特許第6297672号(P6297672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297672非球面の波面及び形状に基づく測定を行うための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297672
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】非球面の波面及び形状に基づく測定を行うための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20180312BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01B11/24 D
   G01M11/00 L
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-509010(P2016-509010)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-520818(P2016-520818A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014033950
(87)【国際公開番号】WO2014172255
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年3月29日
(31)【優先権主張番号】61/812,792
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファンケルクホーフェ,スティーヴン ジェームズ
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−117345(JP,A)
【文献】 特開2000−266524(JP,A)
【文献】 特開2003−156405(JP,A)
【文献】 特開平05−223537(JP,A)
【文献】 特開2005−106518(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0290942(US,A1)
【文献】 特開平05−203425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00 − 11/30
G01M 11/00 − 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球面素子の非球面の形状を測定する装置であって、
支持構造体と、
前記支持構造体に移動可能に取り付けられた可動ステージと、
前記可動ステージ上に配置され、装置軸に沿って前記非球面を回転可能に支持するよう構成された回転可能な基部と、
前記支持構造体に動作可能に支持され、測定波面を用いて前記非球面を光学的に観察し、該非球面の波面に基づく測定データを収集するよう構成された干渉波面測定システムと、
前記支持構造体に動作可能に支持され、前記非球面に対し少なくとも1回の非接触式の形状に基づく測定を行い、該非球面の形状に基づく測定データを収集するよう構成された形状測定システムと、
前記波面に基づく測定データと前記形状に基づく測定データとを受信し処理することにより、前記非球面の総合評価を決定するよう構成されたコントローラと、
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記支持構造体が、第1及び第2の支持柱を支持するプラットフォームを備え、前記干渉波面測定システムが前記第1の支持柱によって支持され、前記形状測定システムが前記第2の支持柱によって支持されて成ることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記干渉波面測定システムが、前記第1の支持柱に移動可能に取り付けられたヌル光学素子を備えて成ることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラがプロセッサと、理想非球面形状データを含むメモリとを備え、
前記波面に基づく測定データが、非回転対称データ成分と中間空間周波数成分とを含み、前記形状に基づく測定データが、回転対称データ成分を含み、
前記コントローラが前記非回転対称データ成分、前記中間空間周波数成分、前記回転対称データ成分、及び前記理想非球面形状データをプロセッサに処理させ、前記非球面の前記総合評価を決定する、コンピュータ可読媒体に体現された命令によって動作するよう構成されて成ることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状とを有する非球面素子の非球面の形状を測定する装置であって、
前記非球面素子を装置軸に沿って回転可能に支持するよう構成された回転可能な基部を支持する可動ステージと、
