(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本出願の出願人は、また、「METHODS FOR PROMOTING WOUND HEALING」と題する米国特許出願第_______号(代理人整理番号END7119USNP/120085)も所有し、この出願は同日付けで出願され、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0007】
種々の実施形態は、電気手術システム、及び周囲の健康組織に対する望ましくない熱的影響を低減又は排除しながら望ましくない組織を処置する方法を対象とする。
【0008】
この開示は、電気手術システムとその方法の種々の実施形態の種々の要素、特徴、態様、及び利点について述べる。種々の実施形態の特定の説明は、開示された実施形態をより明確に理解するのに適した要素、特徴、及び態様のみを示し、同時に簡潔さ又は明瞭さのために、他の要素、特徴、及び態様を排除するように単純化されていることを理解されたい。「種々の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの実施形態」、又は「一実施形態」に対するあらゆる言及は、一般に、その実施形態において説明されたある特定の要素、特徴、及び/又は態様が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。語句「種々の実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「1つの実施形態では」、又は「一実施形態では」は、同じ実施形態を指さないことがある。当業者は、本明細書の説明を検討すると、種々の実施形態並びに他の要素、特徴、及び態様の種々の組み合わせ又は副組み合わせが、特定の実施態様又は応用例で望ましいことがあることを認識するであろう。しかしながら、他のそのような要素、特徴、及び態様は、本明細書の説明を検討することにより当業者が容易に確認することができ、開示された実施形態を完全に理解するために必要ではないので、そのような要素、特徴及び態様の説明は、提供されないことがある。したがって、本明細書に示された説明は、単に開示された実施形態の例示の実施例であり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0009】
本明細書で述べる全ての数量は、特に断らない限り概算であり、即ち、明示的に述べられないときは用語「約」が暗示され得る。本明細書に開示された数量は、示された正確な数値に厳密に限定されないことを理解されたい。代わりに、特に断らない限り、各数値は、示された値とその値の前後の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図している。均等の原則の適用を特許請求の範囲に限定しようという試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数の観点からそして通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本明細書で述べる数値は概略値であるに関わらず、特定の実施例で示されている数値は、できるだけ正確に報告されている。
【0010】
本明細書に記述されるすべての数の範囲は、その中に包含される全ての部分的な範囲を含む。例えば、「1〜10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間、及びこれらの値を含む全ての部分的な範囲を含むよう意図される。本明細書に列挙される任意の最大数値限定は、より低いすべての数値限定を含むよう意図される。本明細書に列挙される任意の最小数値限定は、より高いすべての数値限定を含むよう意図される。
【0011】
本明細書で一般に使用されるとき、用語「近位」及び「遠位」は、一般に、患者を処置するために使用される器具の一端を操作する臨床医を基準とする。用語「近位」は、一般に、器具の臨床医に近い部分を指す。用語「遠位」は、一般に、臨床医から最も遠い部分を指す。簡潔にするため、また明確にするために、「垂直」、「水平」、「上」、「下」等、空間に関する用語は、本明細書において、図示した実施形態を基準にして使用できることが更に理解できる。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用され得、これらの用語は、限定的及び絶対的であることを意図したものではない。
【0012】
種々の実施形態では、電気手術システムは、一般に、エネルギー源に結合された第1及び第2の電極を含むことがある。このエネルギー源は、二相高周波(RF)波形のパルスを生成し患者の組織に提供してもよい。パルスは、患者内の望ましくない組織の細胞を非熱的に処置しかつ/又は死滅させることができる。エネルギー源は、交流(AC)電気波形発生器を含むことができる。
【0013】
種々の実施形態では、電気手術システムは、一般に、エネルギー源に結合された第1及び第2の電極を含んでもよい。エネルギー源は、二相高周波(RF)波形のパルスを生成して患者の組織に提供してもよい。パルスは、組織内の細胞膜にわたって電位の変化を引き起こしてもよい。エネルギー源は、交流(AC)電気波形発生器を含むことがある。
【0014】
種々の実施形態では、交流波形発生器は、交流波形のパルスを生成して患者の組織に提供するように構成され得る。交流波形は、ピーク・ピーク電圧振幅と、本明細書で「基本周波数f」と呼ばれる周波数とによって特徴付けられることがある。電気パルスは、例えば、パルスの周波数、振幅、パルス幅(持続時間)、総数、及びパルス間の遅延などの各種パラメータによって特徴付けられることがある。
【0015】
種々の実施形態では、望ましくない組織を処置する方法は、一般に、二相RF波形のパルスを望ましくない組織に印加して、望ましくない組織の細胞を非熱的に処置しかつ/又は死滅させることを含んでもよい。他の実施形態では、望ましくない組織を処置する方法は、一般に、二相高周波(RF)波形のパルスを望ましくない組織に印加して、望ましくない組織の細胞膜にわたって電位の変化を引き起こすことを含んでもよい。
【0016】
種々の実施形態では、望ましくない組織を処置する方法は、一般に、交流波形のパルスを患者の組織に提供することを含む。交流波形は、ピーク・ピーク電圧振幅と基本周波数fとによって特徴付けられることがある。電気パルスは、例えば、パルスの周波数、振幅、パルス幅(持続時間)、総数、及びパルス間の遅延などの各種パラメータによって特徴付けられることがある。
【0017】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、処置された望ましくない組織内の細胞死は、処置の直後に起こることがある。あるいは、細胞死は、種々の生物学的メカニズムのために後で起きることがある。ある理論では、細胞死は、不可逆電気穿孔法(IE)により起きることがある。電気穿孔法、即ち電気透過法は、外部から印加された電界によって引き起こされる細胞原形質膜の電気伝導率と透過性の著しい増大である。これは、通常、分子生物学では、分子プローブ、細胞の機能を変更できる薬剤、又は符号化デオキシリボ核酸(DNA)の断片などのいくつかの物質を細胞に導入する方法として使用される。電気穿孔法は、細胞膜上の各点における局所的膜貫通電圧に依存する動的現象である。一般に、所定のパルス持続時間と形状では、電気穿孔現象が現れる特定の膜貫通電圧閾値(0.5V〜1V)が存在することが分かっている。不可逆電気穿孔は、特定の細胞の膜貫通閾値を超えたときに起こると考えられ、これは、細胞外膜にわたって電位を不安定にし、かつ脂質二重層内に永久的ナノスケール欠陥を形成する。細胞膜の永久的透過化は、細胞ホメオスタシスと細胞死の変化をもたらす。
