(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による油圧ショベルでは、キャブと熱交換装置との間の空間部を利用して尿素水タンクを配置している。一方で、昨今の油圧ショベルは、上部旋回体を旋回動作させたときに、周囲の障害物と接触しないように、この上部旋回体の小型化が図られている。
【0007】
従って、上部旋回体が小型化された小型の油圧ショベルでは、キャブと熱交換装置との間に大きな空間部を確保することができないから、尿素水タンクの容量が小さくなってしまうという問題がある。
【0008】
しかも、各種機器を設置するための空間部が小さくなると、この空間部に配置される他の機器との関係で、尿素水タンクを自由に配置することができなくなる。これにより、尿素水タンクへの尿素水の給水作業、尿素水タンクのメンテナンス作業を行う場合に、無理な作業姿勢を要求されることがあり、これらの作業性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、限られたスペースでも尿素水タンクの容量を拡大することができ、また、尿素水タンクの給水作業性、メンテナンス作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられたフロント装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を構成する旋回フレームと、該旋回フレームの後側に位置して前記フロント装置との重量バランスをとるためのカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの前側に位置して前記旋回フレーム上に横向き状態で配設されたエンジンと、該エンジンの長さ方向の一側に位置して設けられた熱交換装置と、該熱交換装置の前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられたキャブと、前記エンジンの排気管に設けられ尿素
水噴射弁から尿素水が噴射されることにより排気ガス中の窒素酸化物を除去する尿素選択還元触媒を備えたNOx浄化装置と、該NOx浄化装置の尿素
水噴射弁に供給するための尿素水溶液を蓄える尿素水タンクとを備え、前記旋回フレームは、平板状の底板と、該底板上に左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びて立設された左,右の縦板と、前記底板および各縦板から左,右方向に張出した複数本の張出しビームと、前記底板の左,右方向の外側位置を前,後方向に延び前記各張出しビームの先端に取付けられた左サイドフレーム,右サイドフレームとにより構成してなる。
【0011】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記複数本の張出しビームのうち、前記熱交換装置の前側に位置して前記キャブの後側を支持するキャブ後張出しビームは、前記底板から立ち上がった立上り板部と、該立上り板部の上端から屈曲して後側に延びた上横板部と、前記立上り板部と前記上横板部との間に形成された空間部とにより逆L字状に形成
され、
前記キャブ後張出ビームの下側には、前記底板と前記左サイドフレームとの間にアンダカバーが設けられ、前記尿素水タンクは、上,下方向に延びた縦タンク部と該縦タンク部の下部から前側に延びた横タンク部とによりL字状の容器として形成
されていると共に、前記キャブの後面に沿わせた状態で前記アンダカバー上に取付具を用いて取付けられ、該尿素水タンクの横タンク部は、前記キャブ後張出しビームに形成された前記空間部に配置
されていることにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記キャブ後張出しビームの前記上横板部の上面には、該上横板部から立ち上がって左,右方向に延びる前仕切り板
が設け
られ、前記左,右の縦板と前記左,右のサイドフレームとの間には、前記張出しビームと平行に延びる左,右の後部プレート
がそれぞれ設け
られ、該左,右の後部プレートのうち左後部プレートには、前記前仕切り板と対面するように左,右方向に延びる後仕切り板
が設け
られ、前記前仕切り板と前記後仕切り板との間には、前記熱交換装置が外気を吸込む吸込み面側に位置してユーティリティ室
が設け
られ、前記尿素水タンクの縦タンク部は前記ユーティリティ室の前側位置に配置
されていることにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記キャブ後張出しビームの前記上横板部には、左,右方向の両側に位置して前記キャブを防振状態で支持する防振マウントを取付けるためのマウント取付孔
が設け
られ、前記尿素水タンクの前記横タンク部は、平面視で前記マウント取付孔を避けた位置に配置
されたことにある。
【0015】
請求項
4の発明は、前記尿素水タンクの前記縦タンク部は
、前記キャブの後面に沿って上方に延び、その上部位置には、尿素水の給水口
