特許第6297764号(P6297764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6297764
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】靴のソールおよびソールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/26 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   A43B13/26 A
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-554536(P2017-554536)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2016088491
【審査請求日】2017年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102060
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 喜信
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】日比野 茂
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 雄大郎
【審査官】 一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/127556(WO,A1)
【文献】 特開2001−87005(JP,A)
【文献】 特開2000−102402(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/163393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/26
A43B 5/00
A43C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴のソールであって、
第1の熱可塑性樹脂を主成分とする第1ベース11と、
前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とし、前記第1ベース11から突出する突起2と、
前記第1ベース11から前記突起2に向かって屈曲して配向された少なくとも1つの第1強化繊維F2とを備える、靴のソール。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ベース11に埋設された少なくとも1つの第2強化繊維F1を更に備える靴のソール。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、
前記第1ベース11における少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pには前記第1強化繊維F2を含む少なくとも4層の強化繊維の層が埋設され、
前記4層の強化繊維の層は少なくとも前記対応部位11pにおいて、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向に配向されている靴のソール。
【請求項4】
請求項1もしくは2において、
前記第1ベース11の少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pには前記第1強化繊維F2を含む4層〜50層の多層の強化繊維の層が埋設され、
前記多層の強化繊維の層は少なくとも前記対応部位11pにおいて、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向に配向されている、靴のソール。
【請求項5】
請求項1、2、3もしくは4において、
前記第1熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂を主成分とする、あるいは、前記第1熱可塑性樹脂を主成分とする第2ベース12を更に備え、
前記突起2に対応する対応部位11pを除く非対応部位12pに、少なくとも前記第2ベース12が配置されていると共に前記第1ベース11に連なっている、靴のソール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記突起2の高さHよりも前記第1強化繊維F2の長さLが大きい、靴のソール。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1強化繊維F2の長さLが5〜60mmである、靴のソール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記突起2の平均厚さが0.35mm〜20mmである、靴のソール。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記突起2は筒状、板状、星状、またはブレード状のスパイクまたはクリートである、靴のソール。
【請求項10】
請求項2の靴のソールを製造する方法であって、
前記第1ベース11および前記突起2に適合するキャビティ30または空間300を規定する第1および第2金型31,32を用い、
前記第1強化繊維F2および/または第2強化繊維F1となる複数層の強化繊維の積層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とする少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する工程と、
