特許第6297695号(P6297695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6297695急性骨髄性白血病(AML)のための新規併用治療
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  • 特許6297695-急性骨髄性白血病(AML)のための新規併用治療 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297695
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病(AML)のための新規併用治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20180312BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20180312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   A61K31/40
   A61K31/7068
   A61P35/02
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-536634(P2016-536634)
(86)(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公表番号】特表2016-539160(P2016-539160A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014076063
(87)【国際公開番号】WO2015082384
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】61/912,152
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】パックマン, キャスリン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ, グウェン
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/135648(WO,A1)
【文献】 A Study of RO5503781 as Single Agent of in Combination With Cytarabine in Patients With Acute Myelogenous Leukemia.,ClinicalTrials.gov archive [ONLINE],2013年 7月 1日,NCT01773408 ON 2013_07_01,URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT01773408/2013_07_01
【文献】 Yee,K. et al.,Phase 1b study of the MDM2 antagonist RG7112 in combination with 2 doses/schedules of cytarabine.,Blood,2013年11月15日,Vol.122, No.21,p.498,URL,http://www.bloodjournal.org/content/122/21/498.short?sso-checked=true
【文献】 Kojima,K. et al.,MDM2 antabonists induce p53-dependent apoptosis in AML:implications for leukemia therapy.,Blood,2005年11月 1日,Vol.106, No.9,p.3150-9,URL,http://dx.doi.org/10.1182/blood-2005-02-0553
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療における逐次又は同時使用のための組み合わせ調製物として、a)第1の成分としてMDM2−p53相互作用の阻害剤;及びb)第2の成分としてシタラビンを含む、医薬製品であって、
MDM2−p53相互作用の阻害剤が、式(I)の化合物

(I)
[式中、nは3から70である]から選択される、医薬製品。
【請求項2】
nは30から60である、請求項に記載の医薬製品。
【請求項3】
nは40から50である、請求項に記載の医薬製品。
【請求項4】
nは、41、42、43、44、46、47、48又は49である、請求項に記載の医薬製品。
【請求項5】
MDM2−p53相互作用の阻害剤が、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2000)である、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項6】
MDM2−p53相互作用の阻害剤が、4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2200)である、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項7】
