特許第6297606号(P6297606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297606
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】乳房超音波スキャニング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   A61B8/14ZDM
【請求項の数】21
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-560172(P2015-560172)
(86)(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公表番号】特表2016-508409(P2016-508409A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】US2013069468
(87)【国際公開番号】WO2014133605
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】61/769,913
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234783
【氏名又は名称】ワン, シー−ピン
【氏名又は名称原語表記】Wang, Shih−Ping
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シーーピン
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0055159(US,A1)
【文献】 特開2007−222233(JP,A)
【文献】 特開2003−088525(JP,A)
【文献】 特表2008−501436(JP,A)
【文献】 特開2007−282960(JP,A)
【文献】 特開2009−153980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房を超音波的にスキャニングする装置において、
乳房(720)と接触して胸の方へ圧縮する形態とされている基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート(112)が設けられており、該テンプレートは丸くされた周辺部(304)と乳房の乳首が飛び出す形態とされた乳首孔(204)とを具備しており、且つ該テンプレートは該乳首孔から該テンプレートの周辺部へ延在している1個又はそれ以上の長尺状のスロット形状開口(202;506;606;706;804;904,906;1004,1006,1008,1010,1012)を具備しており、
各々が該1個又はそれ以上のスロット形状開口の内の夫々の一つと整合しており且つそれに沿ってラジアル方向に延在している1個又はそれ以上の長尺状の超音波変換器(114)が設けられており、
前記テンプレートは該乳房を圧縮したままで該乳房上を回転する形態とされており、且つ該1個又はそれ以上の変換器は、夫々の1個又はそれ以上のスロット形状開口を介して超音波的に乳房をスキャンし且つ該乳房のオリジナルの2D超音波画像(1206,1208;1236,1238)を発生させるために、該テンプレートと共に回転する形態とされており、
コンピュータにより実現される画像処理及び表示ファシリティ(1404,1406,1408,1401)が該1個又はそれ以上の変換器と関連しており且つ該オリジナルの2D画像を受け取り且つそれを選択された厚さ及びオリエンテーションを有する該乳房の複数のスライスの画像へ処理する形態とされており、更に、オペレータの制御下において、該スライス画像から選択した少なくとも1個又はそれ以上の画像を表示させる形態とされている、
装置。
【請求項2】
該画像処理及び表示ファシリティが、該スライス画像から選択した1個又はそれ以上の画像の表示と同時的に、該2D画像から選択した1個又はそれ以上の画像を表示させる形態とされている請求項1記載の装置。
【請求項3】
該画像処理及び表示ファシリティが、第1の2D画像(1206)と第2の2D画像(1236)とを同時的に表示する形態とされており、それら両方の画像は第1の及び第2の2D画像が互いに直交しているように該オリジナルの2D画像から選択される請求項1記載の装置。
【請求項4】
該テンプレートが、2個又はそれ以上のスロット形状開口(904,906;1004,1006,1008,1010,1012)と、該開口の夫々の一つと整合しており且つそれに沿ってラジアル方向に延在している2個又はそれ以上の超音波変換器と、を包含している請求項1記載の装置。
【請求項5】
該2個又はそれ以上の超音波変換器がラジアル長において互いに異なっている請求項4記載の装置。
【請求項6】
該2個又はそれ以上の超音波変換器がラジアル長における差異に加えて特性において互いに異なっている請求項4記載の装置。
【請求項7】
該テンプレートが非円形形状(1002)を有しており且つ患者の乳房が該変換器によってスキャンされる場合に患者の脇の下に近づく形態とされたセクターにおいて一層大きなラジアル寸法を有する形態とされている請求項4記載の装置。
【請求項8】
該テンプレートの端部が患者の皮膚との鋭利な端部の接触を回避するために丸められた舌部(204a,304)が設けられている請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記丸められた端部が該テンプレート(304)の周辺部においての端部と該テンプレート(204a)における該1個又はそれ以上の開口においての端部とを包含している請求項8記載の装置。
【請求項10】
該1個又はそれ以上の変換器の少なくとも1個が乳房と凹状表面(1314a,1314b)で接触する形態とされている下側面を具備している請求項1記載の装置。
【請求項11】
該テンプレートがオーバーラップ角度(822−824)だけ360度を越えるスキャン角度にわたり1個又はそれ以上の変換器で乳房をスキャンする形態とされている請求項1記載の装置。
【請求項12】
該テンプレートが5度−45度の範囲内にあるオーバーラップ角度にわたりスキャンする形態とされている請求項11記載の装置。
【請求項13】
該1個又はそれ以上のスロット形状開口の内の少なくとも一つを横断して延在しており音響伝達媒体に浸透性のメンブレン(510,610,710)が設けられており、且つ該1個又はそれ以上の超音波変換器の内の少なくとも一つが該メンブレンを介して乳房をスキャンする請求項1記載の装置。
【請求項14】
該基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレートが透明か又は少なくとも半透明の物質から形成されている請求項1記載の装置。
【請求項15】
該基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレートが半剛性である請求項1記載の装置。
【請求項16】
該基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレートは、該乳房が下方向圧縮状態にある場合に、滑りやすい接触をする形態とされている請求項1記載の装置。
【請求項17】
患者の乳房を超音波的にスキャンする方法において、
20度未満の逸れ角度を有する凹状内側表面で乳房と接触し且つそれを胸方向へ圧縮する形態とされているラジアルスキャニングテンプレート(112a)で乳房を胸方向へ圧縮し、該テンプレートは丸くされた周辺部と乳房の乳首が飛び出す形態とされている乳首孔(204)とを具備しており、且つ該テンプレートは該乳首孔から該テンプレートの周辺部へ向けて延在している1個又はそれ以上の長尺状のスロット形状開口(202;506;606;706;804;904,906;1004,1006,1008,1010,1012)を具備しており、
各々が該1個又はそれ以上のスロット形状開口の内の夫々の一つと整合されており且つそれに沿って延在している1個又はそれ以上の長尺状の超音波変換器(114)で、該テンプレートと該変換器とが乳房上を回転する間に、胸方向に圧縮されている乳房を超音波的にスキャンし、
1個又はそれ以上の変換器のスキャニングによって与えられる信号から乳房のオリジナルのラジアル2D超音波画像(1206,1208;1236,1238)を発生し、