前記第1または第2金型31,32の一方に前記少なくとも1種の樹脂プレート4を載置する工程と、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4を加熱する工程と、
前記第1金型31と第2金型32とを型締めする工程と、
型締めされた第1金型および第2金型31,32を型開きする型開き工程と、を備えるソールの製造方法。
【請求項11】
請求項10において、前記用意する工程において、
前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とし、前記積層構造として互いに配向方向が異なる少なくとも4層の強化繊維の積層構造を有する前記少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項12】
請求項11において、前記用意する工程において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4として、所定の平面形状を有し、部位によって互いに異なる前記強化繊維の積層構造を有する樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項において、前記用意する工程において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4として、厚さTが0.5〜10mmの樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項において、前記用意する工程において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4の強化繊維の層数が4層〜50層の前記樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項において、前記用意する工程において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4の前記強化繊維の長さLが前記樹脂プレート4の一辺よりも短い樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する工程において、前記樹脂プレート4の強化繊維の長さLが5〜60mmの前記樹脂プレート4を用意する、ソールの製造方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1項において、
前記第1の熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂を主成分とする第2ベース12、あるいは、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とする第2ベース12を成型する工程を更に備える、ソールの製造方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項において、
前記キャビティ30または前記空間300における前記突起2に対応する凹所35に強化繊維Fを含む熱可塑性の樹脂ピース41を投入する第1投入工程と、
第1投入工程後に、前記キャビティ30または前記空間300における前記第1ベース11に対応する部位に前記少なくとも1種の樹脂プレート4を投入する第2投入工程とを備える、ソールの製造方法。
【請求項19】
請求項18において、第1投入工程の前後で第2投入工程前に前記樹脂ピース41を加熱する工程を更に備える、ソールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパイクやクリート等の突起を有する靴のソールおよびソールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリクス樹脂で被覆された強化繊維、例えば、プリプレグの層でソールを形成することにより、ソールの剛性が高まると共に、ソールの軽量化が図られる。かかるスパイクソールの軽量化は陸上スパイクの他にフットボール競技等において重要である。
【0003】
スパイクピンを有するソールにおいて前記強化繊維のシートの層でソールを形成することは周知である(特許文献1〜3)。また、近年、ハニカム状のスパイクを備えたソールが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2000−102402A(要約)
【特許文献2】JP2002−125709A(要約)
【特許文献3】WO2012/127556A1(図2
【特許文献4】WO2016/163393A1(図1
【発明の概要】
【0005】
しかし、前記先行文献の各スパイクは金属製である。かかる金属製のスパイクは樹脂製のソールに接着する必要がある。また、金属製のスパイクがソールから剥れるおそれもある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、スパイクやクリートなどの突起をソールに接着する必要がなく、また、スパイクやクリートなどの突起がソールから剥れにくい靴のソールおよびソールの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の靴のソールは、第1の熱可塑性樹脂を主成分とする第1ベース11と、
前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とし、前記第1ベース11から突出する突起2と、
前記第1ベース11から前記突起2に向かって屈曲して配向された少なくとも1つの第1強化繊維F2とを備える。