が設け
られていることにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、尿素水タンクは、後側に位置して上,下方向に延びた縦タンク部と該縦タンク部の下部から前側に延びた横タンク部とによりL字状の容器として形成しているから、尿素水タンクは、横タンク部の分だけ容量を拡大することができる。この場合、横タンク部は、逆L字状に形成されたキャブ後張出しビームの空間部を利用して配置することができる。
【0017】
この結果、尿素水タンクを設置するためのスペースが小さい場合でも、デッドスペースをなす空間部を利用することで、尿素水タンクの容量を拡大することができる。さらに、尿素水タンクは、実質的な占有スペースを小さくできるから、配置場所の自由度を高めることができる。これにより、尿素水タンクは、外部から容易に手が届く位置に配置できるから、尿素水タンクへの給水作業、尿素水タンクのメンテナンス作業等の作業性を向上することができる。
しかも、旋回フレームの底板と左サイドフレームとの間には、アンダカバーを設けているから、尿素水タンクは、アンダカバーを利用し、このアンダカバー上に取付具を用いて取付けることができる。これにより、尿素水タンクを旋回フレーム上に簡単に固定することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、ユーティリティ室は、熱交換装置が外気を吸込む吸込み面側、即ち、左,右方向の外側位置に配置されているから、このユーティリティ室に配置された尿素水タンクの縦タンク部には、外部から容易に手を伸ばすことができる。これにより、尿素水タンクへの給水作業、尿素水タンクのメンテナンス作業等の作業性を向上することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、尿素水タンクの横タンク部は、キャブ後張出しビームの上横板部に設けられたマウント取付孔、即ち、防振マウントを避けた位置に配置することができる。これにより、尿素水タンクは、キャブの後側に配置された防振マウントと干渉しない位置に配置することができる。
【0021】
請求項
4の発明によれば、尿素水タンクは、縦タンク部の上部位置に尿素水の給水口を設けている。これにより、尿素水タンクには、上部位置に設けた給水口から尿素水を容易に給水することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態として、ホイール式の下部走行体を備えたホイール式油圧ショベルを例に挙げ、
図1ないし
図10に従って詳細に説明する。
【0024】
図1において、1は建設機械としてのホイール式油圧ショベルで、該ホイール式油圧ショベル1は、左,右の前輪2Aおよび左,右の後輪2Bを有する自走可能なホイール式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられたフロント装置4とにより構成されている。
【0025】
フロント装置4は、後述する旋回フレーム5の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行うものである。このフロント装置4は、旋回フレーム5の左,右の縦板7,8の前側部位に俯仰動可能に取付けられたブーム4Aと、該ブーム4Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム4Bと、該アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fとにより構成されている。
【0026】
また、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト24、エンジン25、熱交換装置26、キャブ28、NOx浄化装置33、尿素水タンク34を含んで構成されている。
【0027】
5は上部旋回体3の支持構造体を構成する旋回フレームを示している。この旋回フレーム5は、
図2に示す如く、平板状の底板6と、該底板6上に左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びて立設された左縦板7,右縦板8と、底板6および各縦板7,8から左,右方向に張出した複数本の張出しビーム9〜13および1本のキャブ後張出しビーム14と、各縦板7,8の後部位置から左,右方向の外側に延びた左後部プレート15,右後部プレート16と、底板6の左,右方向の外側位置を前,後方向に延び各張出しビーム9〜14,各後部プレート15,16の先端に取付けられた左サイドフレーム17,右サイドフレーム18とを含んで構成されている。旋回フレーム5の左前側には、キャブ28の前側を支持するキャブ前フレーム19が設けられ、該キャブ前フレーム19は、左サイドフレーム17の前端から右側(左縦板7側)に延び、底板6に取付けられている。一方、底板6は、
図4に示すように、各縦板7,8間に位置する中央板部6Aと、左縦板7を超えて左側に延びた左板部6Bと、右縦板8を超えて右側に延びた右板部6Cとに区切ることができる。