該オリジナルのラジアル2D画像のものに対して計画した横断方向に準じ且つ選択した厚さとオリエンテーションとを持った乳房の複数のスライス(1210)の画像へコンピュータ処理し、
複数のスライスの画像の内の少なくとも1個を表示する、
ことを包含している方法。
【請求項18】
該圧縮ステップが、乳房を基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート(112)で圧縮することを包含している請求項17記載の方法。
【請求項19】
音響的伝達媒体に対して浸透性であるメンブレン(510,610,710)を、乳房のスキャニング期間中に、乳房と該1個又はそれ以上の変換器との間に介在させることを包含している請求項17記載の方法。
【請求項20】
音響的伝達媒体に対して浸透性であるメンブレン(610,710)を、乳房のスキャニング期間中に、該テンプレートの乳房に面する側と乳房との間に介在させることを包含している請求項19記載の方法。
【請求項21】
該表示するステップが、該複数のスライス(1210)の画像の内の少なくとも1個の表示と同時に、互いに交差する面に準じる該オリジナルのラジアル2D画像の内の少なくとも2個を表示することを包含している請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許明細書は医学的イメージングに関するものである。更に詳細には、本特許明細書は乳房の胸の方向への圧縮及びラジアルスキャニングテンプレートへ固定した変換器での自動化したスキャニングを使用する乳房超音波イメージングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボリュメトリック(volumetric)乳房スキャニングでは、通常、患者の乳房組織に対してリニアアレイの超音波変換器の直線的な動きが関与し、相次ぐスキャニングラインは互いに平行であり、且つ結果的に得られる超音波エコーを処理してスキャニングした乳房の少なくとも一つの音響的特性の局所的(例えば、ボクセル(voxel)、即ち体素)値を表すデータボリューム(data volume)を形成する。乳房のボリュメトリック超音波スキャニングは乳癌スクリーニング用の相補的モダリティーとして提案されていた。1例が米国特許第7,828,733号に記載されており、それは、乳房を胸の方向へ圧縮させるフルフィールド乳房超音波(以後、「FFBU」)スキャニング装置と、例えば、超音波結合剤に対して浸透性のファブリック(fabric)物質を介してのスキャニングを用い且つ空気泡に起因すると考えられるようなイメージのアーチファクトを減少する利点を具備しているWO2007/014292に記載されている如き超音波変換器と乳房との接触状態を維持する直線的変換器並進機構と、を使用することが関与する。
【0003】
乳房超音波における最も重要な要因の内の一つは画像品質であり、それは、通常、画像空間分解能、信号ダイナミックレンジ、及び相対的組織画像コントラスト、等のパラメータによって定義される。画像品質は超音波の周波数に非常に依存する。エイ・トーマス・スタブロス(A. Thomas Stavros)著の「乳房超音波(Breast Ultrasound)」(出版社:リッポンコット・ウイリアムズ・アンド・ウイルキンズ(Lipponcott Williams & Wilkins)2004年)(以後、「スタブロス2004」)及びヘルムート・マジャー(Helmut Madjar)及びエレン・メンデルソン(Ellen Mendelson)共著「乳房超音波の実際:技術、所見、分別診断(The Practice of Breast Ultrasound: Techniques, Findings, Differential Diagnosis)」(
出版社:ティーメ(Thieme)2008年)等の乳房超音波に関する主要なテキストブックは、許容可能な乳房画像を達成することを希求する場合には、7乃至7.5MHzより低い超音波周波数を使用しないことを提言している。これらの本では、乳房イメージングのためには一層高い超音波周波数であって、可能であれば12MHz程度の高いものを使用すべきであることを説明している。「乳房の超音波検査のためのIBUS(International Breast Ultrasound School)からのガイドライン(Guidelines from the IBUS for Ultrasonic Examination of the Breast)」(ヘルムート・マジャー等編、ユーロピアンジャーナルオブウルトラサウンド(European Journal of Ultrasound)1999年、9巻、99−102頁において発表)も乳房イメージングのために7.5MHzより低い超音波周波数を使用しないことを推奨している。しかしながら、一層高い周波数においての乳房超音波イメージングはチャレンジを呈示している。というのは、乳房組織の超音波減衰は、ダストス(D'Astous)及びフォースター(Foster)(「医学及び生物学における超音波(Ultrasound in Med. & Biol.)」
1986年、12巻、795−808頁において発表)(以後、「ダストス及びフォスター」)によって示されている如く、超音波周波数と共に迅速に増加するからである。超音波周波数が7MHzにおいての乳癌及び実質組織に対して、夫々、1乃至2dB/cm−MHzの減衰係数であって、結果的に得られる減衰は乳房組織の6cmの厚さに対して42乃至84dBの不所望の範囲に到達する。スタブロス2004の34頁の図2−37は12MHzにおいて得られた乳房超音波画像に対して約3.5cmの浸透深さを示している。現在市販されているFFBUは、乳房寸法の範囲に対して許容可能な画像品質を得るために8MHz乃至14MHzの超音波周波数の範囲で動作しているものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特開7,828,733号公報
【特許文献2】WO2007/014292
【特許文献3】WO03/103500
【特許文献4】米国公開特許2006/0173303A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エイ・トーマス・スタブロス(A. Thomas Stavros)著 「乳房超音波(Breast Ultrasound)」 リッポンコット・ウイリアムズ・アンド・ウイルキンズ(Lipponcott Williams & Wilkins)出版 2004年
【非特許文献2】ヘルムート・マジャー(Helmut Madjar)及びエレン・メンデルソン(Ellen Mendelson)共著 「乳房超音波の実際:技術、所見、分別診断(The Practice of Breast Ultrasound: Techniques, Findings, Differential Diagnosis)」 ティーメ(Thieme)出版 2008年
【非特許文献3】ヘルムート・マジャー等編 「乳房の超音波検査のためのIBUS(International Breast Ultrasound School)からのガイドライン(Guidelines from the IBUS for Ultrasonic Examination of the Breast)」 ユーロピアンジャーナルオブウルトラサウンド(European Journal of Ultrasound)、1999年、9巻、99−102頁
【非特許文献4】ダストス(D'Astous)及びフォースター(Foster)共著 「医学及び生物学における超音波(Ultrasound in Med. & Biol.)」 1986年、12巻、795−808頁