【0008】
本発明によれば、第1ベースから突出する突起は第1ベースと同じ第1の熱可塑性樹脂を主成分としている。スパイクやクリートなどの突起をソールに接着する必要がなくなると共に、前記突起がソールから剥れにくくなるだろう。
【0009】
特に、第1強化繊維は第1ベースから突起に向かって屈曲して配向されており、そのため、突起の付け根の部位を強化する。この付け根の部位には走行時に大きなモーメントが発生するのであるが、前記第1強化繊維は前記モーメントに対する大きな抗力として作用するであろう。したがって、前記突起の付け根の部位の強度が向上するであろう。
【0010】
本発明において、突起とは、スパイクやクリートの他に、トゲのような小突起も含まれる。
【0011】
ここで、“主成分とする”とは、少なくとも、熱可塑性の樹脂成分が他の樹脂成分よりも多量である(重量が大きい)ことを意味する。前記主成分である前記熱可塑性の樹脂成分の重量比は第1ベースおよび突起を構成する樹脂成分全体の50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。
【0012】
また、接地側の前記第1ベースおよび突起または接足側の前記第1ベースが第2の樹脂でラミネートされている場合、当該第2の樹脂を除いて、前記主成分であるか否かを判断しなければならない。
【0013】
前記第1の熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、熱可塑性のポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂などを用いることができる。また、樹脂成分は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
【0014】
本発明において、強化繊維としては、例えばカーボン繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などを採用してもよい。強化繊維は1種又は2種以上が採用されてもよい。
【0015】
第1強化繊維と第2強化繊維とは、互いに同じ種類の強化繊維であってもよいし、互いに異なる種類の強化繊維であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明が適用される靴のソールの一実施例を示す底面図である。
図2図2は突起の例を示す部分的な斜視図である。
図3図3Aは第1ベース、突起、第1および第2強化繊維を示すソールを拡大断面した模式的な斜視図、図3Bは同模式的な断面図である。第1および第2強化繊維は層状に配置されているが、図示の便宜上、並びに、発明の理解を容易にするために、各層のうちの1本のみを図示している。
【0017】
図4図4は樹脂プレートの一部を分解して示す概念的な分解斜視図である。
図5図5は樹脂プレートの一例を示す斜視図である。 図4および図5において、複数の各樹脂ピースは樹脂プレートに成型された状態では折り重なるように屈曲しているが、作図の便宜上、平板状に図示されている。
【0018】
図6図6は突起の形状の例を示しており、(a)(b)および(c)は、それぞれ、他の例を示す拡大斜視図、平面図および断面図、(d)〜(f)は更に他の例を示す拡大斜視図である。
図7図7は製造方法の一実施例にかかり、第1部を生成する工程を示す断面図である。
図8図8は第2部を生成する工程を示す断面図である。図7および図8において、第1および第2の熱可塑性樹脂の部分を見易くするために、これらの部位はグレーで示されている。
【0019】
図9図9は他の製造方法の追加の工程を示す断面図である。
図10図10は本発明の第1ベースおよび突起の構造のテストサンプル1をデジタル写真で示す拡大断面図である。
図11図11は本発明の第1ベースおよび突起の構造のテストサンプル2をデジタル写真で示す拡大断面図である。
図12図12は本発明の第1ベースおよび突起の構造のテストサンプル3をデジタル写真で示す拡大断面図である。図10図11および図12において、突起の平均的な厚さは、それぞれ、0.4mm,0.3mmおよび0.2mmである。
図13図13は製造方法の別の実施例にかかり、第1部を生成する工程を示す概略断面図である。
図14図14は第2部を生成する工程を示す概略断面図である。図13および図14において、第1および第2の熱可塑性樹脂の部分を見易くするために、これらの部位はグレーで示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましくは、前記第1ベース11に埋設された少なくとも1つの第2強化繊維F1を更に備えている。
これにより、第1ベースを更に強化することができる。
【0021】
好ましくは、前記第1ベース11における少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pには前記第1強化繊維F2を含む少なくとも4層の強化繊維の層が埋設され、
前記4層の強化繊維の層は少なくとも前記対応部位11pにおいて、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向に配向されている。
より好ましくは、前記第1ベース11の少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pには前記第1強化繊維F2を含む4層〜50層の多層の強化繊維の層が埋設され、
前記多層の強化繊維の層は少なくとも前記対応部位11pにおいて、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向に配向されている。
【0022】
