特許第6297910号(P6297910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センサテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000002
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000003
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000004
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000005
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000006
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000007
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000008
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000009
  • 特許6297910-自動搬送機用磁気アドレスセンサ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297910
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】自動搬送機用磁気アドレスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   G05D1/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-91123(P2014-91123)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-210625(P2015-210625A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591075951
【氏名又は名称】センサテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084962
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 茂信
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 勲
【審査官】 加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−123288(JP,A)
【文献】 特開平03−216709(JP,A)
【文献】 特開平07−248818(JP,A)
【文献】 特開平09−269821(JP,A)
【文献】 特開昭59−202517(JP,A)
【文献】 特開平10−154008(JP,A)
【文献】 特開平08−022325(JP,A)
【文献】 特開2000−293225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S及びNの磁極によって所定ビット数のアドレスデータが着磁された磁気アドレス情報板の上部を通過する自動搬送機に取り付けられ、前記磁気アドレス情報板のアドレスデータを示す磁極を、並列した複数の磁気検出素子によって検出することにより前記自動搬送機が通過する通過点の位置を検出する自動搬送機用磁気アドレスセンサにおいて、
前記磁気アドレス情報板が、アドレスデータを規定する最下位ビットに隣接する一端部及び最上位ビットに隣接する他端部に、最下位ビット及び最上位ビットのそれぞれの極性と異なる極性でデータ読み出しタイミング信号用の磁極がそれぞれ付加されたものであって、前記並列した複数の磁気検出素子の両端側にデータ読み出しタイミング信号用磁気検出素子をそれぞれ設け、それら2個のデータ読み出しタイミング信号用磁気検出素子によってそれぞれ検出される検出信号のうち、最終に入力される検出信号におけるデータ読み出しタイミング信号用磁極の磁束密度が一旦増加した後にレベル弁別値以下に減少した時に発生するデータ読み出しタイミング信号の立下りエッジで前記磁気アドレス情報板のアドレスデータを読み取るようにしたことを特徴とする自動搬送機用磁気アドレスセンサ。
【請求項2】
2個のデータ読み出しタイミング信号用磁気検出素子によってそれぞれ検出される検出信号のうち、一方の最初に検出され入力される検出信号を、磁気アドレス情報板の上部に入ったことを確認する確認信号とし、他方の最後に検出され入力される検出信号により、前記確認信号が有るときのみにデータ読み出しタイミング信号を出力して前記磁気アドレス情報板のアドレスデータを読み取るようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動搬送機用磁気アドレスセンサ。
【請求項3】
