(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記時間間隔が前記時間間隔閾値以上となるとき、前記検知対象が所定の低速で前記検知センサに接近し、前記時間間隔が前記時間間隔閾値未満となるとき、前記検知対象が所定の高速で前記検知センサに接近していると判定することを特徴とする請求項1に記載の検知システム。
前記制御手段は、前記時間間隔が複数存在する場合、前記時間間隔閾値以上となる前記時間間隔が半数以上のとき、前記検知対象が前記低速で前記検知センサに接近し、前記時間間隔閾値未満となる前記時間間隔が半数以上のとき、前記検知対象が前記高速で前記検知センサに接近していると判定することを特徴とする請求項2に記載の検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態に係る自動販売機について図面を参照して説明する。
図1に示すように、自動販売機1には前面扉2が取り付けられ、前面扉2の上部側には、缶飲料などの商品を購入する購入者が購入時に正対する接客面6が形成されている。接客面6の内側には、各商品に対応する商品見本8が展示され、接客面6における各商品見本8の下方には、各商品見本8に対応する商品選択ボタン10及び商品情報表示部12がそれぞれ設けられている。
【0015】
また、前面扉2の中間部には、商品の料金を投入するための料金投入部14、料金を返金させるための返金レバー16、投入金額を表示するための金額表示器18などが設けられている。また、前面扉2の下部側には、商品が払い出される商品取出口20、釣り銭が払い出される釣り銭取出口22などが設けられている。
図2に示すように、金額表示器18は、保護カバー24、前面カバー26、プリント基板28、及び支持枠体30を金額表示器18の前側から順次重ねた1つのユニットとして構成されている。
【0016】
保護カバー24は、透明性を有する樹脂材料等から形成され、支持枠体30に係合することで前面カバー26及びプリント基板28を収容するための1つの筐体32を構成している。
前面カバー26は、その前面が文字部分を透明にした印字シートで構成され、前面カバー26の内部は穿孔加工が適宜施され、プリント基板28の前面における各実装部が前記穿孔加工による各枠内に適宜配置されている。
【0017】
具体的には、プリント基板28の前面には、金額表示部34、赤外線通信部36、人感センサ(検知センサ)38、販売中ランプ40、お札使用不可(お札中止)ランプ42、釣銭切れ(釣り切れ)ランプ44等が実装され、特に、赤外線通信部36及び人感センサ38は、赤外線及び電波等を透過する黒色等のアクリル板で隠蔽された同じ枠内の通信部実装領域48に隣接して配置されている。
【0018】
一方、プリント基板28の背面には、外部接続用のコネクタ部や前記各実装部の作動を制御するICチップであるマイコン(制御手段)50(
図3参照)等が実装されている。
赤外線通信部36は、自動販売機1のメンテナンス等を行うオペレータが図示しないハンディーターミナル等の携帯端末を接客面6側に近づけると、例えば赤外線の交信要求信号を無線受信し、商品情報(商品の販売個数、売り上げ金額等のデータ)を赤外線で前記携帯端末に無線送信する。
【0019】
ここで、本実施例の人感センサ38は、モーションセンサに分類されるドップラーセンサであって、マイクロ波を発射することにより、発射マイクロ波と反射マイクロ波との周波数の波長のずれを検出し、このずれを検知信号として出力する。反射マイクロ波は、移動する人などの検知対象に衝突することにより形成される。
詳しくは、
図3に示すように、自動販売機1の金額表示器18に内蔵された人感センサ38は、発射マイクロ波52と反射マイクロ波54との周波数を比較することにより検知信号58を出力している。
【0020】
検知信号58は、検知対象の一例である人56の移動速度に比例してシフトする反射マイクロ波54の周波数(ドップラー周波数)を数百mVのオフセット電圧に変換した信号であり、人56が停止すると発射マイクロ波52と反射マイクロ波54との周波数のずれが生じないため、検知信号58もゼロとなる。
反射マイクロ波54の周波数を電圧に変換しただけの、いわば生データである検知信号58は、例えば3つの10倍増幅器(増幅手段)60、15倍増幅器(増幅手段)62、25倍増幅器(増幅手段)64に並行して入力される。なお、各増幅器60,62,64の増幅率、すなわち感度はそれぞれ可変であり、各増幅器60,62,64はそれぞれ独立した人感センサ38の感度調整器としての機能を有する。
【0021】
検知信号58は、これら増幅器60,62,64において、それぞれ10倍,15倍,25倍の異なる増幅率で増幅されてデータとしての分解能が高められ、10倍増幅信号(増幅信号)66、15倍増幅信号(増幅信号)68、25倍増幅信号(増幅信号)70に変換され、これら増幅信号66,68,70がマイコン50に入力される。このように、本実施例の検知システムは人感センサ38、各増幅器60,62,64、マイコン50から概略構成されている。
