特許第6297573号(P6297573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297573
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】物質曝露装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20180312BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20180312BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20180312BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   C12M1/00 A
   C12Q1/00
   G01N37/00 101
   G01N37/00 102
【請求項の数】20
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2015-531403(P2015-531403)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2015-528574(P2015-528574A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】AU2012001094
(87)【国際公開番号】WO2013036997
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】503319102
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ クィーンズランド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョン・クーパー−ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー・マレー・ティットマーシュ
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081019(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/024595(WO,A1)
【文献】 特開2009−042103(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024779(WO,A1)
【文献】 特開2008−233002(JP,A)
【文献】 特開2012−118039(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/008609(WO,A1)
【文献】 特表2007−504816(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/107519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
C12M 1/00
C12Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を条件へと曝露するための装置であって、
a)多数のウェルチャネルを含むウェルのアレイであって、各ウェルチャネルが、前記ウェルチャネルに沿って隔てられた複数のウェルを含み、前記ウェルが、使用される物質を含有するアレイと、
b)複数の注入口セットであって、各注入口セットが
i)それぞれの第1の流体を受容する第1の注入口と、
ii)それぞれの第2の流体を受容する第2の注入口と、を含む、注入口セットと、
c)1または複数の流体を各ウェルチャネルへと選択的に供給して、これにより、前記物質を異なる条件へと曝露し、前記条件に対する前記物質の応答を決定することを可能とするように、前記注入口セットの注入口へとカップリングされたチャネルであって、各チャネルは分岐して、流体を、少なくとも2つのウェルチャネルへと供給し、少なくとも2つのチャネルが合流して、流体の混合物を、少なくとも1つのウェルチャネルへと供給する、チャネルと、
d)基板及び被覆層であって、前記被覆層は第1の層および第2の層を含み、前記チャネルは前記第1の層内の複数の第1層チャネルと前記第2の層内の複数の第2層チャネルとを含み、それぞれの流体を、前記第2の層内の前記第2層チャネルを介して前記第1の層内の前記第1層チャネルへと供給するように、前記注入口セットの注入口のうちの少なくともいくつか前記第2の層内に装備されており、前記ウェルが、前記基板及び前記被覆層のうちの少なくとも一つに規定されている、基板及び被覆層と、
を含む装置。
【請求項2】
各ウェルチャネルが、
a)流体の同等の容量、
b)流体の同等の流動、および
c)流体の同等の比率
のうちの少なくとも1つを受容するように、各チャネルのウェルチャネル形状が配置される、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記流体のそれぞれの比率が各ウェルチャネルに供給されるように、各チャネルがそれぞれのチャネル形状を有することによって流体の相対的な流動を制御し、
前記チャネル形状が、
a)チャネルの外形、
b)チャネルの屈曲、
c)チャネルの長さ、
d)チャネルの高さ、
e)チャネルの幅、
f)チャネルの角度、および
g)チャネル内の障害物
のうちの少なくとも1つを含む、請求項またはに記載の装置。
【請求項4】
少なくとも2つのチャネルが混合部分の上流で合流し、前記チャネルが、その中に含有される流体を混合するための混合部分を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
a)第1の因子の流体および緩衝液を受容するための第1の注入口セットと、
b)第2の因子の流体および緩衝液を受容するための第2の注入口セットと、
c)第3の因子の流体および緩衝液を受容するための第3の注入口セットと
を含み、各ウェルチャネルが、それぞれの濃度の、前記第1の因子の流体、前記第2の因子の流体、および前記第3の因子の流体の各々を受容する、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
a)前記物質を含有するシーディング流体を受容するための少なくとも1つのシーディング注入口と、
b)少なくとも1つのシーディング排出口と
を含み、前記少なくとも1つのシーディング注入口およびシーディング排出口が、前記ウェルチャネルと流体連絡しており、これにより、前記ウェルに前記物質をシーディングすることを可能とする、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシーディング注入口および前記少なくとも1つのシーディング排出口のうちの少なくとも1つを前記ウェルチャネルへと接続するための多数のシーディングチャネルを含む、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシーディング注入口が、前記ウェルチャネルの、前記少なくとも1つのシーディング排出口と反対側の末端へと接続されている、請求項またはに記載の装置。
【請求項9】
前記シーディング排出口が、前記チャネルと流体連絡しており、前記シーディング排出口が、前記ウェルチャネルのシーディング後にストッパーを使用して遮断され、これにより、それぞれの前記流体を前記ウェルチャネルへと供給することを可能とするように配置されている、請求項からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
a)ウェルチャネルおよびウェルのうちの少なくとも1つへの流体の供給、ならびに
b)ウェルチャネルおよびウェルのうちの少なくとも1つからの流体および/または物質のサンプリング
のうちの少なくとも1つを選択的に制御するための少なくとも1つの制御デバイスを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御デバイスが、チャネルを選択的に遮断するための弁を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記チャネルが、マイクロ流体チャネルである、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記被覆層が、成形されたポリマー材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記基板および前記被覆層が、
a)接着カップリング、
b)熱カップリング、
c)機械的カップリング、
d)プラズマカップリング、
e)共有結合/化学的カップリング、
f)静電カップリング、および
g)磁性カップリング
のうちの少なくとも1つを使用してカップリングされている、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも前記ウェルがコーティングされている、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記コーティングが、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つの流体が、作用物質を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記作用物質が、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記物質が、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
a)作用物質に対する応答、
b)細胞成長、
c)細胞分化、
d)細胞生存率、
e)細胞形態、
f)細胞シグナル伝達、
g)タンパク質転移、
h)細胞抗原提示、
i)DNA合成、
j)細胞ゲノム、
k)細胞トランスクリプトーム、
l)細胞プロテオーム、
m)細胞代謝、
n)細胞の電気生理学的機能、
o)細胞の生理学的機能、
p)食作用、
q)エンドサイトーシス、
r)遺伝子発現、
s)タンパク質発現、
t)炭水化物発現、
u)生体分子間相互作用、
v)受容体結合、
w)検出作用物質の細胞結合、
x)モジュレーション作用物質の細胞取込み、
y)細胞遊走、
z)細胞集団の組織化、
aa)細胞接着、
bb)細胞間相互作用、
cc)脂質発現、
dd)RNA合成、および
ee)組織形成
のうちの少なくとも1つをモニタリングするためのものである、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を条件へと曝露するための装置および方法に関し、特に、細胞などの物質を、ある範囲の異なる条件へと曝露して、これにより、条件に対する物質の応答を決定することを可能とするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における、任意の既往の刊行物(またはこれに由来する情報)または公知である任意の事柄に対する言及は、既往の刊行物(またはこれに由来する情報)または公知の事柄が、本明細書が関連する企図の分野における、共通の一般的知見の一部を形成することの認知もしくは容認またはその任意の形態の示唆として理解されるものではなく、そのように理解されるべきでもない。
【0003】
多能性幹細胞は、細胞移植、疾患および発症のモデル化、および前臨床薬物スクリーニングに有用な、特化した細胞型を作製するための、有望な細胞供給源である。しかし、再生医療適用および薬物スクリーニング適用におけるヒト多能性幹細胞(hESC細胞およびhIPS細胞)の使用は、十分な数までのそれらの未分化増殖、および表現型をターゲティングするためのそれらの効率的な系列特異的分化の両方を方向付ける能力に基礎づけられている。早期発生の全体にわたり、幹細胞の、微小環境刺激の勾配への曝露は、異種の組織化された組織のパターン化をもたらす、細胞運命を決定する。
【0004】
したがって、これらの刺激についての正確な知見およびこれらの刺激の制御は、複雑な発生過程の階層的性格を組み直し、規定された細胞集団の指定および調節を直接かつ効率的に駆動する、鍵となる刺激を同定するのに重要である。しかし、現在、いくつかの問題が、これらの目標を達成しようとする試みの障害となっている。
【0005】
複数のシグナル伝達経路の活性の間の均衡は、細胞運命の転帰を決定するのに中心的であり、外因性シグナルの相対レベルに大きく依存し、ある種の因子の存在または非存在だけに依存するわけではないことが十分に確立されている。したがって、個々の刺激を最適化するだけではなく、複数の刺激の多様な相対レベルをスクリーニングする手法が要求される。また、従来の静置培養系は、幹細胞の運命を方向付ける微小環境刺激を正確に探査するのに適さない。
【0006】
かつての血清含有培地およびフィーダー層の使用では、規定されていない成分が幹細胞培養系へと導入されたが、フィーダー非含有の規定された培養条件でもなお、hESCは、自己再生転帰および分化転帰に影響を及ぼすことが公知の因子であって、また、分化の開始後に劇的に変化する因子を分泌する。さらに、分泌された因子および老廃物が蓄積され、外因性因子および栄養物質は枯渇するので、従来の培養物は、微小環境条件の大きな空間的−時間的ゆらぎの対象となるが、次いで、培地を再補充すると、初期条件に戻る。
【0007】
ある範囲の生物学的現象を探索するのに、マイクロスケール技術が活用されている。現在のところ、整列させた微小環境上の研究では、対象の分子をパターン化するのに高密度スポッティング法が活用されており、任意選択で、アレイをマクロスケールウェルへとカップリングすることにより、またはスポッティングされた可溶性因子をアレイ内に組み入れることにより、多様な可溶性因子を導入した、生体材料ポリマーまたは細胞外マトリックス(ECM)分子のコンビナトリアルアレイが組み入れられている。これらの手法は、ECMの合図はたやすく提示するが、可溶性因子提示の制御レベルは限定されている。可溶性因子をマクロスケールの培養容量へと添加する場合、微小環境の制御は、培地交換の間に存在する回分培養環境により限定される。他方、スポッティングされた可溶性因子は、シグナル伝達活性を提示するが、基板からの拡散および培地容量全体にわたる拡散/対流などの輸送現象は、細胞へと提示される可溶性因子の正確な濃度を規定することが困難であり、かつ、時間変動的であることを意味する。
