(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒子の最頻粒子径の値から前記アンチブロッキング層の平坦部の厚さの値を減じて得た値が、200nm以上1200nm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面透明導電性フィルム。
前記透明導電層がパターン化されており、該透明導電層がパターンを形成するパターン形成部と、該透明導電層が存在しないパターン開口部とを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の両面透明導電性フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術では、光学調整層の形成にはスパッタリング等の乾式法を採用しているものの、ロール・トゥー・ロール方式での連続生産が可能となりコスト低減を図ることができる観点から湿式塗工法が望まれている。しかしながら、ロール・トゥー・ロール方式では重なり合うフィルム同士が密着して剥がれにくくなり(いわゆるブロッキング)、場合によってはフィルムに破断やキズが発生して生産性が低下するおそれがある。
【0006】
これに対し、ブロッキングを抑制するために、フィルム基材上に表面に凹凸を形成したアンチブロッキング層を形成する方策を採用することができる。しかしながら、アンチブロッキング層上に光学調整層を湿式塗工法で形成すると、アンチブロッキング層の隆起部が塗布液によって埋まり、十分な耐ブロッキング性が発揮されないことがある。また、湿式塗工法による形成では、隆起部の傾斜に応じて塗布液が隆起部周辺の低い部分に流延して、隆起部と塗工液が流延した部分とで光学調整層の厚さに変化が生じ、その結果、所期の光学設計が得られないために反射光の散乱が発生して視認性を損なってしまうことがある。
【0007】
加えて、近年、表示装置全体の視認性のさらなる向上を目的として、モジュールの各構成部材(カバーバラス、偏光板等)の反射率を低下させることが技術開発の流れとなっている。この流れに応えるために、透明導電性フィルムを有するタッチパネルのさらなる低反射率化が要求されている。
【0008】
上記観点に鑑み、本発明は、耐ブロッキング性を有するとともに、反射率が低く、反射光の散乱が抑制されて視認性が良好な両面透明導電性フィルム及びその巻回体、並びにタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アンチブロッキング層の粒子の粒径と光学調整層の厚さとを特定の関係に置くとともに、光学調整層を特定の層構成とすることにより上記目的を達成し得ることを見出し本発明にいたった。
【0010】
すなわち、本発明は、基材フィルムの両面のそれぞれに、2層以上の光学調整層が積層された光学調整層積層体、及び透明導電層がこの順に形成されており、
前記光学調整層積層体のそれぞれにおいて、前記各光学調整層は異なる屈折率を有し、
前記基材フィルムと少なくとも一方の前記光学調整層積層体との間に、粒子を含むアンチブロッキング層が形成されており、
前記アンチブロッキング層は、平坦部と、前記粒子に起因する隆起部とを有し、
前記粒子の最頻粒子径の値から前記アンチブロッキング層の平坦部の厚さの値を減じて得た値が、前記光学調整層積層体の厚さの値よりも大きく、
前記光学調整層積層体の厚さが、それぞれ60nm以上250nm以下である両面透明導電性フィルムである。
【0011】
当該両面透明導電性フィルムでは、基材フィルムの両面に形成された透明導電層との関係でそれぞれ光学設計が可能なように基材フィルムと各透明導電層との間に光学調整層を設けているので、透明導電層をパターン化した場合でもパターンを目立ちにくくし、色味の発生を抑制して良好な見栄えを達成することができる。特に、屈折率の異なる光学調整層を2層以上積層した光学調整層積層体を基材フィルムの両面において採用しているので、表面側での反射に加え裏面側での反射を抑制することができ、透明導電性フィルム全体としての反射率を低減することができる。
【0012】
加えて、アンチブロッキング層に含まれる粒子の最頻粒子径の値から前記アンチブロッキング層の平坦部の厚さの値を減じて得た値を前記光学調整層の厚さの値よりも大きくしているので、光学調整層を湿式コーティングにより形成した場合であってもアンチブロッキング層の隆起部が埋まることがなく、言い換えると光学調整層においても下層のアンチブロッキング層の隆起部に起因する隆起が存在するようになり、その結果、優れた耐ブロッキング性を発揮することができる。
【0013】
上述のように、当該両面導電性フィルムでは、2層以上の光学調整層を積層させた光学調整層積層体を採用することで、反射率の低下を図っている。このように光学調整層を2層以上湿式コーティングにより形成する場合には、1層の場合と比較して塗布液の隆起部の周辺への流延が顕著になり、隆起部周辺での光学設計が満たされなくなって反射光の散乱が発生すると考えられる。これに対し、当該両面透明導電性フィルムでは、各光学調整層積層体の厚さをそれぞれ60nm以上250nm以下と薄くしているので、湿式コーティングによる各光学調整層の形成の際の塗布液の隆起部周辺への流延を大幅に抑制することができる。これにより、隆起部周辺での光学設計を満たすことができ、反射光の散乱を抑制して良好な視認性を達成することができる。
【0014】
さらに、当該両面透明導電性フィルムは、光学調整層を湿式コーティングで形成する場合であっても耐ブロッキング性の維持及び反射光の散乱の抑制が可能となるので、光学調整層の形成を含めてロール・トゥー・ロール方式での連続生産が可能となり、低コストでの製造が可能となる。
【0015】
前記光学調整層は、湿式コーティングにより形成された層であることが好ましい。これにより光学調整層のロール・トゥー・ロール方式での形成が可能となり、製造コスト削減に資することができる。
【0016】
当該両面透明導電性フィルムでは、特定の層構造を採用しているので、反射率を1.2%以下とすることができ、優れた視認性を発揮することができる。
【0017】
前記粒子の最頻粒子径の値(nm)から前記アンチブロッキング層の平坦部の厚さ(nm)の値を減じて得た値が、200nm以上1200nm以下であることが好ましい。最頻粒子径と平坦部の厚さとの差を200nm以上とすることにより、光学調整層を湿式コーティングで形成する場合のアンチブロッキング層の隆起部の消失を防止して耐ブロッキング性を発揮することができる。一方、上記差を1200nm以下とすることにより、光学調整層の塗布液の隆起部周辺への流延を視認性に影響のないレベルにまで抑制することができる。
【0018】
少なくとも1層の前記光学調整層は有機成分と無機成分とを含む有機無機複合材料で形成されていることが好ましい。有機成分に加えて無機成分を複合的に用いることにより、有機無機複合材料を含む塗布液の粘度を湿式コーティングに適切な範囲であって、かつ隆起部周辺への流延を抑制可能な範囲に効率良く調整することができる。また、無機成分の添加により光学調整層の光学特性の調整が容易となり、透明導電性フィルムの反射率をより低減させることができる。