【0018】
別の理論では、細胞死は、アポトーシスにより起こることがある。アポトーシスは、計画的細胞死である。アポトーシスは、細胞膜非対称及び付着の喪失などの細胞膜に対する変更、細胞収縮、核断片化、染色質縮合、及び染色体DNA断片化を含む様々な形態変化をもたらす一連の生化学的事象を伴う。
【0019】
種々の実施形態では、電気手術システムは、一般に、組織処置領域(例えば、標的部位又は手術部位)内の望ましくない組織内に又は該組織の近位に位置決めされるように構成された2個又はそれ以上の電極を含んでもよい。組織処置領域は、異常な組織増殖の形跡を有することがある。一般に、電極は、導電性部分(例えば、医療グレードのステンレス鋼、金めっきなど)を含んでもよく、エネルギー源に電気的に結合するように構成されてもよい。電極を望ましくない組織内に又は該組織の近位に配置した後、動作電位を電極に印加すると電場が形成され、望ましくない組織が電場に暴露され得る。
【0020】
この開示と共に使用されるのに適した種々の電極設計は、開示全体が参照により全体として本明細書に組み込まれる、2008年1月15日に出願された「IN−LINE ELECTROSURGICAL FORCEPS」と題する同一所有者の米国特許出願公開第2009/0182332 A1号、及び、開示全体が参照により全体として本明細書に組み込まれる、2007年10月31日に出願された「ENDOSCOPIC OVERTUBES」と題する同一所有者の米国特許出願公開第2009/0112063 A1号に記載されている。
【0021】
図1を参照すると、電気手術システム10が示される。電気手術システム10は、例えば、病変組織、癌、悪性及び良性腫瘍、腫瘤、病変、並びに組織処置領域内の他の異常組織増殖などの望ましくない組織を、電気エネルギーを使用して処置するために利用されてもよい。電気手術システム10は、電気エネルギーを使用して、組織処置領域内の転移病巣、腫瘍、破断、感染部位、及び炎症部位を含むいくつかの病変及び骨病理を処置するように構成されてもよい。電気手術システム10は、組織処置領域に達するように、患者の自然身体開口部(例えば、口、肛門、及び膣)内に位置決めされ、かつ/又は内部体腔又は空洞(例えば、食道、胃、腸、結腸、頚部、及び尿道)を通して進められるように構成されてもよい。電気手術システム10は、トロカールを使用して患者の皮膚又は腹壁を通して形成された小切開部又はキーホール内に位置決めされ、これらに通されて、組織処置領域に到達するように構成されてもよい。組織処置領域は、患者の脳、肺、乳房、肝臓、胆嚢、膵臓、前立腺内、食道、胃、腸、結腸、動脈、静脈、肛門、膣、子宮頚部、輸卵管及び腹膜腔により画成される様々な体内管腔内に位置し得る。電気手術システム10は、内視鏡、腹腔鏡、胸腔鏡、小切開部若しくはキーホールを介した開放外科手技、経皮的手法、皮膚貫通的手法、及び/若しくは外部非侵襲的手法、又はそれらの任意の組み合わせと共に使用されてもよい。
【0022】
組織処置領域内又は当該領域に近接して位置決めされた後、電気手術システム10を動作させて(例えば、通電して)、望ましくない組織を処置することができる。一実施形態において、電気手術システム10は、経口的にアクセスし得る胃腸管、食道、肺、及び/又は胃内の疾病組織を処置するように構成されてもよい。別の実施形態では、電気手術システム10は、例えばNOTE(商標)などの越管腔アクセス技術を使用してアクセスできる肝臓又は他の器官内の望ましくない組織を処置するように適合されてもよく、この場合、電気手術システムは、最初に自然身体開口部を通して導入され、次に内部体腔の壁を突き刺すことによって組織治療部位まで進められてもよい。種々の実施形態において、電気手術システム10は、経皮的に、皮膚貫通的に、経管腔的に、最小侵襲的に、及び/若しくは開放外科技術を介して、又はそれらの任意の組み合わせにより配置された1つ又は2つ以上の電極を使用して、脳、肺、乳房、肝臓、胆嚢、膵臓又は前立腺内の望ましくない組織を処置するように適合させることができる。
【0023】
図1を参照すると、電気手術システム10は、Olympus Corporationから入手可能なGIF−100モデル等の、可撓性の内視鏡12、並びに剛性の内視鏡、腹腔鏡、又は胸腔鏡と共に使用することができる。一実施形態において、内視鏡12は、結腸を通して経肛門的に、食道及び胃を通して経口腔的に、子宮頚部を通して経膣的に、皮膚貫通的に、又は腹部内に形成された外部切開部若しくはキーホールを介して、トロカールと共に組織処置領域に導入することができる。電気手術システム10は、内視鏡12を使用して、組織処置領域内へ又は当該領域に近接して挿入されかつガイドされ得る。他の実施形態では、内視鏡12を利用せず、その代わりに、例えば、超音波又はコンピュータ断層撮影(CT)走査などの他の技術を使用して、処置の際の適切な機器配置を決定してもよい。
【0024】
図1に示されるように、内視鏡12は、内視鏡ハンドル34と、細長い比較的可撓性のシャフト32とを備える。可撓性シャフト32の遠位端は、光源及び覗き窓を備えていてもよい。必要に応じて、可撓性シャフト32は、例えば、電気手術システムなどの種々の機器を収容するための1つ又は2つ以上のチャネルを規定してもよい。覗き窓の視野内の画像は、例えば、通常は内視鏡12内に位置する電荷結合素子(CCD)を有するカメラ等の光学装置により受信され、患者外部の表示モニター(図示せず)に伝送される。一実施形態において、電気手術システム10は、複数の導電体18、起動スイッチ62を含むハンドピース16、並びに、起動スイッチ62及び電気手術システム10に電気的に結合された電気波形発生器等のエネルギー源14を含んでもよい。電気手術システム10は、比較的可撓性の部材又はシャフト22(
図4)を備え、シャフト22は、開放切開部やトロカールなどの前述の技術のいずれかを用いて、内視鏡12のチャネルの1つ又は2つ以上を介して、経皮的に又は皮膚貫通的に組織処置領域に導入されてもよい。
【0025】
図1〜
図4を参照すると、第1及び第2の電極24a、bなどの1個又は2個以上の電極(例えば、針電極、バルーン電極)は、電気手術システム10の遠位端から突出してもよい。第1の電極24aは正極として構成されてもよく、第2の電極24bは負極として構成されてもよい。第1の電極24aは、起動スイッチ62を介してエネルギー源14の正端子に結合されてもよい第1の導電体18a、又は同様の導電性リード若しくはワイヤに電気的に接続されてもよい。第2の電極24bは、起動スイッチ62を介してエネルギー源14の負端子に結合されてもよい第2の導電体18b、又は同様の導電性リード若しくはワイヤに電気的に接続されてもよい。導電体18a、bは、それぞれの電極24a、bに対する電気接続を除いて、互いに及び周囲の構造体から電気的に絶縁されてもよい。
【0026】
