(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297583
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ベアリングおよび他の用途のための高強度低摩擦工学的材料、ならびにこれらを形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20180312BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20180312BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C23C28/00 B
F16C33/10 Z
F16C33/20 A
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-543127(P2015-543127)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-537173(P2015-537173A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013070870
(87)【国際公開番号】WO2014081748
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】61/728,315
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/815,480
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599058372
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サクストン,デイビッド
【審査官】
尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−057642(JP,A)
【文献】
特開2004−323789(JP,A)
【文献】
米国特許第07382959(US,B1)
【文献】
独国特許出願公開第102010018328(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 28/00
F16C 33/10
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工学的材料であって、
金属からなるマイクロ格子を備え、前記金属マイクロ格子は複数の隙間を設け、前記工学的材料はさらに、
前記金属マイクロ格子の前記隙間に配置される低摩擦材料を備え、
前記低摩擦材料は、前記金属マイクロ格子の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する、工学的材料。
【請求項2】
前記金属マイクロ格子と前記低摩擦材料との全体積に基づいて、前記金属マイクロ格子は10から50体積%の量で存在し、前記低摩擦材料は50から90体積%の量で存在する、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項3】
前記低摩擦材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)、スズ、およびビスマスの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項4】
前記低摩擦材料はさらに、セラミック、グラファイト、二硫化モリブデン、銅、および銀の少なくとも1つを含む添加粒子を含む、請求項3に記載の工学的材料。
【請求項5】
前記金属マイクロ格子はニッケルからなり、前記低摩擦材料は架橋結合ポリマーを含む、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項6】
前記金属マイクロ格子は、互いに合金化される複数の異なる金属層を含む、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項7】
前記金属マイクロ格子は三次元構造を含み、100μmから5cmの厚みを呈する、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項8】
前記金属マイクロ格子は、互いに相互接続されて前記隙間を設ける複数の支柱を含み、前記支柱の各々は中空開口部を含む、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項9】
前記金属マイクロ格子と前記隙間との全体積に基づいて、前記金属マイクロ格子は15体積%の量で存在し、前記隙間は85体積%の量で存在し、
前記金属マイクロ格子はニッケルからなり、
前記金属マイクロ格子は、互いに相互接続されて前記隙間を設ける複数の支柱を含み、
前記支柱の各々は中空開口部を含み、
