(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297795
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】潤滑被膜用塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20180312BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20180312BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20180312BHJP
C10M 149/20 20060101ALI20180312BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20180312BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20180312BHJP
C10M 107/44 20060101ALI20180312BHJP
C10M 103/06 20060101ALI20180312BHJP
C10M 103/02 20060101ALI20180312BHJP
C10M 103/00 20060101ALI20180312BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20180312BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20180312BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20180312BHJP
B05D 5/08 20060101ALI20180312BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20180312BHJP
C10N 10/06 20060101ALN20180312BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20180312BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20180312BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
C09D4/02
C10M169/04
C10M145/14
C10M149/20
C10M107/38
C10M107/34
C10M107/44
C10M103/06 C
C10M103/02
C10M103/06 A
C10M103/00 A
C09D175/04
C09D133/06
C09D7/12
B05D5/08 Z
B05D7/24 302P
C10N10:06
C10N10:12
C10N30:00 Z
C10N40:02
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-131903(P2013-131903)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-7155(P2015-7155A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲司
【審査官】
櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−198765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/00−7/14
C09D 101/00−201/10
B05D 1/00−7/26
C10M 101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル当量が100以下の(メタ)アクリル酸化合物、
(B)(メタ)アクリル当量が120〜300の範囲にある(メタ)アクリル酸化合物、
(C)熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂、
(D)少なくとも1種の固体潤滑剤
を含み、
前記成分(A):前記成分(B)のモル比が1:9〜9:1の範囲にある潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項2】
前記成分(C)が、(c1)少なくとも1種のポリオールと(c2)少なくとも1種のイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂である、請求項1に記載の潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、(c1−1)ポリカーボネートポリオールと(c2−1)ジイソシアネートを反応させてなる、ポリカーボネート系ウレタン樹脂である、請求項1又は2に記載の潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項4】
前記成分(A)である(メタ)アクリル酸化合物が、(メタ)アクリル酸エステルであり、及び/又は、
前記成分(B)である(メタ)アクリル酸化合物が、(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項5】
前記成分(D)が、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、二硫化モリブデン、グラファイト、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項6】
前記成分(A)〜前記成分(C)の和 100質量部に対し、前記成分(D)1〜200質量部含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物を硬化させてなる潤滑被膜。
【請求項8】