【0022】
各増幅器60,62,64の増幅率は人感センサ38で検知したい自動販売機1から人56までの距離Dに基づいて設定され、25倍増幅信号70は遠距離D1、15倍増幅信号68は中距離D2、10倍増幅信号66は近距離D3の検知に使用される。すなわち、各増幅器60,62,64は何れも常時信号を出力しているが、遠距離D1に存在する人56を検知する場合は、マイコン50において増幅率の大きな25倍増幅信号70を使用することにより、増幅信号が極小となって発散状態となるのを抑制しながら遠方から自動販売機1に近づく人56を精度良く検知可能である。
【0023】
一方、近距離D3に存在する人56を検知する場合は、マイコン50において増幅率の小さな10倍増幅信号66を使用することにより、増幅信号のスケールオーバー(飽和状態)を抑制しながら自動販売機1の近くまで接近した人56を精度良く検知可能である。
以下、
図4のグラフを参照して10倍,15倍,25倍増幅信号66,68,70の時系列変化の一例について説明する。なお、人56は自動販売機1の正面から一定の移動速度で近づき、商品購入後は一定の移動速度で近づいたときと同じ経路を通って遠ざかるものとする。また、10倍,15倍,25倍増幅信号66,68,70の電圧VをX25V,X15V,X10Vと表すことがある。
【0024】
また、マイコン50では、各増幅信号66,68,70の電圧Vに関して、前述した各距離D1〜D3において検知したことを判断するための所定の電圧閾値Vtが予め設定されている。
また、マイコン50では、各増幅信号66,68,70の電圧Vがこれらの立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上となったときに後述するフラグD1〜D3のオンタイミングに合致した時間t1,t2,t3を検出する。更には、マイコン50では、フラグD1〜D3のオンタイミングの時間間隔DTに基づいて、時間t1とt2との時間間隔(t2−t1)であるDT1と、時間t2とt3との時間間隔(t3−t2)であるDT2とが演算される。
【0025】
先ず、人56が自動販売機1に対して遠距離D1まで近づくと、実線で示すように、25倍増幅信号70の電圧VであるX25Vは、その立ち上がり領域A1において時間t1に電圧閾値Vt以上となる。更に人56が移動を継続し、自動販売機1に中距離D2まで近づくと、破線で示すように、15倍増幅信号68の電圧VであるX15Vは、その立ち上がり領域A1において時間t2に電圧閾値Vt以上となる。更に人56が移動を継続し、自動販売機1に近距離D3まで近づくと、一点鎖線で示すように、10倍増幅信号66の電圧VであるX10Vは、その立ち上がり領域A1において時間t3に電圧閾値Vt以上となる。
【0026】
更に人56は、移動を継続して自動販売機1に近接し、料金投入部14への金銭投入、商品選択ボタン10の押下といった商品購入のための動作を行い、商品取出口20から払い出された商品を取り出す。この段階においては、電圧Vは25倍増幅信号70、15倍増幅信号68、10倍増幅信号66の順に飽和状態となって飽和電圧Vsに一定となる。
次に、人56は商品を購入した後、自動販売機1から遠ざかる方向に移動を開始すると、電圧Vは10倍増幅信号66、15倍増幅信号68、25倍増幅信号70の順に飽和状態から復帰し、何れも飽和電圧Vsよりも時間経過とともに徐々に小さくなり、それぞれ電圧Vの立ち下がり領域A2を形成する。
【0027】
以下、
図5〜
図7のフローチャート、及び
図8の表を参照して、マイコン50において実行される人検知制御について説明する。
図5〜
図7に示すように、マイコン50は、X25V、X15V、X10Vがこれらの立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上となるか否かを判定し、この判定結果に基づいて、人感センサ38、すなわち自動販売機1に対する人56の接近の有無を各距離D1〜D3において個別に且つ並行して判定している。
【0028】
詳しくは、
図5に示すように、マイコン50は、X25Vが立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上であるか否かを判定する<ステップS1>。
マイコン50は、ステップS1の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、X25V≧Vtの関係式が成立すると判定した場合には、人56が遠距離D1で検知されたことを表すX25Vフラグ(フラグD1)を1とする出力を行い<ステップS2>、再びステップS1に戻って次周期の監視を行う。
【0029】
一方、ステップS1の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、X25V≧Vtの関係式が不成立(フラグD1:0)と判定された場合には、再びステップS1が実行される。