急性骨髄性白血病(AML)の治療のための請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項8】
固形腫瘍の治療のための請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項9】
シタラビンと併用する、そのような治療を必要とする患者におけるがんの治療のための医薬であって、有効量のMDM2−p53相互作用の阻害剤を含み、MDM2−p53相互作用の阻害剤とシタラビンとが逐次又は同時に投与され、
MDM2−p53相互作用の阻害剤が、式(I)の化合物

(I)
[式中、nは3から70である]から選択される、医薬
【請求項10】
がんが急性骨髄性白血病(AML)である、請求項に記載の医薬
【請求項11】
がんが固形腫瘍である、請求項に記載の医薬
【請求項12】
がんの治療、特に急性骨髄性白血病(AML)の治療のための医薬の製造のための請求項からのいずれか一項に記載の化合物及びシタラビンの使用。
【請求項13】
a)第1の成分として請求項からのいずれか一項記載の式(I)の化合物;及びb)第2の成分として化合物シタラビンを含む、医薬製品であって、両成分は、がんの治療における同時又は逐次使用のための組み合わせ調製物として、静脈内に投与され;式(I)の化合物の用量が、約200から約1600mg/日の範囲内の化合物(A):

(A)、
の用量に対応することを特徴とする、医薬製品。
【請求項14】
式(I)の化合物が、化合物4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2000)である、請求項13に記載の医薬製品。
【請求項15】
式(I)の化合物が、化合物4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2200)である、請求項13に記載の医薬製品。
【請求項16】
式(I)の化合物が、28日間の治療サイクルの1から5日目に投与され、その後、23日間を休止期間とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項17】
式(I)の化合物が1日に1回(qd)又は1日に2回(BID)投与される、請求項16に記載の医薬製品。
【請求項18】
がんが急性骨髄性白血病(AML)である、請求項13から17のいずれか一項に記載の医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん、特に急性骨髄性白血病(AML)などの増殖性疾患の治療のための併用療法に関する。さらに具体的には、本発明は、AMLにおける現行の脊柱療法、化合物シタラビン(Ara−C)と、MDM2−p53相互作用の阻害剤として作用する化合物との組み合わせを開示する。驚くべきことに、このような組み合わせが相加効果を超える(相乗)効果を示すことが見出された。
【背景技術】
【0002】
p53は、がんの発症の予防における中心的役割を果たす腫瘍抑制タンパク質である。これは、増殖の停止又はアポトーシスの誘発により、細胞の完全性を保護し、かつ、回復不能な損傷を受けた細胞クローンの増殖を妨げる。分子レベルでは、p53は、細胞周期及びアポトーシスの調節に関与している遺伝子のパネルを活性化することができる転写因子である。p53は、細胞レベルでは、MDM2によってしっかりと調節された強力な細胞周期阻害剤である。MDM2及びp53はフィードバック制御ループを形成する。MDM2はp53に結合することができ、かつ、p53−調節遺伝子を転写活性化する能力を阻害する。加えて、MDM2はp53のユビキチン依存性分解を仲介する。p53は、MDM2遺伝子の発現を活性化することができ、よって、MDM2タンパク質の細胞レベルを高めることができる。このフィードバック制御ループは、MDM2及びp53の両方が、正常な増殖細胞において低レベルに保たれることを保証する。MDM2はまた、細胞周期制御において中心的役割を果たす、E2Fの補助因子でもある。
【0003】
MDM2のp53に対する比は多くのがんにおいて無調節(dysregulated)である。p16INK4/p19ARF遺伝子座において頻繁に発生する分子欠陥は、例えば、MDM2タンパク質分解に影響を及ぼすことが示されている。機能性のp53を用いた、腫瘍細胞におけるMDM2−p53相互作用の阻害は、p53の蓄積、細胞周期の停止及び/又はアポトーシスをもたらすはずである。したがって、MDM2アンタゴニストは、単剤として、又は広範囲の他の抗腫瘍治療と組み合わせて、がん治療に新規な手法をもたらしうる。この戦略の実現可能性は、MDM2−p53相互作用の阻害のための様々な高分子ツール(例えば、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド)の使用によって示されている。MDM2はまた、p53としての保存結合領域を通してE2Fに結合し、かつ、サイクリンAのE2F依存性の転写を活性化し、このことは、MDM2アンタゴニストが、機能性のp53シグナル伝達を伴うp53変異細胞において、効果を有しうることを示唆している。
【0004】