請求項7記載の潤滑被膜を備える摺動部材。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑被膜用塗料組成物を基材表面に塗布し、加熱及び/又は高エネルギー線照射により、基材表面に潤滑被膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑被膜用塗料組成物に関する。更に、本発明は、前記潤滑被膜用塗料組成物を硬化させてなる潤滑被膜、潤滑被膜を備えた摺動部材及び当該潤滑被膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱及び/又は紫外線等の高エネルギー線の照射により硬化するラジカル重合性樹脂組成物は、各種の被膜形成用途に広く用いられている。例えば、特開2006−257366号公報及び特開2006−52356号公報には紫外線硬化性樹脂組成物が記載されており、それぞれ、自動車内装部品の塗装及び剥離紙の製造等に使用されている。
【0003】
しかし、これらのラジカル重合性樹脂組成物を用いて基材上に形成された被膜は基材への密着性に乏しい場合があり、その場合は、当該被膜の形成目的を達成することができない。特に、柔軟性を有するエラストマー製の基材の表面に従来の硬化性樹脂組成物を塗布・硬化して被膜を形成した場合、当該被膜の追従性が乏しく、エラストマー製の基材を変形したときに当該被膜にクラックが発生することがある。また、樹脂組成物の硬化時の収縮による反り返りのためにエラストマー自体の柔軟性を損なうこともある。
【0004】
このような基材に対する被膜の低密着性に起因する各種の不都合は、長期間に亘って他の部材と接触する摺動部材表面に潤滑目的のために形成される潤滑被膜において特に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−257366号公報
【特許文献2】特開2006−52356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加熱及び/又は高エネルギー線照射により、各種の基材の表面に高い密着性を有する樹脂被膜を形成し得る潤滑被膜用塗料組成物を提供することを目的とする。
【0007】
特に、本発明は、加熱及び/又は高エネルギー線照射により、各種の基材の表面に高い密着性と共に良好な摺動特性を有する被膜を形成し、これにより、優れた摺動特性を長時間維持することが可能な潤滑被膜を形成し得る潤滑被膜用塗料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
更に、本発明は、前記潤滑被膜用塗料組成物を用いて、潤滑被膜、当該潤滑被膜を備えた摺動部材、及び、当該潤滑被膜の形成方法を提供することをもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、本発明者らは、加熱及び/又は高エネルギー線照射により硬化可能な有機樹脂(好適には、ポリオールとイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン樹脂)と共に、(メタ)アクリル当量の異なる2種類の(メタ)アクリル酸化合物を含むラジカル重合性樹脂組成物により、基材との密着性に優れた樹脂被膜を形成可能であることを見出した。更に、本発明者らは前記ラジカル重合性樹脂組成物に固体潤滑剤を配合することにより、当該組成物を用いて基材表面に形成された潤滑被膜が優れた摺動特性を備え、また、摺動耐久性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の目的は、
(A) (メタ)アクリル当量が100以下の(メタ)アクリル酸化合物、
(B) (メタ)アクリル当量が120〜300の範囲にある(メタ)アクリル酸化合物、
(C) 熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂
(D) 少なくとも1種の固体潤滑剤
を含む、潤滑被膜用塗料組成物によって達成される。
【0011】
前記成分(A):前記成分(B)のモル比は1:9〜9:1の範囲とすることができる。
【0012】
前記成分(C)は、(c1)少なくとも1種のポリオールと(c2)少なくとも1種のイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂であることが好ましい。
【0013】
前記成分(C)は、(c1−1)ポリカーボネートポリオールと(c2−1)ジイソシアネートを反応させてなる、ポリカーボネート系ウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0014】
前記成分(A)である(メタ)アクリル酸化合物は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、及び/又は、前記成分(B)である(メタ)アクリル酸化合物は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0015】
前記成分(D)は、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、二硫化モリブデン、グラファイト、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛及びこれらの混合物から選ばれることができる。
【0016】
本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、前記成分(A)〜前記成分(C)の和 100質量(重量)部に対し、前記成分(D)を1〜200質量(重量)部含むことが好ましい。
【0017】
本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、被膜形成用である。
【0018】
本発明は、前記潤滑被膜用塗料組成物を硬化させてなる潤滑被膜にも関する。
【0019】
本発明は、前記潤滑被膜を備える摺動部材にも関する。
【0020】
本発明は、前記潤滑被膜用塗料組成物を基材表面に塗布し、加熱及び/又は高エネルギー線の照射により、基材表面に潤滑被膜を形成する方法にも関する。
【発明の効果】
【0021】
前記成分(A)〜(D)を含む本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、加熱及び/又は高エネルギー線照射により、各種の基材の表面に高い密着性を有する樹脂被膜を形成することができる。
【0022】
特に、本発明の潤滑被膜用塗料組成物はエラストマー製等の柔軟性物質からなる基材であっても高い密着性を有する被膜を形成することができ、当該被膜は柔軟で且つ追従性が高いために、被膜におけるクラックの発生を回避乃至低減することが可能であり、また、基材の柔軟性を損なうことがない。
【0023】