【0028】
さらに、複数本の張出しビーム9〜14のうち、左側に位置する張出しビーム9,10、キャブ後張出しビーム14および左後部プレート15は、平行に並んだ状態で底板6の左板部6B、左縦板7と左サイドフレーム17との間を連結して設けられている。一方、右側に位置する張出しビーム11〜13および右後部プレート16は、平行に並んだ状態で底板6の右板部6C、右縦板8と右サイドフレーム18との間を連結して設けられている。
【0029】
ここで、キャブ後張出しビーム14は、旋回フレーム5の左,右方向の左側に位置して前,後方向の中間部に配置されている。キャブ後張出しビーム14は、後述する熱交換装置26の前側に位置してキャブ28の後側を支持するものである。キャブ後張出しビーム14は、
図6、
図8に示すように、左,右方向に延びて底板6の左板部6Bから立ち上がった立上り板部14Aと、立上り板部14Aの上端から屈曲して後側に延びた平坦な上横板部14Bと、立上り板部14Aと上横板部14Bとの間に形成された空間部14Cとにより逆L字状に形成されている。
【0030】
キャブ後張出しビーム14には、底板6と左サイドフレーム17との間に位置して立上り板部14Aの下端から前側に延びた下板部14Dが設けられている。また、上横板部14Bの左,右方向の両側位置には、マウント取付孔14Eが設けられ、該マウント取付孔14Eは、キャブ28を防振状態で支持する防振マウント28Aを取付けるための丸孔として形成されている。
【0031】
キャブ後張出しビーム14の基端側(右側)は、底板6の左板部6B、左縦板7の側面に溶接等の手段をもって接合され、先端側(左側)は、左サイドフレーム17の内側面に溶接等の手段をもって接合されている。即ち、キャブ後張出しビーム14は、キャブ28の後側を支持すると共に、底板6、左縦板7と左サイドフレーム17との間を接続するものである。
【0032】
一方、前述したキャブ前フレーム19にも、左,右方向の両側に位置してマウント取付孔19Aが設けられている。このマウント取付孔19Aには、キャブ後張出しビーム14と同様に、防振マウント28Aが取付けられている。キャブ後張出しビーム14の上横板部14Bには、左,右のマウント取付孔14E間を後側から切欠くことによって切欠部14Fが設けられ、この切欠部14Fはキャブ28から延びる各種ホース、ハーネス等を通したり、軽量化を図るものである。
【0033】
20A〜20Eは底板6と左,右のサイドフレーム17,18との間に設けられた複数枚のアンダカバーを示している(全体としてアンダカバー20という)。アンダカバー20は、薄板状の鋼板からなり、底板6、各張出しビーム9〜14、各サイドフレーム17,18等に対し、溶接手段、ボルト止め手段等を用いて接合されている。各アンダカバー20のうち、キャブ後張出しビーム14の下側に位置するアンダカバー20Bの上面には、後述する尿素水タンク34が取付けられている。
【0034】
21はキャブ後張出しビーム14の上横板部14Bの上面に設けられた前仕切り板で、該前仕切り板21は、キャブ28の後面に沿うように上横板部14Bから立ち上がって左,右方向に延びる板状体として形成されている。この前仕切り板21の上端には、後述する外装カバー32の上面カバー32Bの前端が支持されている。
【0035】
22は前仕切り板21と対面するように設けられた後仕切り板である。この後仕切り板22は、左,右の後部プレート15,16のうち左後部プレート15から立ち上がって左,右方向に延びる板状体として形成されている。この後仕切り板22の上端には、同じく外装カバー32の上面カバー32Bの後端が支持されている。
【0036】
さらに、23は、前仕切り板21と後仕切り板22との間に設けられたユーティリティ室を示している。このユーティリティ室23は、旋回フレーム5の左,右方向の外側、即ち、後述する熱交換装置26の吸込み面26A側に配置されている。このユーティリティ室23内には後述のエアクリーナ31、尿素水タンク34等が配置されている。
【0037】
24は旋回フレーム5の後部に設けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト24は、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板7,8の後端部に取付けられ、フロント装置4との重量バランスをとるものである。
【0038】
25はカウンタウエイト24の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられたエンジンを示している。このエンジン25は、
図4に示すように、左,右方向に延びる横向き状態となって旋回フレーム5上に搭載され、左,右方向の一側となる左側には、冷却ファン25Aが設けられている。エンジン25は、例えばディーゼルエンジンとして構成され、後述の油圧ポンプ27を回転駆動するための駆動源となっている。さらに、エンジン25は、空気を吸込む吸気管25Bと排気ガスを排出する排気管25Cとを有している。吸気管25Bには、後述のエアクリーナ31が接続され、排気管25Cには後述するNOx浄化装置33が接続されている。