これらの場合、互いに異なる4つの方向に配向された4層の強化繊維の層は、第1ベースの前記対応部位11pを強化する。そのため、大きな曲げモーメントが作用する、突起の付け根の強度が更に高まるであろう。
【0023】
ここで、各ソールの種別ごとに、突起の形状や突起の配置は、様々である。これに対し、前記対応部位11pに配置された4層の強化繊維の層が互いに異なる4つの方向に配向されている場合、前記様々な突起の形状や配置であっても、前記付け根を強化できる信頼性が高いであろう。
【0024】
前記強化繊維の層が1つ〜3つの方向にのみ配向されている場合、突起に対して作用する種々の方向の曲げモーメントに対し、十分な抗力として作用し得ないかもしれない。また、第1ベースに作用する曲げモーメントや捩りモーメントに対し、十分な抗力を発揮できないかもしれない。
【0025】
これに対し、前記4層の強化繊維の層が互いに異なる4つの方向に配向されていることで、前記各モーメントに対する抗力を発揮し易いだろう。なお、前記4層の強化繊維の層が互いに異なる4つの方向に配向されていることで、擬似等方性を発揮し易い。一方、1〜3層の強化繊維の層が1つ〜3つの方向に配向されていることでは、擬似等方性を発揮することが困難である。
【0026】
一方、前記強化繊維の層の数が多すぎると、第1ベースが不必要に厚くなるだろう。その場合、ソールに必要な柔軟性や軽量性が損なわれるかもしれない。かかる観点から、多層の強化繊維の層の数は50層以下であるのが好ましい。
【0027】
ここで、“対応部位”とは、少なくとも、ソールの表面の法線方向に突起を投影した投影部分を含む意味である。また、“対応部位”とは、少なくとも、第1ベース11における突起2の根元部分を含む意味であるとも言える。
【0028】
好ましくは、前記第1熱可塑性樹脂とは異なる第2の熱可塑性樹脂を主成分とする、あるいは、前記第1熱可塑性樹脂を主成分とする第2ベース12を更に備え、
前記突起2に対応する対応部位11pを除く非対応部位12pに、少なくとも前記第2ベース12が配置されていると共に前記第1ベース11に連なっている。
【0029】
ソールには部位に応じた剛性や柔軟性が求められる。これに対し、非対応部位に第2の熱可塑性樹脂を主成分とする第2ベースが設けられていることにより、部位に応じたソールの剛性や柔軟性を得易いだろう。
【0030】
ここで、第2の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタンやポリアミドなどを採用することができる。
【0031】
前記第2ベースを形成する第2の熱可塑性樹脂は、非対応部位以外に設けられていてもよく、例えば、第1ベースの対応部位および突起の接地側にラミネートされていてもよい。この場合、接地面の耐摩耗性が向上するかもしれない。また、第1ベースの接足側が第2ベースにラミネートされていても良い。この場合、ソールの強度が向上するだろう。
【0032】
好ましくは、前記突起2の高さHよりも前記第1強化繊維F2の長さLが大きい。
【0033】
この場合、第1強化繊維F2を突起2の付け根から先端まで配置することができ、突起自体も強化し易いだろう。
【0034】
好ましくは、前記第1強化繊維F2の長さLは5〜60mmである。
【0035】
第1強化繊維F2の長さが60mmを超えると、マトリクス樹脂が軟化しても、成型時の第1強化繊維F2の流動性が小さく、そのため、第1強化繊維F2が突起に向かって入り込みにくいかもしれない。
【0036】
一方、第1強化繊維F2の長さが5mmよりも短いと、第1強化繊維F2が第1ベースから付け根を通って先端まで配置されない場合が生じ易い。この場合、突起の曲げ剛性を十分に高めることができないかもしれない。
【0037】
スパイクやクリートの高さは、一般に、2,3mmないし十数mmである場合が多い。以上の観点から第1強化繊維F2の長さは10〜50mm程度が更に好ましく、15〜40mm程度が最も好ましいだろう。
【0038】
一方、第1強化繊維F2および第2強化繊維F1の太さ(直径)は、特に限定されないが、3〜20μm程度が好ましく、4〜15μm程度が更に好ましく、5〜10μm程度が最も好ましいだろう。
【0039】
好ましくは、前記突起2の平均厚さは0.35mm〜20mmである。
【0040】
突起の平均厚さが0.35mmよりも小さい場合、第1強化繊維F2が突起内に入り込みにくく、十分な強度アップが期待しにくい。一方、突起の平均厚さが20mmよりも大きい場合、第1強化繊維F2による強化をしなくても、突起は十分な強度を有している場合が多いだろう。
【0041】
本発明の製造方法は、前記第1ベース11および前記突起2に適合するキャビティ30または空間300を規定する第1および第2金型31,32を用い、
前記第1強化繊維F2および/または第2強化繊維F1となる複数層の強化繊維の積層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とする少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する工程と、
前記第1または第2金型31,32の一方に前記樹脂プレート4を載置する工程と、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4を加熱する工程と、
前記第1金型31と第2金型32とを型締めする工程と、
型締めされた第1金型および第2金型31,32を型開きする型開き工程とを備える。
ここで、前記少なくとも1種の樹脂プレート4を加熱する工程は、たとえば下記(1)〜(3)のうちいずれか1つの手法で実施することができる。