前記成分(A)〜(D)を含む本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、加熱及び/又は高エネルギー線照射により、各種の基材の表面に高い密着性と共に良好な摺動特性を有する潤滑被膜を形成することができる。本発明の組成物によって基材表面に形成された潤滑被膜は、優れた摺動特性を長時間維持することができる。また、前記成分(D)の存在により、被膜中の樹脂分を相対的に低減することができるので、被膜の硬化収縮を抑制して、その密着性等を更に向上させることができる。
【0024】
また、一般に、黒色の固体潤滑剤を含む熱硬化性又は高エネルギー線硬化性樹脂組成物を加熱又は紫外線等の高エネルギー線を照射すると、当該固体潤滑剤によって熱又は高エネルギー線の多くが吸収されて、樹脂組成物の完全な硬化が困難となり、基材との密着性が低下するおそれがあるが、本発明の組成物は、固体潤滑剤としてグラファイト等の黒色のものを含むことができ、その場合であっても、熱又は高エネルギー線照射によって硬化可能である。これにより低荷重下での潤滑特性だけでなく高荷重下での潤滑特性(耐荷重性)等をも付与することができる。
【0025】
また、本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、硬化に必要なエネルギーが小さいので、基材上において効率的な被膜形成を行うことができる。
【0026】
更に、本発明の潤滑被膜用塗料組成物は、ラジカル重合性であるので、短時間の硬化が可能であり、また、硬化時の発熱を抑制することができる。したがって、低耐熱性の基材の表面にも(潤滑)被膜を形成することができる。特に、高エネルギー線照射による硬化モードを選択することによって、基材への熱による影響を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例における剥離強度の測定方法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の態様は、ラジカル重合性の潤滑被膜用塗料組成物であり、
(A) (メタ)アクリル当量が100以下の(メタ)アクリル酸化合物、
(B) (メタ)アクリル当量が120〜300の範囲にある(メタ)アクリル酸化合物、
(C) 熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂
(D) 少なくとも1種の固体潤滑剤
を含む。なお、本発明において「高エネルギー線」とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、放射線等の電磁波及び粒子線を意味しており、180〜500nm、好ましくは200〜450nm、の波長を有する紫外線が好ましい。
【0029】
[成分(A)及び成分(B)]
本発明の組成物は、硬化物のハードセグメントを構成する成分として、(A)(メタ)アクリル当量が100以下、好ましくは95以下、より好ましくは90以下の(メタ)アクリル酸化合物、及び、硬化物のソフトセグメントを構成する成分として、(B)(メタ)アクリル当量が120〜300、好ましくは130〜270、より好ましくは150〜250である(メタ)アクリル酸化合物を共に含む。前記(A)成分及び前記(B)成分を併用することで、本発明の組成物の硬化物(重合物)は各種の基材に対して高い密着性を備えることができる。
【0030】
本発明における(メタ)アクリル当量は次のように計算する。(メタ)アクリル酸化合物の(メタ)アクリロイル基が1つの場合は、分子量の値をMxとする。(メタ)アクリル酸化合物の(メタ)アクリロイル基が2つ以上の場合は、(メタ)アクリル酸化合物の分子量÷(メタ)アクリロイル基数をMxとする。使用する(メタ)アクリル酸化合物の合計量をA(質量部)、各(メタ)アクリル酸化合物Xの量をAx(質量部)とする。この場合、(メタ)アクリル当量は、Mx×(Ax÷A)の総和となる。
【0031】
例えば、アクリル酸メチルの場合、アクリロイル基は1つであり、また、分子量は86であるので、アクリル酸メチルのみを使用する場合、Mx=86となり、Ax÷A=1なので、アクリル当量は86となる。また、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルを50:50の質量比で混合して使用する場合、メタクリル酸メチルのメタクリル基は1つであり、また、分子量は100であるので、100×(50/100)+86×(50/100)=50+43=93により、(メタ)アクリル当量は93となる。
【0032】
したがって、(A)(メタ)アクリル当量が100以下の(メタ)アクリル酸化合物として1種以上の(メタ)アクリル酸化合物を使用することが可能であり、また、(B)(メタ)アクリル当量が120〜300の範囲にある(メタ)アクリル酸化合物として、1種以上の(メタ)アクリル酸化合物を使用することが可能である。また、好適な(メタ)アクリル酸化合物は、成分(A)及び成分(B)のそれぞれについて、(メタ)アクリル酸エステルである。
【0033】
単独で(メタ)アクリル当量が100以下の(メタ)アクリル酸化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、2,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0034】
なお、2-ヒドロキシエチルアクリレート等の単独ではその(メタ)アクリル当量が100以下に該当しない(メタ)アクリル酸化合物であっても他の(メタ)アクリル酸化合物と混合して使用することによって、全体として(メタ)アクリル当量が100以下になる場合は成分(A)の構成成分として使用することができる。但し、単独でその(メタ)アクリル当量が100以下に該当する(メタ)アクリル酸化合物の混合物を成分(A)とすることが好ましい。
【0035】
単独で(メタ)アクリル当量が120〜300である(メタ)アクリル酸化合物としては、例えば、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノールモノエトキシ変性アクリレート、フェノールモノエトキシ変性メタアクリレート、フェノールジエトキシ変性アクリレート、エトキシエチレングリコールアクリレート、エトキシエチレングリコールメタクリレート、エトキシエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレ−ト、ペンタメチルピペリジルアクリレ−ト、テトラメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ビスフェノールAトリエトキシジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