【0019】
ただし、有機無機複合材料により光学調整層を形成すると、上記隆起部周辺への塗布液の流延により生じる反射光の散乱とは別に、小さい突起状の外観不良が生じる場合があることが判明した。これは上述の隆起部での反射光の散乱が生じるメカニズムと同様、無機成分のサイズによっては光学調整層の表面に凹凸が生じることに起因すると推察される。従って、前記無機成分のメジアン径の値を前記光学調整層の厚さの値より小さくし、無機成分に起因する表面凹凸を抑制して光散乱を抑制することが好ましい。
【0020】
前記透明導電層がパターン化されていることが好ましく、当該両面透明導電性フィルムは該透明導電層がパターンを形成するパターン形成部と、該透明導電層が存在しないパターン開口部とを有することが好ましい。透明導電層を具体的にパターン化することにより、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に適用することができる。
【0021】
前記基材フィルムがシクロオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。これにより、当該両面透明導電性フィルムの透明性をより高めることができ、良好な見栄えを達成することができる。
【0022】
本発明には、当該両面導電性フィルムの長尺体がロール状に巻き取られた両面透明導電性フィルム巻回体も含まれる。
【0023】
本発明には、当該両面透明導電性フィルムを備えるタッチパネルも含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、図面に示した形態は実寸比ではなく、説明の便宜上、部分的に拡大又は縮小して示している箇所がある。また、本明細書における上下左右、表裏等の位置関係を示す用語は、単なる説明を容易にするための用語であり、実際の具体的構成の位置関係を特定する意図は一切ない。
【0026】
<両面透明導電性フィルム>
図1は、本発明の両面透明導電性フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。両面透明導電性フィルム10では、基材フィルム1の両面に、粒子5を含むアンチブロッキング層2a、2b(以下、両者を合わせて「アンチブロッキング層2」ともいう。)、光学調整層積層体3a、3b(以下、両者を合わせて「光学調整層積層体3」ともいう。)、及び透明導電層4a、4b(以下、両者を合わせて「透明導電層4」ともいう。)が順に形成されている。光学調整層積層体3aは、基材フィルム1近い側から光学調整層31a及び光学調整層32aが積層された2層構造を有する。光学調整層積層体3bも同様の構造を有する
【0027】
図1ではアンチブロッキング層2a、2bが基材フィルム1の両面に形成されているが、基材フィルム1の上面側又は下面側のいずれか一方にのみアンチブロッキング層が形成されていてもよい。なお、アンチブロッキング層2、光学調整層積層体3、及び透明導電層4の構成については、基材フィルム1の一方の面側の構成と同様の構成を他方の面側でも採用することができるので、以下では主に
図1における基材フィルム1の上面側の構成について説明する。
【0028】
アンチブロッキング層2aは、表面に平坦部21及び隆起部22を有する。隆起部22は粒子5に起因して形成されている。ここで、両面透明導電性フィルム10では、粒子5の最頻粒子径dの値からアンチブロッキング層2aの平坦部21の厚さT
Aの値を減じて得た値が、光学調整層積層体3aの厚さT
Oよりも大きくなっている。光学調整層31a、32aを湿式コーティングにより形成する場合、アンチブロッキング層2aの平坦部21が光学調整層31a、32aにより埋められ、相対的に隆起部22の高さが低減されて耐ブロッキング性が低減ないし消失することがある。両面透明導電性フィルム10では、粒子5の最頻粒子径d、平坦部21の厚さT
A、及び光学調整層積層体3aの厚さT
Oを特定の関係を満たすように形成しているので、湿式コーティングによる光学調整層31a、32aの形成の際にもアンチブロッキング層2aの隆起部22が埋まることを防止することができる。その結果、光学調整層積層体3aの表面にも隆起部22に起因する隆起を生じさせることができ、良好な耐ブロッキング性を発揮することができる。なお、
図1では、最頻粒子径dを有する粒子5を図示しているものの、本発明の作用効果を損なわない限りアンチブロッキング層2aは最頻粒子径d以外の粒子径を有する粒子を含んでいてもよい。
【0029】
両面透明導電性フィルム10では、通常、アンチブロッキング層2aの厚さをマイクロメートルオーダーとするのに対し、光学調整層積層体3a及び透明導電層4aの各厚さをナノメートルオーダーと薄くしているので、最表面層である透明導電層4aは、光学調整層積層体3aの隆起に追従して隆起を有することとなる。
図1における基材フィルム1の下面側でも同様である。
【0030】
両面透明導電性フィルム10の反射率は、表示モジュールに要求される光学特性を考慮して適宜設定可能であるものの、1.2%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましく、0.8%以下がさらに好ましい。
【0031】
両面透明導電性フィルムのヘイズは、要求される透明性を確保可能であれば特に限定されないものの、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。なお、ヘイズの下限は0%が好ましいものの、最表面層の隆起部等の存在により、一般的に0.3%以上となることが多い。
【0032】
<基材フィルム>
基材フィルム1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂などのポリシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましいのはシクロオレフィン系樹脂である。
【0033】
基材フィルム1の厚さは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、20〜180μmの範囲内であることがより好ましい。基材フィルム1の厚さが2μm未満であると、基材フィルム1の機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして光学調整層積層体3及び透明導電層4を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚さが200μmを超えると、透明導電層4の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
【0034】
