(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態における液封入式防振装置1の軸方向断面図である。
図1に示すように液封入式防振装置1は、自動車のエンジン等のパワーユニット(図示せず)に取り付けられる第1取付具2と、ブラケット(図示せず)を介してパワーユニットの下方の車体フレーム(図示せず)に取り付けられる筒状の第2取付具5と、第1取付具2及び第2取付具5とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体4とを備えている。
【0016】
なお、本実施の形態では、パワーユニットの分担支持荷重が、軸線Oを通る軸方向(
図1上下方向)に入力される。従って、装着状態では、防振基体4の弾性変形によって第1取付具2と第2取付具5とが軸方向で互いに近接する方向に変位する。以下の説明では、特に断りのない限り、上下方向は
図1における軸線Oの上下方向をいう。
【0017】
図1に示すように、第1取付具2は主に金属材料等の剛性材料により形成され、上面にボルト3が突設される。ボルト3により第1取付具2が振動源に取り付けられる。第2取付具5は、主に金属材料等の剛性材料により筒状に形成される筒部材6と、有底の略円筒状の底部材7とを備え、それらがかしめ部6aにおいて上下にかしめ固定されている。底部材7は下面にボルト8が突設され、ボルト8により第2取付具5が車体フレーム(支持側)に取り付けられる。
【0018】
防振基体4はゴム状弾性体から円錐台状に形成される部材であり、上端部が第1取付具2に、下端部が第2取付具5(筒部材6)の上側内周面にそれぞれ加硫接着される。防振基体4の下面側には上窄まりの中空部が形成され、防振基体4の下端部には、第2取付具5(筒部材6)の内周面を覆うゴム膜4aが段部4bに連設される。
【0019】
第1ダイヤフラム9は、外部に対して密封された主液室12及び副液室13を形成するためにゴム状弾性体から構成される部材(ゴム膜)であり、円環状の補強金具10に外周縁部が加硫接着され、補強金具10がかしめ部6aに固定される。主液室12及び副液室13は水やエチレングリコール等の非圧縮性液体(以下「液体」と称す)が封入される。第1ダイヤフラム9と底部材7との間に空気室11が形成される。本実施の形態では、空気室11は気密にされるが、これに限定されるものではなく、空気室11を大気中に連通した状態にすることは可能である。
【0020】
防振基体4と第1ダイヤフラム9との間に仕切体20が配設される。仕切体20は、かしめ部6aに外周縁がかしめ固定された支持金具21と、段部4bとの間で軸方向の位置が定められる。仕切体20の外周にゴム膜4aが圧接されることにより、防振基体4と仕切体20との間に主液室12が形成され、仕切体20と第1ダイヤフラム9との間に副液室13が形成される。仕切体20に形成される第1オリフィス22及び第2オリフィス24(
図5参照、後述する)により主液室12と副液室13との間が連通される。
【0021】
次に
図2から
図5を参照して仕切体20について説明する。
図2及び
図3は仕切体20の分解立体図であり、
図4は仕切体20の一部である本体部30の側面図であり、
図5は仕切体20の軸方向断面図である。
【0022】
図2に示すように仕切体20は、本体部30及び仕切板部60を備え、その間に第2ダイヤフラム50が配設される。本体部30は、アルミニウム等の金属や合成樹脂等の剛性材料により一体に形成される部材である。本体部30は、円環状に形成される第1円盤部31と、第1円盤部31の外周部をフランジ状に残存させるように第1円盤部31の軸方向上端から軸方向に突設される略円筒状の胴部32と、胴部32の軸方向上端にフランジ状に設けられる第2円盤部33と、第2円盤部33の外周部をフランジ状に残存させるように第2円盤部33の軸方向上端から軸方向上向きに突設される略円柱状の突設部36(
図1参照)とを備えている。
【0023】
