特許第6297694号(P6297694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297694正弦波アクティブノイズ低減システムにおける不安定性検出および修正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297694
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】正弦波アクティブノイズ低減システムにおける不安定性検出および修正
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20180312BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G10K11/178
   B60R11/02 B
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-536303(P2016-536303)
(86)(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公表番号】特表2016-535871(P2016-535871A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】US2014050682
(87)【国際公開番号】WO2015026568
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】13/973,472
(32)【優先日】2013年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラガナンダン・ガネシュクマール
【審査官】 北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506070(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/068624(WO,A1)
【文献】 特開2010−167844(JP,A)
【文献】 特開平05−019775(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0207585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転装置から発する正弦波ノイズを低減するように設計されたアクティブノイズ低減システムを作動させるための方法において、低減されるべき正弦波ノイズの周波数に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、前記アクティブノイズ低減システムは、正弦波ノイズを低減することを目的とするそれらの出力によって1つ以上の変換器を駆動するために用いられるほぼ正弦波ノイズ低減信号を出力する1つ以上の適応フィルタを備えていて、前記方法は、
ノイズ低減信号の歪みを検出するステップを有していて、歪みは、ノイズ低減信号の周波数と正弦波ノイズの周波数との差に少なくとも部分的に基づいていて、
更に、検出された歪みに基づいてノイズ低減信号を変更するステップを有しており、
歪みは、ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートを正弦波ノイズのゼロクロッシングレートと比較することによって検出される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ゼロクロッシングレートは、時間のウィンドウ内で比較されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウィンドウの期間は可変であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ウィンドウ期間の変化は、キャンセルされるべき周波数に少なくとも部分的に基づくことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
適応フィルタは、1つ以上の適応フィルタパラメータに基づく係数を用いて、入力信号の振幅と位相のうちの1つ以上を修正し、かつ前記検出された歪みに基づいてノイズ低減信号を変更するステップは、1つ以上の適応フィルタパラメータの値を変更するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記適応フィルタパラメータは、漏れ係数と適応レートを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アクティブノイズ低減システムは、複数の変換器の各々のために別々のノイズ低減信号を出力し、かつ、それによって漏れ係数と適応レートのうちの一方または両方が変更される量が、
i) ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと正弦波ノイズのゼロクロッシングレートとの差のスケール、
ii) ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと、比較的大きいノイズ低減信号振幅と結合された正弦波ノイズのゼロクロッシングレートとの差、および
iii) 複数のノイズ低減信号内の検出された歪み