基材フィルム1には、表面に予めスパッタリング、プラズマ処理、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、フィルム基材上に形成されるアンチブロッキング層や光学調整層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、アンチブロッキング層や光学調整層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、フィルム基材表面を除塵、清浄化してもよい。
【0035】
<アンチブロッキング層>
アンチブロッキング層2は、上述のように、表面に平坦部21と隆起部22とを有する。隆起部22は、アンチブロッキング層2に含まれる粒子5に起因して形成されている。このとき、粒子5の最頻粒子径dの値からアンチブロッキング層2aの平坦部21の厚さT
Aの値を減じて得た値d−T
Aは、耐ブロッキング性及び隆起部周辺での反射光散乱の防止の観点から、200nm以上1200nm以下が好ましく、400nm以上1100nm以下がより好ましく、600nm以上1000nm以下がさらに好ましい。上記値d−T
Aが小さすぎると十分な耐ブロッキング性が得られないおそれがあり、値d−T
Aが大きすぎると、光学調整層形成用の塗布液の隆起部22周辺への流延が顕著となり、反射光の散乱が生じて視認性を損なうおそれがある。
【0036】
粒子の最頻粒子径dは、最表面層の隆起部のサイズやアンチブロッキング層2の平坦部21の厚さとの関係などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。なお、両面透明導電性フィルムに耐ブロッキング性を十分に付与し、かつ隆起部周辺での反射光散乱を抑制するという観点から、粒子の最頻粒子径は700nm以上4000nm以下であることが好ましく、900nm以上3000nm以下であることがより好ましく、1100nm以上2500nm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「最頻粒子径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPIA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
【0037】
アンチブロッキング層2の平坦部21の厚さは、上記値d−T
Aを満足するように選択することが好ましく、具体的には500nm以上3000nm以下であることが好ましく、700nm以上2500nm以下であることがより好ましく、900nm以上2000nm以下であることがさらに好ましい。アンチブロッキング層の平坦部の厚さが過度に小さいと、上記値d−T
Aが相対的に大きくなって、光学調整層の塗布液の隆起部周辺への流延が無視し得なくなり、光散乱を引き起こすおそれがある。一方、アンチブロッキング層の平坦部の厚さが過度に大きいと、上記値d−T
Aが相対的に小さくなって、光学調整層の形成の際に隆起部が埋められて耐ブロッキング性が低下するおそれがある。なお、本明細書において、アンチブロッキング層の平坦部の厚さとは、アンチブロッキング層の平坦部における平均厚さを指す。
【0038】
粒子は多分散粒子及び単分散粒子のいずれでもよいが、隆起部の付与の容易性やギラツキ防止性を考慮すると単分散粒子が好ましい。単分散粒子の場合は、粒子の粒径と最頻粒子径とが実質的に同一と見なすことができる。
【0039】
アンチブロッキング層中の粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、0.02〜1重量部であることがより好ましく、0.05〜0.5重量部であることがさらに好ましい。アンチブロッキング層中の粒子の含有量が小さいと、アンチブロッキング層の表面に耐ブロッキング性を付与するのに十分な隆起部が形成され難くなる傾向がある。一方、粒子の含有量が大きすぎると、粒子による光散乱に起因して両面透明導電性フィルムのヘイズが高くなり、視認性が低下する傾向がある。また、粒子の含有量が大きすぎると、アンチブロッキング層の形成時(溶液の塗布時)に、スジが発生し、視認性が損なわれたり、透明導電層の電気特性が不均一となったりする場合がある。
【0040】
(樹脂組成物)
アンチブロッキング層2を形成する樹脂組成物としては粒子の分散が可能で、アンチブロッキング層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。用いる樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく光拡散層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0041】
紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0042】
樹脂層の形成材料には、前記材料に加えて、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤等の添加剤を用いることができる。チクソトロピー剤を用いると、微細凹凸形状表面における突出粒子の形成に有利である。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100重量部に対して、15重量部以下程度、好ましくは0.01〜15重量部、とするのが好適である。
【0043】
(粒子)
アンチブロッキング層2に含有される粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスチックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子やシリコーン系粒子などがあげられる。前記粒子は、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができるが、有機系粒子が好ましい。有機系粒子としては、屈折率の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0044】
(コーティング組成物)
アンチブロッキング層を形成するのに用いられるコーティング組成物は、上記の樹脂、粒子、及び溶媒を含む。また、コーティング組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0045】
コーティング組成物は、上記の樹脂及び粒子を、必要に応じて溶媒、添加剤、触媒等と混合することにより調製される。コーティング組成物中の溶媒は、特に限定されるものではなく、用いる樹脂や塗装の下地となる部分の材質及び組成物の塗装方法などを考慮して適時選択される。溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0046】
コーティング組成物において、粒子は溶液中に分散されていることが好ましい。溶液中に粒子を分散させる方法としては、樹脂組成物溶液に粒子を添加して混合する方法や、予め溶媒中に分散させた粒子を樹脂組成物溶液に添加する方法等、各種公知の方法を採用することができる。
【0047】