第1円盤部31及び第2円盤部33は、胴部32との間で液体の流路を形成するための部位である。仕切体20は、軸線Oを挟む対向位置に、胴部32の径方向外側および第2円盤部33の軸方向上側に向かって凸設される一対の突出部34,35を備えている。突出部34,35は、第1円盤部31及び胴部32を周方向の2つ(第1領域30a及び第2領域30b)に区画するための部位である。突出部35は、突出部35を径方向に貫通する孔部35aが形成されている。孔部35aは、導入管38(後述する)が圧入される部位である。
【0024】
第2円盤部33は、第1領域30aに区画された第1円盤部31と対向する第2円盤部33の外周縁の一部に、突出部34に隣接して、径方向内側に向かって切欠される外周切欠部33aが形成される。
図3に示すように、第1領域30aに区画された胴部32の一部に、突出部35に隣接して、胴部32を径方向に貫通する第1開口部32b(
図3及び
図4参照)が形成される。第2領域30bに属する胴部32に、周方向の一部が円弧状に切欠された切欠部32aが形成される。その切欠部32aを第2円盤部33に対して軸方向に投影した位置に、第2円盤部33の周方向の一部が円弧状に切欠された切欠部33bが形成される。また、切欠部32a,33bの位置に、胴部32を径方向に貫通する第2開口部31aが形成される。第2開口部31aの面積は、第1開口部32bの面積より大きく設定される。
【0025】
カラー部材41は、アルミニウム等の金属や合成樹脂等の剛性材料で形成されると共に突設部36(
図5参照)に外嵌される略筒状の部材であり、径方向外側へ向かって相互に略120°に開いた角度で突出する一対の板状の突設板部42が軸方向下端に設けられている。突設板部42は、カラー部材41が突設部36に外嵌されると、第2領域30bに属する第2円盤部33(切欠部33bと突出部34,35との間の第2円盤部33)の上面に密接される位置に設けられている。カラー部材41は、径方向内側へ向かって屈曲される円環部43が軸方向上側に設けられており、その円環部43にゴム状弾性体から構成されるゴム膜状の第2ダイヤフラム50の外周部が加硫接着される。
【0026】
図5に示すように第2ダイヤフラム50は、突設部36の上面に凹設された半球状の湾曲面36aとの間で、内部の気圧を可変にする可変室23を形成するための円盤状の部材である。第2ダイヤフラム50は、外周部が円環部43に加硫接着された可撓部51と、可撓部51の径方向内側に位置し軸方向視が略円形の中央部52と、中央部52の膜面の径方向外側の全周から湾曲面36aに対して離反する方向(軸方向上側)へ突出するリップ53とを備え、それらが一体に形成されている。可撓部51は、軸方向上側へ向けて隆起する隆起部51aが、外周部が加硫接着された円環部43の上方に設けられている。
【0027】
ここで、
図1を参照して可変室23について説明する。可変室23は、突設部36(
図5参照)に凹設された湾曲面36a(
図5参照)と第2ダイヤフラム50との間に形成される小空間である。可変室23は、湾曲面36aの略中心に開口する通路37と連通する。通路37は、本体部30(胴部32)の径方向略中心から孔部35a(
図3参照)に亘って形成されており、筒部材6に貫設されると共に孔部35aに圧入される導入管38と連通する。
【0028】
導入管38は、可変室23の気圧を可変にするための管路である。本実施の形態では、負圧源または大気開放のいずれかに切替可能なスイッチングバルブ等の切替手段(図示せず)が導入管38に接続される。制御手段(図示せず)からの指令信号等により、導入管38を介して可変室23に負圧または大気圧のいずれかが導入される。可変室23に負圧が導入されると、主に可撓部51が弾性変形して第2ダイヤフラム50は湾曲面36aに吸着され、可変室23に大気圧が導入されると、第2ダイヤフラム50は復元されて湾曲面36aから離隔される。
【0029】
図5に示すように第2ダイヤフラム50は、湾曲面36aに対向する可撓部51の膜面の一部に湾曲面36aへ向かって突出する凸起55が突設される。本実施の形態では、凸起55は、可撓部51の全周に亘って連続する突条状に形成されている。中央部52は、可撓部51より厚さ(膜厚)が大きく設定され、中央部52の中心に、湾曲面36aに対して離反する方向(軸方向上側)へ膜面から突出する凸部54が突設される。凸部54及び凸起55は、可撓部51及び中央部52に一体成形される。
