(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアルコール系樹脂層が偏光膜として機能し、その単体透過率が42.0%以上であり、偏光度が99.95%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.積層体
A−1.全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。積層体10は、樹脂基材11と樹脂基材11の片側に設けられたポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層12と、樹脂基材11のもう片側に設けられた帯電防止層13とを有する。図示しないが、本発明の積層体は、樹脂基材、PVA系樹脂層および帯電防止層以外に、その他の部材(層)を有していてもよい。その他の部材(層)としては、例えば、光学機能フィルム、粘着剤層、接着剤層、易接着層等が挙げられる。積層体10は、代表的には、長尺状とされている。
【0009】
本発明の積層体の厚みは、その構成により異なるが、代表的には20μm〜500μmである。以下、各部材について説明する。
【0010】
A−2.樹脂基材
上記樹脂基材は、代表的には、熱可塑性樹脂で形成される。熱可塑性樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリエステル系樹脂が用いられる。中でも、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。特に、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0011】
後述する延伸処理において水中延伸方式を採用する場合、上記の好ましい樹脂基材は水を吸収し得、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することが可能となり、空中延伸時よりも樹脂基材の延伸性が優れ得る。その結果、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。1つの実施形態においては、樹脂基材は、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。一方、樹脂基材の吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このような樹脂基材を用いることにより、製造時に樹脂基材の寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光膜の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時に基材が破断したり、樹脂基材からPVA系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。なお、樹脂基材の吸水率は、例えば、構成材料に変性基を導入することにより調整することができる。吸水率は、JIS K 7209に準じて求められる値である。
【0012】
樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような樹脂基材を用いることにより、PVA系樹脂層の結晶化を抑制しながら、積層体の延伸性を十分に確保することができる。さらに、水による樹脂基材の可塑化と、水中延伸を良好に行うことを考慮すると、120℃以下であることがより好ましい。1つの実施形態においては、樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このような樹脂基材を用いることにより、上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形(例えば、凹凸やタルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止して、良好に積層体を作製することができる。また、PVA系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)にて良好に行うことができる。別の実施形態においては、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形しなければ、60℃より低いガラス転移温度であってもよい。なお、樹脂基材のガラス転移温度は、例えば、構成材料に変性基を導入する、結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0013】
樹脂基材の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmである。
【0014】
樹脂基材には、予め、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよい。樹脂基材とPVA系樹脂層および/または帯電防止層との密着性を向上させることができるからである。
【0015】
A−3.ポリビニルアルコール系樹脂層
ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層を形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0016】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0017】
PVA系樹脂層は、好ましくは、樹脂基材に後述の帯電防止層が設けられた後に設けられる。PVA系樹脂層は、好ましくは、樹脂基材上にPVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより設けられる。塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が用いられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、樹脂基材に密着した均一な塗布膜が設けられ得る。
【0018】
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。
【0019】
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
【0020】
塗布液を、乾燥後のPVA系樹脂層の厚みが、好ましくは、3μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜20μmとなるように塗布する。上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
【0021】
PVA系樹脂層は、偏光膜の中間体(偏光膜とするための処理を施し得る状態)であってもよいし、偏光膜(偏光膜として使用され得る状態)であってもよい。
【0022】