【0008】
マイクロ流体デバイス内で具体化される培養系などの「閉鎖的」培養系は既に、潅流培養と組み合わされて、可溶性因子の制御された供給および良好な時間分解能を伴う条件の時間的変動を達成している。
【0009】
例えば、間葉系幹細胞を成長および分化させるための培養環境のスクリーニングへと適用される、96個の個別の、個々にアドレス可能なマイクロバイオリアクターチャンバーのマルチプレックス化された組込みについては、Gomez−Sjoeberg,R.、Leyrat,A.A.、Pirone,D.M.、Chen,C.S.、およびQuake,S.R.、「Versatile,Fully Automated,Microfluidic Cell Culture System」、Analytical Chemistry、79、8557〜8563(2007)において記載されている。しかし、このデバイスは、73カ所のオフチップ接続部を要求し、培地の迅速な交換は可能であったが、複数のチャンバーへの連続的な潅流をもたらすことができなかった。にもかかわらず、マイクロ加工技術を活用して、広範なマルチプレックス化を施し、限定数の化合物に基づき、広範なスペクトルにわたる条件を作り出すことができる。
【0010】
微小環境をスクリーニングするための、マルチプレックス化されたアレイ技術における近年の進歩は、生体材料ポリマーの、スポッティングされたコンビナトリアルアレイに焦点を当てている。これらの手法は、ECMの合図に理想的な形で適し、これをたやすく提示するが、可溶性因子提示の制御レベルは、依然として限定されている。可溶性因子を、マクロスケールの培養容量へと添加する場合、微小環境の制御は、上記で詳述された点により限定される。他方、スポッティングされた可溶性因子は、シグナル伝達活性を疑いなく提示するが、基板からの拡散および培地容量全体にわたる拡散/対流などの輸送現象は、細胞へと提示される可溶性因子の正確な濃度を規定することがしばしば困難であり、かつ、時間変動的であることを意味する。
【0011】
「Microbioreactor Array for Full−Factorial Analysis of Provision of Multiple Soluble Factors in Cellular Microenvironments」、Biotechnology and Bioengineering、104巻、6号、2009年12月15日、は、入れ子の希釈構造を使用して、細胞培養条件の全因子アレイを作り出す、スケーラブルなマイクロバイオリアクターアーキテクチャーについて記載している。しかし、配置は、傍分泌シグナル伝達などのイベントの影響を評価する限定された能力をもたらすに過ぎない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Microbioreactor Array for Full−Factorial Analysis of Provision of Multiple Soluble Factors in Cellular Microenvironments」、Biotechnology and Bioengineering、104巻、6号、2009年12月15日
【非特許文献2】Gomez−Sjoeberg,R.、Leyrat,A.A.、Pirone,D.M.、Chen,C.S.、およびQuake,S.R.、「Versatile, Fully Automated, Microfluidic Cell Culture System」、Analytical Chemistry、79、8557〜8563(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の広範な形態において、本発明は、物質を条件へと曝露するための装置であって、
a)多数のウェルチャネルを含むウェルのアレイであって、各ウェルチャネルが、ウェルチャネル内に複数のウェルを含み、ウェルが、使用される物質を含有するアレイと、
b)それぞれの流体を受容するための1または複数の注入口と、
c)1または複数の流体を各ウェルチャネルへと選択的に供給して、これにより、物質を異なる条件へと曝露し、条件に対する物質の応答を決定することを可能とするための、1または複数の注入口へとカップリングされたチャネルと
を含む装置を提供しようとする。
【0014】
各ウェルチャネルは、ウェルチャネルに沿って隔てられた複数のウェルを含むことが典型的である。
【0015】
ウェルチャネルの第1の末端へと供給された流体は、ウェルチャネルに沿って、ウェルチャネルの第2の末端へと、流動方向に流動することが典型的である。
【0016】
少なくとも1つのウェルにおける応答は、隣接するウェル内の条件に影響を及ぼすことが典型的である。
【0017】
ウェル内で生成される少なくともいくつかの作用物質は、隣接するウェルへと移送され、これにより、隣接するウェル内の条件を少なくとも部分的に変化させることが典型的である。
【0018】
装置は、
a)少なくとも2つの注入口であって、各注入口が、それぞれの流体を受容するためのものである注入口と、
b)それぞれの流体を注入口からウェルチャネルへと供給するための多数のチャネルであって、各チャネルが、それぞれのチャネル形状を有して、これにより、それぞれの比率の流体が、各ウェルチャネルへと供給されるように、流体の相対的な流動を制御するチャネルと
を含むことが典型的である。
【0019】
流体を流動方向に流動させるために、上流のウェル内の物質により産生される作用物質を、下流のウェルへと移送することが典型的である。
【0020】
流体を流動させないために、作用物質を、拡散により、ウェル間に移送することが典型的である。
【0021】
各ウェルチャネルが、
a)流体の同等の容量、
b)流体の同等の流動、および
c)流体の同等の比率
のうちの少なくとも1つを受容するように、各チャネルのウェルチャネル形状が配置されることが典型的である。
【0022】
チャネル形状は、
a)チャネルの外形、
b)チャネルの屈曲、
c)チャネルの長さ、
d)チャネルの高さ、
e)チャネルの幅、
f)チャネルの角度、および
g)チャネル内の障害物
のうちの少なくとも1つを含むことが典型的である。
【0023】
少なくとも1つのチャネルが分岐して、流体を、少なくとも2つのウェルチャネルへと供給することが典型的である。
【0024】
少なくとも2つのチャネルが合流して、流体の混合物を、少なくとも1つのウェルチャネルへと供給することが典型的である。
【0025】
チャネルは、その中に含有される流体を混合するための混合部分を含むことが典型的である。
【0026】
少なくとも2つのチャネルは、混合部分の上流で合流することが典型的である。
【0027】
装置は、第1の流体および第2の流体のそれぞれを受容するための第1の注入口および第2の注入口を含み、チャネルは、
i)少なくとも1つのウェルチャネルが、第1の流体を受容し、
ii)少なくとも1つのウェルチャネルが、第2の流体を受容し、かつ、
iii)少なくとも1つのウェルチャネルが、第1の流体と第2の流体との混合物を受容する
ように配置されることが典型的である。
【0028】
装置は、第1の流体および第2の流体のそれぞれを受容するための第1の注入口および第2の注入口を含み、第1の流体は因子を含み、第2の流体は緩衝液を含み、その結果、異なるウェルチャネルが異なる濃度の因子を受容することが典型的である。
【0029】
装置は、多数の注入口セットを含み、各注入口セットは、少なくとも2つの注入口を含み、各注入口セットは、それぞれの流体を受容するためのものであることが典型的である。
【0030】
各注入口セットは、それぞれの因子を含む流体を受容することが典型的である。
【0031】
装置は、
a)ある数(n)の注入口セットであって、各々少なくとも2つの注入口を含み、結果として合計で少なくとも2nの注入口をもたらす注入口セットと、
b)ある数(n)の注入口セットであって、各々少なくとも2つの注入口を含有し、各注入口セットの1つの注入口が、共通注入口へとさらに接合され、結果として合計で少なくともn+1の注入口をもたらす注入口セットと
を含むことが典型的である。
【0032】
装置は、
a)第1の因子および緩衝液を受容するための第1の注入口セットと、
b)第2の因子および緩衝液を受容するための第2の注入口セットと、
c)第3の因子および緩衝液を受容するための第3の注入口セットと
を含み、各ウェルチャネルは、それぞれの濃度の、第1の因子、第2の因子、および第3の因子の各々を受容することが典型的である。
【0033】
その後の注入口セットの流体と混合し、これにより、それぞれの流体を組み合わせることにより、1つの注入口セットからの流体を組み合わせることが典型的である。
【0034】
装置は、
a)物質を含有するシーディング流体を受容するための、少なくとも1つのシーディング注入口と、
b)少なくとも1つのシーディング排出口と
を含み、少なくとも1つのシーディング注入口およびシーディング排出口は、ウェルチャネルと流体連絡しており、これにより、ウェルに物質をシーディングすることを可能とすることが典型的である。
【0035】
装置は、少なくともシーディング注入口および少なくとも1つのシーディング排出口の少なくとも1つをウェルチャネルへと接続するための多数のシーディングチャネルを含むことが典型的である。
【0036】
少なくとも1つのシーディング注入口は、ウェルチャネルの、少なくとも1つのシーディング排出口と反対側の末端へと接続されていることが典型的である。
【0037】
シーディング排出口は、チャネルと流体連絡しており、シーディング排出口は、ウェルチャネルのシーディング後に遮断され、これにより、それぞれの流体をウェルチャネルへと供給することを可能とするように配置されていることが典型的である。
【0038】
装置は、
a)ウェルチャネルおよびウェルのうちの少なくとも1つへの流体の供給、ならびに
b)ウェルチャネルおよびウェルのうちの少なくとも1つからの流体および/または物質のサンプリング
のうちの少なくとも1つを選択的に制御するための少なくとも1つの制御デバイスを含むことが典型的である。
【0039】
制御デバイスは、チャネルを選択的に遮断するための弁を含むことが典型的である。
【0040】
チャネルは、マイクロ流体チャネルであることが典型的である。
【0041】
装置は、基板および被覆層を含むことが典型的である。
【0042】
被覆層は、第1の層および第2の層を含み、それぞれの流体を、第1の層内のチャネルへと供給するために、少なくともいくつかの注入口が、第2の層内に装備されていることが典型的である。
【0043】
チャネルは、被覆層内で規定されていることが典型的である。
【0044】
ウェルは、基板および被覆層のうちの少なくとも1つの中で規定されていることが典型的である。
【0045】
被覆層は、成形されたポリマー材料を含むことが典型的である。
【0046】
基板および被覆層は、
a)接着カップリング、
b)熱カップリング、
c)機械的カップリング、
d)プラズマカップリング、
e)共有結合/化学的カップリング、
f)静電カップリング、および
g)磁性カップリング
のうちの少なくとも1つを使用してカップリングされていることが典型的である。
【0047】
少なくともウェルがコーティングされていることが典型的である。
【0048】
コーティングは、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含むことが典型的である。
【0049】
少なくとも1つの流体は、作用物質を含むことが典型的である。
【0050】
作用物質は、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含むことが典型的である。
【0051】
物質は、
a)プロモーター、
b)阻害剤、
c)成長因子、
d)凝固因子、
e)ホルモン、
f)シグナル伝達作用物質、
g)化学組成物、
h)薬物、
i)タンパク質、
j)リガンド、
k)抗体、
l)生物、
m)細胞、
n)ミニ細胞、
o)合成細胞、
p)リポソーム、
q)ミセル、
r)ポリマーミセル(ポリマーソーム)、
s)脂質、
t)ポリマー、
u)界面活性剤、
v)脂肪酸、
w)イオン溶液、
x)酸性溶液または塩基性溶液、
y)検出試薬、
z)DNA分子、
aa)RNA分子、
bb)DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、
cc)ヌクレオチド、
dd)ヌクレオシド、
ee)ポリペプチド、
ff)アミノ酸、
gg)ウイルス粒子、
hh)プラスミド、
ii)ナノ粒子、
jj)マイクロ粒子、
kk)磁性粒子、
ll)馴化培地、
mm)馴化培地から精製された画分、
nn)天然抽出物、
oo)培養培地成分、
pp)細胞培養添加剤、
qq)炭水化物、
rr)ビタミン、
ss)代謝物、
tt)オリゴヌクレオチド、
uu)融合タンパク質、
vv)プロテオグリカン、および
ww)病原体
のうちの少なくとも1つを含むことが典型的である。
【0052】
装置は、
a)作用物質に対する応答、
b)細胞成長、
c)細胞分化、
d)細胞生存率、
e)細胞形態、
f)細胞シグナル伝達、
g)タンパク質転移、
h)細胞抗原提示、
i)DNA合成、
j)細胞ゲノム、
k)細胞トランスクリプトーム、
l)細胞プロテオーム、
m)細胞代謝、
n)細胞の電気生理学的機能、
o)細胞の生理学的機能、
p)食作用、
q)エンドサイトーシス、
r)遺伝子発現、
s)タンパク質発現、
t)炭水化物発現、
u)生体分子間相互作用、
v)受容体結合、
w)検出作用物質の細胞結合、
x)モジュレーション作用物質の細胞取込み、
y)細胞遊走、
z)細胞集団の組織化、
aa)細胞接着、
bb)細胞間相互作用、
cc)脂質発現、
dd)RNA合成、および
ee)組織形成
のうちの少なくとも1つをモニタリングするためのものであることが典型的である。
【0053】
ここで、付属の図面を参照しながら、本発明の例について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A】細胞活性をモジュレートするための装置の例についての概略図である。
図1B】細胞活性をモジュレートするための装置の例についての概略図である。
図1C】細胞活性をモジュレートするための装置の例についての概略図である。