【0039】
26はエンジン25の長さ方向の一側となる左側、即ち、ユーティリティ室23側に設けられた熱交換装置を示している。熱交換装置26は、枠状体の内部にエンジン冷却水を冷やすラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン25が吸込む空気を冷却するインタクーラ等を収容している。ここで、熱交換装置26は、左,右方向の外側(左側)から冷却風として外気を吸込むものであり、冷却ファン25Aと反対側の面が吸込み面26Aとなっている。この吸込み面26Aは、ユーティリティ室23の右側を閉塞する閉塞面の部をなしている。
【0040】
27はエンジン25の右側に設けられた油圧ポンプである。この油圧ポンプ27は、エンジン25により回転駆動されることにより、作動油を圧油として吐出するものである。油圧ポンプ27は、例えば斜板式または斜軸式のラジアルピストン式油圧ポンプ等によって構成されている。
【0041】
28は熱交換装置26の前側に位置して旋回フレーム5上に搭載されたキャブを示している。このキャブ28は、オペレータが搭乗するもので、その内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。キャブ28は、その前側が旋回フレーム5のキャブ前フレーム19に支持され、後側がキャブ後張出しビーム14に支持されている。この場合、キャブ28は、キャブ前フレーム19、キャブ後張出しビーム14のマウント取付孔19A,14Eに挿着された防振マウント28A(
図8中に1個のみ図示)により四隅が支持されている。
【0042】
29は油圧ポンプ27の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられた作動油タンクである。この作動油タンク29は、油圧ポンプ27に供給する作動油を蓄えるものである。また、30は作動油タンク29の前側に隣接して設けられた燃料タンクで、該燃料タンク30は、エンジン25に供給される燃料を蓄えるものである。
【0043】
31は熱交換装置26の上流側に位置してユーティリティ室23内に設けられたエアクリーナを示している。このエアクリーナ31は、吸込んだ空気中のダストを遠心分離し、清浄化した空気のみをエンジン25側に流通させるものである。
【0044】
32はキャブ28とカウンタウエイト24との間に位置して旋回フレーム5上に設けられた外装カバーを示している。この外装カバー32内には、エンジン25、熱交換装置26、油圧ポンプ27、NOx浄化装置33等が収容されている。外装カバー32は、熱交換装置26に対面して左サイドフレーム17上に立設された左側面カバー32Aと、油圧ポンプ27に対面して右サイドフレーム18上に立設された右側面カバー(図示せず)と、前記各側面カバー32Aの上部に亘って左,右方向に延びた上面カバー32Bと、該上面カバー32Bに開閉可能に取付けられたエンジンカバー32Cとにより構成されている。ここで、左側面カバー32Aは、ユーティリティ室23の左側を開閉可能に覆うもので、開いた状態では、尿素水タンク34を外部に露出させることができる。
【0045】
次に、エンジン25から排出される排気ガスを処理するために、該エンジン25の排気側に接続して設けられたNOx浄化装置33の構成について説明する。
【0046】
33はエンジン25の右上側に配設されたNOx浄化装置を示している。このNOx浄化装置33は、エンジン25の排気管25Cに設けられている。NOx浄化装置33は、
図10に示すように、前,後方向に延びる円筒状容器として形成された筒状ケース33Aと、該筒状ケース33A内の上流側に設けられた尿素選択還元触媒33Bと、該尿素選択還元触媒33Bの下流側に位置して筒状ケース33A内に設けられた酸化触媒33Cと、尿素選択還元触媒33Bの上流側となるエンジン25の排気管25Cに設けられた尿素
水噴射弁33Dとを含んで構成されている。筒状ケース33Aの後側には、上方に突出するように尾管33Eが設けられている。
【0047】
このように構成されたNOx浄化装置33は、後述の尿素水タンク34から供給される尿素水を尿素
水噴射弁33Dから排気ガス中に噴射することにより、尿素選択還元触媒33Bでは尿素水溶液から生成されたアンモニアを用いて排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を還元反応させ、水と窒素に分解する。そして、酸化触媒33Cによって排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等は酸化して除去される。
【0048】
次に、本発明の特徴部分である尿素水タンク34の構成および取付構造について説明する。
【0049】