(B)(メタ)アクリル当量が120〜300の範囲にある(メタ)アクリル酸化合物としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0037】
なお、2-ヒドロキシエチルアクリレート等の単独ではその(メタ)アクリル当量が120〜300に該当しない(メタ)アクリル酸化合物であっても他の(メタ)アクリル酸化合物と混合して使用することによって、全体として(メタ)アクリル当量が120〜300になる場合は成分(B)の構成成分として使用することができる。但し、単独でその(メタ)アクリル当量が120〜300に該当する(メタ)アクリル酸化合物の混合物を成分(B)とすることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物における前記成分(A)の量は、例えば、組成物の全質量(重量)を基準として、10〜70質量(重量)%であってよく、20〜60質量(重量)%が好ましく、30〜50質量(重量)%がより好ましい。
【0039】
本発明の組成物における前記成分(B)の量は、例えば、組成物の全質量(重量)を基準として、10〜70質量(重量)%であってよく、20〜60質量(重量)%が好ましく、30〜50質量(重量)%がより好ましい。
【0040】
本発明の組成物における前記成分(A)と前記成分(B)の配合比率は、モル比にして1:9〜9:1が好ましく、1:6〜6:1がより好ましく、1:4〜4:1の範囲が特に好ましい。かかる範囲内で(メタ)アクリル当量が異なる2種の(メタ)アクリル酸化合物、好適には、2種の(メタ)アクリル酸エステルを併用することで、短時間で硬化可能であり、硬化時の発熱が少なく基材に与える影響が少なく、また、基材(特にエラストマー製のもの)に対する接着性が著しく改善される。
【0041】
[成分(C)]
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂は、熱及び/又は高エネルギー線照射により硬化可能な有機樹脂又はそれらの混合物であり、特に、ラジカル重合性であることが好ましい。
【0042】
熱硬化性樹脂は、常温(約25℃)で硬化可能であってもよく、また、加熱(約30℃以上)によって硬化するものであってもよい。また、複数の熱硬化性樹脂を混合して使用してもよい。一方、高エネルギー線硬化性樹脂は、既述した、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線で硬化可能なものであり、好ましくは紫外線によって硬化可能である。また、複数の高エネルギー線硬化性樹脂を混合して使用してもよい。
【0043】
熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミドイミド樹脂又はその変性物、並びに、これらの混合物が例示される。熱硬化性樹脂及び/又は高エネルギー線硬化性樹脂として、潤滑被膜の耐熱性をより向上させることができる点において、エポキシ樹脂やポリアミドイミド樹脂を使用することがより好ましい。また、基材との接着性をより向上させることがきる点においてウレタン樹脂やオレフィン樹脂を使用することが好ましい。特にウレタン樹脂を使用することで基材との接着性や柔軟性をより向上させることができる。
【0044】
ウレタン樹脂の種類は特に限定されるものではないが、(c1)少なくとも1種のポリオールと(c2)少なくとも1種のイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂が好ましい。
【0045】
(c1)ポリオールは一分子中に2個以上の水酸基を有する限り特には限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。ポリオールは単独で使用されてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸とポリオールとを縮合重合させてなるポリエステルポリオールが挙げられる。多価カルボン酸としては、コハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ドデカン二酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等のジカルボン酸等が挙げられる。多価カルボン酸としては、直鎖状ジカルボン酸が好ましい。直鎖状ジカルボン酸の炭素数は4以上が好ましく、4〜12がより好ましい。また、直鎖状ジカルボン酸の炭素数は偶数であることが特に好ましい。このような直鎖状ジカルボン酸として、具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。また、ポリオールとしては、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。多価カルボン酸及びポリオールは、それぞれ単独で用いられてもよく、二種以上を併用することもできる。ポリエステルポリオールの水酸基価は、2〜160mgKOH/gが好ましい。
【0047】
ポリカーボネートポリオールは、式:−R−O(C=O)O−(式中、Rは炭素数2〜5の2価の脂肪族又脂環式炭化水素基を表す)で表される繰り返し単位及び2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリカーボネートジオールは、分子中に、上記繰り返し単位及び2個の水酸基を有する化合物である。ポリカーボネートジオールは、Schell著、Polymer Review 第9巻、第9〜20ページ(1964年)に記載された種々の方法により脂肪族及び/又は脂環式ジオールから合成することができる。好ましいジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0049】
ポリカーボネートジオールの平均分子量の範囲は、通常、数平均分子量で500〜5000であり、好ましくは、1000〜3000のものが使用され、そのポリマー末端は実質的にすべて水酸基であることが望ましい。本発明においては、先に示したジオールの他に、1分子に3個以上のヒドロキシル基を有する化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等を少量用いることにより多官能化したポリカーボネートを用いてもよい。
