【実施例】
【0063】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0064】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
図1〜
図3Bはスパイクソールの実施例1を示す。
図7および
図8は同スパイクソールの製造方法の一例を示す。
【0065】
図1に示す本スパイクソールは、たとえば陸上競技のためのスパイクソールである。スパイクソールは非発泡体の樹脂成分を含む硬質のソール本体と、前記ソール本体に一体に成型された多数のスパイク(突起の一例)2とを備える。なお、ソール本体は第1ベース11および第2ベース12で形成されている。
【0066】
本スパイクソールは第1部1Aおよび第2部1Bを備える。
図1および
図8(c)に示すように、第1部1Aは第1ベース11および突起2を含み、例えば前足部を形成する。一方、第2部1Bは前記第1部1Aの周囲、接地側の表面および後足部を形成する。なお、第2部1Bは第1部1Aの接地側(
図8(c))および/または接足側(
図14(c))の表面にラミネートされていてもよい。
【0067】
図1の本例の前記第1部1Aおよび第2部1Bは、それぞれ、互いに異なる第1および第2の熱可塑性樹脂を主成分とする。前記第1部1Aは前記第1熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂中に
図3Aの第1および/または第2強化繊維F2,F1を強化材として含む。
なお、前記マトリクス樹脂には第1の熱可塑性樹脂以外の別の熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。
【0068】
図2に示すように、前記第1部1Aは第1ベース11および突起2を有する。前記突起2は第1ベース11から路面に向かって下方(
図2では上方)に突出する。前記突起2は第1ベース11の表面から継目なく一体に連なっている。
【0069】
図3Aおよび
図3Bに示すように、第2強化繊維F1は前記第1ベース11に埋設されている。一方、前記第1強化繊維F2は第1ベース11から突起2に向かって屈曲して配向されている。
【0070】
図3Bの前記第1ベース11の少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pを含む第1ベース11には、前記第1強化繊維F2を含む4層〜50層の多層の強化繊維F1,F2の層が埋設されている。
図3Aの前記多層の強化繊維F1,F2の層は前記対応部位11pを含む第1ベース11において、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向D1〜D4に配向されている。
【0071】
なお、
図3Aおよび
図3Bでは各層の強化繊維の層について1本の第1強化繊維F2または第2強化繊維F1を示している。また、作図の便宜上、多数の強化繊維F1,F2のうち5本の第2強化繊維F1および4本の第1強化繊維F2のみを示している。
【0072】
図3Aの前記第1および第2強化繊維F2,F1の長さLは、例えば20〜30mm程度に設定されてもよい。かかる繊維長の第1および第2強化繊維F2,F1は、後に詳述するように、例えば
図4の多数の樹脂ピース41を重ね集めた
図5の樹脂プレート4から得ることができる。
【0073】
図3Aの20〜30mm程度の第1強化繊維F2の長さLは、一般に
図3Bの突起2の高さHよりも大きいだろう。この突起2の高さHとはソール本体5の表面からの突出量を意味する。
【0074】
前記突起2は
図2および
図6(a)〜(c)の筒状、
図6(d)、(e)、(f)のブレード状、板状または星状のスパイクまたはクリートであってもよい。
【0075】
図3Bにおいて、突起2の平均厚さは、好ましくは、0.35〜20mm程度に設定されてもよい。この平均厚さは、突起2の先端部分の厚さT1と付け根部分の厚さT2との平均値で求められてもよい。前記突起2の厚さは付け根部分から先端部分に向かって先細りの形状であってもよい。なお、
図2および
図6(a)〜(c)の筒状の場合、突起2の厚さは、例えば筒状部分の壁厚を意味する。
【0076】
図1に示すように、前記構造の第1部1Aには第2部1Bが一体に成型されていてもよい。すなわち、
図3Bの前記突起2に対応する対応部位11pを除く
図1の非対応部位12pには、
図1の前記第2ベース12が配置されている。前記第2ベース12は前記第1ベース11に連なっている。前記第1ベース11および第2ベース12は、足裏を覆うと共に支える。
【0077】
つぎに、
図1のスパイクソールの製造方法の説明に先立って製造に用いる樹脂プレート4について説明される。
【0078】
図5の樹脂プレート4は
図4の多数の樹脂ピース41がランダムに重ね集められたものである。すなわち、各樹脂ピース41は複数本の単層の強化繊維Fが配向された樹脂片であり、この樹脂ピース41をランダムに重ね集めて例えば方形のプレート状に一次成型したものが
図5の樹脂プレート4である。
【0079】
図4の前記強化繊維Fは、ソールの成型後、その大半が
図3Aの第2強化繊維F1となり、一部が第1強化繊維F2となる。
【0080】
すなわち、樹脂プレート4(
図5)は、前記第1または第2強化繊維F2,F1となる
図4の複数層の強化繊維Fの積層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とする。また、樹脂プレート4(
図5)は前記積層構造として互いに配向方向Dが異なる少なくとも4層の強化繊維Fの積層構造を有する。
また、前記樹脂プレート4(