のうちの1つ以上に基づくことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の適応フィルタパラメータの値を変更するステップは、1つ以上の適応フィルタパラメータの値を自動的に下げるステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の適応フィルタパラメータの最小値を設定するステップと、前記値を少なくともこのような最小値に維持するステップとを更に有していることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の適応フィルタパラメータの値が下げられた後に、それらを自動的に上げるステップを更に有していることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の適応フィルタパラメータの値は、ステップ状に上げられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップのサイズは、回転装置の現在の回転速度と、適応フィルタパラメータの値が下げられた時の回転速度との差に関連することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の適応フィルタパラメータの値が下げられた後のそれらの上昇率は、回転装置の現在の回転速度と、適応フィルタパラメータの値が下げられた時の回転速度との差に関連することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
回転装置から発する正弦波ノイズを低減するように設計されたアクティブノイズ低減システムを作動させるための方法において、低減されるべき正弦波ノイズの周波数に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、前記アクティブノイズ低減システムは、正弦波ノイズを低減することを目的とするそれらの出力によって1つ以上の変換器を駆動するために用いられるほぼ正弦波ノイズ低減信号を出力する1つ以上の適応フィルタを備えていて、前記方法は、
ノイズ低減信号の歪みを検出するステップを有していて、歪みは、ノイズ低減信号の周波数と正弦波ノイズの周波数との差に少なくとも部分的に基づいていて、
更に、検出された歪みに基づいてノイズ低減信号を変更するステップを有しており、
前記回転装置は自動車のエンジンであり、かつ、ノイズ低減信号の振幅を、最大エンジン負荷で正弦波ノイズをキャンセルするのに有効な基準適応フィルタ出力信号振幅と比較するステップを更に有していることを特徴とする方法。
【請求項15】
エンジン負荷に基づいて正弦波ノイズの振幅を推定するステップと、現在のエンジン作動レベルに動的に合致するように基準レベルを変化させるステップとを更に有していることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自動車キャビン内で自動車のエンジンまたはプロペラシャフトから発する高調波ノイズを低減するように設計されたアクティブノイズ低減システムを作動させるための方法において、低減されるべき高調波ノイズの周波数に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、前記アクティブノイズ低減システムは、高調波ノイズを低減することを目的とするそれらの出力によって1つ以上の変換器を駆動するために用いられるほぼ正弦波ノイズ低減信号を出力する1つ以上の適応フィルタを備えていて、適応フィルタは、適応フィルタの漏れ係数と適応レートのうちの1つ以上に基づく係数を用いて、入力信号の振幅と位相のうちの1つ以上を修正し、前記方法は、
ノイズ低減信号の歪みを検出するステップを有していて、歪みは、ノイズ低減信号の周波数と高調波ノイズの周波数との差に少なくとも部分的に基づいていて、かつ、歪みは、ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートを高調波ノイズのゼロクロッシングレートと比較することによって検出され、
更に、検出された歪みに基づいて、適応フィルタの漏れ係数と適応レートのうちの1つ以上の値を変更して、ノイズ低減信号を変更するステップを有していることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ゼロクロッシングレートは、時間のウィンドウ内で比較され、ウィンドウの期間は、可変であり、かつキャンセルされるべき周波数に基づくことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、正弦波ノイズのアクティブキャンセルに関する。
【背景技術】
【0002】
正弦波ノイズキャンセルシステムは、1つ以上の正弦波ノイズ成分を低減またはキャンセルするために用いられるアクティブノイズ低減システムである。正弦波ノイズキャンセルシステムは、入力変換器として1つ以上のエラーマイクロフォンを用いる。キャンセルされるべきノイズに関連する基準信号(例えば、ノイズを引き起こす装置の回転速度に関連する周波数成分を有する正弦曲線)が適応フィルタに入力される。適応フィルタの出力は、音を出す1つ以上の変換器(すなわち、ラウドスピーカー)に加えられる。正弦波ノイズをキャンセルするために、ラウドスピーカーの出力は、エラーマイクロフォンの位置で正弦波ノイズに対して等しい大きさおよび周波数であるが逆の位相であることを必要とする。適応フィルタは、ゼロまでマイクロフォン信号を低減するために、エラーマイクロフォンで正弦波ノイズに出力を収束する目的で、基準信号の振幅および/または周波数を変更することができる。適応フィルタは、正弦波ノイズをキャンセルするように計算された出力信号を発するために、その内部フィルタ係数を適応的に調整する。システムの目的は、対象となる周波数でマイクロフォン信号をキャンセルすることである。