【0050】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのランダム共重合体やブロック共重合体、及び、ビスフェノールAのポリオキシアルキレン変性体が挙げられる。
【0051】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、ポリオールにラクトン化合物を開環付加重合して得られるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオールにおいて上述したポリオールと同様のものが挙げられる。また、ラクトン化合物としては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0052】
ポリアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0053】
(c1)ポリオールとしては、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリカーボネートポリオールがより好ましく、ポリカーボネートジオールが更により好ましい。
【0054】
(c2)イソシアネートも一分子中にイソシアネート基を有する限り特には限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。イソシアネートとしては1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートが好ましい。イソシアネートは単独で使用されてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソオシアネート(TDI、2,4体、2,6体、もしくはこれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネート又はトリイソシアネートが好ましい。ジイソシアネート又はトリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0057】
前記成分(C)としては、(c1−1)ポリカーボネートポリオールと(c2−1)ジイソシアネートを反応させてなる、ポリカーボネート系ウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0058】
本発明の組成物における前記成分(C)の量は、例えば、組成物の全質量(重量)を基準として、10〜90質量(重量)%であってよく、20〜80質量(重量)%が好ましく、30〜70質量(重量)%がより好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、ラジカル型熱重合開始剤及び/又はラジカル型高エネルギー線重合開始剤を更に配合することが好ましい。ラジカル型重合開始剤を含むことによって短時間での硬化が可能であり、また、硬化時の発熱を抑制して基材に与える影響を低減可能である。
【0060】
ラジカル型熱重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、アゾビスイソブチルロニトリル、ジブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が例示される。ラジカル型熱重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
ラジカル型高エネルギー線重合開始剤としては、例えば、アリールケトン系光重合開始剤(アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノフェノン類、ヒドロキシアルキルフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシルオキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(スルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド類(アシルジアリールホスフィンオキシド等)が挙げられる。高エネルギー線重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、高エネルギー線重合開始剤はアミン類等の光増感剤と組み合わせて使用してもよい。
【0062】
具体的な高エネルギー線重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、(1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム)、α−アシルオキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート;4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
ラジカル型重合開始剤の配合量は、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として、0.1〜10質量(重量)%とすることができる。
【0064】
[(D)成分]
本発明の組成物は、更に(D)少なくとも1種の固体潤滑剤を含む。このように固体潤滑剤を含むことで、本発明の組成物は基材表面に潤滑被膜を形成することが可能であり、また、当該潤滑被膜は優れた摺動特性を長時間維持することができる。したがって、本発明の組成物は、潤滑被膜用塗料組成物として、高い密着性と優れた摺動耐久性を備える潤滑被膜を与えることができる。
【0065】
(D)固体潤滑剤は特に限定されるものではなく、1種類の固体潤滑剤を使用してもよく、また、2種類以上の固体潤滑剤を併用してもよい。固体潤滑剤としては、例えば、フッ素樹脂(特に、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー等)、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等からなる有機化合物の微粒子、二硫化モリブデン、グラファイト、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の無機化合物の微粒子、鉛等の金属の微粒子、並びに、これらの混合物が挙げられる。特に、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、二硫化モリブデン、グラファイト、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種類の固体潤滑剤を使用することが好ましい。
