【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。
ホウ酸とメラミンを1:1の割合で混合し、蓋付きの黒鉛ルツボで窒素下で1000℃で5時間の処理を施して、酸素:15質量%、炭素:1.8質量%で金属不純物量が40ppmの乱層構造になる窒化ホウ素粉末を得た。ついで、この窒化ホウ素粉末:20kgを、窒化ホウ素被覆黒鉛製ルツボに種々の厚みで充填し、窒素雰囲気中にて表1に示す種々の昇温速度で2000℃まで加熱し、この温度に10h保持したのち、同じく窒素雰囲気下で室温まで冷却した。
得られた生成物をX線回折装置で同定したところ、高結晶の窒化ホウ素であることが確認された。
ついで、この窒化ホウ素を、ジェットミルで所定の粒径になるように粉砕したのち、20倍の純水で洗浄し、ついで脱水後、真空中で乾燥したのち、0.3mmのスクリーンを通すようにパワーミルで解砕して窒化ホウ素粉末とした。
【0038】
かくして得られた窒化ホウ素粉末の諸元を表1に示す。
また、得られた窒化ホウ素粉末の透過度(透明度)、ヘーズ値(濁度)および摩擦係数について調べた結果を表1に併記する。
さらに、表1には、前掲特許文献8に開示の技術に従い得られた窒化ホウ素粉末うち、最高の特性が得られたものを従来例として例示する。
【0039】
なお、窒化ホウ素粉末の透過度(透明度)、ヘーズ値(濁度)および摩擦係数はそれぞれ、次のようにして測定した。
(1) 透過度(透明度)
JIS K7105 『プラスチックの光学的特性試験方法』に準拠して行った。
この透過度が65%以上であれば、透明性に優れていると言える。
(2) ヘーズ値(濁度)
JIS K7136 『プラスチック透明材料のヘーズの求め方』に準拠して行った。
このヘーズ値が70%以下であれば、曇り程度は小さいと言える。
(3) 摩擦係数
カトーテック(株)の「摩擦感テスター」を用いて測定した。
すなわち、スライドグラスに両面テープを貼ったものに粉体試料を乗せて余分な粉体を振動を与えてふるい落とした後、試料台に固定する。ついで、試料上を1cm角のピアノワイヤーセンサーを0.5mm/sの速さで滑らせて測定した。
この摩擦係数の値が0.15以下であれば、潤滑性に優れていると言える。
【0040】
また、可溶性ホウ素量は、「医薬部外品原料規格2006」に基づき、次のようにして測定した。
試料:2.5gをテフロン(登録商標)製ビーカーにとり、エタノール:10mlを加えてよくかき混ぜ、さらに水:40mlを加えてよくかき混ぜたのち、テフロン製時計皿にのせ、50℃で1時間加温する。冷却後、ろ過し、残留物を少量の水で洗い、洗液をろ液に合わせる。この液をさらにメンブランフィルター(0.22μm)でろ過する。ろ液全量をテフロン製ビーカーにとり、硫酸:1mlを加え、ホットプレート上で10分間煮沸する。冷却後、この液をポリエチレン製メスフラスコに入れ、テフロン製ビーカーを少量の水で洗い、ポリエチレン製メスフラスコに合わせたのち、水を加えて正確に50mlとし、これを試料溶液とする。別にホウ素標準液:1mlを正確にとり、水を加えて正確に100mlとし、標準溶液とする。試料溶液および標準溶液各1mlをポリエチレン製ビンに正確にとり、硫酸および酢酸の等容量混液:6mlを加えて、振り混ぜる。ついで、クルクミン・酢酸試液:6mlを加えて振り混ぜたのち、80分間放置する。これを酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液:30mlを加えて振り混ぜ、5分間放置したのち、水を対照とし、吸光度特定法により、溶出ホウ素量を求める。この試験を行うとき、波長:543nm付近の吸収の最大波長における試料溶液の吸光度は、標準溶液の吸光度以下である。ただし、試料溶液の吸光度は、前処理法を含め、同様に操作して得た空試験液の吸光度で補正する。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示したとおり本発明に従う発明例はいずれも、高い透明度と小さなヘーズ値、さらには低い摩擦係数を有し、透明性や潤滑性に優れていることが分かる。
ここで、
図2,3にそれぞれ、表1に示す発明例1および発明例2の窒化ホウ素粉末の顕微鏡写真を示す。
同図に示したとおり、本発明に従う窒化ホウ素粉末は、一次粒子の厚みが薄く、アスペクト比が大きく、しかも粒径が揃い、かつ粒子表面が平滑であり、特に光の透過度に優れていることが分かる。
【0043】
次に、表1に示したNo.2の窒化ホウ素粉末(発明例1)を用いて、以下に示す実施例1〜8、比較例9〜11の各種化粧料を作製した。
実施例1(パウダーファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 20.0
・N−ラウロイルリジン処理(5%)ベンガラ 1.0
・N−ラウロイルリジン処理(5%)黄酸化鉄 4.0
・N−ラウロイルリジン処理(5%)黒酸化鉄 0.5
・パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン処理酸化チタン(♯1)