MDM2−p53相互作用の阻害剤は、MDM2を過剰発現する、確立されたヒトAML細胞株MOLM−13において、アポトーシスを誘導することが示されている(K. Kojima, et. al., Blood 2005, 106(9):3150-9)。現在では、式(I)の化合物とAra−Cとの組み合わせが、免疫不全マウスの播種性のMOLM−13 AMLモデルにおいて相加効果以上のものをもたらすことが見出されている。式(I)の化合物及びそれらの調製物は国際出願公開第2013/135648号に開示されている。これらの化合物は、化合物

(A)
4−{[(2R,3S,4R,5S)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸(本明細書における化合物A)のプロドラッグとして作用する。
【0005】
化合物Aは、例えば米国特許第8,354,444号及び国際出願公開第2011/098398号に開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、がんの治療における逐次又は同時使用のための組み合わせ調製物として、a)第1の成分としてMDM2−p53相互作用の阻害剤(「MDM2阻害剤」ともいう);及びb)第2の成分としてシタラビンを含む、医薬製品に関する。
【0007】
本発明はさらに、患者に上述の組み合わせを投与することを含む、がんに罹患している患者の治療方法にも関する。
【0008】
本発明はまた、a)活性薬剤としてMDM2−p53相互作用の阻害剤を含む第1の成分;及びb)活性薬剤として化合物シタラビンを含む第2の成分を含む、キットにも関する。
【0009】
加えて、本発明は、がんの治療のためのMDM2阻害剤及びシタラビンの使用に関する。
【0010】
本発明のさらなる態様は、がんの治療のための医薬の調製物のためのMDM2阻害剤、及びシタラビンの使用である。
【0011】
一実施態様では、MDM2−p53相互作用の阻害剤は、式(I)の化合物:

(I)、
から選択され、それによって式(I)の化合物は本明細書においてさらに特定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】生物発光の定量化による、SCIDベージュマウスのMOLM−13−luc.c4(AML)腫瘍負荷における化合物I−Bとシタラビンとの組み合わせの抗腫瘍有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
式(I)の化合物、及び特に本明細書に開示されるI−A及びI−Bは、活性な親分子化合物(A)の静脈内(iv)用製剤に必要とされる溶解度をもたらすように合成された、化合物(A)のポリエチレングリコール(PEG)プロドラッグである。静脈内製剤は、用量を制限してしまう胃腸不耐性及び曝露変動性を改善すること、ならびに、血液悪性腫瘍の治療のため及び小児への投与のための許容可能な投与経路を提供することが望ましい。
【0014】
週1回の化合物I−Bの静脈内投与及び化合物(A)の経口(po)投与の抗腫瘍活性を、MOLM−13モデルにおいて、単剤療法及びAMLの標準治療であるシタラビン(Ara−C)との組み合わせと比較した。化合物I−B及び(A)の両方とも、単剤療法として有意な寿命の増加(ILS)を誘発し、ビヒクル対照動物と比較して最大37%のILSが観察された。Ara−Cでは単剤療法の活性がないにもかかわらず、Ara−Cは、化合物I−B又は(A)との組み合わせで生存期間を有意に引き延ばし、それぞれ54%又は68%の最大ILSが観察された。本データによって実証された相乗効果は、MDM2阻害剤を用いたMDM2−p53の標的化と、及びシタラビン(Ara−C)を用いたS期の停止の誘発との組み合わせが、AMLの治療のための効果的な戦略でありうることを示唆している。これらのデータはまた、化合物(A)の有効性が、式(I)の化合物及び、特にI−A 及び/又はI−Bを使用するプロドラッグ手法によって維持することができることを実証している。
【0015】
したがって、一実施態様では、本発明は、AMLの治療における逐次又は同時使用のための組み合わせ調製物として、a)第1の成分としてMDM2−p53相互作用の阻害剤;及びb)第2の成分としてシタラビンを含む医薬製品に関する。
【0016】
別の実施態様では、MDM2−p53相互作用の阻害剤は、式(I):

(I)
の化合物から選択され、式中、nは3から70である。
【0017】
一実施態様では、nは30から60である。
【0018】
別の実施態様では、nは40から50である。
【0019】
さらに別の実施態様では、nは41、42、43、44、46、47、48又は49である。
【0020】
別の実施態様では、式(I)の化合物は:
4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2000)である。この化合物は、本明細書では化合物I−Aと表される。
【0021】
別の実施態様では 式(I)の化合物は:
4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG、平均MW、〜2200)である。この化合物は、本明細書では化合物I−Bと表される。
【0022】
さらに別の実施態様では、本発明に従ったMDM2阻害剤は化合物(A)でありうる。この実施態様内では、好ましくは、化合物(A)は、化合物(A)及び、化合物(A)を非晶質の形態で安定化させるポリマー、好ましくはHPMCASを含む、非晶質固体分散体、好ましくは微細沈殿バルク粉末(MBP)を含む、経口投与のための調製物として提供される。経口用調製物は、Klucel/Tween中の懸濁液として、投与の直前に再構成される。化合物(A)は、例えば米国特許第8,354,444号又は国際出願公開第2011/098398号に開示される方法に従って調製することができる。現在の研究における投与量の選択は、前臨床(動物)及び臨床(フェーズ1)試験における化合物(A)の先に決定された至適用量に基づくものであった。
