(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法であって、前記堆積材料は一般式MeAlNをもつ3元窒化物であり、式中、MeはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wからなる群から選択される遷移金属である方法。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1のターゲットの活性化は第1の数(N1)の活性化パルスからなる第1の活性化パルス列(T1)によってなされ、前記第2のターゲットの活性化は第2の数(N2)の活性化パルスからなる第2の活性化パルス列(T2)によってなされる方法。
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1および第2のターゲット、ならびにもしあるなら第3のターゲットの活性化は、それぞれのターゲットに電力を供給することを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、スパッタリングシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、陰極アーク蒸着堆積システムの概略図である。
【
図3】
図3は、レーザアブレーション堆積システムの概略図である。
【
図4】
図4は、ターゲットに供給されるパルス列の概略図である。
【
図6】
図6は、3D膜成長中の、島の核形成、島の成長、および島の形状の維持の概念を示す概略図である。
【
図7a】
図7aは、シミュレーション表面でのA原子の3D組成マップを概略的に示す。
【
図7b】
図7bは、シミュレーション表面でのB原子の3D組成マップを概略的に示す。
【
図8】
図8は、特性シミュレーションから抽出した、A−AおよびA−Bの対相関関数(それぞれ、g
AA(R)およびg
BB(R))。
【
図9a】
図9aは、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の径方向位置を、連続パルス列(N
A+N
B)の全長の関数として示す。シミュレーションパラメータは本文および図に詳述している。
【
図9b】
図9bは、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min))の極小を示す。シミュレーションパラメータは本文および図に詳述している。図中の値は、約1MLの材料(AおよびB原子)の堆積をシミュレーションした後に抽出した。
【
図10a】
図10aは、φ
A=10原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図10b】
図10bは、φ
A=10原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図10c】
図10cは、φ
A=50原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図10d】
図10dは、φ
A=50原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図10e】
図10eは、φ
A=90原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図10f】
図10fは、φ
A=90原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図11a】
図11aは、f
A=f
B=10Hzでの、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の径方向位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図11b】
図11bは、f
A=f
B=10Hzでの、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図11c】
図11cは、f
A=f
B=100Hzでの、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の径方向位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図11d】
図11dは、f
A=f
B=100Hzでの、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図11e】
図11eは、f
A=f
B=1000Hzでの、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の径方向位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図11f】
図11fは、f
A=f
B=1000Hzでの、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図12a】
図12aは、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図12b】
図12bは、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図12c】
図12cは、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図12d】
図12dは、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図12e】
図12eは、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図12f】
図12fは、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【
図13a】
図13aは、F
p=10
-4MLs
-1の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図13b】
図13bは、F
p=10
-4MLs
-1の場合について、g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図13c】
図13cは、F
p=10
-2MLs
-1の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図13d】
図13dは、F
p=10
-2MLs
-1の場合について、g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図14a】
図14aは、3−D成長の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図14b】
図14bは、2−D成長の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図14c】
図14cは、2−D成長の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【
図14d】
図14dは、3−D成長の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【
図15】
図15は、パルス列長の組成変調への効果を実証するのに使用した多層AlN−Ag積層体の構造を示す。
【
図16】
図16は、AlN−Ag多層積層体のHAADF−STEMの概観を示す。
【
図17a】
図17aは、多層AlN−Ag積層体の層1(
図17参照)のHAADF−STEM画像を示す。
【
図17b】
図17bは、多層AlN−Ag積層体の層2(
図17参照)のHAADF−STEM画像を示す。
【
図17c】
図17cは、多層AlN−Ag積層体の層4(
図17参照)のHAADF−STEM画像を示す。
【0065】
実施形態の説明
図1は、第1の実施形態によるPVDシステムの概略図であり、スパッタリングプロセスが使用される。このシステムは、堆積チャンバ1aを囲む反応器容器101を含み、その中には、任意で基板ホルダ(図示せず)上にある基板102と、第1のマグネトロンターゲット(陰極)103と、第2のマグネトロンターゲット(陰極)104とが配置される。このシステムは、さらに、第1のターゲット103に電力を供給するための第1の電源105と、第2のターゲット104に電力を供給するための第2の電源106と、基板に(または基板ホルダに)バイアス電位電圧を印加するための第3の電源107とを含む。このシステムは、たとえば任意波動関数発生器または類似の形態にある同期デバイス108も含み、これは電源105、106、107に各同期信号を供給するのに使用する。
【0066】
