【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0023】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0024】
上記車両1は、上記車体2と、この車体2に懸架され、この車体2を走行面3上に支持するそれぞれ左右一対の前、後車輪4を備える。上記車体2は板金製で、その内部空間が車室5とされる。また、上記車体2および車室5は、車体2の幅方向の中央線を基準として左右対称形とされる。
【0025】
上記車体2は、車室5の側面を形成する左、右側壁8と、車室5の後面を形成する後壁9と、車室5の上面を形成するルーフパネル10と、車体2の幅方向に延び、車体2の後下部かつ上記後壁9の下端縁部を構成するロアバックパネル11と、車室5の後部下面を形成し、その後端縁部が上記ロアバックパネル11の前面に結合されるリヤフロアパネル12とを備える。
【0026】
上記ロアバックパネル11は、その長手方向の各部断面が中空閉断面構造をなして車体2の骨格部材を構成する。具体的には、上記ロアバックパネル11は、その前面部を構成するインナパネル16と、後面部を構成するアウタパネル17とを有している。これらインナ、アウタパネル16,17は、各上端縁部同士と各下端縁部同士とがそれぞれ結合されて、これらインナ、アウタパネル16,17の間に車体2の幅方向に長く延びる内部空間18が形成される。
【0027】
上記側壁8には、車室5の内外を連通させる前、後サイドドア開口21,22が形成されると共に、これら各ドア開口21,22を車体2の外部から開閉可能とする前、後サイドドア23,24が設けられる。また、上記後壁9には、車室5の内外を連通させるバックドア開口26が形成されると共に、このドア開口26を車体2の外部から開閉可能とするバックドア27が設けられる。
【0028】
上記リヤフロアパネル12における車体2の幅方向での中央部に、上方に向かって開口する凹部31が形成される。この凹部31には上記車輪4用のスペアタイヤ32が横臥姿勢で収納可能とされる。また、上記凹部31には不図示の工具なども収納可能とされる。また、上記凹部31の上端開口を、その上方から開閉可能に閉じる樹脂製の閉鎖パネル33が設けられる。上記の場合、凹部31の後端面は、上記ロアバックパネル11のインナパネル16により形成される。
【0029】
上記車室5の前端部には、暖気や冷気などの空調用空気を、車室5の後部がわに向かって送風可能とする空調装置36が設けられる。
【0030】
上記車室5の後部と凹部31とを互いに連通させるよう、上記閉鎖パネル33における車体2の幅方向での両側部にそれぞれ第1換気口39,39が形成される。これら各第1換気口39は、上記凹部31の上端開口を開閉する際に上記閉鎖パネル33への手掛け用として、この閉鎖パネル33の側端縁部に切り欠き状に形成されたものである。なお、上記第1換気口39は、上記閉鎖パネル33の左右いずれか一側部に形成してもよく、この閉鎖パネル33の側部を上下に貫通する貫通孔としてもよい。
【0031】
上記凹部31における車体2の幅方向での中途部とロアバックパネル11の内部空間18とを互いに連通させるよう、上記ロアバックパネル11のインナパネル16に第2換気口40が形成される。この第2換気口40は、車体2の幅方向で上記第1換気口39とは互いに相違する位置に形成される。図例では、上記第2換気口40は、上記凹部31における車体2の幅方向でのほぼ中央部に形成される。
【0032】
上記ロアバックパネル11の内部空間18と車体2の後方外部域とを互いに連通させるよう、上記ロアバックパネル11のアウタパネル17における車体2の幅方向(長手方向)での両側部に、それぞれ第3換気口41,41が形成される。これら、各第3換気口41は、それぞれ上記凹部31および上記各第2換気口40よりも外側方に形成される。なお、上記各第3換気口41は、それぞれ上記第2換気口40よりも外側方に形成されるが、この場合、上記凹部31の各側部とほぼ同じ位置に形成してもよい。また、上記第3換気口41は、上記ロアバックパネル11の左右いずれか一側部に形成してもよい。
【0033】
上記各第3換気口41には、車室5がわから車体2外部に向かってのみ上記各第3換気口41を通し空気を流動A可能とさせる不図示のリード弁が設けられる。このため、仮に車室5が負圧になったとしても、車体2外部の空気が車両1の駆動用エンジンの排気と共に車室5がわに流入する、という不都合の発生は防止される。
【0034】
上記構成において、ドア開口21,22,26に対しドア23,24,27を開閉動作させるとき、このドア開閉動作に連動して車室5の空気圧が上昇変動したとする。すると、この際、車室5の空気の一部が上記凹部31を閉じた閉鎖パネル33の第1換気口39、閉鎖パネル33で閉じられた凹部31、第2換気口40、ロアバックパネル11の内部空間18、および第3換気口41を順次流動Aして車室5が換気させられる。このため、上記ドア開閉動作時における車室5の空気圧の変動は抑制される。これにより、上記ドア開閉動作が上記車室5の空気圧によって邪魔されることは防止されて、上記ドア開閉動作についての良好な操作フィーリングが確保されると共に、車両1への良好な乗り心地が確保される。
