンプがレーザ発振用のエネルギーを供給する光ポンピング実施形態である。550〜700nm範囲での動作の場合、光ポンプの波長の範囲は好ましくは約400nm〜約600nmである。700〜1100nm範囲での動作の場合、好適なポンプ波長の範囲は約600〜1000nmである。1200〜1400nm範囲での動作の場合、好適なポンプ波長の範囲は約700〜1200nmである。1800〜2500nm範囲での動作の場合、好適なポンプ波長の範囲は約1000〜2000nmである。なお、
図24の1050nmMEMS−VCSELに示されるように、上側ミラーを通じてポンピングすることが有益な場合が多い。ミラー周囲の側方ポンピングも可能だが、上側ミラーを通じたポンピングはより小型のパッケージにつながる。この場合、上側ミラーはポンプ波長で最小の反射率を有する必要がある。
図14は、1050nmでの光ポンプで1200〜1400nmの範囲で放出するように構成されるチューナブル短共振器レーザに関して、例示の上側ミラーの反射率を示す。
図14に示すように、上側ミラーは、所望の1200〜1400nm放出波長帯で高反射率1420を有しつつ、1050nmのポンプ波長で最小反射率1410を有するように作製することができる。
【0080】
光ポンピング装置に関して主に説明してきたが、垂直共振器レーザにとって周知の処理方法を使用して光ポンピングから電気ポンピングに移行することができる。
図24に示す1060nmの例のように、GaAsベースのMQWゲイン領域2710と完全酸化ミラーとを有するMEMSチューナブルVCSELである、本発明の一実施形態に係る電気ポンピング構造の例を
図27に示す。
図27に示すように、下側MEMS接触子2740は上側レーザダイオード接触子としても機能する。光ポンピング構造では、光学キャリヤの閉じ込めは、光ポンプビームの側方範囲の制限によって達成されるが、電気ポンピング構造では、電流開口2720を設けなければならない。通常、この開口2720は
図27に示すように、完全酸化ミラーの上方の別の部分酸化層によって設けられる。他の研究者らによって採用されるように、電流開口はパターン化され埋め込まれたトンネル接合によって提供することもできる。いずれのケースも、固定波長VCSELに関する従来技術の研究者らが(Scott,J.W.、Geels,R.S.、Corzine,S.W.ら、「垂直共振器表面発光レーザの性能を最適化する温度効果と空間ホールバーニングのモデリング」、IEEE Journal of Quantum Electronics、29(5)、1295〜1308(1993))で記載するように、広がり抵抗を処理し、電流集中を回避するように注意を払わねばならない。
【0081】
図27に示すように、注入不活性化層2730と酸化物電流開口2720との組み合わせにより構造の電気ポンピングが可能になる。通電は、中間MEMS接触子2740から電流開口2720を通り、下側ミラーの完全酸化領域の周辺で裏側基板接触子2750まで進行する。好ましくは3つの歪み補正InGaAs/GaAsP量子井戸を備えるMQW領域でのキャリヤ再結合によってレーザ発振用のゲインが生成される。
【0082】
関連する多くの用途にとって、チューナブル短共振器レーザから放出される出力パワースペクトルのスペクトル形状を制御することが望ましい。この出力パワー成形は様々な方法で達成することができる。1つの方法が上側ミラー反射スペクトルの形状の制御である。一般に、低反射率領域は光共振器からの光が多く、高反射率領域は光共振器からの光が少ない。よって、波長帯全体にわたって目標スペクトル形状またはパワー変動を定義し、このスペクトルで達成されるミラー反射の形状を調節することができる。目標パワー変動はガウス形状とすることができる。
図22は、懸架上側ミラーの反射スペクトルを調節することによって、