前記非球面素子に対し動作可能に相対配置され、測定用波面を用いて前記非球面を光学的に観察し、該非球面の波面に基づく測定データを収集するよう構成された干渉波面測定システムと、
前記非球面素子に対し動作可能に相対配置され、プローブ光を用いて前記非球面に対し少なくとも1回の非接触式の形状に基づく測定を行い、該非球面の形状に基づく測定データを収集するよう構成された形状測定システムと、
前記波面に基づく測定データと前記形状に基づく測定データとを受信し処理することにより、前記非球面の総合評価を決定するよう構成されたコントローラと
を備えたことを特徴とする装置。
【請求項6】
前記コントローラが、プロセッサと、前記目標とする非球面形状を表すデータを含むメモリとを備え、
前記波面に基づく測定データが非回転対称データ成分と中間空間周波数成分とを含み、前記形状に基づく測定データが回転対称データ成分を含み、
前記コントローラが、前記非回転対称データ成分、前記中間空間周波数成分、前記回転対称データ成分、及び前記目標とする非球面形状を表す前記データをプロセッサに処理させ、前記非球面の前記総合評価を決定する、コンピュータ可読媒体に体現された命令によって動作するよう構成されて成ることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状とを有する非球面素子の非球面の特性を明らかにする方法であって、
前記非球面素子を回転可能な基部上に支持するステップと、
前記非球面に対し少なくとも1回の波面に基づく測定を行い、非回転対称データ成分と中間空間周波数データ成分とを含む波面に基づく測定データを取得するステップと、
前記非球面に対し、少なくとも1回の形状に基づく測定を行い、回転対称データ成分を含む形状に基づく測定データを取得するステップと、
前記非回転対称データ成分、前記中間空間周波数データ成分、前記回転対称データ成分、 及び前記目標とする非球面形状から、前記実際に製造された非球面形状の前記目標とする非球面形状からの偏差を決定するステップと、
を有し、
前記回転可能な基部から前記非球面素子を移動せずに、前記少なくとも1回の波面に基づく測定と前記少なくとも1回の形状に基づく測定とを行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記回転可能な基部の異なる角度位置において、前記非球面に対し、複数の波面に基づく測定を行うステップと、
前記複数の波面に基づく測定の結果を処理し、非回転対称データ成分の測定誤差を低減するステップと、
を更に有して成ることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1回の形状に基づく測定を行うステップが、1〜10回の形状に基づく測定を行うことを含んで成ることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1回の波面に基づく測定が波面干渉計システムにより行われ、前記少なくとも1回の形状に基づく測定が形状測定システムにより行われ、該波面干渉計システムおよび該形状測定システムの各々は、可動ステージ上の前記回転可能な基部も支持する支持フレームによって、各々動作可能に支持されたことを特徴とする請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2013年4月17日出願の米国仮特許出願第61/812792号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものであり、その記載内容に依拠しすべての内容を本明細書に援用するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は表面の特性評価に関し、特には非球面の形状に基づく測定及び波面に基づく測定を行うための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
非球状表面、即ち“非球面”は更なる設計の自由度が得られることから、益々多く光学系に使用されつつある。非球面を製造する技術が向上するにつれ、非球面を有する光学部品が、携帯電話から、DVDプレイヤー、ビデオカメラ、スチルカメラに至る装置において、より一般的に使用されるようになってきている。
【0004】
非球面がより多く使用されるようになってきたことに伴い、このような表面を迅速かつ正確に測定し、その特性を明らかにする必要性が高まっている。非球面の特性を明らかにする測定方法には主として2つある。第1の方法は波面干渉法を用いた波面に基づく測定である。この測定方法には、波面を非球面に透過又は反射させ、その波面を基準波面と干渉させることが含まれる。この干渉によって、表面形状の目標とする非球面形状からの偏差を表す干渉縞が生じる。
【0005】