【0030】
凸部54は、第2ダイヤフラム50を成形する成形型(図示せず)のゲートの位置に対応するゴム状弾性体の切断跡である。ここで、第2ダイヤフラム50を成形するときには、カラー部材41を成形型に組み付け、円環部54の中心にゲートの位置を合わせる。第2ダイヤフラム50(ゴム状弾性体)の硬化後、硬化したゴム状弾性体がゲートの位置で切断されることで凸部54が形成される。凸部54は、可撓部51の径方向内側に位置すると共に可撓部51より厚さの大きい中央部52に形成されるので、可撓部51の弾性変形を凸部54の負荷にさせ難くできる。その結果、凸部54を第2ダイヤフラム50のクラックの起点となり難くすることができ、仮にクラックが生じたとしても成長させ難くできる。よって、第2ダイヤフラム50の耐久性を向上できる。
【0031】
凸起55は、湾曲面36aにおける通路37の開口部分(湾曲面36aの略中心)の径方向外側に位置する可撓部51の膜面に突設される。通路37を介して可変室23に負圧が導入されると、第2ダイヤフラム50は、可撓部51から中央部52へと順に湾曲面36aに近づくように弾性変形する。第2ダイヤフラム50と湾曲面36aとの対向間隔は、凸起55が中央部52より小さく設定されているので、弾性変形した第2ダイヤフラム50は、中央部52より先に、まず凸起55に接触する。凸起55の径方向長さは可撓部51の径方向長さより小さく設定されているので、湾曲面36aへの接触面積を抑えることができ、凸起55が湾曲面36aに接触したときの打音(異音)を抑えることができる。
【0032】
凸起55が湾曲面36aに接触した後、第2ダイヤフラム50は、凸起55を支点として、湾曲面36aとの接触面を可撓部51から中央部52へと広げていく。凸起55を支点に第2ダイヤフラム50を変形させることができるので、第2ダイヤフラム50に局所的な変形が生じることを防ぎ、第2ダイヤフラム50を全体的に変形させることができる。よって、第2ダイヤフラム50の寿命を向上させることができる。
【0033】
次に、
図4を参照しながら
図2及び
図3に戻って隔壁56について説明する。隔壁56は、ゴム状弾性体から構成されると共に湾曲した内側面56a(
図3参照)を有する略直方体状の一対の部材であり、一対の突設板部42の上面およびカラー部材41の側面にそれぞれ加硫接着される。隔壁56は、仕切板部60に各内側面56a及び各上面が密接されると共に、各外周面がゴム膜4a(
図1参照)に押圧されることで、第1オリフィス22と第2オリフィス24(
図5参照)とを区画する。
【0034】
仕切板部60は、本体部30の第1領域30aとの間で第1オリフィス22を形成すると共に、本体部30の第2領域30bとの間で第2オリフィス24を形成するための円盤状の部材であり、アルミニウム等の金属や合成樹脂等の剛性材料で一体成形され、本体部30と略同一径に設定される。仕切板部60は、平板の円環状に形成される円板部61と、円板部61の外周縁に連成されると共に全周に亘って略垂直に折曲形成される折曲部62と、円板部61の内周縁の一部に連成されると共に軸中心に向かって下降傾斜する傾斜部63とを備えている。仕切板部60は、傾斜部63を除く円板部61の内周縁の残部に凹陥部64が連成される。凹陥部64は、軸方向視して略C形状に形成されると共に、傾斜部63より急勾配の凹陥状に形成される。傾斜部63及び凹陥部64の内周縁に中央板部65が連成される。
【0035】
中央板部65は、軸中心に向かって緩やかに下降傾斜され、厚さ方向に貫通する円形状の貫通孔66が軸中心に形成される。貫通孔66の大きさは、軸方向視におけるリップ53の直径より小さく設定される。また、中央板部65(
図5参照)は、下端(貫通孔66の周囲)が、軸方向において、凹陥部64の下面と略同一の高さに設定される。連通孔67は、凹陥部64の径方向外側に位置する扇状に形成され、円板部61を厚さ方向に貫通する。
【0036】
仕切板部60は、防振基体4(
図1参照)に形成された段部4bに円板部61及び折曲部62が係合し、軸方向および径方向の位置が規制される。本体部30は、かしめ部6aに固定された支持金具21及びゴム膜4aによって、軸方向および径方向の位置が規制される。仕切板部60は、本体部30の第2領域30bに傾斜部63が位置するように、本体部30と重ねて筒部材6に固定され、主液室12に面して配置される。