特定の実施形態において、電気手術システム10は、内視鏡12(腹腔鏡又は胸腔鏡)、開放外科手技、及び/又は外部及び非侵襲的医療手技を用いて、組織処置領域内又は当該領域の近くに導入されるように構成され得る。電極24a、bは、本明細書では内視鏡電極又は腹腔鏡電極と称される場合があるが、その変形物を皮膚貫通的に又は経皮的に挿入することができる。種々の実施形態では、電極24a、bの一方又は両方は、可撓性シャフト22内に規定されたカニューレ、ルーメン、又はチャネルの内外に摺動可能に移動するように適合及び構成されてもよい。
【0027】
電極24a、bが組織処置領域内に又は該領域に近接して所望の位置に配置されると、電極24a、bは、ハンドピース16上の起動スイッチ62を起動又は停止することにより、エネルギー源14に接続されるか又はエネルギー源14から接続解除され得る。起動スイッチ62は、手動で操作されてもよく、又は例えば足踏みスイッチ(図示せず)上に取り付けられてもよい。電極24a、bは、望ましくない組織に電場パルスを供給してもよい。電場パルスは、例えば、パルス波形、振幅、周波数、パルス幅(持続時間)、及びパルスの総数などの各種パラメータによって特徴付けられることがある。
【0028】
図4を参照すると、保護スリーブ又はシース26は、可撓性シャフト22上でかつハンドル28内に摺動可能に配置されてもよい。別の実施形態では、シース26は、可撓性シャフト22及びハンドル28内に摺動可能に配置されてもよい。シース26は、摺動可能であってよく、電気手術装置10がトロカールを通って前進したときにトロカールを保護し偶発的な貫通をぐために電極24a、bの上に配置されてもよい。電極24a、bの一方又は両方は、可撓性シャフト22内に形成されたカニューレ、ルーメン、又はチャネルの内外に摺動可能に移動するように適合され構成されてもよい。電極24a、bの一方又は両方は、適所に固定されてもよい。第2の電極24a、bのうちの1つは旋回軸を提供してもよく、この旋回軸の周囲を他の電極が組織処置領域内の他の地点へと弧を描くように移動して、電極24a、bの両方を1つの位置に固定することにより処置することができない、疾病組織のより大きい部分を処置することができる。一実施形態において、電極24a、bの一方又は両方は、内視鏡12の可撓性シャフト32内に形成された作業チャネルの内外に摺動可能に移動するように適合され構成されてもよく、又は内視鏡12とは独立して配置されてもよい。
【0029】
図1を参照すると、第1の導電体18a及び第2の導電体18bは、ハンドル28を通して設けることができる。第1の電極24aは、第1の電極24aを後退及び/又は前進させる摺動部材30を使用して、可撓性シャフト22の遠位端の内外に摺動可能に移動させてもよい。第2の電極24bは、第2の電極24bを後退及び/又は前進させる摺動部材30又は異なる摺動部材を使用して、可撓性シャフト22の遠位端の内外に摺動可能に移動させてもよい。電極24a、bの一方又は両方は、電極24a、bを前進及び後退させて電極24a、bを位置決めするために、摺動部材30又は追加の摺動部材に結合され得る。このようにして、可撓性シャフト22内に規定されたカニューレ、ルーメン、又はチャネル内で摺動可能に動くことができる第1及び第2の電極24a、bは、摺動部材30によって前進及び後退させてもよい。
図1に示されるように、第1の電極24aに結合された第1の導電体18aは、摺動部材30に結合されてもよい。このようにして、可撓性シャフト22内のカニューレ、ルーメン、又はチャネル内で摺動可能に移動することができる第1の電極24aを、摺動部材30により前進及び後退させることができる。一実施形態では、摺動部材30などの様々な摺動部材が、回転可能であってもよい。したがって、摺動部材30の回転により、電気手術システム10の遠位端にある対応する電極が回転され得る。
【0030】
図1を参照すると、トランスデューサ又はセンサ29は、電気手術システム10のハンドル28(又は、他の適切な位置)内に配置されて、電極24a、bが組織処置領域内の組織を貫通する力を検出する。このフィードバック情報は、電極24a、bの一方又は両方が、組織処置領域内に適切に挿入されたか否かを決定するのに役立つことができる。特に周知のように、癌腫瘍組織は健康組織よりも密な傾向があるため、典型的には、電極24a、bを内部に挿入するのにより大きい力を必要とすることがある。トランスデューサ又はセンサ29は、操作者、外科医、又は臨床医にフィードバックを提供して、電極24a、bが癌腫瘍内に配置された時を物理的に検出してもよい。トランスデューサ又はセンサ29により提供されるフィードバック情報は、エネルギー源14の内部又は外部のいずれかに位置した回路により処理され表示されることができる。センサ29の読み取り値は、電極24a、bが癌腫瘍内に適切に配置されたか否かを決定し、それにより電極24a、bの配置が好適な誤差の余裕度で達成されたことを確認するのに使用できる。センサ29の読み取り値を使用して、例えば、患者の筋肉短縮の強さの低減などの所望の結果を達成するためにパルスパラメータを調整する必要があるかどうかを決定することができる。
【0031】
図2を参照すると、電気手術システム10は、第1の電極24aを収容する第1の可撓性シャフト22aと、第2の電極24bを収容する第2の可撓性シャフト22bとを有してもよい。電気手術システム10は、第1の可撓性シャフト22a及び第2の可撓性シャフト22bの少なくとも一方の上に配置された第1の保護スリーブ又はシース(図示せず)を有してもよい。電気手術システム10は、第1の可撓性シャフト22aの上に配置された第1の保護スリーブ又はシース(図示せず)と、第2の可撓性シャフト22bの上に配置された第2の保護スリーブ又はシース(図示せず)とを有してもよい。第1の可撓性シャフト22aの長さは、第2の可撓性シャフト22bの長さと異なってもよい。第1の可撓性シャフト22aの長さは、第2の可撓性シャフト22bの長さ以上でもよい。第1の保護スリーブ又はシースの長さは、第2の保護スリーブ又はシースの長さと異なってもよい。第1の保護スリーブ又はシースの長さは、第2の保護スリーブ又はシースの長さ以上でもよい。
【0032】
図1〜
図4を参照すると、電気手術システム10は、温度及び圧力の少なくとも一方を測定するように構成され得る。トランスデューサ又はセンサの29は、温度センサ25(
図3)及び圧力センサ27(
図3)の少なくとも一方を含んでもよい。特定の実施形態では、温度センサ25及び圧力センサ27の少なくとも一方は、電気手術システム10内又はその近くに配置されてもよい。温度センサ25及び/又は圧力センサ27は、ハンドル28内に位置してもよい。温度センサ25及び/又は圧力センサは、保護スリーブ又はシース26内に位置してもよい。
図3の実施形態に示されるように、温度センサ25及び/又は圧力センサ27は、可撓性シャフト22内に位置してもよい。温度センサ25及び/又は圧力センサ27は、可撓性シャフト22の遠位端に配置されてもよい。保護スリーブ若しくはシース26及び/又は可撓性シャフト22は、組織処置領域の温度及び圧力の少なくとも一方を測定するように構成された1つ又は2つ以上の通気孔31を有してもよい。温度センサ25及び/又は圧力センサ27は、電極24a、b内に位置してもよい。圧力センサ27は、通気孔31のうちの少なくとも1つに隣接しもよい。一実施形態では、圧力センサ27は、通気孔31のうちの少なくとも1つに隣接してもよく、温度センサ25は、可撓性シャフト22の遠位端に配置されてもよい。