【0003】
正弦波ノイズキャンセルシステムは、回転装置によって生成される正弦波ノイズをキャンセルすることが望ましい、いかなる状況でも用いられ得る。いくつかの応用は自動車を含み、システムは、自動車キャビン内の正弦波(例えば、高調波)ノイズを低減またはキャンセルするために用いられる。ノイズの発生源は、キャンセルすることが望ましいことがあり得る高調波を生成する、エンジンおよびプロペラ(prop)シャフトを含み得る。自動車における正弦波ノイズの発生源は、さらに他の回転装置、例えばエアコンのコンプレッサまたはタイヤを含む。
【0004】
ある状況において、これらの正弦波ノイズキャンセルシステムは、不安定になり、正弦波ノイズをキャンセルするように設計されたラウドスピーカー音出力レベルが発散し得る。このような不安定な正弦波ノイズキャンセルシステムは、うるさくて目立つノイズ人工産物を生成し得る。このような不安定性の1つの原因は、ラウドスピーカーからエラーマイクロフォンへの伝達関数の変化であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
回転装置(例えば自動車のエンジンおよびプロペラシャフト)のための正弦波ノイズキャンセルシステムの発散のような不安定性を修正することにおける最初のステップは、それが可聴人工産物を引き起こす前に問題を検出することである。それが聞き取れるようになる前に不安定性を検出して修正することは、ノイズキャンセルシステムを、ノイズにさらされる人々に受け入れ可能な方法で、より良く応答することができるようにする。発散は、正弦波ノイズキャンセルシステムの適応フィルタの出力周波数をキャンセルされている周波数と比較することによって検出され得る。比較は、1つの非限定的な例において、アクティブノイズキャンセルシステム出力信号のゼロクロッシングレートを監視することに基づく。
【0006】
以下で述べる全ての例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で組み合わせることができる。
【0007】
一態様では、回転装置から発する正弦波ノイズを低減するように設計されたアクティブノイズ低減システムを作動させるための方法は、低減されるべき正弦波ノイズの周波数に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、アクティブノイズ低減システムは、正弦波ノイズを低減することを目的とするそれらの出力によって1つ以上の変換器を駆動するために用いられるほぼ正弦波のノイズ低減信号を出力する1つ以上の適応フィルタを備えていて、方法は、ノイズ低減信号の歪みを検出するステップを有していて、歪みは、ノイズ低減信号の周波数と正弦波ノイズの周波数との差に少なくとも部分的に基づいていて、更に、検出された歪みに基づいてノイズ低減信号を変更するステップを有している。
【0008】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。歪みは、ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートを正弦波ノイズのゼロクロッシングレートと比較することによって検出され得る。ゼロクロッシングレートは、時間のウィンドウ内で比較され得る。ウィンドウの期間は可変であってもよい。ウィンドウ期間の変化は、低減されるべき周波数に少なくとも部分的に基づいていてもよい。
【0009】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。適応フィルタは、1つ以上の適応フィルタパラメータに基づく係数を用いて、入力信号の振幅と位相のうちの1つ以上を修正することができる。検出された歪みに基づいてノイズ低減信号を変更するステップは、1つ以上の適応フィルタパラメータの値を変更するステップを含み得る。適応フィルタパラメータは、漏れ係数および適応レートを含み得る。この場合、アクティブノイズ低減システムは、複数の変換器の各々に対して別々のノイズ低減信号を出力し、漏れ係数と適応レートのうちの一方または両方が変更される量は、i) ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと正弦波ノイズのゼロクロッシングレートとの差のスケール、ii) ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと、比較的大きいノイズ低減信号振幅と結合された正弦波ノイズのゼロクロッシングレートとの差、および、iii) 複数のノイズ低減信号における検出された歪みのうちの1つ以上に基づいていてもよい。