【非特許文献5】アールエフ・チャン等(RF Chang et al.) 「マルチパス自動化乳房超音波のための迅速な画像スティッチング及びコンピュータ補助検知(Rapid image stitching and computer-aided detection for multipass automated breast ultrasound)」 メディカルフィジックス(Medical Physics)発表、2010年、37巻、2063−2−73頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知の現在市販されているFFBUスキャニング装置は直線的進行スキャナーであって、上述した如くに、スキャニングラインは基本的に互いに平行である。これらのスキャナーにおいての顕著なチャレンジは、丸い乳房に亘り矩形状のスキャン区域を適合させる試みである。しばしば、各乳房は互いにオーバーラップする組の複数のスキャンで2乃至5回又はそれ以上の回数スキャンされねばならない。アールエフ・チャン等(RF Chang et al.)によって報告されている「マルチパス自動化乳房超音波のための迅速な画像スティッチング及びコンピュータ補助検知(Rapid image stitching and computer-aided detection for multipass automated breast ultrasound)」(メディカルフィジックス(Medical Physics)2010年、37巻、2063−2−73頁で発表)などの良好な画像スティッチング技術の場合であっても、乳房の幾つかの別々のスキャンを単一画像を形成する単一の組へ正確にスティッチさせることは困難である。従って、市販のFFBUの複数の画像を読み取る現在の慣行は、これら幾つかのスキャンの各々を別々に且つ独立的にビュー(view)、即ち観察、させるが、その理由は、各スキャンが乳房の異なる部分であるが部分的にオーバーラップする部分をカバーしているからである。その結果、各乳房に対するこの様な複数のスキャンは治療者による一層長い解釈時間を必要とすることとなる。この様な複数のスキャンに対する別の問題は、各患者がスキャン検査室にいる時間を増加させ、そのことは(1)患者処理能力、及び(2)年毎のFFBU当たりの収益発生に関して直接的に負の影響を与えることとなる。
【0007】
WO03/103500においては非直線的進行FFBUスキャニングの提案がなされているが、それは未だに市販されていないものと思われる。この文献は円錐形状をした組織モールディング要素を使用することを提案しており、該要素は1個の孔を具備しており、該モールディング要素が乳房と相対的に回転する際に、該孔を介して超音波変換器が乳房をスキャンするものである。この文献における図は、該モールディング要素の壁が約90度の角度で集束することを示しているように見える。スキャンされる乳房が患者の胸壁に対して平坦化されるという本書に記載される実施例の内の1個又はそれ以上と比較して、この様な90度のモールディング要素を使用することは乳房組織のかなり一層大きな厚さを介してスキャンすることを意味することとなる。このことは2つの主要な欠点を引き起こすこととなり、即ち、(1)画像品質が一層劣化し、且つ(2)スキャンすることが可能な乳房の寸法範囲が制限される、ということである。何故ならば、スキャンされる乳房組織の厚さが一層大きい場合には一層低い超音波周波数を使用せねばならず、特に、推奨されている最小値の7.5MHzより低い超音波周波数を必要とするような一層大きな乳房の場合にそのことが言える。米国公開特許US20006/0173303A1に記載されているような乳房を横方向に圧縮させる(マンモグラフィにおける如く)ことが関与する初期のFFBU開発では、胸の方向に圧縮させた乳房をスキャンする現在の装置よりも一層低い品質の画像を発生させていた。何故ならば、この様な初期に開発されたFFBU装置においては一層大きな乳房に対しては一層低い超音波周波数を使用せねばならず、その結果、胸の方向への圧縮への変更となった。本特許明細書における開示に鑑みて当業者には明らかであるように、上述した直線的進行スキャニング装置において及びWO03/103500に記載されている装置においては、付加的な問題点が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乳房を超音波によってスキャンし且つボリュメトリック情報を表示させる装置及び関連方法が提供され、本装置は、超音波変換器と乳房をほぼ胸の方へ圧縮させるラジアルスキャニングテンプレートとを有しており、該ラジアルスキャニングテンプレートは、好適には、円形であり且つ、好適には、その中心に開口を具備しており、その開口を介して乳房の乳首を突出させることが可能である。該ラジアルスキャニングテンプレートは、その中心からほぼ半径方向外側へ延在しているスロット形状の開口を具備しており、該テンプレートが乳房の上方で回転するに従い、そのスロット形状の開口を介して、超音波変換器が乳房をスキャンする。1実施例においては、該スキャニングテンプレートは「基本的に平面状」であり、そのことは、本特許明細書においては、該テンプレートの中央開口の高さと周辺部の高さとの間の差異が同様の中央開口と側壁とを具備しており該側壁が175度を越えて約180度までの範囲内における或る角度で集束している切頭円錐、即ち円錐台、としての形状とされている或るテンプレートに対する差異未満であるようにのみ絶対的平面性から逸れている場合がある1個のテンプレートを指し示しており、該側壁が上記範囲内の角度にある場合には、該テンプレートは2.4度未満から0度の範囲内の或る角度だけ絶対的平面性から逸れていると言うことが可能であり且つその角度は本特許明細書においては逸れ角と呼称されるものである。その他の実施例においては、該逸れ角は、使用される変換器の長さ及び形状に依存して、5度乃至0度、10度乃至0度、15度乃至0度、又は20度乃至0度の範囲内となる場合がある。該テンプレートは、絶対的に平面状でない場合には、実質的には、浅い切頭円錐としての形状とさせることが可能であり、又はそれは浅い反転させた御椀のような形状とさせることが可能であり、且つ、好適には、ほぼ中央に開口を具備している。該テンプレートの凹形状側は、患者の乳房と対面し且つ乳房を胸の方へ平坦化させる形態とされている。該テンプレートは、好適には、円形状の円周を具備しており且つ円形状である必要が無い場合がある。内側(乳房に面する)壁は一次元又は二次元で湾曲する場合がある。該テンプレートは、輪郭においてカム形状とさせるか、又は、オーバルに近いか又は、以下に記載する例における如く、胸の方へ圧縮された乳房にわたって回転することを許容すべく十分に丸められている角部を持っている限り、正方形又は矩形に近いものとさせることも可能である。該テンプレートと共に使用される長尺状の超音波変換器の乳房に面する側は、直線に沿って、又は該テンプレートで平坦化された乳房の幾分丸められた凸状の側とより良く一致するために、凹状の表面が乳房と接触するように湾曲した線に沿って延在する場合がある。該変換器の及び該テンプレート及びその開口の乳房に面する側の端部は、乳房が鋭利な端部又は角部との不快な接触をすることを回避するために、十分に丸められているか又は面取りされている。
【0009】
胸壁に対して乳房組織を実効的に平坦化させ且つその際に所要のスキャン深さを減少させ且つ一層高い超音波周波数の使用を一貫性を持って可能とさせ且つ実際的なものとさせることが可能な基本的に平面状のスキャニングテンプレートを使用する場合には顕著な利点が存在している。一層高い超音波周波数(例えば、8MHz−15MHz)は必要とされる深さへ浸透することが可能であり且つ一層低い超音波周波数(例えば、7.5MHz未満で、WO03/103500において提案されている態様で一層厚い乳房組織をスキャンするためには必要とされるようなもの)からの画像と比較してより優れた画像品質を発生させる。基本的に平面状でラジアル即ち半径方向のスキャンの形態も一層容易なボリュメトリック情報再構築及び表示を可能とさせ、そのことは、放射線医による表示された画像の解釈を容易なものとさせる。この様なスキャニングテンプレートは、特に、仰向けの患者の乳房を超音波によってスキャンするために効果的なものであるが、その他の患者の位置(例えば、うつ伏せ、直立、臥位)に対する適用も本好適実施例の範囲内のものである。
【0010】
一つの好適な実施例においては、ラジアルテンプレートの中心における孔は、スキャン期間中に該テンプレートを介して乳首が突出することを可能とさせる。このことは、スキャニングプロセス期間中に乳首を上をスキャンし且つ乳首を乳房内に押し込める米国特許第7,8828,733号及びWO02/30287において提案されているようなFFBUスキャニング装置の画像歪み及びアーチファクトの問題を解消している。WO02/30287はその問題を認識しているが異なる解決法を提案しており、即ち、乳首の上をスキャニングすることによって発生される画像歪み及びアーチファクトの問題を減少させるために乳首パッドを使用している。本特許明細書に開示されるテンプレートの中心における孔は、又、健康専門家が手作業によって画像中の乳首を見つけ出し且つスキャンした画像中におけるその位置に印を付けるという既知のスキャニング装置の場合と比較して、乳首に対しての自然の探査器として機能する。