コーティング組成物の固形分濃度は、1重量%〜70重量%が好ましく、2重量%〜50重量%がより好ましく、5重量%〜40重量%が最も好ましい。固形分濃度が低くなりすぎると、塗布後の乾燥工程でアンチブロッキング層表面の隆起部のばらつきが大きくなり、アンチブロッキング層表面の隆起部が大きくなった部分のヘイズが上昇する場合がある。一方、固形分濃度が大きくなりすぎると、含有成分が凝集しやすくなり、その結果、凝集部分が顕在化して両面透明導電性フィルムの外観を損ねる場合がある。
【0048】
(塗布及び硬化)
アンチブロッキング層は、基材上に、上記のコーティング組成物を塗布することにより形成される。本実施形態では、基材フィルム1上へのコーティング組成物の塗布は基材の両面に行う。なお、コーティング組成物は、基材フィルム1上に直接行ってもよく、基材フィルム1上に形成されたアンダーコート層等の上に行うこともできる。
【0049】
コーティング組成物の塗布方法は、コーティング組成物及び塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法やエクストルージョンコート法などにより塗布することができる。
【0050】
コーティング組成物を塗布後、塗膜を硬化させることによって、アンチブロッキング層を形成することができる。樹脂組成物が光硬化性である場合は、必要に応じた波長の光を発する光源を用いて光を照射することによって、硬化させることができる。照射する光として、例えば、露光量150mJ/cm
2以上の光、好ましくは200mJ/cm
2〜1000J/cm
2の光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば380nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。なお、光硬化処理の際に、又は光硬化処理後に加熱を行ってもよい。
【0051】
アンチブロッキング層2には、表面に予めスパッタリング、プラズマ処理、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、アンチブロッキング層上に形成される光学調整層等との密着性を向上させるようにしてもよい。また、光学調整層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、アンチブロッキング層表面を除塵、清浄化してもよい。
【0052】
<光学調整層積層体>
本実施形態の両面透明導電性フィルム10においては、アンチブロッキング層2と透明導電層4との間に、透明導電層の密着性や反射特性の制御等を目的として光学調整層積層体3が設けられている。光学調整層積層体3aは、基材フィルム1近い側から光学調整層31a及び光学調整層32aが積層された2層構造を有する。光学調整層31a及び光学調整層32aは互いに異なる屈折率を有する。光学調整層積層体3aの層構造は2層構造に限定されず、3層以上の層構造を有していてもよい。
【0053】
光学調整層積層体3a、3bの厚さは、それぞれ独立して60nm以上250nm以下であればよく、好ましくは70nm以上200nm以下であり、より好ましくは80nm以上150nm以下である。光学調整層積層体を上記範囲とすることにより、湿式コーティングによる各光学調整層の形成の際の塗布液の隆起部周辺への流延を大幅に抑制することができる。これにより、隆起部周辺での光学設計を満たすことができ、反射光の散乱を抑制することができる。光学調整層積層体の厚さが小さすぎると、反射特性を十分に制御することができず、透明導電性フィルムの視認性が損なわれるおそれがある。光学調整層積層体の厚さが大きすぎると、塗布液の流延が顕著になり、反射光の散乱が生じるおそれがある。また、光学調整層積層体をこのようなナノオーダーレベルの厚さで形成すれば、光学調整層積層体の透明導電層4側の表面は、その下地層であるアンチブロッキング層2表面の隆起形状をほぼ維持する。そして、透明導電層4の表面においてもその隆起形状が維持されるために、耐ブロッキング性を有する両面透明導電性フィルムとすることができる。
【0054】
[光学調整層]
光学調整層31a及び光学調整層32aは互いに異なる屈折率を有していればよいものの、反射特性をより高いレベルで制御して反射率を低減させる観点から、光学調整層31aの屈折率が光学調整層32aの屈折率より高いことが好ましい。この場合、光学調整層31aの屈折率は、1.60以上1.90以下が好ましく、1.70以上1.80以下がより好ましい。また、光学調整層32aの屈折率は、1.35以上1.60以下が好ましく、1.45以上1.55以下がより好ましい。
【0055】
光学調整層は、有機成分、無機成分、及び有機成分と無機成分とを含む有機無機複合材料のいずれによって形成されていてもよい。中でも、少なくとも1層の光学調整層は有機成分と無機成分とを含む有機無機複合材料で形成されていることが好ましい。有機成分に加えて無機成分を複合的に用いることにより、有機無機複合材料を含む塗布液の粘度を湿式コーティングに適切な範囲であって、かつ隆起部周辺への流延を抑制可能な範囲に効率良く調整することができる点で好ましい。また、無機成分の添加により光学調整層の光学特性の調整が容易となり、透明導電性フィルムの反射率をより低減させることができる。
【0056】
(有機成分)
有機成分としては特に限定されず、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられる。加工速度の早さや透明高分子基材1への熱ダメージを抑制する観点からは、紫外線硬化型樹脂を用いることが特に好ましい。
【0057】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、光(紫外線)により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物を用いることができる。硬化型化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
有機無機複合材料の有機成分に用いられる紫外線硬化型樹脂として、上記各成分に加えて反応性希釈剤を有していてもよい。反応性希釈剤としては、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤の具体例としては、例えば特開2008−88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、ハードコート層の硬度を優れたものにすることができるからである。他の反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
(無機成分)
有機無機複合材料は、電離放射線硬化型樹脂等の有機成分に加えて、無機成分を含有するものである。無機成分としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機酸化物の微粒子ないし微粉末があげられる。これらの中でも、ハードコート層の屈折率制御の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウムの微粒子が好ましく、特に酸化ケイ素が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