このシステムは、任意に、堆積チャンバ101a内部の環境を制御するための1つ以上のポート109、110を含んでいてもよい。たとえば、1つのポート109はスパッタガスまたは反応性ガス用の入口を提供するのに使用してもよく、別のポート110はスパッタガスもしくは反応性ガス用の出口を提供するのに、または単に反応チャンバ101a内部の圧力レベルを制御するために、たとえば真空を与えるのに使用してもよい。
【0067】
図1を参照して説明したスパッタリングシステムにおいて、ターゲットは電場および磁場を提供する各マグネトロン上に配置してもよく、このマグネトロンは電源105、106によって電力が供給される。スパッタリングは真空で、またはスパッタリングガスたとえば(Ar、Ne、Xe、Kr)の存在下で行ってもよい。スパッタリングプロセス、たとえばイオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオンアシストスパッタリング、高ターゲット利用率スパッタリング、高電力インパルススパッタリング、およびガスフロースパッタリングはそれ自体公知であり、本明細書においてさらなる説明を必要としない。
【0068】
図2は、第2の実施形態によるPVDシステムの概略図であり、陰極アーク蒸着堆積法が使用される。このシステムは、堆積チャンバ201aを囲む反応器容器201を含み、その中には、任意で基板ホルダ(図示せず)上にある基板202と、第1のアーク陰極203と、第2のアーク陰極204とが配置されている。このシステムは、さらに、第1のアーク陰極203に電力を供給するための第1の電源205と、第2のアーク陰極204に電力を供給するための第2の電源206と、基板に(または基板ホルダに)バイアス電位電圧を印加するための第3の電源207とを含む。このシステムは、たとえば任意波動関数発生器または類似の形態にある同期デバイス208も含み、これは電源205、206、207に各同期信号を供給するのに使用する。
【0069】
このシステムは、任意に、堆積チャンバ201a内部の環境を制御するための1つ以上のポート209、210を含んでいてもよい。たとえば、1つのポート209はバッファガスおよび/または反応性ガス用の入口を与えるのに使用してもよく、別のポート210はバッファガスおよび/または反応性ガス用の出口を提供するのに、または単に堆積チャンバ201a内部の圧力レベルを制御するために、たとえば真空を与えるのに使用してもよい。
【0070】
図2を参照して説明した陰極アーク堆積システにおいて、ターゲットは陰極203、204上に配置される。陰極アーク堆積法はそれ自体公知であり、本明細書においてさらなる説明を必要としない。
【0071】
図3は、第3の実施形態によるPVDシステムの概略図であり、レーザアブレーションプロセスが使用される。このシステムは、堆積チャンバ301aを囲む反応器容器301を含み、その中には、任意で基板ホルダ(図示せず)上にある基板302と、第1のターゲット303(任意で回転ドラム上に取り付けられている)と、第2のターゲット304(任意で回転ドラム上に取り付けられている)とが配置されている。このシステムは、さらに、第1のレーザ305を第1のターゲット303上に集束させるための任意の制御電子機器(図示せず)および/または光学機器(図示せず)を含む第1のレーザ装置305と;第2のレーザ306を第2のターゲット304上に集束させるための任意の制御電子機器(図示せず)および/または光学機器(図示せず)を含む第2のレーザ装置306とを含む。このシステムは、さらに、第1のターゲット303上に集束する第1のレーザ305に供給する第1の電源307と;第2のターゲット304上に集束する第2のレーザ306に供給する第2の電源308とを含む。このシステムは、さらに、基板302または基板ホルダにバイアス電位電圧を印加するための第3の電源309と、たとえば任意波動関数発生器または類似の形態にある同期デバイス310も含み、これは電源307、308、309に各同期信号を供給するのに使用する。
【0072】
このシステムは、任意に、反応チャンバ301a内部の環境を制御するための1つ以上のポート311、312を含んでいてもよい。たとえば、1つのポート311はバッファガスおよび/または反応性ガス用の入口を与えるのに使用してもよく、別のポート312はバッファガスおよび/または反応性ガス用の出口を与えるのに、または単に堆積チャンバ301a内部の圧力レベルを制御するために、たとえば真空を提供するのに使用してもよい。
【0073】
堆積チャンバ101a、201a、301a内の環境は、ガスを導入および/または抽出するためのポート109、110;209、210;311、312を使用することによって、変化させてもよい。
【0074】
同様に、必要に応じて温度制御を加えてもよい。
【0075】
図4は、パルス列T1、T2を概略的に示し、これらは、たとえばターゲット103、104;203、204に直接電力供給することによってまたはレーザ305、306に電力供給することによって、各ターゲットを活性化するために印加することができる。
【0076】
各パルス列T1、T2は複数のパルスで形成され、各パルス列は所定の数N
1、N
2のパルスからなる。パルス列は、さらに、パルシング周波数f
1、f
2(それぞれパルス時間が1/f
1および1/f
2である)と;パルス長τ
1、τ
2と、パルス振幅A
1、A
2とよって特徴付けてもよい。
【0077】
第1の遅延D1が、第1のパルス列の開始時T1と第2のパルス列の開始時T2との間に設けられる。第1の遅延D1の長さは第1のパルス列T1の長さとほぼ同じであってもよい。同様に、第2のパルス列T2が初期化されると、第1のパルス列T1を再初期化する前に第2の遅延D2が導入される。第2の遅延D2の長さは第2のパルス列T2の長さとほぼ同じであってもよい。
【0078】
パルスの数N
1、N
2;パルシング周波数f
1、f
2、パルス長τ
1、τ
2、パルス振幅A
1、A
2、および遅延D1、D2を、「パルス列パラメータ」という。
【0079】
さらに別のパルス列パラメータとして、パルスの形状は、たとえば正方形(図示)、長方形、鋸歯、指数関数的、ステップ状、指数関数的、コサイン、もしくは誘導関数的、またはそのような形状の組み合わせ(たとえば、2重パルス、帯域幅制限パルス、またはコサイン平方パルス)の間で変化してもよい。
【0080】
遅延D1、D2の長さは、およそ+/−20%、好ましくは+/−10%、+/−5%、+/−1%、または+/−0.1%で変化してもよい。したがって、重なり合う時間があってもよく、その間に両方のパルス列T1、T2が印加されて各ターゲットを活性化する。しかし、ほとんどの場合、重なりはない。
【0081】
パルス列のパラメータは、活性化サイクル(すなわち1つのパルス列の印加)中に、ターゲットから放出された、したがって堆積に利用可能な、材料の量(原子の数)を決定する。
【0082】
活性化サイクル中に実際に堆積した材料の正確な量は、材料放出プロセスの効率(すなわちスパッタリング収率、アブレーション速度、蒸着速度など)およびターゲットから基板への材料の輸送プロセスの効率にも依存する。当然、堆積チャンバ101a、201a、301a内の環境は最終結果に影響を及ぼす。
【0083】
パルス列のパラメータと活性化サイクル中に陰極から堆積した材料との間に一般的な万能な関係を得ることは難しいと予測される。これは、使用される材料ならびに特定の設備およびその他のプロセスパラメータ(たとえば堆積チャンバ環境)に強く依存することが予測されるためである。したがって、材料およびプロセス設備の各々の所定の組み合わせについて、パルス列パラメータと最終材料構成との間の関係を、実験的に誘導することが必要になる。
【0084】
しかし、材料およびプロセス設備の組み合わせについて、これらの関係が確立されたとして、所定の陰極から活性化サイクル当たりで堆積した材料は、積τ
i×A
i×N
iに等しく、式中、iは材料供給源(陰極)の数であり;A
iはML/秒(単分子層/秒)によって表され、τ
iは秒で表され、N
iはパルス数で表される。したがって、積τ
i×A
i×N
iはある得られた材料のMLで表される。
【0085】
パルス列T1、T2は変更してもよいと解釈される。
【0086】
たとえば、1つ以上のパルス列パラメータを、異なる時点で、または連続的にでも、1つの同じターゲットに印加されるパルス列の間で変化させてもよい。
【0087】
さらに別の例として、1つ以上のパルス列パラメータを、同じパルス列内で変えてもよい。
【0088】
図5aは2種の成分材料M1およびM2からなる材料層Mの断面図であり、第1の成分材料M1は母材を形成し、第2の成分材料M2は母材材料中で規則的に分布した介在物を形成している。
【0089】
図5bは
図5aの材料層の上面図である。
【0090】
材料Mは第1の方向にCM
1の横方向組成変調を、第2の方向に横方向組成変調CM
2を示す。さらに、材料Mは厚さ方向D
Tに組成変調CM
3を示してもよい。
【0091】
組成変調CM