磁気アドレス情報板のデータ読み出しタイミング信号用磁極の検出は、S及びNの両磁極について行う双極磁気検出であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動搬送機用磁気アドレスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動走行ルートを床面に敷設された磁気テープで行い、磁気テープの磁気を自動搬送機に取り付けられた磁気センサで検出することにより、その磁気テープに沿って荷物を運搬する自動搬送機の制御において、搬送機の通過位置や停止位置或いは分岐点等の位置を知るために、それらのポイントに貼られた磁気アドレス情報板のアドレス情報を検出するのに用いられる磁気アドレスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動化・無人化した荷物搬送設備において制御装置により搬送機を制御して荷物の搬送を行う場合、搬送機の通過位置や停止位置、分岐位置を正確に認識する必要がある。このために、搬送機走行面の適宜の位置に、磁石のN極とS極を組み合わせた磁気パターンからなるコード板を設置しておき、自動搬送機に取り付けられた磁気検出センサの多数の磁気検出素子によってコード板のアドレスデータを読み取り、そのアドレスデータにより搬送機の制御を行うようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、現在の自動搬送機による荷物運搬において、自動搬送機の停止位置や通過位置或いは分岐位置を検出するための磁気アドレスセンサは、1枚の広い磁気テープ板に最下位ビット(LSB)から最上位ビット(MSB)までの所定ビット数のアドレスデータが着磁されるとともに、そのデータの最下位ビットに隣接する端部及び最上位ビットに隣接する端部に読み出しタイミング信号用の磁極がアドレスデータの磁極とは無関係に一定の固定した極性で着磁され付加されて構成された磁気アドレス情報板の、その読み出しタイミング信号用磁極を磁気検出素子で検出し、その固定された所定の磁極を確認し検出したタイミングでLSBからMSBまでの磁気アドレス情報を読み取りアドレスデータとして出力している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−6522号公報(第3−4頁、第5図−第10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の磁気アドレスセンサにおいては、アドレスデータの磁極が連続して同一磁極が続きそれに隣接する端部に付加される読み出しタイミング信号用の磁極も同じ場合と、連続した同一磁極のアドレスデータの磁極と読み出しタイミング信号用の磁極が異なる場合とでは、読み出しタイミング信号の出力ポイント位置がずれて異なり各ビットの、アドレスを読む磁気検出素子と各ビットのアドレス用磁極の位置関係がずれ、アドレスデータの読み取り誤差が発生し、信頼性が低い、といった問題点がある。
【0006】
この問題点と現状についてより詳細に説明する。
従来の磁気アドレス情報板の例を図5に示す。(イ)は、一般的な8ビット情報板の機能構成と寸法を示し、(ロ)、(ハ)及び(ニ)は、情報板のアドレス=0、情報板のアドレス=255、及び、情報板のアドレス=1の着磁の例をそれぞれ示す。
【0007】
図5において、RLは、最下位ビット(LSB)に隣接する端部に設けられた読み出しタイミング信号用の磁極であり、RMは、最上位ビット(MSB)に隣接する端部に設けられた読み出しタイミング信号用の磁極である。
【0008】
磁気アドレスセンサがこの磁気アドレス情報板の上を通過し、磁気アドレスセンサの読み出しタイミング信号用磁気検出素子がRM及びRLの丁度上方を通過し、RL=S極、RM=S極を確認した瞬間、読み出しタイミング信号を出力する。アドレスデータを検出する8ビットのアドレス検出用の磁気検出素子のピッチは、磁気アドレス情報板のアドレス情報ピッチと同一でなされ、8ビットそれぞれの磁気検出素子は、着磁された磁気情報のおよそ中央になるように配置されているため、読み出しタイミング信号を受けてD1〜D8の磁気情報を読み出し、そのデータはラッチされてバイナリ―コードの位置情報として出力し、リセット信号が入力されるまで保持される。
【0009】
1)一般的にD1〜D8は電気信号とする場合、S極或いは無着磁を電気信号“L“ とし、N極を“H”として用いられている。すなわち、
D1〜D8=S アドレス “0”
D1=N D2〜D8=S アドレス “1”
D1〜D2=N D3〜D8=S アドレス “3”
D1〜D8=N アドレス “255”
と一般的なバイナリ―デジタル信号を出力し、8ビットの場合は、0〜255の256種類のアドレスとして、また4ビットの場合は、0〜15の16種類のアドレスとして制御することができるように構成されている。
2)そして、読み出しタイミング信号検出用のRL、RMは、アドレスデータに関係なく一般的にはS極が用いられ、磁気検出素子MSLがRL=S極を、MSMがRM=S極と両方がS極を検出確認された瞬間に読み出しタイミング信号を出力する。
3)図6(イ)に、従来使用されている、磁気アドレス情報板とそれを検出し自動搬送機を制御する磁気アドレスセンサとの位置関連を示す。
実際の使用時、自動搬送機に取り付けられた磁気アドレスセンサは、図5(イ)に示したようにおよそ100mm幅の磁気アドレス情報板の幅方向中央部をRLからRM方向へ或いはRMからRL方向へと通過する。したがって、通過方向に関係なく自動搬送機が磁気アドレス情報板上を通過する場合、磁気アドレス情報板のLSBは、磁気アドレスセンサのLSBと、また、磁気アドレス情報板のMSBは、磁気アドレスセンサのMSBと方向が一致するように使用される。
このとき、磁気検出素子MSLがRLのS極を、また磁気検出素子MSMがRMのS極を検出し、論理積(AND)が成立した瞬間、データ読み出しタイミング信号を発生させる。すなわち、磁気アドレス情報板のD1〜D8が磁気アドレスセンサの磁気検出素子MS1〜MS8のそれぞれの真下に来ていると仮定しているためである。
