(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297852
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】燃焼機関のピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/22 20060101AFI20180312BHJP
F01P 3/10 20060101ALI20180312BHJP
F01P 3/08 20060101ALI20180312BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20180312BHJP
F16J 1/16 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F01P3/10 A
F01P3/08 G
F16J1/09
F16J1/16
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-23132(P2014-23132)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2014-169695(P2014-169695A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年9月28日
(31)【優先権主張番号】10 2013 002 232.0
(32)【優先日】2013年2月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】タラット・シェール
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト・ペルツェル
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−272453(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/019594(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0108001(US,A1)
【文献】
特開2012−211597(JP,A)
【文献】
特表2001−502785(JP,A)
【文献】
特開昭61−175256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00−3/28
F16J 1/00−1/24、7/00−10/04
F01P 3/08
F01P 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関のピストンであって、
ピストン上部分(10)及びピストン下部分(11)と、
前記ピストン下部分(11)内に取り付けられており、前記ピストンを燃焼機関の連接棒(13)に接続しているピストンピン(12)と、
前記ピストン上部分(10)と前記ピストン下部分(11)との間に形成された、ピストン冷却用の冷却油のための第1の、特に内側の冷却室(15)であって、該冷却室(15)が、少なくとも一つの連通孔(17)を介して、前記ピストン上部分(10)と前記ピストン下部分(11)との間に形成された第2の、特に外側の冷却室に接続されている、冷却室(15)と、
前記連接棒(13)内の孔(18)を通じて案内された冷却油を前記第1の冷却室(15)に向かう方向に案内する冷却油案内スリーブ(19)と、
を有する、ピストンにおいて、
前記冷却油案内スリーブ(19)が、スリット入りのスリーブとして構成されており、前記冷却油案内スリーブ(19)が、第1の案内面(22)で前記ピストン下部分(11)の支持面(23)に対して弾性的に押し付けられており、
前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)と、前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)が弾性的に押し付けられている前記ピストン下部分(11)の前記支持面(23)とが、円錐台状に構成されており、そのために、前記冷却油案内スリーブ(19)が、さらに第2の案内面(24)で前記連接棒(13)の連接棒ヘッド(14)の支持面(25)に対して弾性的に押し付けられていることを特徴とする、ピストン。
【請求項2】
前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)と前記ピストン下部分(11)の前記支持面(23)とが、前記連接棒(13)を向く端部(26)から始まって、前記ピストン又は前記冷却油案内スリーブ(19)の軸方向において前記連接棒(13)とは反対側の端部(27)に向かって、先細になっていることを特徴とする、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
燃焼機関のピストンであって、
ピストン上部分(10)及びピストン下部分(11)と、
前記ピストン下部分(11)内に取り付けられており、前記ピストンを燃焼機関の連接棒(13)に接続しているピストンピン(12)と、
前記ピストン上部分(10)と前記ピストン下部分(11)との間に形成された、ピストン冷却用の冷却油のための第1の、特に内側の冷却室(15)であって、該冷却室(15)が、少なくとも一つの連通孔(17)を介して、前記ピストン上部分(10)と前記ピストン下部分(11)との間に形成された第2の、特に外側の冷却室に接続されている、冷却室(15)と、
前記連接棒(13)内の孔(18)を通じて案内された冷却油を前記第1の冷却室(15)に向かう方向に案内する冷却油案内スリーブ(19)と、
を有する、ピストンにおいて、