図7のMEMS−VCSELで達成された複数のスペクトル形状の例を示す。これらのスペクトルは、両縁のパワーピーク、すなわち青色縁のパワーピークおよび、赤色縁のパワーピークに及ぶ。他のスペクトル形状も同じ方法で達成可能である。
【0083】
スペクトル形状を変更するもう1つの方法は、波長同調中にポンプエネルギーをゲイン領域へ動的に制御することである。光ポンピング装置の場合、これはポンプエネルギーを装置内へ制御することであり、電気ポンピング装置の場合、駆動電流が制御される。ポンプエネルギーの成形は装置の熱管理も向上させることができる。
【0084】
MEMSアクチュエータを使用する特定の実施形態の場合、装置性能を向上させるようにMEMSアクチュエータをさらに設計することができる。上述したように、変形可能誘電メンブレンは好ましくは窒化ケイ素から成り、無応力設計に対して大幅に増加させた共振周波数を提供し、かつ解放後のメンブレンの反りを最小化するため、100〜1000MPaの引張り応力が好ましい。共振周波数という場合、我々はアクチュエータの所望の「ピストン」運動に対応する装置の最下位機械モードを指している。これは装置性能にとって重要なパラメータである。好適なアクチュエータ形状の1つは、
図7、
図12、および
図23に示すような支持アームを有する中央板である。この特定の形状にとって重要なパラメータは、
図23に示すように、アクチュエータ径、中央板径、アーム幅、および懸架ミラー径である。4つおよび8つの支持アーム間の約220μmのアクチュエータ径、約16μmのアクチュエータアーム幅、約34μmの懸架ミラー径、1310nmを中心とする約11周期のSiO
2/Ta
2O
5から成る懸架ミラー、約50μm〜約110μmの中央板径、約200MPa〜約450MPaの応力範囲の3/4波長窒化ケイ素メンブレンを用いて、
図10のサンプリングによって表される様々な周波数応答を取得することができる。
図12は、
図10の周波数応答をもたらすアクチュエータ形状のサンプリングを示す。
図12は、4つまたは8つの支柱1210を有するいくつかのMEMSチューナブルVCSEL構造の上面図である。
図10はMEMS駆動空隙同調機構に印加される駆動周波数の関数であるMEMS−VCSEL波長の同調を示す。図示するように、共振周波数の範囲は約200kHz〜約500kHzであり、最速の装置の6dB帯域幅は1MHzに近づく。
【0085】
共振時のピーク変動量によって表されるアクチュエータのダンピングの変動も示される。ダンピングは主に、粘性空気との相互作用を表すスクイーズ膜ダンピングによって生じる。アクチュエータ面積が増大する、あるいは空隙が減少するにつれ、スクイーズ膜ダンピングが上昇して周波数応答を平坦化する。平坦な広周波数応答は、可変速度駆動、および複数の高調波を通じた駆動の線形化にとって望ましい。MEMS装置でのスクイーズ膜効果によるダンピングが
図10に示されているが、同様の効果は圧力駆動装置などのその他の空隙同調装置でも見ることができる。概して、アクチュエータ面積または形状を変更して粘性空気との相互作用を変更する、背景ガス組成またはガス圧を変更してスクイーズ膜ダンピングの寄与をさらに変更する、空隙厚を変更する、アクチュエータの穴または開口のサイズを変更して、乱流から非乱流レジームへ穴を通る流体流のレジームを変更するなど、様々な方法によってMEMSアクチュエータのダンピングを制御することができる。また、アクチュエータのアニーリングによって、ダンピング効果を有するアクチュエータの各種材料の応力を変更することができる。
【0086】
図10に示す周波数応答は典型であり、限定ではない。共振周波数は、引張り応力の増加、厚さの増加(たとえば、5/4波長)、懸架ミラーの径と厚の低減、またはアームの短縮によるメンブレンの強化によって上昇させることができ、これにより有限要素モデリングの当業者によって算出されるように2MHzを超える6dB帯域幅が達成可能である。同様に、共振周波数は同一パラメータを反対方向に変更することによって100kHzをはるかに下回るように低下させることもできる。なお、共振周波数を低下させる螺旋状アーム形状や、明確に線引きされた支柱を持たない有穴メンブレンなど、その他の形状も可能である。