【0010】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。1つ以上の適応フィルタパラメータの値を変更するステップは、1つ以上の適応フィルタパラメータの値を自動的に修正する(例えば、下げる)ステップを有していてもよい。方法は、1つ以上の適応フィルタパラメータの最小値を設定するステップと、値を少なくともこのような最小値に維持するステップとを更に有していてもよい。方法は、それらが修正された後で1つ以上の適応フィルタパラメータの値を自動的に復元する(例えば、上げる)ステップを更に有していてもよい。1つ以上の適応フィルタパラメータの値は、ステップ状に復元され(例えば、上げられ)てもよい。ステップサイズは、回転装置の現在の回転速度と、適応フィルタパラメータの値が修正された時の回転速度との差に関連していてもよい。それらが修正された後の1つ以上の適応フィルタパラメータの値の復元の速度は、回転装置の現在の回転速度と、適応フィルタパラメータの値が修正された時の回転速度との差に関連していてもよい。
【0011】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。回転装置は、一例では、自動車のエンジンであってもよく、方法は、ノイズ低減信号の振幅を、最大エンジン負荷で正弦波ノイズをキャンセルするのに有効な基準適応フィルタ出力信号振幅と比較するステップを更に有していてもよい。方法は、エンジン負荷に基づいて正弦波ノイズの振幅を推定するステップと、現在のエンジン作動レベルに動的に合致するように基準レベルを変化させるステップとを更に有していてもよい。
【0012】
別の態様では、自動車キャビン内で自動車のエンジンまたはプロペラシャフトから発する高調波ノイズを低減するように設計されたアクティブノイズ低減システムを作動させるための方法は、低減されるべき高調波ノイズの周波数に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、アクティブノイズ低減システムは、高調波ノイズを低減することを目的とするそれらの出力によって1つ以上の変換器を駆動するために用いられるほぼ正弦波のノイズ低減信号を出力する1つ以上の適応フィルタを備えていて、適応フィルタは、適応フィルタの漏れ係数と適応レートのうちの1つ以上に基づく係数を用いて、入力信号の振幅と位相のうちの1つ以上を修正し、方法は、ノイズ低減信号の歪みを検出するステップを有していて、歪みは、ノイズ低減信号の周波数と高調波ノイズの周波数との差に少なくとも部分的に基づいていて、歪みは、ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートを高調波ノイズのゼロクロッシングレートと比較することによって検出され、更に、検出された歪みに基づいて適応フィルタの漏れ係数と適応レートのうちの1つ以上の値を変更して、ノイズ低減信号を変更するステップを有している。ゼロクロッシングレートは、時間のウィンドウ内で比較され得る。ウィンドウの期間は、可変であり、低減されるべき周波数に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自動車エンジン高調波キャンセルシステムの概略ブロック図である。
図2】ノイズ低減信号と、その中で信号のゼロクロッシングが測定され得るウィンドウとを示している。
図3】高調波周波数の関数としてのゼロクロッシングレートの一例を示している。
図4】ベースライン高調波ノイズと、アクティブノイズキャンセルシステムがオンにされ(しかし歪み検出はなしで、パラメータ制御はオン)の場合の同じノイズと、同じアクティブノイズキャンセルシステムがオンにされ、かつ歪み検出および修正ありの場合の同じノイズとに対する高調波エネルギー対周波数のプロットである。
図5】アクティブノイズキャンセルシステムがオフにされた場合のベースライン高調波ノイズと、アクティブノイズキャンセルシステムがオンにされた場合のノイズと、アクティブノイズキャンセルシステムがオンにされ、かつ歪み対策もオンにされた場合のノイズとに対する高調波エネルギー対周波数の他のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面のうちの図1の要素は、ブロック図内の別々の要素として示されかつ記載されている。これらは、アナログ回路またはデジタル回路のうちの1つ以上として実施され得る。代わりに、または加えて、それらは、ソフトウェア命令を実行する1つ以上のマイクロプロセッサによって実施され得る。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含み得る。動作は、アナログ回路によって、またはアナログ動作と同等の動作を実行するソフトウェアを実行するマイクロプロセッサによって実行され得る。信号線は、別々のアナログまたはデジタル信号線として、別々の信号を処理することができる適切な信号処理を有する別々のデジタル信号線として、かつ/または無線通信システムの要素として実施され得る。
【0015】
プロセスがブロック図内で示されるか、または意味される時、ステップが1つの要素または複数の要素によって実行され得る。例えば、プログラムされたデジタル信号プロセッサ(DSP)は、ここに記載されているアクティブノイズキャンセルシステムの多くの機能を達成することができる。プロセスのステップは、同時に、または異なる時間に実行され得る。動作を実行する要素は、互いに物理的に同じまたは近似、または物理的に異なっていてもよい。1つの要素は、複数のブロックの動作を実行することができる。オーディオ信号は、コード化されてもされなくてもよく、デジタルまたはアナログの形で送信され得る。従来のオーディオ信号処理装置および動作は、場合によっては図面から省略されている。
【0016】