第2の方法は、点測定プロフィロメトリーを用いた形状に基づく測定である。この測定方法には、非球面の上部を非接触式の光計測プローブによって走査し、非球面とプローブとの間の空隙を正確に測定することが含まれる。光計測プローブを走査する経路が明確であるため、経路によって非球面の偏差を測定するための基準面が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これ等の測定方法には長所と短所がある。例えば、波面に基づく測定は、中間空間周波数範囲における、非回転対称形状及び表面変動の測定には非常に長けているが、回転対称表面成分の測定についてはあまり得意ではない。一方、形状に基づく測定は回転対称表面成分の測定には非常に長けているが、非回転対称成分の測定についてはあまり得意ではない。また、測定ビームが測定の解像度を制限する空間的な広がり(例えば、約100マイクロメートル)を有しているため、この測定は中間空間周波数成分の測定についてもあまり得意ではない。更に、形状に基づく測定は、特定の表面誤差をマスクする固有の雑音特性も有している。
【0007】
従って、非球面ついての最良の特性評価を得るためには、非球面素子を1つの測定システムから別の測定システムに移し、形状に基づく特性評価と波面に基づく特性評価を個別に得る必要がある。次いで、2つの異なる測定システムから測定データを収集し結合することにより、非球面についての最終的な特性評価を得る必要がある。これには非常に多くの時間と労力を要する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様は、非球面素子の非球面の形状を測定する装置である。この装置は支持構造体と、支持構造体に移動可能に取り付けられた可動ステージとを備えている。また、可動ステージ上に配置され、装置軸に沿って非球面素子を回転可能に支持するよう構成された回転可能な基部も備えている。干渉波面測定システムが支持構造体に動作可能に支持されており、このシステムは、非球面の波面に基づく測定データを収集するために測定用波面を用いて非球面を光学的に観察するよう構成されている。形状測定システムが支持構造体に動作可能に支持されており、このシステムは、非球面の形状に基づく測定データを収集するために非球面に対し少なくとも1回の非接触式の形状に基づく測定を行うよう構成されている。コントローラが、波面に基づく測定データと形状に基づく測定データとを受信し処理することにより、非球面の総合評価を決定するよう構成されて成るものである。
【0009】
本開示の別の態様は、上記装置であって、支持構造体が第1及び第2の支持柱を支持するプラットフォームを備え、干渉波面測定システムが第1の支持柱によって支持され、形状測定システムが第2の支持柱によって支持されて成るものである。
【0010】
本開示の別の態様は、上記装置であって、干渉波面測定システムが、第1の支持柱に移動可能に取り付けられたヌル光学素子を備えて成るものである。
【0011】
本開示の別の態様は、上記装置であって、コントローラがプロセッサと、理想非球面形状データを含むメモリとを備え、波面に基づく測定データが、非回転対称データ成分と中間空間周波数成分とを含み、形状に基づく測定データが回転対称データ成分を含み、コントローラが、非回転対称データ成分、中間空間周波数成分、回転対称データ成分、及び理想非球面形状データをプロセッサに処理させ、非球面の総合評価を決定する、コンピュータ可読媒体に体現された命令によって動作するよう構成されて成るものである。
【0012】
本開示の別の態様は、上記装置であって、略凹面又は略凸面を成す非球面を含んで成るものである。
【0013】
本開示の別の態様は、上記装置であって、非球面素子がミラーを備えて成るものである。
【0014】
本開示の別の態様は、上記装置であって、非球面素子が実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状とを有し、非球面の総合評価が実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状との差を含んで成るものである。
【0015】
本開示の別の態様は、実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状とを有する非球面素子の非球面の形状を測定する装置である。装置は、非球面素子を装置軸に沿って回転可能に支持するよう構成された回転可能な基部を支持する可動ステージと、非球面素子に対し動作可能に相対配置され、測定用波面を用いて非球面を光学的に観察し、非球面の波面に基づく測定データを収集するよう構成された干渉波面測定システムと、非球面素子に対し動作可能に相対配置され、プローブ光を用いて非球面に対し少なくとも1回の非接触式の形状に基づく測定を行い、非球面の形状に基づく測定データを収集するよう構成された形状測定システムと、波面に基づく測定データと形状に基づく測定データとを受信し処理することにより、非球面の総合評価を決定するよう構成されたコントローラとを備えている。
