特許第6297605号(P6297605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297605車両再始動のための中間位置に油圧ロックを有するカムシャフトタイミング装置の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297605
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】車両再始動のための中間位置に油圧ロックを有するカムシャフトタイミング装置の使用
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20180312BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20180312BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F02D13/02 H
   F01L1/356 E
   F02D29/02 321B
   F02D29/02 321C
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-558858(P2015-558858)
(86)(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公表番号】特表2016-511359(P2016-511359A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014015492
(87)【国際公開番号】WO2014130276
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】13/773,982
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・ストリーラウ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・エイチ・ケイトシュック
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン・アール・スミス
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−513651(JP,A)
【文献】 特開2000−034913(JP,A)
【文献】 特開2009−068500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 − 29/06
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止始動作動モードを有する内燃機関において、可変カムタイミング位相器を使用する方法であって、前記位相器は、
駆動力を受け入れるための外周とカムシャフトへの連結のためのロータ組立体とを有し、前記ロータ組立体は複数のベーンを有するハウジング組立体同軸に配置され、前記ハウジング組立体および前記ロータ組立体は、ベーンによってアドバンスチャンバとリタードチャンバとに分けられる少なくとも1つのチャンバを画定し、前記チャンバ内の前記ベーンは、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を変えるために作動する、ハウジング組立体と、
前記チャンバへ、および、前記チャンバから、前記アドバンスチャンバに連結するアドバンスライン、前記リタードチャンバに連結するリタードライン、前記アドバンスチャンバをパイロット弁及び共通ラインに連結するアドバンス戻り抑制ライン、および前記リタードチャンバを前記パイロット弁及び前記共通ラインに連結するリタード戻り抑制ラインを通して流体を導くための制御弁であって、前記制御弁が、流体を前記リタードチャンバから前記アドバンスチャンバに流すアドバンスモード、前記アドバンスチャンバ及び前記リタードチャンバからの流体の流出を阻止するホールド位置、流体を前記アドバンスチャンバから前記リタードチャンバに流すリタードモード、および前記アドバンスモード、前記ホールド位置及び前記リタードモードにおける流体の流れを形成する戻り抑制モードに向けて第1のボアにおいて移動可能である、制御弁と、
前記ロータ組立体または前記ハウジング組立体に摺動自在に配置されるロックピンであって、前記ロックピンが、端部が凹部に係合し、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を係止するロック位置から、前記端部が前記凹部に係合しないアンロック位置へと、第2のボアにおいて移動可能である、ロックピンとを備え
前記パイロット弁は、前記ロータ組立体において、第1の位置から第2の位置まで移動可能であ
前記エンジンが自動的に停止及び自動的に再始動する前記停止始動モードの停止モードであるとき、
前記位相器の前記制御弁に結合されるアクチュエータの負荷サイクルを調整し、前記制御弁を前記リタードモードに制御するステップと、
前記アクチュエータの前記負荷サイクルを維持し、前記エンジンの自動再始動まで前記制御弁を前記リタードモードのままとなるよう制御するステップと、
キーがオフ位置にあるかどうかを検出し、前記キーがオフ位置にある場合、
前記エンジンを再始動するステップと、
前記制御弁を介して前記位相器を前記戻り抑制モードに制御するステップであって、前記制御弁が前記戻り抑制モードに制御されるとき、前記パイロット弁は前記第2の位置に移動され、前記アドバンス戻り抑制ラインまたは前記リタード戻り抑制ラインは、前記パイロット弁を通して前記共通ラインと流体連通しており、前記ロータ組立体は、前記ハウジング組立体に対する中間の位相角位置に移動されてホールドされることにより、前記ロックピンがロック位置に移動されて、前記位相器が中間の位相角位置に係止されるステップと、
前記エンジンを停止するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記パイロット弁が前記第1の位置にあるとき、流体は前記パイロット弁を通って流れることを阻止され、
前記パイロット弁が第2の位置にあるとき、流体は、前記パイロット弁および共通ラインを通って、前記アドバンスチャンバからの前記アドバンス戻り抑制ラインと前記リタードチャンバからの前記リタード戻り抑制ラインとの間を流れることが可能であり、前記ロータは、前記ハウジングに対する前記中間の位相角位置に移動されてホールドされる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アクチュエータは可変力ソレノイドである
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
停止始動作動モードを有する内燃機関において、可変カムタイミング位相器を使用する方法であって、前記位相器は、
駆動力を受け入れるための外周とカムシャフトへの連結のためのロータ組立体とを有し、前記ロータ組立体は複数のベーンを有するハウジング組立体同軸に配置され、前記ハウジング組立体および前記ロータ組立体は、ベーンによってアドバンスチャンバとリタードチャンバとに分けられる少なくとも1つのチャンバを画定し、前記チャンバ内の前記ベーンは、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を変えるために作動する、ハウジング組立体と、
前記チャンバへ、および、前記チャンバから、前記アドバンスチャンバに連結するアドバンスライン、前記リタードチャンバに連結するリタードライン、前記アドバンスチャンバをパイロット弁及び共通ラインに連結するアドバンス戻り抑制ライン、および前記リタードチャンバを前記パイロット弁及び前記共通ラインに連結するリタード戻り抑制ラインを通して流体を導くための制御弁であって、前記制御弁が、流体を前記リタードチャンバから前記アドバンスチャンバに流すアドバンスモード、前記アドバンスチャンバ及び前記リタードチャンバからの流体の流出を阻止するホールド位置、流体を前記アドバンスチャンバから前記リタードチャンバに流すリタードモード、および前記アドバンスモード、前記ホールド位置及び前記リタードモードにおける流体の流れを形成する戻り抑制モードに向けて第1のボアにおいて移動可能である、制御弁と、
前記ロータ組立体または前記ハウジング組立体に摺動自在に配置されるロックピンであって、前記ロックピンが、端部が凹部に係合し、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を係止するロック位置から、前記端部が前記凹部に係合しないアンロック位置へと、第2のボアにおいて移動可能である、ロックピンとを備え
前記パイロット弁は、前記ロータ組立体において、第1の位置から第2の位置まで移動可能であり、
前記エンジンが自動的に停止及び自動的に再始動する前記停止始動モードの停止モードであるとき、
前記位相器の前記制御弁に結合されるアクチュエータの負荷サイクルを調整し、前記制御弁を前記リタードモードに制御するステップと、
前記アクチュエータの前記負荷サイクルを維持し、前記エンジンの自動再始動まで前記制御弁を前記リタードモードのままとなるよう制御するステップと、
キーがオフ位置にあるかどうかを検出し、前記キーがオフ位置にある場合、