上記偏光膜とするための処理としては、例えば、染色処理、延伸処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理が挙げられる。これらの処理は、目的に応じて適宜選択され得る。また、処理順序、処理のタイミング、処理回数等、適宜設定され得る。以下、各々の処理について説明する。
【0023】
(染色処理)
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂層をヨウ素で染色することにより行う。具体的には、PVA系樹脂層にヨウ素を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、ヨウ素を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に積層体を浸漬させる方法である。ヨウ素が良好に吸着し得るからである。
【0024】
上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜0.5重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.02重量部〜20重量部、より好ましくは0.1重量部〜10重量部である。染色液の染色時の液温は、PVA系樹脂の溶解を抑制するため、好ましくは20℃〜50℃である。染色液にPVA系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、PVA系樹脂層の透過率を確保するため、好ましくは5秒〜5分である。また、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光膜の偏光度もしくは単体透過率が所定の範囲となるように、設定することができる。1つの実施形態においては、得られる偏光膜の偏光度が99.98%以上となるように、浸漬時間を設定する。別の実施形態においては、得られる偏光膜の単体透過率が40%〜44%となるように、浸漬時間を設定する。
【0025】
(延伸処理)
上記延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させながら行う水中延伸方式であってもよいし、空中延伸方式であってもよい。好ましくは、水中延伸処理を少なくとも1回施し、さらに好ましくは、水中延伸処理と空中延伸処理を組み合わせる。水中延伸によれば、上記熱可塑性樹脂基材やPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を製造することができる。
【0026】
積層体の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
【0027】
積層体の延伸方向は、任意の適切な方向を選択することができる。好ましい実施形態においては、長尺状の積層体の長尺方向に延伸する。
【0028】
積層体の延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。空中延伸方式を採用する場合、延伸温度は、好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、さらに好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、特に好ましくはTg+15℃以上である。一方、積層体の延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
【0029】
延伸方式として水中延伸方式を採用する場合、延伸浴の液温は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは50℃〜85℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。
【0030】
水中延伸方式を採用する場合、積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することが好ましい(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。
【0031】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を作製することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0032】
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
【0033】
積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
【0034】
積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上である。このような高い延伸倍率は、例えば、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。なお、本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
【0035】
好ましくは、水中延伸処理は染色処理の後に行う。
【0036】
(不溶化処理)
上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。特に水中延伸方式を採用する場合、不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化処理は、積層体作製後、染色処理や水中延伸処理の前に行う。
【0037】
(架橋処理)
上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋処理は水中延伸処理の前に行う。好ましい実施形態においては、染色処理、架橋処理および水中延伸処理をこの順で行う。
【0038】
(洗浄処理)
上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
【0039】
(乾燥処理)
乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
【0040】
上記偏光膜は、実質的には、二色性物質が吸着配向されたPVA系樹脂層である。偏光膜の厚みは、代表的には25μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは43.0%以上である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0041】
A−4.帯電防止層
帯電防止層は、導電性材料およびバインダー樹脂を含み、その表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上である。このような帯電防止層を設けることにより、滑り性を付与して、優れた耐ブロッキング性を実現することができる。一方、帯電防止層の算術平均粗さRaは、好ましくは100nm以下である。Raが100nmを超えると、例えば、最終製品の光学特性に悪影響を及ぼすおそれがある。なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601に規定されている。