前記冷却油案内スリーブ(19)が、スリット入りのスリーブとして構成されており、前記冷却油案内スリーブ(19)が、第1の案内面(22)で前記ピストン下部分(11)の支持面(23)に対して弾性的に押し付けられ、
前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)と、前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)が弾性的に押し付けられる、前記ピストン下部分(11)の前記支持面(23)とが、円筒状に形成されており、
前記冷却油案内スリーブ(19)が、弾性を有するワンピースで構成されており、
前記冷却油案内スリーブ(19)の第2の案内面(24)が、前記連接棒(13)の連接棒ヘッド(14)の支持面(25)に当接していることを特徴とする、ピストン。
【請求項4】
前記冷却油案内スリーブ(19)において、スリット(21)が、ピストン又は前記冷却油案内スリーブ(19)の軸方向に延在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のピストン。
【請求項5】
前記ピストン下部分(11)が、前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)が弾性的に押し付けられている前記ピストン下部分(11)の前記支持面(23)に隣接して、それにより、前記冷却油案内スリーブ(19)に隣接しており、漏斗状に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストン。
【請求項6】
前記ピストン下部分(11)の漏斗ネック状部分(29)にさらなる冷却油案内スリーブ(30)がセットされていることを特徴とする、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記ピストン下部分(11)が、前記冷却油案内スリーブ(19)の前記第1の案内面(22)が弾性的に押し付けられている前記ピストン下部分(11)の前記支持面(23)に隣接し、それにより、前記冷却油案内スリーブ(19)に隣接しており、円筒状に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストン。
【請求項8】
前記冷却油案内スリーブ(19)が、前記連接棒(13)とは反対側の端部(27)に突起(28)を有しており、該突起(28)により、連接棒(13)が取り外されているときに前記冷却油案内スリーブ(19)が前記ピストン下部分(11)に保持されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のピストン。
【請求項9】
当該ピストンの外径が、100mm〜600mmであり、
前記冷却油案内スリーブ(19)の領域における、前記連接棒(13)の連接棒ヘッド(14)と前記ピストン下部分(11)との間の間隔が、0.5mm〜10mmであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きにかかる燃焼機関のピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、望ましくは互いにネジ止めされたピストン上部分及びピストン下部分を有する燃焼機関のピストンが知られている。ピストン下部分には、ピストンピンが支承されており、このピストンピンにより、ピストンが燃焼機関の連接棒に接続されている。特許文献1に記載のピストンは、油冷却され、その際、ピストン上部分とピストン下部分との間には、一方では冷却油用の内側冷却室、及び、他方では冷却油用の外側冷却室が形成されており、また、内側冷却室は、少なくとも一つの連通孔を介して外側冷却室に接続されている。この従来の技術においては、冷却油を内側冷却室に導入するために連接棒内に冷却油用の供給孔が組み込まれており、冷却油は、多部分から成る冷却油案内スリーブにより、連接棒から、内側冷却室内に輸送可能である。特許文献1に記載において、冷却油案内スリーブのネック状の第1の部分は、ピストンのピストン下部分に移動不能に取り付けられている。冷却油案内スリーブのネック状のこの固定部分は、冷却油案内スリーブの漏斗状の可動部分と協働して、冷却油案内スリーブのこれら2つの部分の間にはめられた弾性要素により、冷却油案内スリーブの漏斗状部分が連接棒の連接棒ヘッドに対して滑り接触で弾性的に押し付けられるようになっている。冷却油を連接棒内の孔から内側冷却室に輸送するため、にそのようなバネ式の冷却油案内スリーブを使用することは、そのような冷却油案内スリーブの取り付けのコストが比較的高くなるため、短所である。さらに、弾性要素が別個であるため、冷却油案内スリーブと連接棒との間に高い摩擦力が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第3518721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明の課題は、新式の燃焼機関のピストンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、請求項1に記載のピストンにより解決される。本発明において冷却油案内スリーブは、スリット入りスリーブとして形成されており、このスリット入りスリーブは、第1案内面でピストン下部分の支持面に対して弾性的に押し付けられる。
【0006】
スリット入りスリーブとして形成されたピストンの冷却油案内スリーブは、ワンピースであるばかりでなく、この冷却油案内スリーブは、ピストン下部分に対して弾性的に押し付けられる。そのため、従来技術においては別個に必要であった弾性要素を使用せずにすむ。そのため本発明のピストンにかかる冷却油案内スリーブの領域における部品数は、少なくなる。さらに、冷却油案内スリーブを連接棒に押し付けるための別個の弾性要素を不使用にできることにより、冷却油案内スリーブと連接棒との間の摩擦力を低下させることができる。
【0007】