図4は、可撓性シャフト22の遠位端にある電極24aの中空ルーメン内に配置された光温度センサ29を含む電気手術システムの写真である。
【0033】
特定の実施形態では、温度センサ及び/又は圧力センサは、電気手術システム10と別個でもよい。電気手術システム10は、温度センサ25を含んでもよく、圧力センサは、電気手術システム10と別個でもよい。電気手術システム10は、圧力センサ27を含んでもよく、温度センサは、電気手術システム10と別個でもよい。
【0034】
特定の実施形態によれば、温度センサ25は、組織処置領域の温度を測定してもよい。温度センサ25は、望ましくない組織の温度を測定してもよい。温度センサ25は、電極の周囲の組織の温度を測定してもよい。温度センサ25は、処置前、処置中、及び/又は処置後の温度を測定してもよい。
【0035】
特定の実施形態によれば、圧力センサ27は、組織処置領域の圧力を測定してもよい。圧力センサ27は、電極間の空間の圧力を測定してもよい。圧力センサ27は、電極の周囲の圧力を測定してもよい。圧力センサ27は、処置前、処置中、及び/又は処置後の圧力を測定してもよい。
【0036】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、電気手術システム10は、処置組織に熱を加えずに又は最小限の熱を加えて、望ましくない組織内の細胞を処置しかつ/又は死滅させてもよく、したがって、細胞支持構造物又は局所脈管構造を破壊しないことがある。種々の実施形態では、電気手術システム10によって処置された組織の温度は、60℃以下に維持されてもよい。他の実施形態では、組織温度は、50℃以下に維持されてもよい。更に別の実施形態では、組織温度は、40℃以下に維持されてもよい。組織の温度は、
図4に示された温度センサを使用して監視されてもよい。
【0037】
一実施形態では、エネルギー源14の出力は電極24a、bに結合され、ハンドピース16上の起動スイッチ62、又は足起動ペダル(図示せず)上に取り付けられた起動スイッチを用いて電極24a、bに通電されてもよい。電気エネルギー源14が電極24a、bに結合されると、電極24a、bの遠位端に電場が形成され得る。
【0038】
電極24a、bは、0.5mm〜1.5mm、例えば、0.5mm、0.75mm、1mm、1.5mmなどの直径又は半径を有してもよい。種々の実施形態では、第1の電極24aの直径は、第2の電極24bの直径と異なってもよい。電極間隔は、0.5cm〜3cmであってよい。種々の実施形態では、第1の電極24aから第2の電極24bまでの距離は、0.5cm〜3cm、例えば1cm、1.5cm、2.0cm、3cmなどであってよい。一実施形態では、電気手術システム10は、複数の針電極を含んでもよい。
【0039】
特定の実施形態によれば、電気手術システム10は、例えば、トロカールを介して組織処置領域に導入されてもよく、又は皮膚貫通的に、経皮的に、若しくは他の適切な技術で組織処置領域に挿入されてもよい。一実施形態では、可撓性シャフト22内に規定されたカニューレ、ルーメン、又はチャネルは、組織の穿刺/穿孔を支援するために、ベベル又は他の鋭い刃などの刃先を有してもよい。
【0040】
図5は、本明細書に記載される特定の実施形態による、エネルギー源14によって生成された交流波形80のグラフ表示である。時間(t)を水平軸に沿って示し、電圧(VAC)を垂直軸に沿って示す。交流波形80は、基本周波数fと、ピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)とを有する。種々の実施形態では、交流波形80は、約330KHz〜約900KHzの範囲の基本周波数fと、約200VAC〜約12,000VACの範囲のピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)とを有してもよい。他の実施形態では、交流波形80は、約400KHz〜約500KHzの範囲の基本周波数fと、約5,000VAC〜約12,000VACの範囲のピーク・ピーク振幅電圧(VA
pp)とを有してもよい。一実施形態では、交流波形80は、500KHzの基本周波数fと、12,000VACのピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)とを有してもよい。
【0041】
エネルギー源14は、周囲組織への熱的損傷がないか最小の状態で処置領域内の多量の望ましくない組織を処置するために、交流波形80をパルスで生成して提供するように構成され得る。各パルスは、パルス周期T
1又はパルス周波数f
1=1/T
1で提供される持続時間T
wを有してもよい。エネルギー源14の出力にタイミング回路を結合して、電気パルスを生成することができる。タイミング回路は、電気パルスを生成するために、1つ又は2つ以上の好適なスイッチング要素を備えることができる。
【0042】
エネルギー源14は、いくつかのバーストで交流波形80を生成し提供するように構成されてもよく、各バーストは、いくつかのパルスを含む。治療レジメンは、処置組織の温度を最高温度より低く維持するのに十分な時間T
bだけ間隔の空いたいくつかのバーストを含んでもよい。バーストは、バースト周期T2又はバースト周波数f2=1/T2で提供され得る。パルスとバースト周波数の両方を特定の治療レジメン内で変更して、処置組織温度を最高温度より低く維持しながら標的組織を有効に処置することができる。
【0043】
図6は、エネルギー源14によって生成され提供される交流波形80の電気パルスのバーストのグラフ表示である。時間(t)を水平軸に沿って示し、電圧(VAC)を垂直軸に沿って示す。波形80は、基本周波数fと電圧ピーク・ピーク振幅(VA
pp)とを有する。この例示的な実施形態では、バーストは、3つのパルスを含む。各パルスは、パルス周期T
1又はパルス周波数f
1=1/T
1で提供される持続時間T
wを有する。当業者は、電圧ピーク・ピーク振幅(VA
pp)、及び/又は基本周波数f、パルス幅T
w、及び/又はパルス周波数f
1を変化させることによって、各バーストによって組織に提供される総エネルギーを変化させることができることを理解するであろう。
【0044】
種々の実施形態では、各パルスは、約5マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲のパルス持続時間T
wを有してもよい。他の実施形態では、各パルスは、約10マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲のパルス持続時間T
wを有してもよい。一実施形態では、各パルスは、20マイクロ秒のパルス持続時間T
wを有してもよい。種々の実施形態では、パルスは、約1Hz〜約500Hzの範囲のパルス周波数f
1で提供され得る。特定の実施形態では、パルス周波数f
1は、約1Hz〜約100Hzの範囲でもよい。一実施形態では、パルス周波数f
1は、例えば4Hzでもよい。
【0045】
図7は、エネルギー源14によって生成され提供された電気パルスの複数のバーストのグラフ表示である。時間(t)を水平軸に沿って示し、電圧(VAC)を垂直軸に沿って示す。この例示的な実施形態では、エネルギー源14は、波形80を3つのバーストで生成し提供する。各バーストは、4つのパルスを含む。各パルスは、パルス周期T又はパルス周波数f