前記支柱の各々は、水平に対して50°から90°の角度で配置され、50マイクロメートルの径と、前記中空開口部を囲む15マイクロメートルの壁の厚みとを有し、
前記低摩擦材料は前記隙間を充填し、
前記低摩擦材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)、スズ、およびビスマスの少なくとも1つを含み、
前記低摩擦材料は、セラミック、グラファイト、二硫化モリブデン、銅、および銀からなるグループから選択される粒子を含む、請求項1に記載の工学的材料。
【請求項10】
ベアリングであって、
金属からなるマイクロ格子を含む工学的材料を備え、前記金属マイクロ格子は複数の隙間を設け、
前記工学的材料はさらに、前記金属マイクロ格子の前記隙間に配置される低摩擦材料を含み、
前記低摩擦材料は、前記金属マイクロ格子の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する、ベアリング。
【請求項11】
前記工学的材料に取付けられるバッキングを含み、前記工学的材料は、前記工学的材料に塗布されるポリマー材料のコーティングを有しない摺動面を設ける、請求項10に記載のベアリング。
【請求項12】
前記金属マイクロ格子の1つの領域は、前記金属マイクロ格子の他の領域に対してより大量の前記金属を含む、請求項10に記載のベアリング。
【請求項13】
工学的材料を形成する方法であって、
金属製のマイクロ格子を形成するステップを備え、前記金属マイクロ格子は複数の隙間を設け、前記方法はさらに、
前記金属マイクロ格子の前記隙間に低摩擦材料を配置するステップを備え、前記低摩擦材料は、前記金属マイクロ格子の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する、方法。
【請求項14】
前記金属マイクロ格子の前記隙間に低摩擦材料を配置するステップは、前記低摩擦材料を圧延することおよび前記隙間の内部に浸透させることの少なくとも一方を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属マイクロ格子を形成するステップは、テンプレートポリマーマイクロ格子に前記金属を塗布するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属を塗布するステップは、異なる金属からなる複数の層を塗布することと、前記層を加熱して前記異なる金属を互いに合金化することとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
光を予め定められた経路に沿って液状のUV硬化性樹脂を貯留槽内に伝達し、前記UV硬化性樹脂を前記予め定められた光路に沿って複数の互いに接続された固体ポリマー繊維に変換することによって、前記テンプレートポリマーマイクロ格子を準備することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記金属マイクロ格子を形成するステップは、
予め定められた構造を有するテンプレートポリマーマイクロ格子を準備するステップを含み、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子を準備するステップは、液状の紫外線(UV)硬化性樹脂の貯留槽の上に穴開きマスクを配置することと、光の複数のビームを予め定められた経路に沿って前記穴開きマスクを介して前記貯留槽に入れることと、液体の前記UV硬化性樹脂を前記予め定められた光路に沿って複数の相互接続された固体ポリマー繊維に変換して前記テンプレートポリマーマイクロ格子を形成することとを含み、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子の前記固体ポリマー繊維の各々は、水平に対して50°から90°の角度で延在し、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子を準備するステップは連続工程であり、1mm2/分よりも速い速度で起こり、前記金属マイクロ格子を形成するステップはさらに、
前記金属で前記テンプレートポリマーマイクロ格子をコーティングして前記金属マイクロ格子を形成するステップを含み、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子をコーティングするステップは、前記テンプレートポリマーマイクロ格子上に前記金属をめっきするか電着させることと、前記テンプレートポリマーマイクロ格子の他の領域に対して前記テンプレートポリマーマイクロ格子の1つの領域により大量の前記金属を塗布することとを含み、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子をコーティングするステップは、各々が前記固体ポリマー繊維の1つを囲む複数の支柱を形成することを含み、前記支柱は互いに相互接続され、自身同士の間に前記複数の隙間を設けて前記金属マイクロ格子を形成し、