1、CM
2、CM
3は実質的に同じであってもよく、またはこれらは互いに異なっていてもよい。特に、横方向組成変調CM
1、CM
2は実質的に同じであってもよい。
【0092】
上で開示したシステムでは、基板および/またはターゲットは固定でも移動可能でもよい。たとえば、移動ターゲットをそれ自体が公知の方法で使用して、ターゲットの分布型浸食を与えてもよい。ターゲットおよび/または基板の移動はパルス列T1、T2と同期させてもよい。
【0093】
第3の電源107、207、309によって与えられるバイアスもパルス化してパルス列と同期させてもよい。そのような同期は、たとえばターゲットから基板への粒子の遷移時間を十分考慮して定めてもよい。
【0094】
上で開示した方法は、横方向組成変調、ある場合には材料の厚さ方向に垂直な方向において見られるように実質的に規則的な周期性を有する材料を与えるのに使用してもよい。厚さ方向は、材料がPVDシステム内で堆積されている場合、典型的には成長方向でもある。
【0095】
材料または材料組成物
上述したプロセスパラメータに加え、得られる組成変調は、付着しつつある2種以上の材料または材料組成物の影響を受けることがある。
【0096】
材料または材料組成物の混和性
材料または材料組成物の混和性はそれらの混合エンタルピーによって決定してもよい。すなわち、負の値の混合エンタルピーは混和性を意味し、正の値の混合エンタルピーは非混和性を意味する。
【0097】
材料または材料組成物ならびに基板の表面エネルギー
材料または材料組成物の、ならびに基板の表面エネルギーは、面内組成変調に関係し得る。
【0098】
たとえば、材料または材料組成物が類似の表面エネルギーを有し、それらの表面エネルギーが基板(または下地層)のそれより小さいか等しい場合、2D(すなわち主に面内)成長がなされ得る。
【0099】
別の例は、材料または材料組成物の1種が基板(または下地層)のそれより大きい表面エネルギーを有する場合であり、これはこの材料または材料組成物を3Dで、すなわち面内および面外の両方で成長させる。
【0100】
同相温度
同相温度、すなわち基板温度Tsと材料または材料組成物の融点Tmとの比Ts/Tmは、材料または材料組成物が基板に衝突した後のプロセスの拡散特性に影響を及ぼす。
【0101】
Ts/Tmが0.5超(好ましくは0.6超、より好ましくは0.7超)である場合、バルク拡散は活性で限定されず、これは材料または材料組成物が完全に混和性であるか非混和性であるかに応じて、プロセスが、均一な固溶体またはランダムに偏析した材料または材料組成物のドメインをそれぞれもたらすことを意味する。
【0102】
0.7未満、好ましくは0.6または0.5未満のTs/Tm値は、限定されたバルク移動度を与え、したがって面内組成変調に対して正の影響を及ぼすことがわかっている。
【0103】
0.2未満、またはさらに0.1未満のTs/Tm値は、いかなる表面拡散も全く与えないことがわかっており、これは、衝突した原子または分子が基板または下地膜の層の衝突部位に存在することを意味する。
【0104】
0.2未満のTs/Tmでは、速度条件は、パルス当たりの堆積速度、パルシング周波数、またはパルス幅によって設定することができない。このとき、面内組成変調は、パルス列長、パルス当たりの堆積速度、およびパルシング周波数によって決定されるので、主に各パルス列当たりで堆積した材料または材料組成物の量によって決定される。また、この場合、材料または材料組成物の混和性または非混和性は関係しない。異なる原子島間の拡散および合体が関係しないためである。
【0105】
0.1超(好ましくは、0.2超)で、0.7未満(好ましくは0.6未満、より好ましくは0.5未満)の同相温度Ts/Tmの場合、表面拡散は活性である。
【0106】
ある例示的な構成では、完全に混和性の材料または材料組成物であり、Ts/Tmが0.1〜0.7であり、材料または材料組成物の表面エネルギーが基板のそれより大きいと、それぞれの材料または材料組成物の島は、基板上に3D的に成長することができる。
【0107】
この範囲の下限から上限へ向かってTs/Tmを増大させることは、相互混合を引き起こし、これは面内組成変調を低減させる。
【0108】
一方、この範囲の上限から下限へ向かってTs/Tmを低減させることは、それぞれの材料または材料組み合わせのドメイン間での偏析/分離を引き起こす。
【0109】
別の例示的な構成において、非混和性の材料または材料組成物で、Ts/Tm範囲の下限から上限へ移動させることは、異なる材料または材料組成物のドメインの偏析に有利である。
【0110】
一方、議論しているTs/Tm比を上限から下限に向かって移動させた場合、限定された表面拡散が準安定な固溶体の形成を起こすことがある。
【0111】
さらに別の例示的な構成では、島が基板上で互いに2D的に成長することもある(これは、材料または材料組成物の表面エネルギーが互いに類似しており、基板の表面エネルギーより小さいか等しいことを意味する)。この場合、非混和性および混和性(上述した熱力学的基準に基づく)は、膜合成中のTs/Tm値に応じて、3Dの場合のように、組成変調に対して同じ作用をもつ。相違は、他の点が同一のプロセス条件の場合、2D成長の速度および熱力学的条件が、面内組成変調に関してより長い特性長さスケールをもたらすことである。
【0112】
別の例では、材料または材料組成物の一方は、基板上および材料または材料組成物の他方の上に、2D的に成長し(すなわち、第1の材料または材料組成物の表面エネルギーは、基板および第2の材料または材料組成物のそれより小さい)、一方で、第2の材料を、基板上および第1の材料または材料組成物の上に3D的に成長することもある(すなわち、第2の材料または材料組成物の表面エネルギーは、基板および第1の材料のそれより大きい)。このように形成された3Dの島は「波形」を生じさせる。表面の波形は、拡散性(十分であれば、すなわち、議論している範囲の上限に向かうTs/Tm比が必要とされる)およびプロセスパラメータの適切な選択(パルス列長、パルス幅、パルシング周波数、パルス当たりの堆積速度に関して)と組み合わせて、混和性および非混和性(たとえば、AlN−Ag)の両方の材料を使用した場合に、面内および面外の秩序をもたらすことがある。
【0113】
別の例は、2種の材料または材料組成物の融点Tmが実質的に異なる場合である。たとえば、1種の材料または材料組成物はかなりの拡散性を示すが、他方はほとんだまたは全く拡散性を示さなくてもよい。これは、プロセス条件の正しい選択を仮定して、組成変調に関して非常に異なる特性長さスケールをもたらすことがある。
【0114】
概念の立証−シミュレーションモデル
動的モンテカルロ(KMC)コードは、本明細書に記載した方法を使用した場合に、多成分膜の堆積中になされる原子プロセスをモデル化し原子配列を予測する目的で開発された。KMCコードは、3次元および2次元の島成長、特に膜成長の伸長遷移(不連続膜から連続膜までの遷移を表す膜成長中の特徴的な厚さ)までの核形成、成長および合体のプロセスをモデル化する。KMCの原理およびコードの実装は、以下の教科書によく記述されている:
・P. Kratzer. Monte Carlo and Kinetic Monte Carlo Methods - A Tutorial. In
・Multiscale Simul. Methods Mol. Sci. volume 42 pages 51-76. Julich Supercomputing Centre, Julich, (2009)
・J. D. Erlebacher. Kinetic Rate Law Issues in the Morphological Relaxation of Rippled Crystal Surfaces. In Dyn. Cryst. Surfaces Interfaces pages 97-107. Plenum Press, New York, (1997)。
【0115】
この項の目的は、単成分膜の成長をモデル化するコードで始まり(明確さのため)、次にその記述を1種より多い原子種を含むプロセス(すなわち、多成分膜)にまで拡張するコードの背後にある物理モデルに簡単な記述を示すことである。コード中で考慮されている膜成長中の基本的なプロセスを
図6に図示する。堆積中に、原子は空の基板表面(固定サイズの正方格子でモデル化されている)に到達し、吸着原子としてそれらのホッピング速度により決定される速度で拡散することができる。
【0116】
【数1】
【0117】
式中、a[Å]は膜材料の最小格子間隔であり、ν
0=5×10
12[1/s]は吸着原子の振動周波数であり、E
D[eV]は基板拡散障壁(成長プロセス中に基板の表面で拡散(移動)するために吸着原子が超えなければならない最小エネルギー)である。表面拡散速度は、上述したように、同相温度Ts/Tmに相関させることができる。パルス化した蒸気をモデル化しているので、原子の到達速度は、ある周波数[f]で繰り返される固定長[τ]の平方パルスに分割される。また、パルス当たりで堆積される原子の量[F