1=1/T
1で提供される持続時間T
wを有する。更に、バーストは、処置組織の温度を最高温度より低く維持するのに十分な時間T
bだけ間隔が空いている。バーストは、バースト周波数f
2=1/T
2で繰り返す。
【0046】
種々の実施形態では、バーストは、約0.02Hz〜約500Hzの範囲のバースト周波数f
2で繰り返してもよい。特定の実施形態では、バースト周波数f
2は、約1Hz〜約100Hzの範囲でもよい。治療レジメンで生成され提供されるバーストの数は、組織温度を最高温度より低く維持するように変更されてもよい。バーストの数は、約1〜約100のバーストの範囲でもよい。特定の実施形態では、バーストの数は、約5〜約50のバーストの範囲でもよい。
【0047】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、一態様では、温度は、電極間の距離に関連し得る。
図8に示されるように、電極間隔が1.5cmのとき、正極で51℃の最高温度が生成され、電極間隔が1.0cmのとき、正極で約59℃の最高温度が生成された。
図8に示されるように、電極間の距離が小さいほど温度が上昇する。温度はまた、電気手術システム10によって組織に提供される総エネルギーと関連している。特定の治療レジメンにおいて、波形80の各種パラメータは、処置組織の望ましくない過熱なしに有効な処置を保証するように変更され得る。
【0048】
種々の実施形態では、電気手術システム10は、処置患者の筋収縮がないか最小の状態で、望ましくない組織内の細胞を処置しかつ/又は死滅させることができる。神経細胞及び筋細胞が電気的に興奮性であること、即ち、電流によって刺激され得ることは周知である。神経細胞及び筋細胞の電界に対する感受性は、それらの細胞膜内にある電位依存イオンチャネルによるものであると考えられている。患者においては、そのような刺激は、鋭い苦痛、筋肉けいれん、更には心停止を引き起こすことがある。典型的には、電気的刺激に対する感受性は、周波数の増大と共に減少する。更に、神経細胞及び筋細胞は直流に対してより感受性があると考えられている。筋肉及び神経刺激の効果を最小にするため、電気手術システム10は、例えば約330KHz〜約900KHzの範囲の高い基本周波数fと、約200VAC〜約12,000VACのピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)で動作する二相交流波形の電気的パルスを生成し提供するように構成され得る。
【0049】
種々の実施形態では、患者は麻酔薬を投与することなく電気手術システム10で治療され得る。患者が単相パルスで処置される場合、骨格筋短縮と心臓事象を減少させるために、一般に麻酔薬が投与される。
【0050】
図9及び
図10は、
図9では単相パルスによって処置され、
図10では電気手術システム10によって処置された、ブタモデルの筋収縮の激しさのグラフ表示である。時間(t)を水平軸に沿って示し、電圧(V)を垂直軸に沿って示す。各処置は、麻酔薬がない状態でブタ肝臓内に1.5cm離間された2本の針によって経皮的に提供された。標準BIOPACシステム(カリフォルニア州ゴリータのBIOPAC Systems Inc.から容易に入手可能)を使用して、各処置に応じた筋電活性の変化を記録した。
図9は、2つの単層バーストを適用した際の筋収縮の激しさを示す。それと比較して、
図10は、電気手術システム10によって生成され提供された2つのバーストを適用した際の筋収縮の激しさを示す。この例では、電気手術システム10は、500KHzの基本周波数fで動作する交流波形の2つのバーストを生成し提供するように構成された。各記録の電圧振幅の変化は、筋電活性の変化に対応する。
図9と
図10の比較から明らかなように、麻酔薬のない状態での筋収縮の激しさは、単相パルスの事例では桁違いに大きい。
【0051】
図1を参照すると、エネルギー源14は、可変電圧電源、可変電圧電源によって充電されるコンデンサ、及びコンデンサからエネルギーを受け取るスイッチング増幅器を含んでもよい。スイッチング増幅器は、組織を処置する際の患者の筋収縮がないか最小の状態で組織内の非熱的細胞死を引き起こすことによって、組織を処置することこができる二相高周波(RF)波形のパルスを出力するように構成され得る。
【0052】
スイッチング増幅器は、第1の動作段階と第2の動作段階とを有するフルブリッジ増幅器である。フルブリッジ増幅器は、第1の動作段階で正電圧を出力し、第2の動作段階で負電圧を出力するように構成され得る。更に、フルブリッジ増幅器は、第1の動作段階と第2の動作段階を交互に繰り返すように構成され得る。フルブリッジ増幅器は、4つのスイッチング脚を有することができる。各スイッチング脚は、少なくとも1個のスイッチング要素と、少なくとも1個のスイッチング要素を制御する少なくとも1つの駆動回路とを有してもよい。特定の実施形態では、エネルギー源14は、更に、第1の動作段階でスイッチング脚の少なくとも2つの駆動回路を同時に駆動し、第2の動作段階で少なくとも2つの他のスイッチング脚の駆動回路を同時に駆動する駆動ロジックを含むことができる。
【0053】
エネルギー源14は、更に、エネルギー入力側とエネルギー出力側とを有する絶縁変圧器を含むことができる。エネルギー入力側は、スイッチング増幅器からエネルギーを受け取るように構成され得る。絶縁変圧器は、エネルギー入力側からエネルギー出力側への低周波数エネルギーの誘導を最小にするように構成され得る。少なくとも1つの実施形態では、エネルギー源14は、更に、スイッチング増幅器の出力から低周波数エネルギーを除去するように構成された阻止コンデンサを含んでもよい。
【0054】
種々の実施形態では、エネルギー源14は、
図11に示されるような構成を有してもよく、エネルギー源14は、システム入出力(I/O)基板102、可変電圧電源104、及びスイッチング増幅器106を有してもよい。電源104は、約0VDC〜約3000VDCの範囲の電圧振幅を有する高圧直流(DC)電源でもよい。エネルギー源14は、更に、電源104の出力を制御するシステム入出力(I/O)基板102を含んでもよい。システム入出力基板102とやり取りして電源104の直流電圧出力量を設定するために、コンピュータインタフェースが使用されてもよい。
【0055】
種々の実施形態では、電源104は、数個のコンデンサ109を充電してもよい。特定の実施形態では、コンデンサ109は、大量のエネルギーを蓄えるように構成される。そのような目的に適したコンデンサ109には、大きいバンク、高品質、高パルス電流で金属化されたポリプロピレンコンデンサが挙げられる。コンデンサ109は、スイッチング増幅器106の「オフ」時間の間に電源104によって充電され得る。スイッチング増幅器106を「オン」位置に切り替える際、コンデンサ109は、スイッチング増幅器106内に蓄えられたエネルギーを放出してもよい。
【0056】
特定の実施形態では、
図11に示されるように、スイッチング増幅器106は、フルブリッジ増幅器として構成され得る。少なくとも1つの実施形態では、スイッチング増幅器106は、クラスDフルブリッジ増幅器として構成され得る。スイッチング増幅器106は、いくつかのスイッチング脚111を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、