【0016】
本開示の別の態様は、上記装置であって、コントローラが、プロセッサと、目標とする非球面形状を表すデータを含むメモリとを備え、波面に基づく測定データが、非回転対称データ成分と中間空間周波数成分とを含み、形状に基づく測定データが回転対称データ成分を含み、コントローラが、非回転対称データ成分、中間空間周波数成分、回転対称データ成分、及び目標とする非球面形状を表すデータをプロセッサに処理させ、非球面の総合評価を決定する、コンピュータ可読媒体に体現された命令によって動作するよう構成されて成るものである。
【0017】
本開示の別の態様は、上記装置であって、非球面の総合評価が実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状との差を含んで成るものである。
【0018】
本開示の別の態様は、上記装置であって、略凹面又は略凸面を成す非球面素子を含んで成るものである。
【0019】
本開示の別の態様は、上記装置であって、干渉波面測定システム及び形状測定システムが、各々プラットフォームに支持された第1及び第2の柱にそれぞれ支持され、可動ステージが第1の柱に移動可能に支持されて成るものである。
【0020】
本開示の別の態様は、実際に製造された非球面形状と目標とする非球面形状とを有する非球面素子の非球面の特性を明らかにする方法である。この方法は非球面素子を回転可能な基部上に支持するステップと、非球面に対し少なくとも1回の波面に基づく測定を行い、非回転対称データ成分及び中間空間周波数データ成分を含む波面に基づく測定データを取得するステップと、非球面に対し少なくとも1回の形状に基づく測定を行い、回転対称データ成分を含む形状に基づく測定データを取得するステップと、非回転対称データ成分、中間空間周波数データ成分、回転対称データ成分、 及び目標とする非球面形状から、実際に製造された非球面形状の目標とする非球面形状からの偏差を決定するステップとを有し、回転可能な基部から非球面素子を移動せずに、少なくとも1回の波面に基づく測定と少なくとも1回の形状に基づく測定とを行うものである。
【0021】
本開示の別の態様は、上記方法であって、回転可能な基部の異なる角度位置において、非球面に対し、複数の波面に基づく測定を行うステップと、複数の波面に基づく測定の結果を処理し、非回転対称データ成分の測定誤差を低減するステップを更に有して成るものである。
【0022】
本開示の別の態様は、上記方法であって、少なくとも1回の形状に基づく測定を行うステップが1〜10回の形状に基づく測定を行うことを含んで成るものである。
【0023】
本開示の別の態様は、上記方法であって、少なくとも1回の波面に基づく測定の前に、少なくとも1回の形状に基づく測定を行うものである。
【0024】
本開示の別の態様は、上記方法であって、少なくとも1回の波面に基づく測定が波面干渉計システムにより行われ、少なくとも1回の形状に基づく測定が形状測定システムにより行われ、これらの波面干渉計システムおよび形状測定システムの各々は、可動ステージ上の回転可能な基部も支持する支持フレームによって、各々動作可能に支持されたものである。
【0025】
本開示の別の態様は、上記方法であって、非球面素子が略凹面又は略凸面を成す非球面を有して成るものである。
【0026】
本開示の別の態様は、上記方法であって、複数の形状に基づく測定の結果を平均することにより、形状に基づく測定データを確定するステップを更に有して成るものである。
【0027】
本開示の別の態様は、上記方法であって、プロセッサを備えたコントローラであって、非回転対称データ成分、中間空間周波数成分、回転対称データ成分、及び目標とする非球面形状データをプロセッサに処理させ、実際に製造された非球面形状の目標とする非球面形状からの偏差を決定する、コンピュータ可読媒体に体現された命令で動作するよう構成されたコントローラを使用するステップを更に有して成るものである。
【0028】
更なる特徴及び効果は以下の詳細な説明に述べてあり、当業者とって、一部はその説明から容易に明らかであり、本明細書、特許請求の範囲、及び添付図面に示された実施の形態を実施することによって認識できるものと思料する。上記概要説明及び以下の詳細な説明は単なる例示であって、本特許請求の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付図面は理解を深めるためのものであり、本明細書に組み込まれその一部を構成するものである。図面には1つ以上の実施の形態が示されており、詳細な説明と共に、各種実施の形態の原理及び作用の説明に役立つものである。従って、添付図面と併せ、以下の詳細な説明によって、本開示をより完全に理解できるものである。
図1】本開示の統合、即ち“総合”非球面測定装置の例示的な実施の形態の正面図。
図2】上記非球面測定装置の側面図。
図3】上記非球面測定装置の正立面図。