図12では、中央板1220の径を外側リング1230アクチュエータ径まで拡大して、穴を追加することによって、明確に線引きされた支柱を持たない有穴メンブレンを実現している。
【0087】
上述の窒化ケイ素メンブレンは非常に絶縁性が高いため、帯電および静電ドリフトを起こしやすい。メンブレンにわずかに導電性を加えることで帯電傾向を低減することができる。窒化ケイ素の場合、この導電性は、不定比ケイ素を豊富に含んだ膜を使用するか、あるいは窒化ケイ素膜をケイ素でドープすることによって導入することができる。
【0088】
図9および
図24に示す同調結果は、特にスペクトルと共に装置を同調するのに必要な電圧を示す。これらの電圧は、FSRの完全同調のために最大約65Vに及び、これは中心波長の約半分のメンブレンの反り、または1310nm装置の場合は約650nm、1050nm装置の場合は525nmに相当する。これらの電圧は、
図10および
図12を参照し、約1.6μmの範囲の名目ゼロ電圧空隙と共に、上述のMEMSアクチュエータの寸法および窒化ケイ素応力レベルとに関連付けられる。
【0089】
なお、半導体におけるキャリヤ注入同調など、GHz範囲を実現できる、空隙の機械的収縮または膨張よりも高速の同調機構を採用することができる。しかしながら、通常、この機構は光路長の約1%の変動に限定されるため、広域の同調範囲には適さない。
【0090】
本発明の一実施形態におけるいくつかのその他構造および性能上の特徴は、
図1および
図2をさらに参照して理解することができる。多くの用途にとって、
図2に示すような周期的変動のない強度対波長プロファイルを有することが望ましい。本開示は、リップルが平均パワーの約1%未満の短共振器チューナブルレーザを記載している。一般に「リップル」という用語はこうした変動を説明するために使用される。スペクトル周期と用途に応じて、このリップルは様々な程度の悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、掃引光源OCT(SSOCT)システムでは、平均パワーに対して1%以上のリップルの振幅を有する特定のスペクトル周期は、SSOCT画像において明白な距離でスプリアス反射として表れる可能性がある。通常、リップルはレーザ共振器外のスプリアス反射によって生じる。こうした反射は光学システム内の光学レンズまたはその他の光学素子から生じる、あるいは垂直共振器レーザ内の基板反射から生じる。たとえば、
図7のレーザでは、第2のミラーの下方から、たとえばこの装置を配置するGaAs基板770の底部からの反射によってリップルが発生することがある。基板反射振幅は、第2のミラーの反射率の増大、基板内ドーパントによる損失の導入、散乱を増加させる基板厚の増加または基板裏側の粗化などを含むがそれらに限定されない各種手段によって抑制することができる。散乱を増加させる基板粗化のための最適グリッドは、900〜1400nmのチューナブル放出の範囲では30μm超のグリットサイズである。また、7以上の周期を有し、99.5%超の理論的に無損失の反射率を有する完全酸化下側ミラーを使用することで、リップルを1%未満のレベルまで抑えることができる。
【0091】
本発明の一実施形態のもう1つの重要な性能特徴は、波長掃引放出の同調範囲全体を通じた固定偏波状態での動作である。垂直共振器レーザなどの、レーザ発振放出が歪み量子井戸の面に直交して発生する半導体レーザは、多少の非対称が共振器に導入されないかぎり、自然の好適な偏波を含まない。偏波選択光増幅器などの光学システムにおける偏波感応性要素と動作する際、単一偏波状態での動作は重要である。このようなシステムは、偏波維持ファイバと組み合わせて本発明の一実施形態に係る偏波安定装置を採用することができる。放出波長帯にわたる偏波スイッチングは、SS−OCTシステムでのパワー低下や画像アーチファクトを招き、動的コヒーレンス長を損なう可能性がある。十分に画定された偏波状態により、交番する偏波状態を要するレーザシステムを構築することができる。
