特許第6297608号(P6297608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297608高いシール性を有する、流体を制御するための弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297608
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】高いシール性を有する、流体を制御するための弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/16 20060101AFI20180312BHJP
   F02M 61/18 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F02M61/16 K
   F02M61/16 M
   F02M61/16 S
   F02M61/18 360B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-561987(P2015-561987)
(86)(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公表番号】特表2016-509162(P2016-509162A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014050886
(87)【国際公開番号】WO2014139706
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】102013204152.7
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ムトル,ファティーマ
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292057(JP,A)
【文献】 特開2008−133752(JP,A)
【文献】 特開2003−214544(JP,A)
【文献】 特開平06−175734(JP,A)
【文献】 特開2007−177675(JP,A)
【文献】 特表2004−516410(JP,A)
【文献】 特開2002−155834(JP,A)
【文献】 特開2010−014088(JP,A)
【文献】 特開2012−172648(JP,A)
【文献】 特開平09−068134(JP,A)
【文献】 特開2007−247519(JP,A)
【文献】 特開2011−001892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/06
F02M 61/16
F02M 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体である燃料を制御するための弁において、
閉鎖部材(2)を有しており、
弁座(3)を有しており、
前記弁座(3)が、シール領域(4)と、このシール領域(4)に隣接する弁座領域(5)とを有しており、
前記閉鎖部材(2)が前記シール領域(4)をシールしており、
前記シール領域(4)と前記弁座領域(5)とが、前記シール領域の厚み方向で無段階に互いに移行し合っており、
前記シール領域(4)の硬度が前記閉鎖部材(2)の硬度よりも低く、
前記弁座領域(5)は、前記シール領域(4)の硬度よりも高い硬度および、前記閉鎖部材(2)の硬度よりも低い硬度を有しており、
前記シール領域(4)と前記弁座領域(5)との間に素材結合(10)が形成されており、
前記弁座(3)がMIM構成部分であって、前記シール領域(4)と前記弁座領域(5)とが、異なるMIM材料からなることを特徴とする、
流体を制御するための弁。
【請求項2】
前記シール領域(4)と前記閉鎖部材(2)との間の硬度差は、前記シール領域(4)において塑性変形が生じることなしに前記弁の閉鎖が行われるように、選定されていることを特徴とする、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記弁の閉鎖された状態で、前記シール領域(4)と前記閉鎖部材(2)との間に、シールライン(9)が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
前記閉鎖部材(2)をガイドするためのガイド領域(27)が設けられており、前記ガイド領域(27)が、前記閉鎖部材(2)の硬度よりも低い硬度を有していて、前記ガイド領域(27)が、前記シール領域(4)の硬度よりも高い硬度を有していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の弁。
【請求項5】
前記シール領域(4)の厚さ(D1)が、前記シール領域(4)の前記弁座(3)の厚さ(D2)の1/3であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の弁。
【請求項6】