図4】仮想線で示す基部上に載置された非球面素子を上から見た図。
図5】略凸形状を成す非球面素子を測定するよう構成された非球面測定装置の側面図。
図6A】非球面の目標又は理想形状からの偏差を示す非回転対称データ成分を示す(カラープロットから得た)グレースケールプロット。
図6B】非球面の目標又は理想形状からの偏差を示す中間空間周波数データ成分を示す(カラープロットから得た)グレースケールプロット。
図6C】光学ヘッドの走査経路によって規定される基準曲線と比較した、光学ヘッドの所与の走査における、実測表面形状を示す概略図。
図7】非球面の総合特性評価を実測表面の理想非球面形状からの偏差として示す、二次元カラープロットのグレースケール表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面に例を示す、本開示の様々な実施の形態について以下詳細に説明する。図面全体を通し、同一又は同様の部品については、可能な限り同一の参照番号又は参照符号が付してある。図面は必ずしも縮尺どおりではないが、当業者にとって、本開示の重要な態様を示すために、図面のどこが簡略化してあるか理解できるものと考える。
【0031】
以下に記載の特許請求の範囲は、本発明を実施するための形態に援用され、その一部を構成するものである。
【0032】
本明細書に記載のすべての刊行物又は特許文献に開示されているすべての内容を本明細書に援用するものである。
【0033】
参考としてデカルト座標が一部の図面に示してあるが、これによって方向又は向きが限定されるものではない。
【0034】
図1及び図2はそれぞれ本開示の統合、即ち“総合”非球面測定装置(以下“装置”)10の例示的な実施の形態の正面図及び側面図であり、図3はその正立面図である。装置10は、上記のように、波面に基づく測定及び形状に基づく測定により、非球面素子14の非球面12を測定するよう構成されて成るものである。非球面素子14は鏡、屈折レンズ、又は非球面形状を担持するその他の光学素子であってよい。非球面12は略凹形状又は略凸形状のいずれかであってよい。例示として、図1〜3に示す非球面素子14は、略凹形状を成している。後述する図5は、略凸形状を成す非球面素子14を測定するよう構成された装置10の実施の形態を示すものである。
【0035】
装置10は、各々が非球面素子14に相対配置された干渉波面測定システム(以下“干渉計システム”)20と形状測定システム(以下、“形状システム”)80とを備えている。非球面素子14は装置軸A1を中心に配置されている。1つの例において、装置10はX−Y面に広がるプラットフォーム200を有する支持構造体190も備えている。Y−Z面に位置する前面212を有する第1支持柱210及びX−Z面に位置する前面242を有する第2支持柱240がプラットフォーム200によって支持されている。
【0036】
垂直レール214が第1支持柱210の前面212に支持されている。可動ステージ220がレール214に取り付けられ、レールに沿ってZ方向上下に移動可能である。非球面素子14を支持するよう構成された基部230が可動ステージ220によって支持されている。基部230が回転軸AR(光軸A1と同軸)を中心に回転するよう構成されているため、非球面素子14が光軸を中心に回転可能である。図4は、仮想線で示す基部230上に載置された非球面素子14を上から見た図である。基部230が回転することにより、非球面素子14が基準REFに対して光軸A1を中心に相対的に回転し、基準に対し方位角θの位置に配置される。1つの例において、非球面素子14が、基準REFに対し非球面素子14を選択した向きに配置できる目印、即ち特徴的なマーク15を(例えば、側面に)有している。1つの例において、基部230が空気軸受を備えている。基部230、従って非球面素子14は、基準REFに対する異なる回転量によって規定される異なる角度位置θをとることができる。
【0037】
図1〜3に戻り、第1支持柱210は、レール214に取り付けられた支持部材26を介し、光源、検知光学系22、およびヌル光学素子24等の干渉計システム20の主要なコンポーネントを移動可能に支持することもできる。支持部材26がレール214に沿って上下に移動可能であるため、光源、検知光学系22、及びヌル光学素子24の位置が調整可能である。別の例示的な実施の形態において、光源及び検知光学系22は第1支持柱210の固定位置に取り付けられている。
【0038】
1つの例において、ヌル光学素子24は非球面素子であり、別の例ではコンピュータによって生成されたホログラム(CGH)素子である。ヌル光学素子24は測定波面を非球面12の目標とする(即ち、期待又は理想とする)形状に変形するよう構成されている。測定波面は、非球面12の全表面(又は少なくとも測定する表面部分)にわたり、垂直に入射するよう変形される。
【0039】