P](
図4のパルス列の記述による量τ×Aに対応する)は、単分子層(1原子の厚さの連続層を形成するのに必要とされる原子の量である単分子層(ML))で示される。金属の場合、1MLは約10
15原子/cm
2に対応する。十分な原子が堆積されると、島の核形成が生じ始める。これは、2個の吸着原子が衝突するによって、または新たに堆積される原子が既存の吸着原子の上または隣に落ちることによって起こりうる(
図6a〜6c参照)。類似の仕方で、島は、吸着原子がそれらに拡散するによって、または原子がそれらの上に直接落ちることによって、成長するであろう。シミュレーションは、既存の島の上での再核形成を許容しないことに留意すべきである。3次元成長をモデル化する場合、シミュレーションにおける島の形状は、基板表面に対して90°の接触角を有する半球に制限され、島が成長しているときに維持される(
図6c参照)。2次元成長をモデル化する場合、シミュレーションにおける島の形状は、基板表面に対して0°の接触角をもつディスクに制限され(
図6には図示せず)、これは成長中に維持される。上述した形状は、十分に小さい島の平衡形状であり、それに対してファセット形成は生じないと仮定される。
【0118】
島の数およびサイズが増大するにつれ、島は他の島に接触し始め、合体が生じる。これは、複数対の島の間の二元プロセスとして処理され、このプロセスではこれらの島はともに併合して、単一のより大きい(質量保存された)島を形成し、ここでも半球形状/ディスク形状(それぞれ、3D/2D成長の場合)は維持される。合体終了のための時間は下記式によって計算される。
【0119】
【数2】
【0120】
式中、Rは対におけるより小さい島の半径であり、Bは下記式よって計算される合体パラメータである。
【0121】
【数3】
【0122】
但し、D
S、γ、およびΩはそれぞれ膜材料の自己拡散性、表面エネルギーおよび原子体積である。合体パラメータBは主として自己拡散性速度によって決定されるので、Bは上述した実験量Ts/Tmと相関しうる。τ
coalは島サイズ依存なので、より大きい島は合体するのにより長い時間を要し、したがってより多くの材料が堆積されるにつれて平均合体時間はより長くなる。これは、表面に、衝突したがまだそれらの合体プロセスが終了していない島のクラスタから構成される伸長した構造をもたらす。シミュレーション時間のある段階で、表面はそのような構造によって支配され、合体事象はもはや完了しない。この段階では、伸長遷移に到達している。伸長遷移は、(島)クラスタの平均サイズを知ることによって決定される。平均クラスタサイズが2より増大すると、伸長遷移に達したと見なされる。
【0123】
以下においては、多成分膜の成長をシミュレートするためのコードおよび物理的モデルの変化を示す。この記述は2つの原子/化学種(原子Aおよび原子B)の場合に関する。2種超への拡張は簡単である。一般的に、これらの変化は、2つの異なる原子種(AおよびB)の堆積「パルス列」のシミュレーションを可能にする。各パルス列は、パルス数(N
i)、パルス長[τ
i](ある周波数[f
i]で繰り返す)によって特徴付けられる。また、パルス当たりで堆積される原子の量[F
Pi]は、パルス当たりの単分子層で示される。2つの原子種は、基板へ向かうそれらの拡散障壁(E
Di)によって、またそれらが島に組み込まれるときに生じさせる合体パラメータ(B
i)によっても、異なりうる。上で列挙した量の全てについて、添え字「i」はAまたはBのいずれかを示す。この型のコードにおいて、2つの原子種は互いに完全に混和性であり、したがって全ての原子(AでもBでも)は既存の島への組込みに関して同様に取り扱う。次に、合体時間リミット(τ
coal=R
4/B)を、組成的な重み付き平均<B>=N
AF
pAB
A+N
BF
pBB
B/(N
AF
pA+N
BF
pB)を使用して計算し、2つの原子種の表面自己拡散性の差を説明する。原子が完全に混和性であるので、全ての島を、それらの組成と無関係に、合体に関して同じと取り扱う。
【0124】
シミュレーションの結果は、0.05MLのシミュレーションした堆積ごとに島(モノマーを含まない)を示す「スナップショット」を含む。同時に、AおよびB原子の組成分布を3D的に描くシミュレーション表面の組成マップを生成する(
図7a、
図7b参照)。島内部での原子配列は考慮しないので、このマップは、各島の内部での各原子(AおよびB)の相対平均分率(0〜1)を示す。
【0125】
図7a、
図7bには、各島の内部での各原子(AおよびB)の平均相対分率(0〜1)を示している。シミュレーションパラメータは以下の通りである:N
A=N
B=3×10
3パルス、f
A=f
B=1000Hz、F
pA=F
pB=10
-4ML、τ
A=τ
B=100μs、B
A=B
B=500a
4s
-1。E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV。
【0126】
組成マップを定量するために、A−A原子対およびA−B原子対の相関関数(または単に相関関数)を計算した。対相関関数または径方向分布関数(RDF)は、所定の参照粒子から所定の距離で他の粒子を見出す確率を示す。相関関数を計算するためのアルゴリズムはこれらのサイトにオンラインでよく記述されている。:
http://www.physics.emory.edu/~weeks/idl/gofr.html
http://homepage.univie.ac.at/franz.vesely/simsp/dx/node22.html
【0127】
2つの型の組成物はA原子(A)およびB原子(B)を考慮している。これは合計で4つの組み合わせを作る(AA、AB、BBおよびBA)。対称上の理由(すなわち、AおよびB原子の相対分率の合計が1である)のため、AAおよびABの相関関数のみを議論する。以下においては、参照原子型および比較原子型という用語を任意の組み合わせを示すのに使用するものとし、たとえばABにおいて、Aは参照型でありBは比較型である。ここで考慮した2つの組み合わせに関し、参照型の粒子からの径方向の距離rによってインデックス化した各々についてヒストグラムを作成する。KMCシミュレーションによって出力される組成マップを取得することによって、各格子サイトを順に進み、R+ΔRの間の小さいリング内の全ての粒子の組成物の合計をR<R
maxの範囲について計算し、対応するヒストグラムおよびbinに加える。必要な場合には周期的な境界条件を考慮する。全てのサイトを訪れたら、サイト当たりの平均組成を、各々のヒストグラムにおける各々のR−binについて評価する。また、各々のbinを比較型原子の平均密度によって規格化し、R→∞のとき、相関関数g(R)→1になるようにしなければならない。最後に、参照原子が必ずしも厳密にはAまたはB型ではないことにより、g(R)を全ての参照型原子の合計組成によって規格化しなければならない。2つの相関関数の例を
図8に示す。ここで、両方の相関関数の値(シミュレーション条件は
図7のそれらと同じである)は、極小にまで減少してから、十分大きい距離Rでの定常値に向かって再び増加することがわかる。我々は本明細書において、相関関数の2つの特性値を定義する;相関関数の極小が生ずるRの値、およびこの極小での相関関数の値である。極小が生ずる値RはAリッチおよびBリッチの島の特徴サイズを表し(それぞれ、gAA(R)およびgAB(R)の場合)、一方で極小値は典型的な島に拡がる典型的な組成を表す。これらの量の両方とも組成変調を表す。本明細書において我々はシミュレーションを使用して、特性長さしたがって組成変調に関するパルス列パラメータの作用を確立する。
【0128】
概念の立証−シミュレーション結果
組成変調に対するパルス列長の効果
この項は、平均組成A(φ
A)50原子%およびB(φ
B)50原子%の場合について、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)のパルス列長への依存性に関する結果を示す。
F
pA=F
pB=10
-4ML
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
B
A=B
B=500a
4s
-1
f
A=f
B=1000Hz
τ
A=τ
B=10μs
N
A=N
B(すなわち、平均組成50原子%のAおよび50原子%のB)。
【0129】
図9aに、g
AA(R)およびg
AB(R)の極小の位置(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])を、2つの連続パルス列の全長、すなわちN
A+N
Bの関数としてプロットする。これらの値は、約1MLの全カバレージ(すなわち、堆積材料の全量)に対応する。
図9aから、8×10
3のN
A+N