【0011】
本特許明細書に開示するこのラジアルスキャン形態は、単一の変換器を使用して単一のスキャンで乳房をカバーすることが可能であるが、一方、米国特許第7,828,733号におけるような直線的スキャニングの市販FFBUは、一層長尺であって一層高価な変換器を使用して2乃至5回のスキャンで乳房をカバーすることが可能である。WO02/30287におけるような直線的スキャニングは乳房をカバーするためにより一層多くの回数のスキャンを使用しており、そのことは、スキャニングプロセスによって発生される乳房の動きに起因して且つ画像スティッチングにおけるアーチファクトに起因して、3Dボリュメトリック画像の再構築を困難なものとさせる。複数回のスキャンと比較して単一スキャンの顕著な利点は、(1)解釈時間の減少、(2)患者処理能力の増加、及び(3)FFBU所有者に対する収益発生の増加、を包含している。幾つかの実施例によれば、単一スキャン装置の画像品質は、スキャン速度を遅くすることによって更に改善されるが、そのことは、更に患者処理能力を減少させること無しに複数回のスキャンを実施する場合に現在のFFBUによって容易に達成されるものではない。
【0012】
好適には、本特許明細書において開示されるラジアルスキャニングテンプレートは、スキャニングのために乳房を胸方向へ十分に平坦化させる半硬性又は実質的に硬性であって且つ位置決め及びスキャニングのために乳房を可視化させることを容易とさせるために光学的に十分に半透明である物質を包含している。
【0013】
一つの好適な実施例によれば、超音波変換器はテンプレートにおけるスロット形状をした開口を介して乳房の皮膚と直接接触している。別の好適な実施例においては、ゲル等の超音波結合剤に対して浸透性のファブリックがテンプレートにおけるスロット形状をした開口を横断して延在し、且つ超音波変換器が該浸透性のファブリックを介して乳房をスキャンする。更に別の好適な実施例においては、全テンプレートの少なくとも内側をこの様な浸透性ファブリック等からなる着脱自在のソックス(sock)、即ち靴下、で被覆している。更に別の好適な実施例においては、患者がブラジャー形状をした物品を着装し、その少なくとも乳房を被覆する部分はこの様な浸透性のファブリックから構成されており且つ乳首を飛び出させるための孔を有することが可能であり、及び本特許明細書に記載されるテンプレートを該ファブリックの上に位置させて乳首を該テンプレートの中央の孔を介して突出させるものである。
【0014】
一つの好適な実施例によれば、スキャニングテンプレートは唯一つのラジアル方向に延在するスロット形状をした開口を有しており、且つ唯一つの超音波変換器が乳房をスキャンする。乳房超音波スキャン期間中に、所望される場合には、ラジアルスキャニングテンプレートは360度+オーバーラップ角度を介して回転し、そのオーバーラップ角度は、好適には、5度乃至45度の範囲内のものである。従って、オーバーラップ角度内の乳房組織は2回スキャンされることとなる。この様な幾らかの組織の二重スキャニングからの情報は、その二重のスキャンからの情報を適宜混合させて、スキャンの開始・停止位置と関連して結果的に得られる乳房のボリュメトリック表示において発生する可能性のある不連続性を減少させるために使用することが可能である。
【0015】
別の好適な実施例によれば、スキャンされるべき乳房の異なる寸法及び形状に適合させるために、異なる寸法及び形状を有している異なるラジアルスキャニングテンプレート及び/又は変換器を使用する。
【0016】
更に別の好適な実施例においては、凹状に湾曲した変換器を同様に凹状に湾曲したテンプレートと共に使用する。
【0017】
別の好適な実施例によれば、複数個の超音波変換器とテンプレートにおける同複数個のスロット形状をした開口とを設ける。一般的に、N個の変換器がある場合には、ラジアルスキャニングテンプレートを360度/Nと、所望により、それに加えてオーバーラップ角度だけ回転させることによって完全なボリュメトリックスキャンを達成することが可能であり、該オーバーラップ角度は十分な数の変換器が同時的にスキャンする場合には5度未満とすることが可能である。
【0018】
1実施例においては、ラジアルスキャニングテンプレート周りの中心の孔と周辺部との間の異なる距離に対応して異なる長さを有する少なくとも2個の超音波変換器が使用される。各超音波変換器は乳房の異なるコロナル即ち冠状(coronal)セクターをスキャンする。1例においては、一層長い超音波変換器が脇の下(axilla)に近い乳房の冠状セクターをスキャンし、そのセクターは、通常、その他の乳房セクターと比較して乳首から一層遠くに延在しており、且つ一層短い超音波変換器は該乳房のその他の部分をスキャンする。
【0019】
1実施例において、変換器は複数の変換器要素からなる単一のリニアアレイ(時折、IDアレイとして呼称される)から構成されている。別の好適な実施例においては、変換器は互いに並置させた複数のアレイ(時折、1.25D、1.5D、2D等アレイとして呼称される)から構成されている。このタイプのマルチアレイ変換器は単一アレイ変換器よりも一層良好な横方向空間分解能を与えることが可能である。
【0020】
一つの好適な実施例においては、乳首及び乳輪下(sub-areola)領域は変換器からのスキャニング超音波ビームのビームステアリングで部分的にカバーすることが可能である。別の実施例においては、乳首及び乳輪下領域は、例えば、ハンドヘルド型の超音波変換器で手作業によって別個にスキャンすることが可能である。
【0021】
本特許明細書に開示されるような基本的に平面状のラジアルテンプレートでのスキャンは、一層簡単な組の画像を発生させることが可能であり、そのことは、例えば、冠状スライス画像を含む3D情報の一層容易で一層正確な再構築及び表示を可能とさせる。このスキャン形態は、又、オリジナルの2D画像のシネ(cine)レビューを可能とさせ、そのことは画像の解釈を容易化させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】フルフィールド乳房超音波(FFBU)装置を例示する概略図。
図2】胸の方へ平坦化された乳房をスキャニングするための基本的に平面状のスキャニングテンプレートと超音波変換器を例示した分解斜視図。
図3】(a)は基本的に平面状のスキャニングテンプレートの平面図、(b)はA−A’線に沿って取った断面図、(c)はB−B’線に沿って取った断面図であって、(b)は、夫々、基本的に平面状のスキャニングテンプレートの断面平面図。
図4】(a)は基本的に平面状のテンプレートで胸方向に圧縮されており且つ該テンプレートにおけるラジアル方向に延在する開口を介して超音波変換器でスキャンされている患者の乳房を例示した断面図、(b)は(a)のテンプレートの平面図、(c)は(a)及び(b)のテンプレートと類似しているが2.5度より大きな逸れ角度だけ絶対的な平面性から逸れているスキャニングテンプレートの断面図。
図5】ゲル等の超音波伝達媒質に対して浸透性でありそれを介して超音波変換器が乳房をスキャンすることが可能なメンブレンを具備するテンプレートの平面図。
図6図5のテンプレートの断面図。
図7図6に類似しているがスキャン中の乳房の一部とスキャニング超音波変換器とを付加的に例示している断面図。
図8】スキャンオーバーラップ角度を例示しているテンプレートの平面図。
図9】幾つかの実施例に基づいて2個の別々の超音波変換器に対して2個のラジアルスロットを具備しているテンプレートの平面図。
図10】非円形状の輪郭と異なる寸法及び/又はその他の特性の夫々の変換器が乳房の夫々のセクターをそれらを介してスキャンする複数個のラジアルスロットとを有するテンプレートの平面図。
図11】(a)は幾つかの実施例に基づく複数のコロナルスライスからなる3Dスキャンした乳房ボリュームを例示している概略図、(b)はこの様なコロナルスライスの画像の表示を例示した概略図。
図12】(a)は3Dスキャンした乳房ボリュームとそのオリジナルの2Dスキャンしたスライスとの関係とを例示した概略図、(b)はコロナルスライス及びオリジナルの2Dスキャンの関連する直交した図の表示を例示した概略図、(c)は異常を有するコロナルスライス及びその異常を包含している関連する直交した図の表示を例示した概略図。