【0042】
帯電防止層の厚みは、好ましくは0.1μm〜10μm、さらに好ましくは0.2μm〜2μmである。
【0043】
上記PVA系樹脂層と帯電防止層との静摩擦係数は、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.0以下である。なお、静摩擦係数は、JIS K7125に規定されている。
【0044】
帯電防止層の表面抵抗値は、好ましくは10×10
13Ω/□未満、より好ましくは10×10
11Ω/□未満、さらに好ましくは10×10
10Ω/□未満である。表面抵抗値が10×10
13Ω/□以上であると、十分な耐ブロッキング性、帯電防止性が得られないおそれがある。
【0045】
帯電防止層は、透明であることが好ましい。具体的には、樹脂基材と帯電防止層との積層体の全光線透過率(Tt)は、好ましくは89%以上、さらに好ましくは89.5%以上である。このような優れた透明性は、後述の導電性材料として導電性ポリマーを用いることにより良好に達成することができる。
【0046】
上記導電性材料としては、任意の適切な導電性材料が用いられ得る。好ましくは、導電性ポリマーが用いられる。導電性ポリマーを用いることで、後述の延伸による導電性の低下を防ぐことができる。導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリジアセチレン系重合体、ポリイン系重合体、ポリフェニレン系重合体、ポリナフタレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリアントラセン系重合体、ポリピレン系重合体、ポリアズレン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリフラン系重合体、ポリセレノフェン系重合体、ポリイソチアナフテン系重合体、ポリオキサジアゾール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリチアジル系重合体、ポリフェニレンビニレン系重合体、ポリチエニレンビニレン系重合体、ポリアセン系重合体、ポリフェナントレン系重合体、ポリぺリナフタレン系重合体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。好ましくは、ポリチオフェン系重合体が用いられる。中でも、水性溶媒に溶解または分散可能な、ポリチオフェン系重合体が用いられる。
【0047】
上記ポリチオフェン系重合体を構成するチオフェンとしては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0048】
帯電防止層における導電性材料の含有量は、好ましくは1重量%〜10重量%、より好ましくは3重量%〜8重量%である。また、導電性材料の含有量は、後述のバインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部〜50重量部、さらに好ましくは2重量部〜20重量部である。
【0049】
上記バインダー樹脂としては、好ましくは、ポリウレタン系樹脂が用いられる。ポリウレタン系樹脂を用いることにより、優れた樹脂基材との密着性と柔軟性とを併せ持つ帯電防止層を設けることができる。また、ポリウレタン系樹脂を用いることで、上記算術平均粗さRaを容易に達成することができる。具体的には、ポリウレタン系樹脂を用いることで表面が平滑な塗布膜が形成され、この塗布膜に後述の延伸処理を施すことで上記Raを容易に達成することができる。例えば、延伸倍率を適宜設定することで所望のRaを容易に達成し得る。さらに、上記算術平均粗さRaにおいて、優れた帯電防止性を容易に達成し得る。
【0050】
上記ポリウレタン系樹脂は、ウレタン結合を有する樹脂をいい、アクリル−ポリウレタン共重合体やポリエステル−ポリウレタン共重合体も含まれる。ポリウレタン系樹脂は、代表的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られる。ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、任意の適切なポリオールが用いられる。例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
上記ポリアクリルポリオールは、代表的には、(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基を有する単量体とを共重合させることにより得られる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。水酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
上記ポリアクリルポリオールは、上記単量体成分に加えて、他の単量体を共重合させていてもよい。他の単量体としては、共重合可能な限り、任意の適切な単量体が用いられる。具体的には、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物およびモノまたはジエステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
上記ポリエステルポリオールは、代表的には、多塩基酸成分とポリオール成分とを反応させることにより得られる。多塩基酸成分としては、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;あるいは、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性誘導体等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
上記ポリオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、1−メチル−1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
上記ポリエーテルポリオールは、代表的には、多価アルコールにアルキレンオキシドを開環重合して付加させることにより得られる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
上記ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する。カルボキシル基を有することにより、樹脂基材との密着性に優れた帯電防止層を得ることができる。カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシル基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシル基を有する鎖長剤は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸等が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)等のジアルキロールアルカン酸が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0058】