B値の場合、min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)]はそれぞれ12および2(吸着原子の並進距離aの倍数で表される極小)であることがわかる。これは、Aリッチ原子およびBリッチ原子の特性サイズが異なること、すなわち原子Aおよび原子B(参照として原子Aを使用)を見出す場合の特性長さスケール(距離)が異なることを示す。
【0130】
図9bは、g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。8×10
3のN
A+N
B値の場合、g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)はそれぞれ約0.6および約0.4の値をとる。これは、AリッチおよびBリッチの原子の島の間で、組成的な拡がり(すなわち、平均組成からの偏差)に差があることを示す。
【0131】
図9aおよび
図9bの両方とも、N
A+N
B=8×10
3で、膜に組成変調があることを示す。この組成変調は、N
A+N
B値が減少するにつれ、より顕著でなくなる。2×10
3のN
A+N
B値の場合、min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)](
図9a)の両方とも、約6の共通の特性長さに収束する。同時に、N
A+N
B=6×10
3でのg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)(
図9b)は約1の値で飽和し、これはAリッチおよびBリッチの島における組成の拡がりが平均組成に対応することを示している。
【0132】
概していえば、
図9aおよび
図9bに示した傾向は、パルス列の長さが減少することによって組成変調が消失し、原子Aおよび原子Bの平均分率に対応する均一な組成プロファイルが生ずることを示す。同時堆積(すなわち、共堆積)の場合の対応するmin[g(R)]およびg(R
min)の値(AAとABの両方)は、それぞれ5および0.86である(すなわち、
図9a〜
図9bにおける比較的短いパルス列長でのそれらと非常に類似している)。
【0133】
平均組成の組成変調への効果
この項は、3つの平均組成について、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)のパルス列長への依存性に関する結果を示す。3つの平均組成は、すなわち以下の通りである:
図10aおよび
図10b:φ
A=10原子%およびφ
B=90原子%
図10cおよび
図10d:φ
A=50原子%およびφ
B=50原子%
図10eおよび
図10f:φ
A=90原子%およびφ
B=10原子%。
【0134】
シミュレーションパラメータは以下の通りである。
F
pA=F
pB=10
-4ML
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
B
A=B
B=500a
4s
-1
f
A=f
B=1000Hz
τ
A=τ
B=100μs。
【0135】
N
AおよびN
Bは、上に列挙した3つの組成の1つを達成するように相応に調節する。
【0136】
図10aは、φ
A=10原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【0137】
図10bは、φ
A=10原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【0138】
図10cは、φ
A=50原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【0139】
図10dは、φ
A=50原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【0140】
図10eは、φ
A=90原子%の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【0141】
図10fは、φ
A=90原子%の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示す。
【0142】
データは約1MLのカバレージでとっている。定量的な差に関わらず、
図10a〜
図10fは(
図9a〜
図9bと同様)、全パルス列長の減少が、顕著な組成変調をもつ膜から、平均組成値によって定義される均一な組成をもつ膜に導くことを示している。
【0143】
パルシング周波数の組成変調への効果
この項は、3つのパルシング周波数について、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)のパルス列長への依存性に関する結果を示す:
図11aおよび
図11b:f
A=f
B=10Hz
図11cおよび
図11d:f
A=f
B=100Hz
図11eおよび
図11f:f
A=f
B=1000Hz。
【0144】
シミュレーションパラメータは、以下の通りである。
F
pA=F
pB=10
-4ML
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
B
A=B
B=500a
4s
-1
τ
A=τ
B=100μs
N
A=N
B(すなわち、平均組成50原子%のAおよび50原子%のB)。
【0145】
図11a、
図11cおよび
図11eは、それぞれf
A=f
B=10、100、および1000Hzでの、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の径方向位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【0146】
図11b、
図11dおよび
図11fは、それぞれf
A=f
B=10、100、および1000Hzでの、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。
【0147】
シミュレーションパラメータは本文に詳述している。図中の値は、約1MLの材料(AおよびB原子)の堆積をシミュレートした後に抽出している。
【0148】
データは様々なパルシング周波数について非常に小さい定量的な差を示し、
図9および
図10と同様に、全パルス列長の減少が、顕著な組成変調をもつ膜から、平均組成値によって定義される均一な組成をもつ膜に導くことを示している。
【0149】
合体速度の組成変調への効果
この項は、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)の、合体パラメータBの値によって定量される合体速度への依存性に関する結果を示す。3つの異なるB値をシミュレートした。すなわち:
図12aおよび
図12b B
A=B
B=1a
4s
-1
図12cおよび
図12d B
A=B
B=500a
4s
-1
図12eおよび
図12f B
A=B
B=4×10
3a
4s
-1。
【0150】
シミュレーションパラメータは以下の通りである。
F
pA=F
pB=10
-4ML
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
f
A=f
B=1000Hz
τ
A=τ
B=100μs
N
A=N
B(すなわち、平均組成50原子%のAおよび50原子%のB)。
【0151】
図12a、
図12c、
図12eは、A−A(min[g
AA(R)])およびA−B(min[g
AB(R)])の相関関数の第1極小の位置を、連続パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示す。
【0152】
図12b、
図12d、
図12fは、相関関数(g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の極小を示す。シミュレーションパラメータは本文に詳述している。
【0153】
データは約1MLのカバレージでとっているが、但しB
A=B
B=1a
4の例外があり、そのためのデータは1MLより下でとっている。1MLより低いカバレージで伸長遷移厚さに達するためである。
【0154】
定性的なレベルで、
図12a〜
図12fは、
図9a〜
図9b、
図10a〜
図10f、および
図11a〜
図11fと同じ傾向、すなわち、全パルス列長の減少が、顕著な組成変調をもつ膜から、平均組成値によって定義される均一な組成をもつ膜に導くことを示している。しかし、合体の終了は原子の島間の相互混合に有利なので、B値が増加したときに組成変調はより顕著でなくなる。
【0155】
パルス当たりの堆積速度の組成変調への効果
この項は、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)のパルス当たりの堆積速度F
pへの依存性に関する結果を示す。2つの異なるF
p値をシミュレートしていろ。すなわち:
図13aおよび
図13b:F