図2A】細胞活性をモジュレートするための装置のさらなる例についての概略図である。
図2B図2Aのチャネルミキサー部分についてのより詳細な概略図である。
図3A】細胞活性をモジュレートするための装置の具体例についての概略図である。
図3B】細胞活性をモジュレートするための装置の具体例についての概略図である。
図3C】細胞活性をモジュレートするための装置の具体例についての概略図である。
図3D図3Bのウェルを通る流体の流速を示す概略図である。
図3E図3A図3Cの装置を伴う使用のためのホルダーについての概略的な平面図および側面図である。
図3F図3A図3Cの装置を伴う使用のためのホルダーについての概略的な平面図および側面図である。
図4A図3Bのウェル内の色素の相対濃度についての例を示す略図である。
図4B図3Bのウェル内で測定された色素の濃度を示すグラフである。
図5A図3A図3Cの装置を使用して、HES3−EOS−C(3+)−EiP hESCの多能性をスクリーニングするために使用されるスクリーニング条件の例についての略図である。
図5B図5Aのスクリーニング条件についてのレーザー走査共焦点ネガティブ画像の例を示す図である。
図5C図5Aのスクリーニング条件のために選択されたウェルについての高倍率レーザー走査共焦点ネガティブ画像の例を示す図である。
図5D図5Aのスクリーニング条件のために選択されたウェルについての高倍率レーザー走査共焦点ネガティブ画像の例を示す図である。
図5E図5Aのスクリーニング条件のためのウェルアレイ内の全蛍光強度についてのヒートマップ例を示す図である。
図5F図5Aのスクリーニング条件のための、発現指数に対する因子の主効果の大きさの例についてのグラフである。
図6A図3A図3Cの装置を使用して、原始線条マーカーであるMIXL1の誘導、および傍分泌効果のモジュレーションについて、HES3−MIXL1−GFP細胞をスクリーニングするために使用されるスクリーニング条件の例についての略図である。
図6B図6Aのスクリーニング条件のための、GFPを発現させ、実験終点においてHoechstにより対比染色された、HES3−MIXL1−GFP hESCのウェルアレイについての、レーザー走査共焦点ネガティブ画像の例を示す図である。
図6C図6Aのスクリーニング条件のためのアレイ内の全蛍光強度についてのヒートマップ例を示す図である。
図6D図6Aのスクリーニング条件のためのアレイ内の個別のウェルについての、高倍率共焦点造影の例を示す図である。
図6E図6Aのスクリーニング条件のための、発現指数に対する因子の主効果の大きさの例についてのグラフである。
図7A図3A図3Cの装置を使用して、原始線条マーカーであるMIXL1の誘導、および傍分泌効果のモジュレーションについて、HES3−MIXL1−GFP細胞をスクリーニングするために使用されるスクリーニング条件の第2の例についての略図である。
図7B図7Aのスクリーニング条件のための、GFPを発現させ、実験終点において、NCAM(CD56)についてin situにおいて共免疫染色され、Hoechstにより対比染色された、HES3−MIXL1−GFP hESCのウェルアレイについての、レーザー走査共焦点ネガティブ画像の例を示す図である。
図7C図7Aのスクリーニング条件のためのアレイ内の全蛍光強度についてのヒートマップ例を示す図である。
図7D】異なる条件のための異なるウェル内の応答例についてのグラフである。
図7E】異なる条件のための異なるウェル内の応答例についてのグラフである。
図7F】異なる条件のための異なるウェル内の応答例についてのグラフである。
図7G】異なる条件のための異なるウェル内の応答例についてのグラフである。
図7H図7Aのスクリーニング条件のための、Wntシグナルの化学的モジュレーション、および静的原始線条誘導培養の効率改善の例についてのグラフである。
図8A】注入口構成のさらなる具体例についての概略図である。
図8B】排出口構成のさらなる具体例についての概略図である。
図8C】第1の層のさらなる具体例についての概略図である。
図8D】第2の層のさらなる具体例についての概略図である。
図8E図8Cおよび図8Dの装置における因子A、B、C、Dの各々の理論濃度についての概略図である。
図8F図8Cおよび図8Dの装置において、因子A、B、C、Dの各々を表す4つの色を使用する結果として得られる色素分布についての概略図である。
図8G】排出口を介して供給される単色の色素の、結果として得られる色素分布についての概略図である。
図8H】使用される図8Cおよび図8Dの装置についての画像である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで、図1Aを参照しながら、細胞活性をモジュレートするための装置の例について記載する。
【0056】
この例では、装置100は、多数のウェルチャネル131、132、133を有するウェルアレイ130を含み、各ウェルチャネル131、132、133は、ウェルチャネル131、132、133内に装備され、典型的に、ウェルチャネル131、132、133に沿って隔てられた、複数のウェル131.1、131.2、131.3、132.1、132.2、132.3、133.1、133.2、133.3を含む。使用時に、ウェル131.1、131.2,…133.3は、異なる条件に対するその応答が決定される物質を含有する。
【0057】
この例では、各ウェルチャネル上に3つのウェルを示し、3つのウェルチャネルを示すが、これは、例だけを目的とするものであり、実際は、任意の数のウェルおよびウェルチャネルを使用しうることが察知されるであろう。ウェルは、円形、正方形、長方形、楕円形、三角形、または他の幾何学的外形もしくは非幾何学的外形など、任意の外形またはサイズであることが可能であり、円形ウェルの使用は、例だけを目的とするものである。
【0058】
装置100はまた、1または複数の流体を受容するための1または複数の注入口111、112も含み、この例では、2つの注入口を示す。
【0059】
装置100はまた、1または複数の流体を受容するための1または複数の注入口111、112も含み、この例では、2つの注入口を示す。注入口111、112は、チャネル120を介して、ウェルチャネル131、132、133へとカップリングされ、流体を、ウェルチャネル131、132、133へと選択的に供給し、これにより、物質を、異なる条件へと曝露することを可能とし、これにより、条件に対する物質の応答を決定することが可能となる。
【0060】
試料を曝露する条件は、多様な形で制御することができる。一例では、条件は、供給される流体に依存し、異なる流体が、異なるウェルチャネルへと供給される。したがって、この場合、異なるウェルチャネル内の物質は、異なる条件へと曝露され、これに応じて、異なるウェルチャネルのウェル内の物質の応答を比較して、異なる条件に対する物質の応答を決定することができる。
【0061】
代替的に、別の例では、異なる物質を異なるウェルチャネル内に準備し、異なる物質を、例えば、ウェルチャネルへと供給される流体に応じて、同じ条件へと曝露することもでき、異なる条件へと曝露することもできる。
【0062】
さらなる例では、ウェルおよび/またはウェルチャネルは、1または複数のコーティングでコーティングすることができる。例えば、コーティングは、物質がウェルの表面に結合する一助となる結合剤、検出を目的とする物質のマーキングにおける使用のためのマーキング剤、他の試薬などを含みうるであろう。コーティングの例は、タンパク質、リガンド、可溶性因子、固定化された因子、乾燥凍結させた薬物またはタンパク質、レンチウイルス粒子、DNA、RNA、蛍光プローブ、ポリマー、酵素などを含む。コーティングはまた、例えば、類似の流体が異なるウェルチャネルへと供給される場合であってもなお、異なるコーティングを、異なるウェルチャネル内のウェルへと適用し、異なるウェルチャネルのウェル内の物質を、異なる条件へと曝露することを可能としうるように、ウェル内の条件に対する影響も及ぼしうる。
【0063】
上記の例のうちのいずれにおいても、ウェル内の条件に影響を及ぼす副次的効果を誘導することが可能である。この点で、物質を、特定の条件へと曝露する場合、応答は、1または複数の作用物質の産生または修飾を含むことが可能であり、次いで、これを隣接するウェルへと移送し、これにより、隣接するウェル内の条件を修飾することができる。したがって、例えば、細胞を異なる条件へと曝露する場合は、細胞を、それらが作用物質を分泌するようにモジュレートし、これを、異なるウェルへと移送し、これにより、その中に含有される細胞をさらにモジュレートすることができる。したがって、修飾とは、共通出発条件下でもなお、単一のウェルチャネル内の異なるウェル内の物質を、異なる条件へと曝露しうることを意味しうる。
【0064】
一例では、流体を、ウェルチャネルを通って流動方向に流動するように配置する。これを達成するために、この例では、注入口111、112は、ウェルチャネルの一方の末端と流体連絡しており、供給される流体が、ウェルチャネルに沿って、ウェルチャネルの他方の末端へと、矢印150により指し示される流動方向に流動するように、流体は、ウェルチャネル131、132、133の末端へと選択的に供給される。ウェルチャネルの他方の末端を、1または複数の排出口へと接続して、流体がウェルチャネルから流出することを可能としうる。排出口の存在、および流体をウェルチャネルへと選択的に移送する、チャネル120の作動については、下記でより詳細に記載されるであろう。この場合、ウェル内で産生または修飾される任意の作用物質は、流体の流動により、下流のウェルへと移送することができる。
【0065】
しかし、流体の流動の使用は、不可欠ではなく、代替的に、物質の曝露を、流動を伴わない条件下で行うこともでき、この場合、作用物質は、拡散など、他の輸送機構を介して移送することができる。代替的に、流体の流動は、例えば、流体の流量を調整することにより、選択的に制御することもでき、代替的に、流動を停止および/または反転させることにより、選択的に制御することもできる。流動はまた、下記でより詳細に記載される通り、制御弁などの制御デバイスを使用して、異なるウェルおよびチャネルについて選択的に制御することもできる。
【0066】
また、ウェルの選択的加熱または選択的冷却、放射線への選択的曝露など、他の機構を使用して、異なる条件を誘導しうることも察知されるであろう。例えば、加熱または冷却を、ウェルチャネル内の全てのウェルへと適用することもできるであろうし、代替的に、異なるウェルチャネルにわたるウェルの共通セット(または行)へと適用し、これにより、物質を曝露する条件の範囲をさらに増大させることもできるであろう。
【0067】
したがって、上記で記載した装置は、物質を、広範囲にわたる条件へと曝露することを可能とすることが察知されるであろう。一例では、条件は主に、流体の異なる組合せを、異なるウェルチャネルへと供給することにより制御するが、異なるウェルチャネル内に異なるコーティングを施すことにより、さらなる制御および/または代替的な制御を達成することもできる。いずれにせよ、装置は、限定された入力を使用して、広範囲にわたる条件を作り出すことを可能とし、1つのウェル内の物質の応答が、1または複数の隣接するウェル内の条件を修飾し、これにより、隣接するウェル内の物質の応答に影響を及ぼす、副次的効果を誘導することもさらに可能とする。
【0068】
装置は、多様な異なる物質を、異なる条件へと曝露するのに使用することができる。しかし、装置は、細胞、タンパク質、RNAまたはDNAを伴わない細菌などのミニ細胞、ミセル、リポソーム、核酸、化学組成物、および薬物を含むがこれらに限定されない、化学物質および生体物質を、異なる条件へと曝露するのに理想的な形で適する。
【0069】
物質が細胞である場合、流体のうちの少なくとも1つが、細胞における応答を誘導するための作用物質、および、特に、細胞運命モジュレーターなど、細胞の活性を修飾するモジュレート作用物質を含むことが典型的である。モニタリングしうる細胞応答は、細胞成長、細胞分化、細胞生存率、細胞の電気生理学的機能、細胞の生理学的機能、検出作用物質の細胞結合、モジュレーション作用物質の細胞取込み、検出剤に対する応答、細胞遊走、細胞集団の組織化、細胞接着、細胞間相互作用、脂質の発現、RNA合成、組織形成などを含みうるがこれらに限定されない。
【0070】
したがって、例えば、装置は、抗体の結合、トランスフェクション効率などを最適化するのに使用しうるであろう。装置はまた、(抗体または蛍光色素のような)検出剤またはプラスミドもしくはsiRNAリポソームなどのモジュレーション剤の最適の濃度または組合せに応答する細胞の能力についてのリードアウトをもたらすのにも使用することができる。装置はまた、例えば、異なる疾患または状態(心疾患、がん、神経変性疾患など)のための薬物スクリーニング、薬物処方のデザイン、患者特異的医療(遺伝医学)などを含む、応答についての細胞ベースのスクリーニングにも使用することができる。したがって、装置は、細胞の任意の活性のモジュレーションに特に適するが、応答は、条件に対する任意の応答を含みうることが察知されるであろう。
【0071】
上記から、流体は、誘導される応答に応じて、広範囲にわたる作用物質を含有しうることが察知されるであろう。万一、細胞活性をモジュレートする場合、作用物質は、ホルモン、成長因子、凝固因子、シグナル伝達分子、プロモーター、阻害剤などを含むシグナル伝達作用物質など、細胞がそれに対して反応する任意の適切な作用物質でありうる。しかし、細胞応答に対して影響を及ぼす任意の作用物質であって、医薬などを含む作用物質を使用しうることが察知されるであろう。さらに、流体は、溶存させた固体の作用物質、懸濁させた固体の作用物質など、任意の形態の作用物質を含有しうる。
【0072】
モジュレート作用物質は、抗体、サイトカイン、ケモカイン、カルシウムイオンおよびカリウムイオンなどのイオン、DNA分子、DNA構築物、RNA分子、RNA構築物、DNA配列またはRNA配列をコードするウイルス粒子、融合タンパク質、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体、DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、炭水化物、代謝物、ナノ粒子、マイクロ粒子、リポソーム、ミセル、ポリマー、馴化培地(個別の細胞培養物から採取される培地)、馴化培地から精製された画分、天然抽出物(自然発生の生物学的供給源から単離された組成物など)、細胞培養成分または培地成分、細胞または生物(すなわち、共培養された細胞型または病原体)でありうる。