次のエンジン再始動中のエンジンクランキングの間、前記制御弁を介して前記位相器を前記戻り抑制モードに制御するステップであって、前記制御弁が前記戻り抑制モードに制御されるとき、前記パイロット弁は前記第2の位置に移動され、前記アドバンス戻り抑制ラインまたは前記リタード戻り抑制ラインは、前記パイロット弁を通して前記共通ラインと流体連通しており、前記ロータ組立体は、前記ハウジング組立体に対する中間の位相角位置に移動されてホールドされることにより、前記ロックピンがロック位置に移動されて、前記位相器が中間の位相角位置に係止されるステップと
を備える方法。
【請求項5】
前記パイロット弁が前記第1の位置にあるとき、流体は前記パイロット弁を通って流れることを阻止され、
前記パイロット弁が第2の位置にあるとき、流体は、前記パイロット弁および共通ラインを通って、前記アドバンスチャンバからの前記アドバンス戻り抑制ラインと前記リタードチャンバからの前記リタード戻り抑制ラインとの間を流れることが可能であり、前記ロータは、前記ハウジングに対する前記中間の位相角位置に移動されてホールドされる
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは可変力ソレノイドである
請求項に記載の方法。
【請求項7】
停止始動作動モードを有する内燃機関において、可変カムタイミング位相器を使用する方法であって、前記位相器は、
駆動力を受け入れるための外周とカムシャフトへの連結のためのロータ組立体とを有し、前記ロータ組立体は複数のベーンを有するハウジング組立体同軸に配置され、前記ハウジング組立体および前記ロータ組立体は、ベーンによってアドバンスチャンバとリタードチャンバとに分けられる少なくとも1つのチャンバを画定し、前記チャンバ内の前記ベーンは、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を変えるために作動する、ハウジング組立体と、
前記チャンバへ、および、前記チャンバから、前記アドバンスチャンバに連結するアドバンスライン、前記リタードチャンバに連結するリタードライン、前記アドバンスチャンバをパイロット弁及び共通ライン、に連結するアドバンス戻り抑制ライン、および前記リタードチャンバを前記パイロット弁及び前記共通ラインに連結するリタード戻り抑制ラインを通して流体を導くための制御弁であって、前記制御弁が、流体を前記リタードチャンバから前記アドバンスチャンバに流すアドバンスモード、前記アドバンスチャンバ及び前記リタードチャンバからの流体の流出を阻止するホールド位置、流体を前記アドバンスチャンバから前記リタードチャンバに流すリタードモード、および前記アドバンスモード、前記ホールド位置及び前記リタードモードにおける流体の流れを形成する戻り抑制モードに向けて第1のボアにおいて移動可能である、制御弁と、
前記ロータ組立体または前記ハウジング組立体に摺動自在に配置されるロックピンであって、前記ロックピンが、端部が凹部に係合し、前記ハウジング組立体と前記ロータ組立体との相対的な角度位置を係止するロック位置から、前記端部が前記凹部に係合しないアンロック位置へと、第2のボアにおいて移動可能である、ロックピンとを備え
前記パイロット弁は、前記ロータ組立体において、第1の位置から第2の位置まで移動可能であ
前記エンジンが自動的に停止及び自動的に再始動する前記停止始動モードの停止モードであるとき、
前記位相器の前記制御弁に結合されるアクチュエータの負荷サイクルを調整し、前記制御弁を戻り抑制モード以外の位置に制御するステップと、
前記アクチュエータの前記負荷サイクルを維持し、前記エンジンの自動再始動まで前記制御弁を戻り抑制モード以外の位置のままとなるよう制御するステップと、
キーがオフ位置にあるかどうかを検出し、前記キーがオフ位置にある場合、
前記エンジンを再始動するステップと、
前記制御弁を介して前記位相器を前記戻り抑制モードに制御するステップであって、前記制御弁が前記戻り抑制モードに制御されるとき、前記パイロット弁は前記第2の位置に移動され、前記アドバンス戻り抑制ラインまたは前記リタード戻り抑制ラインは、前記パイロット弁を通して前記共通ラインと流体連通しており、前記ロータ組立体は、前記ハウジング組立体に対する中間の位相角位置に移動されてホールドされることにより、前記ロックピンがロック位置に移動されて、前記位相器が中間の位相角位置に係止されるステップと、
前記エンジンを停止するステップと
を備える方法。
【請求項8】
前記パイロット弁が前記第1の位置にあるとき、流体は前記パイロット弁を通って流れることを阻止され、
前記パイロット弁が第2の位置にあるとき、流体は、前記パイロット弁および共通ラインを通って、前記アドバンスチャンバからの前記アドバンス戻り抑制ラインと前記リタードチャンバからの前記リタード戻り抑制ラインとの間を流れることが可能であり、前記ロータは、前記ハウジングに対する前記中間の位相角位置に移動されてホールドされる
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記アクチュエータは可変力ソレノイドである
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記戻り抑制モード以外の位置はリタード位置である
請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記戻り抑制モード以外の位置はアドバンス位置である
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変カムタイミングの分野に関する。より詳細には、本発明は、エンジンの停止始動モードの自動再始動および車両のコールド再始動のための、中間位置に油圧ロックを有する可変カムシャフトタイミング装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において内燃機関のアイドリング時間を減らすことによって、燃費は向上し、排出物は低減する。したがって、車両は、内燃機関を自動的に停止および自動的に再始動する「停止始動モード」を使用して、たとえば停止信号または渋滞において車両が停止するときに、エンジンがアイドリングする時間を減らすことができる。エンジンのこの停止は、「キーオフ」位置、あるいは車両の使用者がエンジンを停止する、または駐車場に車を置いて車両から離れる場合のイグニションスイッチの停止による手動停止とは異なる。「停止始動モード」において、車両が停止するとエンジンが停止し、そして、車両の使用者がほとんど気付かない方法で自動的に再始動する。従来、車両はコールドスタートを想定して主に設計されていたが、それは、それが最も一般的な状況であるためである。停止始動システムにおいて、エンジンは自動停止するまで駆動しているため、自動再始動は、エンジンが熱い状態のときに起こる。「ホットスタート」は問題となる場合があることが昔から知られているが、それは、通常のコールドスタートのために必要なエンジンの設定、たとえば特定のバルブタイミング位置が、暖機されたエンジンには不適当なためである。
【0003】
位相器を有する大部分のエンジンは、次の始動に備えて、ロックピンまたは一連のロックピンを使用して、エンジン停止時に、位相器をリタード位置に配置する。
【0004】
一例として、米国特許出願公開第5,924,395号明細書は、停止始動エンジン制御システムにおける可変カムタイミングの特許である。停止信号がECUによって検出されると、吸気バルブは来るべきホットスタートに備えて、最リタード位置に変更される。‘395特許の一実施形態においてロックピンは、ロックピンをリタード側係合穴に挿入することによって、位相器のベーンを最リタード位置に固定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
停止始動作動モードを有する内燃機関において、中央位置ロック可変カムタイミング位相器を使用する方法であって、エンジンが停止始動モードの停止モードであるとき、位相器の制御弁に結合されるアクチュエータの負荷サイクルを調整し、制御弁をリタードモードに制御するステップと、アクチュエータの負荷サイクルを維持し、エンジンの自動再始動まで制御弁をリタードモードのままとなるように制御するステップとを含む方法。キーがオフ位置で検出される場合、および、キーがオフ位置にある場合、エンジンを再始動するステップと、位相器を戻り抑制モードに制御し、ロックピンがロック位置に移動され、位相器が中間の位相角位置に係止されるステップと、エンジンを停止するステップ。
【0006】
あるいは、キーがオフ位置で検出される場合、および、キーがオフ位置にある場合、次のエンジン再始動中のエンジンクランキングの間、位相器を戻り抑制モードに制御し、ロックピンがロック位置に移動され、位相器が中間の位相角位置で係止されるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、コールドスタート、ホットスタート、および、位相器のホールドの場合の位相器の位置に対する、制御弁位置対可変力ソレノイド負荷サイクルのグラフを示す。
図2図2は、エンジンの停止始動モードの間、ウォーム再始動のためにカムトルク中央位置ロック位相器を使用するための、第1の実施形態のフローチャートを示す。
図3図3は、エンジンの停止始動モードの間、ウォーム再始動のためにカムトルク中央位置ロック位相器を使用するための、第2の実施形態のフローチャートを示す。
図4図4は、アドバンス位置に向けて移動するカムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示す。
図5図5は、リタード位置に向けて移動するカムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示す。