(1)前記第1または第2金型31,32の一方に当該樹脂プレート4を載置した後、少なくとも前記一方の金型を通じて加熱する手法
(2)前記第1または第2金型31,32の一方に当該樹脂プレート4を載置した後、当該樹脂プレート4をヒータや熱風等で加熱する手法、あるいは、当該樹脂プレート4をヒータや熱風等で加熱した後、当該樹脂プレート4を前記第1または第2金型31,32の一方に載置する手法
(3)上記(1)および(2)の両方を合わせた手法
【0042】
本方法において、一方の金型、両金型および/またはヒータ等により樹脂プレートが加熱され、かつ、両金型により同樹脂プレートが加圧され、これらによって軟化し、流動性が生じると、樹脂プレートはキャビティの形状に沿って変形し、キャビティ内を埋める。または、両金型の間の空間において樹脂プレートは押し潰されて金型の形状に沿って変形する。この際、前記樹脂プレートの第1の熱可塑性樹脂が突起に対応するキャビティまたは空間の凹所に流れ込むと共に、一部の強化繊維の層が当該凹所に入り込む。そのため、強化繊維の層が第1ベースから突起に向かって屈曲して配向されるだろう。
【0043】
好ましくは、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とし、前記積層構造として互いに配向方向が異なる少なくとも4層の強化繊維の積層構造を有する前記少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する。
【0044】
この場合、互いに配向方向が異なる4層の強化繊維の層は第1ベースに埋設されるだろう。
【0045】
前記少なくとも1種の樹脂プレート4として、所定の平面形状を有し、部位によって互いに異なる前記強化繊維の積層構造を有する樹脂プレート4を用意する。なお、樹脂プレート4としては、プリフォームを用いることが好ましい。ここで、プリフォームとは、金型形状を精度良くつくるために予め形付けられたものをいう。
【0046】
かかる樹脂プレートにおいて、強化繊維の積層構造が部位によって互いに異なるため、溶融したマトリクス樹脂内で強化繊維に作用する流れの抗力が小さいだろう。
【0047】
好ましくは、前記用意する工程において、前記樹脂プレート4として、厚さTが0.5〜10mmの樹脂プレート4を用意する。
【0048】
樹脂プレートの厚さが0.5mmよりも小さいと、マトリクス樹脂がキャビティの全域に流れにくく、特に、前記突起に対応する凹所にマトリクス樹脂および強化繊維が流れ込みにくくなるだろう。
【0049】
一方、樹脂プレート4の厚さが10mmよりも大きいと、ソールの厚さが厚くなりすぎるだろう。
【0050】
かかる観点から樹脂プレート4の厚さは、0.6〜7.0mmがより好ましく、1.0〜5.0mmが最も好ましい。
【0051】
好ましくは、前記用意する工程において、前記少なくとも1種の樹脂プレート4の強化繊維の層数が4層〜50層の前記樹脂プレート4を用意する。
【0052】
この場合、多層構造の第1ベースが得易いだろう。
【0053】
好ましくは、前記用意する工程において、
前記少なくとも1種の樹脂プレート4の前記強化繊維の長さLが前記樹脂プレート4の一辺よりも短い樹脂プレート4を用意する。
【0054】
この場合、強化繊維の長さが樹脂プレート4の一辺よりも短く、そのため、強化繊維の流動性が妨げられにくいだろう。したがって、突起に対応する部位に強化繊維が流れ込み易いだろう。
【0055】
好ましくは、前記少なくとも1種の樹脂プレート4を用意する工程において、前記樹脂プレート4の強化繊維の長さLが5〜60mmの前記樹脂プレート4を用意する。
この場合、強化繊維の長さが短く、前記強化繊維の流れが更に良好となる。
【0056】
好ましくは、前記第1もしくは第2の熱可塑性樹脂を主成分とする前記第2ベース12を成型する工程を更に備える。
【0057】
この場合、ソールの部位に応じて樹脂や強化繊維を選択的に配置できる。
【0058】
好ましくは、前記キャビティ30または空間300における前記突起2に対応する凹所35に強化繊維Fを含む熱可塑性の樹脂ピース41を投入する第1投入工程と、
第1投入工程後に、前記キャビティ30または空間300における前記第1ベース11に対応する部位に前記少なくとも1種の樹脂プレート4を投入する第2投入工程とを備える。
【0059】
この場合、樹脂プレートとは別の樹脂ピースを前記凹所に投入する。そのため、突起に強化繊維が入り込んだ状態を得易い。
【0060】
好ましくは、第1投入工程の前後で第2投入工程前に前記樹脂ピース41を加熱する工程を更に備える。
【0061】
この場合、凹所の深さよりも長い樹脂ピース41を用いることができ、第2強化繊維の得られる確実性が著しく高まるだろう。
【0062】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0063】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0064】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
図1図3Bはスパイクソールの実施例1を示す。図7および図8は同スパイクソールの製造方法の一例を示す。
【0065】
図1に示す本スパイクソールは、たとえば陸上競技のためのスパイクソールである。スパイクソールは非発泡体の樹脂成分を含む硬質のソール本体と、前記ソール本体に一体に成型された多数のスパイク(突起の一例)2とを備える。なお、ソール本体は第1ベース11および第2ベース12で形成されている。
【0066】
本スパイクソールは第1部1Aおよび第2部1Bを備える。