【0023】
本発明に従った医薬製品又は方法は、白血病などの血液系腫瘍の治療又は制御に特に有用であり、とりわけ急性骨髄性白血病(AML)の治療に有用である。それらはまた、がん、さらに具体的には、例えば、乳房、結腸、肺、メラノーマ、前立腺、腎臓、頭頸部、又は肉腫などの固形腫瘍のようなMDM2−p53相互作用の調節不全によって生じる他の細胞増殖性疾患の治療にも有用でありうる。
【0024】
一実施態様では、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)の治療のための医薬製品及び/又は方法を提供する。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、がん、さらに具体的には、例えば、乳房、結腸、肺、メラノーマ、前立腺、腎臓、頭頸部、又は肉腫などの固形腫瘍のようなMDM2−p53相互作用の調節不全によって生じる細胞増殖性疾患の治療のための医薬製品及び/又は方法を提供する。
【0026】
式(I)の化合物の製剤は、経口、鼻腔及び/又は非経口又は静脈内投与に適したものを含む。製剤は、簡便には単位投与形態で提示されて差し支えなく、薬学の技術分野で周知のいずれかの方法により調製されて差し支えない。
【0027】
一実施態様では、式(I)の化合物は、約0.1mgから約100mgの化合物(I)、約10mMから約100mMの緩衝剤、約25mgから約125mgの凍結乾燥増量剤及び、等張性のビルディング剤を含む、静脈内投与のための安定な凍結乾燥製剤で提供される。結果として得られる製剤は、HCl又はNaOHでの調整により約5〜7のpHを有しなければならない。
【0028】
別の実施態様では、式(I)の化合物は、攪拌により、滅菌水中0.9%塩化ナトリウムに溶解され、次いでフィルタを通して濾過されて、静脈内投与のための隔壁封止されたバイアル内に入れられる。
【0029】
本明細書において使用される用語「緩衝剤」は、薬学的調製物のpHを安定させる、薬学的に許容可能な賦形剤を意味する。適切な緩衝剤は、当技術分野で周知であり、文献に見出すことができる。好ましい薬学的に許容可能な緩衝剤には、限定されないが、ヒスチジン緩衝剤、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酢酸緩衝剤及びリン酸緩衝剤が含まれ、特にコハク酸(20〜50mM)及びリン酸(10〜50mM)が好ましい。最も好ましい緩衝剤には、クエン酸塩、L−ヒスチジン又はL−ヒスチジンとL−ヒスチジン塩酸塩との混合物が含まれる。他の好ましい緩衝剤は、酢酸緩衝剤である。使用される緩衝剤から独立して、pHは、当技術分野で既知の酸又は塩基、例えば塩酸、酢酸、リン酸、硫酸及びクエン酸、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いて調整することができる。
【0030】
好ましい「増量剤」はトレハロース2水和物であるが、ラクトース、スクロース、ソルビトール、グルコース、ラフィノース(rafffinose)、マンニトール、デキストラン及び、グリシン、バリン及びアルギニン等のより低分子量のアミノ酸、ならびに科学文献に記載される他の増量剤も利用して差し支えない。
【0031】
凍結乾燥粉末の調合液又は再構成溶液のための希釈剤として、塩化ナトリウム(0.9%)、5%デキストロース、注射用水、乳酸リンゲル液又は1/2生理食塩水/食塩水などの希釈剤を使用してもよい。増量剤が等張性のビルディング剤としても機能することは認識されるべきである。
【0032】
担体材料と組み合わせて単一投与形態を製造することができる活性成分の量は、治療されている宿主、ならびに特定の投与様式によって様々であろう。担体材料と組み合わせて単一投与形態を製造することができる活性成分の量は一般に、治療効果を生じさせる式Iの化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの活性成分の範囲となるであろう。典型的な製剤は、本発明の化合物と担体又は賦形剤とを混合することにより調製される。適切な担体及び賦形剤は当業者に周知であり、例えば、Ansel, Howard C., et al., Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems.Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2004; Gennaro, Alfonso R., et al.Remington: The Science and Practice of Pharmacy.Philadelphia: Lippincott, Williams & Wilkins, 2000及び、Rowe, Raymond C. Handbook of Pharmaceutical Excipients.Chicago, Pharmaceutical Press, 2005に詳細に開示されている。
【0033】