34はキャブ28の後側に位置して旋回フレーム5上に設けられた尿素水タンクを示している。この尿素水タンク34は、NOx浄化装置33の尿素
水噴射弁33Dに供給するための尿素水溶液を蓄えるものである。尿素水タンク34は、後側に位置して上,下方向に延びた縦タンク部35と、該縦タンク部35の下部から前側に延びた横タンク部36とによりL字状の容器として形成されている。
【0050】
尿素水タンク34の縦タンク部35は、上,下方向に延びる直方体状をなしている。即ち、縦タンク部35は、
図7ないし
図9に示すように、例えば、前面板35A、後面板35B、左面板35C、右面板35D、上面板35Eおよび下面板35Fにより形成されている。縦タンク部35の上部位置、具体的には、左面板35Cと上面板35Eとの境界位置に、左,右方向の外側に傾けて、尿素水を給水するための給水口35Gが設けられている。このように形成された縦タンク部35は、ユーティリティ室23の前側位置、具体的には、前仕切り板21の近傍に配置されている。
【0051】
横タンク部36は、縦タンク部35の前面板35Aの下部から前側に向け横方向(水平方向)に延びる直方体状に形成されている。即ち、横タンク部36は、例えば、前面板36A、左面板36B、右面板36C、上面板36Dおよび下面板36Eにより形成されている。上面板36Dには、左,右方向に延びる凹溝状のベルト取付溝36Fが設けられている。
【0052】
ここで、横タンク部36は、
図8に示すように、縦タンク部35に対して左,右方向の右側に片寄せた位置に配置されている。これにより、横タンク部36は、縦タンク部35を左サイドフレーム17の近くに配置した場合でも、平面視でマウント取付孔14E、即ち、防振マウント28Aを避けた位置に配置することができる。これにより、尿素水タンク34を、防振マウント28Aに邪魔されることなく、給水作業、メンテナンス作業を行い易い左,右方向の外側位置に配置することができる。
【0053】
尿素水タンク34の底部側には、タンク受37が設けられ、このタンク受37は、
図9に示すように、左前側が切欠かれたL字状の底部37Aと、該底部37Aの周囲から立上った枠部37Bとにより形成されている。枠部37Bには、横タンク部36を左,右方向で挟む位置にブラケット37Cが設けられている。
【0054】
次に、このように構成された尿素水タンク34をアンダカバー20Bに取付ける場合の手順の一例について述べる。タンク受37に収めた尿素水タンク34を前,後の仕切り板21,22、外装カバー32の左側面カバー32Aによって画成されたユーティリティ室23に配置する。この場合、キャブ後張出しビーム14に設けた空間部14Cを利用し、この空間部14Cに横タンク部36を収める。この状態で、取付具としての固定ベルト38を横タンク部36のベルト取付溝36Fに掛け、固定ベルト38の両端をタンク受37のブラケット37Cと共にアンダカバー20Bにボルト38Aを用いて固定する。これにより、尿素水タンク34は、キャブ28の後面に沿わせた状態でアンダカバー20B上に一体的に取付けることができる。
【0055】
ここで、尿素水タンク34は、
図10に示すように、尿素水供給管39、供給ポンプ40を介してNOx浄化装置33の尿素
水噴射弁33Dに接続されている。
【0056】
また、尿素水タンク34は、ユーティリティ室23内でも周囲から容易に手が届く左,右方向の外側位置に配置することができる。これにより外装カバー32の左側面カバー32Aを開くことにより、尿素水溶液の補給作業、点検、整備等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0057】
本実施の形態による建設機械としてのホイール式油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、このホイール式油圧ショベル1の動作について説明する。
【0058】
キャブ28に搭乗したオペレータは、エンジン25を始動して油圧ポンプ27を駆動する。これにより、オペレータによる操作レバー(図示せず)の操作に応じてフロント装置4を動作させ、土砂の掘削等の作業を行うことができる。
【0059】
また、エンジン25の運転時には、排気管25Cから有害物質である窒素酸化物(NOx)が排出される。このときには、尿素水タンク34内の尿素水溶液を供給ポンプ40を用いて、尿素水供給管39からNOx浄化装置33の尿素
水噴射弁33Dに供給する。これにより、NOx浄化装置33は、尿素
水噴射弁33Dから排気ガス中に尿素水溶液を噴射してアンモニアを生成する。その結果、尿素選択還元触媒33Bでは、窒素酸化物を水と窒素に還元し、酸化触媒33C、尾管33Eを経て外部に排出することにより、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0060】