【0073】
流体のうちの少なくとも1つは、物質の応答をモニタリングする一助となる検出剤をさらに含みうる。これは、例えば、蛍光色素など、検出試薬の使用を含みうる。
【0074】
ここで、細胞モジュレーションの具体例についてより詳細に記載する。特に、この例では、下記でより詳細に記載される通り、細胞を、典型的に、シーディング工程を使用して、ウェルアレイのウェル内に準備する。これに続き、供給された流体が、ウェルチャネルに沿って、ウェルチャネルの第2の末端へと、流動方向に流動し、これにより、細胞を、流体およびその中に含有される任意のモジュレート作用物質(外因性モジュレート作用物質と称する)へと曝露するように、1または複数の流体を、各ウェルチャネルの第1の末端へと選択的に供給する。細胞を流体へと曝露するにつれて、流体は典型的に、細胞内に応答を引き起こし、これにより、例えば、細胞によるモジュレート作用物質の分泌を介して、さらなるモジュレート作用物質(内因性モジュレート作用物質と称する)の創出をもたらしうるであろう。次いで、上流のウェル内で産生された、少なくとも一部の内因性モジュレート作用物質は、流体の流動の結果として、下流のウェルへと移され、これにより、下流のウェル内の細胞活性をさらにモジュレートする。しかし、前出の記載から、流体の流動の存在は、不可欠ではなく、内因性モジュレート作用物質は、拡散など、他の機構を使用して、ウェル間で移送しうることが察知されるであろう。
【0075】
したがって、シグナル伝達作用物質などの内因性モジュレート作用物質は、1または複数の流体中の細胞を外因性モジュレート作用物質へと曝露した後、ウェル内で分泌させることができる。内因性モジュレート作用物質は、隣接するウェル内の細胞または下流のウェル内の細胞を、外因性モジュレート作用物質および内因性モジュレート作用物質の両方へと曝露するように、外因性モジュレート作用物質と共に、隣接するウェルまたは下流のウェルへと移送する。このため、例えば、ウェル131.1内の細胞を、成長因子Aへと曝露する場合、細胞は、さらなる成長因子Xを分泌することが可能であり、これを、下流のウェル131.2へと移送することは、ウェル131.2内の細胞を、成長因子AおよびXへと曝露することを意味する。したがって、この例では、これにより、ウェルチャネル131のウェル内の細胞間で誘導される傍分泌効果が可能となることが察知されるであろう。
【0076】
1つのウェル内の物質が、隣接するウェル内の物質の応答による影響を受けることを可能とすることができれば、副次的効果の探索を可能とする強力な機構がもたらされる。物質が細胞である場合、これは、細胞の局所的微小環境の、細胞活性に対する影響を理解するのに特に有用である。
【0077】
活性をモジュレートしたら、次いで、過程の転帰を決定する試験を実施することができる。例えば、細胞活性の変化を同定するのに適切なマーカーを使用して、アッセイを実施することができる。加えて、かつ/または代替的に、細胞およびウェルの他の内容物を、さらなる解析のために抽出することができる。これを使用して、例えば、任意の内因性モジュレート作用物質を同定し、これにより、ある種の細胞活性をもたらす正確な条件の同定を可能とすることができる。したがって、上記で記載した装置は、細胞活性についてのある範囲の異なる種類の研究の実施を可能とし、特に、同定される特異的なモジュレート作用物質に対する細胞の応答性を可能とする。
【0078】
図1Aの例ではまた、それぞれの流体を、注入口111、112から、ウェルチャネル131、132、133へと供給するための、多数のチャネル120も装備される。この例では、チャネル121が、注入口111から、ウェルチャネル131へと伸長するのに対し、チャネル122は、注入口112から、ウェルチャネル133へと伸長する。チャネル121、122はまた、分岐および合流して、ウェルチャネル132へと伸長する第3のチャネル123も形成する。各チャネル120は、それぞれのチャネル形状を有して、これにより、それぞれの比率の流体が、各ウェルチャネル131、132、133へと供給されるように、流体の相対的な流動を制御する。
【0079】
したがって、上記の例から察知される通り、注入口から伸長するチャネル120は、分岐して、流体を、少なくとも2つのウェルチャネルへと供給する場合もあり、合流して、流体の混合物を、少なくとも1つのウェルチャネルへと供給する場合もある。
【0080】
この例では、第1の流体Aおよび第2の流体Bを、注入口111、112を介して供給する場合、ウェルチャネル131が、第1の流体Aを受容し、ウェルチャネル132が、第1の流体Aと第2の流体Bとの混合物を受容するのに対し、ウェルチャネル133は、第2の流体Bだけを受容する。特定の一例では、第1の流体は、因子を含み、第2の流体は、異なるウェルチャネル131、132、133が、異なる濃度の因子を受容するように、緩衝液を含む。
【0081】
したがって、上記の配置は、各ウェルチャネルのウェル内の細胞活性を比較することにより、異なる流体の組合せの影響を研究しうるように、異なる流体を、各ウェルチャネル131、132、133へと供給することを可能とすることが察知されるであろう。したがって、これは、異なるウェルチャネルに異なる流体を受容させ、よって、外因性モジュレート作用物質の異なる組合せを受容させ、かつ、各ウェルチャネルの下流のウェルを、上流のウェル内で産生される、異なる内因性モジュレート作用物質へとさらに曝露して、多次元研究を実施することを可能とする。
【0082】
しかし、これは不可欠ではなく、上述の通り、代替的に、各ウェルチャネルに同じ流体を受容させうることが察知されるであろう。この場合もやはり、例えば、異なるウェルチャネルのウェルを、異なるコーティングなどで選択的にコーティングすることによるなど、他の機構を使用して、ウェルチャネル間で環境条件の差違を誘導することにより、多次元解析を実施することができる。異なるウェルチャネルはまた、異なる温度、放射線レベルなどの異なる雰囲気条件へと曝露することもできる。
【0083】
いずれにせよ、上記で記載した装置は、広範囲にわたる異なる環境を作り出し、これらの細胞活性に対する影響を容易に比較することを可能とすることが察知されるであろう。
【0084】
ここで、上記で記載した装置のさらなる特色について記載する。
【0085】
一例では、チャネルに沿う流体の流動は、チャネルの外形、チャネルの屈曲、チャネルの長さ、チャネルの高さ、チャネルの幅、およびチャネルの角度を含むチャネル形状の1または複数の任意の側面を変化させることにより制御することができる。加えて、柱状物、ジグザグ型ヘリンボーンミキサー、多層流路などの障害物をチャネル内に組み入れることにより、制御をさらに施すこともできる。
【0086】
したがって、物質を曝露する場合は、ウェルへと供給される相対比率の異なる流体を、これに応じてチャネル形状を選択して決定する。これは、各ウェルチャネルが、等容量の流体、等流量の流体、または時間当たり等容量の流体を受容するように、各チャネルのチャネル形状を配置することを可能とする。これは、正確な比率の異なる流体が、チャネル構成に従い、正確なウェルチャネルへと供給されることを確保する一助となりうる。
【0087】
チャネル120内、またはウェルチャネル131、132、133内に装備されうる、制御弁などの制御デバイスの使用を介して、さらなる制御を実装し、異なるウェルへの流体の流動を、所望に応じて、選択的に制限し、かつ/または停止させることも可能としうる。
【0088】
チャネル120およびウェルチャネル131、132、133に沿う流体の流動はまた、流体の速度、密度、および表面張力を含む流体の特性にも依存しうる。
【0089】
チャネルは、マイクロ流体チャネルであることが典型的であり、幅が1mm以下または0.25mm以下であることが典型的であるが、任意の適切なチャネルサイズを使用することができる。
【0090】
注入口、ウェル、およびチャネル構成の、ある範囲にわたる異なる配置を使用して、多様な外因性モジュレート作用物質を、ウェルチャネルへと供給することができる。図1Bの例では、流体A、B、Cのそれぞれを受容するための3つの注入口111、112、113を提示する。この例では、注入口を、チャネル120を介して、7つのウェルチャネル131、132、…137へと接続するが、注入口111は、ウェルチャネル131、132、134、135と流体連絡しており、注入口112は、ウェルチャネル132、133、134、136と流体連絡しており、注入口113は、ウェルチャネル134、135、136、137と流体連絡している。結果として、ウェルチャネル131、132、133、134、135、136、137はそれぞれ、流体A、A+B、B、A+B+C、A+C、B+C、およびCの組合せを受容する。
【0091】
図1Cの例では、4つの注入口111、112、113、114を提示する。この例では、注入口を、2つの注入口セットで装備し、注入口111、112からの流体A、Bを、チャネル121、122、123を介して、3つの流体混合物を準備するように混合し、注入口113、114からの流体C、Dを、チャネル124、125、126を介して混合および準備する。混合物は、ウェルチャネル131、132、133、134、135、136、137、138、139へと供給する。結果として、ウェルチャネル131、132、133、134、135、136、137、138、139はそれぞれ、流体の組合せA+C、A+B、B+C、A+C+D、A+B+C+D、B+C+D、A+D、A+B+D、B+Dを受容する。
【0092】
一例では、各注入口セットA、B;C、Dは、それぞれの因子を含む流体を受容し、個別の緩衝液流体は、異なる濃度の異なる因子を、ウェルチャネルへと供給することを可能とする。例えば、流体A、Bが、第1の因子および緩衝液に対応するのに対し、流体C、Dは、第2の因子および緩衝液に対応する。したがって、この配置は、異なる濃度の第1の因子Aおよび第2の因子Cを、9つのウェルチャネル131、132、…139の各々へと供給することを可能とする。特に、装置により、2つの因子A、Cによる、各々3つの濃度の組合せ全てを作り出し、これにより、合計で3=9の異なる条件を有する全因子アレイをもたらすことができる。
【0093】
図1Bおよび図1Cの例では、個別のチャネルが、ウェルチャネルに流入するように示されていることに注意されたい。しかし、これは、明確さを目的とするのに過ぎず、より典型的には、ウェルチャネルに流入する前に、流体が完全に混合されるように、チャネルは、ウェルチャネルの上流で合流する。
【0094】
図2Aおよび図2Bの例では、図1Aの装置を改変し、改変された装置200は、その中に含有される流体を混合するために、チャネル121、122、123内に装備された混合部分221、222、223を含む。混合部分は、任意の適切な様式で形成することができ、攪拌器、移流エレメント、または対流エレメントなどの使用を含みうる。しかし、混合部分は、図2Bに示される、チャネルの蛇行部分から形成されることが典型的である。また、図2Aにも示される通り、混合部分は、チャネルのうちのいずれかが合流する点の下流に配置され、これにより、ウェルチャネルへと供給されると、異なる流体を、適切な形で混合することを確保する。これは確実に、ウェル内の物質を、異なる流体へと均等に曝露し、特に、その中に含有される任意の作用物質へと均等に曝露する一助となる。
【0095】
ここで、図3A図3Dを参照しながら、装置のさらなる例について記載する。以下の記載では、細胞活性のモジュレーションに焦点を当てることになろうが、これは、記載を容易にするために過ぎず、実際は、技法を、ある範囲の異なる物質および応答へと適用しうることが察知されるであろう。
【0096】
この例では、図3Cに示される通り、装置300は、基板303へと取り付けられた、第1の被覆層301および第2の被覆層302を含む。第1の被覆層301および第2の被覆層302は、注入口、チャネル、およびウェルアレイを規定するように成形された、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)などのポリマー材料から形成されることが典型的である。
【0097】
第1の層および第2の層のためのチャネルおよびポートの構成を、図3Aおよび図3Bのそれぞれに示し、図3Aでは、第1の層301に照らした第2の層を点線で示す。層301、302は、互いおよび基板303と接着させることが典型的であり、接着材接着または熱接着など、適切な接着工程を使用して、ガラスなどの不活性材料から作製することが典型的である。しかし、磁性カップリング、プラズマカップリング、共有結合/化学的カップリング、静電カップリング、機械的カップリングなど、他のカップリング法も使用することができる。材料はまた、要求に応じて、例えば、PDMSを、低分子の取込みを回避/低減するように処理するよう、それらをデバイスにおける使用に適するように処理することができる。
【0098】
一般に、材料は、細胞モジュレーション過程に対するそれらの干渉を防止するように、生物学的に不活性であるべきであるが、他の材料も、デバイスを製造するために使用しうることが察知されるであろう。加えて、特定の一例では、材料は、例えば、適切なアッセイの使用を介して、細胞モジュレーションの結果を容易に同定することを可能とするように、光学的に透明であることが好ましい。加えて、被覆層のための、PDMSなどの材料の使用は、例えば、注射針およびシリンジなどを使用して、ウェルの内容物を装置から容易に抽出することを可能とするので、特に有益である。
【0099】
この例では、装置300は、注入口311、312;313、314;315、316の3つのセットを含む。注入口は、チャネル320を介して、各々が10個のウェルを含む27のウェルチャネルを含み、これにより、270のウェルでウェルアレイを規定する、ウェルアレイ330と相互接続されている。
【0100】
この例において示す通り、注入口313、314、315、316は、第2の層302内に装備され、注入口311、312は、第1の層301内に装備されている。使用時に、各注入口313、314は、チャネル323を介して、3つのそれぞれのポート317.1へと接続される。第2の層302を、示される通りに、第1の層301に照らして配置する場合、ポート317.1は、第1の層301内の対応するポート317.2と一列に並び、これにより、注入口113、114からの流体を供給する。類似の配置を、注入口315、316と関連する18のポート318.1、318.2についても使用する。