革新が動作することができる方法の非限定的な例が、図面を参照して示されている。図1は、開示されている革新を実現する自動車エンジンアクティブ高調波(または正弦波)ノイズキャンセル("ANC")またはアクティブノイズ低減システム10の簡略化された概略図である。図1は、革新の一例を示している。しかし、革新は、自動車における正弦波ノイズキャンセルに限定されない。また、革新は、正弦波ノイズを低減またはキャンセルするのに適したシステム内で用いられ得る。正弦波ノイズは、高調波ノイズであってもよいし、そうでなくてもよい。システム10は、自動車キャビン12に導かれるそれらの出力を有する1つ以上の出力変換器14に対して、ほぼ正弦波のノイズ低減信号を供給する適応フィルタ20を用いる。変換器の出力は、キャビン伝達関数16によって修正されるように、入力変換器(例えば、マイクロフォン)18によって拾われる。自動車キャビン内のエンジンノイズもまた、入力変換器18によって拾われる。既存の自動車エンジン制御パラメータ24が、自動車エンジン動作に関連するシステム10に対する入力信号として用いられる。例は、RPM、トルク、アクセルペダル位置、およびマニホールド絶対圧力(MAP)を含む。正弦波発生器26には、自動車エンジン動作に関連する1つ以上のこのようなエンジン制御信号が入力され、それから、キャンセルされるべきエンジン高調波が決定され得る。通常は、エンジンRPMが、正弦波発生器26によって用いられる信号である。正弦波発生器26は、適応フィルタ20に対して、正弦波ノイズ低減基準信号を供給し、それは、修正された基準信号を生成するために、モデル化されたキャビン伝達関数28にも供給される。修正された基準信号とマイクロフォン出力信号は互いに掛け合わされ30、適応フィルタ20に対する入力として供給される。
【0017】
適応フィルタ20は、通常は、自動車の特定体積、例えばキャビンまたはマフラーアセンブリ内の単一高調波ノイズを低減および理想的にはキャンセルするために用いられる、ほぼ正弦波のノイズ低減信号を出力するように設計されたDSPアルゴリズムによって達成される。高調波ノイズをキャンセルするために、キャンセル信号は、入力変換器18の位置で高調波ノイズ信号に対して等しい大きさおよび周波数だが逆の位相である必要がある。正弦曲線の振幅は、変換器でノイズに対して制限があり、かつ比例しているべきである。適応フィルタ20は、出力ノイズ低減信号の振幅および位相を修正するために用いられるフィルタ係数を有する。係数は、2つのパラメータ − 漏れ係数および適応レート − に基づいて計算される。適応フィードフォワードフィルタの動作は、この分野ではよく知られていて、更に米国特許第8,306,240号に記載されていて、その開示内容は、ここでの引用により本願明細書に組み込まれるものとする。この非限定的な例において、適応アルゴリズムは、フィルタに通されたx(filtered-x)適応アルゴリズムである。しかし、当業者にとって明らかなように、他の適応アルゴリズムが用いられ得るので、これは革新の限定ではない。適応フィードフォワード高調波ノイズキャンセルシステムの動作は、当業者に十分理解される。
【0018】
不安定性検出および修正機能31は、DSPにおいて達成され得る。機能31には、適応フィルタの出力と、キャンセルされるべきノイズの発生源である回転装置または機械の回転速度とが入力される。この場合、入力は、エンジンのRPMである。歪み検出器機能32は、適応フィルタ20によって変換器14に出力されるノイズ低減信号の検査を達成していて、条件のいずれかが、所望の周波数、位相および/または振幅からずれたかどうかを判定する。任意のこのようなずれは、システムが、適切に収束するために予想または要求されるように動作していないことを示している。このようなずれは、ここでは時々、ノイズ低減信号の歪みと呼ばれる。歪み検出器32は、DSP制御機能によって達成され得る。
【0019】
有効なノイズ低減信号の1つの特性は、その周波数であり、これは、キャンセルされる正弦波ノイズの周波数に合っている必要がある。エンジン高調波ノイズキャンセルの場合、ノイズの周波数は、エンジン制御パラメータ24を介して受信されるエンジンRPM信号から判定され得る。ノイズ低減信号の周波数が、キャンセルされる高調波ノイズの周波数と合っていない場合、そのノイズはキャンセルされることができない。歪み検出器32は、歪みを検出するために、2つの周波数、または周波数に関連する信号もしくは値を比較することができる。
【0020】
適応フィルタ出力歪みを検出する1つの方法は、出力信号のゼロクロッシングレートを監視することである。歪み検出器は、この非限定的な例の中では、DSPコードによって達成されるので、ゼロクロッシング検出のデジタル方法が用いられる。しかしながら、ゼロクロッシング検出は公知技術であり、他のデジタルまたはアナログ手段が、その代わりに用いられ得る。ゼロクロッシング検出は公知技術であるので、更にここに記載しない。
【0021】
ゼロクロッシングレート検出器が、リアルタイムで出力信号を監視するためには、時間の所定の期間または時間の「ウィンドウ」にわたるゼロクロッシングレートを監視することが最適である。図2は、正弦波68およびこのようなウィンドウ69の表示を示している。ウィンドウは、ゼロクロッシングで始まりかつ止まるべきである。ウィンドウ期間は、素早く歪みを検出する必要性と、その通常動作の間にノイズキャンセルシステムが適切に収束することを可能にすることの必要性との間のバランスを提供するように選ばれる。ウィンドウによってカバーされる期間は、固定されていてもよいし、可変にされていてもよい。可変であるならば、それはキャンセルされるべき周波数の関数であってもよい。充分なデータがウィンドウ期間にわたって受信されるように、例えば、低周波数では、1秒当たりにより少ないゼロクロッシングしかないので、ウィンドウ期間は、より高い周波数で必要なものより長い必要があるかもしれない。ウィンドウの期間は、システムに通常動作内で収束する十分な時間を与えるために最善のものが選ばれるが、望ましくない可聴音(例えば、ノイズ人工産物)が生成される前に、発散が検出されかつ解決され得るように十分短い。システムが収束している間、ゼロクロッシングレートは、予想されるレートに等しくないかもしれないので、システムが収束している間にゼロクロッシングレートを検出することは、時期尚早に対策を起動してしまうかもしれない。それは、この場合、システム性能に否定的な影響を与えるかもしれない。