上記ポリウレタン系樹脂の製造において、上記の成分に加えて、他のポリオール、他の鎖長剤を反応させ得る。他のポリオールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の水酸基数が3個以上のポリオールが挙げられる。他の鎖長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0059】
上記ポリウレタン系樹脂の製造方法は、任意の適切な方法が採用される。具体的には、上記各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法が挙げられる。ポリウレタン系樹脂がカルボキシル基を有する場合、好ましくは、多段法である。カルボキシル基を容易に導入し得るからである。なお、上記ポリウレタン系樹脂の製造に際し、任意の適切なウレタン反応触媒が用いられる。
【0060】
上記ポリウレタン系樹脂の製造に際し、好ましくは、中和剤が用いられる。中和剤を用いることにより、水中におけるポリウレタン系樹脂の安定性が向上し得る。中和剤としては、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
上記ポリウレタン系樹脂の製造に際し、好ましくは、上記ポリイソシアネートに対して不活性で、水と相溶する有機溶剤が用いられる。当該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
上記ポリウレタン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000〜600000、さらに好ましくは10000〜400000である。上記ポリウレタン系樹脂の酸価は、好ましくは10以上、さらに好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜45である。酸価がこのような範囲内であることにより、光学部材との密着性がより優れ得る。
【0063】
帯電防止層におけるバインダー樹脂の含有量は、好ましくは50重量%〜99重量%、より好ましくは70重量%〜95重量%である。
【0064】
帯電防止層は、代表的には、上記樹脂基材に、上記導電性材料およびバインダー樹脂を含む樹脂組成物を塗布し、乾燥することにより設けられる。樹脂組成物は、好ましくは、水性である。水性は、溶剤系に比べて環境面に優れ、作業性にも優れて設備を簡略化し得る。
【0065】
上記樹脂組成物は、好ましくは、アニオン性重合体を含む。アニオン性重合体は、上記導電性材料と複合体を形成し得る。アニオン性重合体としては、例えば、高分子カルボキシル酸、高分子スルホン酸等が挙げられる。高分子カルボキシル酸の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸が挙げられる。高分子スルホン酸の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0066】
上記樹脂組成物は、好ましくは、架橋剤を含む。架橋させることにより、得られる帯電防止層に耐水性を付与することができる。その結果、例えば、上記水中延伸を良好に行うことができる。当該架橋剤は、任意の適切な架橋剤が採用され得る。例えば、架橋剤としては、カルボキシル基と反応し得る基を有するポリマーが好ましく用いられる。カルボキシル基と反応し得る基としては、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基等が挙げられる。好ましくは、架橋剤は、オキサゾリン基を有する。オキサゾリン基を有する架橋剤は、上記ウレタン樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱することによって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。
【0067】
上記ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、スチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられる。好ましくは、アクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーを用いることにより、水性の樹脂組成物に安定的に相溶し得、上記ウレタン樹脂と良好に架橋し得る。
【0068】
上記樹脂組成物は、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、pH調整剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤等が挙げられる。
【0069】
上述したように、樹脂組成物は、好ましくは水性である。樹脂組成物におけるバインダー樹脂の濃度は、好ましくは1.5重量%〜15重量%、さらに好ましくは2重量%〜10重量%である。樹脂組成物の架橋剤(固形分)の含有量は、バインダー樹脂(固形分)100重量部に対して、好ましくは1重量部〜30重量部、さらに好ましくは3重量部〜20重量部である。樹脂組成物のpHは、6以上に調整されていることが好ましく、さらに好ましくは7以上である。pH調整剤としては、例えば、アンモニアが用いられる。
【0070】
樹脂組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法等が挙げられる。乾燥温度としては、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。一方、乾燥温度は、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+30℃以下であることが好ましく、さらに好ましくはTg以下である。
【0071】
帯電防止層は、好ましくは、延伸処理が施されている。延伸処理により、上記算術平均粗さRaを満足する凹凸形状を良好に形成することができる。当該延伸処理は、上記PVA系樹脂層を偏光膜とするための処理と兼ねてもよいし、別途、行ってもよいし、両者を併用してもよい。別途、行う場合、好ましくは、樹脂基材にPVA系樹脂層を設ける前に行う。好ましい実施形態においては、上記樹脂基材上に、上記導電性材料およびバインダー樹脂を含む樹脂組成物を塗布し、乾燥した後に延伸処理を施し、次いで、PVA系樹脂層を設ける。
【0072】
PVA系樹脂層を設ける前の延伸処理における延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸でもよい。延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。また、延伸方式は、特に限定されず、空中延伸方式でもよいし、水中延伸方式でもよい。
【0073】