図5)は、所定の平面形状を有し、部位によって互いに異なる前記強化繊維Fの積層構造を有する。
なお、樹脂プレート4(
図5)の形状は
図1の第1部1Aの形状に近似した形状などであってもよい。
【0081】
図5において、前記樹脂プレート4の厚さTは0.5〜10mmであってもよい。また、前記樹脂プレート4の強化繊維F(
図4)の層数は4層〜50層であってもよい。また、前記樹脂プレート4の
図4の前記強化繊維Fの長さLは前記樹脂プレート4(
図5)の一辺よりも短く、例えば、5〜60mmであってもよい。
【0082】
つぎに、本例において用いられる金型の一例が説明される。
本例の場合、金型としては、
図7および
図8の第1〜第4金型31〜34が用いられる。
【0083】
図7の第1および第2金型31,32は第1部1Aを成型するためのものである。前記第1および第2金型31,32は、前記第1ベース11および前記突起2に適合するキャビティ30を規定する。なお、前記第1および第2金型31,32は、キャビティ30に対応した凸面を有していてもよい。
【0084】
図8の第3および第4金型33,34は第2部1Bを第1部1Aに一体に成型するためのものである。前記第3および第4金型33,34は前記第2ベース12に適合するキャビティ36および前記第1部1Aの装着部37を有する。
【0085】
図7の第1部1Aを成型する方法としては、加圧力が大きく突起2の先端までマトリクス樹脂が入り込み易いという観点から、例えば圧縮成型法が好ましいだろう。しかし、真空成型法や圧空成型法や真空圧空成型法が採用されてもよい。
【0086】
一方、
図8の第2部1Bを第1部1Aに一体に成型する方法としては、例えば射出成型法が採用されてもよい。
【0087】
つぎに、製造方法の一例が説明される。
まず、第1部1Aの製造方法が説明される。
【0088】
図7(a)において、前記第1および第2金型31,32は所定の温度に予熱ないし加熱されている。前記第1および第2金型31,32のいずれか一方に、例えば下金型の上に、樹脂プレート4が載置される。
【0089】
前記載置後、前記金型および樹脂プレート4が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第1および第2金型31,32を加熱する。前記金型の温度が前記所定温度まで昇温した後に、所定時間たとえば1秒〜30分程度、金型の加熱を続ける。
【0090】
これにより、樹脂プレート4の成形が可能な流動性のある状態まで、樹脂プレート4が軟化ないし融解される。
【0091】
その後、
図7(b)に示すように、第1金型31および第2金型32が互いに合わさるように、第1金型31と第2金型32とが型締めされる。前記融解した状態の樹脂プレート4は融解樹脂4Mとなって、前記型締めにより、キャビティ30に隈なく広がり、前記第1ベース11や突起2の対応部分に入り(流れ)込む。
【0092】
なお、前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
【0093】
その後、前記型締めした状態で、前記金型31,32が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記融解樹脂4Mが冷却され固化して、前記第1部1Aが生成される。
【0094】
前記冷却後、
図7(b)の型締めされた第1および第2金型31,32が
図7(c)のように型開きされる。この型開き後、金型内から第1部1Aを取り出し、周知のように、必要に応じてバリなどが除去される。
【0095】
つぎに、
図8の前記第2ベース12を含む第2部1Bの製造方法が説明される。
【0096】
まず、
図8(a)のように、第3または第4金型33,34の一方の装着部37に前記第1部1Aが装着される。
【0097】
ついで、
図8(b)のように、第3および第4金型33,34が互いに型締めされる。型締め後、第3および第4金型33,34のキャビティ36内に融解樹脂6Mが供給される。
【0098】
この融解樹脂6Mが固化した後、
図8(c)のように、第3および第4金型33,34が型開きされる。その後、成型品を取り出し、仕上げることで、たとえば
図1のスパイクソールが得られる。
【0099】
なお、ソールの任意の一部だけでなく全長にわたって、第1部1Aが設けられてもよい。また、第2部1Bは設けられなくてもよい。また、第1部1Aおよび第2部1Bに加えて第3部が設けられてもよい。
【0100】
つぎに、製造方法の別の例が説明される。
本例の場合、金型としては、
図13および
図14の第1〜第4金型31〜34が用いられる。
まず、第1部1Aの製造方法が説明される。
【0101】
図13(a)において、前記第1および第2金型31,32は所定の温度に予熱ないし加熱されている。前記第1および第2金型31,32のいずれか一方に、例えば下金型の上に、樹脂プレート4が載置される。
【0102】
前記載置後、前記金型および樹脂プレート4が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第1および第2金型31,32を加熱する。前記金型の温度が前記所定温度まで昇温した後に、所定時間たとえば1秒〜30分程度、金型の加熱を続ける。
【0103】
これにより、樹脂プレート4の成形が可能な流動性のある状態まで、樹脂プレート4が軟化ないし融解される。
【0104】
その後、
図13(b)に示すように、第1金型31および第2金型32が互いに接近ないし合わさるように、第1金型31と第2金型32とが型締めされる。前記軟化ないし融解した状態の樹脂プレート4は融解樹脂4Mとなって、前記型締めにより、両金型31,32の間の空間300で押し潰され、一部が両金型31,32に沿って前記第1ベース11として広がり、他部が突起2の対応部分に入り(流れ)込む。