【0066】
固体潤滑剤の平均粒径は15μm以下が好ましく、0.2〜10μmがより好ましい。なお、ここでの平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置を使用して測定された体積平均粒子径を意味する。
【0067】
本発明の組成物に白色〜無色の固体潤滑剤を配合した場合、高エネルギー線照射又は加熱により好適に硬化させることができる。一方、本発明の組成物に二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の黒色〜有色の固体潤滑剤を配合した場合、特に加熱により好適に硬化させることができる。但し、本発明の組成物はグラファイト等の黒色の固体潤滑剤を含む場合であっても、高エネルギー線照射によって硬化することが可能である。
【0068】
前記成分(D)の配合量は特に限定されるものではないが、前記成分(A)〜前記成分(C)の和100質量(重量)部に対して1〜200質量(重量)部が好ましく、5〜100質量(重量)部がより好ましく、10〜100質量(重量)部が更により好ましく、20〜100質量(重量)部が特に好ましい。
【0069】
本発明の組成物は、前記成分(A)〜(D)以外に、その用途に応じて、様々な成分を適宜含むことができる。
【0070】
例えば、本発明の組成物は、少なくとも1種の膜形成助剤を含むことができる。膜形成助剤としてはエポキシ樹脂又はエポキシシランが挙げられる。本発明では、単独の膜形成助剤を使用してもよく、また、複数の膜形成助剤を併用してもよい。膜形成助剤としてのエポキシ樹脂は、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として0.1〜10質量(重量)%の範囲で使用することができる。膜形成助剤としてのエポキシシランは、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として0.1〜5質量(重量)%の範囲で使用することができる。
【0071】
本発明の組成物は、少なくとも1種の溶媒を含むことができる。本発明では、単独の溶媒を使用してもよく、また、複数の溶媒を併用してもよい。作業性の点で溶媒は水又は低級アルコールであることが好ましく、低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。溶媒は、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として10〜90質量(重量)%、好ましくは20〜85質量(重量)%、より好ましくは30〜80質量(重量)%の範囲で使用することができる。
【0072】
本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーンガムを含むことができる。本発明では、単独のシリコーンガムを使用してもよく、また、複数のシリコーンガムを併用してもよい。シリコーンガムを配合することによって、本発明の組成物の粘度の温度依存性を低減することができる。シリコーンガムとしては、従来公知のものを適宜使用することが可能であり、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として0.001〜3質量(重量)%の範囲で使用することができる。
【0073】
本発明の組成物は、少なくとも1種の消泡剤を含むことができる。本発明では、単独の消泡剤を使用してもよく、また、複数の消泡剤を併用してもよい。消泡剤を配合することによって、本発明の組成物の塗布時の発泡を抑制し、塗布作業を容易とすることができる。消泡剤としては、従来公知のものを適宜使用することが可能であり、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として0.00001〜1(質量)重量%の範囲で使用することができる。
【0074】
本発明の組成物は、少なくとも1種の増粘剤を含むことができる。本発明では、単独の増粘剤を使用してもよく、また、複数の増粘剤を併用してもよい。増粘剤を配合することによって、当該組成物の粘度を高めて、塗布時の液だれを低減し、塗布作業を容易とすることができる。増粘剤としては、従来公知のものを適宜使用することが可能であり、例えば、本発明の組成物の全質量(重量)を基準として0.001〜1質量(重量)%の範囲で使用することができる。
【0075】
本発明の組成物はラジカル重合性樹脂組成物であり、潤滑被膜用塗料組成物として、潤滑被膜形成に好適に使用することができ、任意の基体の表面に高い密着性を有する潤滑被膜を形成することができる。
【0076】
基材の材質は特に限定されるものではないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属、ゴム、樹脂等が挙げられる。基材の表面には、接着性の向上の為に、必要に応じて、電解エッチング、化学エッチング、ショットブラスト等による粗面化処理、りん酸塩等による化学処理を施してもよい。
【0077】
本発明では、既述した潤滑被膜用塗料組成物を基材表面に塗布し、当該組成物を加熱及び/又は当該組成物に高エネルギー線を照射することにより、当該基材表面に被膜を形成することができる。
【0078】
前記潤滑被膜用塗料組成物を基材表面に塗布する方法は特に限定されるものではなく、例えば、スクリーン印刷、スプレー法、タンブリング法、浸積法、刷毛塗り法等の従来公知の塗布方法を使用することができる。塗布後、一定時間放置してレベリングを行うことが好ましい。レベリングにより得られる被膜の潤滑性を向上させることができる。なお、塗布時に基材を予備加熱してもよいが、作業性の点では室温(約25℃)で塗布することが好ましい。
【0079】
その後、前記潤滑被膜用塗料組成物が溶媒を含む場合には、例えば室温で1〜60分放置、或いは、例えば40〜80℃で1分〜60分加熱して溶媒を除去することが好ましい。
【0080】