図6に示すように、マイコン50は、X25Vの監視と並行して、X15Vが立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上であるか否かを判定する<ステップS11>。
マイコン50は、ステップS11の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、X15V≧Vtの関係式が成立すると判定した場合には、人56が中距離D2で検知されたことを表すX15Vフラグ(フラグD2)を1とする出力を行い<ステップS12>、再びステップS11に戻って次周期の監視を行う。
【0030】
一方、ステップS11の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、X15V≧Vtの関係式が不成立(フラグD2:0)と判定された場合には、再びステップS11が実行される。
図7に示すように、マイコン50は、X25V及びX15Vの監視と並行して、X10Vが立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上であるか否かを判定する<ステップS21>。
【0031】
マイコン50は、ステップS21の判定結果が真(YES)であるとき、すなわち、X10V≧Vtの関係式が成立すると判定した場合には、人56が近距離D3で検知されたことを表すX10Vフラグ(フラグD3)を1とする出力を行い<ステップS22>、再びステップS21に戻って次周期の監視を行う。
一方、ステップS21の判定結果が偽(NO)であるとき、すなわち、X10V≧Vtの関係式が不成立(フラグD3:0)と判定された場合には、再びステップS21が実行される。
【0032】
図8に示すように、マイコン50はフラグD1〜D3を総合的に判定することにより、自動販売機1に対する人56の接近態様を最終的な検知結果として出力する。この判定では、マイコン50で演算された前述の時間間隔DT1,DT2が所定の時間間隔閾値DTt以上であるか否かも判定し、人56の接近速度も併せて出力される。なお、時間間隔閾値DTtは、人56の平均的な一般速度(例えば5km/h)に基づいて設定される。
【0033】
マイコン50で行われる人検知の一態様である各ケースNO.1〜3に示すように、各フラグD1〜D3の何れかが1と出力されたときは、人56が自動販売機1に接近中(人接近)であると判定する。一方、ケースNO.4に示すように、各フラグD1〜D3のすべてが0と出力されたときは、自動販売機1の近くに人56は存在しない(人無し)と判定する。以下、各ケースNO.1〜3の詳細について説明する。
【0034】
<ケースNO.1>
25倍増幅信号70のフラグD1のみが1となるときは、自動販売機1に対し人56が遠距離D1まで近づいた(人接近)と判定される。
<ケースNO.2>
25倍増幅信号70のフラグD1及び15倍増幅信号68のフラグD2が1となるときは、自動販売機1に対し人56が中距離D2まで近づいた(人接近)と判定する。更に、本ケースの場合には、時間間隔DT1が演算され、DT1が時間間隔閾値DTt以上であるかが判定され、DT1≧DTtが成立するときには、自動販売機1に対し人56が中距離D2まで人56の一般速度に比して低速で近づいた(人接近・低速)と判定される。
【0035】
一方、DT1≧DTtが成立しないとき(DT1<DTt)には、自動販売機1に対し人56が中距離D2まで人56の一般速度に比して高速で近づいた(人接近・高速)と判定される。
<ケースNO.3>
各増幅信号66,68,70のそれぞれのフラグD1〜D3がすべて1となるときは、自動販売機1に対し人56が近距離D3まで近づいた(人接近)と判定する。
【0036】
このように、マイコン50は、立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上の電圧Vとなる増幅信号が存在するとき、増幅率が最も大きい増幅信号に対応する距離に人56が接近していると判定する。具体的には、マイコン50は、電圧閾値Vt以上の電圧Vとなる増幅信号の増幅率が大きいほど、すなわちケースNO.1の場合のように、各増幅信号66,68,70のうち比較的大きい増幅率のX25Vが電圧閾値Vt以上の電圧Vとなるとき、自動販売機1から遠距離D1に人56が接近していると判定する。
【0037】
一方、マイコン50は、電圧閾値Vt以上の電圧Vとなる増幅信号の増幅率が小さいほど、すなわちケースNO.3の場合のように、各増幅信号66,68,70のうち比較的小さい増幅率のX10Vが電圧閾値Vt以上の電圧Vとなるとき、自動販売機1から近距離D3に人56が接近していると判定する。
また、マイコン50は、時間間隔DT(DT1,DT2)が時間間隔閾値DTt以上となるか否かを判定し、この判定結果に基づいて人感センサ38、すなわち自動販売機1に対する人56の接近速度を判定する。