【0101】
この例では、注入口313をポート317.1とカップリングさせるチャネル323.1、323.2、323.3は、全て同じ長さであることが注意されるであろう。これを達成するために、チャネル323.2は、所与のチャネルの長さを維持するように、蛇行区間を含む。これは、チャネル323.1、323.2、323.3の各々に沿う等流動抵抗を維持し、これにより、これらのチャネルに沿う流体の等流動を維持するように実施される。
【0102】
これもまた示される通り、チャネル320内には、複数の混合部分321が装備され、これにより、その中に含有される流体の適切な混合が確保される。
【0103】
使用時に、第1の注入口セット311、312は、第1の因子および緩衝液を受容し、第2の注入口セット313、314は、第2の因子および緩衝液を受容し、第3の注入口セット315、316は、第3の因子および緩衝液を受容する。これは、下記でより詳細に記載される通り、各ウェルチャネルが、それぞれの濃度の、第1の因子、第2の因子、および第3の因子の各々を受容するように、第1の因子、第2の因子、および第3の因子のそれぞれの組合せを、27のウェルチャネルの各々へと供給することを可能とする。
【0104】
加えて、装置は、細胞を含有するシーディング流体を受容するために使用しうる、シーディング注入口341をさらに含む。シーディング注入口は、シーディングチャネル341.1を介してウェルチャネルと流体連絡しており、これは典型的に、チャネル320のための接続点と反対側のウェルチャネルの末端へと接続されている。これは、シーディング注入口がまた、排出口としても機能することを可能とし、要求に応じて、ウェルチャネルを通って流動してきた流体を駆出することを可能とすることが察知されるであろう。
【0105】
また、シーディング排出口342も装備することができる。この例では、シーディング排出口342は、シーディングチャネル342.3を介して、シーディングポート342.1と流体連絡している、第2の層302内に装備されている。シーディングポート342.1は、第1の層301内の対応するシーディングポート324.2と流体連絡しており、これは、示される通りに、チャネル320と流体連絡している。
【0106】
使用時に、シーディング流体は、シーディング注入口341を介して、ウェルチャネルへと供給することができる。シーディング流体は、ウェルチャネルに沿って、矢印351の方向に通過し、ウェルに細胞をシーディングする。次いで、シーディング流体は、シーディングポート342.2、342.1を通過し、シーディング排出口342を介して流出する。シーディング流体は、十分なウェルの集団に細胞を確保する時間にわたり、ウェルを通過させることが典型的である。
【0107】
加えて、ウェルは、細胞を導入する前にコーティングすることもできる。ウェルは、ウェル内の細胞を保持すること、細胞生存率を維持することなどの一助となるように、コーティングすることができる。ウェルは、モジュレート作用物質または蛍光色素などの検出試薬のうちのいずれかでコーティングすることができる。加えて、または代替的に、これを使用して、例えば、アッセイなどにおける使用のためのマーカーを導入することができる。したがって、コーティングは、タンパク質、リガンド、抗体、ナノ粒子またはマイクロ粒子、馴化培地、馴化培地から精製された画分、自然発生の生物学的供給源から単離された組成物などの天然抽出物、RNA分子または構築物、融合タンパク質、細胞培養成分または培地成分、炭水化物または代謝物、外因性DNA配列または外因性RNA配列をコードするウイルス粒子、外因性DNA配列または外因性RNA配列をコードするプラスミド/コスミド/細菌人工染色体または他の構築物、細胞または生物(すなわち、共培養された細胞型または病原体)など、任意の適切な材料を含みうることが察知されるであろう。
【0108】
このようなコーティングは、装置の製造時またはアセンブリー時に適用することもでき、代替的に、コーティング流体を、ウェルアレイ330を介して通過させることにより適用することもできる。これは、細胞をシーディングする前に、ウェルの各々が、同じコーティングを受容するように、シーディング注入口341およびシーディング排出口342を使用して達成することができる。代替的に、異なるコーティングは、注入口311、312、313、314、315、316を介しても導入し、コーティングの異なる組合せを、各ウェルチャネルへと供給することを可能とし、これにより、異なるコーティングの影響を評価することを可能としうるであろう。さらに、コーティングは、デバイスの任意の層を選択的に処理することにより、デバイスの製造時またはアセンブリーの前に適用することもできる。この処理は、ディップコーティング、スピンコーティング、リソグラフィー、エッチング、スポッティング、堆積、または既に言及されたコーティングのうちのいずれかを導入するか、またはデバイスの基板のうちのいずれかを修飾するのに適する他の工程などの工程を含みうる。次いで、例えば、この処理の後で、デバイスを、図3Cに示す通りにアセンブルすることができる。
【0109】
ウェルへのシーディングが完了したら、流体を、注入口311、312、313、314、315、316を介して供給する場合に、シーディング注入口341を、チャネル内の流体のための排出口として作動させて、流体を、ウェルチャネルへと通過させるように、例えば、ストッパーなどを使用して、シーディング排出口342を遮断することができる。
【0110】
特定のシーディング注入口およびシーディング排出口の配置は、例だけを目的とするものであり、実際は、代替的な構成を使用しうることが察知されるであろう。例えば、図1Aの例で、シーディング排出口を装備させる場合であれば、チャネル121、122、123と流体連絡したシーディング排出口を装備させうるであろう。
【0111】
上記で記載した配置は、例だけを目的とするものであり、実際は、多数のさらなる変化形が可能であることが察知されるであろう。
【0112】
例えば、注入口および排出口の特定の構成は、要求に応じて、調整しうるであろうし、特に、注入口および排出口の位置は、要求に応じて、調整しうるであろう。これは、装置が、標準的なアーキテクチャーに準拠する、例えば、既存の流体供給系と適合することを可能とするように実施しうるであろう。これは、装置を単体のデバイスとして提供することを可能とし、次いで、これは、既存のハードウェアと共に使用することができ、これにより、備品の使用者に対する全費用が軽減される。装置はまた、標準的なハウジング内のカートリッジ内に、または、標準的なコネクターの他の任意の形態と共に装備し、既存のハードウェアへの組込みのさらなる一助とすることもできよう。これは、標準的な流体クリップ接続部を含み、これにより、外部備品の接続を容易としうる。装置が、標準的なマイクロプレートフットプリントを提示するように、装置はまた、スライドホルダーに取り付けることもでき、これにより、他の備品を伴う使用のさらなる一助となろう。配置の例を、図3Eおよび図3Fに示す。この例では、スライドホルダー350は、基板303を受容するためのウェル352を規定する本体351を含む。
【0113】
チャネルにより規定される異なる流動経路の相対抵抗は、例えば、使用される流体供給系を考慮に入れるほか、デバイスを通る相対的な流体の流動を調整するように、要求に応じて調整することができる。
【0114】
気体流カバーおよび水和プールなど、他の技法を使用して、さらなる環境制御を達成することができる。これは、デバイスの、例えば、図3Bに示される第2の層内に組み込みうる、等浸透圧浴層の使用を含むことが可能であり、供給は潅流による場合もあり、静置による場合もある。
【0115】
装置は、要求に応じて、流体および/または物質を、デバイスから抽出することを可能とする、培地回収オフテイクの組込みを含みうる。これは、例えば、ウェルの内容物を選択的に除去することを可能とするウェルアレイと適合する個別の層を含みうるであろう。
【0116】
装置は、バブルトラップ、ガス交換器、バブルセンシング電極、またはセンサーなど、ウェルアレイにわたる流体の一貫した送達を確保するための、さらなる制御デバイスまたはセンシングデバイスも含みうる。
【0117】
使用時に、ウェルアレイにわたり条件を平衡化するために、装置を培地によりフラッシングする工程など、プライミング工程を実施することができる。
【0118】
制御デバイスは、流体の流動をさらに制御するように、チャネルおよび/またはウェルチャネルへと組み込むことができる。これは、作用物質のウェル間の拡散を制限し、これにより、望ましくない作用物質のウェル間の拡散を伴わずに、流動を長時間にわたり停止させることを可能とする拡散バリアの使用を含みうる。これはまた、抵抗区間の長さの延長のほか、ウェルチャネル上のウェル間の隔たりの増大を使用することにより達成することもできる。加えて、弁を使用して、個々のウェルを隔離するほか、個々のウェルからの流体の抽出をもたらすこともできる。また、等抵抗(フラクタル)排出口チャネル区間を施して、流量分布を改善することもできる。
【0119】
使用しうる他の制御デバイスは、注入口および/またはチャネルを選択的に閉鎖し、これにより、デバイスを、曝露モードとシーディングモードとの間など、異なるモード間で切り換えることを可能とするプラグおよび注入口クリップの使用を含む。これはまた、例えば、使用後において、老廃生成物を含有するデバイスをシーリングするほか、ウェル内およびチャネル内の圧力を制御することを可能とするのにも使用することができる。また、このようなプラグも、複数のチャネルを同時に遮断することを可能とする、櫛形配置で装備することができる。
【0120】
ある範囲にわたる異なる検出機構を使用して、物質の応答を決定することができる。リードアウト/造影領域から伸長する個別のフルイディクス配置を施し、カバーによる遮蔽を使用することができる。これは、ウェルチャネルを曝露しながら、目視できないように残りのチャネルを不透明層によりおおわれた状態で保持することを可能とする。これは、望ましくないシグナルが、チャネル320内およびシーディングチャネル341.1内の物質から発生することを防止することにより、自動式センシング配置を使用して、ウェル内の物質を検出する場合に有用でありうる。
【0121】
流体培地、細胞、溶解物、物質などのうちの任意の1または複数のオフテイクのためには、SBSマイクロ滴定プレートを使用することができる。一例では、これは、1,536ウェルプレートに適合するプラグを含みうる。
【0122】
また、個々の列またはウェルに固定物または溶解物(RLT、RIPAなどによる)を供給することも可能である。デバイスにはまた、細胞を、個々のウェルまたはウェルのサブセットから、例えば、無傷生細胞、細胞の固定(例えば、パラホルムアルデヒドまたは適切な固定剤による)試料、細胞溶解物、またはRNA単離調製物を含む、ある範囲のフォーマットで、または緩衝液により回収する能力も組み入れることができる。
【0123】
ここで、装置300の具体例の作動の実験例についてより詳細に記載する。
【0124】
これらの例では、スケーラブルの、階層的な入れ子状希釈ネットワークおよび抵抗流動原理を使用して装置をデザインし、SU−8 2100フォトリソグラフィー成形およびポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)ソフトリソグラフィー成形により、250μmのチャネル高へと作製し、図3Cに示される構成で、第1の層および第2の層301、302と基板303とを接着することによりアセンブルした。
【0125】
外因性因子の全因子マルチプレックス処理は、注入口311、312、313、314、315、316およびチャネル320の配置だけによりコードされ、組み込まれる弁または広範な周辺機器の接続部を利用しない。
【0126】
これは、流体接続部の数をゼロ、ゼロ、または直線的増大のそれぞれとして、かつ、物理的層は増大させずに、並列もしくは直列の多連ウェルを付加すること(実験点の線形スケーリング)により、さらなる濃度レベルを付加すること(多項式スケーリング)により、またはさらなる因子を付加すること(指数関数スケーリング)により、装置300をたやすくスケーラブルとしうることが察知されるであろう。
【0127】
装置は、3つの可溶性因子の各々による3つの濃度の組合せ全てを作り出す(全因子アレイ;6つの流体の入力だけに由来する、合計で3=27の異なる条件)。この柔軟なアーキテクチャーは、a:並列および/または直列の多連ウェル(実験点の線形スケーリング)、b:濃度レベル(多項式スケーリング)、およびc:外因性因子(指数関数スケーリング)に照らしてたやすくスケーラブルであり、合計でab個の実験点をもたらすことが重要である。
【0128】
拡散による混合の後、アレイは、外因性因子を、ウェルアレイ330へと供給するが、これは、上記で記載した通り、培養ウェルとして作動する270個のウェルを含み、1536ウェルマイクロ滴定プレートと同様のサイズおよび配置を施される。グリッドは、10個の直列培養ウェル27列を含む(各列が、異なる組成の外因性因子を構成するのに対し、内因性傍分泌因子は、流体がウェルチャネルに沿って連続的に流動するにつれて、次第に蓄積される)。
【0129】
この例では、ウェルチャネルの幅は、250μmであり、ウェル331は、直径が1.63mmであり、高さが250μmである。図3Dに示される通り、hESCのための公称の流動条件下における計算流体力学モデル化は、幅250μmのウェル331間相互接続部を、ウェル331を空間的に隔離するのに用いる場合、培養ウェル内の細胞を緩徐な沿面的層流へと曝露する結果として生じるせん断応力は小さいことを示す。これらの流動特徴により、モジュレート作用物質は、ウェル間で移送されうることが確認される一方で、細胞が流体の流動から受ける破壊は、最小限であることも確認される。
【0130】
[色素のローディング]
アレイにより形成される可溶性条件のスペクトルを査定するため、色素ローディング実験を実施し、ウェルの各々の中の可溶性因子レベルを決定するのに、蛍光分析による定量化を使用した。この例では、赤色、黄色、および青色の色素を使用して、注入口312、314、316へと供給される因子A、B、Cをシミュレートする。注入口311、313、315へは、PBS流体を供給し、これにより、3つの因子と対応する緩衝液との混合をシミュレートする。その後の希釈を可能とするように、標準化濃度を3とする原液を提供する。因子A、B、Cの各々の理論濃度をパネル401に示し、結果として得られる色素分布の写真を、図4Aのパネル402に示す。