前記弁が電磁弁として構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を制御するための弁、特に弁の閉鎖された状態で高いシール性を有する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を制御するための弁は、従来技術により例えば噴射弁として公知である。閉鎖部材は、弁座内に形成された噴射孔を開放若しくは閉鎖する。閉鎖部材の閉鎖運動は衝突運動である。この場合、閉鎖された弁において、つまり閉鎖部材が弁座に載ったときに、燃料が漏れによって流出しないようにしなければならない。何故ならば、これによって未燃焼の燃料が内燃機関の排ガスシステム内に達するからである。さらに、弁の運転中に、例えば摩耗による粒子の形成は避けなければならない。このような粒子は、内燃機関の弁および/またはその他の構成部分の損傷を引き起こすことがある。弁は一般的に大量生産品であるので、弁が大量生産に適合したできるだけ高いシール性を有するような形式で、このような一連の問題点の解決策を提供しなければならない。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の特徴を有する、流体を制御するための本発明による弁は、弁のシール性が著しく改善され得る、という利点を有している。同時に、本発明による弁は、大量生産によって、問題なく安価に製造することができる。この場合、本発明による弁は、特に簡単かつ安価であって、かつ容易に製造可能な構成部分を有している。この場合、本発明によれば、弁は閉鎖部材と弁座とを有しており、弁座はシール領域と、このシール領域に隣接する弁座領域とを有している。この場合、弁が閉鎖された状態に位置すると、閉鎖部材はシール領域をシールする。さらに、シール領域と弁座領域とは、直接的に、かつ移行部なしに互いに移行し合っている、つまりシール領域と弁座領域との間に段部等は設けられていない。さらに、シール領域の硬度は閉鎖部材の硬度よりも低い。このような手段によって、特に閉鎖状態において、より硬い閉鎖部材によって、シール領域のできるだけ最小の弾性変形が得られるので、改善されたシール性が可能である。閉鎖部材の硬度およびシール領域の硬度が異なっていることによって、改善されたシール性が得られる。
【0004】
従属請求項には、本発明の改善された実施態様が記載されている。
【0005】
好適な形式で、シール領域と閉鎖部材との間の硬度差は、弁の閉鎖時に塑性変形が生じないように、選定されている。したがって、長期の運転後に、本発明による弁は常に十分なシール性を有することが保証される。何故ならば、弁座のシール領域において塑性変形が生じないからである。運転中に、弁の閉鎖状態においてせいぜい弾性変形が発生するが、この弾性変形は閉鎖部材がシール領域から離れると直ちに再び元に戻る。言い換えれば、シール領域の塑性変形は、閉鎖部材によって阻止されるので、弁のシール特性は、長期の運転後にも常に十分に保持されている。
【0006】
特に好適には、弁の閉鎖された状態で、シール領域と閉鎖部材との間に、シールライン、特に円形のシールラインが形成されている。さらに好適には、閉鎖部材が球であって、および/または弁座が円錐形面である。
【0007】
本発明の別の好適な実施態様によれば、弁座領域は、シール領域の硬度よりも高い硬度を有している。さらに好適には、弁座領域の硬度は、閉鎖部材の硬度よりも低い。シール領域と比較して弁座領域がより高い硬度を有していることによって、弁座において必要な強度要求が問題なく維持されることが保証される。
【0008】
本発明の好適な実施態様によれば、シール領域が環状のエラストマ性のシール部材を有していて、該シール部材は、弁座の溝内に配置されている。好適な形式で、エラストマ性のシール部材の横断面は四角形、特に矩形である。これによって、シール領域と弁座領域とが、移行部なしに互いに移行し合うことが保証されている。
【0009】
本発明の選択的な実施態様によれば、シール領域と弁座領域との間に素材結合が形成されている。これによって、特に一体的な弁座が提供される。特に好適には、弁座はMIM構成部分(金属粉末射出成形部分)であって、シール領域と弁座領域とは、異なる材料より製造されている。
【0010】
好適な形式で、閉鎖部材をガイドするためのガイド領域は、シール領域に直接隣接していて、この場合、ガイド領域はやはり、閉鎖部材の硬度よりも低い硬度を有している。特に好適には、ガイド領域の硬度とシール領域の硬度とは同じであって、さらに好適には、ガイド領域とシール領域とは、同じ材料より製造されている。
【0011】
シール領域の厚さが弁座の厚さの約1/3の厚さを有していれば、特に高いシール性が得られる。シール領域および弁座の厚さは、閉鎖部材とシール領域との間のシールラインから出発して、表面に対して直角方向に算出される。
【0012】
さらに好適には、シール領域の材料および閉鎖部材の材料、および/またはシール領域の材料および弁座領域の材料は、これらの材料が例えば粉末射出成形による形状付与後に粉末型内に(特に供給材料として)供給され、同じ温度で熱処理され、それによって、シール領域と閉鎖部材との硬度差および/またはシール領域と弁座領域との硬度差が得られるように、選択されている。
【0013】
本発明による弁は、特に好適には、燃料噴射時に燃料を制御するための電磁弁である。この場合、本発明による電磁弁は吸気管噴射弁として、または直接噴射弁として構成されていてよい。
【0014】
さらに好適には、弁座は、本発明によれば、従来技術の噴射孔直径よりも著しく小さい噴射孔直径上に配置され得る複数の噴射孔を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施例による噴射弁の概略図である。
図2図1に示した噴射弁の弁座の概略的な断面図である。
図3図2に示した弁座の拡大した概略的な部分図である。
図4】本発明の第2実施例による弁座の概略的な断面図である。
図5】本発明の第3実施例による弁座の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施例を、添付の図面を用いて以下に詳しく説明する。この実施例では、同じ若しくは機能的に同じ構成部分には同じ符号が付けられている。