図6図6は、ホールド位置におけるカムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示す。
図7a図7aは、戻り抑制位置におけるカムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示す。
図7b図7bは、戻り抑制位置における位相器を示す。
図8図8は、リタードチャンバおよびオンの油圧戻り抑制回路と流体連通のリタード戻り抑制ラインを有する、中間の位相角位置に向けて移動する位相器を示す。
図9図9は、アドバンスチャンバおよびオンの油圧戻り抑制回路と流体連通のアドバンス戻り抑制ラインを有する、中間の位相角位置に向けて移動する位相器を示す。
図10a図10aは、ロックピンが解放された位相器の断面を示す。
図10b図10bは、油圧戻り抑制回路がオフである位置におけるパイロット弁を有する位相器の断面を示す。
図11a図11aは、ロックピンが係止された位相器の断面を示す。
図11b図11bは、油圧戻り抑制回路がオンまたは開放されている位置におけるパイロット弁を有する位相器の断面を示す。
図12図12は、係止されたロックピン、および油圧戻り抑制回路がオンまたは開放されている位置におけるパイロット弁を有する位相器の代替断面を示す。
図13図13は、位相器が、アドバンス位置、リタード位置、または、ロックピンが解放位置にあるホールド位置のいずれかにあるときの、パイロット弁の断面図を示す。
図14図14は、第2の位置のパイロット弁、中間の位相角位置の位相器、および制御弁を通した供給により制御されるパイロット弁を有する、代替カムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示す。
図15図15は、第2の位置のパイロット弁、中間の位相角位置の位相器を有する、別の代替カムトルク中央位置ロック位相器の概略図を示し、パイロット弁はその他の油圧手段によって制御される。
図16図16は、第2の位置のパイロット弁、中間の位相角位置の位相器を有する、代替位相器の概略図を示し、ロックピンおよびパイロット弁はその他の油圧手段によって制御される。
図17図17は、ロックピンがパイロット弁に組み込まれ、油圧戻り抑制ロック回路は開放されており、ロックピン端部は凹部と係合している代替位相器の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、エンジンのコールドスタートのための中央位置ロックを提供するために、クランキングの間、または、エンジン停止を完了する前のいずれかにおいて、油圧回路に追加されるオフセットまたは遠隔のパイロット弁を有する位相器を使用して、油圧戻り抑制切替機能を管理する。電流信号がアクチュエータまたは可変力ソレノイドから取り除かれると、位相器の中央位置ロッキングは、エンジンのコールド再始動に最適の位置に、カムを配置する。本発明は、停止始動モードにおけるエンジンの自動「停止」の間、位相器を完全リタード位置に維持する方法も開示する。
【0009】
パイロット弁は、ロックピンに係合またはロックピンを解放する同一の油圧回路により、オン/オフを制御してもよい。これにより可変カムタイミング(VCT)制御弁は、2つの油圧回路、すなわちVCT制御回路および組み合わせたロックピン/油圧戻り抑制制御回路に短縮される。第1の位置へのパイロット弁の移動は、遠隔のオン/オフ弁または位相器の制御弁によって能動的に制御される。
【0010】
あるいは、ロックピンは存在せず、パイロット弁は、油圧弁手段によって、または、位相器の制御弁を通る供給圧力によって制御される。
【0011】
遠隔のパイロット弁を使用する利点の1つは、制御弁より長い行程を有することができることであり、それは遠隔のパイロット弁がソレノイドによって制限されないためである。したがって、パイロット弁は、油圧戻り抑制モード用に、より大きな流路を開放し、戻り抑制モードにおける作動速度を高めることができる。さらに、遠隔のパイロット弁の位置により、油圧戻り抑制回路が短縮および単純化され、それによって、VCT戻り抑制モードまたは位相器の中間の位相角位置の性能が向上する。
【0012】
図4〜13は、動作モード、スプール弁位置に応じたVCT位相器を示す。図に示される位置は、VCT位相器が移動する方向を定義する。位相制御弁は、無数の中間位置を有し、制御弁は、VCT位相器が移動する方向を制御するだけでなく、個別のスプール位置に応じて、VCT位相器が位置を変える速度も制御することが理解される。したがって、位相制御弁が、無限の中間位置において作動でき、図に示される位置に限定されないことが理解される。
【0013】
内燃機関は、エンジン性能向上または排出物の低減のために、カムシャフトとクランクシャフトとの間の角度を変更するためのさまざまな機構を採用してきた。これらの可変カムシャフトタイミング(VCT)機構の多くは、エンジンカムシャフト(または、複数カムシャフト式エンジンにおいては複数のカムシャフト)上に1つまたは複数の「ベーン位相器」を使用する。ほとんどの場合、位相器は、カムシャフト126の端部に取り付けられた、1つまたは複数のベーン104を有するロータ105を有し、ロータは、内部にベーンがはまり込むベーンチャンバを有するハウジング組立体100によって囲まれる。ベーン104をハウジング組立体100に取り付け、同様に、チャンバをロータ組立体105に取り付けることが可能である。ハウジングの外周101は、通常はクランクシャフトから、または可能であれば複数カム式エンジンにおける別のカムシャフトから、チェーン、ベルト、またはギアを通して駆動力を受け入れるスプロケット、プーリ、またはギアを形成する。
【0014】
図4〜13を参照すると、エンジンバルブの開閉力によって生じるカムシャフトのトルク逆転により、ベーン104が移動される。アドバンスおよびリタードチャンバ102、103は、カムシャフト126における正負のトルクパルスに抵抗するように配置されて、代わりにカムトルクによって加圧される。制御弁109は、所望の移動方向に応じて、アドバンスチャンバ102からリタードチャンバ103またはその逆の流体流れを可能とすることによって、位相器のベーン104が移動することを可能にする。
【0015】
位相器のハウジング組立体100は、駆動力を受け入れるための外周101を有する。ロータ組立体105はカムシャフト126に連結されて、ハウジング組立体100内で同軸に配置される。ロータ組立体105は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバを、アドバンスチャンバ102およびリタードチャンバ103に分けるベーン104を有する。ベーン104は、回転してハウジング組立体100とロータ組立体105との相対的な角度位置を変えることが可能である。さらに、油圧戻り抑制回路133およびロックピン回路123も存在する。油圧戻り抑制回路133およびロックピン回路123は、上記のように実質的に1つの回路であるが、単純にするために別々に説明する。油圧戻り抑制回路133は、ばね131によって付勢されるパイロット弁130と、アドバンスチャンバ102をパイロット弁130および共通ライン114に連結するアドバンス戻り抑制ライン128と、リタードチャンバ103をパイロット弁130および共通ライン114に連結するリタード戻り抑制ライン134とを含む。アドバンス戻り抑制ライン128およびリタード戻り抑制ライン134は、ベーン104から所定の距離または長さである。パイロット弁130はロータ組立体105の中にあり、ライン132を通してロックピン回路123およびライン119aに流体連結される。ロックピン回路123は、ロックピン125と、ライン132と、パイロット弁130と、供給ライン119aと、排出ライン122とを含む。
【0016】
ロックピン125は、ロータ組立体105のボアに摺動自在に収容され、ばね124によってハウジング組立体100の凹部127に向けて付勢および嵌合される端部を有する。あるいは、ロックピン125をハウジング組立体100に収容し、ロータ組立体105の凹部127に向けてばね124によって付勢してもよい。油圧戻り抑制回路133の開閉およびロックピン回路123の加圧はどちらも、位相制御弁109の切替/移動によって制御される。
【0017】
制御弁109、好ましくはスプール弁は、ロータ105のボア内のスリーブ116に摺動自在に受け入れられる円筒状のランド111a、111b、および111cを有するスプール111と、カムシャフト126のパイロットとを含む。スプールの一端はばね115に接触し、スプールの反対側の端部はパルス幅変調可変力ソレノイド(VFS)107に接触する。また、ソレノイド107は、電流または電圧を変更することによって、またはその他の適切な方法によって線形制御してもよい。さらに、スプール111の反対側の端部は、モータまたはその他のアクチュエータに接触し、それらに影響されてもよい。
【0018】
制御弁109の位置は、可変力ソレノイド107の負荷サイクルを制御するエンジン制御ユニット(ECU)106によって制御される。ECU106は、エンジン、メモリ、およびデータを外部装置およびセンサとやりとりするために使用される入出力ポートを制御するためにさまざまな計算プロセスを実行する中央処理ユニット(CPU)を好ましくは含む。
【0019】