図1および図8(c)に示すように、第1部1Aは第1ベース11および突起2を含み、例えば前足部を形成する。一方、第2部1Bは前記第1部1Aの周囲、接地側の表面および後足部を形成する。なお、第2部1Bは第1部1Aの接地側(図8(c))および/または接足側(図14(c))の表面にラミネートされていてもよい。
【0067】
図1の本例の前記第1部1Aおよび第2部1Bは、それぞれ、互いに異なる第1および第2の熱可塑性樹脂を主成分とする。前記第1部1Aは前記第1熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂中に図3Aの第1および/または第2強化繊維F2,F1を強化材として含む。
なお、前記マトリクス樹脂には第1の熱可塑性樹脂以外の別の熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。
【0068】
図2に示すように、前記第1部1Aは第1ベース11および突起2を有する。前記突起2は第1ベース11から路面に向かって下方(図2では上方)に突出する。前記突起2は第1ベース11の表面から継目なく一体に連なっている。
【0069】
図3Aおよび図3Bに示すように、第2強化繊維F1は前記第1ベース11に埋設されている。一方、前記第1強化繊維F2は第1ベース11から突起2に向かって屈曲して配向されている。
【0070】
図3Bの前記第1ベース11の少なくとも前記突起2に対応する対応部位11pを含む第1ベース11には、前記第1強化繊維F2を含む4層〜50層の多層の強化繊維F1,F2の層が埋設されている。図3Aの前記多層の強化繊維F1,F2の層は前記対応部位11pを含む第1ベース11において、前記第1ベース11が延びる方向に沿って延び、かつ、互いに異なる少なくとも4つの方向D1〜D4に配向されている。
【0071】
なお、図3Aおよび図3Bでは各層の強化繊維の層について1本の第1強化繊維F2または第2強化繊維F1を示している。また、作図の便宜上、多数の強化繊維F1,F2のうち5本の第2強化繊維F1および4本の第1強化繊維F2のみを示している。
【0072】
図3Aの前記第1および第2強化繊維F2,F1の長さLは、例えば20〜30mm程度に設定されてもよい。かかる繊維長の第1および第2強化繊維F2,F1は、後に詳述するように、例えば図4の多数の樹脂ピース41を重ね集めた図5の樹脂プレート4から得ることができる。
【0073】
図3Aの20〜30mm程度の第1強化繊維F2の長さLは、一般に図3Bの突起2の高さHよりも大きいだろう。この突起2の高さHとはソール本体5の表面からの突出量を意味する。
【0074】
前記突起2は図2および図6(a)〜(c)の筒状、図6(d)、(e)、(f)のブレード状、板状または星状のスパイクまたはクリートであってもよい。
【0075】
図3Bにおいて、突起2の平均厚さは、好ましくは、0.35〜20mm程度に設定されてもよい。この平均厚さは、突起2の先端部分の厚さT1と付け根部分の厚さT2との平均値で求められてもよい。前記突起2の厚さは付け根部分から先端部分に向かって先細りの形状であってもよい。なお、図2および図6(a)〜(c)の筒状の場合、突起2の厚さは、例えば筒状部分の壁厚を意味する。
【0076】
図1に示すように、前記構造の第1部1Aには第2部1Bが一体に成型されていてもよい。すなわち、図3Bの前記突起2に対応する対応部位11pを除く図1の非対応部位12pには、図1の前記第2ベース12が配置されている。前記第2ベース12は前記第1ベース11に連なっている。前記第1ベース11および第2ベース12は、足裏を覆うと共に支える。
【0077】
つぎに、図1のスパイクソールの製造方法の説明に先立って製造に用いる樹脂プレート4について説明される。
【0078】
図5の樹脂プレート4は図4の多数の樹脂ピース41がランダムに重ね集められたものである。すなわち、各樹脂ピース41は複数本の単層の強化繊維Fが配向された樹脂片であり、この樹脂ピース41をランダムに重ね集めて例えば方形のプレート状に一次成型したものが図5の樹脂プレート4である。
【0079】
図4の前記強化繊維Fは、ソールの成型後、その大半が図3Aの第2強化繊維F1となり、一部が第1強化繊維F2となる。
【0080】
すなわち、樹脂プレート4(図5)は、前記第1または第2強化繊維F2,F1となる図4の複数層の強化繊維Fの積層構造を有し、前記第1の熱可塑性樹脂を主成分とする。また、樹脂プレート4(図5)は前記積層構造として互いに配向方向Dが異なる少なくとも4層の強化繊維Fの積層構造を有する。
また、前記樹脂プレート4(図5)は、所定の平面形状を有し、部位によって互いに異なる前記強化繊維Fの積層構造を有する。
なお、樹脂プレート4(図5)の形状は図1の第1部1Aの形状に近似した形状などであってもよい。
【0081】
図5において、前記樹脂プレート4の厚さTは0.5〜10mmであってもよい。また、前記樹脂プレート4の強化繊維F(図4)の層数は4層〜50層であってもよい。また、前記樹脂プレート4の図4の前記強化繊維Fの長さLは前記樹脂プレート4(図5)の一辺よりも短く、例えば、5〜60mmであってもよい。
【0082】
つぎに、本例において用いられる金型の一例が説明される。
本例の場合、金型としては、図7および図8の第1〜第4金型31〜34が用いられる。
【0083】
図7の第1および第2金型31,32は第1部1Aを成型するためのものである。前記第1および第2金型31,32は、前記第1ベース11および前記突起2に適合するキャビティ30を規定する。なお、前記第1および第2金型31,32は、キャビティ30に対応した凸面を有していてもよい。
【0084】