【0017】
以下に、図1から図3を参照しながら、本発明の第1の好適な実施例による噴射弁1の詳細を説明する。
【0018】
図1に示されているように、噴射弁1は、弁ハウジング8と磁石可動子13とコイル14と内極16とを有している。噴射終了後に噴射弁を再び閉鎖するために閉鎖ばね15が設けられている。符号17は電気的な接続部を示す。
【0019】
この実施例では、球の形をした閉鎖部材2が設けられていて、この球は、弁ニードル12に接続されていて、この弁ニードル2に磁石可動子13が配置されている。
【0020】
閉鎖部材2は弁座3をシールしており、その詳細は図2および図3に示されている。弁座3は、この実施例では円錐形に構成されている。
【0021】
図3に示されているように、弁座3はシール領域4と、このシール領域4に隣接する弁座領域5とを有している。シール領域4は、弁座3に環状に構成されていて、矩形の横断面(図3参照)を有している。弁座5はシール領域4の両側に設けられている。
【0022】
さらに、弁座に複数の噴射孔6が形成されていて、これらの噴射孔6を介して燃料が燃焼室等に噴射される。この実施例では噴射孔6は段状に構成されている。
【0023】
図2に示されているように、ガイド領域7が設けられており、このガイド領域7に沿って閉鎖部材2がガイドされている。これによって弁の迅速かつ確実な閉鎖が得られる。
【0024】
図1から図3は、弁のそれぞれ閉鎖された状態を示す。したがって、図3に示されているように、閉鎖部材2と弁座3のシール領域4との間に線状のシールライン9が形成されている。
【0025】
本発明によれば、閉鎖部材2の硬度は、閉鎖部材2がシール領域4よりも高い硬度を有するように選定されている。さらに、シール領域4に直に隣接している弁座領域5を有していて、この弁座領域5はシール領域4よりも高い硬度を有している。この場合、弁座領域5の硬度は、閉鎖部材2の硬度よりも低い。閉鎖部材2、シール領域4および弁座領域5の硬度は、公知の方法(例えばビッカース法)によって決定される。
【0026】
第1実施例の弁座3は、MIM技術によって製造され、この場合、シール領域4および弁座領域5のためにそれぞれ異なる材料が使用される。これによって、シール領域4と弁座領域5との間に、図3に破線で示された素材結合10が得られる。
【0027】
さらに図3に示されているように、弁座の表面に対して直角方向のシール領域4の厚さD1は、弁座3の全厚さD2の約1/3である。また、シール領域4と弁座領域5との間に段部が設けられていないので、シール領域と弁座領域とは、直接的かつ無段階で互いに移行し合っている。
【0028】
閉鎖部材2とシール領域4との間の様々な硬度を、本発明に従って選択することによって、閉鎖された状態における弁の改善されたシール性が得られる。この場合、特に弁の閉鎖過程によって発生する衝撃パルスが吸収され、騒音レベルが低下される。閉鎖部材2とシール領域4との間に塑性変形が生じないので、シールライン9におけるシール性は、弁の長い運転時間にわたって維持される。場合によっては、シール領域4にわずかに弾性変形が発生するが、この弾性変形は閉鎖部材2が離れると再び元に戻る。本発明によれば、摩耗の減少も得られるので、シール領域4における所定の最適な表面状態がより長期にわたって維持される。
【0029】
さらに、MIM法を使用することによって、本発明による弁座3の特に安価な製造可能性が保証される。さらに、本発明によれば構成部分にかかる負荷も減少されるので、複数の噴射孔6を互いに密接して配置することができ、特に噴射孔6の座部直径をより小さく選定することもできる。これによって、開放するためにわずかな磁力を必要とするだけであるので、磁気回路を安価に設計することができ、特に開放のための磁気回路の消費電流も低減される。
【0030】
したがって本発明によれば、弁座3の部分領域の硬度をそれぞれ異なって選択することによって、意外な形式で、閉鎖された状態における弁の改善されたシール性が得られる。さらに、閉鎖過程中の所定の減衰、および摩耗の減少を得ることができる。
【0031】
図4は、本発明の第2の好適な実施例による弁1を示す。第2の実施例の弁1においては、弁のシール領域がエラストマ性のシール部材20によって形成されている。図4に示されているように、シール部材20は矩形の横断面を有していて、弁座3の溝21内に配置されている。したがって、シール領域は弁座3内に形状締結式に配置されている。この場合、閉鎖部材2に面した側で、シール領域4と弁座領域5との間に無段階の移行部が設けられている。
【0032】
図5は、本発明の第3実施例による弁1を示す。第3実施例は、シール領域4に直接続くガイド領域27が設けられている点で、第1実施例とは異なっている。ガイド領域27は、やはり閉鎖部材2の硬度とは異なる硬度を有している。特に好適には、ガイド領域27の硬度とシール領域4の硬度とは同じである。シール領域4とガイド領域27とは、やはりMIM法によって弁座3と共に1回の作業段階で製造される。この場合、ガイド領域27のために、様々な金属粉を使用することができるので、完成された構成部分内のシール領域4およびガイド領域27は、異なる硬度を有している。シール領域4およびガイド領域27の厚さは好適には同じである。
【符号の説明】
【0033】
1 弁
2 閉鎖部材
3 弁座
4 シール領域
5 弁座領域
6 噴射孔
8 弁ハウジング
9 シールライン
10 素材結合
12 弁ニードル
13 磁石可動子
14 コイル
15 閉鎖ばね
16 内極
17 電気的な接続部
20 シール部材
21 溝
27 ガイド領域
D1 シール領域4の厚さ
D2 弁座3の全厚さ
図1
図2
図3
図4
図5