図11に示されるように、スイッチング増幅器は、4つのスイッチング脚111を有することができる。各スイッチング脚111は、電力バイポーラ電界効果トランジスタ(BiFET)108と、関連した駆動回路110とを含むことができる。例として、
図11に示されるように、各スイッチング脚111は、3個の電力BiFET 108と、関連した駆動回路110とを含むことができる。特定の実施形態では、電源104からの高電圧ストレスに耐えることができるように、各スイッチング脚111の電力BiFET 108は、直列に構成され得る。とはいえ、並列などの他の構成が本開示の範囲から除外されるべきでない。特定の実施形態では、スイッチング脚111は、電源104によって充電されたコンデンサ109からエネルギーを出力回路に効率的に移すために、クラスD動作で同時にオンになってよい。
【0057】
特定の実施形態では、
図11に示されるように、スイッチング増幅器106は、第1動作段階(段階1)と第2の動作段階(段階2)で構成される。特定の実施形態では、スイッチング増幅器106は、段階1で正電圧を出力し、段階2で負電圧を出力するように構成される。ドライバロジック102は、適切な時間に各位相を操作するように構成され得る。特定の実施形態では、ドライバロジック102は、段階1と段階2を交互に繰り返すように構成される。
【0058】
特定の実施形態では、段階1は、コンデンサ109の充電後に開始される。段階1の間、出力トランス112の一方の側で正電圧が生成され得る。段階2は、段階1が終了した後で開始される。段階2の間、出力トランスと同じ側で負電圧が生成され得る。特定の実施形態では、段階1と段階2の非重複時間は、段階2が開始されるときに通過電流がないことを保証する。ほとんどの場合、非重複時間はきわめて小さいので、出力波形では見ることができない。追加の反重複時間は、サイクルの繰り返し前に適用されてもよい。スイッチング増幅器106の出力は、スイッチング二相波形である。
【0059】
特定の実施形態では、出力トランス112は、絶縁変圧器でもよい。少なくとも1つの実施形態では、出力トランス112は、出力波形の電圧を2倍にすることができる1:2絶縁変圧器でよい。例えば、コンデンサ109が3000VDCに充電された場合、出力トランス112は、出力波形の電圧を6000V正ピークと6000V負ピークに高めることができる。特定の実施形態では、出力トランス112は、二重絶縁材料で絶縁された一次巻線113と二次巻線115とを含むことができる。一次巻線113を二次巻線115から絶縁することにより、出力トランス112の一次巻線113に含まれる直流電圧特性から二次巻線115が保護され絶縁される。そのような絶縁は、低周波数エネルギーをなくすのに役立つことがある。
【0060】
特定の実施形態では、
図11に示されるように、出力トランス112の各脚は、阻止コンデンサ116に接続される。阻止コンデンサ116は、エネルギー源14が高周波二相電流を処置組織に提供することを保証するために、高周波エネルギーを通過させ、低周波数エネルギーを阻止するように構成され得る。
【0061】
種々の実施形態では、エネルギー源14は、組織温度を監視するためのサーミスタを含んでもよい。
図11に示されるように、第1のサーミスタ118は、正リード線で使用され、第2のサーミスタ120は、負リード線で使用される。絶縁された熱検出回路122は、温度を記録し、この情報をシステムI/O基板102に報告してもよい。次に、この情報を処理し、エネルギー源14の出力を調整して適切な温度を維持することができる。
【0062】
種々の実施形態では、エネルギー源14は、スイッチング増幅器106を通る電流を監視する電流センサを含んでもよい。
図11に示されるように、電流センサ124は、電流検出回路126と、電流検出絶縁変圧器128とを含んでもよい。電流センサは、動作電流が過剰量に達した場合にシステムを終了することによって、スイッチング増幅器106のBiFET 108を電力過負荷から保護する。
【0063】
本明細書に記載した電気手術システムの実施形態は、最小侵襲性又は開放外科的手法を用いて患者内部に導入することができる。場合によっては、最小侵襲性及び開放外科的手法の組み合わせを利用して、電気手術システムを患者内部に導入することが有利である場合がある。最小侵襲性手法は、診断及び治療手技のために、より正確で効率的な処置領域へのアクセスを提供することができる。患者内の内部処置領域に到達させるために、本明細書に記載した電気手術システムを、例えば口、肛門、及び/又は膣等の身体の自然開口部を通して挿入できる。患者の自然開口部を通して患者内へ様々な医療装置を導入することにより行われる最小侵襲性手技は、NOTES(商標)手技として公知である。電気手術システム等の外科装置を、内視鏡の作業チャネルを通して処置領域へ導入して、例えば、不可逆的エレクトロポレーションエネルギーを使用した組織の電気手術を含む主要な外科活動(key surgical activities)(KSA)を行うことができる。電気手術システムのいくつかの部分は、経皮的に又は小さい−キーホール−切開部を通して、組織処置領域に導入され得る。
【0064】
内視鏡最小侵襲性外科及び診断医療手技は、小さいチューブを身体に挿入することにより内部器官を評価及び処置するのに使用される。内視鏡は、剛性又は可撓性チューブを有し得る。可撓性内視鏡は、自然身体開口部(例えば、口、肛門、及び/又は膣)のいずれかを通して導入できる。剛性の内視鏡をトロカールにより、比較的小さい−キーホール−切開部(通常0.5〜1.5cm)を通して導入できる。内視鏡を使用して、病変等の異常組織又は疾病組織を含む内部器官の表面状態、及び他の表面状態を観察し、目視検査及び写真のために画像を取得することができる。内視鏡は、チャネルにより処置領域に医療用器具を導入して、生検を採取し、異物を回収し、及び/又は外科的手技を行うように適合及び構成されてもよい。
【0065】
電気手術システムをヒト身体内に挿入した後、経器官又は経管腔的外科的手技を用いて内部器官に到達させることができる。内視鏡経管腔的アクセス技術を用いて電気手術システムを処置部位まで前進させて管腔を穿孔した後、電気手術システム及び内視鏡を腹膜腔内に前進させてもよい。管腔壁を穿孔し、該管腔壁を通して内視鏡を挿入及び前進させる経管腔的アクセス手技と、腹膜腔を通気し、穿孔した管腔壁を閉鎖又は縫合する気腹装置は周知である。経管腔的アクセス手技中、胃壁内又は胃腸管内に穿刺による穴を形成して、腹膜腔にアクセスする必要がある。そのような穴の形成に度々使用される1つの装置はニードルナイフであり、このニードルナイフは、内視鏡のチャネルを通して挿入され、またエネルギーを使用して組織を貫通する。次に、内視鏡を通してガイドワイヤを送り込み、胃壁内の穴を通って腹膜腔内へ通過させる。ニードルナイフを除去し、ガイドワイヤを位置ホルダーとして残留させる。次に、バルーンカテーテルをガイドワイヤ上に通過させ、内視鏡のチャネルを通してバルーンを胃壁内の開口部内に配置する。次に、バルーンを膨張させて開口部の寸法を増大させることにより、内視鏡がバルーンの後部を押して、開口部を通って腹膜腔内に送り込まれるのを可能にする。内視鏡が腹膜腔内に配置された後、内視鏡のチャネルを介して多数の手技を行うことができる。
【0066】