図8の第3および第4金型33,34は第2部1Bを第1部1Aに一体に成型するためのものである。前記第3および第4金型33,34は前記第2ベース12に適合するキャビティ36および前記第1部1Aの装着部37を有する。
【0085】
図7の第1部1Aを成型する方法としては、加圧力が大きく突起2の先端までマトリクス樹脂が入り込み易いという観点から、例えば圧縮成型法が好ましいだろう。しかし、真空成型法や圧空成型法や真空圧空成型法が採用されてもよい。
【0086】
一方、図8の第2部1Bを第1部1Aに一体に成型する方法としては、例えば射出成型法が採用されてもよい。
【0087】
つぎに、製造方法の一例が説明される。
まず、第1部1Aの製造方法が説明される。
【0088】
図7(a)において、前記第1および第2金型31,32は所定の温度に予熱ないし加熱されている。前記第1および第2金型31,32のいずれか一方に、例えば下金型の上に、樹脂プレート4が載置される。
【0089】
前記載置後、前記金型および樹脂プレート4が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第1および第2金型31,32を加熱する。前記金型の温度が前記所定温度まで昇温した後に、所定時間たとえば1秒〜30分程度、金型の加熱を続ける。
【0090】
これにより、樹脂プレート4の成形が可能な流動性のある状態まで、樹脂プレート4が軟化ないし融解される。
【0091】
その後、図7(b)に示すように、第1金型31および第2金型32が互いに合わさるように、第1金型31と第2金型32とが型締めされる。前記融解した状態の樹脂プレート4は融解樹脂4Mとなって、前記型締めにより、キャビティ30に隈なく広がり、前記第1ベース11や突起2の対応部分に入り(流れ)込む。
【0092】
なお、前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
【0093】
その後、前記型締めした状態で、前記金型31,32が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記融解樹脂4Mが冷却され固化して、前記第1部1Aが生成される。
【0094】
前記冷却後、図7(b)の型締めされた第1および第2金型31,32が図7(c)のように型開きされる。この型開き後、金型内から第1部1Aを取り出し、周知のように、必要に応じてバリなどが除去される。
【0095】
つぎに、図8の前記第2ベース12を含む第2部1Bの製造方法が説明される。
【0096】
まず、図8(a)のように、第3または第4金型33,34の一方の装着部37に前記第1部1Aが装着される。
【0097】
ついで、図8(b)のように、第3および第4金型33,34が互いに型締めされる。型締め後、第3および第4金型33,34のキャビティ36内に融解樹脂6Mが供給される。
【0098】
この融解樹脂6Mが固化した後、図8(c)のように、第3および第4金型33,34が型開きされる。その後、成型品を取り出し、仕上げることで、たとえば図1のスパイクソールが得られる。
【0099】
なお、ソールの任意の一部だけでなく全長にわたって、第1部1Aが設けられてもよい。また、第2部1Bは設けられなくてもよい。また、第1部1Aおよび第2部1Bに加えて第3部が設けられてもよい。
【0100】
つぎに、製造方法の別の例が説明される。
本例の場合、金型としては、図13および図14の第1〜第4金型31〜34が用いられる。
まず、第1部1Aの製造方法が説明される。
【0101】
図13(a)において、前記第1および第2金型31,32は所定の温度に予熱ないし加熱されている。前記第1および第2金型31,32のいずれか一方に、例えば下金型の上に、樹脂プレート4が載置される。
【0102】
前記載置後、前記金型および樹脂プレート4が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第1および第2金型31,32を加熱する。前記金型の温度が前記所定温度まで昇温した後に、所定時間たとえば1秒〜30分程度、金型の加熱を続ける。
【0103】
これにより、樹脂プレート4の成形が可能な流動性のある状態まで、樹脂プレート4が軟化ないし融解される。
【0104】
その後、図13(b)に示すように、第1金型31および第2金型32が互いに接近ないし合わさるように、第1金型31と第2金型32とが型締めされる。前記軟化ないし融解した状態の樹脂プレート4は融解樹脂4Mとなって、前記型締めにより、両金型31,32の間の空間300で押し潰され、一部が両金型31,32に沿って前記第1ベース11として広がり、他部が突起2の対応部分に入り(流れ)込む。
なお、たとえば第2金型32の両側に型締め時に第1金型31と接する凸部が設けられていてもよい。
【0105】
前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
【0106】
その後、前記型締めした状態で、前記金型31,32が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記融解樹脂4Mが冷却され固化して、前記第1部1Aが生成される。
【0107】
前記冷却後、図7(b)の型締めされた第1および第2金型31,32が型開きされる。この型開き後、金型内から図13(c)の第1部1Aを取り出し、周知のように、必要に応じてバリなどが除去される。
【0108】
つぎに、図14の前記第2ベース12を含む第2部1Bの製造方法が説明される。
【0109】
まず、図14(a)および図14(b)のように、第3または第4金型33,34の一方の装着部(キャビティ)37に前記第1部1Aが装着される。