スプール111の位置は、ばね115およびECU106によって制御されるソレノイド107の影響を受ける。位相器の制御に関する詳細は、以下で詳細に述べられる。スプール111の位置により、位相器の動き(たとえば、アドバンス位置、ホールド位置、またはリタード位置への移動)、ならびに、ロックピン回路123および油圧戻り抑制回路133が開放されている(オン)か閉鎖されている(オフ)かが制御される。換言すれば、スプール111の位置によりパイロット弁が能動的に制御される。制御弁109は、アドバンスモードと、リタードモードと、ゼロモード(ホールド位置)と、戻り抑制モードとを有する。
【0020】
アドバンスモードにおいては、スプール111は、流体がリタードチャンバ103からスプール111を通ってアドバンスチャンバ102に流れることができ、流体がアドバンスチャンバ102から出ることを阻止され、戻り抑制弁回路133はオフまたは閉鎖される位置に移動する。リタードモードにおいては、スプール111は、流体がアドバンスチャンバ102からスプール111を通ってリタードチャンバ103に流れることができ、流体がリタードチャンバ103から出ることを阻止され、戻り抑制弁回路133がオフである位置に移動する。
【0021】
ゼロモードにおいては、スプール111は、アドバンスおよびリタードチャンバ102、103からの流体の流出を阻止し、戻り抑制弁回路133がオフである位置に移動する。
【0022】
戻り抑制モードにおいては、3つの機能が同時に働く。戻り抑制モードの第1の機能は、スプールランド111aと111bとの間のライン112からの流体の流れがその他のラインおよびライン113のいずれかに入ることをスプールランド111bが阻止する位置にスプール111が移動し、位相器の制御を制御弁109から有効に取り除くことである。戻り抑制モードの第2の機能は、戻り抑制弁回路133を開放またはオンにすることである。戻り抑制弁回路133は、ベーン104が中間の位相角位置に達するまで、アドバンスまたはリタードに移動する位相器を完全に制御する。戻り抑制モードの第3の機能は、ロックピン回路123をベントして、ロックピン125が凹部127に係合することを可能とすることである。中間の位相角位置または中央位置は、ベーン104がハウジング組立体100とロータ組立体105との間のチャンバを画定するアドバンス壁102aとリタード壁103aとの間のどこかに存在するときにある。中間の位相角位置は、アドバンス壁102aとリタード壁103aとの間のどこにでも存在することができ、戻り抑制流路128および134がベーン104に対してどこに存在するかによって決まる。
【0023】
パルス幅変調可変力ソレノイド107の負荷サイクルに基づき、スプール111は、その行程に沿って対応する位置へ移動する。可変力ソレノイド107の負荷サイクルが約40%、60%、または80%のとき、スプール111は、それぞれ、リタードモード、ゼロモード、およびアドバンスモードに対応する位置へ移動し、パイロット弁130は加圧されて第2の位置に移動し、油圧戻り抑制回路133は閉鎖され、ロックピン125は加圧されて解放される。可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%のとき、スプール111は戻り抑制モードに移動し、パイロット弁130はベントして第2の位置に移動し、油圧戻り抑制回路133は開放され、ロックピン125がベントされて凹部127と係合する。0%の負荷サイクルがスプール行程に沿った最も遠い位置として選ばれ、油圧戻り抑制回路133を開放し、パイロット弁130をベントし、ロックピン125をベントして凹部127と係合するが、これは、パワーまたは制御が失われた場合に、位相器がデフォルトでロック位置になるためである。上記の負荷サイクル割合は一例であり、それらは変更してもよいことに留意されたい。さらにまた、必要に応じて、100%の負荷サイクルで油圧戻り抑制回路133が開放され、パイロット弁130がベントされ、ロックピン125がベントされて凹部127と係合してもよい。
【0024】
図1は、停止始動モードのエンジンの、コールドスタート、ホットスタート、および位相器のホールドの場合の位相器の理想的な位置である、可変カムタイミング(VCT)制御弁位置対可変力ソレノイド(VFS)負荷サイクルのグラフを示す。エンジンのコールドスタートは、オイルがオイルの通常作動温度未満の温度であるときのエンジンの始動である。エンジンのホットスタートまたはウォームスタートは、エンジンオイルが温まっており、エンジンが正常に駆動するのに十分に高温であることを示すときのエンジンの再始動である。
【0025】
ロックピンがロック位置にあり、位相器が戻り抑制位置にあるようにするために、VFSの負荷サイクルは0%に設定される。負荷サイクルが最大40%に増加するまで、ロックピンはロック位置のままである。図の実施例において、スプールの行程またはスリーブに対するスプールの位置(図7Aの「スプール位置」目盛を参照)は、戻り抑制位置に対して0〜2mmの間である。
【0026】
位相器は、完全アドバンス位置と完全リタード位置との間の中間位置でベーン104により係止されるため、戻り抑制位置はエンジンのコールドスタートに理想的である。「完全アドバンス位置」は、ベーン104がアドバンス壁102aに接触する位置として定義され、「完全リタード位置」は、ベーン104がリタード壁103aに接触しているとして定義される。戻り抑制位置は、エンジン始動のための点火時の理想的なまたは最適化された圧縮比、たとえば約8:1を提供することができる。位相器が完全リタード位置にあるとき、イグニションが火花を飛ばすときの圧縮比はコールドスタートでエンジンを始動するにはあまりに低く、位相器がアドバンス位置にあるとき、圧縮比はコールドスタートでエンジンを始動するにはあまりに高い。
【0027】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルがまさに0%に設定されたばかりのとき、スプール111のVFSに対する力が減少し、ばね115は、スプール111をスプールの行程の遠左端に、図に示すように、戻り抑制位置に移動させる。この戻り抑制位置において、スプールランド111bは、スプールランド111aと111bとの間のライン112からの流体の流れが、その他のラインおよびライン113のいずれにも入ることを阻止し、位相器の制御を制御弁109から有効に取り除く。同時に、供給部からの流体は、ライン119からライン119bおよび入口逆止弁118を通って、共通ライン114に流れてもよい。流体は、ライン119aを通ってロックピン125に流れることが、スプールランド111cによって防止される。流体はライン119aに流れることができないため、ロックピン125はもはや加圧されず、スプール111を通して排出ライン122にベントする。同様に、パイロット弁130もライン122にベントし、パイロット弁130を通してライン129および共通ライン114に、アドバンス戻り抑制ライン128とリタード戻り抑制ライン134との間の通路を開放し、換言すれば、油圧戻り抑制回路133を開放する。
【0028】
図7a〜13を参照すると、可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%であり、スプールは戻り抑制モードであり、パイロット弁130がベントされ、油圧戻り抑制回路133は開放またはオンであり、ロックピン回路123はオフまたは閉鎖されているとき、ロックピン125はベントされて凹部127と係合し、ロータ105は、中央位置または中間の位相角位置で、ハウジング組立体100に対して係止される。可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%に変更される前に、ベーン104がどこにあったかに応じて、アドバンス戻り抑制ライン128またはリタード戻り抑制ライン134のいずれかは、アドバンスまたはリタードチャンバ102、103にそれぞれさらされる。
【0029】
さらに、エンジンが異常停止(たとえば、エンジンストール)した場合、エンジンがクランキングしているとき、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは0%であり、ロータ組立体105は戻り抑制回路133を介して、中央ロック位置または中間の位相角位置に移動し、ロックピン125は、エンジンの異常停止の前のハウジング組立体100に対するベーン104の位置に関係なく、中央位置または中間の位相角位置に係合されるであろう。
【0030】
本発明の位相器の、電子制御を使用することなく、デフォルトで中央位置または中間の位相角位置になる機能により、カム位相器位置を制御するために電子制御が一般的に使用されないときのエンジンクランキングの間でさえ、位相器が中央位置または中間の位相角位置へ移動することが可能となる。さらに、位相器がデフォルトで中央位置または中間の位相角位置になるため、位相器はフェイルセーフ位置を提供し、特に制御信号またはパワーまたは失った場合に、VCT位相器に対する能動的な制御がなくても、エンジンが始動および駆動できることを保証する。位相器は、エンジンクランキング時、中央位置または中間の位相角位置であるため、位相器の位相のより長い行程が可能であり、較正の機会を提供する。従来技術において、より長い行程の位相器またはより長い位相角は可能ではないが、この理由は、エンジンクランキング時および始動時に、中央位置または中間の位相角位置が存在せず、エンジンは、最端のアドバンスまたはリタード停止位置のいずれでも、始動が困難であるためである。
【0031】