内視鏡をビデオカメラ(単一のチップ又は多数のチップ)に接続してもよく、また「冷」光源(ハロゲン又はキセノン)に接続された光ファイバーケーブルシステムに取り付けて、手術領域を照らすことができる。ビデオカメラは、処置領域の直接的な見通し線視界を提供する。腹部で作業する場合、作業空間と観察空間を作り出すために、腹部に二酸化炭素(Co
2)ガスが吹き込まれてもよい。腹部は、本質的に(吹き込まれた)風船のように膨らませられ、内臓の上の腹壁がドーム状に持ち上げられる。CO
2ガスが使用されるのは、人体にとって日常的なものであり、また組織に吸収された場合に呼吸器系によって除去できるからである。
【0067】
電気手術システムが標的部位に配置された後、本明細書にて論じた電極の種々の実施形態を使用して、疾病組織を電気的にアブレーション又は破壊できる。電極の配置及び位置は、有効かつ効率的な電気手術療法にとって重要であり得る。例えば、電極は、内視鏡的又は皮膚貫通的(経皮的)のいずれかにより、処置領域(例えば、標的部位又は作業部位)の近位に配置できる。いくつかの実施態様では、内視鏡的、皮膚貫通的、及び/又は開放技術の組み合わせを用いて、電極を患者内部に導入することが必要な場合がある。電極は、内視鏡のチャネル、オーバーチューブ、又はトロカールを通して組織処置領域に導入することができ、またいくつかの実施態様では、経皮的に又は小さい−キーホール−切開部を通して導入することができる。
【0068】
好ましくは、本明細書に記載される装置の種々の実施形態は、外科処置の前に処理される。初めに、新しい又は使用済みの器具が得られ、必要に応じて洗浄される。次いで器具を滅菌してもよい。1つの滅菌法では、プラスチック又はTYVEK(登録商標)バッグなどの、閉鎖かつ密閉された容器に器具を入れる。次いで容器及び器具を、ガンマ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を貫入することができる放射線野の中に置く。放射線は、器具上及び容器内のバクテリアを死滅させる。滅菌された器具は、その後、無菌容器内で保管することができる。こうした密封容器により、医療施設において開封されるまで器具が無菌状態に保たれる。
【0069】
本明細書で述べる種々の実施形態は、以下の代表例と共に読まれたときによりよく理解され得る。以下の例は、限定ではなく説明のためのものである。
【0070】
電気手術システムは、交流波形発生器を備えたエネルギー源に結合された第1の電極と第2の電極とを含み、特定の実施形態による温度センサが、一連の電気バーストの交流波形80を生体外で健康なブタ肝臓に提供するために使用された(照射量1)。
図12に示されるように、照射量1は、100個のバーストを含む。各バーストは、バースト周期T
2、即ち、0.5Hzのバースト周波数f2=1/T
2を有する。各バーストは、2個のパルスを含む。各パルスは、パルス周期T
1又は4Hzのパルス周波数f
1=1/T
1で提供された20マイクロ秒の持続時間T
wを有する。交流波形80は、500KHzの基本周波数で動作し、12,000Vのピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)を有する。温度は、
図4に示された温度センサを使用して監視され、60℃以下に維持された。
図13は、照射量1で処置した後のブタ肝臓の写真を含む。この例では、第1及び第2の電極は、1.5cmの間隔で位置決めされた。
【0071】
電気手術システムは、交流波形発生器を備えたエネルギー源に結合された第1及び第2の電極を含み、特定の実施形態による温度センサが、一連の電気的バーストの交流波形80を生体外で健康なブタ肝臓に提供するために使用された(照射量2)。
図14に示されるように、照射量2は、60個のバーストを含むことがある。各バーストは、バースト周期T
2、即ち、0.2Hzのバースト周波数f2=1/T
2を有する。各バーストは、5個のパルスを含む。各パルスは、パルス周期T
1又は4Hzのパルス周波数f
1=1/T
1で提供された20マイクロ秒の持続時間T
wを有する。交流波形80は、500KHzの基本周波数で動作し、12,000Vのピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)を有する。温度は、
図4に示された温度センサを使用して監視され、60℃以下に維持された。
図15は、照射量2で処置した後でブタ肝臓の写真を含む。この例では、第1及び第2の電極は、1.5cm間隔で位置決めされた。
【0072】
電気手術システムは、交流波形発生器を備えたエネルギー源に結合された第1及び第2の電極を含み、特定の実施形態による温度センサが、一連の電気パルスで交流波形80を生体外で健康なブタ肝臓に提供するために使用された(照射量3)。
図16に示されるように、照射量3は、250個のパルスを含む。各パルスは、パルス周期T
1又は500Hzのパルス周波数f
1=1/T
1で提供される20マイクロ秒の持続時間T
wを有する。交流波形80は、500KHzの基本周波数で動作し、12,000Vのピーク・ピーク電圧振幅(VA
pp)を有する。温度は、
図4に示された温度センサを使用して監視され、60℃以下に維持された。
図17は、照射量3で処置した後のブタ肝臓の写真を含む。この例では、第1及び第2の電極は、1.5cm間隔で位置決めされた。
【0073】
本明細書に開示されている装置は、単回使用の後に廃棄するよう設計することができ、又は複数回使用するよう設計することができる。ただし、いずれの場合にも、装置は、少なくとも1回使用後に再使用されるように再調整することができる。再調整は、装置を分解すること、それに続く特定の要素を洗浄又は交換すること、及びその後再組立することの任意の組合せを含むことができる。具体的には、装置を分解することができ、装置の任意の数の特定の要素又は構成要素を、任意の組み合わせで選択的に交換又は除去することができる。特定の構成要素を洗浄及び/又は交換すると、再調整施設で、又は外科処置の直前に外科チームによって、後で使用できるように装置を再組立することができる。装置の再調整では、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術が利用され得ることが、当業者には理解されよう。このような技術の使用、及びその結果として得られる再調整された装置は、全て、本出願の範囲内にある。
【0074】
好ましくは、本明細書に記載されている種々の実施形態は、手術の前に処理されている。初めに、新しい又は使用済みの器具を入手し、必要に応じて洗浄する。次いで器具を滅菌してもよい。1つの滅菌法では、プラスチック又はTYVEKバッグなどの閉鎖されかつ密封された容器に器具を入れる。次いで容器及び器具を、ガンマ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を貫入することができる放射線野の中に置く。放射線は、器具上及び容器内のバクテリアを死滅させる。滅菌された器具は、その後、無菌容器内で保管することができる。こうした密封容器により、医療施設において開封されるまで器具が無菌状態に保たれる。
【0075】
装置を滅菌することが好ましい。これは、β又はγ線、エチレンオキシド、蒸気、オートクレーブ滅菌、滅菌液への浸漬、又は他の既知の方法を含む当業者が既知の任意数の方法によって行われ得る。