無機成分のメジアン径の値は光学調整層の厚さの値より小さいことが好ましい。有機無機複合材料により光学調整層を形成すると、比較的サイズの小さい突起状の外観不良が生じる場合がある。これは、無機成分により形成された光学調整層の表面凹凸が引き起こしていると考えられる。従って、無機成分のメジアン径の値を前記光学調整層の厚さの値より小さくし、無機成分に起因する表面凹凸を抑制して光散乱を抑制することが好ましい。
【0061】
無機成分の具体的なメジアン径としては、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。このように、ナノ粒子の最頻粒子径が小さければ、上述のような可視光の散乱が生じ難くなるとともに、有機無機複合材料中の有機成分とナノ粒子の屈折率が異なる場合であっても、光学調整層のヘイズが大幅に増大することが抑制される。なお、無機成分のメジアン径の下限は小さいほど好ましいが、凝集を防止して分散性を良好にする観点から、5nm以上であることが好ましい。
【0062】
なお、本明細書において、「メジアン径」とは、粒子分布の累積度数が50%を示す粒径(d50)をいい、無機成分のメジアン径は、試料を希釈液で固形分濃度1%まで希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製、「LB−500」)で粒度分布を測定することによって求める。希釈液は無機成分の種類や、無機成分の表面修飾の種類により適宜選択される。
【0063】
無機酸化物ナノ粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物により表面修飾されていることが好ましい。この不飽和基が、有機無機複合材料中の有機成分と反応硬化することで、ハードコート層の硬度を向上させることができる。無機酸化物ナノ粒子を表面修飾する有機化合物中の重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基が好ましい。また、前記重合性不飽和基を含む有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物あるいは加水分解によってシラノール基を生成する化合物であってもよい。また、重合性不飽和基を含む有機化合物は、光感応性基を有するものであることも好ましい。
【0064】
有機無機複合材料中の無機酸化物ナノ粒子の配合量は、電離放射線硬化型樹脂等の有機成分固形分100重量部に対し、50重量部〜300重量部の範囲であることが好ましく、100重量部〜200重量部の範囲であることがより好ましい。有機無機複合材料中の無機酸化物ナノ粒子の配合量を上記範囲とすることで、光学調整層形成用の塗布液の隆起部周辺への流延を抑制して光の散乱を防止することができる。また、例えば光学調整層の屈折率を調整することも可能である。
【0065】
(添加剤)
光学調整層3の形成材料には、さらに各種の添加剤を加えることもできる。添加剤としては、例えば有機無機複合材料を硬化して光学調整層を形成するための重合開始剤や、レベリング剤、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等を使用することができる。
【0066】
重合開始剤としては、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N,N−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他、チオキサント系化合物等が使用できる。
【0067】
レベリング剤としては、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を適宜使用することができるが、より好ましくはシリコーン系のレベリング剤であり。シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤の添加量は、有機無機複合材料中の有機成分の固形分と無機成分との合計100重量部に対し0.01〜5重量部の範囲内で添加することが好ましい。
【0068】
光学調整層は、上記の材料を用いて、グラビアコート法やバーコート法、ファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、ロールコート等の塗工法などにより好適に形成できる。このように少なくとも1層の光学調整層は塗工法により形成することが好ましいが、残りの光学調整層の形成法として、上述の塗工法に加えて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を採用してもよい。
【0069】
硬化処理としては、例えば、エネルギー線の照射による方法等が例示できる。エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素などの線源が使用される。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm
2が好ましい。照射量が50mJ/cm
2未満の場合は、硬化が不十分となるため、光学調整層3の硬度が低下する。また、5000mJ/cm
2を超えると、光学調整層3が着色して透明性が低下する。
【0070】
<透明導電層>
透明導電層4の構成材料は特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
【0071】
透明導電層4の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電層4の厚さが15nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電層4の厚さが35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
【0072】
透明導電層4の屈折率としては、透明導電層4がパターン化された場合において、パターン形成部Pとパターン開口部O(
図2参照)との反射率差を抑制することに加えて、両者の色相の差を抑制する観点から、透明導電層5の屈折率は、1.85〜2.1程度が好ましい。
【0073】
透明導電層4の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、透明導電層4がスパッタリング法等のドライプロセスによって形成されれば、
図1に示すように、透明導電層4の表面は、その下地層であるアンチブロッキング層2a(及び光学調整層積層体3)表面の平坦部及び隆起部の形状をほぼ維持する。そのため、アンチブロッキング層2上に光学調整層積層体3及び透明導電層4が形成されている場合においても、透明導電層4表面にも耐ブロッキング性を好適に付与することができる。
【0074】