図13】(a)は湾曲した凹状の下側面を具備しており且つ基本的に平面状であるか又は球状であるか又は2.5度より大きな逸れ角度で2次元において湾曲している場合があるテンプレートにおける開口を介してスキャンする超音波変換器でスキャン中の乳房の断面図、(b)は幾つかの実施例に基づく超音波変換器の側面図、(c)は幾つかの実施例に基づく超音波変換器の側面図。
図14】超音波画像を取得して処理し且つ結果的に得られた処理済の画像をユーザーインターフェースと協働して表示させるシステムを例示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は1好適実施例に基づくフルフィールド乳房超音波(FFBU)スキャニング装置102の斜視図を例示しており、それは、超音波プロセッサを包含することが可能なフレーム104と、可動支持アーム106と、支持アーム106へ接続されているモニター110とを包含している。FFBUスキャニング装置102は、更に、基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート112と超音波変換器114とを包含している。ラジアルスキャニングテンプレート112は、好適には乳首孔204上を中心とした軸122回りに回転しながら、患者(例えば、仰向きの患者)の乳房を胸方法に圧縮する形態とされている。超音波変換器114はラジアルスキャニング平面状テンプレート112と共に回転して、その中のスロット形状をしたラジアル方向に延在している開口を介して乳房をスキャンする。ここでの参照目的のために、+z方向は患者の胸から外側へ離れる方向を意味し、x軸は仰向きの患者に対して左右方向を意味し、且つy軸は頭から爪先への方向を意味する。従って、xy面は乳房のコロナル(冠状)面に対応し、xz面はアキシャル面に対応し、yz面はサジタル面に対応する。
【0024】
図1には、剛性の二股コネクタ116と剛性の単一アームコネクタ120とが例示されており、それらは、ここに記載する運動機能性を達成するために、ラジアルスキャニングテンプレート112と超音波変換器114とを、夫々、アクチュエータ組立体118へ機械的に接続させている。理解すべきことであるが、図1における機械的要素116−120は概念的な例の態様でのみ描かれており縮尺通りのものではない。本特許明細書における開示に鑑み、当業者は、不当な実験をすること無しに、ここに記載される機械的機能性を達成するために必要な種々の機械的/電気的リンク、アクチュエータ、モータ、センサー等を容易に構成することが可能である。従って、この様な機械的/電気的な詳細は、説明を明瞭化させるために、ここにおける図面から殆ど省略されている。
【0025】
好適には、支持アーム106は、ユーザが容易に操作することを可能とすると共に、全体的な圧縮/スキャニング組立体112−120が、(i)空間内において釣り合っているか、又は(ii)乳房圧縮のための軽い正味の下方向重量(例えば、2−3ポンド)を有しているように、構成され且つ適合されている。オプションとして、支持アーム106、テンプレート、及び/又は変換器は、全体的な圧縮/スキャニング組立体112−120、テンプレート、及び/又は変換器に対して力、位置、及び/又はオリエンテーション(配向)を検知することを可能とするためにポテンシオメータ及び/又はその他のセンサー(不図示)を包含することが可能である。その他のタイプの力、位置、及び/又はオリエンテーションの検知(例えば、ジャイロスコープ的、磁気的、光学的、無線周波数(RF))をその代わりに又はそれに加えて使用することが可能である。
【0026】
フレーム104内には、1個又はそれ以上の超音波変換器を駆動し且つ関連する位置及びオリエンテーション情報に関連するスキャンからボリュメトリック乳房超音波データ及び画像を発生させる完全に機能的な超音波エンジンを設けることが可能である。ボリュメトリックスキャンデータは、当該技術において既知の多様なデータ転送方法の内のいずれかを使用して更なる処理のために1個又はそれ以上のその他のコンピュータシステムへ転送させることが可能である。該超音波エンジンと同じコンピュータ上で実現させることが可能な汎用コンピュータを一般的なユーザインターフェース及びシステム制御のために設けることが可能である。該汎用コンピュータは自己充足型スタンドアローンユニットとすることが可能であり、又はネットワークを介して接続されている遠隔ステーションによって遠隔的に制御させ、コンフィギャーさせ、及び/又はモニターさせることが可能である。
【0027】
図2、3(a)−(c)は、好適実施例に基づく基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート112のより詳細な図を示している。ラジアルスキャニングテンプレート112は、好適には、丸いものであって、例えば大略的に円形の形状を有しており、且つその中にはスロット形状をした開口202が画定されており、該開口202は中央開口204から概略的にラジアル、即ち半径方向、に延在している。スロット形状開口202は、乳房をスキャンするために超音波変換器114が少なくとも部分的にそれを介して通過することを可能とさせる寸法とされている。図2においては一次元アレイとして図示されているが、超音波変換器114は、より一般的には、好適実施例の範囲を逸脱すること無しに、マルチアレイ型(時々、1.25D、1.5D、2D等として呼称される)又はその混成型とすることが可能である。一つの好適実施例においては、FFBUスキャニング装置102は、異なる寸法又は形状の乳房に対して異なる寸法及び形状とされている基本的に平面状の複数のラジアルスキャニングテンプレート112からなる交換可能な(及び/又は使い捨て可能な)セットが具備されている。1例においては、4インチ、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチ、10インチ、及び12インチの基本直径を持った8個の異なるラジアルスキャニングテンプレートが設けられている。中央開口204に対する例示的な直径は約0.25インチ乃至1インチの間の範囲である。スロット形状開口202は、その中に挿入されるべき超音波変換器の寸法に依存して、典型的に、0.25インチ乃至1インチの範囲内の幅を有する場合がある。更に、基本的に平面状ではないが、一層大きな逸れ角度を有する複数のテンプレートからなる一群を設けることが可能である。
【0028】
一つの好適実施例においては、超音波変換器114は、ラジアルスキャニングテンプレート112とは独立的に支持され且つ動作される。別の好適実施例においては、超音波変換器114は、合体した支持及び/又は動作のために、ラジアルスキャニングテンプレート112と一体的であるか、それにクリップ止めされているか、又はそれに固定されているか、又はそれと融着されているか、又はその上に装着されている。
【0029】
図3(a)を参照すると、基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート112が円形状のプレートの形状とされており、該プレートは、円形状プレート3−4の中心に位置されている円形状孔204と、該孔204の近くからプレート304の周辺部近くへラジアル方向に延在しているスロット形状開口202と、を具備している。図3(b)はA−A’線に沿っての断面図を示しており、且つ図3(c)はB−B’線に沿っての断面図を示している。
【0030】
一つの好適実施例においては、ラジアルスキャニングテンプレート112は、40ミルの厚さのポリカーボネートプラスチック、40ミルのポリスチレンプラスチック、又は機械的に等価の厚さのポリエチレンテレフタレート(PETE)プラスチック等と同様の機械的特性を具備している透明又は少なくとも半透明の物質から形成されている。この実施例においては、テンプレート102に対して或る量の「順応性」即ち柔軟性があり、患者に対して或る程度の快適性及び異なる寸法の乳房に対する適合性を与えており、一方、同時に、乳房の信頼性のあるボリュメトリックイメージングのための乳房組織の実質的な安定性を与えている。この様なテンプレートは、本特許明細書においては、「半剛性(semi-rigid)」であると呼ばれる。別の好適実施例においては、テンプレート102用の物質は、140ミル厚さのガラス、140ミルのアクリリック、又は140ミルのポリカーボネートプラスチック等の透明又は少なくとも半透明の物質を包含している。この様なテンプレートは本特許明細書においては「剛性」であると呼ばれる。好適には、ラジアルスキャニングテンプレート112の下部表面は、乳房が、たとえ、或る程度の下方向圧縮(例えば、4−12ポンド)下にあっても回転が容易に達成されるようにテンプレートと乳房との間にゲル等の超音波伝達媒質が存在している皮膚表面との滑性接触をする。乳房との滑性接触にも拘らず、ラジアルスキャニングテンプレート112の概略円形形状のために安定性が与えられている。好適には、例えば図3(b)に304aにおいて示されている如きカールした舌部が周辺部304周りに及び204aにおいて示した如く中央孔204の周りに設けられており、且つ同様のカールした舌部が202aにおいて図3(c)に示した如くスロット形状開口202の端部に設けられており、皮膚の切り傷又は擦れを防止し且つ患者の付加的な快適性を与えており、そのことは、多くの紙、ポリスチレン、及びPETEプラスチックの飲料用カップにカールした上部舌部が設けられている態様と類似している。