p=10
-4MLs
-1
図13cおよび
図13d:F
p=10
-2MLs
-1。
【0156】
シミュレーションパラメータは以下の通りである。
B
A=B
B=500a
4s
-1
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
f
A=f
B=1000Hz
τ
A=τ
B=100μs
N
A=N
B(すなわち、平均組成50原子%のAおよび50原子%のB)。
【0157】
図13aおよび
図13cにおいて、それぞれF
p=10
-4および10
-2MLs
-1の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示している。
【0158】
図13bおよび
図13dは、それぞれF
p=10
-4および10
-2MLs
-1の場合について、g
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示している。データは約1MLのカバレージでとっている。
【0159】
定性的なレベルで、図は、
図9a〜
図9b、
図10a〜
図10f、
図11a〜
図11f、および
図12a〜
図12fと同じ傾向、すなわち、全パルス列長の減少が、顕著な組成変調をもつ膜から、平均組成値によって定義される均一な組成をもつ膜に導くことを示している。
【0160】
成長モードの組成変調への効果
この項は、組成変調(極小の径方向位置および相関関数の極小値により定量される)の成長モードへの依存性に関する結果を示す。
【0161】
2つの型の成長、すなわち、3次元(3−D)成長および2次元(2−D)成長をシミュレートした。
【0162】
3−Dは、たとえば堆積物のそれより非常に小さい表面エネルギーをもつ基板上への膜(たとえば、絶縁体上への金属)の多結晶質成長中に遭遇する。これは、速度条件が限られた層間(すなわち、原子の島上の原子層の間)の拡散をもたらす場合のエピタキシャル成長でも可能である。
【0163】
2−D成長は、速度条件が吸着原子の層間拡散に有利であり面内方向(すなわち、基板の平面上)に原子の島の成長をもたらす場合のエピタキシー実験で遭遇する。2−D型の成長は、速度条件が高い核形成密度に有利である場合の多結晶質膜成長でも遭遇することができる。シミュレーションパラメータは以下の通りである:
F
p=10
-4MLs
-1
B
A=B
B=500a
4s
-1
E
DA=0.3eVおよびE
DB=0.8eV
f
A=f
B=1000Hz
τ
A=τ
B=100μs
N
A=N
B(すなわち、平均組成50原子%のAおよび50原子%のB)。
【0164】
図14aおよび
図14cにおいて、3−D成長および2−D成長(それぞれ、
図14aおよび
図14c)の場合のg
AA(R)およびg
AB(R)の極小(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)])の位置を、パルス列の全長(N
A+N
B)の関数として示している。
【0165】
図14bおよび
図14dは、2−D成長および3−D成長(それぞれ、
図14bおよび
図14d)の場合のg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の値を、連続パルス列の全長の関数として示している。データは、それぞれ3−D成長および2−D成長の場合に、約1MLおよび約0.6MLのカバレージでとっている。定性的なレベルにおいて、図は、
図9a〜
図9b、
図10a〜
図10f、
図11a〜
図11f、
図12a〜
図12f、および
図13a〜
図13dと同じ傾向、すなわち、全パルス列長の減少が、顕著な組成変調をもつ膜から、平均組成値によって定義される均一な組成をもつ膜に導くことを示している。
【0166】
しかし、2−D堆積の場合の傾向はより顕著でない。加えて、2−D成長の場合のAリッチおよびBリッチの島の特性サイズ(min[g
AA(R)]およびmin[g
AB(R)]によって定量される)は、それぞれ、3−D成長のそれより非常に大きい。
【0167】
これは、2−Dにおける材料の添加が基板の平面内での島の成長をもたらす、すなわち、同じ量の堆積材料について、島によって覆われる面積が3−D成長におけるそれより非常に大きいことによって説明することができる。
【0168】
また結果として、後者は、既存の島により捕捉される原子を凝縮するためのより大きい確率を有し、
図14a〜
図14dにおけるg
AA(R
min)およびg
AB(R
min)の比較的大きい値によってわかるように、相互混合を増大させる。
【0169】
概念の立証−実験データ
本発明を、モデル系としてAlN−Ag膜を使用して、実際に試験した。
【0170】
AgをAlN上に3次元的に成長させ、一方でAlNをAg上およびそれ自体の上に2次元的に成長させる。したがって、2次元成長および3次元成長の両方を記述するKMCシミュレーションとの定性的な比較が可能である。同時に、AgとAlNは完全に非混和性である[Siozos et al., Nano Letters 12 (2012) 259]。この事実は、KMCシミュレーションが完全に混和性の系を扱っていたので、本発明の関連領域を拡張する。一般的に、AlN−Ag系についてのKMCシミュレーションと実験データとの組み合わせは、多成分系の成長中に遭遇しうる全ての可能なシナリオについてのデータを与える。
【0171】
2種の材料の非常に異なる融点(それぞれAgおよびAlNについて1230および3200K)に基づいて、我々は、Agの拡散性がAlN関連化学種のそれより非常に大きくなることを予想できる(室温を仮定するTs/TmはそれぞれAgおよびAlNについて0.24および0.1である)。さらに、Agについて合体パラメータBは500〜2000cm
4s
-1の範囲にあることが報告されている。合体は表面駆動のプロセスである。したがって、AlN上のAlおよびNの非常に大きい自己拡散障壁のために、我々は、AlNについてのBがかなり小さくなることを予想できる。
【0172】
AlN−Ag膜を、ベース圧力が10
-8Paより良好な超高真空チャンバ内で成長させた。このチャンバは多くのマグネトロン陰極を備えていた。2つの陰極に、直径76.2mmおよび厚さ6mmのAlおよびAgのスパッタリングターゲットを取り付けた。陰極−基板の間隔は、AgおよびAlの陰極について、それぞれ125mmおよび75mmであった。スパッタリング実験を作動圧力0.67Paで行った。これは、真空チャンバ内に45sccm(標準立方センチメートル)のArおよび4.6sccmのN
2を導入し、事前に定めた方法でターボ分子ポンプを絞ることによって達成した。ガス雰囲気中の4.6sccmのN
2の存在は化学量論のAlNの成長を促進し、一方でN
2に対して反応性でないAgはN
2の存在によって(化学組成に関して)影響を受けなかった。基板は堆積中に意図的に加熱しなかった。しかし、プラズマによって加熱することによる温度のわずかな上昇を排除することはできない。パルス列を、同期デバイス(任意波形関数発生器に類似)を介して互いに連結された2つの高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)電力発生器によって発生させた。各々の陰極についての電力供給条件は以下の通りであった:
平均電力(P
T):P
TAg=1W、P
TAl=265W
パルシング周波数:f
Ag=100Hz、f
Al=1000Hz
パルス幅:τ
Ag=50μs、τ
Al=50μs。
【0173】
基板への経路上の気相におけるスパッタリングされた化学種の散乱のために、実際のパルス幅は約100μsと推定される[Magnfaelt et al., J. Phys. D: Appl. Phys. 46 (2013) 215303]。これらの電力条件は、以下のパルス当たりの堆積速度(参照AlNおよびAg膜の厚さを測定することによって計算される)をもたらした:
F
PAg=2.2×10
-3Å/パルス
F
PAlN=5.3×10
-4Å/パルス。
【0174】
AgおよびAlNについて最も一般的な結晶組織がそれぞれ(111)および(0002)であることを考慮して、上に示した速度値はMLs
-1で以下のように表すことができる。すなわち、
F
PAg 約10
-3MLs
-1
F
PAlN 約10
-4MLs
-1。
【0175】
AlN−Ag膜を、AgおよびAl陰極に印加したパルス列長(それぞれN
AgおよびN
Al)の異なる組み合わせについて成長させた。パルス列長の単一サンプルにおける組成変調への効果を実証するために、N
AgおよびN
Al値の異なる組み合わせをもつAlN−Ag層の多層積層体を堆積した。この多層積層体の構造を
図15に示す。
【0176】