+含水シリカ(2%)/水酸化アルミニウム(4%) 10.0
・シリコーン(2%)処理微粒子酸化チタン 2.0
・N−ラウロイルリジン処理(5%)セリサイト 29.0
・パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン処理合成金雲母 10.0
・パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン処理タルク 10.0
・架橋型シリコーン粉末(トレフィルE-505C、東レ・ダウコーニング社製) 0.3
・ウレタンパウダー(PLASTIC POWDER CS-400、東色ピグメント社製) 2.0
・メチルパラベン 0.1
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
・メチルポリシロキサン(KF-96A(6CS)、信越化学工業社製) 4.0
・リンゴ酸ジイソステアリル 1.5
・トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
・ワセリン 0.5
・パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3.0
(♯1)タイペークCR−50(石原産業社製)をパーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン(5%)で被覆処理したもの。
【0044】
実施例2(固形白粉)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 15.0
・シリコーン処理(2%)ベンガラ 0.3
・シリコーン処理(2%)黄酸化鉄 0.5
・シリコーン処理(2%)黒酸化鉄 0.05
・シリコーン処理酸化チタン(♯2) 5.0
・シリコーン処理酸化亜鉛 1.0
・(酸化鉄/酸化チタン)焼結物 1.0
・ポリアクリル酸アルキル(GBX-10S、ガンツ化成社製) 3.0
・シルクパウダー 1.0
・板状硫酸バリウム 35.0
・シリコーン処理(2%)タルク 31.75
・メチルパラベン 0.1
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
・ワセリン 1.0
・ジメチルポリシロキサン 1.0
・トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
・イソノナン酸イソノニル 2.0
・オクチルドデカノール 1.0
(♯2)石原産業のタイベークCR50に2%シリコン処理したもの。
【0045】
実施例3(粉末状ファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 20.0
・シリコーン処理(2%)ベンガラ 0.4
・シリコーン処理(2%)黄酸化鉄 1.0
・シリコーン処理(2%)黒酸化鉄 0.2
・シリコーン処理酸化チタン(♯2) 8.0
・N−ラウロイルリジン粉末 15.0
・雲母チタン 4.0
・タルク 27.2
・セルロースセルロビーズD−5(大東化成工業社製) 5.0
・コーンスターチ(日食コーンスターチ、日本食品化工社製) 15.0
・メチルパラベン 0.1
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1
・流動パラフィン 1.5
・メチルフェニルポリシロキサン(FZ-209、東レ・ダウコーニング社製) 2.0
・ワセリン 0.5
【0046】
実施例4(固形状ファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 5.0
・有機チタネート処理ベンガラ 0.2
・有機チタネート処理黄酸化鉄 0.5
・有機チタネート処理黒酸化鉄 0.05
・無水ケイ酸(サンスフェアH-122、旭硝子社製) 5.0
・有機チタネート処理酸化チタン(♯3) 3.0
・シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 2.0
・低融点パラフィン 10.0
・シリコーンゲル(KSG-16、信越化学社製) 2.0
・パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 1.0
・メチルパラベン 0.2
・フェノキシエタノール 0.1
・ミリスチン酸イソセチル 残量
(♯3)タイペークCR−50(石原産業社製)を有機チタネートで被覆処理したもの。
【0047】
実施例5(油中水型乳化ファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 5.0
・イソステアリン酸ジグリセリル 1.0
・ポリエーテル変成シリコーン 1.0
・揮発性シリコーン 20.0
・ワセリン 3.0
・流動パラフィン 6.0
・ジカプリル酸プロピレングリコール 4.0
・グリセリン 3.0
・マルチトール 3.0
・オクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン(♯4) 8.0
・オクチルトリエトキシシラン処理ベンガラ 0.2
・オクチルトリエトキシシラン処理黄酸化鉄 0.8
・オクチルトリエトキシシラン処理黒酸化鉄 0.1
・シリコーンゲル(KSG-16、信越化学社製) 2.0
・ウレタンパウダー(PLASTIC POWDER D-400、東色ピグメント社製) 0.5
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.05
・フェノキシエタノール 0.3
・精製水 残量
(♯4)タイペークCR−50(石原産業社製)をオクチルトリエトキシシランで被覆処理したもの。
【0048】
実施例6(化粧下地)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 5.0
・ポリエーテル変成シリコーン 2.0
・ジメチルシリコーン(KF-96A(6CS)、信越化学工業社製) 5.0
・揮発性シリコーン 14.0
・パラメトキシケイヒ酸オクチル 2.0
・ジプロピレングリコール 2.0
・グリセリン 1.0
・クエン酸ナトリウム 0.5
・シリコーン処理酸化チタン(♯2) 1.0
・シリコーン処理微粒子酸化チタン 3.0
・シリコーン処理ベンガラ 0.4
・シリコーン処理黄酸化鉄 1.5
・シリコーン処理黒酸化鉄 0.2
・シリコーン処理タルク 1.9
・エタノール 10.0
・フェノキシエタノール 0.2
・精製水 残量
【0049】
実施例7(固形状ファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 7.5
・セスキイソステアリン酸ソルビタン 2.0
・揮発性シリコーン(5量体環状シリコーン) 10.0
・揮発性シリコーン(6量体環状シリコーン) 15.0
・ジメチルシリコーン(KF-96A(6CS)、信越化学工業社製) 3.0
・ジカプリル酸プロピレングリコール 2.0
・植物性スクワラン 1.0
・パラフィン 5.0
・セレシン 2.0
・ジプロピレングリコール 3.0
・マルチトール液 3.0
・メチルパラベン 0.2
・酸化チタン 10.0
・ベンガラ 0.4
・黄酸化鉄 1.4
・黒酸化鉄 1.2
・タルク 5.0
・シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粉体(KSP-103、信越化学工業社製) 7.5
・精製水 残量
【0050】
実施例8(水中油型ファンデーション)
(成分) (配合量%)
・窒化ホウ素(No.2) 8.0
・2%アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体水分散液 15.0
・2%カルボキシビニルポリマー水分散液 15.0
・ジプロピレングリコール 5.0
・エデト酸二ナトリウム 0.05
・エタノール 15.0
・ポリオキシエチレン(2)アルキル(12〜16)エーテルリン酸 0.5
・ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル 5.0
・2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.5
・シリコーン処理酸化チタン 8.0
・ベンガラ 0.2
・黄酸化鉄 1.0
・黒酸化鉄 0.1
・架橋型シリコーン粉末(トレフィルE-506C、東レ・ダウコーニング社製) 1.5
・2%キサンタンガム分散液 15.0
・フェノキシエタノール 0.2
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.05
・精製水 残量
【0051】
比較例9〜10
上記した実施例1において、窒化ホウ素粉末としてNo.2の発明例1に代えて、No.5,6の比較例1,2をそれぞれ使用した化粧料。
比較例11
上記した実施例1において、窒化ホウ素粉末としてNo.2の発明例1に代えて、No.1の従来例を使用した化粧料。
【0052】
上述した各化粧料について、その透明感(素肌感)、滑らかなのび感、肌への密着感および仕上げのツヤ感について調べた結果を、表2に示す。
なお、上記の各種性質は、本発明品および比較品を、化粧品評価専門の調査パネル20名に使用してもらい、各調査パネルが5段階の評価基準に基づいて評価した。また、全調査パネルの評点の平均値を算出し、次の5段階の判定基準により判定した。
評価基準
5:非常に良好
4:良好
3:普通
2:やや不良
1:不良
判定基準
☆:4.7以上
◎:4.5以上、4.7未満
○:3.5以上、4.5未満
△:2.5以上、3.5未満
×:2.5未満
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示したとおり、化粧品用体質顔料として本発明に従う窒化ホウ素粉末を用いることにより、滑らかなのび感、肌への密着感および仕上げのツヤ感についてはいうまでもなく、とりわけ透明感(素肌感)ついて、従来よりも高い評価が得られている。