【0076】
種々の実施形態が本明細書で記載されてきたが、これらの実施形態に多くの改変及び変形を実施することができる。例えば、異なるタイプのエンドエフェクタを使用してもよい。また、特定のコンポーネントについて材料が開示されたが、他の材料を使用することが可能である。以上の説明及び以下の「特許請求の範囲」は、このような改変及び変形を全て有効範囲とするものである。
【0077】
全体又は部分において、本明細書に参照により援用されると称されるいずれの特許、刊行物、又は他の開示物も、組み込まれた事物が既存の定義、記載、又は本開示に記載されている他の開示物と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。このように及び必要な範囲で、本明細書に明示的に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれた任意の矛盾する事物に取って代わるものとする。本明細書に参照により援用するものとされているが、既存の定義、記載、又は本明細書にされている他の開示物と矛盾するすべての事物、又はそれらの部分は、援用されたものと既存の開示物との間で抵触が起こらない範囲においてのみ、本明細書に組込まれる。
【0078】
〔実施の態様〕
(1) 電気手術システムであって、
エネルギー源と、
前記エネルギー源に結合するように構成された第1端と、電気接触する組織にエネルギーを提供するように構成された第2導電端と、をそれぞれ有する第1及び第2の電極と、を有し、前記エネルギー源が、二相高周波(RF)波形のパルスを生成し前記第1及び第2の電極の前記第2導電端に提供する働きをし、前記パルスが、前記第1及び第2の電極の前記第2導電端と電気接触した組織内の非熱的細胞死を引き起こす、電気手術システム。
(2) 前記エネルギー源が、交流(AC)波形発生器を含む、実施態様1に記載の電気手術システム。
(3) 前記二相高周波(RF)波形が、約330KHz〜約900KHzの基本周波数で動作する、実施態様1に記載の電気手術システム。
(4) 前記二相高周波(RF)波形が、約200ACV〜約12,000ACVのピーク・ピーク電圧振幅を有する、実施態様1に記載の電気手術システム。
(5) 前記エネルギー源が、前記パルスを生成して前記第1及び第2の電極の前記第2導電端にバーストで提供する働きをする、実施態様1に記載の電気手術システム。
【0079】
(6) 前記バーストのうちの各バースト内の前記パルスが、約1Hz〜約500Hzのパルス周波数で繰り返すよう構成された、実施態様5に記載の電気手術システム。
(7) 前記バーストが、約0.02Hz〜約500Hzのバースト周波数で繰り返すよう構成された、実施態様5に記載の電気手術システム。
(8) 前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つに隣接配置された温度センサを更に含む、実施態様1に記載の電気手術システム。
(9) 前記パルスが、前記組織を処置する際に患者の筋収縮を引き起こさないか最小にする、実施態様1に記載の電気手術システム。
(10) 電気手術システムであって、
エネルギー源と、
前記エネルギー源と結合するように構成された第1端と、電気接触する組織にエネルギーを提供するように構成された第2導電端と、をそれぞれ有する第1及び第2の電極と、を有し、前記エネルギー源が、二相高周波(RF)波形のパルスを生成して前記第1及び第2の電極の前記第2導電端に提供する働きをし、前記パルスが、前記第1及び第2の電極の前記第2導電端と電気接触した組織内の細胞膜にわたって電位の変化(change in voltage potential)を引き起こす、電気手術システム。
【0080】
(11) 前記エネルギー源が、交流(AC)波形発生器を含む、実施態様10に記載の電気手術システム。
(12) 前記二相高周波(RF)波形が、約330KHz〜約900KHzの基本周波数で動作する、実施態様10に記載の電気手術システム。
(13) 前記二相高周波(RF)波形が、約200ACV〜約12,000ACVのピーク・ピーク電圧振幅を有する、実施態様10に記載の電気手術システム。
(14) 前記エネルギー源が、前記パルスを生成して前記第1及び第2の電極の前記第2導電端にバーストで提供する働きをする、実施態様10に記載の電気手術システム。
(15) 前記バーストのうちのそれぞれのバースト内の前記パルスが、約1Hz〜約500Hzのパルス周波数で繰り返すように構成された、実施態様10に記載の電気手術システム。
【0081】
(16) 前記バーストが、約0.02Hz〜約500Hzのバースト周波数で繰り返すように構成された、実施態様10に記載の電気手術システム。
(17) 前記第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つに隣接配置された温度センサを更に含む、実施態様9に記載の電気手術システム。
(18) 前記パルスが、前記組織を処置する際に患者の筋収縮を引き起こさないか最小にする、実施態様9に記載の電気手術システム。
(19) 電気手術システムと共に使用するためのエネルギー源であって、
可変電圧電源と、
前記可変電圧電源によって充電される少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサからエネルギーを受け取るスイッチング増幅器と、を含み、前記スイッチング増幅器が、二相高周波(RF)波形のパルスを出力するように構成され、前記パルスが、組織を処置する際に患者の筋収縮がないか最小の状態で前記組織内の非熱的細胞死を引き起こすことによって前記組織を処置することができる、エネルギー源。
(20) 前記スイッチング増幅器が、第1の動作段階と第2の動作段階とを有するフルブリッジ増幅器であり、前記フルブリッジ増幅器が、前記第1の動作段階で正電圧を、また、前記第2の動作段階で負電圧を出力するように構成され、前記フルブリッジ増幅器が、前記第1の動作段階と前記第2の動作段階を交互に繰り返すように構成された、実施態様19に記載のエネルギー源。
【0082】
(21) 前記スイッチング増幅器が、少なくとも1つのスイッチング要素と、前記少なくとも1つのスイッチング要素を制御する少なくとも1つの駆動回路と、をそれぞれ含む少なくとも4つのスイッチング脚を含む、実施態様19に記載のエネルギー源。
(22) 第1の動作段階において前記スイッチング脚のうちの少なくとも2つの前記駆動回路を同時に駆動し、第2の動作段階において少なくとも2つの他のスイッチング脚の前記駆動回路を同時に駆動する駆動ロジックを更に含む、実施態様21に記載のエネルギー源。
(23) エネルギー入力側とエネルギー出力側を有する絶縁変圧器を更に含み、前記エネルギー入力側が、前記スイッチング増幅器からエネルギーを受け取り、前記絶縁変圧器が、前記エネルギー入力側から前記エネルギー出力側への低周波数エネルギーの誘導を最小にするように構成された、実施態様19に記載のエネルギー源。
(24) 前記スイッチング増幅器の前記出力から低周波数エネルギーを除去するように構成された少なくとも1つの阻止コンデンサを更に含む、実施態様19に記載のエネルギー源。
(25) 前記スイッチング増幅器に送られる電流量が所定の最大値よりも確実に低いままになるようにする電流監視要素を更に含む、実施態様19に記載のエネルギー源。