延伸方向は、積層体(PVA系樹脂層)の用途に応じて、任意の適切な方向を選択することができる。2方向以上に延伸してもよい。好ましい実施形態においては、長尺状の樹脂基材の横方向(幅方向)に延伸する。例えば、PVA系樹脂層を設ける前に、帯電防止層が設けられた長尺状の樹脂基材を横方向に延伸する。このような形態によれば、後に縦方向(長尺方向)に延伸する際に幅収縮を促進し、例えば、得られるPVA系樹脂層(偏光膜)の縦方向の配向性を向上させることができる。ここで、「横方向」とは、長尺方向に対して反時計回りに85°〜95°の方向を包含する。別の実施形態においては、長尺状の樹脂基材の横方向と縦方向(長尺方向)に延伸する。
【0074】
延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。延伸温度は、代表的には、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、好ましくはTg+10℃以上、さらに好ましくはTg+20℃以上である。延伸方式として水中延伸方式を採用し、樹脂基材の形成材料として非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合、延伸温度を樹脂基材のガラス転移温度(例えば、60℃〜100℃)より低くすることができる。
【0075】
延伸倍率は、任意の適切な値に設定され得る。例えば、導電性材料の含有量、樹脂組成物の塗布厚などに応じて、適宜設定される。延伸倍率は、樹脂基材の元長に対して、好ましくは1.1倍〜20倍、さらに好ましくは1.2倍〜15倍である。
【0076】
A−5.その他
上記粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。上記接着剤層としては、代表的にはPVA系接着剤で形成される。上記光学機能フィルムは、例えば、偏光膜保護フィルム、位相差フィルム等として機能し得る。
【実施例】
【0077】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
樹脂基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「SH046」、Tg:70℃、厚み:200μm)を用いた。
カルボキシル基を有するポリウレタン水分散体(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)5.33g、架橋剤(日本触媒製、商品名:エポクロスWS700、固形分:25%)0.59g、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体(アグファ製、商品名:オルガコンLBS、固形分:1.2%)10.67g、濃度1%のアンモニア水0.0356gおよび水23.38gを混合・攪拌し、pH7.5の樹脂組成物を得た。
樹脂基材の片面に、得られた樹脂組成物をワイヤーバー(#4)で塗布した。その後、樹脂基材を熱風乾燥機(60℃)に3分間投入し、厚み1μmの帯電防止層を形成した。
【0079】
帯電防止層が形成した樹脂基材を、100℃のオーブン内で延伸処理した。延伸倍率は以下のとおりである。
(1)縦方向1.5倍×横方向1.0倍
(2)縦方向1.5倍×横方向1.5倍
(3)縦方向2.0倍×横方向2.0倍
【0080】
[比較例1]
以下の樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み1μmの帯電防止層を形成した。
(樹脂組成物)
ポリ乳酸樹脂エマルジョン(ミヨシ油脂社製、商品名:ランディPL−3000、固形分:40%)2.33g、架橋剤(日本触媒製、商品名:エポクロスWS700、固形分:25%)0.29g、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体(アグファ製、商品名:オルガコンLBS、固形分:1.2%)5.33g、濃度1%のアンモニア水0.0178gおよび水12.02gを混合・攪拌し、樹脂組成物を得た。
【0081】
[比較例2]
以下の樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み1μmの帯電防止層を形成した。
(樹脂組成物)
変性ナイロン水分散体(ナガセケムテックス社製、商品名:トレジンFS−350E5AS、固形分:20%)3.59g、架橋剤(日本触媒製、商品名:エポクロスWS700、固形分:25%)0.59g、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体(アグファ製、商品名:オルガコンLBS、固形分:1.2%)5.33g、濃度1%のアンモニア水0.0178gおよび水10.76gを混合・攪拌し、樹脂組成物を得た。
【0082】
[比較例3]
以下の樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み1μmの帯電防止層を形成した。
(樹脂組成物)
カルボキシル基を有するポリウレタン水分散体(第一工業製薬社製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)2.67g、架橋剤(日本触媒製、商品名:エポクロスWS700、固形分:25%)0.29g、カーボンナノチューブ(御国色素社製、商品名:CNTDW−262)2.67gおよび水14.37gを混合・攪拌し、樹脂組成物を得た。
【0083】
(評価)
実施例および比較例の帯電防止層が形成された樹脂基材について、以下の評価を行った。算術平均粗さ(Ra)の評価結果を
図2に示す。また、光学特性の評価結果を表1に、PVAフィルムとの静摩擦係数(μs)の評価結果を表2に、表面抵抗値の評価結果を表3にまとめる。なお、表2における「over」は静摩擦係数(μs)が2.0より大きいことを示し、表3における「over」は表面抵抗値が10×10
11Ω/□以上であることを示す。
1.算術平均粗さ(Ra)
帯電防止層の表面の算術平均粗さ(Ra)を、Veeco社製、製品名:Wykoで測定した。測定サンプルのサイズは、50mm×50mmとした。
2.光学特性
全光線透過率(Tt)を、日立ハイテクノロジーズ製、製品名:日立分光光度計U−4100で測定した。測定サンプルのサイズは、50mm×50mmとした。
3.静摩擦係数(μs)
帯電防止層の静摩擦係数(μs)を、JIS K7125の摩擦係数試験方法に基づき測定した。測定サンプルのサイズは、150mm×70mmとした。
4.表面抵抗値
ハイレスタUP MCP−HTP16(三菱化学アナリテック社製、プローブ:URS)を用いて、25℃、60%RHの条件下で、表面抵抗(印加電圧500V、10秒後)を測定した。測定サンプルのサイズは、50mm×50mmとした。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
実施例1では、表面が平滑な帯電防止層が形成され(延伸処理前)、延伸処理において延伸倍率を大きくするほど算術平均粗さ(Ra)の大きい帯電防止層が得られた。
実施例では、耐ブロッキング性にも帯電防止性にも優れ、かつ、光学特性にも優れていた。