【0092】
装置の同調範囲全体にわたる単一偏波状態での動作は様々な方法によって達成することができる。1つの方法は、装置の光共振器と一体化された1つ以上のナノ細線を導入することである。
図7に関しては、このナノ細線は、光路の中心でチューナブル空隙に隣接するMQWゲイン領域780の上に配置することができる。あるいは、懸架ミラーの上に配置することができる。ナノ細線は、光の偏波依存性散乱または吸収を生じさせる素子である。典型的な寸法は50nm幅、数ミクロン長、10nm厚とすることができる。ナノ細線は金属で構成することができる、あるいは単に屈折率摂動を満たすものとすることができる。通常、ナノ細線の長手方向に沿って偏光する光はナノ細線と垂直に偏光する光とは異なる力と相互作用する。レーザ共振器はモード選択のために少量の損失異方性を必要とするため、単独共振器内ナノ細線は別の偏波での低損失を維持しつつ一方の偏波を抑制するのに十分である。ナノ細線に関して異なる偏波の損失はたとえば(Wang,J.J.、Zhang,W.、Deng,X.G.ら、「高性能ナノ細線−グリッド偏光子」、Optics Letters、30(2)、195〜197(2005))に記載されるような当業者にとって既知の手段によって算出することができる。ナノ細線のグリッドを有することで損失異方性は増加するが、好ましい偏波の損失も増加する。したがって、たとえばVCSEL共振器では、好適な偏波に導入される過剰な損失は0.1%より少なくすべきである。つまり、1本またはごく少数のナノ細線を示唆する。VCSELまたはVCLの場合、理想的には、ナノ細線は、VCSELが配置される半導体の結晶軸と整合されるべきである。これは通常、(100)または近(100)方位で成長されるウェハにとって[110]方向または[110]方向に直交する方向を意味する。その理由は、微弱偏波選択効果が結晶軸の1つに沿ってVCL偏波を整合させるように存在するからであり、他の偏波制御方法はこの効果と競合するのではなく、この効果を強化するように働くべきである。
【0093】
その他の偏波制御手段は、(Matsui,Y.、Vakhshoori,D.、Peidong,W.ら、「65nm超の同調、最大14mW出力パワーの長波長チューナブル垂直共振器表面発光レーザの完全偏波モード制御」、IEEE Journal of Quantum Electronics、39(9)、1037〜10481048(2003))に記載されるような異方性応力、固定波長VCSEL(Zheng,Y.、Lin,C.H.、Coldren,L.A.,「低閾値偏波スイッチングVCSELでの偏波相オフセット制御」、IEEE Photonics Technology Letters、23(5)、305〜307(2011))に記載されるような側方電流注入、あるいは、
図13を参照して説明するような
図7の完全酸化ミラーを形成する非円形対称酸化プロセスの導入を含む。
図13に示すように、酸化1310は2つのエッチングされた穴1320から外側へと進行し、酸化の前線は本図の破線1330によって示す線に沿って進行する。この破線に沿って、5nmの窪みの屈折率ナノ細線が形成されVCSEL偏波を選択することができる。
図13の屈折ナノ細線は、穴が結晶軸と並んでいるかぎり、結晶軸と並ぶ。
【0094】
偏波制御は、ウェハ接合装置において接合ウェハの結晶軸が接合プロセス中に確実に整合させるように確保することによってさらに向上させることができる。1つの結晶軸は他の結晶軸よりもわずかに優先されることがあるため、接合中に結晶軸を整合させることで、整合が乱れることで効果が相殺されることなく、効果が倍増される。