シタラビンは、静脈内(iv)注入用の滅菌液(100mg/ml)として、Lake Forest,IL 60045 USA所在のHospira,Inc.から購入した。
【0034】
式(I)の化合物並びにシタラビンは、それらの治療的有効量で投与される。さらに具体的には、式(I)の化合物、とりわけ式I−A及びI−Bは、治療的に活性な量の化合物Aを患者に送達する目的で投与される。本発明に従った治療的有効量の化合物とは、疾患の症状を予防、緩和又は改善する、若しくは、治療されている対象の生存期間を引き延ばすために有効な化合物の量を意味する。所望の量の主活性成分、例えば化合物Aを患者に送達するために、プロドラッグ、例えばI−A又はI−Bなどの式(I)の化合物の量を決定することは、薬学の当業者の日常的作業の範囲内にある。本発明の一実施態様では、437mg/kgの式I−Bのプロドラッグの用量は、プロドラッグ中、22.88%の活性化合物負荷であることから、100mg/kgの親MDM2阻害剤の化合物(A)に相当する。
【0035】
本発明に従った化合物の治療的有効量又は用量は、広い制限内で可変であってよく、当該技術分野で既知の方法で決定されうる。このような用量は、投与される特定の化合物、投与経路、治療される条件、ならびに治療される患者を含め、各特定の事例における個別の要求に対して調整されるであろう。一般に、およそ70kgの体重の成人への経口又は非経口投与の場合、指示された場合には上限を超える場合があるかもしれないが、日用量が約10mgから約3000mg、好ましくは約80mgから約1600mgの化合物(A)が適切なはずである。日用量は、単回投与として、又は分割投与で投与することができ、又は、非経口投与で、連続的注入として与えられうる。
【0036】
一実施態様では、本医薬製品は式(I)の化合物を含み、それらは、28日の治療周期のうち最長で約7日間、好ましくは最長で約5日間の投与期間の1〜7日目、又は好ましくは1〜5日目に、約50から約3000mg/日、又は約80から約2500mg/日、又は約80から約1600mg/日、又は約200から約1600mg/日、又は約400から約1600mg/日、又は約400から約1200mg/日、又は約400から約1000mg/日、又は約400から約800mg/日、又は約400から約600mg/日の量で化合物(A)を送達するように投与され、続いて約21から約23日間、好ましくは最長で約23日間を休止期間とすることを特徴とする。日用量、すなわちmg/日で表した化合物(A)の量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与されうる。2回投与の場合、それらは好ましくは等量で、午前中に1回、及び午後に1回、投与される。
【0037】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約1200mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0038】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約1200mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0039】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約800mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0040】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約600mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0041】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約800mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0042】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約600mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0043】
別の実施態様では、本医薬製品は式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約400mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0044】
別の実施態様では、本医薬製品は、式(I)、I−A又はI−Bの化合物を含み、それらが28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とすることを特徴とする。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0045】