前記金属マイクロ格子の前記支柱の各々は、50マイクロメートルの径、15マイクロメートルの壁の厚みを有し、水平に対して50°から90°の角度で延在し、
前記金属マイクロ格子と前記隙間との全体積に基づいて、前記金属マイクロ格子は15体積パーセントの量で存在し、前記隙間は85体積パーセントの量で存在し、前記金属マイクロ格子を形成するステップはさらに、
前記テンプレートポリマーマイクロ格子を加熱することによって前記テンプレートポリマーマイクロ格子を前記金属マイクロ格子から除去することを含み、
前記金属マイクロ格子の前記隙間に低摩擦材料を配置するステップは、
前記低摩擦材料を圧延することおよび前記隙間の内部に浸透させることの少なくとも一方を含み、
前記低摩擦材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、およびポリオキシメチレン(POM)の少なくとも1つを含み、
前記低摩擦材料は、セラミック、グラファイト、二硫化モリブデン、銅、および銀からなるグループから選択される粒子を含み、
前記金属マイクロ格子の前記隙間に低摩擦材料を配置するステップは、前記隙間を充填することを含み、
前記方法はさらに、前記金属マイクロ格子の前記隙間に配置された前記低摩擦材料を焼結するステップを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ベアリングを形成する方法であって、
金属製のマイクロ格子を提供することによって工学的材料を形成するステップを備え、前記金属マイクロ格子は複数の隙間を設け、前記方法はさらに、
前記マイクロ格子の前記隙間に低摩擦材料を配置するステップを備え、前記低摩擦材料は、前記金属マイクロ格子の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する、方法。
【請求項20】
前記工学的材料にバッキングを取付けることを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は2012年11月20日に出願された米国仮特許出願連続番号第61/728,315号、および2013年4月24日に出願された米国仮特許出願連続番号第61/815,480号の利益を主張し、これらの仮特許出願はその全体が引用により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は概して工学的材料に関し、より特定的には高強度、低摩擦の材料、およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
ポリマー材料は、ベアリング、ガスケット、シール、ワイパー、および同様の用途などの、2つの面が接して一致する必要がある多くの用途に有用である。ポリマー材料は、いずれの摩耗、欠陥、または予定外の状況にもかかわらず良好な適合性を提供し、かつ低摩擦を提供するため、2つの面同士が小さな力およびごく僅かな熱で互いに摺動することができる。ポリマー材料によって提供される別の利点は、耐腐食性である。しかし、ポリマー材料の強度は金属と比較して低いため、プラスチック材料の使用は、自動車用ベアリングの用途などの、印加される負荷が過剰になる用途に制限されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明の一局面は、金属からなるマイクロ格子と、金属マイクロ格子の隙間に配置される低摩擦材料とを含む工学的材料を提供する。低摩擦材料は、金属マイクロ格子の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有する。
【0005】
本発明の別の局面は、工学的材料を形成する方法を提供する。当該方法は、金属製のマイクロ格子を形成することと、金属マイクロ格子の隙間に低摩擦材料を配置することとを含む。
【0006】
工学的材料は、金属およびプラスチックの両方の利点を同時に提供する。金属マイクロ格子は、同じ用途に使用される従来の製品と比較して、必要な金属量が比較的少なくて済みながら、印加される負荷に耐えるのに十分な強度を提供する。したがって、工学的材料は、従来の製品と比較して製造するのがより経済的である。同時に、低摩擦材料は適合性および低摩擦を提供する。低摩擦材料は、ポリマーを含む場合、耐腐食性も提供し、小さな力および低熱での別の表面に対する摺動を可能にする。
【0007】
本発明の別の局面は、工学的材料からなるベアリングと、工学的材料を含むベアリングを形成する方法とを提供する。工学的材料は、たとえばベアリングの青銅または鋼バッキングなどの別の固体構造に取付けられるか接合されてもよい。しかし、工学的材料は単独で立つのに十分丈夫でもある。したがって、工学的材料からなるベアリングは、従来のベアリングと比較して少ない金属およびしたがって低コストで、印加される負荷を支持することができる。また、大量の低摩擦材料は高速およびストップ・スタート用途で良好に機能し、100%ポリマーコーティングの必要性をなくし、さらに、性能の損失なしでベアリングを機械加工することを可能にする。