本発明の好適な発展形によると、冷却油案内スリーブの第1の案内面と、この冷却油案内スリーブの第1の案内面が弾性的に押し付けられるピストン下部分の支持面とは、円錐台状に形成されており、そのために、冷却油案内スリーブは、さらに第2の案内面で連接棒の連接棒ヘッドの支持面に対して弾性的に押し付けられる。この構成の長所は、冷却油案内スリーブもまた弾性的に連接棒の連接棒ヘッドに対して押し付けられることである。これにより、冷却油案内スリーブと連接棒との間の密閉効果が保証され得る。
【0008】
本発明のさらなる一つの好適な発展形によると、冷却油案内スリーブは、連接棒とは反対側の端部に突起を有しており、連接棒が取り外されているときには、この突起により冷却油案内スリーブがピストン下部分に保持される。この突起を形成することにより、別個の安全リングを使用せずにすむ。また、それにより、ピストンのコンポーネント数を減らして、ピストンの取り付けを容易にし得る。
【0009】
本発明のさらなる一つの好適な発展形によると、冷却油案内スリーブから供給された冷却油を第1の冷却室に案内するために、ピストン下部分は、冷却油案内スリーブの第1の案内面が弾性的に押し付けられるピストン下部分の支持面に隣接し、それにより、冷却油案内スリーブに隣接しており、漏斗状に形成されている。ピストン下部分が冷却油案内スリーブに隣接して漏斗状に形成されていることにより、冷却油の第1冷却室への輸送が改善され得る。
【0010】
本発明の望ましい発展形は、従属請求項及び以下の説明から見てとれる。図を参照しながら本発明の実施例を詳しく説明するが、これに限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1のピストンの第1の切断方向における横断面図である。
【
図3】
図1の本発明のピストンの第2の切断方向における横断面図である。
【
図5】本発明の第2のピストンの第1の切断方向における横断面図である。
【
図6】本発明の第3のピストンの第2の切断方向における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、燃焼機関の油冷却されたピストン、特に、ディーゼルエンジン又はガスエンジン又はディーゼル・ガス・エンジンとして実施された燃焼機関、たとえば船舶ディーゼル燃焼機関の、油冷却されたピストンに関する。そのようなピストンはプランジャとも呼ばれる。
【0013】
図1から
図3にはそれぞれ、本発明の第1の燃焼機関ピストンの、切断方向の異なる断面図が図示されており、ピストンは、ピストン上部分10及びピストン下部分11を有している。ピストンキャビティ16を有するピストン上部分10及びピストン下部分11は、望ましくは、軽金属、鋼、又は、ノジュラー鋳鉄からできている。ピストン上部分10及びピストン下部分11は、互いに支持し合っていて、望ましくは、締めネジとして実施された取付手段を介して互いに取り付けられている。
【0014】
ピストン下部分11の孔には、ピストンピン12が取り付けられており、このピストンピン12によりピストンが燃焼機関の連接棒13に接続されている。
図2では、連接棒13のいわゆる連接棒ヘッド14が図示されている。
【0015】
ピストン上部分10とピストン下部分11との間には、冷却油のために、一方では内側の第1の冷却室15が、他方では図示されていない外側の第2の冷却室が形成されており、
図2によると、内側の冷却室15は、連通孔17を介して外側冷却室に接続されている。
【0016】
ピストンの冷却に用いられる冷却油は、連接棒13及び連接棒ヘッド14を通って延在する孔18を介してピストンに供給可能である。このとき冷却油案内スリーブ19は、連接棒13、又は、連接棒13の連接棒ヘッド14と協働する。冷却油の流れは、矢印20により視覚化されている。
【0017】
本発明のピストン10の冷却油案内スリーブ19は、スリット入りスリーブとして形成されている。冷却油案内スリーブ19のスリット21は、ピストン又は冷却油案内スリーブ19の軸方向に延在している。
【0018】
取り外された状態における冷却油案内スリーブ19の外径は、冷却油案内スリーブ19がセットされるピストン下部分11の凹所の内径より大きい。そのため、冷却油案内スリーブ19をピストン下部分11のこの凹所内にセットするために、冷却油案内スリーブ19は、スリット21のいわゆる供給口を減少させる間に圧縮され、冷却油案内スリーブ19がピストン下部分11内にセットされると、冷却油案内スリーブ19の第1の案内面22がピストン下部分11の対応する支持面23に対して弾性的に押し付けられる。
【0019】
そのため冷却油案内スリーブ19は、一体として又はワンピースとして形成されており、別個の弾性要素を伴わずにピストン下部分11内に取り付けられる。
【0020】
本発明の望ましい発展形によると、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22及び冷却油案内スリーブ19の第1案内面22は、弾性的に押し付けられている、ピストン下部分11の支持面23は、円錐台状に形成されている。それにより、冷却油案内スリーブ19がさらに第2案内面24で、連接棒13の連接棒ヘッド14の支持面25に対して弾性的に押し付けられることが確実になる。
【0021】
冷却油案内スリーブ19の第1案内面22と、これに対応する、ピストン下部分11の支持面23とは、冷却油案内スリーブ19の、連接棒13を向く端部から、ピストン又は冷却油案内スリーブ19の軸方向において見て、冷却油案内スリーブ19の、連接棒13とは反対側の端部27に向かう方向において先細になっている。
【0022】
すでに述べたように、ピストン下部分11内の対応する凹所内に冷却油案内スリーブ19が取り付けられた後、冷却油案内スリーブ19は、第1案内面22で、ピストン下部分の支持面23に対して弾性的に押し付けられる。
【0023】