【0131】
アレイ内の各列における(すなわち、各ウェルチャネルに沿う)可溶性因子レベルの、蛍光分析による定量化を実施した。因子チャネルA、B、およびCは、逐次的かつ独立に定量化し、結果を図4Bに示す。チャネルBおよびCにおける、ゼロ濃度条件下の蛍光の検出は、吸着した残留色素に起因する。バーは、2回の独立の実験の平均±標準偏差を表す。結果は、ウェルアレイにわたる全因子スペクトルの条件の生成のほか、十分な、拡散による、最大で40kDaの因子の混合を確認する。全ての濃度レベルの正確な生成はまた、デバイスを通した流動分布が、デザインした流量と一致し、列間で同等であることも含意した。
【0132】
HES3−EOS−C(3+)−EiP Pluripotency Reporter hESC Lineを使用して、多数の実験を実施した。ここで、使用される実験手順についてまとめるが、多数の実験の結果については、下記で記載する。
【0133】
[HES3−EOS−C(3+)−EiP Pluripotency Reporter hESC Line]
PL−SIN−EOS−C(3+)−EiP(Addgeneプラスミド21313)レンチウイルスレポーター構築物は、マウス早期トランスポゾン(ETn)プロモーターと、とりわけ多能性細胞内で高度に活性である、Oct4(また、Pou5f1とも称する)遺伝子の遠位エンハンサー(保存的領域4)に由来する3 Oct4/Sox2結合性モチーフとを含むキメラプロモーターの制御下で、eGFP−IRES−ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼを発現する。ウイルス粒子を産生させるために、レンチウイルスベクターおよびパッケージングベクターを、293FT細胞へとトランスフェクトした。単一細胞の継代培養へと適合させたHES3 hESCに、レンチウイルス粒子を遺伝子導入し、2〜2.5μg/mLのピューロマイシン存在下の選択下にあるmTeSR−1/Matrigel培養物中で維持した。
【0134】
[アレイのスクリーニングおよび静置対照]
装置300をオートクレーブ処理し、「チャネル−アウトガス法」に従い充填し、次いで、400μg/mL(のべ10μg/cmのタンパク質が供給される)の精製ヒトフィブロネクチン(Australia、North Ryde、BD Biosciences社)(HES3−EOS−C(3+)−EiP実験)、または付着アッセイを介して同定される限定希釈率の、hESC用Matrigel(BD Biosciences社)(HES3−MIXL−GFP実験)を単回注射することにより、表面コーティング(室温で2〜4時間にわたり)した。
【0135】
組織培養フラスコ内で維持されたhESCを、TrypLE Expressで引きはがし、すりつぶして、単一細胞懸濁液を準備し、次いで、mTeSR−1で洗浄し、この中に、10μMのROCK阻害剤(Y−27632二塩酸塩一水和物、Australia、Sigma−Aldrich社)を組み入れて、1mL当たりの細胞1.6×10個(HES3−EOS−C(3+)−EiP実験;1cm当たりの細胞4×10個の表面密度)で再懸濁させるか、またはROCK阻害剤を伴わずに、1mL当たりの細胞3.0×10個(HES3−MIXL−GFP実験;1cm当たりの細胞7.5×10個)で再懸濁させた。
【0136】
細胞を、インキュベータ(37℃、空気中5%のCO)内で、8〜10時間にわたり、ウェルアレイ330へと付着させ、次いで、1時間当たり60μLの総流量で、指定された因子条件下にある、連続的な流体の流動下に置いた。
【0137】
3または1mLのシリンジ(NJ、Somerset、Terumo社)と、ステンレス鋼製22ゲージブラントノーズニードルチップを注入口へのコネクターとして伴うポリエチレンチューブ(PE50、内径0.58mm;Australia、North Ryde、BD社)とを介するシリンジポンプ(NE−1800;New Era Pump Systems社)により、容積駆動型流動をもたらした。全ての培地に、1%のv/vのペニシリン/ストレプトマイシン溶液をさらに補充した。24ウェルプレート内の静置培養対照は、表面積当たり同等総量のタンパク質を供給するように調整された溶液濃度でコーティングし、また、同等表面密度の細胞もシーディングし、培地は実験終点まで毎日交換した(また、「補足的方法」も参照されたい)。
【0138】
装置300における使用のために、馴化培地を、RPMI B27培地中の10ng/mLのBMP−4中および6ng/mLのアクチビンA中で分化させた静置対照から回収した。遠心分離により細胞を除去し、上清培地を4℃で保存した。1日目の培地と2日目の培地とを混合し、アレイ内での使用前に、BMP−4およびアクチビンAを、公称レベルの50%で再補充した。
【0139】
[in situ免疫蛍光染色および共焦点造影]
in situ免疫染色のために、流体の流動を開始した6.5日後(HES3−EOS−C(3+)−EiP実験)または2.5日後(HES3−MIXL−GFP実験)にインキュベーションを終了させた。実験を実施するとき、注入口311、312、313、314、315、316は、当初プラグで閉鎖し、共通シーディング/コーティング排出口342は、開放のまま放置した。染色溶液と洗浄溶液との逐次的交換は、シリンジポンプにより駆動した。
【0140】
ウェルアレイ330をPBSで洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド/PBS溶液で固定した(室温で30分間にわたり)後、0.2%のアジドナトリウムを伴う3%のウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)/PBS溶液でブロッキングした(室温で30〜45分間にわたり)。マーカーは、0.3%のBSA/PBS中のTG30(4μg/mL、Ms IgG2aアイソタイプ、Millipore社)およびTRA−1−60(4μg/mL、Ms IgMアイソタイプ、Millipore社)に対する一次抗体により検出した(室温で1時間にわたり)。
【0141】
次いで、ウェルアレイ330を、0.3%のBSA/PBSで洗浄し、その後、0.3%のBSA/PBS中の、アイソタイプをマッチさせた二次抗体(ヤギ抗Ms IgG(H+L)−Alexa Fluor 568、ヤギ抗Ms IgM−Alexa Fluor 647;いずれも4μg/mL;OR、Eugene、Molecular Probes社)および10μg/mLのHoechst 33342(Molecular Probes社)溶液で処理した(室温で1時間にわたり)。HES3−MIXL−GFPアレイは、Hoechstだけで染色した。
【0142】
次いで、造影のために、ウェルアレイ330を、0.3%のBSA/PBS中で洗浄した/0.3%のBSA/PBS中に取り付けた。Zeiss LSM 710レーザー走査共焦点顕微鏡システムおよびZen 2008収集ソフトウェア(Australia、North Ryde、Carl Zeiss社)により、270個の培養ウェルを含む、装置300全体の16ビットのマルチカラータイル走査モンタージュ画像を収集した。試料の傾斜に起因する強度の変動について調整し、z方向の強度が変動した核染色および膜染色を完全に捕捉するため、光学断面を収集し、次いでこれを処理して最大強度の投影とし、これを画像解析のために使用した。
【0143】
[データ処理および統計学的方法]
AGScan(https://mulcyber.toulouse.inra.fr/projects/agscan/)により、アレイから全蛍光強度(例えば、TEOS−GFP)を抽出した。各チャネル内のスポット強度は、IEOS−GFP=(TEOS−GFP−μEOS−GFP)/σEOS−GFP[式中、IEOS−GFPは、特定のアレイについてのEOS−GFPの発現指数であり、μEOS−GFPは、特定のアレイについての全てのTEOS−GFPの平均であり、σEOS−GFPは、特定のアレイについての全てのTEOS−GFPの標準偏差である]により、個々のアレイ内のそのチャネル内の全てのスポットの平均および標準偏差について線形変換した。これにより、各スポットの強度を、大域的平均に照らした大域的標準偏差との関連で評価する発現指数(IEOS−GFP、IMIXL1−GFP)がもたらされる。
【0144】
MINITAB 15ソフトウェア(Minitab Inc.社)により、発現指数データについての因子解析を実施する。発現指数は応答変数として表し、可溶性因子は入力として表した。第4の入力変数である「位置」は、各培養ウェルのアレイ内の行座標に基づき規定した。次いで、別稿45に記載される方法に従い、MINITABにより効果の大きさを求めた。Microsoft Excelにより、ピアソンの積率相関係数(rX,Y)、線形回帰の決定係数(R)、およびスチューデントのt検定統計を計算した。スチューデントのt検定のために、不等分散を仮定する2つの試料について、両側検定を実施し、p<0.05の差違を有意であると考えた。
【0145】
[原始線条の誘導および化学的モジュレーション]
mTeSR−1/Matrigel培養物中で維持されたHES3−MIXL1−GFP hESCを、TrypLE Expressにより引きはがし、1cm当たりの細胞7.5×10個で、hESC用Matrigelの限定希釈液でコーティングされた24ウェルプレートへとシーディングし、一晩にわたり付着させたところ、その後における培養物のコンフルエンシーは、約60%であることが典型的であった。次いで、2.5日間にわたり、5μMのIWP−4および5μMのCHIR99021(いずれも、Stemgent社)、または0.1%のv/vのDMSO媒体対照を任意選択で添加した、10ng/mlのBMP−4および6ng/mlのアクチビンA(いずれも、R&D Systems社)を伴うRPMI B27培地中で分化させることにより、MIXL1−GFPの発現を誘導した。
【0146】
ここで、各実験の結果について記載する。
【0147】
[マイクロバイオリアクターアレイ内のhESCの多能性スクリーニング]
装置300の性能を、生物学的スクリーニング工程において検証するために、規定された条件下におけるHES3−EOS−C(3+)−EiP hESCの多能性スクリーニングを実施した。この実験のために、mTeSR−1カスタム培地(型番05892、BC、Vancouver、StemCell Technologies社)によるバックグラウンドを、維持因子であるFGF−2およびTGF−β1、ならびに精製ヒトフィブロネクチン(Australia、North Ryde、BD Biosciences社)による付着基板から差し引いた。hESCは、一定の流動(1時間当たりのべ60μL)下で、6.5日間にわたり、FGF−2、TGF−β1、およびレチノイン酸(RA)の全因子アレイ内で培養した。スクリーニング条件を図5Aに示すが、数は、FGF−2(ng/mL)、TGF−β1(ng/mL)、およびRA(μM)の相対濃度を指し示す。維持因子は、ウェルアレイ330を使用して、培地へと逆滴定し、レチノイン酸は、分化についての内部対照として組み入れた。
【0148】
レンチウイルスにより遺伝子導入された多能性レポーター系であるHES3−EOS−C(3+)−EiPによるGFP発現を、多能性状態についての高感度のリードアウトとして使用した。アレイと並行した静置対照(24ウェルプレート)ランにおいて、多能性レポーター系の有用性を検証し、多様な維持刺激および分化刺激に応答するその感度を特徴付けた。多能性は、実験終点において、表面マーカーであるTG30およびTRA−1−60についてのin situ共免疫染色によりさらに確認し、DNAは、Hoechst 33342で対比染色した(「補足的方法」)。免疫検出相は、アレイ内の細胞数またはGFP蛍光にそれほど影響を及ぼさなかった。
【0149】
マルチチャネル蛍光データは、レーザー走査共焦点造影により捕捉したが、結果として得られる画像を図5Bに示す。列25および列3について、アレイの行1のウェルの高倍率画像を図5Cおよび図5Dのそれぞれに示す。スケールバーは、500μmに対応する。アレイ内の総蛍光強度のヒートマップ(任意単位)を図5Eに示す。スポット強度は、個々のアレイ内の全てのスポットの平均および標準偏差について線形変換して、発現指数(例えば、IEOS−GFP)を得た。この手法は、ECMアレイのために取られる手段と同様であり、1つの条件において、全ての処理の平均に照らして強い正の効果または負の効果が認められるスクリーン内の「ヒット」を明確に強調する効果を有する。大域的な標準化法は、さらなる較正器を伴わなければ、異なるアレイ対照間またはプレート対照間における絶対発現レベルの直接比較を可能としない。
【0150】
結果は、6.5日後において、HES3−EOS−C(3+)−EiPレポーター系内のGFP発現は、大きなダイナミックレンジを有し、厳密な応答をもたらしていたが、5または10μMのRAで処理したところ、FGF−2処理またはTGF−β1処理にもかかわらず、EOS−GFP発現は、低いベースラインレベルまで消失したことを示す。また、列1(因子を伴わない)および列4(0.25ng/mLのTGF−β1)も、RA処理条件と同様のEOS−GFP発現をもたらしたことから、維持促進シグナルが非存在または不十分であることに対する感度が示される。TG30およびTRA−1−60が呈示したダイナミックレンジは、EOS−GFPよりも小さく、アレイ全体にわたり、より無差別的な発現分布を示した。
【0151】
図5Eおよび図5Fに示される通り、一部のRA処理条件では、6.5日後においても、残留発現が認められたが、これは、FGF−2処理および/またはTGF−β1処理による統合効果について表示するところが大きいと考えられた。3つの多能性マーカー全てについて、最大の応答は、第1行内の列25において生じたが、これは、再構成されたmTeSR−1条件の直接的な供給に対応する。よって、検証の観点からすると、アレイは、緩徐な潅流条件の賦課下においてもなお、mTeSR−1培地の有効性を追認することができた。
【0152】
