(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297828
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】コンクリート部材およびコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/07 20060101AFI20180312BHJP
E04B 1/62 20060101ALI20180312BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
E04C5/07
E04B1/62 Z
E04G21/12 105Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-256139(P2013-256139)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-113622(P2015-113622A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 尚美
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−119722(JP,A)
【文献】
特開2005−300482(JP,A)
【文献】
特開平08−119764(JP,A)
【文献】
特開昭62−170680(JP,A)
【文献】
特開2013−032643(JP,A)
【文献】
米国特許第05617685(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0096476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62
E04C 3/20,5/07
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物を構成するコンクリート部材であって、
内部に配設された鉄筋と、
前記鉄筋よりも当該コンクリート部材の表面側の部位であって、少なくとも所定以上の引張応力が作用する部位のみに、骨材、モルタルおよび樹脂とで形成された改良部と、を有することを特徴とするコンクリート部材。
【請求項2】
コンクリート構造物を構成するコンクリート部材の製造方法において、
型枠内に鉄筋を配置して前記型枠にコンクリートを充填する際に、前記鉄筋よりも当該コンクリート部材の表面側の部位であって、所定以上の引張応力が作用する部位となる箇所のみに、骨材とモルタルとによって、健全なコンクリートよりも空隙の多い多空隙部を形成し、
前記コンクリートの硬化後、該多空隙部の空隙に樹脂を充填して硬化させることにより、前記表層部に改良部を形成することを特徴とするコンクリート部材の製造方法。
【請求項3】
骨材とモルタルとによって、健全なコンクリートよりも空隙の多い多空隙体を形成し、
前記多空隙体を、型枠内の所定箇所に、前記型枠の内面と接するように配置し、
前記型枠に前記コンクリートを流し込み、前記多空隙体の一部に前記コンクリートのモルタルが充填されていない状態で前記コンクリートを硬化させることにより、前記多空隙部を形成し、
前記多空隙部に樹脂を充填して前記改良部を形成することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート部材の製造方法。
【請求項4】
底壁または側壁の所定箇所に孔が形成された型枠に、前記コンクリートを流し込み、
前記孔から前記コンクリートのモルタルの一部を流出させ、前記孔の近傍に前記コンクリートの骨材のみが残された状態で前記コンクリートを硬化させることにより、前記多空隙部を形成し、
前記多空隙部に樹脂を充填して前記改良部を形成することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材、およびこのコンクリート部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、圧縮応力に強い反面、引張応力には弱いという性質を有している。このため、高架橋等のコンクリート構造物を構成するコンクリート部材(柱や梁等)に荷重が作用すると、引張応力が作用する側の表面にひび割れが生じることがある。特に、コンクリート部材を、水平に設置される梁として用いる場合には、荷重の作用によって曲げ応力が発生し、下面側にひび割れが生じ易くなる。ひび割れの幅は、コンクリート部材の耐久性に影響してくるので、コンクリート部材を製造する際には、予め発生すると想定されるひび割れの幅が所定の制限値以下に収まるように、その断面積や配設する鉄筋の数等を設計する必要がある。
【0003】
近年では、コンクリート部材の表層部に、繊維補強コンクリートを複数の孔が空いた板状に形成したひび割れ防止部材を型枠内面の所定箇所に設置し、型枠に通常のコンクリートを流し込んで硬化させることにより、コンクリート部材の表層部の靭性を高める、といった技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−053555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維補強コンクリートは、コンクリート部に微小なひび割れが生じ、繊維が引っ張られることではじめてその効果を発揮するものなので、ひび割れの幅を小さくすることはできても、ひび割れの発生そのものを防ぐことはできない。このため、ひび割れ幅の制限値が厳しい場合には、やはりコンクリート部材の断面積を大きくしたり、配設する鉄筋を増やしたりする必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材の表層部を、僅かなひび割れも生じにくいものにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材であって、