【0037】
図5に示すように、本体部30の突設部36にカラー部材41が外嵌された状態で、本体部30と仕切板部60とが重ね合されると、仕切板部60の凹陥部64の下面が円環部43に密着される。第2ダイヤフラム50は隆起部51aが形成されているので、凹陥部64と円環部43との間に隆起部51aが挟み付けられることで、シール性を確保できる。さらに、円板部61が隔壁56の上面に密着されると共に、凹陥部64(
図3参照)の両端部が隔壁56の内側面56aに密着される。隔壁56はゴム状弾性体から構成されているので、この部分のシール性も確保できる。なお、傾斜部63と円環部43との間には、一定の隙間が形成される。
【0038】
本体部30と仕切板部60とが密着されると(可変室23が大気圧の場合)、中央板部65は、第2ダイヤフラム50のリップ53に押し付けられる。その結果、第2ダイヤフラム50は湾曲面36a側へ弾性変形される。湾曲面36a側へ弾性変形された第2ダイヤフラム50の予圧力により、第2ダイヤフラム50は中央板部65側へ付勢される。その付勢力によって、貫通孔66の周囲の中央板部65にリップ53が押し付けられ、貫通孔66が閉鎖される。
【0039】
なお、第2ダイヤフラム50に設定される予圧力による反力(付勢力)は、可変室23が大気圧の場合、液封入式防振装置1が搭載される車両の使用状態における主液室12の液圧より大きく設定される。これにより、可変室23に大気圧が導入された場合、主液室12の液圧に抗して、貫通孔66は第2ダイヤフラム50により常に閉鎖される。また、可変室23に導入される負圧による吸引力は、第2ダイヤフラム50に設定される予圧力による反力(付勢力)より大きく設定される。これにより、可変室23に負圧が導入された場合、第2ダイヤフラム50の付勢力に抗して貫通孔66は開放される。
【0040】
なお、第2ダイヤフラム50に設定される予圧力は、仕切板部60による弾性変形によって生じるので、中央部52の厚さ、リップ53の高さ及び凹陥部64に対する中央板部65の高さ等によって決定される。仕切板部60は、第2ダイヤフラム50が接着されるカラー部材41と別部材にされるので、凹陥部64に対する中央板部65の高さを比較的自由に設定できる。その結果、第2ダイヤフラム50が接着されるカラー部材41に仕切板部60を重ね合わせることによって、第2ダイヤフラム50の予圧力を比較的自由に設定できる。
【0041】
貫通孔66が第2ダイヤフラム50により閉鎖された場合、防振基体4に力が作用すると(液封入式防振装置1に振動が入力されると)、液封入式防振装置1に封入された液体は貫通孔66を通過できないので、連通孔67から第1領域30aの第2円板部33、外周切欠部33a、胴部32及び第1開口部32b(以上、第1オリフィス22)を通って、主液室12と副液室13との間を流動する(以上「第1状態」と称す)。一方、貫通孔66が第2ダイヤフラム50により開放された場合、防振基体4に力が作用すると(液封入式防振装置1に振動が入力されると)、液封入式防振装置1に封入された液体は貫通孔66を通過できるので、第1オリフィス22に加え、貫通孔66から傾斜部63と円環部43との間、第2開口部31a(以上、第2オリフィス24)を通って主液室12と副液室13との間を流動する(以上「第2状態」と称す)。
【0042】
次に、
図5及び
図6を参照して、第1状態および第2状態における仕切体20について説明する。
図5は第1状態における仕切体20の断面図であり、
図6は第2状態における仕切体20の断面図である。なお、本実施の形態では、第2オリフィス24は、第1オリフィス22よりオリフィス長さが短く設定されている。その結果、液体の運動により減衰係数が最大となる周波数は、第2オリフィス24が第1オリフィス22より高周波側に設定される。
【0043】