ベーン104がアドバンス位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、アドバンス戻り抑制ライン128がアドバンスチャンバ102にさらされる場合、アドバンスチャンバ102からの流体は、アドバンス戻り抑制ライン128内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁110を通ってリタードチャンバ103に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、アドバンスチャンバ102へのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖または遮断する。ロータ組立体105がアドバンスチャンバ102からのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中間の位相角位置または中央位置に移動され、ロックピン125は凹部127と整列して、ロータ組立体105を中央位置または中間の位相角位置のハウジング組立体100に対して係止する。
【0032】
ベーン104がリタード位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、リタード戻り抑制ライン134がリタードチャンバ103にさらされる場合、リタードチャンバ103からの流体は、リタード戻り抑制ライン134内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁108を通ってアドバンスチャンバ102に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、リタードチャンバ103へのリタード戻り抑制ライン134を閉鎖する。ロータ105がリタードチャンバ103からのラインを離れてリタード戻り抑制134を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中間の位相角位置または中央位置に移動され、ロックピン125は凹部127と整列して、ロータ105を中央位置または中間の位相角位置のハウジング組立体100に対して係止する。
【0033】
アドバンス戻り抑制ライン128およびリタード戻り抑制ライン134は、位相器が中央位置または中間の位相角位置にあるとき、ロータ組立体105によって、アドバンスおよびリタードチャンバ102、103から完全に閉鎖または遮断され、ロックピン125は、アドバンス戻り抑制ライン128またはリタード戻り抑制ライン134がそれぞれのチャンバから閉鎖される正確な時間に、凹部127に係合することが必要である。あるいは、アドバンス戻り抑制ライン128およびリタード戻り抑制ライン134が、中央位置または中間の位相角位置において、アドバンスおよびリタードチャンバ102、103に対してわずかに開放されている、または、部分的に制限され、ロータ組立体105がわずかに振動することを可能とし、ロックピン125が凹部127の位置を通過して、ロックピン125が凹部127に係合できる可能性を高めてもよい。
【0034】
負荷サイクルが40〜60%の間に設定されると、位相器のベーンはリタード位置に向けておよび/またはそこで移動する。スプールの行程またはスリーブに対するスプールの位置は、リタード位置に対して2〜3.5mmの間である。
【0035】
位相器がリタード位置にあることは、より低い圧縮比をエンジンの再始動に使用できるため、ホットまたはウォーム再始動にとって理想的である。位相器を完全リタード位置に配置し、したがって、より低い圧縮比を使用することによって、エンジン再始動の効率は増加し、エンジン再始動中のエンジンの振動は最小化され、スタータの仕事量は最小化され、エンジンが再始動する時間は速くなる。
【0036】
図5を参照すると、リタード位置に向けて移動するために、負荷サイクルは40%より大きく60%より小さい範囲に調整され、スプール111に対するVFS107の力は変更され、スプール111は、ばね115の力がVFS107の力とつりあうまでばね115によって左に移動され、図のリタードモードに入る。示されるリタードモードにおいて、スプールランド111bはライン113を遮断し、ライン112および114は開放されている。カムシャフトトルクはアドバンスチャンバ102を加圧して、アドバンスチャンバ102の流体をリタードチャンバ103に移動させ、ベーン104を矢印によって示される方向に移動させる。流体は、アドバンスチャンバ102から出てライン112を通ってスプールランド111aと111bとの間の制御弁109に流出し、中央ライン114と、リタードチャンバ103に通じるライン113とに再循環して戻る。
【0037】
補充オイルは、漏れを補充するために供給部Sからポンプ121により位相器に供給され、軸受120を通ってライン119に入る。ライン119は、2本のライン119aと119bとに分かれる。ライン119bは、入口逆止弁118および制御弁109に通じる。制御弁109から、流体は、逆止弁108、110のどちらがチャンバ102、103に開放されているかに応じて、逆止弁108、110のいずれかを通ってライン114に入る。ライン119aは、ロックピン125に通じ、パイロット弁130に通じるライン132に分岐する。ライン119aの流体の圧力は、ランド111bと111cとの間のスプール111を通って移動し、ロックピン125をばね124に対抗して解放位置に付勢し、ロックピン回路123を流体で満たす。ライン119aの流体はまた、ライン132を通って流れて、ばね131に対抗してパイロット弁130を加圧し、パイロット弁130を、リタード戻り抑制ライン134およびアドバンス戻り抑制ライン128が図5および13に示されるようにライン129から、ならびに互いに遮断され、また戻り抑制回路がオフである位置に移動させる。排出ライン122はスプールランド111bによって遮断され、ロックピン125およびパイロット弁130のベントを防止する。
【0038】
位相器のホールド位置は、ハウジングに対して、ベーンのリタード位置とアドバンス位置との間に好ましくは生じる。スプールの行程またはスリーブに対するスプールの位置は、3.5mmである。
【0039】
図6は、ホールド位置における位相器を示す。この位置において、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは60%であり、スプール111の一端に対するVFS107の力は、ホールドモードにおけるスプール111の反対側の端部に対するばね115の力と等しい。ランド111aおよび111bは、ライン112および113への流体の流れをそれぞれ遮断する。補充オイルは、漏れを補充するために供給部Sからポンプ121により位相器に供給され、軸受120を通ってライン119に入る。ライン119は、2本のライン119aと119bとに分かれる。ライン119bは、入口逆止弁118および制御弁109に通じる。制御弁109から、流体は、逆止弁108、110のどちらがチャンバ102、103に開放されているかに応じて、逆止弁108、110のいずれかを通ってライン114に入る。ライン119aは、ロックピン125に通じ、パイロット弁130に通じるライン132に分岐する。ライン119aの流体の圧力は、ランド111bと111cとの間のスプール111を通って移動し、ロックピン125をばね124に対抗して解放位置に付勢し、ロックピン回路123を満たす。ライン119aの流体はまた、ライン132を通って流れて、ばね131に対抗してパイロット弁130を加圧し、パイロット弁130を、リタード戻り抑制ライン134およびアドバンスデテントライン128が図5および13に示されるようにライン129から、ならびに互いに遮断され、また戻り抑制回路133がオフである位置に移動させる。排出ライン122はスプールランド111bによって遮断され、ロックピン125およびパイロット弁130のベントを防止する。
【0040】
負荷サイクルが60〜80%の間に設定されると、位相器のベーンはアドバンス位置に向けておよび/またはそこで移動する。スプールの行程またはスリーブに対するスプールの位置は、アドバンス位置に対して3.5〜5mmの間である。
【0041】
図4は、アドバンス位置に向けて移動する位相器を示す。アドバンス位置に向けて移動するために、負荷サイクルは60%より大きく、最高100%に増加し、スプール111に対するVFS107の力は増加し、スプール111は、ばね115の力がVFS107の力とつりあうまでVFS107によって右に移動され、アドバンスモードに入る。示されるアドバンスモードにおいて、スプールランド111aがライン112を遮断し、ライン113および114は開放されている。カムシャフトトルクはリタードチャンバ103を加圧して、リタードチャンバ103かアドバンスチャンバ102に流体を移動させ、ベーン104を矢印によって示される方向に移動させる。流体は、リタードチャンバ103から出てライン113を通ってスプールランド111aと111bとの間の制御弁109に流出し、中央ライン114と、アドバンスチャンバ102に通じるライン112とに再循環して戻る。
【0042】
補充オイルは、漏れを補充するために供給部Sからポンプ121により位相器に供給され、軸受120を通ってライン119に入る。ライン119は、2本のライン119aと119bとに分かれる。ライン119bは、入口逆止弁118および制御弁109に通じる。制御弁109から、流体は、逆止弁108、110のどちらがチャンバ102、103に開放されているかに応じて、逆止弁108、110のいずれかを通ってライン114に入る。ライン119aは、ロックピン125に通じ、パイロット弁130に通じるライン132に分岐する。ライン119aの流体の圧力は、ランド111bと111cとの間のスプール111を通って移動し、ロックピン125をばね124に対抗して解放位置に付勢し、ロックピン回路123を流体で満たす。ライン119aの流体はまた、ライン132を通って流れて、ばね131に対抗してパイロット弁130を加圧し、パイロット弁130を、リタード戻り抑制ライン134、アドバンス戻り抑制ライン128、およびライン129が図1および10に示されるように遮断され、かつ戻り抑制回路がオフである位置に移動させる。排出ライン122はスプールランド111bによって遮断され、ロックピン125のベントを防止する。