この発明に従ったシタラビンの治療的有効量(又は「有効量」)とは、本明細書に開示されるデータによって実証されるような相乗効果、すなわち相加効果を上回る効果を達成するのに効果的な量を意味する(例えば図1参照)。シタラビンは、何年にもわたり、AMLのための脊柱治療として用いられていることから、ヒトにおける有効量かつ耐性用量について、多くの情報が、例えば臨床医などの当業者にとって利用可能である。例えば、シタラビンは、AMLの治療(導入療法)において単剤として、1〜6日目に12時間毎に2時間以上、最大3g/m(静脈内)などの高用量で投与することができることが分かっている。白血病の治療におけるシタラビンの使用についての考察は、例えば「Nicholas D. Reese, Gary J. Schiller; Curr Hematol Malig Rep, 2013, 8:141-148」に提供されている。ある特定の併用療法(例えば急性非リンパ性白血病の導入療法)では、他の抗がん剤と組み合わせた通常のシタラビン用量は、連続的静脈内点滴によって100mg/m/日(1〜7日目)、又は12時間毎に静脈内に100mg/m(1〜7日目)である。(例えばwww.hospira.com参照)。
【0046】
したがって、一実施態様では、本発明は、がん、好ましくはAMLの同時又は連続治療のための組み合わせ調製物として、a)MDM2阻害剤として式(I)、I−A又はI−Bの化合物であって、該化合物は、28日間の治療周期の1〜5日目に、1日当たり1回又は2回、静脈内に(iv)投与され、その後、23日間を休止期間とする、化合物と;b)第2の成分として有効量の化合物シタラビンと、を含む、医薬製品を提供する。この実施態様内では 化合物I−A及びI−Bが好ましく、約50から約3000mg/日、又は約80から約2500mg/日、又は約80から約1600mg/日、又は約200から約1600mg/日、又は約400から約1600mg/日、又は約400から約1200mg/日、又は約400から約1000mg/日、又は約400から約800mg/日、又は約400から約600mg/日の量で化合物(A)を送達するように投与される。用量は、単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与される。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。また、この実施態様内では、式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約1200mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約1200mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約800mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約400から約600mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約800mg/日の量で化合物Aを送達するように投与される、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約600mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日から約400mg/日の量で化合物Aを送達するように投与される、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする;又は
式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、1日の総量で約1200mgの化合物(A)を患者に送達するために、600mgの用量で1日に2回(BID)投与される。
また、これらの実施態様の範囲内では、及び他に明確に記載されていない場合には、用量は単回投与(qd)として、又は2回投与(BID)で投与され、化合物I−A又はI−Bが好ましい化合物である。
【0047】
別の実施態様では、シタラビンは、2つの特定の患者集団に必要とされる以下の投薬計画に従って、式(I)、I−A又はI−Bの化合物と組み合わされる、すなわち:
1)European LeukemiaNetガイドラインに従った予後不良因子(adverse features)を有する再発性/難治性のAML又は新生AMLを有する患者;又は血液学的疾患を先行して有しており、それからAMLに進展した患者。この実施態様内では、シタラビンは1g/mで単回投与(qd)として6日間、1〜3時間の静脈内(i.v.)点滴により投与される。
【0048】
2)標準用量のシタラビン及びアントラサイクリン(ダウノルビシン又は イダルビシン)投薬計画(「7+3 導入療法」)を用いた集中的な化学療法治療の候補者とみなされる、European LeukemiaNetガイドラインに従った予後不良因子を有する患者。この実施態様内では、シタラビンは、1日に100〜200mg/mの用量で7日間、連続静脈内注入+ダウノルビシンを45から60mg/m;又は+イダルビシンを1日に12mg/m、静脈内に3日間、投与される。
【0049】
上記1)又は2)のいずれかの実施態様内では、式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、本明細書で先に定義されたように投与される。また、上記1)又は2)のいずれかの実施態様内では、式(I)、I−A又はI−Bの化合物は、それらが、28日の治療周期の最長5日間の投与期間の1〜5日目に、約120から約1200mg/日;又は約400から約1200mg/日の量で化合物Aを送達するように投与され、続いて23日間を休止期間とする。この実施態様内では、化合物I−Bが好ましい。