また、本実施の形態では、第1オリフィス22は、車両走行時のシェイク振動を減衰するために、シェイク振動に対応した低周波数域(例えば5〜15Hz程度)にチューニングされている。即ち、第1オリフィス22を流動する液体の共振現象に基づく減衰効果がシェイク振動の入力時に有効に発揮されるように、第1オリフィス22の断面積、長さ、断面周長などが設定される。また、第2オリフィス24は、アイドル時(車両停止時)のアイドル振動を低減するために、アイドル振動に対応した高周波数域(例えば15〜50Hz程度)にチューニングされている。即ち、第2オリフィス24を流動する液体の共振現象に基づく減衰効果がアイドル振動の入力時に有効に発揮されるように、第2オリフィス24の断面積、長さ、断面周長などが設定される。
【0044】
図5に示す第1状態では、可変室23に大気圧が導入されることで、第2ダイヤフラム50の付勢力によりリップ53が中央板部65に密接される。これにより、第2ダイヤフラム50の予圧力の反力(付勢力)により貫通孔66が確実に閉鎖される。その結果、第2オリフィス24が閉鎖される。第1オリフィス22と第2オリフィス24とは、本体部30と仕切板部60との間に配設される一対の隔壁56によって区画される。隔壁56によって第1オリフィス22と第2オリフィス24との間の短絡を防止できるので、第1オリフィス22における動特性を確保できる。
【0045】
図6に示す第2状態では、可変室23に負圧が導入されることで、負圧による吸引力により第2ダイヤフラム50が湾曲面36aに吸着される。これにより貫通孔66が開放され、液体は矢印Lに示すように第2オリフィス24を流動する。第2オリフィス24は、断面積が、第1オリフィス22の断面積より大きく設定されるので(傾斜部63と円環部43との隙間の面積>第1開口部32bの面積)、第2オリフィス24内の液体の運動による動的ばね定数を低下させることができる。よって、第2オリフィス24による防振性能を向上できる。
【0046】
なお、第1オリフィス22は、第2状態において第2オリフィス24が開放されたときも開いているが、第2オリフィス24は、第1オリフィス22の断面積より断面積が大きく設定されるので、貫通孔66が開放されたときには、第1オリフィス22より第2オリフィス24を液体が流動し易くできる。よって、第2オリフィス24による防振性能の向上効果を発揮させることができる。
【0047】
以上のように、可変室23の内部の気圧が可変にされ、可変室23の気圧を変えることにより、第1オリフィス22が開放される一方で第2オリフィス24が閉止される第1状態、又は、第1オリフィス22及び第2オリフィス24が開放される第2状態のいずれかに切り替えられる。第1オリフィス22や第2オリフィス24における減衰係数等を個別に設定することで、第1オリフィス22や第2オリフィス24における動特性を個別に設定できる。その結果、第1状態および第2状態における動特性をそれぞれ向上できる。これにより、第1状態において低周波数での減衰係数を高く設定し、第2状態において高周波数での動的ばね定数を低く設定できるので、相反する動特性を確保できる。
【0048】
また、第2オリフィス24と連通する貫通孔66を、主液室12に面する仕切板部60の厚さ方向に貫通形成し、可変室23側に第2ダイヤフラム50が吸引されることで貫通孔66が開放される一方、吸引が解除されることで第2ダイヤフラム50の予圧力により貫通孔66が閉鎖される。その結果、第2オリフィス24の開閉制御を容易にできる。
【0049】
貫通孔66を開閉する第2ダイヤフラム50は、径方向外側の可撓部51より径方向内側の中央部52が厚く設定されている。これにより、可変室23側に吸引される第2ダイヤフラム50に局所的な変形が生じることを防ぎ、第2ダイヤフラム50の全体を変形させることができる。その結果、第2ダイヤフラム50の耐久性を確保すると共に、第2ダイヤフラム50により貫通孔66を確実に開閉することができ、第1オリフィス22及び第2オリフィス24における動特性を確保できる。
【0050】