透明導電層4は、必要に応じて加熱アニール処理(例えば、大気雰囲気下、80〜150℃で30〜90分間程度)を施して結晶化することができる。透明導電層を結晶化することで、透明導電層が低抵抗化されることに加えて、透明性及び耐久性が向上する。両面透明導電性フィルム10においてアンチブロッキング層2aの厚さを上記範囲とすることにより、加熱アニール処理の際にもカールの発生が抑制され、ハンドリング性に優れる。
【0075】
図2及び3に示すように、透明導電層4は、エッチング等によりパターン化してもよい。
図2は、透明導電層4がパターン化された両面透明導電性フィルム10を示している。ただし、説明の便宜上、
図2では、アンチブロッキング層2に含まれる粒子及びそれに起因する隆起部は省略し、各層の厚さは
図1に示す態様と異なる。
図2に示す両面透明導電性フィルムは、透明導電層4がパターンを形成するパターン形成部Pと、透明導電層4が除去されたパターン開口部Oを有する。静電容量方式のタッチパネルやマトリックス式の抵抗膜方式のタッチパネルに用いられる両面透明導電性フィルムにおいては、
図3に示すように、透明導電層4a、4bがストライプ状にパターン化されることが好ましく、透明導電層4a、4bが互いに直交する格子状マトリクスパターンを形成することが好ましい。なお、
図3では、パターン形成部Pの幅がパターン開口部Oの幅より大きく図示されているが、本発明は、かかる形態に制限されるものではない。
【0076】
図2及び3に示すように、両面透明導電性フィルム10の透明導電層4a、4bがパターン化された場合、パターン形状によっては、両面透明導電性フィルム10を平面視にて透視した際に、両面のパターン形成部が重複する両面パターン領域Xと、一方の面はパターン形成部で、かつ他方の面はパターン開口部である片面パターン領域Y(Y1及びY2)が存在することがある。このとき、両面パターン領域Xの反射率と片面パターン領域Yの反射率との差ΔRの絶対値は1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。また、両面パターン領域Xの反射色相b
*が−10≦b
*≦0を満たすことが好ましく、−8≦b
*≦0を満たすことがより好ましく、−5≦b
*≦0を満たすことが特に好ましい。反射率差ΔRの絶対値や反射色相b
*を上記範囲内とすることで、パターン観察及び色味(特に黄色味)の発生を抑制してより見栄えの良好な透明導電性フィルムを得ることができる。
【0077】
なお、本明細書において、「反射率」とはCIE表色系のD65光源の視感反射率Yを表す。また、「色相」とは、JIS Z8729に規定されているL
*a
*b
*表色系における、D65光源のL
*値、a
*値、b
*値のことであり、「反射色相」は反射光より求めた色相である。
【0078】
一般に、透明導電層は金属酸化物から形成されるために、屈折率が高く、表面での反射率が高い。そのため、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの間に反射率差が生じて、パターンが視認され易くなる傾向がある。これに対して、本発明では、表裏面における基材フィルム1と透明導電層4との間に光学調整層積層体をそれぞれ設けることで、界面多重反射により、透明導電層表面での反射光を干渉により打ち消して、パターン形成部Pでの反射率が低減される。そのため、パターン形成部Pとパターン開口部Oとの、反射率差が低減され、パターンが視認され難くなる。
【0079】
<両面透明導電性フィルム巻回体>
本実施形態では、両面透明導電性フィルム10を長尺体とし、これをロール状に巻回した両面透明導電性フィルム巻回体とすることができる。両面透明導電性フィルムの長尺シートの巻回体は、基材フィルムとして長尺シートのロール状巻回体を用い、前述のアンチブロッキング層、光学調整層、及び透明導電層を、いずれもロール・トゥー・ロール法により形成することによって形成し得る。このような巻回体の形成にあたっては、両面透明導電性フィルムの表面に、弱粘着層を備える保護フィルム(セパレータ)を貼り合わせた上で、ロール状に巻回してもよいが、本実施形態の両面透明導電性フィルムは、耐ブロッキング性が改善されているために、保護フィルムを用いずとも両面透明導電性フィルムの長尺シートの巻回体を形成し得る。すなわち、耐ブロッキング性が付与されていることによって、ハンドリング時のフィルム表面へのキズの発生が抑止されるとともにフィルムの巻取性に優れるため、表面に保護フィルムを貼り合わせずとも、長尺シートをロール状に巻回した巻回体を得られ易い。このように、本実施形態の両面透明導電性フィルムは、保護フィルムを用いることなく長尺シートの巻回体を形成し得るために、その後のタッチパネルの形成等に用いる際の作業性に優れる。また、工程部材である保護フィルムを不要とすることによって、コスト削減や廃棄物低減にも寄与し得る。
【0080】
<タッチパネル>
両面透明導電性フィルム10は、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、透明導電層がパターン化された場合であっても、パターン形成部とパターン開口部の視認性の差、特に反射率の差が小さく抑えられることから、投影型静電容量方式のタッチパネルや、多点入力が可能な抵抗膜方式のタッチパネルのように、所定形状にパターン化された透明導電層を備えるタッチパネルに好適に用いられる。
【0081】
タッチパネルの形成に際しては、両面透明導電性フィルムの一方又は両方の主面に透明な粘着剤層を介して、ガラスや高分子フィルム等の他の基材等を貼り合わせることができる。透明基体は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、両面透明導電性フィルムに貼り合わせる透明基体の外表面にハードコート層を設けることもできる。
【0082】
両面透明導電性フィルムと基材との貼り合わせに用いられる粘着剤層としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0083】
上記の本発明にかかる両面透明導電性フィルムを、タッチパネルの形成に用いた場合、タッチパネル形成時のハンドリング性に優れる。そのため、透明性及び視認性に優れたタッチパネルを生産性高く製造することが可能である。
【実施例】
【0084】
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中、特に示さない限り「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0085】
[実施例1]
図1に示す形態の両面透明導電性フィルムを以下の手順で作製した。まず、最頻粒子径1.8μm(1800nm)の複数個の単分散粒子(綜研化学社製、商品名「MX180TAN」)とバインダー樹脂(DIC社製、商品名「ユニディックRS29−120)とを含み、溶媒を酢酸エチルとするコーティング組成物を準備した。粒子の添加部数は、バインダー樹脂100部に対して0.2部であった。次に、厚さ100μmからなる長尺基材フィルム1(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の両面に、コーティング組成物をグラビアコーターを用いて乾燥後の平坦部の厚さが1.0μm(1000nm)となるように塗布し、80℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量250mJ/cm