【0095】
本明細書に記載のチューナブル短共振器レーザはアレイ状に組み合わせて、光学特性を向上させた複合チューナブルレーザ源を形成することができる。レーザがMEMSチューナブル垂直共振器レーザである特定の実施例では、アレイは一体形に製造することができる。SS−OCTにおいて非常に有用なこうした組み合わせの例を、
図28を参照して説明する。
図28Aに示すように、第1のチューナブル短共振器レーザTCSL1と第2のチューナブル短共振器レーザTCSL2は、ビームスプリッタ、ファイバカプラ、またはその他の既知の結合素子2810を使用して共通光路に多重化される。各TCSLは、
図28CでTCSL1に関しては実線の波長軌道2820で、
図28CでTCSL2に関しては破線の軌道2830で示すように、同調範囲全体にわたって二方向同調を有するように駆動される。各レーザは反復周期T中、反復的に走査されるが、TCSL2の走査は半反復周期分、TCSL1の走査から時間遅延される。また、2つのTCSLのそれぞれのためのポンプエネルギー2840および2850(電気ポンプまたは光ポンプのいずれか)は後方波長走査中に切断されるため、ポンプエネルギーがゼロでないとき、波長走査の前半のみがレーザ放射を放出する。場合によっては、FSRが支持材料のゲイン帯域幅よりもずっと大きい場合、材料のゲイン帯域幅を超えて同調素子を走査すると、ポンプエネルギーを切断しなくてもレーザが自動的にオフになる。
【0096】
TCSL1(実線)2860とTCSL2(破線)2870の両方からの成分を備え、各TCSLの最初の周期Tの半分である新たな反復周期T/2での一方向走査を示す、多重出力の波長軌道を
図28Dに示す。このように、掃引速度は2倍となる。同じ原理をN個のレーザに適用して、掃引速度をN倍にすることができる。また、TCSLの挿入原理は掃引速度の倍増だけではなく、同調範囲の倍増、異なる同調範囲、同調速度、または同調軌道の挿入、あるいはSSOCT、分光、通信、または光検出の当業者にとって明白な様々なその他の目的のために適用することができる。
【0097】
上述のチューナブル短共振器レーザは光増幅器と組み合わせて、高出力パワーとその他の撮像に有益な特性とを有する増幅チューナブル源を作製することができる。増幅器は、半導体増幅器、約1300nmのウィンドウで動作するプラセオジムをドープしたファイバ増幅器などのファイバ増幅器、約1050nmのウィンドウで動作するイッテルビウムをドープした増幅器、1050nm近傍のフッ化物をドープした拡張帯域幅ファイバ増幅器、または任意の種類の光増幅器とすることができる。さらに、増幅器の使用により上述の挿入スキームが可能になり、高消光比光増幅器を使用して、光源へのポンプエネルギーを切断する代わりに、適時に光源をオンにすることができる。
【0098】
本発明の一実施形態に係るチューナブル短共振器レーザ1510が、光増幅器1530の入力側に向けられる入力チューナブル放射1520を放出する基本構造を
図15に示す。この入力チューナブル放射は入力平均パワー、入力パワースペクトル、入力波長帯、および入力中心波長を有する。増幅器が入力チューナブル放射を増幅して、出力平均パワー、出力中心波長、出力波長帯、出力パワースペクトルを有する出力チューナブル放射を生成する。
【0099】
好適な実施形態では、増幅器は、光増幅器の当業者にとって周知なとおり飽和レジームで動作する。飽和レジームは入力チューナブル放射に存在する雑音変動を抑制し、出力チューナブル放射の半値全幅(FWHM)が出力チューナブル放射のFWHMを超過し得る有益なスペクトル成形を提供することができる。この1例を
図21に示し、増幅チューナブルスペクトル2110がチューナブル短共振器レーザからの入力チューナブル放射2120よりも広いFWHMを有する。
【0100】