また、第2ダイヤフラム50は、可撓部51の可変室23側の膜面に凸起55が突設されるので、可変室23側に第2ダイヤフラム50が吸引されるときに、凸起55を支点に第2ダイヤフラム50を変形させることができる。その結果、第2ダイヤフラム50に局所的な変形が生じることを防ぎ、第2ダイヤフラム50を全体的に変形させることができる。また、疲労によって第2ダイヤフラム50の弾力性が低下した場合であっても、凸起55を湾曲面36aに接触させることで、仕切板部60(中央板部65)からの第2ダイヤフラム50(リップ53)の離隔距離を抑制できる。その結果、疲労によって第2ダイヤフラム50による貫通孔66の閉鎖が不完全になることを抑制することができ、第2ダイヤフラム50の寿命を向上させることができる。よって、第1オリフィス22及び第2オリフィス24における動特性を長期に亘って確保できる。
【0051】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、仕切板部60に形成された貫通孔66や連通孔67の形状や大きさ等は適宜設定することが可能である。
【0052】
上記実施の形態では、第2ダイヤフラム50にリップ53が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2ダイヤフラム50の撓み変形によって貫通孔66を閉塞することができれば、リップ53を設ける必要はない。また、仕切板部60の中央板部65の内周縁を第2ダイヤフラム50側に折曲して、内周縁の先端を第2ダイヤフラム50の膜面に当接させ、貫通孔66を閉鎖することは当然可能である。
【0053】
上記実施の形態では、第2ダイヤフラム50(可撓部51)の可変室23側の膜面に、周方向に連続した環状の凸起55を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、凸起55を省略したり、凸起55を周方向に断続的に設けたりすることは当然可能である。凸起55を断続的に設ける場合には、複数(好ましくは3つ以上)の凸起を軸線Oに対して軸対称となる位置に設けることが望ましい。第2ダイヤフラム50の局所的な変形を防止するためである。
【0054】
上記実施の形態では、主液室12と副液室13とを連通する第1オリフィス22及び第2オリフィス24が仕切体20に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、要求特性に応じて、第1オリフィス22及び第2オリフィス24以外に他のオリフィスや他の液室を設けることは当然可能である。
【0055】
上記実施の形態では、可変室23の気圧を可変にする導入管38が筒部材6に貫設され、導入管38を筒部材6の径方向外側(
図1右側)に突出させる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、底部材7を省略すると共に、第1ダイヤフラム9の中心に貫通孔を設け、その貫通孔に導入管38を挿入すると共に貫通孔と導入管38とを液密にして、可変室23に連通する導入管38を軸線O方向に設けることは当然可能である。
【0056】
上記実施の形態では、仕切体20の主液室12側(防振基体4側)に可変室23が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、仕切体20の副液室13側(第1ダイヤフラム9側)に可変室23を設けるようにすることは当然可能である。
【0057】
上記実施の形態では、振動源となるパワーユニットを第1取付具2に取り付け、支持側の車体を第2取付具5に取り付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ブラケット(図示せず)を適宜用いて、支持側(車体)に第1取付具2を取り付け、振動源(パワーユニット)に第2取付具5を取り付けることは当然可能である。
【0058】
上記実施の形態では、シェイク振動(例えば5〜15Hz程度)とアイドル振動(例えば15〜50Hz程度)とを対象とする液封入式防振装置1を説明したが、これは一例であり、周波数の異なる種々の振動に対して適用可能な液封入式防振装置とすることは当然可能である。
【0059】
上記実施の形態では、液封入式防振装置1を、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。液封入式防振装置1を、ボディマウント、デフマウント等、種々の防振装置に適用することは当然可能である。