2の紫外線を照射することで、アンチブロッキング層2a、2bを形成した。
【0086】
次に、両面のアンチブロッキング層2a、2bの表面に、有機無機複合成分である屈折率調整剤(JSR社製、商品名「オプスターZ7412」:無機成分としてメジアン径40nmの酸化ジルコニア粒子を含む屈折率が1.62の有機無機複合材料)をグラビアコーターを用いて塗布し、60℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量250mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化処理を施すことで、厚さ85nmで屈折率1.62の光学調整層31a、31bを両面に形成した。さらに、光学調整層31a、31bの表面に、ゾル−ゲル法による熱硬化型の屈折率調整剤(コルコート社製、商品名「コルコートPX」)をグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間加熱することにより厚さ30nmで屈折率1.46の光学調整層32a、32bを両面に形成し、光学調整層積層体3a、3bを形成した。
【0087】
その後、アンチブロッキング層2a、2b及び光学調整層積層体3a、3bを有する長尺基材を巻き取り式スパッタ装置に投入し、両面の光学調整層積層体3a、3bの表面に、透明導電層4a、4bとして厚さ20nmのインジウム・スズ酸化物層(アルゴンガス98%と酸素2%とからなる0.4Paの雰囲気中、酸化インジウム97重量%−酸化スズ3重量%からなる焼結体を用いたスパッタリング)を積層した。この際、上記の光学調整層、透明導電層は、上記アンチブロッキング層の平坦部及び隆起部に沿うように積層した。これにより両面透明導電性フィルム10を作製した。
【0088】
[実施例2]
最頻粒子径1.8μm(1800nm)の複数個の単分散粒子(綜研化学社製、商品名「MX180TAN」)とバインダー樹脂(DIC社製、商品名「ユニディックRS29−120)とを含み、溶媒を酢酸エチルとするコーティング組成物を準備した。粒子の添加部数は、バインダー樹脂100部に対して0.2部であった。次に、厚さ100μmからなる長尺基材フィルム1(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」)の両面に、コーティング組成物をグラビアコーターを用いて乾燥後の平坦部の厚さが1.0μm(1000nm)となるように塗布し、80℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量250mJ/cm
2の紫外線を照射することで、アンチブロッキング層2a、2bを形成した。
【0089】
次に、両面のアンチブロッキング層2a、2bの表面に、有機無機複合成分ある屈折率調整剤(JSR社製、商品名「オプスターKZ6734」:無機成分としてメジアン径40nmの酸化ジルコニア粒子を含む屈折率が1.74の有機無機複合材料)をグラビアコーターを用いて塗布し、60℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量250mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化処理を施すことで、厚さ40nmで屈折率1.74の光学調整層31a、31bを両面に形成した。さらに、光学調整層31a、31bの表面に、有機成分としての屈折率調整剤(大阪有機化学社製、商品名「ビスコート300」)100部に対し、無機成分としてメジアン径20nmの酸化ケイ素粒子20重量部含む有機無機複合材料をグラビアコーターを用いて塗布し、60℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量250mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化処理を施すことで、厚さ50nmで屈折率1.5の光学調整層32a、32bを両面に形成し、光学調整層積層体3a、3bを形成した。
【0090】
その後、アンチブロッキング層2a、2b及び光学調整層積層体3a、3bを有する長尺基材を巻き取り式スパッタ装置に投入し、両面の光学調整層積層体3a、3bの表面に、透明導電層4a、4bとして厚さ20nmのインジウム・スズ酸化物層(アルゴンガス98%と酸素2%とからなる0.4Paの雰囲気中、酸化インジウム97重量%−酸化スズ3重量%からなる焼結体を用いたスパッタリング)を積層した。この際、上記の光学調整層、透明導電層は、上記アンチブロッキング層の平坦部及び隆起部に沿うように積層した。これにより両面透明導電性フィルム10を作製した。
【0091】
[実施例3]
光学調整層31a中の無機成分のメジアン径を25nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0092】
[実施例4]
アンチブロッキング層2a、2bの平坦部の厚さを1.5μm(1500nm)としたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0093】
[実施例5]
アンチブロッキング層2a、2bの平坦部の厚さを0.5μm(500nm)としたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0094】
[実施例6]
光学調整層31a、31bの厚さを120nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを5nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0095】
[実施例7]
光学調整層31a、31bの厚さを30nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを60nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0096】
[実施例8]
光学調整層31a、31bの厚さを45nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを200nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0097】
[実施例9]
光学調整層31a、31bの厚さを45nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを20nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0098】
[比較例1]