なお、たとえば第2金型32の両側に型締め時に第1金型31と接する凸部が設けられていてもよい。
【0105】
前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
【0106】
その後、前記型締めした状態で、前記金型31,32が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記融解樹脂4Mが冷却され固化して、前記第1部1Aが生成される。
【0107】
前記冷却後、
図7(b)の型締めされた第1および第2金型31,32が型開きされる。この型開き後、金型内から
図13(c)の第1部1Aを取り出し、周知のように、必要に応じてバリなどが除去される。
【0108】
つぎに、
図14の前記第2ベース12を含む第2部1Bの製造方法が説明される。
【0109】
まず、
図14(a)および
図14(b)のように、第3または第4金型33,34の一方の装着部(キャビティ)37に前記第1部1Aが装着される。
ついで、前記第3金型33と第4金型34との間のキャビティ36に別の樹脂プレート49または前記樹脂プレート4が配置される。前記別の樹脂プレート49は前記樹脂プレート4と同種または異種の熱可塑性樹脂であってもよく、前記第2強化繊維が埋設されていてもよい。
【0110】
その後、
図14(b)のように、第3および第4金型33,34が互いに型締めされる。前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
この型締め前ないし型締め後、前記金型および樹脂プレート4,49が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第3および第4金型33,34を加熱する。これにより、第3および第4金型33,34のキャビティ36内において前記樹脂プレート4,49が軟化ないし融解されて継ぎ目なく一連に連なる。
【0111】
その後、前記型締めした状態で、前記金型33,34が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記樹脂プレート4,49が冷却され固化して、前記第2部1Bが生成される。
前記樹脂プレートが固化した後、
図14(b)の第3および第4金型33,34が型開きされる。その後、
図14(c)の成型品を取り出し、仕上げることで、たとえば
図1のスパイクソールが得られる。
【0112】
なお、ソールの任意の一部だけでなく全長にわたって、第1部1Aが設けられてもよい。また、第2部1Bは設けられなくてもよい。また、第1部1Aおよび第2部1Bに加えて第3部が設けられてもよい。
【0113】
つぎに、付加的な製造方法の一例が
図9を用いて説明される。
図9の例は前記樹脂プレート4,49に加えて、前記樹脂ピース41を単体の状態で用いる。樹脂ピース41は前記強化繊維Fを含む第1の熱可塑性樹脂で形成されている。
【0114】
図9(a)のように、前記キャビティ30(
図7)または前記空間300(
図13)における前記突起に対応する凹所35に強化繊維Fを含む熱可塑性の樹脂ピース41を投入する第1投入工程が実行される。この際、強化繊維Fの一部が凹所35内に入り込み、かつ、強化繊維Fの残部が凹所35から突出するように、樹脂ピース41を凹所35内に投入する。
【0115】
一方、第1投入工程の前後において、前記樹脂ピース41を加熱する加熱工程を実行する。この加熱により、
図9(b)のように、樹脂ピース41は軟化し、成型可能となる。
【0116】
第1投入工程および加熱工程後に、
図7(a)の前記キャビティ30または
図13の前記空間における前記第1ベース11に対応する部位に、
図9(c)の前記樹脂プレート4を投入する第2投入工程が実行される。
【0117】
前記第2投入工程後に、前述の
図7(a)〜(c)の工程または
図13(a)〜(c)の工程が実行されて第1部1Aが生成される。
【0118】
つぎに、本スパイクソールの試験例が説明される。
【0119】
前述の
図7の方法に近似した方法により、
図2(a)〜(c)のように、第1ベース11に突起2が一体の第1〜第3サンプルS1〜S3を得た。ついで、これらのサンプルを縦断面に沿って切断し、切断面のデジタル写真を撮像し、
図10〜
図12のような断面写真を得た。
【0120】
これらの図において、11Fは第1ベース11の表面、2Fは突起2の側面、2Tは突起2の先端面である。
【0121】
図10〜
図12において、突起2内に第1の熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂が入り込む成型が可能であることが分かる。また、強化繊維の一部である第1強化繊維F2が第1ベース11から突起2に向かって屈曲して配向されていることが分かる。
【0122】
ここで、突起2の厚さが
図12の0.2mmの場合や、
図11の0.3mmの場合に比べ、
図10の0.4mmの場合(第1サンプル)の方が、第1強化繊維F2の配向状態において優れていることが分かる。したがって、突起2の厚さは0.35mm以上が好ましいだろう
【0123】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、スパイク(突起)が前足部に加え後足部に設けられていてもよい。
また、スパイクではなく、小さな突起やクリートが設けられてもよい。
したがって、そのような変更および修正は請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。