【0031】
図4(a)は、乳首406を有する乳房404を胸方向に圧縮させている基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート112の側部断面図を示している。この図はアキシャル又はサジタル面に対応する場合があり、且つ又乳房404を横方向に取り囲む(例えば、コロナル面において)患者組織405を示している。乳首406は中央開口204を介して突出している。変換器114はスロット形状開口202を介して乳房404をスキャンする。図4(b)は図4(a)の平面概念図を示している。図4(c)は、基本的に平面状のテンプレート112に類似しているが2.5度より大きな逸れ角度φだけ絶対的な平面性から逸れる円錐状の表面を具備するテンプレート112aを示している。切頭円錐としての形状というよりは、テンプレート112aは、2つの直交する方向においてカーブしている側部を具備する浅い反転させたお椀としての形状とさせることが可能である。本特許明細書において例示し且つ記載した基本的に平面状のテンプレートの各々の代わりに、所望により、2.5度より大きな逸れ角度を有するテンプレートを使用することが可能である。
【0032】
0度から離れる逸れ角度を使用する場合には何時でも、増加される乳房の厚さを介してスキャニングするという不利益があり、その厚さとはスキャン表面から胸壁への距離として測定される。例えば、スキャン表面から胸壁表面への最大の差分厚さの増加としてt(図4(c)における480)を定義したとすると、tは変換器Lのラジアル長さと逸れ角度φの正弦(sine)との積として表すことが可能である。
【0033】
t=Lsinφ
以下の表はその関係を示している。
【0034】
【表1】
【0035】
10MHzにおいて、D’Astous及びFosterによれば、スキャン深さが2.5cm増加すると減衰が25乃至50dBだけ増加し、そのことは、画像品質に深刻な悪影響を与えることとなる。異常な状況に無い限り、乳房の寸法又は形状のいずれかに起因して、変換器が3インチより小さなラジアル長を有しているので、より大きな逸れ角度を使用せねばならない場合には、好適には、30度より小さな逸れ角度を使用することを考えるべきである。3インチの変換器の場合には、好適には、20度より小さな逸れ角度を使用すべきである。4インチ変換器の場合には、好適には、15度より小さな逸れ角度を使用すべきである。
【0036】
図4(a)及び4(b)の特定の実施例においては、スロット形状開口202及び超音波変換器114の両方が中心の乳首孔204からラジアルスキャニングテンプレートの周辺部への実質的に全体の距離に沿って延在しているので、乳輪下の撮像を容易化させるためのオプションのビームステアリングを伴って、1回の360度の回転で完全なボリュメトリックスキャンを達成することが可能である。所望により、スキャンされる乳房組織の幾らかのオーバーラップを達成するために、回転角度を数度だけ延長させることが可能である。
【0037】
図5は1好適実施例に基づくラジアルスキャニングテンプレート502の平面図を示しており、それは、中央開口504と、スロット形状開口506と、スロット形状開口506を横断して延在しているメンブレン510とを包含している。超音波変換器(この図には示されていない)がメンブレン510を介して乳房をスキャンする。メンブレン510は、好適には、ゲル等の超音波結合剤に対して浸透性のファブリック物質から構成されており、そのことは、気泡を減少させる点で有益的である場合がある。本特許明細書において使用されている如く、ファブリックとは、一般的に、自然又は合成の繊維(fiber)を編むか、織るか、又はフェルトにするか、自然又は合成の繊維をインターロック配置に一体的に組み立てるか、熱可塑性繊維を溶融させるか、又は自然又は合成の繊維を結合用媒体でボンドさせるかによって形成することが可能な相互接続されているか又はインターリーブされているパーツからなる物質構造のことを意味しており、更に、動物のメンブレン又はその他の繊維状特性を具備する自然に発生する物質(先天的によるか又は処理によるかのいずれか)のような及び繊維状ウエッビングを生じる化学処理によって発生される物質のような、その際に形成されるものなどの同様のテクスチャ又は品質を具備する物質のことを意味している。そのピンと張ったファブリックシート用の一つの特に適切な物質は、フィラメントの直径が約40ミクロンでフィラメント間隔が約500ミクロンであるポリエステルオーガンザ物質を包含している。しかしながら、該ファブリックメンブレンは、本教示の範囲を逸脱すること無しに、実質的に非弾性的であり且つ超音波伝達媒質に対して概略浸透性である多様なその他のファブリックの内のいずれかを包含することが可能である。その例としては、これらに制限されるものではないが、ポリエステルシホンファブリック及び実質的に非弾性的な繊維のストレートウイーブ(straight weave)からなる布ファブリックを包含している。ウイーブ即ち織りが、例えば、メンズのドレスシャツにおいて又は多くのベッドシーツにおいて使用される布におけるように、特に詰まっている場合には、付加的な処置によって浸透性を達成させることが可能である。その付加的な処置は、該布内に複数の穿孔からなるアレイを形成するか、又は超音波伝達媒質が浸み込むか又は浸透することを可能とさせる不規則性を導入することが関与する場合がある。
【0038】
図6は1好適実施例に基づく基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート602の断面図を示しており、それは、中央開口604と、スロット形状開口606と、ストレッチ可能で概略円形状のファブリックソックス(sock)とを包含しており、該ソックスは、平面状テンプレート602の全底面(即ち、患者の乳房に対面し且つそれと接触する面)にわたって且つスロット形状開口606を横断して延在しているが、好適には、該メンブレンにおける中央開口614はそれを介して乳首を突出させる構成となっている。該ソックスはテンプレート602の上面の幾らか又は全てにわたって延在することが可能であるが、その必要性は無い。別の好適実施例によれば、該浸透性ファブリックのソックスは、実質的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート602上にスナップ止めされるか又はその他の態様で固定される円形状又は丸いフレーム上に装着させることが可能である。超音波変換器(この図には示されていない)がゲル等の音響的結合剤で湿潤された浸透性ファブリックのメンブレン610を介して乳房をスキャンする。
【0039】
図7は1好適実施例に基づく基本的に平面状のラジアルスキャニングテンプレート702の側面図を示しており、それは、中央開口704と、スロット形状開口706とを包含している。ラジアルスキャニングテンプレート702は、ファブリック等の浸透性メンブレンからなるブラジャー形状の物品710を付けている患者(乳房720の一部を除いて不図示)の上で少なくとも乳房の上に位置されており、且つ、好適には、乳首730がそれを介して突出する中央孔714が設けられている、