アンチブロッキング層2a、2bの平坦部の厚さを1.7μm(1700nm)としたこと以外は、実施例1と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0099】
[比較例2]
光学調整層31a、31bの厚さを20nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを25nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0100】
[比較例3]
光学調整層31a、31bの厚さを210nmとし、光学調整層32a、32bの厚さを45nmとしたこと以外は、実施例2と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0101】
[比較例4]
光学調整層32a、32bを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0102】
[比較例5]
光学調整層31a、31bの厚さを115nmとし、光学調整層32a、32bを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様に両面透明導電性フィルムを作製した。
【0103】
[評価]
実施例1〜9及び比較例1〜5で得られたそれぞれの両面透明導電性フィルムについて、下記の評価を行った。各評価結果を表1に示す。
【0104】
<光学調整層の屈折率>
上述の光学調整層形成用の塗布液を準備し、この硬化物についての屈折率をJIS K7105に準拠して測定し、光学調整層の屈折率とした。具体的には、未処理のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという。)上にバーコーターを用いて形成用塗布液を塗布し、80℃で60分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯を用いて0.6J/cm
2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。この操作を2回繰り返して2層の硬化膜が積層された硬化物を形成した後、PETフィルム上から硬化物を剥がした。得られた硬化物について、アッベ屈折率計を用い、測定光(ナトリウムD線)を入射させて25.0±1.0℃で4回測定し、測定値の平均を光学調整層の屈折率nD25とした。
【0105】
<各層の厚さ>
アンチブロッキング層、光学調整層及び透明導電層の厚さは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システム「MCPD2000」(商品名)を用い、フィルムの幅方向に等間隔の5点について測定した干渉スペクトルの波形を基礎に平均値を算出して求めた。
【0106】
<粒子の最頻粒子径>
フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPIA−3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定した。測定試料は、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させて調製した。
【0107】
<無機成分のメジアン径>
試料を希釈液(プロピレングリコールモノメチルエーテル)で固形分濃度1%まで希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製 LB−500)で粒度分布を測定することによって求めた。
【0108】
<反射率の測定>
日立ハイテク社製の分光光度計「U−4100」(商品名)の積分球測定モードを用いて、透明導電層への入射角を2度として、波長380〜780nmの領域における反射率を波長5nm間隔で測定し、これらの反射率の平均値を両面透明導電性フィルムの反射率とした。なお、前記測定は、
図4Aに示すように、両面透明導電性フィルム10(サンプル)の一方の透明導電層4b側に黒色のアクリル板13を粘着剤11にて貼り合わせて遮光層を形成し、もう一方の面に透明導電性フィルム作製の際の基材フィルム1を粘着剤11にて貼り合わせ、サンプルの裏面からの反射や裏面側からの光の入射がほとんどない状態で測定を行った。これにより反射率1を得た。また、
図4Bに示すように、基材フィルム1のみを黒色のアクリル板13に粘着剤11にて貼り合わせた構成で再度反射率測定を行い、反射率2を得た。反射率1から反射率2を減算することにより、反射率の値を得た。
【0109】
<耐ブロッキング性>
平滑性の高いフィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONORフィルム ZF−16」)を作製した両面透明導電性フィルムの透明導電層表面に対して指圧で圧着させ、以下の基準にて貼りつき具合を評価した。
(評価基準)
◎:貼りつきが起こらない
〇:一旦貼りつくが、時間の経過に伴いフィルムが剥がれる
×:貼りついたフィルムがそのままで剥がれない
【0110】
<反射光の散乱の評価>
作製した両面透明導電性フィルムに白色光を透過させながら光学顕微鏡(50倍)による目視検査を行い、以下の基準にて反射光の散乱の有無を判定した。
(評価基準)
◎:全く反射光の散乱が確認されないレベル
○:反射光の散乱がほぼ確認されないレベル
△:反射光の散乱は確認されるが、視認性には影響のないレベル
×:反射光の散乱の影響が強く、視認性を損ねるレベル
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1〜9の両面透明導電性フィルムでは、反射率が低減され、良好な耐ブロッキング性が得られており、また、反射光の散乱が抑制されて外観も良好であるか、少なくとも視認性に影響のないレベルの結果が得られた。
【0113】
一方、比較例1では、反射率及び外観は良好であったものの、耐ブロッキング性が劣っていた。これは、アンチブロッキング層における粒子の最頻粒子径dと平坦部の厚さT
Aの差d−T
Aが小さすぎ、光学調整層の形成により隆起部が埋まったことに起因すると推察される。比較例2では、耐ブロッキング性及び外観は問題のないレベルであったものの、光学調整層積層体の厚さが60nm未満で反射特性の制御が不十分であったために、反射率の値が大きくなっていた。比較例3では、反射率及び耐ブロッキング性は良好であったものの、外観は不良であった。これは、光学調整層の厚さが大きすぎて塗布液の隆起部周辺の流延が顕著になり、隆起部周辺での光学設計が崩れて光の散乱が生じたことが原因であると推察される。比較例4及び5では、光学調整層を1層のみ形成したために、両面透明導電性フィルムの反射特性を制御できず反射率が大きくなっていた。
【0114】
なお、実施例6及び7では、反射光の散乱はほとんど確認されなかったものの、光学調整層中の無機成分に起因すると推察されるサイズの小さい突起状の外観不良が確認された。これらは視認性に影響しないものの、これらを回避するためには無機成分のメジアン径を光学調整層の厚さより小さくすることが好ましいといえる。