結果は、共通の因子をウェルチャネルへと供給する場合でもなお、多能性マーカーの発現が位置依存性であり、特に、ウェルチャネルの長さに沿って変化することを強調することに注意されたい。本実験では、多能性マーカーの最大の発現は、アレイの第1行において生じたのに続いて、後続する下流のウェルを通じて発現勾配の減少が認められた。アレイからのこのような創発的署名を抽出するために、従来の培養フォーマットでは、他の形で明示的に取り出すことが困難な推定傍分泌効果を特徴付ける目的で、ウェルチャネル内のウェルの位置座標(行数)を、因子解析のための入力因子として組み入れた。次いで、図5Fに示される通り、因子解析により、個々の因子の主効果が明らかとなった。
【0153】
第1行におけるピークEOS−GFP発現は、外因性因子が、多能性を維持するように直接作用することが可能であったことを示唆する。自家フィーダー細胞の発生または傍分泌因子の蓄積が要望されたとすれば、EOS−GFP発現は、下流における最大または勾配の増大を明らかにすることが予測されよう。HES3−EOS−C(3+)−EiP細胞は、スクリーニングの前に、多能性細胞についてのピューロマイシン選択にかけたので、このような自家フィーダーが、初期培養物中に存在する可能性は小さい。結果は、GFPの減少が、ウェル間で移送される拡散可能因子の産生の結果としての減少であることを指し示す。
【0154】
アレイデータからは、位置依存性発現の有意差が、0.25または0.5ng/mLのTGF−β1の添加から生じたのかどうかは明らかでないが、TGF−β1を含まない列(列10および19)もまた、勾配の減少を示したことから、異なるエフェクターの存在が示される。さらに、代謝物からの影響も考えた。しかし、行10および細胞密度が最大の場合において、ブドウ糖の枯渇は、約3mM(mTeSR−1レベルの22%)であり、乳酸の蓄積は、約7mM(3週間後におけるTRA−1−60の発現を部分的に低減することが示されるレベルの32%19)であると推定される。したがって、正味の分化促進効果を及ぼす分泌因子の捕捉物により、負の傍分泌効果が引き起こされると考えられる。これは、hESC馴化培地中のこのような因子の検出と符合する。
【0155】
全てのRA含有条件を度外視して、EOS−GFPデータをDNAに照らして標準化することにより、位置依存効果が明らかとなった。多能性マーカーの発現指数は、全ての270個のスポットの対応のある総強度に基づく、rEOS−GFP,TG30=0.77、rEOS−GFP,TRA−1−60=0.64、およびrTG30,TRA−1−60=0.75の相関係数(rX,Y)で強く相関した。また、多連のアレイ実験も、270個のスポット全ての対応のある総強度に基づき、rArray1,Array2=0.60、0.64、および0.41のそれぞれを示すIEOS−GFPデータ、ITG30データ、およびITRA−1−60データ、または行1〜5からの対応のある平均強度について、rArray1,Array2=0.73、0.86、および0.44を示す、IEOS−GFPデータ、ITG30データ、およびITRA−1−60データと高度に相関した。これは、スポットのサブセットから測定される平均応答についての相関係数である0.35〜0.65を示した、公表されているECMタンパク質アレイ実験と良好に類比される。
【0156】
[原始線条による分化スクリーニング]
hESCの分化プロトコールは、標的表現型の出現を駆動する胚様体(EB)を利用することが典型的である。しかし、EBは、異種性であり、シグナル伝達活性の性状不明の空間的勾配を含有し、傍分泌シグナルの制御をほとんどもたらさない。分化転帰はまた、EBのサイズに大きく依存し、傍分泌因子の蓄積など、局在化細胞密度から生じる微小環境パラメータを、極めて重要な関与パラメータとして含意することも示されている。これについて精査するために、レポーター遺伝子によりマークされたmESCの強制凝集を活用する実験が試みられているが、このような手法は、胚様体内の微小環境組成の、内在的な空間的−時間的変動を覆い隠し、規定された刺激の組合せを、特異的な分化転帰と連関させることを困難とする。
【0157】
これらの機能をもたらす装置300の能力をさらに裏付けるため、hESCを、転写因子であるMIXL1でマークされた原始線条様(中内胚葉性)表現型へと分化させた。単層として成長するHES3−MIXL1−GFP hESC(また、HES3 MIXL1GFP/whESCとも称する;核型分類であり、in vivoにおいては奇形腫である)を、装置300内の連続的な流動下、RPMI B27培地中のBMP−4、アクチビンA、およびGSK−3β阻害剤/カノニカルのWnt活性化因子6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)の全因子アレイ内で、2.5日間にわたり分化させた。アレイ条件を示すスクリーニングパネルを図6Aに示すが、数は、BIO(μM)、BMP−4(ng/mL)およびアクチビンA(ng/mL)の濃度を指し示す。
【0158】
GFPを発現させ、実験終点においてHoechstで対比染色されたHES3−MIXL1−GFP hESCについての共焦点タイル走査画像を図6Bに示し、アレイ内の総蛍光強度のヒートマップを図6Cに示す。ウェルアレイ330内の個々のウェルの高倍率共焦点画像を図6Dに示すが、スケールバーは、500μmの長さを指し示す。
【0159】
終点におけるMIXL1−GFPの発現を、緊密に定められた因子条件下で活性化させたところ、最大の発現は、列6、15および24において生じた(図6Bおよび図6Cに示される通り、条件は各々、0、1、または2μMのBIOのそれぞれと組み合わされた、10ng/mLのBMP−4および6ng/mLのアクチビンAを含有した)。不鮮明なHoechst DNA染色により特徴付けられる細胞を含有する、高MIXL1−GFP発現ウェルの直前には、各場合において、クラスター化した細胞層および鮮明なDNA染色により特徴付けられる「DNA鮮明」ウェルが先行したことは注目に値する。表現型のこの周期的回帰は、外因性因子と傍分泌因子との、固有でかつ規定された組合せから生じる、個々のウェル内の(すなわち、緊密に定められた条件のセット内の)比較的同種性の中間的集団の離散的なパターン化を示唆する。図6Aにおける通りの多連のアレイ実験の相関係数は、IDNAおよびIMIXL1−GFPのそれぞれについて、0.66および0.69であった。
【0160】
図6Eに示される通り、発現指数であるIMIXL1−GFPについての因子解析は、アクチビンAに対する直線的な正の依存性、1μMおよび10ng/mLのそれぞれにおけるBIO濃度およびBMP−4濃度の最適値を示した。因子解析はまた、最適濃度で組み合わされた場合の、BMP−4とアクチビンAとの相乗作用も強調した。しかし、位置依存性が、行7において最適値を伴う「傍分泌署名」であって、発現レベルの指数関数的傾向の増大を先行させ、指数関数的傾向の減少を直後に後続させた署名を曝露したことは最も注目に値する。全アレイにわたり、相当量のMIXL1−GFPの発現が検出されたのは、ウェルの第4行より下方だけであることから、BMPによる刺激と、アクチビンによる刺激と、カノニカルのWntによる刺激との組合せだけでは、MIXL1の発現を直接活性化させるのに十分でなかったことが示唆される。3.5日間にわたるアレイランは、GFP発現の同様の分布を示したことから、初期行における欠損が、誘導時間の不足に純粋に起因したわけでなはいことが示唆される。そうではなくて、MIXL1の活性化には、一連の培養ウェルを通した可溶性傍分泌因子の漸進的蓄積が要求される。
【0161】
誘導馴化培地(公称の因子レベルの50%を再補充した)をその後の実験における因子として供給したところ、MIXL1−GFPの発現が、用量依存的な形でアレイの最上行へとシフトすることが観察されたことは、このような移送可能な傍分泌因子の存在を強力に裏付ける。
【0162】
この一因となる因子を同定するための能力を裏付ける目的で、装置300をさらに使用して、FGFシグナル伝達を候補傍分泌シグナルとしてスクリーニングした。
【0163】
図7Aは、使用されるスクリーニング条件を示し、数は、誘導馴化因子補充培地[CM、最終% v/v]であるCHIR99021の濃度(CHIR、μM)およびIWP−4の濃度(μM)を指し示す。GFPを発現させ、実験終点においてHoechstで対比染色した、HES3−MIXL1−GFP hESCの共焦点タイル走査画像を図7Bに示し、アレイ内の総蛍光強度のヒートマップを図7Cに示す。
【0164】
図7Dは、CMと位置との組合せの、IMIXL1−GFPに対する効果の大きさの平均を示す相互作用効果のプロットである。これは、馴化培地が、発現レベルを改善し、かつ、発現をアレイの最上行へとシフトさせたことを強調する。図7Eは、CHIR添加の位置依存効果を示す列19〜21についての、DNAを標準化した総蛍光強度(TMIXL1−GFP/TDNA)を示す。CHIRは、発現レベルを改善し、かつ、発現が大きく増大した行の数を増やした。図7Fおよび図7Gは、総強度およびDNAについて標準化された強度のそれぞれに関する、CHIR添加の効果を確認する個別のアレイラン由来のデータを示す。
【0165】
図7Hは、IWP−4により、静置対照におけるMIXL1の誘導が完全に遮断されたので、Wntの蓄積もまた要求されるが、発現をわずかながら上方にシフトさせたのはCHIR99021だけであるので、Wntの蓄積が「制限的な」蓄積された因子である可能性は小さいことを示す。
【0166】
MIXL1−GFPの活性化後、下流の培養ウェルでは、発現の強度が急速に減衰したことから、MIXL1の誘導は、狭い濃度範囲の傍分泌因子により調節されること、または、MIXL1−GFP集団自体が、その誘導に対してネガティブフィードバックをもたらす因子を産生することが指し示される。
【0167】
また、条件のうちの1つである列15(10ng/mLのBMP−4、6ng/mLのアクチビンA、1μMのBIO)において、MIXL1−GFPの鮮明な発現は、図5Bおよび図5Cに示される、列6内の行7において認められる蛍光の単一のピーク(同一の条件下であるがBIOを伴わない)ではなく、4〜5行にわたり広がったことも注目された。これは、負のフィードバック効果が、部分的に、強化されたカノニカルのWntシグナル伝達により克服されうることを示唆した。この仮説を検証するため、細胞を、10ng/mLのBMP−4および6ng/mLのアクチビンAを含有するRPMI B27培地によるバックグラウンド中の、CHIR99021(BIOとは対照的に、CDK4活性に干渉しないGSK−3β阻害剤であるCHIR)、公称レベルの50%のBMP−4およびアクチビンAを再補充した誘導馴化培地(CM)、およびIWP−4(Wnt産生の阻害剤)の全因子アレイ(「補足的方法」)内で分化させた。図7B図7C図7Eに示される通り、CHIR99021はまた、MIXL1−GFP発現による線条の拡大ももたらしたが、これは、その作用方式(GSK−3β/β−カテニンレベルにおける、カノニカルのWntシグナル伝達の細胞内強化)に基づくと、このフィードバックループの潜在的なメディエーターのクラスとしてのDKKおよびsFRPなど、Wntに対するアンタゴニスト性シグナルの分泌を含意する。図7F図7Gに示される通り、この効果はまた、個別のアレイ実験においても顕著であった。
【0168】
このような傍分泌因子への依存性および中胚葉の特定を調節する負のフィードバックシグナルは、原始線条など、一過性のin vivo構造において、明確に必要な発生駆動因子であるであるが、in vitroにおける分化効率は不可避的に低減する。したがって、アレイ内の正の傍分泌調節因子および負の傍分泌調節因子をモジュレートすることの転帰が、従来の静置培養において方向付けられた分化プロトコールを最適化するように変換されうるのかどうかを調べた。実際、図7Hに示される通り、RPMI B27+10ng/mLのBMP−4+6ng/mLのアクチビンAという標準的な条件に照らして、5μMのCHIR99021を添加すると、MIXL1−GFPの誘導が、細胞のうちの51%から86%へと増大することが判明した。
【0169】
ここで、図3A図3Cの装置の改変形を示す、図8A図8Dを参照しながら、装置のさらなる具体例について記載する。
【0170】
この例でもまた、装置は、基板803へと取り付けられた、図8Aおよび図8Bに示される、第1の被覆層801および第2の被覆層802を含む。ここでもまた、層は、適切な接着工程を使用して接着させたPDMSまたは他の類似の材料から形成することができる。前出の図3A図3Cの例で記載した通り、基板は、スライドホルダーと連携して、標準的なマイクロプレートフットプリントをもたらすように適合させることが典型的である。
【0171】
この例では、装置800は、チャネル820を介して、ウェルアレイ830と相互接続された注入口810を含む。注入口810は、第1の層801内に装備され、それぞれのポートを介して、第2の層802内のウェルアレイへと接続されている。この配置は、前出の図3A図3Cの具体例の配置と同様であり、したがって、さらに詳細に記載されないことが察知されるであろう。
【0172】
この例では、装置は、4つの注入口の対811.1、811.2、812.1、812.2、813.1、813.2、814.1、814.2を含み、各注入口の対は、それぞれの因子および緩衝液を受容するためのものである。ウェルアレイ830は、4つの注入口の対を介して、81のウェルチャネルにわたり供給される、4つの因子の3つの濃度レベルからなる全因子アレイを規定する。チャネルは、ウェルアレイ内で2連である。各ウェルチャネルは、50個のウェルを含み、これにより、8100ウェルを伴うウェルアレイを規定する。
【0173】
図8Cにおいて示す通り、適切なチャネルの経路変更を介して第2の層上に整列させた、4つの注入口の対811.1、811.2、812.1、812.2、813.1、813.2、814.1、814.2が提供される。整列させた構成内に注入口を装備することは、例えば、要求に応じて、使用される単一のクリップコネクターが、因子の供給および緩衝液の供給の、注入口へのカップリングを可能とすることにより、注入口を流体の供給とカップリングする一助となる。一例では、これは、Dolomite Microflux Connector(8ピン)レイアウトに対応させるのに使用することができる。
【0174】
因子および緩衝液のウェルチャネルへの一貫した送達を確保するために、これに応じて、例えば、適切な蛇行の使用を介して、チャネル320の抵抗をデザインし直す。