【0038】
具体的には、ケースNO.2の場合のように、時間間隔DTが時間間隔閾値DTt以上となるとき、人56が一般速度に比して低速で自動販売機1に接近し、時間間隔DTが時間間隔閾値DTt未満となるとき、人56が一般速度に比して高速で自動販売機1に接近していると判定する。
また、ケースNO.3の場合のように、時間間隔DTが複数存在する場合には、マイコン50は、時間間隔閾値DTt以上となる時間間隔Dtが半数以上(ここでは2つの時間間隔Dtのうち2つが時間間隔Dt以上)のとき、人56が一般速度に比して低速で自動販売機1に接近していると判定する。
【0039】
一方、時間間隔閾値DTt未満となる時間間隔Dtが半数以上(ここでは2つの時間間隔Dtのうち2つが時間間隔Dt未満)のとき、人56が高速で自動販売機1に接近していると判定する。また、時間間隔閾値DTt以上となる時間間隔Dtと時間間隔閾値DTt未満となる時間間隔Dtとが同数となるとき、人56が一般速度で自動販売機1に接近していると判定する。
【0040】
こうしてマイコン50において判定された人検知制御の各最終結果は、信号線を含む通信によって自動販売機1に送信され、自動販売機1の商品販促や省エネ等のための種々の制御に利用される。
以上のように本実施例の自動販売機1によれば、人感センサ38、すなわち自動販売機1から各増幅器60,62,64に並行して入力される検知信号58を各増幅器60,62,64がそれぞれ異なる増幅率で増幅して異なる増幅信号66,68,70を出力する。また、マイコン50は各増幅信号66,68,70の各電圧Vがこれらの立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上となるか否かの判定結果に基づいて自動販売機1に対する人56の接近の有無を判定する。これにより、人感センサ38の感度切替を行わなくとも、自動販売機1に対する人56の接近の有無を複数の感度で並行して監視することができ、感度切替の場合に生じる人感センサ38の検知不能時間及び検知不能領域を排除し、人感センサ38の精度を広範囲に亘って確保することができる。従って、自動販売機1において商品販売促進及び省エネ等に係る制御をリアルタイムに且つ適切に行うことができる。
【0041】
また、マイコン50は、増幅率が最も大きい増幅信号に対応する距離Dに人56が接近していることを判定することにより、自動販売機1において人56までの距離Dに応じた商品販売促進及び省エネ等に係る制御をより一層効果的に行うことができる。
また、マイコン50は、電圧Vが電圧閾値Vt以上となった増幅信号間の時間間隔DTを演算し、この時間間隔DTが時間間隔閾値DTt以上となるか否かを判定し、自動販売機1に対する人56の接近速度を判定する。これにより、自動販売機1において人38の移動速度に応じた商品販売促進及び省エネ等に係る制御をより一層効果的に行うことができる。
【0042】
本発明は、前記実施例の自動販売機1に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、前記実施例では、マイコン50の代わりに自動販売機1の全体制御を行うための図示しないMCUによって検知システムを構成しても良い。
また、前記実施例における増幅器の数やその増幅率、及び電圧閾値Dtの数は、人56を検知したい領域、検知したい距離D、要求される人感センサ38の精度によって変更可能であり、前記実施例に限定されない。例えば、増幅率の異なる増幅器を4つ以上多数設け、電圧閾値Dtを多数設定することにより、より高精度で応答性の高い、きめ細かな人感検知制御を行うことができる。
【0043】
また、前記実施例では、各増幅信号66,68,70の各電圧Vがこれらの立ち上がり領域A1において電圧閾値Vt以上となるか否かを判定し、この判定結果に基づいて人感センサ38に対する人56の接近の有無を判定する。しかし、これに限らず、人56の接近有無の判定手法は、電圧Vの傾き等、各増幅信号66,68,70を利用した他のデータに基づいて人56の接近有無を判定しても良い。
【0044】
また、前記実施例は各増幅器60,62,64を検知信号58の増幅手段としているが、各増幅信号66,68,70の分解能を確保可能であれば、生データである検知信号58をマイコン50において増幅演算して使用しても良い。
また、各増幅信号66,68,70の各電圧Vの電圧閾値Vtは、各増幅信号66,68,70毎に異なるようにしても良い。
【0045】
また、前記実施例では人感センサ38はドップラーセンサの場合について説明したが、本発明は、このような電波式に限らず、アナログ信号を受信できるセンサであれば、光学式のセンサやモーションセンサ以外のセンサにも幅広く適用可能である。
また、本発明の検知システムは、自動販売機1に限らず、店舗等に設置されるショーケースに陳列される商品の販売促進及びショーケースの省エネ等に係る制御にも適用することができる。