【0022】
ゼロクロッシングレートがその高調波周波数に対して予想通りかどうかを判定するために、ウィンドウ期間に測定されたゼロクロッシングレートが正弦波発生器26からの信号のゼロクロッシングレートと比較される。測定されたゼロクロッシングレートの、理想的なレートからのずれは、ノイズキャンセルシステムが収束するのが困難になっている、または不安定性が生じたことを示し得る。システムが収束するのが困難であり得る、または不安定になり得る理由は、例えば、伝達関数経路における劣った音響反応、実際の伝達関数経路の、適応フィルタによって用いられる予め定められたモデル化された伝達関数の推定値からのずれ、およびキャンセルされているノイズの周波数の近くの周波数における高調波エネルギーからの干渉(時々「ウォーターベッド型効果」と呼ばれ、これは公知技術である)のような問題を含む。従って、歪み検出器32によって判定されたゼロクロッシングレートのずれは、それが配置される前の適応フィルタの調整の間、問題領域を示すために用いられ得るツールを提供し得る。そして、特定の状況の中で不安定性を修正するための対策を取るための基準として用いられ得るノイズキャンセルシステムの不安定性条件の監視を提供し得る。このずれは、周波数領域にわたって予想されるずれより多くあるかどうかを判定するために用いられ得るデータとしても用いられ得る。これは、適応フィルタが再調整され得るように、ANCシステムが用いられている特定の自動車モデルが再検査される必要があることを示し得る。
【0023】
この開示の1つの目的は、不安定な条件を検出することである。もう1つの目的は、不安定な条件が可聴ノイズ人工産物を生成するのを防止することである。上述したように、不安定な条件の1つの指標は、理想からのゼロクロッシングのずれである。厳しいマージンがこのようなずれのために用いられる場合、ゼロクロッシングレートは通常のエンジン動作の中で変化するので、ゼロクロッシングレートのみに頼ることは、歪みの誤った表示につながり得る。従って、ノイズキャンセルシステムの性能が不必要に低下され得る。発散は高いスピーカー出力振幅につながり得るので、高いスピーカー出力振幅は、歪みの第2の基準であり得る。このように、高いスピーカー出力と組み合わされたゼロクロッシングレートのわずかなずれは、ゼロクロッシングレートのずれのみより、発散とより高く相関しているはずである。
【0024】
不安定性検出および修正機能31は、高いスピーカー出力レベルを検出するために用いられ得る。これは、ノイズ低減信号の振幅を基準振幅レベルと比較するために、歪み検出器32を用いることによって達成され得る。基準振幅レベルは、おそらく適応フィルタが調整された時に予め決定される。例えば、基準振幅レベルは、(システムが調整された時に決定される)最大エンジン負荷で高調波ノイズをキャンセルするのに有効な適応フィルタ出力信号振幅であり得る。そして、システムの動作の間、ノイズの振幅は、最大エンジン負荷と比較した、実際のエンジン負荷に基づいて推定され得る。エンジン制御パラメータ24の1つ以上、例えばエンジン負荷を示すトルクまたはMAPのような信号が、ノイズの振幅を推定するためにシステム10によって用いられ得る。そして、適応フィルタの出力が、発散による歪みがあるかどうかを見るために、予想されるノイズの振幅と比較され得る。例えば、振幅が、推定されたノイズの振幅より著しく大きく、同時にゼロクロッシングレートにいくらかのずれがある場合、システムは、発散があると判定し得る。
【0025】
システム10は、オプションとして、検出された歪みを修正することを意図するステップを起動するように準備され得る。歪みを修正するために、システム10は、歪みを修正するように設計された対策を決定して適用するための手段を含み得る。この目標は、歪み検出器32に応答するオプションの歪み対策計算器機能34と、対策計算器34に応答するオプションのパラメータ制御機能36とを含むことによって達成され得る。機能34および36は共に、検出器32によって検出された歪みを受け取り、信号を収束しかつ/または不安定性を解決するように設計された適応フィルタの1つ以上のパラメータを変更することができる。フィルタパラメータの修正に代わるものとして、システムは、特定の歪みまたは不安定性の検出時に、ノイズキャンセル機能をオフにするように適合され得る。例えば、問題が診断されて解決されるまで、または自動車がオフにされて再起動されるまで、それはオフにされ得る。
【0026】