【0008】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連して考慮されると以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されることから容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の例示的な実施形態に係る金属マイクロ格子および低摩擦材料を含む工学的材料の拡大図である。
【
図1A】
図1の工学的材料の一部の拡大断面図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態に係る工学的材料を含むベアリングの図である。
【
図3】例示的な実施形態に係る工学的材料を形成する方法を示す図である。
【
図4】テンプレートポリマーマイクロ格子を形成するステップを示す図である。
【
図5】
図4のステップによって形成される3つの例示的なテンプレートポリマーマイクロ格子を示す図である。
【
図6】
図4のステップによって形成されるテンプレートポリマーマイクロ格子の拡大図である。
【
図7】例示的な実施形態に係る低摩擦材料を塗布する前の金属マイクロ格子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
可能な実施形態の詳細な説明
いくつかの図全体にわたって同様の番号は対応する部分を示す図面を参照して、高強度および低摩擦を提供する工学的材料20が
図1に全体的に示されている。工学的材料20は、自動車および非自動車用途を含む、高強度および/または低摩擦を必要とするさまざまな用途に使用可能である。工学的材料20は、印加される負荷に耐える強度を提供する金属マイクロ格子22と、金属マイクロ格子22の隙間26に配置されて適合性、低摩擦、および耐腐食性を提供する低摩擦材料24とを含む。
【0011】
金属マイクロ格子22は金属からなり、当該金属は、工学的材料20が設計される用途で直面する負荷に耐えるのに十分な強度を提供する任意の種類の金属または金属合金であり得る。例示的な一実施形態では、工学的材料20は、
図2に示されるように、自動車用ベアリング30の摺動面28を提供するように設計され、金属マイクロ格子22はニッケルまたはニッケル合金からなる。金属マイクロ格子22は、軽負荷の場所と比較して、より高負荷の場所では高い割合の金属を有して設計されてもよい。金属マイクロ格子22は、金属製の1つの層32、またはたとえばニッケル、銅、およびスズからなる層32などの金属製の複数の層32を含んでもよい。層32同士は、互いに同じ組成または異なる組成を有してもよい。一実施形態では、層32同士が異なる金属組成を有する場合、金属層32は、たとえば熱処理工程によって互いに合金化される。
【0012】
図1に示されるように、工学的材料20の金属マイクロ格子22は、互いに相互接続されて複数の隙間26を設ける複数の支柱34を含む。金属マイクロ格子22および隙間26の全体積に基づいて、金属マイクロ格子22は典型的に約5から25体積%の量で存在し、隙間26は約75から95体積%の量で存在する。例示的な実施形態では、金属マイクロ格子22および隙間26の全体積に基づいて、金属マイクロ格子22は85体積%の量で存在し、隙間26は15体積%の量で存在する。低摩擦材料24を塗布する前に、隙間26は空気で充填されるため、金属マイクロ格子22は非常に軽量であり、エラストマーと同様に挙動する。たとえば、圧縮されると、金属マイクロ格子22は元の形状にほぼ完全に回復する。
【0013】
金属マイクロ格子22の各支柱34は典型的に、水平に対して50°から90°の角度αで配置され、マイクロメートル範囲内の径Dを有する。例示的な実施形態では、各支柱34の径Dは約50マイクロメートルである。
図1Aに示されるように、支柱34の各々は、中心軸を囲む壁を含み、中空であるかまたは代替的にテンプレートポリマーで充填され得る開口部38を設ける。中空開口部38を囲む壁の厚みtはマイクロメートル範囲内の任意の厚みtであり、たとえば5から20マイクロメートルであってもよい。例示的な実施形態では、壁の厚みtは約15マイクロメートルである。金属マイクロ格子22は、二次元または三次元構造を含み得る。一実施形態では、金属マイクロ格子22は三次元構造を含み、約100μmから5cmの全厚みを呈する。
【0014】
低摩擦材料24は好ましくは、隙間26の100体積%を充填する。低摩擦材料24は、金属マイクロ格子22の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有し、さまざまな異なる材料を含んでもよい。例示的な実施形態では、低摩擦材料24は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、およびポリオキシメチレン(POM)の少なくとも1つを含むポリマー系材料である。低摩擦材料24は代替的に、スズ、鉛、ビスマス、またはそれらの合金からなってもよい。一実施形態では、低摩擦材料24は、酸化物、窒化物、リン化物、および炭化物などのセラミック、グラファイト、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、銅、ならびに銀からなるグループから選択される粒子を含む。たとえば、耐摩耗性のために硬質粒子が添加されてもよく、摩擦をさらに減少させるために潤滑粒子が添加されてもよい。粒子はさらに、Cuおよび/またはAgなどの抗菌添加剤を含んでもよい。市販の低摩擦材料24の例には、GLYCODUR(登録商標)、G−92、およびIROX(登録商標)がある。