【0043】
図2および3は、使用者がエンジンの停止を手動で選択するが、エンジンが自動停止モードのため停止しているときの、中央位置ロック位相器の作動方法のフローチャートを示す。図2および3の方法は、自動停止モード中で、エンジンがまだ再始動されていないときの、中央位置ロック位相器の作動方法も示す。
【0044】
図2は、エンジンの停止始動モード中、自動ウォームまたはホット再始動のために中央位置ロック位相器を使用するための、第1の実施形態の方法のフローチャートを示す。
【0045】
最初のステップにおいて、エンジンが、エンジンの停止始動モードの自動停止であるように決定される場合(ステップ202)、ECUはVFSの負荷サイクルを調整して、たとえば図5に示すように、位相器をリタード位置に制御する(ステップ204)。停止始動モードの自動停止は、エンジンパラメータ、センサ入力、および/またはブレーキを押し下げるような使用者の動作に基づいて、ECUによって決定されてもよい。
【0046】
エンジンが「キーオフ」位置に配置されていないか使用者によって停止されておらず(ステップ206)、ならびに、エンジンが自動的に再始動されていない(ステップ208)場合、ECUはVFSを制御して、位相器をリタード位置に維持し(ステップ210)、ステップ208に戻って、たとえばブレーキを解放することおよび/またはアクセルを踏むことなどの運転者の動作によりエンジンが自動的に再始動されたか判定する。さらに、位相器は、ロックピンまたは動/静止摩擦力ではなく、制御弁の配置によって、完全リタード位置に維持されることに留意されたい。
【0047】
エンジンが「キーオフ」位置に配置されているか使用者によって停止された場合(ステップ206)、ECUはエンジンを再始動し、制御弁をVFSによって、次の始動に備えてロックピンが位相器の位置を中間の位相角位置に係止する戻り抑制位置(0%の負荷サイクル)に制御する(ステップ212)。たとえば、これは、中間の位相角位置に向けて移動する位相器を示す図8、9、10a、10b、13、および、中央位置または中間の位相角位置における位相器を示す図7a、7b、11a、11b、12に示される。
【0048】
ロックピンが中間の位相角位置に位相器を係止したあと、エンジンは停止し(ステップ214)、本方法は終了する。
【0049】
図3は、エンジンの停止始動モード中、自動ウォームまたはホット再始動のためにカムトルク中央位置ロック位相器を使用するための、第2の実施形態の方法のフローチャートを示す。図3の方法は、キーがオフの場合に位相器を中央位置ロックへ制御することが、エンジンの再始動によって行われるのではなく、中央位置ロックを制御するためにエンジンの次のクランキングまで待つという点で図2の方法と異なる。
【0050】
最初のステップにおいて、エンジンが、エンジンの停止始動モードの自動停止であるように決定される場合(ステップ202)、ECUはVFSの負荷サイクルを調整して、たとえば図5に示されて、上で述べられたように、位相器をリタード位置に制御する(ステップ204)。停止始動モードの自動停止は、エンジンパラメータ、センサ入力、および/またはブレーキを押し下げるような使用者の動作に基づいて、ECUによって決定されてもよい。
【0051】
エンジンが「キーオフ」位置に配置されていないか使用者によって停止されておらず(ステップ206)、ならびに、エンジンが自動的に再始動されていない(ステップ208)場合、ECUはVFSを制御して、位相器をリタード位置に維持し(ステップ210)、ステップ108に戻って、ブレーキを解放することおよび/またはアクセルを踏むことなどの運転者の動作によりエンジンが自動的に再始動されたか判定する。さらに、位相器は、ロックピンまたは動/静止摩擦力ではなく、制御弁の配置によって、完全リタード位置に維持されることに留意されたい。
【0052】
エンジンが「キーオフ」位置に配置されているか使用者によって停止された場合(ステップ206)、ECUが制御弁をVFSによって、車両のコールドスタート時のクランキングのために、ロックピンが位相器の位置を中間の位相角位置に係止する戻り抑制位置(0%の負荷サイクル)に制御し(ステップ216)、本方法は終了する。位相器を戻り抑制位置に向けて移動すること、および戻り抑制位置における位相器は、図7a〜13に示されて、上で述べられた。
【0053】
上記の実施形態のステップ204において、リタード位置は、位相器が係止される位置、たとえば戻り抑制位置以外の任意の位置に置き換えられる可能性がある。たとえばリタード位置は、アドバンス位置またはホールド位置に置き換えられる可能性がある。
【0054】
図2および3の方法は、位相器の制御弁109を通して流体が制御および供給されるパイロット弁130および油圧戻り抑制回路133を使用する中央位置ロック位相器の代替設計に適用されてもよい。パイロット弁の移動は、位相器の制御弁109によって、能動的に制御される。図14は、戻り抑制モードにおける制御弁109およびオンの油圧戻り抑制回路133を示す。アドバンスモード、リタードモード、およびゼロモードは示されていないが、油圧戻り抑制回路133がオフである図4、5、および6と同様である。油圧戻り抑制回路133は、ばね131によって付勢されるパイロット弁130と、アドバンスチャンバ102をパイロット弁130および共通ライン114に連結するアドバンス戻り抑制ライン128と、リタードチャンバ103をパイロット弁130および共通ライン114に連結するリタード戻り抑制ライン134とを含む。
【0055】
図14は、中央位置または中間の位相角位置における位相器を示し、ここで、可変力ソレノイドの負荷サイクルは0%であり、スプール109は戻り抑制モードであり、パイロット弁130はスプールを通して、オイル溜めまたは排出口に通じる通路122にベントされ、油圧戻り抑制回路133は開放またはオンである。
【0056】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%に変更される前に、ベーン104がどこにあったかに応じて、アドバンス戻り抑制ライン128またはリタード戻り抑制ライン134のいずれかは、アドバンスまたはリタードチャンバ102、103にそれぞれさらされる。さらに、エンジンが異常停止(たとえば、エンジンストール)した場合、エンジンがクランキングしているとき、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは0%であり、ロータ組立体105は戻り抑制回路を介して、中間ロック位置または中間の位相角位置に移動し、ロックピン125は、エンジンの異常停止の前のハウジング組立体100に対するベーン104の位置に関係なく、中央位置または中間の位相角位置に係合されるであろう。本発明の位相器の、電子制御を使用することなく、デフォルトで中央位置または中間の位相角位置になる機能により、カム位相器位置を制御するために電子制御が一般的に使用されないときのエンジンクランキングの間でさえ、位相器が中央位置または中間の位相角位置へ移動することが可能となる。さらに、位相器がデフォルトで中央位置または中間の位相角位置になるため、位相器はフェイルセーフ位置を提供し、特に制御信号またはパワーまたは失った場合に、VCT位相器に対する能動的な制御がなくても、エンジンが始動および駆動できることを保証する。位相器は、エンジンクランキング時、中央位置または中間の位相角位置であるため、位相器の位相のより長い行程が可能であり、較正の機会を提供する。従来技術において、より長い行程の位相器またはより長い位相角は可能ではないが、この理由は、エンジンクランキング時および始動時に、中央位置または中間の位相角位置が存在せず、エンジンは、最端のアドバンスまたはリタード停止位置のいずれでも、始動が困難であるためである。
【0057】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルがまさに0%に設定されたばかりのとき、スプール111のVFSに対する力が減少し、ばね115は、スプール111をスプールの行程の遠左端に、図12に示すように、戻り抑制位置に移動させる。戻り抑制モードにおいて、スプールランド111bは、スプールランド111aと111bとの間のライン112からの流体の流れが、その他のラインおよびライン113のいずれにも入ることを阻止し、位相器の制御を制御弁109から有効に取り除く。同時に、供給部からの流体は、ライン119からライン119bおよび入口逆止弁118を通って、共通ライン114に流れてもよい。流体は、ライン119aを通ってパイロット弁130に流れることが、スプールランド111cによって防止される。流体はライン119aに流れることができないため、パイロット弁130は排出ライン122にベントし、パイロット弁130を通してライン129および共通ライン114に、アドバンス戻り抑制ライン128とリタード戻り抑制ライン134との間の通路を開放し、換言すれば、油圧戻り抑制回路133を開放またはオンにする。
【0058】