1つの例において、波面干渉計システム20は、支持部材の1つを介し、第1支持柱210に移動可能に支持されてもよい、フィゾーレンズ系等の光学系28も備えている。光学系28は干渉測定を行うための基準波面を提供する基準表面28Rを備えている。
【0040】
光計測プローブ310を支持する回転支持部材300が、第2支持柱240によって動作可能に支持されている。例示的な実施の形態において、回転支持部材300は空気軸受を備えている。従って、光計測プローブ310は、Y方向に延びる回転軸A2を中心に回転支持部材300によって回転可能である。光計測プローブ310は、回転支持部材300に固定され、X−Z面に位置する第1アーム312を備えている。
【0041】
光計測プローブ310は、回転軸A2と平行になるよう第1アーム312から直角に延びる第2アーム314も備えている。第2アーム314は、集束プローブ光(即ちプローブ光)322を発するよう構成された光学ヘッド320を第1アーム312と平行な光軸A3に沿って支持している。例示的な実施の形態において、プローブ光322はレーザー光である。第1アーム312をZ方向に合わせると、光軸A3もZ方向に一致し、非球面素子14の中心を通る装置軸A1と同軸になる。
【0042】
装置10は、以下に述べる装置全体の動作を制御するよう構成されたコントローラ350も備えている。1つの例において、コントローラ350はディスプレイ356を備えている。1つの例において、コントローラ350は回転支持部材300、可動ステージ220、及び回転可能な基部230に動作可能に接続されている。1つの例において、コントローラ350は、(例えば、コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体に体現されたソフトウェア等の命令を介して)装置10の各種コンポーネントの動作をコントローラに制御させるよう構成されたコンピュータ又は同様の機械を備えている。コントローラ350はプロセッサユニット(ブロセッサ)352とメモリユニット(メモリ)354とを備えている。例示的なコントローラ350は、プロセッサを有するコンピュータであり、又はコンピュータを備え、マイクロソフトWINDOWS(登録商標)又はLINUX(登録商標)等のオペレーティングシステムを備えている。
【0043】
例示的な実施の形態において、プロセッサ352は、一連のソフトウェア命令を実行できる任意のプロセッサ又は装置であって、又は任意のプロセッサ又は装置を備えたものであって、以下に限定されない、汎用又は特殊用マイクロプロセッサ、有限状態機械、コントローラ、コンピュータ、中央処理装置(CPU)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はデジタル信号プロセッサを備えている。
【0044】
メモリ354はプロセッサ352に動作可能に接続されている。本明細書において、“メモリ”とは、プロセッサ352によって実行可能な一連の命令を記憶できるRAM、ROM、EPROM、PROM、EEPROM、ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、CD−ROM、DVD等を含みこれに限定されない任意のプロセッサ可読媒体を意味する。
【0045】
本明細書に記載の測定方法は、装置10の動作を制御することにより、本明細書に記載の測定方法をコントローラ350に実行させる機械可読命令(例えば、コンピュータ・プログラム及び/又はソフトウェア・モジュール)を含む機械可読媒体(例えば、メモリ354)に様々な実施の形態で実施してもよい。例示的な実施の形態において、メモリ354からのコンピュータ・プログラムがプロセッサ352によって実行される。
【0046】
コンピュータ・プログラム及び/又はソフトウェア・モジュールは、本開示の様々な方法を実行すると共に、装置10の各種コンポーネントの動作及び機能を制御するための複数のモジュール又はオブジェクトから成ってもよい。コードに使用されるコンピュータ・プログラミング言語の種類は、手続きコード型言語からオブジェクト指向言語に至る範囲としてもよい。ファイル又はオブジェクトは、モジュール又は記述されている方法ステップに対し1対1で対応している必要はない。更に、方法及びシステムはソフトウェア、ハードウェア、及びファームウェアの組合せから成ってもよい。ファームウェアは、本明細書に開示の例示的な各種実施の形態を実施するためのプロセッサ352にダウンロードできる。
【0047】
コントローラ350は、メモリ354に記憶されている非球面素子14に関する情報を備えている。この情報には(例えば、非球面係数、円錐定数、および標準の非球面式のその他の数学的な表面形状パラメータ等に基づく)非球面12の目標又は理想形状、非球面素子14全体の寸法等が含まれている。本明細書において、この情報を“理想非球面形状データ”と呼ぶことにする。製造された非球面12は、非球面の製造工程における不備により、目標又は理想形状には及ばない。
【0048】