【0015】
工学的材料20は、金属マイクロ格子22と低摩擦材料24とを合わせた全体積に基づいて、0.5体積%から90体積%の量の金属マイクロ格子22と、10体積%から99.5体積%の量の低摩擦材料24とを含む。しかし、金属マイクロ格子22に対する低摩擦材料24の量は、所望の用途および性能に依存して変化し得る。例示的な実施形態では、工学的材料20は、金属マイクロ格子22および低摩擦材料24の全体積に基づいて、10体積%から50体積%の量の金属マイクロ格子22と、50体積%から90体積%の量の低摩擦材料24とを含む。
【0016】
工学的材料20は、金属およびプラスチックの両方の利点を同時に提供する。金属マイクロ格子22は、同じ用途に使用される従来の製品と比較して、必要な金属量が比較的少なくて済みながら、印加される負荷に耐えるのに十分な強度を提供する。したがって、工学的材料20は、比較の従来の製品と比較して製造するのがより経済的である。同時に、低摩擦材料24は適合性および低摩擦を提供する。低摩擦材料24は、ポリマーを含む場合、耐腐食性も提供し、小さな力および低熱での別の表面に対する摺動を可能にする。
【0017】
金属および低摩擦材料24の組成、ならびに金属マイクロ格子22の設計を調整することによって、多種多様な所望の性質が達成可能である。さらに、工学的材料20は、たとえばベアリング30の青銅または鋼バッキング40などの別の固体構造に取付けられるか接合されてもよい。しかし、工学的材料20は典型的に、単独で立つのに十分丈夫である。従来のベアリングと比較して、金属マイクロ格子22は少ない金属およびしたがって低コストで印加される負荷を支持するため、工学的材料20はベアリング用途に特に好適である。さらに、大量の低摩擦材料24は、高速およびストップ・スタート用途で良好に機能し、100%ポリマーコーティングの必要性をなくし、さらに、性能の損失なしでベアリング30を機械加工することを可能にする。
【0018】
本発明の別の局面は、金属製のマイクロ格子を形成し、金属マイクロ格子22の隙間26に低摩擦材料24を配置することによって工学的材料20を形成する方法を提供する。
図3は、例示的な一実施形態に係る当該方法のステップを示す。
【0019】
工学的材料20を形成する方法は、まず、完成した金属マイクロ格子22の構造を提供することになる予め定められた構造を有するテンプレートポリマーマイクロ格子42を準備することを含む。テンプレートポリマーマイクロ格子42は好ましくは、ネガレジストフォトモノマーとも称される紫外線(UV)硬化性樹脂で形成される。例示的な実施形態では、
図4に示されるように、液状のUV硬化性樹脂の貯留槽44が設けられ、貯留槽44の上に穴開きマスク46が配置される。当該方法は次に、UV光36の複数のビームを穴開きマスク46を介して貯留槽44に入れることを含む。UV光36は、形成されるテンプレートポリマーマイクロ格子42の所望の構造に依存する予め定められた経路に沿って進む。そして、UV光36は、液体UV硬化性樹脂を、予め定められた経路に沿って、UV不透過性からUV透過性に、かつ液体モノマーから固体ポリマーに変換する。UV光ビーム36は、固体ポリマーに沿って貯留槽44により深く入り込むことができる。そして、光ビーム36の下にある、かつ光ビーム36と一直線にある残りの液体モノマーは固体ポリマーに変換され、したがって導波路形成を自己伝搬する。異なる交差角度のUV光ビーム36を一直線にすることによって、複数の相互接続された固体ポリマー繊維48が形成され、固体ポリマー繊維48はともにテンプレートポリマーマイクロ格子42を形成する。テンプレートポリマーマイクロ格子42を準備するステップは、1mm
2/分よりも速い速度で起こり得る連続工程である。
【0020】
図5は、例示的な方法によって形成されるテンプレートポリマーマイクロ格子42の例示的な設計を示し、
図6は例示的な一実施形態に係る三次元テンプレートポリマーマイクロ格子42の拡大図である。典型的に、テンプレートポリマーマイクロ格子42の固体ポリマー繊維48の各々は、水平に対して50°から90°の角度αで延在する。また、固体ポリマー繊維48は互いに間隔を空けられており、したがって自身同士の間に複数の隙間26を提供する。テンプレートポリマーマイクロ格子42は、所望の用途または必要な性能に依存して二次元または三次元を含み得る。テンプレートポリマーマイクロ格子42はさらに、所望の用途および性能に依存して、さまざまな異なる形状に形成されるか曲げられてもよい。