【0050】
さらに別の実施態様では、本発明は、先に定義された医薬製品をがんの治療を必要とする患者に投与することを含む、がんの治療方法を提供する。この実施態様内では、MDM2阻害剤は好ましくは化合物I−AまたはI−Bから選択される。化合物I−A又はI−B及びシタラビンの投与形態、用量及び治療スケジュールは好ましくは上述のようになる。また、この実施態様内では、がんは固形又は非固形腫瘍であり、好ましくは、がんは急性骨髄性白血病(AML)である。
【0051】
別の実施態様では、本発明は、がん、特に急性骨髄性白血病(AML)の治療用の医薬の製造のための式(I)の化合物、好ましくはI−A又はI−B、及びシタラビンの使用を提供する。
【0052】
別の実施態様では、本発明は、a)第1の成分として式(I)の化合物;及び、b)第2の成分として化合物シタラビンを含む、医薬製品を提供し、両方とも、がんの治療における同時又は逐次使用のための組み合わせ調製物として1日1回又は2回、静脈内投与され;式(I)の化合物の用量は、約50から約3000mg/日、又は約80から約2500mg/日、又は約80から約1600mg/日、又は約200から約1600mg/日、又は約400から約1600mg/日、又は約400から約1200mg/日、又は約400から約1000mg/日、又は約400から約800mg/日、又は約400から約600mg/日の範囲内の化合物(A)の用量に対応することを特徴とする。この実施態様内では、式(I)の化合物は、好ましくは化合物I−A又はI−Bであり、がんはAMLであり、1日用量は約200から約1600mgを1日1回又は2回与えられ、化合物I−A又はI−Bの投薬計画は、28日間の治療周期の1日目から5日目であり、続いて23日間を休止期間とする。さらに好ましくは、この実施態様内では、式(I)の化合物は化合物I−Bであり、がんはAMLであり、1日用量は、28日間の治療周期の1日目から5日目に、約1200mgを1日1回又は2回与えられ(BID,600mg)、続いて23日間を休止期間とする。
【0053】
本発明は、以下に随伴する実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0054】
材料及び方法
動物
Charles River Laboratories(Wilmington,DE)から入手したメスのSCIDベージュマウス(10/群)を、およそ8−12週齢で、体重がおよそ20〜25グラムのときに、使用した。マウスの健康状態を、巨視的観察、及び共用のシェルフラックに収容された歩哨動物から採取した血液試料の分析によって評価した。すべての動物は、実験に使用する前に最短でも72時間、順応させ、かつ輸送に関するストレスから回復させた。加熱滅菌した水及び放射線照射食品(5058−ms Pico Lab mouse chow、Purina Mills、Richmond、IN)が不断供給され、動物は12時間の明暗サイクルに維持された。ケージ、床敷及び採水器は使用前に加熱滅菌し、1週間ごとに交換した。すべての動物実験は、実験動物のケアと使用に関する指針、地方条例、及びRoche Animal Care and Use Committeeが承認したプロトコルに準拠して、AAALAC認証施設において行われた。
【0055】
腫瘍
MOLM−13ヒトAMLの親細胞にLuc2レンチウイルス粒子を、ポリブレン(8μg/ml)の存在下で24時間、安定にトランスフェクトし、その後、細胞をブラストサイジンの存在下で3週間、選択した。続いて、0.1mg/mlのG418の存在下で単細胞プレーティングによって1つのクローンを選択し、これは指定されたMOLM−13.luc.c4であった。Luc2遺伝子(Promega)をpLOCレンチウイルスプラスミド骨格(Thermo Fisher Scientific)に取り込むことによって、レンチウイルスLuc2発現プラスミドを構築した。推奨通りにトランスレンチウイルスパッケージングシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、Luc2レンチウイルス粒子を調製した。
【0056】
MOLM−13.luc.c4を、10%熱失活ウシ胎児血清(HI−FBS; GIBCO/Invitrogen,Carlsbad,CA)、及び1% 100mMピルビン酸ナトリウムを補充した、L−グルタミン(2mM)添加RPMI 1640培地(GIBCO/Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて維持した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁させた、新たに解離させたMOLM13−Luc.c4細胞(1×106又は5×106)を、メスのSCIDベージュマウス内へと尾静脈を介して静脈内接種した。
【0057】
試験薬剤