図8は1好適実施例に基づくラジアルスキャニングテンプレート802の平面図を示しており、それは、単一の超音波変換器(この図には不図示)に対応する単一のスロット形状開口804が設けられている。該ラジアルスキャニングテンプレートは、好適には、乳房超音波スキャン期間中に360度+オーバーラップ角度「α」回転され、該オーバーラップ角度は、好適には、所望により、5度乃至45度の範囲内である。従って、オーバーラップ角度αと関連するコロナルセクター(即ち、図8におけるラジアル線822と824との間の円弧における圧縮された乳房のパイ形状セクター)は2回撮像されることとなる。このオーバーラップセクターに対する二重のボリュメトリック画像は、ラジアル線822に沿って発生する場合がある乳房のボリュメトリック表示における不連続性のアーチファクトを減少させるために有益的に使用することが可能である。1好適実施例においては、該二重ボリュメトリック画像は、該不連続性にわたって滑らかとさせるために、算術的に平均化される。しかしながら、より洗練されたスティッチング技術を使用することが可能である。不連続性アーチファクトを減少させるために該二重ボリュメトリック画像を処理するその他の数学的方法が存在しており、該好適実施例の範囲内のものである。一つの非制限的な例は加重平均化であり、その場合には、該オーバーラップの画像の内の一方に適用される重みは該オーバーラップゾーンの初めから終わりへ1からゼロへ次第に減少し、一方該オーバーラップゾーンにおける他方の画像へ適用される重みはゼロから1へ次第に増加する。例えば、円形状のスキャンの初めにおいて得られる画像へ適用される重みは線822からの角度距離と共に増加する。
【0040】
図9は1好適実施例に基づくラジアルスキャニングテンプレート902の平面図を示しており、それはスキャン期間中に使用される2個の超音波変換器(不図示)に対応して2個のスロット形状開口904と906とを具備している。1好適実施例においては、ラジアルスキャニングテンプレート902は、好適には、乳房超音波スキャン期間中に180度に加えて、所望により、オーバーラップ角度だけ回転され、それにより単一の超音波変換器を使用する場合と比較してスキャニング時間を減少させている。2個の変換器からの画像データはスティッチング又はその他の競合するアルゴリズムによって乳房の一つのボリュメトリック画像へ処理される。
【0041】
別の好適実施例においては、ラジアルスキャニングテンプレート902は完全な360度に加えて、所望により、或るオーバーラップ角度に亘り回転され、その場合に、少なくとも1個の撮像パラメータに関して異なる超音波変換器が異なる形態とされて使用される。次いで結果的に得られるボリュメトリックスキャンを、異なる重み付けを使用するか又は使用せずに、多様な有益的な態様の内のいずれかで合成又は混合させ、及び/又は別々の画像として観察することが可能である。これらの変換器の間で変化させることが可能なパラメータは、これらに制限されるものではないが、スキャン周波数、チルト角度、エレベーションビーム幅、スキャンモード(例えば、Bモード、ハーモニック、ドップラー、エラストグラフィ)、面内音響探査角度、及び異なる面内マルチアングル複合化手法(compounding scheme)等を包含している。本特許明細書を読んだ後には、2個の変換器を使用するこのスキャン形態をより多数の変換器を使用するスキャン形態へ拡張させることは、当業者には明らかなことである。
【0042】
図10は1好適実施例に基づくラジアルスキャニングテンプレート1002の平面図を示しており、それは、5個の超音波変換器(この図には不図示)に対応して5個のスロット形状開口1004,1006,1008,1010,1012を有しており、各超音波変換器は、他の実施例における個別的な変換器に対して記載した如くに、該5個の開口の内の夫々の一つを介して直接的に又はメンブレン(ファブリック)を介して乳房をスキャンする。図10の好適実施例によれば、該5個の超音波変換器の内の少なくとも2個が中央の乳首孔からラジアルスキャニング平面状テンプレートの周辺部への異なる距離に対応して異なるラジアル長を有している。各超音波変換器は乳房の異なるコロナルセクターをスキャンする。図10の例においては、それは仰向けの患者の左側の乳房に対するものであるが、最も長い超音波変換器1006は脇の下に最も近いコロナルセクターをスキャンし、一方最も短い超音波変換器1012は乳房の下位中間セクターをスキャンする。従って、本好適実施例に基づくラジアルスキャンテンプレートの一般的な形状は、乳首開口が幾何学的中心にある円形形状に制限されるものではなく、テンプレートのラジアル方向周辺部と相対的に異なる形状及び異なる位置の乳首開口を包含する。同様に、本好適実施例に基づくラジアルスキャンテンプレートは円形形状のものに制限されるものではなく、異なる形状の周辺部(例えば、長方形、楕円形、カム形状)を有することが可能である。
【0043】
取得された超音波スキャンは好適実施例に基づいて多様な態様において有益的に使用することが可能である。例えば、取得されたボリュメトリックデータは図11(a)に示した如く乳房のコロナルスライス画像を発生するために特に有益的であることが判明しており、その各スライス画像は、好適には、z方向(即ち、患者の胸壁に向かうか又はそれから離れる方向)において或る選択された厚さを有するスライスを表すものであるが、その他のオリエンテーションを有しており且つ互いに厚さが異なる場合がある画像も本特許明細書の範囲内のものである。そのスライス厚さは、好適には、0.5−2.0mmの範囲内のものであるが、0.1−1.5mm、又は0.1−2.0mm、又は0.1−10.mmの範囲内及びそれより一層大きな範囲であることが可能である。コロナル画像を表示する別の利点は、該画像は、癌病変の容易に認識可能な特徴である病変スピクラを非常に良く示すことである。
【0044】
図11(a)及び(b)は、画像1106のような2Dラジアルスキャン画像から構成されたスライス1110−1120として表された乳房の3D画像1101、及び該3D画像の複数のスライスのスライス画像1110−1120の表示を示している。3D画像1101はコロナル面に対して横断方向のラジアルスキャンからの多数のオリジナルの2D画像から構成されている。一つのこの様なオリジナルの2D画像1106が示されている。更に中央の乳首孔1104も示されている。3D画像1101は、超音波撮像技術において既知の如く、ボリュメトリックスタック1101から計算され乳房の複数のコロナルスライス(z軸に垂直なスライス)の画像1110,1112,1114,1116,1118,1120等に分割されているものと考えることが可能である。図11(b)は、医者又は健康専門家が解釈するためにどのようにしてこれらのスライス画像を表示することが可能であるかの1例を示している。最後の(下部)スライス1120は、通常、胸壁又は胸郭(それは、通常、適切な乳房深さが達成されたことを確認するために肋骨1122,112,1124等を示している)におけるスライスである。ビームステアリングか又はハンドヘルド型変換器での手作業によるスキャニングか又はその他の態様で取得された乳首及び脇の下領域はスティッチした画像で又は別個に表示させることが可能である。
【0045】
図12(a)及び(b)は、乳房組織のボリュメトリック3D画像又はスタック1201における単一のコロナルスライス画像1210、及び該スライス画像と2D画像との表示を示している。2個のオリジナル2Dラジアルスキャン画像1206及び1208は、例えば、サジタル面において、3D画像を二分しており且つ互いに180度離隔している。中央の乳首孔1204も示されている。図12(b)は2D画像1206及び1208の表示と共に2D画像1236及び1238の表示を示しており、1236及び1238の対は1206及び1208の対に対して直交している(例えば、1206−1208の対がサジタル画像である場合には、1236−1238の対はアキシャル画像である)。胸壁線1209も示されている。注目すべきことであるが、この例においては、2つの直交する対の画像はオリジナルの2Dラジアルスキャン画像であることであり、そのことは、既知の市販されているFFBUにおける同様の対の画像においては直交する対はボリュメトリック再生3D画像スタックから構成されたものでありその結果画像品質が減少されていると思われる点で異なっている。典型的に、解読者は図11(b)に示したようなコロナルスライスの簡単な観察を行い、及び/又は図12(b)におけるオリジナル2D画像の簡単なシネ又はその他の観察を行い、及び/又は図12(b)におけるオリジナル2D画像の簡単なシネ又はその他の観察を行う。オリジナル2D画像のシネ観察を行うための好適な態様は、180度の対を観察するためにコロナルスライス1210を単に回転させることである。コロナルスライスの回転は、制御ノブか、シネ観察制御器か、又は別のインターフェースによって行うことが可能であり、一方回転角度、左又は右の乳房、患者位置等のその他の情報も表示される(図12(b)には不図示)。