【0021】
当該方法は次に、テンプレートポリマーマイクロ格子42を金属でコーティングして金属マイクロ格子22を形成することを含む。上述のように、任意の種類の金属または金属合金を使用して金属マイクロ格子22を形成することができる。例示的な実施形態では、工学的材料20は、
図2に示されるように、自動車用ベアリング30の摺動面28を提供するように設計され、したがってニッケルまたはニッケル合金からなる。テンプレートポリマーマイクロ格子42をコーティングするステップは、テンプレートポリマーマイクロ格子42上に金属をめっきするか電着させることを含んでもよいし、または代替的に無電解処理を含んでもよい。コーティングするステップは、固体ポリマー繊維48を囲む複数の金属支柱34を形成することを含む。金属支柱34は互いに相互接続され、自身同士の間に複数の隙間26を設ける。したがって、相互接続された支柱34は、テンプレートポリマーマイクロ格子42の設計に一致する設計を有する金属マイクロ格子22を形成する。一実施形態では、当該方法は、テンプレートポリマーマイクロ格子42の他の領域に対してテンプレートポリマーマイクロ格子42の1つの領域において付加的な支柱34またはより密集した支柱34を有する設計を形成し、したがって、テンプレートポリマーマイクロ格子42の他の領域に対してテンプレートポリマーマイクロ格子42の1つの領域により大量の金属を塗布することを含む。別の実施形態によると、当該方法は、金属製の複数の層32をテンプレートポリマーマイクロ格子42に塗布することを含む。たとえば、
図3の方法は、
図1Aに示されるように、ニッケル製の層32を無電解めっきすることと、それに続いて銅製の層32に、およびその後にスズ製の層32に電気めっきすることとを含む。
【0022】
当該方法は随意に、テンプレートポリマーマイクロ格子42を加熱することによってテンプレートポリマーマイクロ格子42を金属マイクロ格子22から除去することを含む。さまざまな異なる方法を用いてテンプレートポリマーマイクロ格子42を除去することができる。たとえば、金属マイクロ格子22をコーティングした後、2つのマイクロ格子22,42を熱処理してテンプレートポリマーマイクロ格子42を溶融してもよい。テンプレートポリマーマイクロ格子42はその後、金属マイクロ格子22のみが残るように除去される。金属マイクロ格子22が異なる金属からなる複数の層32を含む場合、テンプレートポリマーマイクロ格子42を除去するために用いる加熱ステップは、同時に異なる金属層32を互いに合金化することができる。代替的に、異なる金属層32を互いに合金化するステップは、テンプレートポリマーマイクロ格子42を除去した後に行なわれてもよい。
図7は、例示的な一実施形態に係る、テンプレートポリマーマイクロ格子42が除去された後の金属マイクロ格子22を示す。別の実施形態では、テンプレートポリマーマイクロ格子42の少なくとも一部が、金属支柱34の開口部内に、したがって完成した工学的材料20内に残る。
【0023】
金属マイクロ格子22に低摩擦材料24を塗布する前に、当該方法は、金属マイクロ格子22を別の構造に取付けることを含んでもよい。たとえば、当該方法は、工学的材料22をバッキング40に取付けて
図2のベアリング30を形成することを含んでもよい。代替的に、金属マイクロ格子22は単独で使用されてもよい。
【0024】
当該方法は次に、金属マイクロ格子22に低摩擦材料24を塗布すること、および金属マイクロ格子22の隙間26に低摩擦材料24を配置して工学的材料20を形成することを含む。金属マイクロ格子22は骨格として作用し、支持および強度を提供する一方で、低摩擦材料24は、適合する低摩擦面を提供する。低摩擦材料24を塗布するステップは、低摩擦材料24を金属マイクロ格子22上に圧延すること、または低摩擦材料24を金属マイクロ格子22の隙間26の内部sに浸透させることを含んでもよい。低摩擦材料24は好ましくは、隙間26の全体積の100体積%を充填するように塗布される。
【0025】
テンプレートポリマーマイクロ格子42を塗布した後、当該方法は、工学的材料20を所望の寸法に機械加工することを含んでもよい。当該方法はさらに、工学的材料20を、ベアリング30のバッキング40などの別の部品に付けることを含んでもよい。低摩擦材料24がポリマーを含む場合は、当該方法は、工学的材料20を焼結してポリマーの架橋結合を促進することを含んでもよい。典型的に、大量の低摩擦材料24のため、工学的材料20をベアリング30の摺動面28として使用する場合などに、付加的なポリマーコーティングは不要である。
【0026】
完成した工学的材料20は、ガスケット、シール、およびワイパーなど、ベアリングに加えてさまざまな自動車用途に使用可能である。代替的に、工学的材料20は、高強度および低摩擦を必要とする非自動車用途に使用可能である。
【0027】
明らかに、本発明の多くの修正および変形が上記の教示に鑑みて可能であり、添付の請求項の範囲に収まりつつ、具体的に説明したのとは別の方法で実践され得る。