4−{[(2R,3S,4R,5S)−3−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(4−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−シアノ−5−(2,2−ジメチル−プロピル)−ピロリジン−2−カルボニル]−アミノ}−3−メトキシ−安息香酸 1−mPEG−カルボニルオキシ−エチルエステル(mPEG,平均MW,〜2200)、すなわち化合物I−Bを、攪拌することにより、滅菌水中0.9%塩化ナトリウムに溶解させた。次いで、それを、0.22ミクロンのフィルタを通じて静脈内投与のための隔壁封止されたバイアル内へと濾過した。437mg/kgの薬物の用量は、プロドラッグ中、22.88%の活性化合物負荷であることから、100mg/kgの親MDM2阻害剤に相当する。原液のシタラビン(Ara−C注入、100mg/ml)を、製造業者の指示書に従って、滅菌した0.9%塩化ナトリウム中44mg/mlまで希釈し、200mg/kgの用量で静脈内に週2回投与した。
【0058】
化合物I−B及びシタラビンを、それぞれ、437mg/kg(9ml/kg)で週1回(q7d)及び200mg/kg(4.5ml/kg)で週2回(2×/週)、1ccのシリンジ及び26ゲージの針を使用して静脈内投与した。同時投与の日には、化合物I−Bは午前中に投与され、静脈内投与のためのIACUCの規則に従って、シタラビンは6時間後に投与された。治療期間は3週間であった。
【0059】
監視
生存期間の増加(ILS)の評価では、動物の体重を週に2から3回測定し、毒性又は過度の腫瘍負荷(すなわち後肢まひ又は罹患率)のいずれかの臨床兆候について、毎日動物を監視した。加えて、IVIS(登録商標)スペクトラムシステムを用いて、疾患の進行をインビボの生物発光画像(BLI)によって監視した。各BLI期間の間、マウスに、100mg/kgのD−ルシフェリン(Caliper Life Sciences/Perkin−Elmer)の腹腔内注入を受けさせ、ルシフェリン注入後20分の時点で、5秒又は10秒の露光時間で撮像した。画像をIVIS(登録商標)スペクトラムシステムで撮像し、データを回収し、Living Image 4.2.0ソフトウェア(Caliper Life Sciences,Hopkinton,MA)を用いて分析した。個別のマウスの全腫瘍に及ぶ、対象とする各固定領域(ROI)内のルシフェラーゼ活性を表す全光子束(ph/s)が決定された。マウスの実際の画像は本明細書には開示されていない。この監視から得られた生物発光の定量化のデータは、図1に提供されている。
【0060】
計算及び統計解析
体重減少は、式:((W−W)/W)×100 [式中、「W」はある特定の日の治療群の平均体重を表し、「W」は同じ治療群の治療開始時の平均体重を表している]を用いて群の平均体重におけるパーセント変化として図式で表示した。最大の体重減少も上記式を用いて表したが、これは特定の群についての実験全体を通して随時観察された、体重減少の最大パーセントを示した。毒性は、≧20%の体重減少及び/又は死亡を例証する所定の群におけるマウスの≧20%として定義される。
【0061】
生物発光の定量化は、代替死亡エンドポイントに達する前の治療群間の腫瘍負荷の直接的な縦比較を可能にした。腫瘍負荷を平均BLI光子束+平均(SEM)の標準誤差として図式で表示し、生存期間中央値をカプランマイヤー生存時間解析を利用して決定した。群間の比較の統計解析は2要因ANOVA、及びポストホックボンフェローニ検定(GraphPad Prism,version 4.3)によって解析した。群間の差は、確率値(p)が≦0.05の場合に有意であるとみなされた。
【0062】
生存期間の評価のため、罹患率又は後肢まひをエンドポイントとして監視し、結果を腫瘍の生着後の日数に対する生存期間のパーセンテージとしてプロットした(GraphPad Prism,version 4.3)。後肢まひ、罹患率、又は≧20%の体重減少を死亡の代わりに用いた。%ILSは、100×[(治療群の生存日数中央値−対照群の生存日数中央値)/対照群の生存日数中央値]として計算した。生存期間中央値はカプランマイヤー生存時間解析を利用して決定した。ログランク(Mantel−Cox)検定(GraphPad Prism,version 4.3)により、治療群の生存期間をビヒクル群と比較した。群間の差は確率値(p)が≦0.05の場合に有意とみなされた。
【0063】
結果
毒性
動物の体重減少又は臨床兆候の総計によって評価される毒性は、現在の研究では観察されなかった。しかしながら、化合物I−Bの静脈内投与の直後に、原因不明の散発的な死亡が発生した(証明はされていないが、技術的可能性あり、表1参照)。
【0064】
【0065】
抗腫瘍有効性及び生存期間/生存期間の増加(ILS)の評価
マウスに500万の細胞を接種し、3日目に薬物治療を開始した。BLIは、化合物I−Bの単剤療法を受けたマウスの光子カウント数は有意に減少しているが、それに対してシタラビン(Ara−C)自体ではビヒクル処理した対照マウスと比較して差異が見られなかったことを実証した(図1参照)。BLIによって評価した腫瘍負荷のこれらの明らかな減少は結果的に有意な生存期間の増加につながり、q7dで437mg/kgの化合物I−Bを用いて治療された群では37%のILSが観察された。シタラビン(Ara−C)は、腫瘍負荷(BLI)又はILSによる評価では抗腫瘍活性がないことが実証された。他方では、Ara−Cと化合物I−Bとの組み合わせは、ビヒクル群又は単剤治療群と比較して統計的に有意な%ILSを誘発し、組合せにおける抗腫瘍活性の明らかな増強が実証された。これらのデータは下記表2にまとめられており、経口投与した化合物(A)との比較も含まれている。
【0066】
図1