好適な実施形態では、光増幅器は、低雑音、広ゲイン帯域幅、高ゲインを提供可能な半導体量子井戸増幅器である。半導体量子井戸増幅器は40dBを超える超高消光比を提供し、上述するように装置をオンオフするスイッチとして使用することができる。量子井戸は好ましくは、より広いゲイン帯域幅をサポートするように2つの閉込量子状態を有する。
図16は、3つのAlInGaAs圧縮歪み量子井戸を備える、1310nmでの2量子状態半導体光増幅器からの増幅自然放出光を示し、スペクトルの第2の量子状態拡張に相当するスペクトルの短い端部での隆起1610を示す。この増幅自然放出光(ASE)の3−dBスペクトル幅は110nmであり、同値の3dB小信号ゲイン帯域幅を示唆する。
【0101】
半導体光増幅器は、すべての圧縮歪みまたは引張り歪み量子井戸を使用することによって偏波感応性とし、単独構造における両方の種類の歪みを使用して全偏波でのゲインを提供することによって偏波不感応性とすることができる。
【0102】
好適な構造では、入力チューナブル放射の中心波長は増幅器によって放出される増幅自然放出光(ASE)の中心波長よりも長い波長を有する。増幅器ASEは通常、増幅器ゲインスペクトルに対して青色偏移するため、この構造により、入力チューナブル放射のスペクトルは増幅器ゲインスペクトルに対してより適切に配向する。概して、増幅器ASEの入力パワースペクトルに対する配向を変動することで、有益なスペクトル成形を提供することができる。
【0103】
図15の基本構造は様々な形状のフィルタリングで補強して低雑音の増幅掃引光源を形成することができる。度量衡、分光、生物フォトニクスにおける多くの掃引光源レーザ用途は、広帯域ASEの抑制と側モード抑制の向上からの恩恵を得ることができる。レーザ共振器の内側、レーザと増幅器との間、システムの出力のいずれかでシステムにチューナブルスペクトルフィルタを追加することは、これに関連して性能を向上させる手段の1つである。好適な一実施形態では、
図15に示す増幅器は、(Cole,G.D.、BjorLin,E.S.、Chen,Q.ら、「MEMSチューナブル垂直共振器SOA」、IEEE Journal of Quantum Electronics、41(3)、390〜407(2005))に記載されるような垂直共振器増幅器などのチューナブル共振増幅器とすることができ、狭帯域の波長でのみ増幅し、チューナブル短共振器レーザの入力チューナブル放射と同期して同調されるため、増幅器の通過帯域が入力チューナブル放射波長に常に合致する。
【0104】
いくつかの好適な構造を
図17〜
図20に示す。
図17では、通過帯域が入力チューナブル放射の波長と常に位置合わせされる同期同調光フィルタ1710が広帯域光増幅器1720の後に配置されて、残りのASE雑音を低減し、増幅チューナブル放射の信号対雑音比を向上させる。
図18では、同じ同期同調光フィルタ1810がチューナブル短共振器レーザ1830と光増幅器1820との間に配置されて、増幅前に入力チューナブル放射の側モード抑制を向上させる。
【0105】
2つの増幅段1910および1920が使用される別の構造を
図19に示す。これらの段は、2つの別個の増幅器、または分割増幅器接点を有する単独の導波路増幅器として実現することができる。2つの増幅段1910および1920の使用でスペクトル成形がさらに柔軟になる。たとえば、2つの増幅器のゲインスペクトルは、同一のエピタキシャル構造を別々に付勢する、あるいは2つの増幅器で異なるエピタキシャル構造を使用することによって相互にシフトさせることができる。また、2つの増幅段の使用により、高ゲインと高出力パワーが実現される。
【0106】
図20は、同期して同調される光増幅器2030が2つの増幅器段2010および2020間に配置されるさらに別の2段増幅器構造を示す。これは、出力チューナブル放射の信号対雑音比を向上させる役割を果たす。
【0107】