【0035】
一方、上記車室5の前端部の上記空調装置36から車室5の後部がわに向かって送風された空調用空気は、その一部が上記凹部31を閉じた閉鎖パネル33の第1換気口39、閉鎖パネル33で閉じられた凹部31、第2換気口40、ロアバックパネル11の内部空間18、および第3換気口41を順次流動Aして車体2後部の後方外方域に排出されることにより車室5が換気される。このため、上記空調用空気は車室5の後部にまで淀みなく円滑に送風されることとなって、車室5の各部に、より均一な空調が達成され、この点でも、車両1への良好な乗り心地が確保される。
【0036】
また、前記したように、凹部31は、上記リヤフロアパネル12における車体2の幅方向での中央部に形成され、上記閉鎖パネル33は、上記凹部31の上端開口を閉じるものであることから、上記閉鎖パネル33の側部に形成されて上記車室5と凹部31とを連通させる第1換気口39は上記リヤフロアパネル12の中央部寄り、つまり、車室5の中央部寄りに位置することとなる。
【0037】
このため、上記第1換気口39が車室5後部の側端部に位置していることに比べ、上記第1換気口39を通しての上記車室5の換気は効果的に達成される。よって、第1に、上記ドア開閉動作時の良好な操作フィーリングがより確実に確保される。また、第2に、上記ドア開閉動作時における車室5の空気圧の変動がより確実に抑制されると共に、上記空調用空気は車室5の後部にまでより円滑に送風されることとなって、車室5の各部に、より均一な空調が達成され、もって、車両1への良好な乗り心地がより確実に確保される。
【0038】
また、上記したように、車室5と凹部31とを連通させる第1換気口39を車室5の中央寄りに位置させたことにより、車室5の各部に、より均一な空調が達成されるのであり、よって、車両1の駆動力に依る上記空調装置36の働きを効率よくできることから、その分、車両1の燃費の向上が達成される。
【0039】
一方、上記構成の車両1に因れば、車体2外部の騒音は、上記第3換気口41、ロアバックパネル11の内部空間18、第2換気口40、凹部31、および第1換気口39を順次通って車室5に達しようとする。また、特に、上記空調装置36の作動により上記車室5が正圧状態であって、上記第3換気口41における前記リード弁が開弁状態である場合には、上記した車体2外部の騒音は、大きくは消音することなくそのままの音圧で車室5がわに達しようとする。
【0040】
しかし、前記したように、第3換気口41はロアバックパネル11の側部に形成され、第2換気口40は凹部31における車体2の幅方向での中途部に形成され、凹部31は車体2の幅方向での中央部に形成され、第1換気口39は上記凹部31の上端開口を閉じる閉鎖パネル33の側部に形成されている。
【0041】
このため、車体2外部から上記第3換気口41、ロアバックパネル11の内部空間18、第2換気口40、凹部31、および第1換気口39を通り車室5に向かおうとする騒音の音波はジグザグ状に進行させられる。よって、この進行途中で、上記音波はあらゆる方向に反射して互いに干渉し合うことにより、そのエネルギーが消費され、この結果、車体2外部の騒音が車室5に達することは効果的に抑制される。しかも、車体2外部の騒音が上記第2換気口40を通り凹部31に入り込むとき、上記第2換気口40の開口面積に比べて十分に大きい断面積を有し、かつ、容積が大きい上記凹部31は、いわゆる拡張型消音器として働くことから、車体2外部の騒音が車室5に達することは、より効果的に抑制される。よって、車両1への良好な乗り心地が更に確実に確保される。
【0042】
上記の結果、前記したドア開閉動作時の操作フィーリングの向上や、車室5の各部の空調をより均一にさせるなどの目的のために、車室5の換気の効果を向上させようとする場合に、上記第1〜第3換気口39〜41の開口面積を、ある程度大きくしたとしても、車体2外部の騒音が車室5に達することは効果的に抑制される。
【0043】
そして、上記した車体2外部の騒音が車室5に達することを効果的に抑制するための部材である上記第3換気口41、ロアバックパネル11の内部空間18、第2換気口40、凹部31、および第1換気口39のうち、凹部31はスペアタイヤ32の収納用のものであり、第1換気口39は閉鎖パネル33を操作する際の手掛け用のものであることから、これらを利用した分、上記した車体2外部の騒音が車室5に達することについての抑制は、簡単な構成で達成される。
【0044】
なお、上記閉鎖パネル33による遮音や吸音作用により所望の大きさの音や所望の周波数域の音についての消音が効果的にできるよう、この閉鎖パネル33は、その材質、厚さ、多孔構造などの種々の選択が可能とされる。