内部に配設された鉄筋と、前記鉄筋よりも当該コンクリート部材の表面側の部位であって、少なくとも所定以上の引張応力が作用する部位
のみに、骨材、モルタルおよび樹脂とで形成された改良部
と、を有することを特徴とする。
【0008】
一般に、樹脂は、コンクリートに比べて靭性(伸び)が高いので、本発明のようにすれば、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材として通常の状態で使用する限り、表層部にひび割れが生じなくなる。このため、コンクリート部材、およびこのコンクリート部材によって構成されるコンクリート構造物の耐久性が向上する。その結果、コンクリート部材およびコンクリート構造物のメンテナンスが長期に亘って不要となるので、維持管理の手間やコストが軽減される。
また、断面の大きさや鉄筋の配設本数が、所定の強度を有するための最低限の量で済むので、従来の同程度の強度を有するコンクリート部材に比べて小型化することができる。このため、空間を確保し易くなるので、コンクリート構造物をより自由に設計することができる。
【0009】
また、本発明は、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材の製造方法において、
型枠内に鉄筋を配置して前記型枠にコンクリートを充填する際に、
前記鉄筋よりも当該コンクリート部材の
表面側の部位であって、所定以上の引張応力が作用する部位となる箇所
のみに、骨材とモルタルとによって、健全なコンクリートよりも空隙の多い多空隙部を形成し、前記コンクリートの硬化後、該多空隙部の空隙に樹脂を充填して硬化させることにより、前記表層部に改良部を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明のようにすれば、従来のように、ひび割れを発生させないためだけに、断面積を大きくしたり、鉄筋の配設本数を増やしたりすることなく、表層部にひび割れの生じないコンクリート部材を製造することができるので、製造の手間やコストを低減することができる。
【0011】
なお、好ましくは、上記発明において、骨材とモルタルとによって、健全なコンクリートよりも空隙の多い多空隙体を形成し、前記多空隙体を、型枠内の所定箇所に、前記型枠の内面と接するように配置し、前記型枠に前記コンクリートを流し込み、前記多空隙体の一部に前記コンクリートのモルタルが充填されていない状態で前記コンクリートを硬化させることにより、前記多空隙部を形成し、前記多空隙部に樹脂を充填して前記改良部を形成するようにしてもよい。
モルタルは、その粘性により、多空隙体の中心部まで入り込みにくいので、このようにすれば、容易に多空隙部を形成することができる。
また、多空隙体の表層部にモルタルが入り込むことで、多空隙体とコンクリートが一体化するので、改良部がコンクリートに強力に付着し、剥離しにくくなる。
【0012】
また、好ましくは、上記発明において、底壁または側壁の所定箇所に孔が形成された型枠に、前記コンクリートを流し込み、前記孔から前記コンクリートのモルタルの一部を流出させ、前記孔の近傍に前記コンクリートの骨材のみが残された状態で前記コンクリートを硬化させることにより、前記多空隙部を形成し、前記多空隙部に樹脂を充填して前記改良部を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、流し込んだコンクリートからモルタルのみが分離・流出するので、型枠にコンクリートを流し込むだけで多空隙部が形成され、改良部の形成が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材の表層部を、僅かなひび割れも生じにくいものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1,第2実施形態のコンクリート部材を用いたコンクリート構造物の一部を示した縦断面図である。
【
図2】第1実施形態のコンクリート部材の製造方法を説明する図である。
【
図3】第1実施形態のコンクリート部材と、従来のコンクリート部材の比較実験について説明する図である。
【
図4】
図3の比較実験の結果について説明する図である。
【
図5】
図3の比較実験の結果について説明する図である。
【
図6】第2実施形態のコンクリート部材の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図1〜5を参照して、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(コンクリート部材の構成)
本実施形態のコンクリート部材である梁1は、例えば、
図1に示すように、柱2の中間部から他の柱2の中間部にかけて設けられることで、高架橋等のコンクリート構造物10の一部を構成している。梁1は、コンクリート部3と、コンクリート部3の内部に配設された鉄筋部4と、下かぶり(表層部)の所定範囲に広がる改良部5とで構成されている。コンクリート部3は、骨材とモルタルペースト(以下モルタル)からなる従来通りのものとなっている。鉄筋部4も、主鉄筋41とせん断補強鉄筋(以下帯鉄筋)42からなる従来通りのものとなっている。