実際に関連するほとんどのケースで、SSOCTや光波分光などの光学システムでは、入力平均パワーの好適な範囲は約0.05〜2mWであり、結果的に出力平均パワーの好適な範囲は約10〜120mWとなる。正確な数字は増幅器のゲインと飽和出力に依存するが、この範囲は通常、光学システムにとって良好な信号対雑音比を有する増幅チューナブル放射を生成する。
【0108】
増幅器と組み合わせたチューナブル短共振器レーザの基本構造は、様々な波長帯に適した様々な材料を採用する半導体光増幅器を使用して実現することができる。たとえば、増幅器は、SSOCTおよび吸湿分光に適した1200〜1400nm範囲で動作することができる。この範囲では、InP上にAlInGaAsまたはInGaAsP量子井戸を使用することで所要のゲインが生成される。あるいは、増幅器は少なくとも1つの圧縮歪みInGaAs量子井戸を採用する眼科SSOCTに適した約800〜1100nm範囲で動作することができる。
【0109】
本開示に記載のチューナブル短共振器レーザは多数の光学システムにおいて有効であり、そのうちいくつかは先の説明で概説した。それらのシステムの代表例をいくつか説明する。SSOCT用のシステムは、チューナブルレーザからのチューナブル放射を基準路とサンプル路とに分割する手段と、前記サンプルから反射され前記基準路を横断する光間の干渉信号を検出する光検出器と組み合わせて、上述のチューナブル短共振器レーザを備えるチューナブルレーザを採用することができる。その後、SSOCTの当業者にとって周知なように、この干渉信号の信号処理を利用してサンプルに関する構造上または組成上の情報を再構成することができる。
【0110】
光波分光用システムは光検出器と併せて上述のチューナブル短共振器レーザを採用して、固体、液体、気体、プラズマ、または任意の状態の任意の物質であるサンプルの吸収、透過、散乱、または反射スペクトルを測定することができる。また、チューナブル短共振器レーザの可変同調速度を利用して可変速度で光スペクトル全体を走査し、情報の豊富な領域では減速、情報の乏しい領域では加速することによって、測定時間を最小化しつつ所望の信号対雑音比を取得することができる。
【0111】
上述のチューナブル短共振器レーザは、光ビームステアリング用システムで採用される分散光学素子と組み合わせて使用することができる。たとえば、回折格子の回折角が入力チューナブル放射の波長の関数であることは周知である。よって、放射の同調は回折角を走査し、光ビームステアリングを達成する。プリズムなどのその他の分散素子も採用することができる。
【0112】
本発明の一実施形態に係る短共振器レーザを採用することのできるその他の光学システムは、2つ以上の波長間のスイッチングを利用して距離を推定する距離干渉計である。
【0113】
本発明の一実施形態を使用して、固定波長基準レーザで短共振器レーザのチューナブル出力をビーティングすることによってチューナブル発振器を構成することができる。このビーティングは、たとえば、入射光パワーに応答する光検出器によって達成することができる。2つの同一線上レーザビームがこの検出器に衝突する場合、検出器出力は2つのレーザビーム間の光周波数の差で振動し、差周波数は検出器帯域内に収まる。1つのレーザが同調されると、この差周波数が同調して、光周波数から低周波にシフトダウンされたチューナブル発振器も構成する。
【0114】
本発明はいくつかの上述の実施形態に関してある程度具体的に説明したが、本発明を上記の詳細または実施形態、あるいは任意の実施形態に限定すべきであると意図しておらず、従来技術に鑑み特許請求の範囲を最も広く解釈し、意図される発明の範囲を有効に包含するように添付の特許請求の範囲を参照して解釈すべきである。さらに、有効である記載が利用可能であったとするために、発明者が予見する実施形態に関して本発明について説明したが、現在予見されてない本発明のわずかな変更も、本発明の等価物を表すことができる。