そして、溶媒除去後、前記潤滑被膜用塗料組成物が熱硬化性の場合には、その後、基材表面に塗布された当該組成物膜を加熱して硬化被膜を得る。加熱の態様は適宜調節可能であるが、例えば、170〜200℃にて5〜90分実施することができる。必要であれば、上記の溶媒の除去と樹脂硬化用の加熱を同時に実施してもよい。
【0081】
前記潤滑被膜用塗料組成物が高エネルギー線硬化性の場合には、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線を基材表面に塗布された当該組成物に照射して硬化被膜を得る。安全性等の点で高エネルギー線としては紫外線が好ましい。高エネルギー線が紫外線である場合の紫外線照射量は適宜調節可能であるが、積算光量で1000〜4000mJ/cm
2が好ましく、2000〜3000mJ/cm
2がより好ましい。
【0082】
本発明は、このようにして得られる潤滑被膜にも関する。本発明の被膜の厚みは任意であるが、例えば1〜50μmとすることができ、2〜25μmが好ましく、3〜15μmがより好ましい。
【0083】
前記潤滑被膜用塗料組成物は前記成分(D)を含んでおり、そのために、本発明の被膜は潤滑被膜として使用することができる。
【0084】
本発明の潤滑被膜は摺動部材の表面に好適に使用することができる。摺動部材の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ゴム、プラスチック又は金属製のものが挙げられる。ゴム製摺動部材としては、例えば、タイミングベルト、コンベアベルト、サンルーフ用ボディシール、グラスラン、ウェザーストリップ、オイルシール、パッキン、ワイパーブレード、ドクターブレード、クリーニングブレード、現像ブレード、帯電ローラー、現像ローラー、トナー供給ローラー、転写ローラー、ヒートローラー、加圧ローラー、給紙ローラー、搬送ローラー、中間転写ベルト、中間転写ドラム、ヒートベルト等が挙げられる。プラスチック製摺動部材としては、例えば、ギヤ、軸受、ドアパネル、インストルメントパネル、ドアロック等が挙げられる。金属製摺動部材としてはクランクシャフト、スライドベアリング、ピストン、ガスケット等が挙げられる。摺動部材の形態も特に限定されるものではなく、例えば、繊維状のもの又は繊維を含有するものであってもよい。繊維状摺動部材又は繊維を含有する摺動部材としては、例えば、車両用シート、カーペット、タイヤコード、シートベルト等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は潤滑被膜を備える各種の製品に利用することが可能であり、特に、潤滑被膜を備える摺動部材の製造に好適に利用することができる。
【実施例】
【0086】
[合成例1]
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置に、ポリカーボネートポリオール(数平均分子量:1,000)0.1molと、ジメチロールプロピオン酸0.2molと、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート0.3molと、ジブチル錫ジラウリレート0.1gと、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)50gとを導入し、撹拌して反応させた。ウレタン化反応終了後、トリエチルアミン0.2molと、メチルアクリレート(アクリル当量=86)30g(0.300mol)と、ヒドロキシブチルアクリレート(アクリル当量=144)30g(0.208mol)とを添加して撹拌した。これを水300gと1,6-ヘキサンジアミン0.1molとの混合溶液に加え、ラジカル重合性樹脂組成物(紫外線硬化性ポリウレタン樹脂分散物)を得た。
【0087】
[比較合成例1]
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置に、ポリカーボネートポリオール(数平均分子量:1,000)0.1molと、ジメチロールプロピオン酸0.2molと、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート0.3molと、ジブチル錫ジラウリレート0.1gと、NEP50gとを導入し、撹拌して反応させた。ウレタン化反応終了後、トリエチルアミン0.2molと、ヒドロキシブチルアクリレート(アクリル当量=144)60gとを添加して撹拌した。これを水300gと1,6-ヘキサンジアミン 0.1molとの混合溶液に加え、ラジカル重合性樹脂組成物(紫外線硬化性ポリウレタン樹脂分散物)を得た。
【0088】
[比較合成例2]
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置に、ポリカーボネートポリオール(数平均分子量:1,000)0.1molと、ジメチロールプロピオン酸0.2molと、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート0.3molと、ジブチル錫ジラウリレート0.1gと、NEP50gとを導入し、撹拌して反応させた。ウレタン化反応終了後、トリエチルアミン0.2molと、ヒドロキシブチルアクリレート(アクリル当量=144)30gと、ラウリルメタアクリレート(アクリル当量=240)30gとを添加して撹拌した。これを水300gと1,6-ヘキサンジアミン0.1molとの混合溶液に加え、ラジカル重合性樹脂組成物(紫外線硬化性ポリウレタン樹脂分散物)を得た。
【0089】
[剥離強度測定]
合成例1並びに比較合成例1及び2で得られたラジカル重合性樹脂組成物100重量部に対してラジカル型光重合開始剤(IRGACURE 907)を2重量部の配合比で添加し、撹拌して溶解した。得られた混合物をエチレン−プロピレン−ジエンゴム板(厚さ1mm)の表面に、バーコーターで乾燥被膜厚が5μmとなるように塗布し、250WハンディタイプUV照射機((株)あすみ技研製)により積算光量1000mJ/cm
2で硬化させた。硬化後の試験片の塗膜面同士を
図1のように貼り合わせ瞬間接着剤にて先端から70mmまでを接着し常温にて10分間放置後、島津オートグラフAGSシリーズ((株)島津製作所製)を用いて引張ったときの剥離強度を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において■は、該当成分が存在することを示す。また、評価結果は以下の基準による。
剥離強度 ○:>10N/10mm、△:5〜10N/10mm、×:1〜5N/10mm
【0090】