コントローラ350は、波面に基づく測定及び形状に基づく測定による測定データをプロセッサ352に処理させ、非球面12の総合(又は“完全な”)特性評価を作成させる、コンピュータ可読媒体に体現されたソフトウェアを更に有している。1つの例において、総合特性評価は製造時の非球面12の目標又は理想形状からの偏差を表している。別の例において、統合特性評価は実際に測定された表面形状である。
【0049】
図5は装置10の形状システム80の拡大図であって、非球面12が略凸形状を成す場合において、非球面素子14を測定するための構成を示すものである。図5の構成において、ステージ220が回転軸A2の上になるようZ方向に移動される。凸状の非球面12の測定を行う場合、光計測プローブ310が、その向きに対し基本的に逆さまに搖動(即ち、180度回転)される。Z方向かつ略凸形状を成す非球面12に向けて光322を導くことができるよう、光学ヘッド320も180度回転する。この構成において、干渉計システム20の各種コンポーネントは光学ヘッド320の上部に位置するため、図5には示してない。
【0050】
操作方法
装置10を操作する例示的な方法において、試験される非球面素子14が基部230上に載置される。この載置は、上述したように、基準方位REFに対し、選択された方位であってもよい。装置10は波面に基づく測定又は形状に基づく測定のいずれかを行うことができるため、どちらを先に行うかは操作者によって決定される。
【0051】
まず波面に基づく測定が選択されたとすると、光計測プローブ310は、波面に基づく測定の邪魔にならないように回転される(例えば、図1参照)。次に、光源及び検出光学系22に光30を発光させることにより、干渉計システム20が作動する。これは手動で行うこともコントローラの動作を介して行うこともできる。
【0052】
非球面12を光学的に観察し、非球面の波面に基づく測定データを収集するために、光30が用いられる。具体的には、光学系28及びヌル光学素子24を介して光30が略−Z方向の非球面12に向けられる。光30の一部が基準面28で反射されることにより、光源及び検出光学系22において使用される基準波面30Rが規定される。非球面12が光30の少なくとも一部を反射することにより、サンプル波面30Sが形成される。サンプル波面30Sは略+Z方向に進み、ヌル光学素子24及び光学系28を通して光源及び検出光学系22に到達する。このようにして、サンプル波面30Sと基準波面30Rとが光源及び検出光学系22によって受信され検出される。従って、波面に基づく測定は非接触式の表面測定である。
【0053】
これ等2つの波面30Sと30Rとが干渉すると共に、光源内部及び検出光学系22において検出されることにより干渉縞が生成され、その干渉縞が干渉縞電気信号S1に体現される。この電気信号S1がコントローラ350に送信され、そこでプロセッサ352によってその信号が処理され、非球面12に関する波面に基づく測定データが抽出される。この波面に基づくデータは、非回転対称データ成分及び中間空間周波数データ成分という2つの主なデータ成分を含んでいる。
【0054】
1つの例において、中間空間周波数は0.1mm〜10mmの範囲である。別の例において、中間空間周波数は非球面12の直径の割合と定義され、例えば、直径の1%〜10%である。
【0055】
図6A及び6Bは、波面に基づくデータの非回転対称データ成分410NRSと中間空間周波数データ成分410MSFとをそれぞれ示す(カラープロットから得られた)グレースケールプロットである。図6A及び6Bにおいて、これ等のデータ成分は非球面12の目標又は理想形状からの偏差として示されている。これはメモリ354に記憶されている理想非球面形状データを用いてプロセッサ352によって達成される。コントローラ350は、波面に基づくデータをディスプレイ356に表示することもできる。波面に基づくデータは、非回転対称データ成分、中間空間周波数データ成分、及び上記理想非球面形状データと共に、メモリ354に記憶することもできる。
【0056】
1つの例において、基部230を回転させることができ、異なる回転方位θにおいてもう一度波面に基づく測定を行い、非球面12の非回転対称データ成分の特性をより正確に表す。このように、1つの例において、角度に依存する変動を干渉計システム20の測定に起因したすべての誤差から分離できる、厳選された一連の回転位置(方位)θが選択される。これらの誤差には中間空間周波数誤差から干渉計システム20の検出限界に至る誤差が含まれる。
【0057】
波面に基づく測定が終了すると、次に装置10を用いて形状に基づく測定が行われる。これは、基部230から非球面素子14を移動せずに、第2の測定を行うことができることを意味する。形状に基づく測定は、回転支持部材300を回転させ、それによって光計測プローブ310を回転させることによって行われる。この回転によって、光学ヘッド320が略一定の半径を有し非球面12に近接した走査経路SP上を揺動し、それによって空隙G(図2及び5参照)が画成される。