ベーン104がアドバンス位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、アドバンス戻り抑制ライン128がアドバンスチャンバ102にさらされる場合、アドバンスチャンバ102からの流体は、アドバンス戻り抑制ライン128内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁110を通ってリタードチャンバ103に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、アドバンスチャンバ102へのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖または遮断する。ロータ組立体105がアドバンスチャンバ102からのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中央位置または中間の位相角位置に移動される。
【0059】
ベーン104がリタード位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、リタード戻り抑制ライン134がリタードチャンバ103にさらされる場合、リタードチャンバ103からの流体は、リタード戻り抑制ライン134内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁108を通ってアドバンスチャンバ102に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、リタードチャンバ103へのリタード戻り抑制ライン134を閉鎖する。ロータ組立体105がリタードチャンバ103からのラインを離れてリタード戻り抑制134を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中央位置または中間の位相角位置に移動される。
【0060】
図2および3の方法は、パイロット弁130および油圧戻り抑制回路133aが遠隔手段142によって流体が制御および供給される代替の位相器にも適用されてもよい。遠隔手段142は、任意のオン/オフ油圧弁、たとえばソレノイド弁でもよい。パイロット弁の移動は、遠隔のオン/オフ弁によって、能動的に制御される。図15は、戻り抑制モードにおける制御弁およびオンの油圧戻り抑制回路を示す。アドバンスモード、リタードモード、およびゼロモードは示されていないが、油圧戻り抑制回路133がオフである上記の図4〜6と同様である。油圧戻り抑制回路133aは、ばね131によって付勢されるパイロット弁130と、アドバンスチャンバ102をパイロット弁130および共通ライン114に連結するアドバンス戻り抑制ライン128と、リタードチャンバ103をパイロット弁130、共通ライン114、および遠隔手段142に連結されるライン144に連結するリタード戻り抑制ライン134とを含む。
【0061】
図15は、中央位置または中間の位相角位置における位相器を示し、ここで、可変力ソレノイドの負荷サイクルは0%であり、スプール109は戻り抑制モードであり、パイロット弁130は、排出口に通じる油圧手段142を通してベントされ、油圧戻り抑制回路133aは開放されている。
【0062】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%に変更される前に、ベーン104がどこにあったかに応じて、アドバンス戻り抑制ライン128またはリタード戻り抑制ライン134のいずれかは、アドバンスまたはリタードチャンバ102、103にそれぞれさらされる。さらに、エンジンが異常停止(たとえば、エンジンストール)した場合、エンジンがクランキングしているとき、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは0%であり、ロータ組立体105は戻り抑制回路を介して、中間位置または中間の位相角位置に移動し、ロックピン125は、エンジンの異常停止の前のハウジング組立体100に対するベーン104の位置に関係なく、中央位置または中間の位相角位置に係合されるであろう。本発明の位相器の、電子制御を使用することなく、デフォルトで中央位置または中間の位相角位置になる機能により、カム位相器位置を制御するために電子制御が一般的に使用されないときのエンジンクランキングの間でさえ、位相器が中央位置または中間の位相角位置へ移動することが可能となる。さらに、位相器がデフォルトで中央位置または中間の位相角位置になるため、位相器はフェイルセーフ位置を提供し、特に制御信号またはパワーまたは失った場合に、VCT位相器に対する能動的な制御がなくても、エンジンが始動および駆動できることを保証する。位相器は、エンジンクランキング時、中央位置または中間の位相角位置であるため、位相器の位相のより長い行程が可能であり、較正の機会を提供する。従来技術において、より長い行程の位相器またはより長い位相角は可能ではないが、この理由は、エンジンクランキング時および始動時に、中央位置または中間の位相角位置が存在せず、エンジンは、最端のアドバンスまたはリタード停止位置のいずれでも、始動が困難であるためである。
【0063】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルがまさに0%に設定されたばかりのとき、スプール111のVFSに対する力が減少し、ばね115は、スプール111をスプールの行程の遠左端に、図14に示すように、戻り抑制位置に移動させる。戻り抑制モードにおいて、スプールランド111bは、スプールランド111aと111bとの間のライン112からの流体の流れが、その他のラインおよびライン113のいずれにも入ることを阻止し、位相器の制御を制御弁109から有効に取り除く。同時に、供給部からの流体は、ライン119を通って入口逆止弁118を通じて共通ライン114に流れてもよい。流体は、油圧手段142からライン144を通ってパイロット弁130に流れることが、油圧手段142によって防止される。換言すれば、油圧手段142はスイッチオフされ、ライン144の流体のベントのみ可能となるであろう。したがって、パイロット弁130はライン144を通して油圧手段142にベントし、パイロット弁130を通してライン129および共通ライン114に、アドバンス戻り抑制ライン128とリタード戻り抑制ライン134との間の通路を開放し、換言すれば、油圧戻り抑制回路133aを開放する。
【0064】
ベーン104がアドバンス位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置されており、アドバンス戻り抑制ライン128がアドバンスチャンバ102にさらされる場合、アドバンスチャンバ102からの流体は、アドバンス戻り抑制ライン128内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁110を通ってリタードチャンバ103に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、アドバンスチャンバ102へのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖または遮断する。ロータ組立体105がアドバンスチャンバ102からのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中央位置または中間の位相角位置に移動される。
【0065】
ベーン104がリタード位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、リタード戻り抑制ライン134がリタードチャンバ103にさらされる場合、リタードチャンバ103からの流体は、リタード戻り抑制ライン134内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁108を通ってアドバンスチャンバ102に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、リタードチャンバ103へのリタード戻り抑制ライン134を閉鎖する。ロータ組立体105がリタードチャンバ103からのラインを離れてリタード戻り抑制134を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中央位置または中間の位相角位置に移動される。
【0066】
図2および3の方法は、位相器のパイロット弁130、油圧戻り抑制回路133、およびロックピン回路123が遠隔手段142によって制御される代替の位相器に適用されてもよい。遠隔手段142は、任意のオン/オフ油圧弁、たとえばソレノイド弁でもよい。パイロット弁の移動は、遠隔手段によって能動的に制御される。図16は、戻り抑制モードにおける制御弁109およびオンの油圧戻り抑制回路133aを示す。アドバンスモード、リタードモード、およびゼロモードは示されていないが、油圧戻り抑制回路がオフである上記の図1〜3と同様である。油圧戻り抑制回路133aは、ばね131によって付勢されるパイロット弁130と、アドバンスチャンバ102をパイロット弁130および共通ライン114に連結するアドバンス戻り抑制ライン128と、リタードチャンバ103をパイロット弁130、共通ライン114、および油圧手段142に通じるライン144とに連結するリタード戻り抑制ライン134とを含む。本実施形態において、ロックピン回路123aは、ロックピン125と、ロックピンをパイロット弁に連結するライン132と、油圧手段142に通じるライン144とを含む。
【0067】