【表1】
【0091】
[実施例1〜5]
合成例1で得られたラジカル重合性樹脂組成物にラジカル型光重合開始剤(IRGACURE 907)を表2に示す配合比で撹拌混合して溶解した。その後、固体潤滑剤及びその他の添加剤を攪拌しながら加え、得られた混合物を1000rpmで30分間混合攪拌して潤滑被膜用塗料組成物を得た。
【0092】
[実施例6]
合成例1で得られたラジカル重合性樹脂組成物にラジカル型熱重合開始剤(OTAZO-15)を表3に示す配合比で撹拌混合して溶解した。その後、固体潤滑剤及びその他の添加剤を攪拌しながら加え、得られた混合物を1000rpmで30分間混合攪拌して潤滑被膜用塗料組成物を得た。
【0093】
[比較例1〜6]
比較合成例1及び2で得られたラジカル重合性樹脂組成物にラジカル型光重合開始剤(IRGACURE 907)を表2に示す配合比で撹拌混合して溶解した。その後、固体潤滑剤及びその他の添加剤を攪拌しながら加え、得られた混合物を1000rpmで30分間混合攪拌して潤滑被膜用塗料組成物を得た。
【0094】
[比較例7及び8]
比較合成例1及び2で得られたラジカル重合性樹脂組成物にラジカル型熱重合開始剤(OTAZO-15)を表3に示す配合比で撹拌混合して溶解した。その後、固体潤滑剤及びその他の添加剤を攪拌しながら加え、得られた混合物を1000rpmで30分間混合攪拌して潤滑被膜用塗料組成物を得た。
【0095】
[潤滑被膜形成]
潤滑被膜用塗料組成物を表2及び表3に示す各種基材に膜厚5〜100μmとなるようにスプレー塗装した。溶媒を蒸発させるため25℃×1分間放置した後、実施例1〜5並びに比較例1〜6(表2)については250WハンディタイプUV照射機((株)あすみ技研製)により2000mJ/cm
2〜3000mJ/cm
2の積算光量で照射し、硬化被膜を作成した。実施例6及び比較例7〜8(表3)については、180℃、15分間加熱し、硬化被膜を作成した。
【0096】
実施例1〜5並びに比較例1〜6について以下に示す測定及び試験を行い、潤滑被膜の評価を行った。結果を表2に併せて示す。
【0097】
<評価方法>
[摩擦係数測定]
潤滑被膜を形成した各試験片に対し、垂直荷重をかけたローラーを回転移動させることによって往復させる往復動摩擦摩耗試験機を用いて、滑り速度0.2m/s、荷重1kg、滑り距離(ストローク)100mmの条件で、SUJ2鋼ローラーに対する摺動時の動摩擦係数(単位:μ)を測定した。
【0098】
[碁盤目密着性試験]
潤滑被膜を形成した各試験片の当該被膜を100マスの碁盤目にカットし、セロテープ(登録商標)剥離試験を行った。碁盤目100マスのうち被膜の残った格子数を確認した。
◎(100),○(90〜99),△(50〜89),×(0〜49)
【0099】
実施例6及び比較例7〜8について、上記と同様にして摩擦係数測定及び碁盤目密着性試験を行い、更に、以下に示す試験を行い、潤滑被膜の評価を行った。結果を表3に併せて示す。
【0100】
[耐荷重性試験]
リングオンプレート試験機を用いて、回転数0.5m/s、ステップアップ荷重(98N/cm
2/分)の条件で、摺動により基材表面の潤滑被膜が摩耗により消失し、潤滑被膜と相手材(鋼リング)との摩擦が生じる状態になった際の荷重を評価した。
【0101】
[鉛筆硬度試験]
JIS K 5400に準拠し、潤滑被膜を形成した試験片に対して、荷重1000g、移動速度0.5mm/sの条件で引っ掻いたときの潤滑被膜が界面破壊したときの鉛筆濃度の一段階下位の濃度番号を記録した。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
表中の用語の意味は以下のとおりである。
ポリオレフィン樹脂:無水マレイン酸変性1-プロペン-1-ブテン共重合体(固形分30重量%)東洋紡(株)製
IRGACURE 907: 2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(固形分100重量%)BASFジャパン(株)製
ポリエチレン微粒子:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が5〜30μmである球状ポリエチレン樹脂微粒子(固形分100重量%)
ナイロン微粒子:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が3〜10μmである球状ナイロン12樹脂微粒子(固形分100重量%)
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)微粒子:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が0.15〜0.3μmである球状ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子(固形分50重量%)
アルミナ微粒子:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が0.03〜0.06μmである球状アルミナ微粒子(固形分55重量%)
二硫化モリブデン:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が1〜6μmである二硫化モリブデン粉末(固形分100重量%)
グラファイト:レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が3〜5μmであるグラファイト粉末(固形分100重量%)
Dow Corning 52 Additive:重量平均分子量50万〜100万のポリジメチルシロキサン水中油型エマルジョン(固形分65重量%)東レ・ダウコーニング(株)製
Agitan295:MUNZING CHEMIE GMBH製消泡剤
Rheolate 255:Elementis Specialty製増粘剤
エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム:入間川ゴム(株)製EP-5065
ニトリル(NR)ゴム:入間川ゴム(株)製IN-80
ナイロン繊維:東レ(株)製、プロミランからなるナイロン66繊維
ポリエステル繊維:東レ(株)製、テトロン(セミダル糸)からなるポリエステル繊維
SPCC-SB鋼板:日新製鋼(株)製SPCC-SB
OTAZO-15: OTAZO-15 [1,1'-Azobis(1-acetoxy-1-phenylethane)] (大塚化学(株)製)