特に、その後に連接棒13を取り付けると、冷却油案内スリーブ19は、さらに圧縮され、それにより、第1案内面22及び支持面23が円錐台状に形成されているために、冷却油案内スリーブ19は第2案内面24で、連接棒13の連接棒ヘッド14の、対応する支持面25に対して弾性的に押し付けられる。それにより冷却油案内スリーブ19が連接棒13の連接棒ヘッド14から持ち上がることが阻止され、連接棒13の連接棒ヘッド14と冷却油案内スリーブ19との間の良好な密閉が常に確保される。
【0024】
図2の細部からよくわかるように、冷却油案内スリーブ19には、連接棒13とは反対側の端部27に突起28があり、この突起により、冷却油案内スリーブ19がピストン下部分11内にセットされたとき、及び、連接棒13が取り外されているときに、冷却油案内スリーブ19は、ピストン下部分11内に保持される。冷却油案内スリーブ19の端27にある突起28の外径はそのために、支持面23の先細の端部の領域において、ピストン下部分11の支持面23の内径より大きい。
【0025】
図1から
図3の実施例において、ピストン下部分11は、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22が弾性的に押し付けられているピストン下部分11の支持面23に隣接して、それにより冷却油案内スリーブ19に隣接して、漏斗状に形成されている。そのために、冷却油案内スリーブ19から供給された冷却油は、定義通りに第1冷却室15に案内され得る。
【0026】
図4に図示された、
図1から
図3のピストンの発展形においては、ピストン下部分11のネック状部分29内のその漏斗状輪郭の領域内にさらなる一つの冷却油案内スリーブ30がセットされており、この冷却油案内スリーブ30により、冷却油案内スリーブ19及びピストン下部分11の漏斗状部分から供給された冷却油がどの位置で第1冷却室15に到達するかに影響を与えることができる。それにより第1冷却室15内の冷却油の流れを定義通りに設定することができる。
【0027】
図5には、本発明によるピストンの別の実施態様が図示されており、ピストン下部分11は、スリット入り冷却油案内スリーブ19の第1案内面22が弾性的に押し付けられているピストン下部分11の支持面23に隣接し、それにより、冷却油案内スリーブ19に隣接しており、円筒状に形成されている。ピストン下部分11がそのように構成されることにより、取付空間の長所を実現し得る。さらに、そのようなピストン下部分11の製造は、より簡単である。しかしながら、実施例1から実施例4に関して、冷却油案内スリーブ19に隣接してピストン下部分11が漏斗状に形成されていることには、第1冷却油室15からの非所望の冷却油戻り流量を減少させ得る、という短所がある。
【0028】
図1から
図5の実施例において、冷却油案内スリーブ19は、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22でピストン下部分の対応する支持面23に対して弾性的に押し付けられており、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22は、それぞれ円錐台状に形成されている。それに対して、
図6と
図7に図示されたピストンの実施例では、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22及び対応するピストン下部分11の支持面23は、それぞれ円筒状に形成されている。この実施例においても、ピストン下部分11内にセットされた冷却油案内スリーブ19は、ピストン下部分11の支持面23に対して弾性的に押し付けられており、連接棒13が取り外されているとき、冷却油案内スリーブ19のピストンロッド14とは反対側の端部27にある突起28により、冷却油案内スリーブ19は、ピストン下部分11に保持される。
図6及び
図7の実施例におけるように、冷却油案内スリーブ19の第1案内面22及び対応するピストン下部分11の支持面23が円筒状に形成されている場合、連接棒14が取り付けられた状態において冷却油案内スリーブ19がより大きく圧縮されることはなく、そのため、その場合、冷却油案内スリーブ19は、その案内面24で、連接棒13の連接棒ヘッド14の対応する支持面25に対して弾性的に押し付けられない。しかし、この場合においても、冷却油案内スリーブ19がその案内面24で、対応する連接棒13の支持面25に乗っているため、冷却油案内スリーブ19と連接棒13との間に十分な密閉効果が保証される。
【0029】
対応するピストン下部分11の支持面22に対して、少なくとも第1案内面22で弾性的に押し付けられている、スリット入り冷却油案内スリーブ19を使用することにより、油冷却されるピストンの構造及び取付けを明らかに簡素化し得る。必要なコンポーネント数が減り、それにより必要な取付ステップも減る。さらに、冷却油案内スリーブ19と連接棒13の連接棒ヘッド14との間の摩擦も減少させることができる。それにより、部品の寿命を長くすることができる。
【0030】
本発明は、特に、ディーゼルエンジン又はガスエンジン又はディーゼル・ガス・エンジンなどあらゆる分野の大型エンジンのピストンであって外径が100mmから600mmの範囲にあるピストンに使用される。冷却油案内スリーブ19の領域における連接棒13の連接棒ヘッド14と冷却下部分11との間の距離は、0.5mmから10mmの間である。冷却油案内スリーブ19により、この距離が橋渡しされ、連接棒13の連接棒ヘッド14に対して確実に密閉される。
【符号の説明】
【0031】
10 ピストン上部分
11 ピストン下部分
12 ピストンピン
13 連接棒
14 連接棒ヘッド
15 冷却室
16 ピストンキャビティ
17 連通孔
18 孔
19 冷却油案内スリーブ
20 冷却油の流れ
21 スリット
22 案内面
23 支持面
24 案内面
25 支持面
26 端
27 端
28 突起
29 ネック状部分
30 冷却油案内スリーブ