【0017】
改良部5は、多空隙部51とエポキシ樹脂(以下樹脂52)とで構成されている。多空隙部51は、コンクリート部3に用いられたものと同じ骨材を、
図2(a)に示すように、少量のモルタルで固めた豆板に近い(空隙の多い)状態のものとなっている。多空隙部51の空隙は、ほぼ樹脂52で充填されている。改良部5の幅および奥行きは、この梁1の所定以上の引張応力が作用する部位(この梁1に改良部5を設けなかった場合にひび割れが発生すると想定される範囲)を全て覆うことができる程度となっている。また、改良部5の厚さは、下かぶりの厚さより薄く、すなわち、帯鉄筋42の下端に届かない程度となっている。コンクリート部3と改良部5の境界は、コンクリート部3のモルタルが多空隙部51に入り込むことで、複雑な凹凸を形成しているため、改良部5は、コンクリート部3に強力に定着している。
【0018】
図1に示したような形でコンクリート構造物10に設けられた梁1は、自重等によってその下部に、左右両柱2の方向に向かう引張応力がそれぞれ作用することになる。しかし、樹脂52で形成された改良部5は、コンクリート部3に比べて十分な靭性を有しているので、梁1の下面にはひび割れが入らない。また、改良部5は、コンクリート部3に強力に付着しているので、コンクリート部3が多少変形する程度では剥離することがない。このため、従来の梁に比べ、耐久性が向上し、メンテナンスの手間を少なくすることができる。
【0019】
(コンクリート部材の製造方法)
上記梁1を製造するには、まず、
図2(a)に示したように、骨材と少量のモルタルで板状の多空隙体51aを作成する。多空隙体51aの幅および奥行きは、形成しようとする改良部5よりも一回り大きくし、厚さはかぶりの厚さ以下とする。多空隙体51aを作成した後は、
図2(b)に示すように、多空隙体51aを型枠6内の、改良部5が形成されることになる箇所(ここでは、下面中央)に、型枠6の内面と接するように配置し、更に、
図2(c)に示すように、主鉄筋41および帯鉄筋42を配設する。各部材を配設した後は、
図2(d)に示すように、型枠6に所定量のコンクリートCを流し込む。このとき、多空隙体51aは流し込まれたコンクリートCに埋没するが、コンクリートCのモルタルはある程度の粘性を有するので、多空隙体51aの上部および側部の空隙にモルタルが入り込んでも、それ以外の空隙は充填されずに残る。この状態でコンクリートCが硬化すると、多空隙体51aとコンクリート部3とが一体化し、多空隙部51が形成される。コンクリートCが硬化したら、
図2(e)に示すように、型枠6を撤去し、コンクリート部3の下面に露出した多空隙部51の空隙に樹脂52を充填し硬化させる。こうして、梁1が製造される。
【0020】
(実験)
上記梁1を発明するに際し、梁1のひび割れの生じにくさを調べる実験を行った。具体的には、まず、本実施形態の梁1と、改良部5を有しない従来の梁1Aを、共に同じ寸法(長さ5000mm、幅300mm、高さ500mm、上面と上主鉄筋の中心との距離82mm、下面と下主鉄筋の中心との距離97mm、梁1のみ改良部5の幅1000mm)でそれぞれ製作した。そして、それぞれの梁を、図示しない実験装置に、下面の中心から長手方向に1250mm離れた箇所を下から支えるように配置し、上面の中心から長手方向に600mm離れた箇所に鉛直下方向の荷重を3段階の大きさ(0〜100kN、100〜200kN、200〜300kN)で作用させ、それぞれの梁にどのようなひび割れが生じたかを調べた。
【0021】
従来の梁1Aは、100kN未満の荷重を作用させたところ、
図4(a)に示すように、ひび割れが生じた。これに対し、本実施形態の梁1は、
図4(b)に示すように、100kN未満の荷重ではひび割れが生じなかった。その後、作用させる荷重を100kN以上200kN未満に引き上げたところ、従来の梁1Aは、それまでに生じていたひび割れが更に深くなるとともに、新たなひび割れも生じた。これに対し、本実施形態の梁1は、改良部5よりも内部に微小なひび割れが生じただけで、表面にはひび割れが生じなかった。その後、作用させる荷重を200kN以上300kN以下に引き上げたところ、従来の梁1Aは、それまでに生じていたひび割れが更に深くなるとともに、新たなひび割れも生じた。これに対し、本実施形態の梁1は、表面にはひび割れが生じなかった。
【0022】
次に、300kNの荷重を作用させた状態で、梁の下面におけるひび割れの幅を測定してみたところ、
図5に示すように、従来の梁1Aに生じたひび割れの幅の最大値は約0.5mm、平均値は約0.3mmであった。これに対し、本実施形態の梁1に生じたひび割れは、ほぼ0mmとみなすことのできるごく微小なものであった。なお、200kN以上という荷重による試験体の発生応力度は、実際の梁において、設計上では、この梁を通常の状態で用いた場合には、すなわち、この梁1が設けられたコンクリート構造物10の上を列車が通過する際に作用する荷重を超える大きさの荷重が作用しない状態では作用することの無い非常に大きな荷重である。従って、本実施形態の梁1は、通常の状態においては、ひび割れの発生を完全に防ぐことができるものであるといえる。
【0023】
以上のように、本実施形態では、コンクリート構造物10を構成する梁1(コンクリート部材)において、下かぶり(表層部)の、少なくとも所定以上の引張応力が作用する部位に、骨材、モルタルおよび樹脂とで形成された改良部5を有するようにした。