【0058】
光学ヘッド320によって非球面12上を走査すると、光学ヘッド320からの光322が非球面12で反射し反射光322Rとなる。反射光322Rは光学ヘッド320によって収集され、収集された反射光を用いて、走査経路の位置に沿った関数として、空隙Gの大きさが算出される。各走査が非球面12の中心を通り、非球面12の異なる直線部分がカバーされるよう、各走査と走査との間において基部230を回転させることができる。1つの例において、走査は1回以上、例えば、1〜10回行われる。形状に基づく測定は非接触式の表面測定である。
【0059】
1つの例において、所与の走査の所要時間が約20秒である。1つの例において、複数の走査による形状に基づくデータを平均することにより、方位角θを関数とした測定変動及び形状に基づく測定装置の固有雑音を平滑化した平均表面形状データが提供される。
【0060】
回転支持部材300をZ方向に沿って平行移動させることにより、光学ヘッド320を最適位置に配置できる。同様に、ステージ220をZ方向に沿って平行移動させることにより、光計測プローブ310の回転軸A2に対し非球面12を確実に適切配置することができる。計測プローブ310の光学ヘッド320が縦断するほぼ完全な円形を成す走査経路SPが、非球面12の形状をナノメートル・レベルの精度で測定するための基準曲線となる。図6Cは光学ヘッド320の所与の走査において測定された表面形状420SPと走査経路SPによって規定された基準カーブ420RCとを比較した概略図である。
【0061】
光学ヘッド320による非球面12上の所与の走査による形状評価がコントローラ350に送信される形状電気信号S2に体現される。1つ以上の形状電気信号S2がプロセッサ352によって受信され処理されることにより、表面形状データが抽出される。このデータはメモリ354に記憶することができる。1つの例において、表面形状データが回転対称成分を含んでいる。この回転対称成分はプロセッサ352によって抽出されメモリ354に記憶される。1つの例において、一次元(1D)走査がプロセッサ352によって回転対称性を有する二次元(2D)マップに変換される。次に、この2Dマップがメモリ354に記憶される。
【0062】
波面に基づくデータ及び形状に基づくデータの収集が終了すると、それらのデータが処理され、非球面12の総合特性評価が作成される。例示的な実施の形態において、これには、プロセッサ352による、波面に基づくデータの非回転対称データ成分及び中間空間周波数成分と、形状に基づくデータの回転対称データ成分との結合、及び結合したデータとメモリ354に記憶されている理想非球面形状データとの比較が含まれる。1つの例において、結合したデータ成分を理想非球面形状データと比較することにより、目標又は理想非球面12と製造された実際の非球面との形状の違いが明らかにされる。図7は非球面12の総合特性評価を測定面の理想非球面形状からの偏差として示す、二次元カラープロットをグレースケール表示した例である。
【0063】
非球面12の総合特性評価の利点には、回転対称表面成分の形状に基づく測定がより正確であること、非回転対称成分の波面に基づく測定がより正確であること、並びに波面に基づく測定における中間空間周波数測定成分の解像度がより良いことがあげられる。
【0064】
1つの例において、波面に基づく測定と形状に基づく測定とを別々の装置で行う場合に要する時間の約1/3で非球面12の特性を明らかにすることができる。非球面素子14を取り外して別の装置の別の基部に再度取り付ける必要がないため、両方の測定精度が向上する。更に、装置10によって、コンピュータ、位置合わせステージ、支持部材等、コンポーネントの重複を避けることができるため、コストを大幅に削減することができる。
【0065】
添付の特許請求の範囲に規定する本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、本明細書に開示の好ましい実施の形態に対し様々な改良が可能であることは当業者にとって明らかであると思料する。従って、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲に属することを条件に、本開示はかかる改良及び変形もカバーするものである。
【符号の説明】
【0066】
10 統合非球面測定装置
12 非球面
14 非球面素子
20 干渉波面測定システム
22 検知光学系
24 ヌル光学素子
80 形状測定システム
190 支持構造体
200 プラットフォーム
210 第1支持柱
220 可動ステージ
230 基部
240 第2支持柱
300 回転支持部材
312 第1アーム
314 第2アーム
320 光学ヘッド
350 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7