【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の磁気アドレスセンサにおいては、アドレスデータの磁極が連続して同一磁極が続きそれに隣接する端部に付加される読み出しタイミング信号用の磁極も同じ場合と、連続した同一磁極のアドレスデータの磁極と読み出しタイミング信号用の磁極が異なる場合とでは、読み出しタイミング信号の出力ポイント位置がずれて異なり各ビットの、アドレスを読む磁気検出素子と各ビットのアドレス用磁極の位置関係がずれ、アドレスデータの読み取り誤差が発生し、信頼性が低い、といった問題点がある。
【0006】
この問題点と現状についてより詳細に説明する。
従来の磁気アドレス情報板の例を
図5に示す。(イ)は、一般的な8ビット情報板の機能構成と寸法を示し、(ロ)、(ハ)及び(ニ)は、情報板のアドレス=0、情報板のアドレス=255、及び、情報板のアドレス=1の着磁の例をそれぞれ示す。
【0007】
図5において、RLは、最下位ビット(LSB)に隣接する端部に設けられた読み出しタイミング信号用の磁極であり、RMは、最上位ビット(MSB)に隣接する端部に設けられた読み出しタイミング信号用の磁極である。
【0008】
磁気アドレスセンサがこの磁気アドレス情報板の上を通過し、磁気アドレスセンサの読み出しタイミング信号用磁気検出素子がRM及びRLの丁度上方を通過し、RL=S極、RM=S極を確認した瞬間、読み出しタイミング信号を出力する。アドレスデータを検出する8ビットのアドレス検出用の磁気検出素子のピッチは、磁気アドレス情報板のアドレス情報ピッチと同一でなされ、8ビットそれぞれの磁気検出素子は、着磁された磁気情報のおよそ中央になるように配置されているため、読み出しタイミング信号を受けてD1〜D8の磁気情報を読み出し、そのデータはラッチされてバイナリ―コードの位置情報として出力し、リセット信号が入力されるまで保持される。
【0009】
1)一般的にD1〜D8は電気信号とする場合、S極或いは無着磁を電気信号“L“ とし、N極を“H”として用いられている。すなわち、
D1〜D8=S アドレス “0”
D1=N D2〜D8=S アドレス “1”
D1〜D2=N D3〜D8=S アドレス “3”
D1〜D8=N アドレス “255”
と一般的なバイナリ―デジタル信号を出力し、8ビットの場合は、0〜255の256種類のアドレスとして、また4ビットの場合は、0〜15の16種類のアドレスとして制御することができるように構成されている。
2)そして、読み出しタイミング信号検出用のRL、RMは、アドレスデータに関係なく一般的にはS極が用いられ、磁気検出素子MSLがRL=S極を、MSMがRM=S極と両方がS極を検出確認された瞬間に読み出しタイミング信号を出力する。
3)
図6(イ)に、従来使用されている、磁気アドレス情報板とそれを検出し自動搬送機を制御する磁気アドレスセンサとの位置関連を示す。
実際の使用時、自動搬送機に取り付けられた磁気アドレスセンサは、
図5(イ)に示したようにおよそ100mm幅の磁気アドレス情報板の幅方向中央部をRLからRM方向へ或いはRMからRL方向へと通過する。したがって、通過方向に関係なく自動搬送機が磁気アドレス情報板上を通過する場合、磁気アドレス情報板のLSBは、磁気アドレスセンサのLSBと、また、磁気アドレス情報板のMSBは、磁気アドレスセンサのMSBと方向が一致するように使用される。
このとき、磁気検出素子MSLがRLのS極を、また磁気検出素子MSMがRMのS極を検出し、論理積(AND)が成立した瞬間、データ読み出しタイミング信号を発生させる。すなわち、磁気アドレス情報板のD1〜D8が磁気アドレスセンサの磁気検出素子MS1〜MS8のそれぞれの真下に来ていると仮定しているためである。
読み出しタイミング信号が発生した時、磁気アドレスセンサの磁気検出素子はD1〜D8のデータを読み取り、読み取った信号をラッチさせアドレス信号として出力する。
また、
図6(イ)において磁気アドレス情報板の2個の読み出しタイミング信号用及び8個のアドレスデータ用の着磁は、一般的に30mmピッチでなされており、そのピッチに合わせて磁気アドレスセンサの磁気検出素子も実装されている。したがって、高速で走行する自動搬送機が走行中にアドレスを信頼性高く読み取り正しい制御を行うには、読み出しタイミング信号の発生タイミングが大変重要となる。
図6(ロ)に、磁気アドレス情報板のアドレスを、磁気アドレスセンサを用いて検出する場合の図を例示する。
4)
図7−1及び
図7−2に、従来の磁気アドレス情報板が発生する読み出しタイミング信号検出用着磁部近辺の磁束密度の変化を示す。
図7−1の(イ)は、RL、D1〜 D8=S極、アドレス0(ゼロ)のときの磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示し、(ロ)は、RL=S極、D1〜D8=N極、アドレス255のときの磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示し、
図7−2の(ハ)は、アドレスが47における磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示す。また、磁気アドレス情報板上の実線は、S極の磁気検出素子がレベル弁別する強さの磁束密度の等しい曲線を示し、破線は、N極の同様な曲線を示し、二点鎖線は、磁気アドレス情報板を検出する磁気アドレスセンサの設定距離位置を示す。
自動搬送機が