ついで、前記第3金型33と第4金型34との間のキャビティ36に別の樹脂プレート49または前記樹脂プレート4が配置される。前記別の樹脂プレート49は前記樹脂プレート4と同種または異種の熱可塑性樹脂であってもよく、前記第2強化繊維が埋設されていてもよい。
【0110】
その後、図14(b)のように、第3および第4金型33,34が互いに型締めされる。前記型締め時の圧力は、例えば0.1MPa〜10MPa程度であってもよい。
この型締め前ないし型締め後、前記金型および樹脂プレート4,49が所定温度たとえば150℃〜300℃程度の温度となるように、前記第3および第4金型33,34を加熱する。これにより、第3および第4金型33,34のキャビティ36内において前記樹脂プレート4,49が軟化ないし融解されて継ぎ目なく一連に連なる。
【0111】
その後、前記型締めした状態で、前記金型33,34が所定時間たとえば1分〜15分程度の間、冷却される。これにより、前記樹脂プレート4,49が冷却され固化して、前記第2部1Bが生成される。
前記樹脂プレートが固化した後、図14(b)の第3および第4金型33,34が型開きされる。その後、図14(c)の成型品を取り出し、仕上げることで、たとえば図1のスパイクソールが得られる。
【0112】
なお、ソールの任意の一部だけでなく全長にわたって、第1部1Aが設けられてもよい。また、第2部1Bは設けられなくてもよい。また、第1部1Aおよび第2部1Bに加えて第3部が設けられてもよい。
【0113】
つぎに、付加的な製造方法の一例が図9を用いて説明される。
図9の例は前記樹脂プレート4,49に加えて、前記樹脂ピース41を単体の状態で用いる。樹脂ピース41は前記強化繊維Fを含む第1の熱可塑性樹脂で形成されている。
【0114】
図9(a)のように、前記キャビティ30(図7)または前記空間300(図13)における前記突起に対応する凹所35に強化繊維Fを含む熱可塑性の樹脂ピース41を投入する第1投入工程が実行される。この際、強化繊維Fの一部が凹所35内に入り込み、かつ、強化繊維Fの残部が凹所35から突出するように、樹脂ピース41を凹所35内に投入する。
【0115】
一方、第1投入工程の前後において、前記樹脂ピース41を加熱する加熱工程を実行する。この加熱により、図9(b)のように、樹脂ピース41は軟化し、成型可能となる。
【0116】
第1投入工程および加熱工程後に、図7(a)の前記キャビティ30または図13の前記空間における前記第1ベース11に対応する部位に、図9(c)の前記樹脂プレート4を投入する第2投入工程が実行される。
【0117】
前記第2投入工程後に、前述の図7(a)〜(c)の工程または図13(a)〜(c)の工程が実行されて第1部1Aが生成される。
【0118】
つぎに、本スパイクソールの試験例が説明される。
【0119】
前述の図7の方法に近似した方法により、図2(a)〜(c)のように、第1ベース11に突起2が一体の第1〜第3サンプルS1〜S3を得た。ついで、これらのサンプルを縦断面に沿って切断し、切断面のデジタル写真を撮像し、図10図12のような断面写真を得た。
【0120】
これらの図において、11Fは第1ベース11の表面、2Fは突起2の側面、2Tは突起2の先端面である。
【0121】
図10図12において、突起2内に第1の熱可塑性樹脂を含むマトリクス樹脂が入り込む成型が可能であることが分かる。また、強化繊維の一部である第1強化繊維F2が第1ベース11から突起2に向かって屈曲して配向されていることが分かる。
【0122】
ここで、突起2の厚さが図12の0.2mmの場合や、図11の0.3mmの場合に比べ、図10の0.4mmの場合(第1サンプル)の方が、第1強化繊維F2の配向状態において優れていることが分かる。したがって、突起2の厚さは0.35mm以上が好ましいだろう
【0123】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、スパイク(突起)が前足部に加え後足部に設けられていてもよい。
また、スパイクではなく、小さな突起やクリートが設けられてもよい。
したがって、そのような変更および修正は請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は陸上競技用の他に、野球、フットボールなどの他のスパイクソールや靴底に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1A:第1部 1B:第2部
11:第1ベース 11F:表面 12:第2ベース
11p:対応部位 12p:非対応部位
2:突起 2F:側面 2T:先端面
30:キャビティ 31:第1金型 32:第2金型 33:第3金型 34:第4金型 35:凹所 36:キャビティ 37:装着部(キャビティ) 300:空間
4:樹脂プレート 4M,6M:融解樹脂 41;樹脂ピース
D:配向方向 D1〜D4:4つの方向
F:強化繊維 F1:第2強化繊維 F2:第1強化繊維
H:高さ L:長さ T:樹脂プレートの厚さ T1,T2:突起の厚さ
S1〜S3:第1〜第3サンプル
【要約】
第1の熱可塑性樹脂を主成分とする第1ベースと、第1の熱可塑性樹脂を主成分とし、第1ベースから突出する突起と、第1ベースに埋設された少なくとも1つの第2強化繊維と、第1ベースから突起に向かって屈曲して配向された少なくとも1つの第1強化繊維とを備える、靴のソール。
図1
図2
図3
図4
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図9
図10
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