かくして、本実施の形態によれば、尿素水タンク34は縦タンク部35と横タンク部36とによりL字状の容器として形成しているから、尿素水タンク34は、横タンク部36の分だけ容量を拡大することができる。この場合、立上り板部14Aと上横板部14Bにより逆L字状に形成されたキャブ後張出しビーム14の空間部14Cを利用し、この空間部14CにL字状の尿素水タンク34の横タンク部36を配置することができる。この結果、尿素水タンク34を設置するためのスペースが小さい場合でも、デッドスペースとなる空間部14Cを利用することで、尿素水タンク34の容量を拡大することができる。
【0061】
また、尿素水タンク34は、デッドスペースを利用したことでユーティリティ室23での占有スペースを小さく抑えることができるから、配置場所の自由度を高めることができる。これにより、尿素水タンク34は、外部から容易に手が届く左,右方向の外側位置に配置でき、尿素水の給水作業、尿素水タンクのメンテナンス作業等の作業性を向上することができる。
【0062】
また、ユーティリティ室23は、熱交換装置26が外気を吸込む吸込み面26A側、即ち、左,右方向の外側位置に配置されているから、このユーティリティ室23に配置された尿素水タンク34の縦タンク部35には、外部から容易に手を伸ばすことができる。これにより、尿素水タンク34への給水作業、尿素水タンク34のメンテナンス作業等の作業性を向上することができる。
【0063】
また、尿素水タンク34の横タンク部36は、縦タンク部35に対して左,右方向の右側に片寄せた位置に配置しているから、キャブ後張出しビーム14の上横板部14Bに設けられたマウント取付孔14E、即ち、防振マウント28Aを避けた位置に配置することができる。これにより、尿素水タンク34は、キャブ28の後側に配置された防振マウント28Aと干渉しない位置に配置することができる。
【0064】
また、尿素水タンク34は、取付具としての固定ベルト38を用いて、底板6と左サイドフレーム17との間のアンダカバー20B上にボルト38Aを用いて固定されている。これにより、旋回フレーム5のアンダカバー20B上に尿素水タンク34を容易に着脱可能に設けることができる。
【0065】
さらに、尿素水タンク34における縦タンク部35の上部位置には、尿素水の給水口35Gを設けている。これにより、尿素水タンク34に尿素水溶液を補給する場合には、外装カバー32の左側面カバー32Aを開くだけで、容易に給水作業を行うことができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、尿素水タンク34を旋回フレーム5のキャブ後張出しビーム14の下側に設けたアンダカバー20Bに取付けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図11に示す変形例のように構成してもよい。即ち、
図11の変形例では、底板41を左サイドフレーム17側近傍まで延ばし、この底板41上に尿素水タンク34を取付ける構成としてもよい。この場合、アンダカバー42は底板41に合わせて狭幅に形成されている。
【0067】
また、本実施の形態では、尿素水タンク34を、取付具としての固定ベルト38を用いてアンダカバー20B上にボルト止めした場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、尿素水タンク34をアンダカバー20Bに直接的にボルト止めする構成としてもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、尿素水タンク34の横タンク部36は、縦タンク部35に対して左,右方向の右側に片寄せた位置に配置されている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、横タンク部36を縦タンク部35と同幅に形状してもよい。この他にも、尿素水タンク34がユーティリティ室23におけるデッドスペース(空間部14C)に収まる形状であれば、尿素水タンク34の形状は限定されない。
【0069】
また、本実施の形態では、尿素水タンク34をタンク受37に収容した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、タンク受37を省略して尿素水タンク34をアンダカバー20Bに直接取付ける構成としてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、キャブ後張出しビーム14の上横板部14Bの上側位置と旋回フレーム5の左サイドフレーム17の後端位置とにそれぞれ前,後の仕切り板21,22を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、他の仕切り板を尿素水タンク34と熱交換装置26との間に設ける構成としてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施の形態では、ホイール式油圧ショベル1に尿素水タンク34を設ける場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばクローラ式の油圧ショベルに適用してもよい。