【0175】
装置800は、細胞を含有するシーディング流体を受容するために使用しうる、シーディング注入口841をさらに含む。シーディング注入口は、シーディングチャネル842を介してウェルチャネルと流体連絡しており、これは典型的に、チャネル820のための接続点と反対側のウェルチャネルの末端へと接続されている。これは、シーディング注入口がまた、排出口としても機能することを可能とし、要求に応じて、ウェルチャネルを通って流動してきた流体を駆出することを可能とすることが察知されるであろう。
【0176】
この例では、シーディングチャネル842は、等抵抗(フラクタル)の配置で装備され、流量分布を改善する。加えて、幅を拡張した抵抗の小さなチャネル842.1も装備される。排出口区間として作動する、等抵抗のシーディングチャネルを組み入れることにより、作動時において均一の流動分布が確保されるほか、シーディング時における均等な細胞分布のための、抵抗の小さな細胞シーディング構造ももたらされる。
【0177】
加えて、排出口区間において長いチャネルを装備することにより、細胞シーディング構造とウェルチャネルアレイとの間に拡散障壁がもたらされ、使用されるウェルチャネルの交差汚染が防止される。
【0178】
81のウェルチャネルの各々にわたる因子の組合せの例を、図8Eおよび図8Fに示す。緑色、赤色、黄色、および青色の色素を使用して、注入口811.2、812.2、813.2、814.2へと供給される対応する緩衝液と共に、注入口811.1、812.1、813.1、814.1へと供給される因子A、B、C、Dをシミュレートする。この例では、理論濃度を図8Eに示し、色素ローディング実験から結果として得られる実際の濃度を図8Fに示す。加えて、シーディング注入口841を介する色素ローディングの結果を図8Gに示すが、これにより、ウェルチャネル全体にわたる色素の均等な分布が強調される。
【0179】
したがって、上記で記載した例は、細胞活性を多様な条件下でモジュレートするための装置をもたらす。一例では、装置は、可溶性因子のスクリーニングを妥協のない形で行うために、規定された培地および付着基板を活用し、培地の連続的な潅流をもたらし、傍分泌効果を分離および造影し、時間的により安定的な微小環境をもたらし、複数の刺激の間の相互作用効果をデコンボリュートするための、培養条件の全因子捕捉物を作り出す。
【0180】
実験データは、装置を活用して、広範囲の過程にわたり、規定された刺激の組合せを、多能性幹細胞の表現型転帰へとマップしうることを裏付ける。加えて、アレイは、複数のウェルをウェルチャネルに沿って配置することにより、従来の静置培養では覆い隠されていた傍分泌効果、特に、EBを空間的に分離および造影することが可能である。所与の外因性因子による刺激レジームから生じる傍分泌署名を明らかにすることにより、デバイスはまた、直接作用性可溶性因子の階層を解読するためのアッセイももたらす:例えば、推定される傍分泌因子の、アレイへの直接的な添加のほか、培地からの因子の枯渇、またはそれらのシグナル伝達経路の阻害は、分化転帰の駆動に関与する傍分泌因子の識別を明らかにするのに有効な戦略である。
【0181】
装置はまた、分化転帰をモジュレートする傍分泌効果を検討することも可能とし、これにより、階層および作用方式、または原因となる特異的な因子の同定を可能とする。
【0182】
上記で記載した装置は、マイクロ流体チップの自動化および周辺機器サポートを伴う、標準化されたプラットフォームアーキテクチャーと共に使用して、マイクロバイオリアクターアレイ技術の、多能性幹細胞の自己再生過程および分化過程を制御する微小環境シグナルの発見および最適化への広範な適用を可能とし、ひいては、多能性幹細胞の将来における潜在的可能性を切り開きうるであろうことが察知されるであろう。プラットフォームはまた、多様な生体分子および薬理学的作用物質についての汎用性の微小環境スクリーニングプラットフォームとして、他の細胞型に対しても、広範な有用性を有する。
【0183】
プロモーター、阻害剤、成長因子、凝固因子、ホルモン、シグナル伝達作用物質、化学組成物、薬物、タンパク質、リガンド、抗体、生物、細胞、ミニ細胞、合成細胞、リポソーム、ミセル、ポリマーミセル(ポリマーソーム)、脂質、ポリマー、界面活性剤、脂肪酸、イオン溶液、酸性溶液または塩基性溶液、検出試薬、DNA分子、RNA分子、DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリペプチド、アミノ酸、ウイルス粒子、プラスミド、ナノ粒子、マイクロ粒子、磁性粒子、馴化培地、馴化培地から精製された画分、天然抽出物、培養培地成分、細胞培養添加剤、炭水化物、ビタミン、代謝物、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、プロテオグリカン、および病原体を含むがこれらに限定されない、様々な物質が想定されている。
【0184】
使用しうる細胞に関して、非限定的な例は、造血幹細胞、神経幹細胞、骨幹細胞、筋幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、内皮幹細胞、多能性胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、多能性胚性生殖細胞、全能性細胞を含むがこれらに限定されない幹細胞;筋芽細胞;好中球;リンパ球;マスト細胞;赤芽球;骨芽細胞;破骨細胞;軟骨細胞;好塩基球;好酸球;脂肪細胞;ニューロン;副腎髄質細胞;メラニン細胞;上皮細胞;内皮細胞;肝細胞;肺細胞;腎細胞;およびこれらのそれぞれの前駆細胞;それらの例示的な例が肺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、脳腫瘍、および精巣癌を含む、腫瘍細胞、黒色腫、骨髄性白血病;幹細胞または他の細胞に由来する前駆細胞または分化細胞の中間集団;ならびに上記のうちのいずれかからなる細胞の混合物を含む。他の適切な細胞は、Jurkat T細胞、NIH3T3細胞、CHO、COSなどのほか、細菌、藻類、酵母、真菌などを含む非哺乳動物細胞型を含むがこれらに限定されない、公知の研究用細胞および研究用細胞系を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、実質的に同種性の細胞集団を形成する。他の実施形態では、細胞は、異種性の培養物を形成し傍分泌性シグナル伝達機構を介して、相互作用することが公知の細胞型を含む。
【0185】
プロモーター、阻害剤、成長因子、凝固因子、ホルモン、シグナル伝達作用物質、化学組成物、薬物、タンパク質、リガンド、抗体、生物、細胞、ミニ細胞、合成細胞、リポソーム、ミセル、ポリマーミセル(ポリマーソーム)、脂質、ポリマー、界面活性剤、脂肪酸、イオン溶液、酸性溶液または塩基性溶液、検出試薬、DNA分子、RNA分子、DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリペプチド、アミノ酸、ウイルス粒子、プラスミド、ナノ粒子、マイクロ粒子、磁性粒子、馴化培地、馴化培地から精製された画分、天然抽出物、培養培地成分、細胞培養添加剤、炭水化物、ビタミン、代謝物、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、プロテオグリカン、および病原体を含むがこれらに限定されない、様々なコーティングが想定される。
【0186】
流体はまた、プロモーター、阻害剤、成長因子、凝固因子、ホルモン、シグナル伝達作用物質、化学組成物、薬物、タンパク質、リガンド、抗体、生物、細胞、ミニ細胞、合成細胞、リポソーム、ミセル、ポリマーミセル(ポリマーソーム)、脂質、ポリマー、界面活性剤、脂肪酸、イオン溶液、酸性溶液または塩基性溶液、検出試薬、DNA分子、RNA分子、DNA配列またはRNA配列をコードする構築物、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリペプチド、アミノ酸、ウイルス粒子、プラスミド、ナノ粒子、マイクロ粒子、磁性粒子、馴化培地、馴化培地から精製された画分、天然抽出物、培養培地成分、細胞培養添加剤、炭水化物、ビタミン、代謝物、オリゴヌクレオチド、融合タンパク質、プロテオグリカン、および病原体を含むがこれらに限定されない作用物質も含みうる。作用物質は、流体内の溶存形態、または流体内の固体としての懸濁形態など、任意の適切な形態でありうる。
【0187】
したがって、上記で記載した例は、外因性モジュレート作用物質の全因子セットを提示する、スケーラブルの連続流マイクロバイオリアクターアレイをもたらし、加えて、個別次元に沿った内因性モジュレート作用物質の蓄積も可能とする。ヒト胚性幹細胞における多能性の維持および原始線条分化の例を使用して、上記で記載した実験は、従来の培養プラットフォームではたやすく接近可能ではない傍分泌効果を分離、造影、同定、およびモジュレートする、このプラットフォームの固有の能力を裏付ける。アレイプラットフォームは、因子間の相互作用ならびに直接作用性可溶性因子および傍分泌性シグナル伝達イベントの階層を解読し、これにより、因子効果など、微小環境の幹細胞運命に対する制御を解明することを可能とする。
【0188】
特定の一例では、アレイは、6つの流体入力だけを使用して、3つの可溶性因子の各々の3つの濃度の組合せ全て(全因子アレイ;合計で3=27の異なる条件)を作り出し、最適処理、因子間の相互作用効果の同定、ならびに傍分泌因子蓄積の分離およびその後の細胞表現型に対する分化効果の造影を可能とする。アレイは、多様な付着基板でコーティングし、hESCを、培養物培地の緩徐な連続潅流で、少なくとも7日間にわたり維持することができる。レポーター遺伝子の発現および/またはin situ免疫染色は、細胞表現型のリードアウトを可能とする。
【0189】
上記で記載した装置は、異なる条件に対する物質の応答を評価し、特に、異なる環境条件に対する細胞の応答を、例えば、細胞モジュレート作用物質への曝露を介して評価しうることが所望である任意の状況において使用しうることが察知されるであろう。したがって、装置は、ある範囲の適用およびモジュレート作用物質へと適用することができる。例えば、装置は、細胞を培養し、インキュベートし、反応させ、アッセイし、分化させることのほか、モジュレート作用物質についての試験を実施する、例えば、細胞活性を変化させるときの薬物の有効性について調べるのにも使用することができる。他のモニタリングは、細胞生存率、細胞形態、細胞シグナル伝達、タンパク質転移、細胞抗原提示、DNA合成、細胞ゲノム、細胞トランスクリプトーム、細胞プロテオーム、細胞代謝、細胞の電気生理学的機能、細胞の生理学的機能、食作用、エンドサイトーシス、遺伝子発現、タンパク質発現、炭水化物発現、生体分子間相互作用、受容体結合、検出作用物質の細胞結合、およびモジュレーション作用物質の細胞取込みを含みうる。
【0190】
したがって、上記で記載した例は、限定を意図するものではない。
【0191】
当業者は、多数の変更および改変が明らかとなることを察知するであろう。当業者に明らかとなる、全てのこのような変更および改変は、広範にわたり提示される本発明により記載される精神および範囲の中に収まると考えるものとする。
【符号の説明】
【0192】
100 装置
111 注入口
112 注入口
113 注入口
114 注入口
120 チャネル
121 チャネル
122 チャネル
123 チャネル
124 チャネル
125 チャネル
126 チャネル
130 ウェルアレイ
131 ウェルチャネル
132 ウェルチャネル
133 ウェルチャネル
134 ウェルチャネル
135 ウェルチャネル
136 ウェルチャネル
137 ウェルチャネル
138 ウェルチャネル
139 ウェルチャネル
131.1 ウェル
131.2 ウェル
131.3 ウェル
132.1 ウェル
132.2 ウェル
132.3 ウェル
133.1 ウェル
133.2 ウェル
133.3 ウェル
150 矢印
200 装置
221 混合部分
222 混合部分
223 混合部分
300 装置
301 第1の被覆層、第1の層、層
302 第2の被覆層、第2の層、層
303 基板
311 注入口
312 注入口
313 注入口
314 注入口
315 注入口
316 注入口
311 第1の注入口セット
312 第1の注入口セット
313 第2の注入口セット
314 第2の注入口セット
315 第3の注入口セット
316 第3の注入口セット
317.1 ポート
317.2 ポート
318.1 ポート
318.2 ポート
320 チャネル
321 混合部分
323 チャネル
323.1 チャネル
323.2 チャネル
323.3 チャネル
330 ウェルアレイ
331 ウェル
341 シーディング注入口
341.1 シーディングチャネル
342 シーディング排出口
342 シーディング/コーティング排出口
342.1 シーディングポート
324.2 シーディングポート
342.3 シーディングチャネル
350 スライドホルダー
351 本体
351 矢印
352 ウェル
401 パネル
402 パネル
800 装置
801 第1の被覆層
802 第2の被覆層
803 基板
810 注入口
811.1 注入口
811.2 注入口
812.1 注入口
812.2 注入口
813.1 注入口
813.2 注入口
814.1 注入口
814.2 注入口
820 チャネル
830 ウェルアレイ
841 シーディング注入口
842 シーディングチャネル
842.1 チャネル
A 第1の流体、流体、因子、因子チャネル、成長因子
B 第2の流体、流体、因子、因子チャネル、チャネル
A+B 流体、流体の組合せ
A+B+C 流体
A+C 流体、流体の組合せ
B+C 流体、流体の組合せ
C 流体、因子、因子チャネル、チャネル
D 流体、因子
A+C+D 流体の組合せ
A+B+C+D 流体の組合せ
B+C+D 流体の組合せ
A+D 流体の組合せ
A+B+D 流体の組合せ
B+D 流体の組合せ
A、B 注入口セット
C、D 注入口セット
X 成長因子
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E-3F】
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A-8B】
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H