適応フィルタの漏れ係数および適応レートの一方または両方を減らす(すなわち離調する(detuning))ことは、出力信号ゼロクロッシングレートが再収束するのを助けることができることが分かった。歪みが少なくとも部分的には遅い収束に起因する場合には、適応レートおよび/または漏れ係数を減らす又は自動的に離調させることは、収束を改善することができる。もし高調波ノイズがキャンセルされている空間内の音響条件が、このような再収束を許さないのであれば、アルゴリズムパラメータは、不安定な信号の振幅を減らす。減らされた振幅は、自動車内の乗客への不安定性の影響を最小化する。適応レートおよび漏れに対する以外の調整が、加えて、または代わりに用いられ得る。他の調整の例は、基準伝達関数を一時的に変更するか、または特定のラウドスピーカーもしくはマイクロフォンをオフにすることを含む。
【0027】
ずれが、所定の閾値、例えば予想されるゼロクロッシングレートの上下5%のずれを超えると、適切な対策が起動され得る。ずれのトリガは、高調波周波数の関数であり得る。システム10で達成される離調の量は、検出された歪みのひどさと比例するようにされ得る。歪みのひどさは、以下の1つ以上に基づいて重み付けられ得る:ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと、高調波ノイズのゼロクロッシングレートとの差;比較的大きいノイズ低減信号振幅と組み合わされた、ノイズ低減信号のゼロクロッシングレートと、高調波ノイズのゼロクロッシングレートとの差;および、同じ高調波に対する複数のノイズ低減信号(すなわち、複数の変換器の出力信号)の歪みの検出。
【0028】
離調の量は、適切な離調の量が任意の与えられた回転速度の変化率に対して適用されることを確実にするのを助けるために、加えて、または代わりに回転装置の回転速度(例えばRPM)の変化率に部分的に基づき得る。これは、通常、調整プロセスの間に経験的に決定される。例えば、上述した+/-5%のずれの閾値が用いられ、かつ検出ウィンドウ内で(例えば、急加速の間に)RPMが急速に変化して、それが、ゼロクロッシングレートがこの閾値を上回ることを引き起こす場合、いくつかのオプションのうちの1つが用いられ得る。ウィンドウ期間内で検出されたRPMの変化によって、閾値は例えば5%から10%に上げられ得る。または、検出されたRPMの変化がさらにより急速な場合は、システムが十分に長く1つの周波数にないので、安定性の問題を引き起こしそうにない。この場合、パラメータは、このような急速なRPMの変化の間に、ちょうど調整されることはできない。オプションとして、このような急速なRPMの変化の場合に、システムが再収束するのを助けるために、漏れは、このような加速の間、一時的にゼロに設定され得る。漏れを一時的にゼロに設定することは、適応フィルタの重み付けをリセットすることを可能にし、アルゴリズムは、新しい周波数の点で新たにスタートすることができる。これは、歪み検出器が、不正確な最初のゼロ以外の適応フィルタの重み付けによって発散状態を時期尚早に検出することを防止する。
【0029】
適応フィルタのパラメータをあまりに下げすぎることは、結局、システムが、収束または安定への回復のために歪み検出器によって正確にモニタされるのに十分な振幅を有する出力信号を生成することができない状態につながり得る。離調処置が出力信号振幅をあまりに下げすぎることを避けるために、最小値が、適応フィルタ係数パラメータに対して設定され得る。この場合、パラメータ値が最小値まで下がると、システム10は、それらが更に下がるのを防止する。離調されたパラメータに対する最小値を設定することは、歪み検出器32によって検出され得る十分な信号レベルがあることを確実にするのを助ける。検出器は、この十分な信号レベルが、聞こえないラウドスピーカー出力という結果になるように、設計され得る。従って、この態様は、乗客に聞き取れる望ましくない音を引き起こさない。これらの対策の1つの結果は、ノイズ低減システムが、入力変換器で回転装置によって示されたもの以上の追加のノイズに寄与しないことである。
【0030】
一旦適応フィルタのパラメータが下げられると、歪みが許容可能なレベルにとどまるのであれば、それらをそれらの通常レベルに戻すことが望ましい。パラメータの復旧は、ノイズ人工産物が生成されない方法でされるべきである。従って、復帰は、復帰によって引き起こされる発散が問題になる前に検出されるように、十分に遅いペースでされるべきである。パラメータを復旧させる1つの方法は、ステップ状の方法で、それらを上げることである。この復旧が進行中である間、充分なデータがウィンドウ期間の間に分析され得るように、ステップサイズは、高調波ノイズ生成装置の現在の回転速度と、パラメータが下げられた時のその回転速度との間の差に基づいて設定され得る。例えばパラメータが2000RPMで作動しているエンジンで下げられ、エンジンが現在3000RPMで作動している場合、パラメータ修正のステップサイズは、現在のエンジン速度が2100RPMにとどまっている場合より大きいかもしれない。RPMが離調の間とほぼ同じ速度のままである場合、発散が本来的によりありそうなので、非常に小さいステップサイズを用いるのが最も良い。
【0031】
高調波周波数の関数としてのノイズ低減信号のゼロクロッシングレートの理想化された例が図3に示されている。滑らかに減少している曲線50(破線)は、単一のラウドスピーカーのための出力信号の支配的な3次エンジン高調波に対する理想的なデータ曲線である。不安定性は、位置54、56および58で理想的な曲線から脱線している実線によって示されている。位置54(90〜110Hz)での不安定性は、伝達関数のずれに起因する。位置56(125〜135Hz)での不安定性は、2次ドライブラインレベルでのウォーターベッド型効果によって引き起こされる。位置58(170〜180Hz)での不安定性は、伝達関数のずれに起因する。