図16は、中央位置または中間の位相角位置における位相器を示し、ここで、可変力ソレノイドの負荷サイクルは0%であり、スプール109は戻り抑制モードであり、パイロット弁130およびロックピン125は、排出口に通じる油圧手段142を通してベントされ、油圧戻り抑制回路133aは開放されている。
【0068】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルが0%に変更される前に、ベーン104がどこにあったかに応じて、アドバンス戻り抑制ライン128またはリタード戻り抑制ライン134のいずれかは、アドバンスまたはリタードチャンバ102、103にそれぞれさらされる。さらに、エンジンが異常停止(たとえば、エンジンストール)した場合、エンジンがクランキングしているとき、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは0%であり、ロータ組立体105は戻り抑制回路を介して、中央位置または中間の位相角位置に移動し、ロックピン125は、エンジンの異常停止の前のハウジング組立体100に対するベーン104の位置に関係なく、中央位置または中間の位相角位置に係合されるであろう。本発明の位相器の、電子制御を使用することなく、デフォルトで中央位置または中間の位相角位置になる機能により、カム位相器位置を制御するために電子制御が一般的に使用されないときのエンジンクランキングの間でさえ、位相器が中央位置または中間の位相角位置へ移動することが可能となる。さらに、位相器がデフォルトで中央位置または中間の位相角位置になるため、位相器はフェイルセーフ位置を提供し、特に制御信号またはパワーまたは失った場合に、VCT位相器に対する能動的な制御がなくても、エンジンが始動および駆動できることを保証する。位相器は、エンジンクランキング時、中央位置または中間の位相角位置であるため、位相器の位相のより長い行程が可能であり、較正の機会を提供する。従来技術において、より長い行程の位相器またはより長い位相角は可能ではないが、この理由は、エンジンクランキング時および始動時に、中央位置または中間の位相角位置が存在せず、エンジンは、最端のアドバンスまたはリタード停止位置のいずれでも、始動が困難であるためである。
【0069】
可変力ソレノイド107の負荷サイクルがまさに0%に設定されたばかりのとき、スプール111のVFSに対する力が減少し、ばね115は、スプール111をスプールの行程の遠左端に、図16に示すように、戻り抑制位置に移動させる。戻り抑制モードにおいて、スプールランド111bは、スプールランド111aと111bとの間のライン112からの流体の流れが、その他のラインおよびライン113のいずれにも入ることを阻止し、位相器の制御を制御弁109から有効に取り除く。同時に、供給部からの流体は、ライン119から入口逆止弁118を通って、共通ライン114に流れてもよい。流体は、油圧手段142からライン144および132を通ってパイロット弁130およびロックピン125に流れることが、油圧手段142によって防止される。換言すれば、油圧手段142はスイッチオフされ、ベントのみ可能となるであろう。したがって、パイロット弁130およびロックピン125はライン144および132を通して油圧手段にベントし、パイロット弁130を通してライン129および共通ライン114に、アドバンス戻り抑制ライン128とリタード戻り抑制ライン134との間の通路を開放し、換言すれば、油圧戻り抑制回路133aを開放する。
【0070】
ベーン104がアドバンス位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置され、アドバンス戻り抑制ライン128がアドバンスチャンバ102にさらされる場合、アドバンスチャンバ102からの流体は、アドバンス戻り抑制ライン128内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁110を通ってリタードチャンバ103に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、アドバンスチャンバ102へのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖または遮断する。ロータ105がアドバンスチャンバ102からのアドバンス戻り抑制ライン128を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ105との間に形成されるチャンバ内の中央位置に移動され、ロックピン125は凹部127と整列して、ロータ組立体105を中央位置または中間の位相角位置のハウジング組立体100に対して係止する。
【0071】
ベーン104がリタード位置の近くまたはその中のハウジング組立体100内に配置されており、リタード戻り抑制ライン134がリタードチャンバ103にさらされる場合、リタードチャンバ103からの流体は、リタード戻り抑制ライン134内に、開放パイロット弁130を通って、共通ライン114に通じるライン129に流れる。共通ライン114から、流体は、逆止弁108を通ってアドバンスチャンバ102に流れ、ベーン104をハウジング組立体100に対して移動させて、リタードチャンバ103へのリタード戻り抑制ライン134を閉鎖する。ロータ105がリタードチャンバ103からのラインを離れてリタード戻り抑制134を閉鎖するとき、ベーン104は、ハウジング組立体100とロータ組立体105との間に形成されるチャンバ内の中間の位相角位置または中央位置に移動され、ロックピン125は凹部127と整列して、ロータ105を中央位置または中間の位相角位置のハウジング組立体100に対して係止する。
【0072】
また、上図に示される位相器は、カムシャフト126に入る供給ポンプ121と供給ライン119との間に絞り弁を含んでもよい。
【0073】
図2および3の方法は、パイロットロック弁を形成するためにパイロット弁に組み込まれるロックピンを有する代替の位相器に適用されてもよい。パイロットロック弁の移動は、位相器の制御弁によって、能動的に制御される。
【0074】
図17は、パイロットロック弁のロックピン端部が凹部に係合している中央位置または中間の位相角位置の位相器を示す。
【0075】
油圧戻り抑制ロック回路162は、ばね161によって付勢されるパイロットロック弁160と、アドバンスチャンバ102をパイロットロック弁160および共通ライン114に連結するアドバンス戻り抑制ライン128と、リタードチャンバ103をパイロットロック弁160および共通ライン114に連結するリタード戻り抑制ライン134と、パイロットロック弁160を共通ライン114に連結するライン129とを含む。アドバンス戻り抑制ライン128およびリタード戻り抑制ライン134は、ベーン104から所定の距離または長さである。パイロットロック弁160はロータ組立体105の中にあり、ライン119aおよび排出ライン122に流体連結される。パイロットロック弁160は、ロックピンとして機能する端部も有する。弁160の一端部はロックピン端部160aであり、ばね161によってハウジング組立体100の凹部147に向けて付勢されて、嵌合される。あるいは、パイロットロック弁160をハウジング組立体100に収容し、ロータ組立体105の凹部147に向けてばね161によって付勢してもよい。油圧戻り抑制ロック回路162の開閉は、位相制御弁109の切替/移動によって制御される。
【0076】
図17は、戻り抑制モードの位相器を示し、パイロットロック弁160のロックピン端部160aは凹部147に係合している。この位置において、可変力ソレノイド107の負荷サイクルは0%であり、スプール111の一端に対するVFS107の力は、戻り抑制モードにおけるスプール111の反対側の端部に対するばね115の力と等しい。ランド111bは、ライン113および114への、および、それらからの流体の流れを遮断する。補充オイルは、漏れを補充するために供給部Sからポンプ121により位相器に供給され、軸受120を通ってライン119に入る。ライン119は、2本のライン119aと119bとに分かれる。ライン119bは、入口逆止弁118および制御弁109に通じる。ライン119bから、流体は、制御弁のスリーブの外径の環状部に入り、逆止弁108、110のどちらがチャンバ102、103に開放されているかに応じて、逆止弁108、110のいずれかを通ってライン114に入る。ライン119aは、パイロットロック弁160のロックピン端部160aに通じる。ライン112の流体は、スプール111ならびにランド111aおよび111bによって、制御弁109およびアドバンスチャンバ102を出ることが遮断される。ライン119aの流体は、パイロットロック弁160からライン119aを通って、またランド111bと111cとの間にオイル溜めに通じるライン122に、ベントする。ライン119aの流体をベントすることにより、パイロットロック弁160に対するばね161の力は、ロックピン端部160aが凹部147に係合するように弁を移動させる。
【0077】
上記の実施形態における可変力ソレノイドは、ステッパモータまたは非可変ソレノイドに置き換えられてもよい。
【0078】
したがって、本明細書に記載した本発明の実施形態は、単に本発明の原理の適用の例示目的に過ぎないことを理解すべきである。図示した実施形態の詳細に対する本明細書中の言及は、それら自体が本発明に重要であると見なされるそれらの特徴を列挙する特許請求の範囲を限定するようには意図されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17