図7−1(イ)の磁気情報アドレス板RL側からRM側へと高速で通過する場合、磁気アドレスセンサの磁気検出素子MSMが初めに磁気アドレス情報板上に入り、MS8からMS1、そして最後にMSLが入ると、既にMSMはRMの磁束を検出記憶し、MSLがRLの磁束を検出すると、MSMの記憶信号とMSLの信号の論理積(AND)が成立し、読み出しタイミング信号を発生する。
この読み出しタイミング信号を受けた瞬間、MS1〜MS8は、磁気検出素子の真下にある磁気アドレス情報板のデータを読み取りラッチさせアドレス信号として保持する。この読み出しタイミング信号は、自動搬送機の走行スピードが搬送する貨物の重量等の条件により一定ではないため、読み出しタイミング信号は、検出時そのままリアルタイムで出力しなければならず、タイマ回路等で定量的な時間で補正することはできない。
図7−1(イ)において、磁気アドレス情報板のRLから発生している磁束は、D1と同磁極であるため、RLとD1間には無磁束である磁束の切れ目が無く、また、アドレス0(ゼロ)においてはRMとD8間も同様であるため、読み出しタイミング信号は、磁気アドレス情報板の端面から外側にL1離れた位置のRLが発生する磁束密度が強くなる立ち上がり部でしか出来ない。このことは、自動搬送機が磁気アドレス情報板のRMの方からRL側へ走行する場合でも同様で、磁気情報板より外側になるRMの立ち上がり部でしか読み出しタイミング信号は発生させることはできない。
本質的に、磁気アドレス情報板の検出面がS極の場合、裏側は必ずN極であり、また磁石の原理からS極から出た磁束はN極へと戻る。このため、
図7−1(ロ)に示すようなアドレスの場合、RLの磁束密度は、D1との境目がD1やD2による異磁極の影響を受け減算され、磁気アドレス情報板の端面側はD1〜D8の帰り磁束が加算される影響を受け、磁気アドレス情報板の端面から遠く離れた位置まで磁束密度が高くなる。
図7−1(イ)のRL部のL1の距離は、磁気アドレス情報板が発する磁力線の強さと磁気アドレスセンサの検出感度によっても異なるが、一般的には10mm程度となり、また、
図7−1(ロ)のL2の距離は、およそ20mm程度と大きくなる。したがって、読み出しタイミング信号の出力ポイントの誤差はおよそ10mm発生する。この10mmの差はそのまま、磁気アドレス情報板のD1〜D8とその磁束を読み取る磁気アドレスセンサの磁気検出素子MS1〜MS8のセンタずれとなるため、読み取りミスの原因となり非常に信頼性を落とし多発する誤動作の原因となっている。何故なら、30mmピッチの磁気アドレス情報板の磁束密度分布は中央点から±15mmを超えると隣のビットの領域となるため ピッチの中央部が一番高く、その中央から10mmずれると、磁束密度は大幅に減衰し信頼性の高いデータの読み取りが困難となる。
この点について、アドレスデータ85の等磁束密度曲線例を
図7−2の(ニ)に例示する。
図7−2(ニ)から分るように、上記した原因により読み出しタイミング信号の発生は、磁気アドレスセンサのMS1〜MS8が磁気アドレス情報板のD1〜D8それぞれの中央真上に来た時でなければならず、磁気検出素子MSL或いはMSMが磁気アドレス情報板のRL或いはRMの磁束を検出したタイミングの立ち上がりエッジとなるように、磁気アドレス情報板の端面から大きく外側に移動させて配置しなければならない。このために、MSLとMS1間の間隔Lは、L=P+(1/2P)+(L1+L2)÷2となる。但し、(L1+L2)÷2は、色々な着磁パターンでの誤動作を避けるため立ち上がりエッジ位置を平均化したものである。
これを
図8に示す。
図8において、実線は、S極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、破線は、N極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、二点鎖線は、磁気アドレスセンサの設定位置を示す。この図からも分るように、磁気アドレスセンサの検出点は磁気アドレス情報板の端面から大幅に外側へ出るため、磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板より大変大きなものとなる原因となり、製品を大変高価なものとしている。
【0010】
自動搬送機は、数トンにも及ぶ重量の荷物を指示された所において積み下ろすため、所定の位置に精度良く停止させ、或いは工場内にネット状に張り巡らされた磁気ガイドテープの色々な作業ポイントを走行するため、精度良く分岐操作をしなければならない。このため、自動搬送機の走行途上にそのポイントを指示する磁気アドレス情報板を床面に張り付け、磁気アドレス情報板から発せられる磁気データを磁気アドレスセンサで精度良く信頼性の高いものにする、すなわち
1)磁気アドレスセンサの各ビットの磁気検出素子がそれぞれ磁気アドレス情報板の各ビットの情報磁極の中央に位置する時、アドレスを読み出す読み出しタイミング信号を出力してアドレスを読み取り、
2)磁気アドレスセンサの大きさを小型化することにより、使い勝手が良く安価にし、
3)自動搬送機に搭載されるインバータやモーター等が発生する電磁波によって磁気アドレスセンサのアドレス情報の読み取り誤動作を防止することを目的とする。
【0011】
この発明は、先に述べた従来の磁気アドレス情報板の問題点を解決するため、
1)精度の良い読み出しタイミング信号を発生させ、精度良くアドレスデータを読み出すことにより、アドレス検出ミスを無くし、信頼性の高いデータとしてその信号を出力する。
2)磁気アドレス情報板と共に用いられ、磁気アドレス情報板のデータを検出し自動搬送機を制御するための、磁気アドレスセンサを小型にすることにより安価にし、トータルコストを低下させる。
3)磁気アドレスセンサが確実に磁気アドレス情報板上に位置しているかを確認した後にアドレスを読み取り出力することを目的とする。