【0046】
コロナルスライスの観察中、異常に気が付く場合がある。図12(c)に示した如く、コロナルスライスにおける異常1250が見つかった場合には、マウス又はコントローラで又は何らかのその他の入力によって、異常1250上をクリックすると、超音波画像処理技術において既知の如くフレーム104内にプログラムされている適宜のアルゴリズムを介して、この異常を含むオリジナル2Dラジアルスキャンにおける対応する異常1251が自動的に引き出され且つ表示させることが可能である。同様に、この異常1252を含む構成された直交2D画像1240も同時的に示すことが可能である。構成された画像1240においては胸壁1241も見えている。
【0047】
図13(a)は、乳首1305が突出する中央開口を具備している回転する凹状テンプレート1312で圧縮されている患者の乳房1304に対面し且つそれをスキャンする凹状に湾曲した底部1314aを具備している超音波変換器1314の使用を示している。テンプレート1312は複合的に凹状に湾曲して示されているが、それは平面状又は球状の形状とすることが可能であり、且つ変換器1314は、尚且つ、同様の凹状に湾曲下側面1314aを有するか、又は概略的に平面状の下側面を有することが可能である。幾つかの変換器が、例えば図10における如く、乳房を同時的にスキャンする実施例においては、各変換器は凹状下側面を有することが可能であり、又はこれら複数の変換器の内の幾つか(例えば、最も短い変換器)は真っ直ぐな下側面を有することが可能であり、又は全てが真っ直ぐな下側面を有することが可能である。テンプレート1312が図13(a)に示した如く球状である場合には、逸れ角度φは2.5度より大きい場合があるが、好適には、図示した如く、約20度を超えることは無い。図13(b)は、ラジアル面において湾曲しているが横方向において真っ直ぐである下側面1314aを具備している変換器1314の側面図を示している。図13(c)は、幾つかの実施例に基づくマルチアレイ変換器1314cの側面図を示している。マルチアレイ変換器1314cは図示されているように一層幅広である。更に、湾曲した下側面1314dは、凹状に湾曲したテンプレート1312と一致してラジアル方向及び横方向の両方において凹状に湾曲させることが可能である。
【0048】
図14は、上述した実施例に基づいてスキャニング及び画像処理及び表示を行うための或るコンピュータによって実現したファシリティをブロック図の形式で示している。上述した如くに乳房をスキャニングする1個又はそれ以上の超音波変換器1402が生の2D超音波画像を予備処理ファシリティ1404へ供給し、該予備処理ファシリティ1404は関連技術において既知の如く種々のアルゴリズムを該生の画像へ適用して予備処理した2D画像を発生し、その2D画像の各々は胸壁方向(コロナル面に対して横断方向)に延在する面に準じた乳房の平面状セクションを表している。これらの予備処理した2D画像はファシリティ1406へ供給され、そのファシリティはそれらの2D画像から乳房の3D画像を復元し、その3D画像が選択した厚さ(例えば、非制限的な例として、0.5−10mmの厚さであるスライス)の乳房スライスを表す複数のコロナルスライス画像のスタックと異なる形式である場合には、該ファシリティは乳房の3D画像からこの様なスライス画像を発生させる。ここまでの動作は市販のFFBU装置における2D及び3D画像及びスライス画像の既知の発生方法と類似しているが、生の2D画像が上述した基本的に平面状のテンプレートを使用して発生される点が異なっている。ディスプレイファシリティ1408はファシリティ1404から予備処理された2D画像を且つ再構築ファシリティ1406から3D画像及び/又はコロナルスライス画像を受け取る。ディスプレイファシリティ1408は、1個又はそれ以上のコンピュータディスプレイスクリーン及びコンピュータ化された処理回路及びソフトウエアを包含しており、且つユーザインターフェース1410の制御下で動作して、図11(a)及び(b)に例示したような1110乃至1120等のスライス画像及び/又は図12(a)及び(b)に例示した1206−1208及び1236−1238等のような予備処理した2D画像の対と共に、1210などのスライス画像を発生し且つ表示する。図11(b)のコロナルスライス画像は同時的に又は順番に又はシネモードで表示させることが可能である。インターフェース1410を介してのオペレータの制御によって、これらの画像はディスプレイスクリーン上で移動させたり重畳させたりすることが可能であり、又は、1個又はそれ以上を、画像が表すスライスのオリエンテーション、又はスライスの厚さ、又は1個又はそれ以上の重畳された画像のトランスペアレンシ、又は超音波撮像分野及び/又はスチル又はビデオ画像のポストプロダクションなどのその他の画像処理及びディスプレイ分野において既知の画像処理技術を適用することによるそのスライスを発生した投影のタイプ(例えば、最小又は最大強度の投影)等、を変化させることなどによって変化させることが可能である。同様に、図12(b)に例示されている画像は、例示されているフォーマット、又は関連技術において既知のその他のフォーマットで表示させることが可能である。非制限的な例として、図12(b)のスライス画像1210は、異なるオリエンテーション又は厚さを有するスライスを表すために変化させることが可能であり、又は異なる方法(例えば、異なるタイプの投影による)で発生されたスライスの画像へ変化させることが可能であり、及び図12(b)の2D画像も、例えば、コロナル面に対して垂直な軸周り又はそれに対して横断方向にのみそれらの面を回転させることによって、2対の2D画像の面の間の角度を変化させることによって、画像におけるピクセル値のレンジを変化させることによって(即ち、画像のウィンドウ幅を制御することによって)、及びピクセル値画像を表示する技術において既知のその他の態様で、インターフェース1410からの入力の制御下において、変化させることが可能である。図14に例示したファシリティの内の幾つか又は全ては、図1のフレーム104における計算装置をプログラムすることによって、又はそれに接続されている別の計算装置において、又はフレーム104から遠隔であるが変換器が発生する2D画像を受け取るためにそれと結合されている別のコンピュータにおいて処理を実施することによって、実現させることが可能である。図1及び14に例示した装置の動作を制御するソフトウエアはプログラムプロダクトを形成するためにコンピュータ読取可能媒体内に非遷移的な形式で格納することが可能である。
【0049】
幾つかの実施例によれば、以前の検査からの画像も患者の現在の検査の画像と共に、ディスプレイファシリティ1408を使用して表示させて時間の経過による変化を観察することが可能である。幾つかの実施例によれば、これらの画像間の時間の経過による差異を表す一つの画像がディスプレイファシリティ1408を使用して表示される。更に他の実施例によれば、CAD(コンピュータ補助検知及び診断)結果及び/又はその他の画像向上結果もディスプレイファシリティ1408を使用して表示させることが可能である。
【0050】
以上の説明を読んだ後に、上述した例の多くの変形例及び修正例が当業者にとって明らかなものとなることに疑いは無く、例示として示され且つ記載された特定の実施例は制限的なものであることを意図したものではないことを理解すべきである。例として示すと、それが永久的に使用され且つ異なる患者に対して再使用されるか、又は各患者に対して使い捨てであるか否かに拘わらずに、本特許教示の範囲を逸脱すること無しに、スキャニングテンプレートを位置決めし、圧縮し、回転し、及びその他の態様で動作させるために多様な異なるフレーム組立体のいずれかを使用することが可能であることを理解すべきである。更に、一つ又はそれ以上の代替的好適実施例においては、ラジアルスキャニングテンプレートの基本的な形状は、添付図面の幾つかにおいて示されている如くに完全に円形形状のものではなく、例えば、楕円形状とすることも可能である。超音波変換器のスキャニング表面はアーチ状とすることが可能であり、又は所望により、同様の態様で別の湾曲した表面に準じさせることが可能である。従って、実施例の詳細についての説明はその範囲を制限することを意図したものではない。
図1
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図14