図16は、パルス列長の組成変調への効果を実証するのに使用した、多層積層体の構造を示す。各々のAlN−Ag層は、そのたびごとに同一条件で成長させた500Åの厚さのAlNバッファ層によって分離されている。最初および最後のAlN−Ag層は、参照のために同一条件で成長させたことに留意されたい。各々のAlN−Ag層の所期の公称厚さは800Åである。
【0177】
組成変調を、高角度環状暗視野(HAADF)走査透過電子顕微鏡法(STEM)を用いて分析した。断面試料を最新の手順を使用して調製した。HAADF−STEM画像は、プローブされた元素の原子番号の差に基づく強度コントラスト(Z−コントラスト)を示し、すなわち、重い元素はより高い強度を示す。多層積層体の場合、
図16に示した多層積層体の概観に見られるように、Agリッチ領域はAlリッチ領域より明るく見える。
【0178】
図16はAlN−Ag多層積層体のHAADF−STEMの概観を示す。明るい層はAgリッチ領域に対応し、一方でより暗い層はAlリッチ領域に対応する。AlNバッファ層も明瞭に見える。各々のAlN−Ag層の成長条件(Ag陰極およびAl陰極でのパルス列長に関する)を
図15に示す。
【0179】
第1層、第2層および第4層のHAADF−STEM画像を、それぞれ
図17a、
図17bおよび
図17cに示す。
【0180】
図17a(積層体の第1層に対応)においては、面外および面内の周期的な(または準周期的な)強度変化が観察される。これは、面外の組成変調、しかしより重要な、周期性の程度が大きい面内の組成変調を示す。
【0181】
図17b(積層体の第2層に対応)においては、約30nm厚さのAlN層によって分離された2つのAgリッチ層(明るい層)により、主に面外強度変化が見られる。
【0182】
図17c(積層体の第4層に対応)においては、強度(すなわち、組成)の変調がより顕著でなくより不規則であるが、主に面外方向においてである。
【0183】
図17a、
図17bおよび
図17cの各々について、強度−強度相関関数(手順はKMC文献に記載されている)を計算し、
図18a、
図18bおよび
図18cに示した。HAADF画像における強度コントラストは質量コントラストに依存するので、
図18a〜
図18cにおける強度−強度相関関数は組成変調に関する情報を伴う。強度極大の間の距離は組成変調の特性長さを表す。
【0184】
図18a(積層体の第1層に対応)においては、4nm程度の距離をもつ、大きな強度極大が観察される。これらの極大は面外組成変調から発する。同時に、0.5nm程度の波長をもつ強度変調が先の強度変調に重畳している。短い波長の変調は面内組成変調から発する。
【0185】
図18b(積層体の第2層に対応)においては、距離が約30nmである2つの強い強度極大が観察され、これらは面外組成変調に対応する。5nm程度の特性間隔をもつ、より顕著でない強度振動が見られる。これらはAgリッチ層における強度/組成変調に対応する。
【0186】
図18cにおいては、(他の図に対して)より顕著でない強度変化が、弱い面外組成変調に対応する、典型的には約4nmの波長で観察される。
【0187】
図17a〜
図17cおよび
図18a〜
図18cに示したデータは、プロセスパラメータ(すなわち、パルス列の長さ)を変化させることによって、面外組成変調、しかしより重要な面内組成変調が達成されることを示している。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 制御された面内組成変調を与えるように基板をコーティングする方法であって、
第1の材料または材料組成物の第1のターゲットを用意し、
前記第1の材料または材料組成物と異なる第2の材料または材料組成物の第2のターゲットを用意し、
前記第1および第2のターゲットを活性化させて、蒸発、昇華またはスパッタリングによって粒子を放出させ、
前記放出された粒子を前記基板に衝突させて前記基板をコーティングする
ことを含み、
前記ターゲットの一方の活性化は、一連の活性化パルスを与えて、パルス化された粒子の蒸発、昇華、またはスパッタリングを得ることを含み、一方で前記ターゲットの他方は実質的に不活性であり、
前記第1および第2のターゲットの材料または材料組成物は、
基板温度(Ts)と最低融解温度(Tmi)を有するターゲット材料(i)のターゲット材料融解温度(Tmi)との比(Ts/Tmi)として定義される個別同相温度と、前記ターゲットの材料または材料組成物の混合エンタルピーによって定義される混和性(ΔHmix)とを示し、ここで前記材料の混合エンタルピーがゼロより大きいことは非混和性であると定義され、前記材料の混合エンタルピーがゼロ未満であることは混和性であると定義され、および
2次元または3次元の成長モードを示し、
前記同相温度は0.1超で0.5未満であり、
各ターゲット材料からの、パルス列当たりの堆積材料の量は0.1単分子層超で100単分子層未満、好ましくは50単分子層未満、10単分子層未満、または2単分子層未満である方法。
[2] [1]に記載の方法であって、2次元成長は前記第1および第2の材料または材料組成物の間の表面エネルギーの差が50%未満、好ましくは20%未満、10%未満、5%未満もしくは1%未満である場合、または前記表面エネルギーの差がより大きく、より低い表面エネルギーを有する材料がより高い表面エネルギーを有する材料上で成長する場合になされ、3次元成長はそうでない場合になされる方法。
[3] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は非混和性であり、
前記ターゲット材料は2次元成長を示し、
前記同相温度は0.1超、好ましくは0.2超または0.3超であり、
各ターゲット材料からのパルス列当たりの堆積材料の量は2単分子層未満である方法。
[4] [3]に記載の方法であって、前記堆積材料は、金属合金、たとえばMoxRu1-x;半金属合金、たとえばGexSn1-x;金属窒化物、たとえばTixAl1-xNyもしくはTixSi1-xNy;金属酸化物、金属炭化物、アンチモン化物、リン化物、ホウ化物、またはこれらの組み合わせである方法。
[5] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は非混和性であり、
前記ターゲット材料は2次元成長を示し、
前記同相温度は0.4未満、好ましくは0.3未満、または0.2未満であり、
パルス列当たりの各ターゲット材料からの堆積材料の量は2単分子層未満である方法。
[6] [5]に記載の方法であって、前記堆積材料は一般式MeAlNをもつ3元窒化物であり、式中、MeはTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wからなる群から選択される遷移金属である方法。
[7] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は混和性であり、
前記ターゲット材料は2次元成長を示し、
前記同相温度は0.4未満、好ましくは0.3未満、または0.2未満であり、
各ターゲット材料からのパルス列当たりの堆積材料の量は2単分子層未満である方法。
[8] [7]に記載の方法であって、前記堆積材料は、金属合金、たとえばMoxNb1-xもしくはCrxV1-x、PtxRh1-x;半金属合金、たとえばSi1-xGex;金属窒化物、たとえばTixZr1-xNyもしくはVxNb1-xNy;金属酸化物、たとえばZrxY1-xOy;金属炭化物、たとえばTixZr1-xCy;アンチモン化物;リン化物;ホウ化物、またはこれらの組み合わせである方法。
[9] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は非混和性であり、
前記ターゲット材料は3次元成長を示し、それに従って前記第1のターゲット材料は前記第2のターゲット材料上に3次元成長を示し、前記第2の材料は前記第1のターゲット材料上に2次元成長を示し、
前記同相温度は0.1超、好ましくは0.2超、または0.3超であり、
パルス列当たりの前記第1のターゲット材料からの堆積材料の量は50単分子層未満、好ましくは20単分子層未満、または10単分子層未満である方法。
[10] [9]に記載の方法であって、前記堆積材料は、金属合金、たとえばCrxSc1-x、AgxCu1-xもしくはAgxMo1-x、半金属合金、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、アンチモン化物、リン化物、ホウ化物、またはこれらの組み合わせである方法。
[11] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は混和性であり、
前記ターゲット材料は3次元成長を示し、それに従って前記第1のターゲット材料は前記第2のターゲット材料上に3次元成長を示し、前記第2の材料は前記第1のターゲット材料上に2次元成長を示し、
前記同相温度は0.4未満、好ましくは0.3未満、または0.2未満であり、
パルス列当たりの各ターゲット材料からの堆積材料の量は50単分子層未満、好ましくは20単分子層未満、または10単分子層未満である方法。