【0032】
図4は、(マイクロフォンの位置での)ベースライン高調波ノイズのための高調波エネルギー対周波数の理想化されたプロットの曲線70(実線の曲線)と、同じノイズだが図1に示したアクティブノイズキャンセルシステムがオンになっている(しかし歪み検出はなしで、パラメータ制御はオン)曲線72(細かい破線の曲線)と、同じくアクティブノイズキャンセルシステムがオンになっていて、歪み検出および修正を有する曲線74(粗い破線の曲線)とである。高調波ノイズがあまり減少していない(ノイズキャンセルシステムが不十分な収束しか有さないことを示している)領域82は、図3の位置54に対応し、伝達関数のずれの結果である。対策をオンにすれば、歪みは減少し(曲線74)、ノイズキャンセルシステムの効果は自動的に改善される。同様に、図3の位置58に対応する位置84で、伝達関数のずれの低減の結果が、曲線72と曲線74の差によって示されている。
【0033】
同様に、図5は、理想化されたプロットであり、曲線90(実線)が、ANCシステムがオフにされたベースライン高調波ノイズを示している。曲線92(細かい破線)は、ANCシステムがオンにされたものである。曲線94(粗い破線)は、ANCシステムがオンにされ、かつ歪み対策もオンにされたものである。領域96は発散を示していて、これは伝達関数の変化またはあり得るウォーターベッド型効果によって引き起こされ得る。ここに開示された対策をとることは、曲線94で示すように、フィルタを収束させ、動作を予想されるキャンセルレベルに戻すことができる。
【0034】
当業者は、ゼロクロッシング検出器が、基本的に、予想されるケースからの周波数ずれの検出を達成し、かつ、このような周波数ずれを検出するために用いられ得る他の等しく有効な方法があることを理解するであろう。これは、本願の開示の範囲内に含まれる。歪み検出器は、より一般的な意味において、周期性推定器として機能する閾値検出器である。ゼロクロッシング検出器は、閾値検出器の1つの例示だが、この革新は、ゼロクロッシング検出器の代わりに用いられ得る、同様の周期性情報を測定する手段を含む。1つの例は、時間領域自己相関計算であり得る。
【0035】
主題の革新の1つの成果は、高調波キャンセルシステムが発散し始める時に、それがオフにされる必要はないということである。もう1つの利点は、システムの不安定性による検出可能なノイズ人工産物が、除去または低減され得ることである。対策の利点は、最悪の場合でも、ベースライン高調波ノイズを越えるノイズは生じないことである。
【0036】
上記は、自動車のキャビン内の高調波ノイズのキャンセルと関連して記載された。しかしながら、本開示は、他の自動車の位置のノイズキャンセルにも同様にあてはまる。1つの追加の例は、システムが、マフラーアセンブリ内のノイズをキャンセルするように設計され得ることである。また、キャンセルされるノイズは、エンジン高調波ノイズであってもよいが、他の自動車の動作に関連したノイズ、例えば任意の他の回転装置または構造、例えばプロペラシャフト、またはモータ(例えばエアコンのコンプレッサ)、またはタイヤからのものであってもよい。また、アクティブノイズ低減は、自動車と関連している必要はない。例えば、アクティブノイズ低減は、回転機械からのノイズを低減するための工業用または商業用の装置内で用いられ得る。
【0037】
上述した装置、システムおよび方法の実施形態は、当業者にとって明らかなコンピュータコンポーネントおよびコンピュータ実行ステップを含む。例えば、コンピュータ実行ステップが、コンピュータ可読媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュROM、不揮発性ROM、およびRAM上に、コンピュータ実行可能命令として記憶され得ることは、当業者によって理解されるはずである。さらにまた、コンピュータ実行可能命令が、様々なプロセッサ、例えば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ゲートアレイなどの上で実行され得ることは、当業者によって理解されるはずである。説明の容易さのために、上述したシステム及び方法のあらゆるステップまたは要素が、コンピュータシステムの一部としてここに記載されているというわけではない。しかし、当業者は、各ステップまたは要素が、対応するコンピュータシステムまたはソフトウェアコンポーネントを有し得ることを認識するであろう。このようなコンピュータシステムおよび/またはソフトウェアコンポーネントは、従って、それらの対応するステップまたは要素(すなわち、それらの機能)を記載することによって使用可能にされ、開示の範囲内である。
【0038】
開示の様々な特徴は、ここに記載されたものとは異なる方法で使用可能にされ、ここに記載されたもの以外の方法に組み込まれ得る。多くの実施態様を記載してきたが、付加的な修正が、ここに記載された発明概念の範囲内においてなされ得ることは理解されるであろう。従って、他の実施形態は、請求項の範囲内である。
【符号の説明】
【0039】
10 アクティブノイズ低減システム
12 自動車キャビン
14 出力変換器
16 キャビン伝達関数
18 入力変換器
20 適応フィルタ
24 エンジン制御パラメータ
26 正弦波発生器
28 モデル化されたキャビン伝達関数
31 不安定性検出および修正機能
32 歪み検出器機能
34 歪み対策計算器機能
36 パラメータ制御機能
図1
図2
図3
図4
図5