【0024】
一般に、樹脂52は、コンクリートに比べて靭性が高いので、本実施形態のようにすることで、コンクリート構造物10を構成する梁1として通常の状態(このコンクリート部材で構成されるコンクリート構造物を列車が通過する際に作用する荷重を超える大きさの荷重が作用しない状態)で使用する限り、下かぶりにひび割れが生じなくなる。このため、梁1、およびこのコンクリート部材によって構成されるコンクリート構造物10の耐久性が向上する。その結果、梁1およびコンクリート構造物10のメンテナンスが長期に亘って不要となるので、維持管理の手間やコストが軽減される。
また、断面の大きさや鉄筋の配設本数が、所定の強度を有するための最低限の量で済むので、従来の同程度の強度を有する梁に比べて小型化することができる。このため、空間を確保し易くなるので、コンクリート構造物10をより自由に設計することができる。
【0025】
また、本実施形態では、コンクリート構造物10を構成する梁1の製造方法において、
型枠6にコンクリートCを充填する際に、梁1の下かぶりであって、所定以上の引張応力が作用する部位となる箇所に、骨材とモルタルとによって、健全なコンクリートよりも空隙の多い多空隙部51を形成し、コンクリートCの硬化後、該多空隙部51の空隙に樹脂52を充填して硬化させることにより、下かぶりに改良部5を形成するようにした。
【0026】
本実施形態のようにすれば、従来のように、ひび割れを発生させないためだけに、断面積を大きくしたり、鉄筋の配設本数を増やしたりすることなく、下かぶりにひび割れの生じない梁1を製造することができるので、製造の手間やコストを低減することができる。
【0027】
また、本実施形態では、骨材とモルタルとによって多空隙体51aを形成し、多空隙体51aを、型枠6内の下面中央(所定箇所)に、型枠6の底面(内面)と接するように配置し、型枠6にコンクリートCを流し込み、多空隙体51aの一部にコンクリートCのモルタルMが充填されていない状態でコンクリートCを硬化させることにより、多空隙部51を形成し、多空隙部51に樹脂52を充填して改良部5を形成するようにした。
モルタルMは、その粘性により、多空隙体51aの中心部まで入り込みにくいので、こうすることで、容易に多空隙部51を形成することができる。また、多空隙体51aの表層部にモルタルが入り込むことで、多空隙体51aとコンクリート部3が一体化するので、改良部5がコンクリート部3に強力に付着し、剥離しにくくなる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の梁1の構成は、第1実施形態とほぼ同様であり、製造方法のみが異なるため、ここでは、製造方法についてのみ説明する。
【0029】
(コンクリート部材の製造方法)
本実施形態の方法で梁1を製造するには、まず、
図6(a)に示すように、底壁または側壁の、改良部5が形成されることになる箇所と接する箇所(ここでは底壁中央)に孔6Aaが空いた型枠6Aを用意する。孔6Aaは、骨材が通り抜けることのできない程度の大きさとし、形成しようとする改良部5の幅および奥行きに合わせて1つまたは間隔を空けて複数形成する。そして、この型枠6Aに主鉄筋41および帯鉄筋42を配設する。鉄筋41,42を配設した後は、
図6(b)に示すように、型枠6に所定量のコンクリートCを流し込む。このとき、孔6Aaの近傍に充填されたコンクリートのモルタルMが孔6Aaから流出し、骨材Aのみが残る。この状態でコンクリートCが硬化すると、孔6Aaの近傍に第1実施形態の多空隙部51と同様のものが形成される。コンクリートCが硬化したら、
図6(c)に示すように、型枠6を撤去し、コンクリート部3の下面に露出した多空隙部51の空隙に樹脂52を充填し硬化させる。こうして、第1実施形態と同様の梁1が製造される。
【0030】
以上のように、本実施形態では、底壁中央(底壁または側壁の所定箇所)に孔6Aaが形成された型枠6Aに、コンクリートCを流し込み、孔6AaからコンクリートCのモルタルMの一部を流出させ、孔6Aaの近傍にコンクリートの骨材Aのみが残された状態でコンクリートCを硬化させることにより、多空隙部51を形成し、多空隙部51に樹脂52を充填して改良部5を形成するようにした。
こうすることで、流し込んだコンクリートCからモルタルMのみが分離・流出するので、型枠6AにコンクリートCを流し込むだけで多空隙部51が形成され、改良部5の形成が容易になる。
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、梁を例に説明したが、柱等の他のコンクリート部材でもよい。その場合、引張応力が作用する面、或いはひび割れを生じさせない面に合わせて改良部を設ける位置を変更すればよい。
また、上記実施形態では、下表層部の一部を改良部としたが、下表層部全体を改良部としてもよい。
また、上記実施形態では、改良部の厚さを、帯鉄筋の下端に届かない程度としたが、改良部が軸方向鉄筋や帯鉄筋と接しても問題は無いので、かぶり全体を改良部の形成可能範囲とすることができる。
また、上記実施形態では、コンクリートを現場打ちする場合について説明したため、多空隙部を下部に形成する必要があったが、プレキャスト部材として製造する場合には、上面に多空隙部を設けて樹脂を充填するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 コンクリート構造物
1 梁(コンクリート部材)
3 コンクリート部
5 改良部
51 多空隙部
51a 多空隙体
52 樹脂
6,6A 型枠