[12] [11]に記載の方法であって、前記堆積材料は、金属合金、たとえばAgxPd1-x;半金属合金、金属窒化物、たとえばCrxHf1-xNy;金属酸化物、金属炭化物、たとえばMnxTa1-xCy;アンチモン化物、リン化物、ホウ化物、またはこれらの組み合わせである方法。
[13] [1]または[2]に記載の方法であって、
前記ターゲット材料は非混和性であり、
前記ターゲット材料は3次元成長を示し、それに従って前記第1のターゲット材料は前記第2のターゲット材料上に3次元成長を示し、前記第2の材料は前記第1のターゲット材料上に2次元成長を示し、
前記第2のターゲット材料または材料組成物の連続層が前記第1のターゲットの活性化前に前記基板上に形成され、
前記第1の材料の同相温度は0.1超、好ましくは0.2超、または0.3超であり、
前記第1のターゲットからのパルス列当たりの堆積材料の量は50単分子層未満、好ましくは20単分子層未満、または10単分子層未満であり、
前記第2のターゲットからのパルス列当たりの堆積材料の量は0.1単分子層超、好ましくは0.5単分子層超、または1単分子層超で、100単分子層未満、より好ましくは50単分子層未満、または10単分子層未満である方法。
[14] [13]に記載の方法であって、前記堆積材料は、金属窒化物−金属、たとえばAlN−Ag、AlN−Au、AlN−Pd、CrN−AgもしくはTiN−Ag;金属酸化物−金属、たとえばAl2O3−Ag、Al2O3−Au、Al2O3−Pd、TiO2−AgもしくはTiO2−Au;半金属酸化物−金属、たとえばSiO2−Ag、SiO2−AuもしくはSiO2−Pd;半金属窒化物−金属、たとえばSiNx−Ag、SiNx−AuもしくはSiNx−Pd;または非晶質炭素−金属、たとえばa−C−Ag、a−C−Au、a−C−Pd、a−C−Ni;または非晶質炭素金属−炭化物たとえばa−C−TiC;または金属窒化物−半金属窒化物たとえばTiN−SiNである方法。
[15] [1]〜[14]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1のターゲットの活性化は第1の数(N1)の活性化パルスからなる第1の活性化パルス列(T1)によってなされ、前記第2のターゲットの活性化は第2の数(N2)の活性化パルスからなる第2の活性化パルス列(T2)によってなされる方法。
[16] [15]に記載の方法であって、前記第1の数(N1)の活性化パルスは前記第2の数(N2)の活性化パルスと異なる方法。
[17] [15]または[16]に記載の方法であって、前記第1の数(N1)の活性化パルスは1〜約108パルス、好ましくは10〜約106パルス、20〜約105パルス、または20〜約104パルスであり、前記第2の数(N2)の活性化パルスは1〜約108パルス、好ましくは10〜約106パルス、20〜約105パルス、または20〜約104パルスである方法。
[18] [15]〜[17]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の数(N1)の活性化パルスおよび/または前記第2の数(N2)の活性化パルスは、1対の、互いに供給した後の、同じターゲットに印加した活性化パルス列(T1、T2)の間で異なる方法。
[19] [15]〜[18]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の活性化パルス列(T1)の一部を形成するパルスは約1Hz〜約20kHz、好ましくは約5Hz〜約10kHz、約10Hz〜約10kHz、約5Hz〜約5kHz、約10Hz〜約5kHz、約5Hz〜約2kHz、約10Hz〜約2kHz、または約10Hz〜約2kHz、約10Hz〜約2kHzの第1のパルシング周波数(f1)を与え、前記第2の活性化パルス列(T2)の一部を形成するパルスは約1Hz〜約20kHz、好ましくは約5Hz〜約10kHz、約10Hz〜約10kHz、約5Hz〜約5kHz、約10Hz〜約5kHz、約5Hz〜約2kHz、約10Hz〜約2kHz、または約10Hz〜約2kHz、約10Hz〜約2kHzの第2のパルシング周波数(f2)を与える方法。
[20] [19]に記載の方法であって、前記第1のパルシング周波数(f1)は前記第2のパルシング周波数(f2)と異なる方法。
[21] [19]または[20]に記載の方法であって、前記第1のパルシング周波数(f1)および/または前記第2のパルシング周波数(f2)は、1対の、互いに供給した後の、同じターゲットに印加した活性化パルス列(T1、T2)の間で異なる方法。
[22] [19]〜[21]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1のパルシング周波数(f1)は前記第1のパルス列(T1)中に変化し、および/または前記第2のパルシング周波数(f2)は前記第2のパルス列(T2)中に変化する方法。
[23] [15]〜[22]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の活性化パルス列(T1)の一部を形成する活性化パルスは約1ns〜約1ms、好ましくは約1ns〜約1ms、約10μs〜約500μs、約50μs〜約250μs、または約100μsの第1のパルス幅(τ1)を与え、前記第2の活性化パルス列(T2)の一部を形成するパルスは約1ns〜約1ms、好ましくは約1ns〜約1ms、約10μs〜約500μs、約50μs〜約250μs、または約100μsの第2のパルス幅(τ2)を与える方法。
[24] [23]に記載の方法であって、前記第1のパルス幅(τ1)は前記第2のパルス幅(τ2)と異なる方法。
[25] [23]または[24]に記載の方法であって、前記第1のパルス幅(τ1)および/または前記第2のパルス幅(τ2)は、1対の、互いに供給した後の、同じターゲットに印加した活性化パルス列(T1、T2)の間で異なる方法。
[26] [23]または[24]に記載の方法であって、前記第1のパルス幅(τ1)は前記第1のパルス列(T1)中に変化し、および/または前記第2のパルス幅(τ2)は前記第2のパルス列(T2)中に変化する方法。
[27] [15]〜[26]のいずれか1項に記載の方法であって、前記活性化パルスは、前記ターゲット上に堆積される原子の数で表して、約10-5〜約10単分子層、好ましくは約10-5〜約1単分子層、または約10-4〜約10-1単分子層である振幅(A1、A2)を示す方法。
[28] [1]〜[27]のいずれか1項に記載の方法であって、前記活性化パルスは約1Wcm-2〜約10kWcm-2の陰極電力密度を与える方法。
[29] [1]〜[28]のいずれか1項に記載の方法であって、一方のターゲットの活性化と他方のターゲット活性化との間の遅延がほぼゼロである方法。
[30] [1]〜[28]のいずれか1項に記載の方法であって、一方のターゲットの活性化と他方のターゲットの活性化との間の遅延は前記一方のターゲットの活性化時間の20%未満であり、好ましくは前記活性化時間の10%未満、5%未満または1%未満である方法。
[31] [1]〜[30]のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、
前記第1の材料または材料組成物と異なりかつ前記第2の材料または材料組成物と異なる第3の材料または材料組成物の第3のターゲットを用意し、
前記第3のターゲットを活性化させて、粒子のパルス化蒸着、または昇華またはスパッタリングを与え、
放出された粒子を前記基板に衝突させて前記基板をコーティングする
ことを含み、
前記第3のターゲットの活性化は一連の活性化パルスを供給することを含み、一方で前記第1および第2のターゲットの少なくとも1つは実質的に不活性である方法。
[32] [1]〜[31]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1および第2のターゲット、ならびにもしあるなら第3のターゲットの活性化は、それぞれのターゲットに電力を供給することを含む方法。
[33] [1]〜[32]のいずれか1項に記載の方法を含むマグネトロンスパッタリング法。
[34] [1]〜[32]のいずれか1項に記載の方法を含む陰極アーク堆積法。
[35] [1]〜[32]のいずれか1項に記載の方法を含むパルスレーザ堆積法。
[36] [1]〜[35]のいずれか1項に記載の方法によって生成された物質の組成物。
[37] [1]〜[35]のいずれか1項に記載の方法によって生成された、表面コーティングを有する生成物。
[38] 面内組成変調を調整する方法であって、[1]〜[32]のいずれか1項に記載の方法を含み、パルス列長、パルス当たりの堆積速度およびパルシング周波数の少なくとも1つを変化させて前記面内組成変調を調整し、一方でパルス当たりの堆積速度、パルシング周波数およびパルス幅を実質的に一定に維持する方法。