読み出しタイミング信号が発生した時、磁気アドレスセンサの磁気検出素子はD1〜D8のデータを読み取り、読み取った信号をラッチさせアドレス信号として出力する。
また、図6(イ)において磁気アドレス情報板の2個の読み出しタイミング信号用及び8個のアドレスデータ用の着磁は、一般的に30mmピッチでなされており、そのピッチに合わせて磁気アドレスセンサの磁気検出素子も実装されている。したがって、高速で走行する自動搬送機が走行中にアドレスを信頼性高く読み取り正しい制御を行うには、読み出しタイミング信号の発生タイミングが大変重要となる。図6(ロ)に、磁気アドレス情報板のアドレスを、磁気アドレスセンサを用いて検出する場合の図を例示する。
4)図7−1及び図7−2に、従来の磁気アドレス情報板が発生する読み出しタイミング信号検出用着磁部近辺の磁束密度の変化を示す。図7−1の(イ)は、RL、D1〜 D8=S極、アドレス0(ゼロ)のときの磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示し、(ロ)は、RL=S極、D1〜D8=N極、アドレス255のときの磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示し、図7−2の(ハ)は、アドレスが47における磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示す。また、磁気アドレス情報板上の実線は、S極の磁気検出素子がレベル弁別する強さの磁束密度の等しい曲線を示し、破線は、N極の同様な曲線を示し、二点鎖線は、磁気アドレス情報板を検出する磁気アドレスセンサの設定距離位置を示す。
自動搬送機が図7−1(イ)の磁気情報アドレス板RL側からRM側へと高速で通過する場合、磁気アドレスセンサの磁気検出素子MSMが初めに磁気アドレス情報板上に入り、MS8からMS1、そして最後にMSLが入ると、既にMSMはRMの磁束を検出記憶し、MSLがRLの磁束を検出すると、MSMの記憶信号とMSLの信号の論理積(AND)が成立し、読み出しタイミング信号を発生する。
この読み出しタイミング信号を受けた瞬間、MS1〜MS8は、磁気検出素子の真下にある磁気アドレス情報板のデータを読み取りラッチさせアドレス信号として保持する。この読み出しタイミング信号は、自動搬送機の走行スピードが搬送する貨物の重量等の条件により一定ではないため、読み出しタイミング信号は、検出時そのままリアルタイムで出力しなければならず、タイマ回路等で定量的な時間で補正することはできない。
図7−1(イ)において、磁気アドレス情報板のRLから発生している磁束は、D1と同磁極であるため、RLとD1間には無磁束である磁束の切れ目が無く、また、アドレス0(ゼロ)においてはRMとD8間も同様であるため、読み出しタイミング信号は、磁気アドレス情報板の端面から外側にL1離れた位置のRLが発生する磁束密度が強くなる立ち上がり部でしか出来ない。このことは、自動搬送機が磁気アドレス情報板のRMの方からRL側へ走行する場合でも同様で、磁気情報板より外側になるRMの立ち上がり部でしか読み出しタイミング信号は発生させることはできない。
本質的に、磁気アドレス情報板の検出面がS極の場合、裏側は必ずN極であり、また磁石の原理からS極から出た磁束はN極へと戻る。このため、図7−1(ロ)に示すようなアドレスの場合、RLの磁束密度は、D1との境目がD1やD2による異磁極の影響を受け減算され、磁気アドレス情報板の端面側はD1〜D8の帰り磁束が加算される影響を受け、磁気アドレス情報板の端面から遠く離れた位置まで磁束密度が高くなる。
図7−1(イ)のRL部のL1の距離は、磁気アドレス情報板が発する磁力線の強さと磁気アドレスセンサの検出感度によっても異なるが、一般的には10mm程度となり、また、図7−1(ロ)のL2の距離は、およそ20mm程度と大きくなる。したがって、読み出しタイミング信号の出力ポイントの誤差はおよそ10mm発生する。この10mmの差はそのまま、磁気アドレス情報板のD1〜D8とその磁束を読み取る磁気アドレスセンサの磁気検出素子MS1〜MS8のセンタずれとなるため、読み取りミスの原因となり非常に信頼性を落とし多発する誤動作の原因となっている。何故なら、30mmピッチの磁気アドレス情報板の磁束密度分布は中央点から±15mmを超えると隣のビットの領域となるため ピッチの中央部が一番高く、その中央から10mmずれると、磁束密度は大幅に減衰し信頼性の高いデータの読み取りが困難となる。
この点について、アドレスデータ85の等磁束密度曲線例を図7−2の(ニ)に例示する。
図7−2(ニ)から分るように、上記した原因により読み出しタイミング信号の発生は、磁気アドレスセンサのMS1〜MS8が磁気アドレス情報板のD1〜D8それぞれの中央真上に来た時でなければならず、磁気検出素子MSL或いはMSMが磁気アドレス情報板のRL或いはRMの磁束を検出したタイミングの立ち上がりエッジとなるように、磁気アドレス情報板の端面から大きく外側に移動させて配置しなければならない。このために、MSLとMS1間の間隔Lは、L=P+(1/2P)+(L1+L2)÷2となる。但し、(L1+L2)÷2は、色々な着磁パターンでの誤動作を避けるため立ち上がりエッジ位置を平均化したものである。
これを図8に示す。図8において、実線は、S極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、破線は、N極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、二点鎖線は、磁気アドレスセンサの設定位置を示す。この図からも分るように、磁気アドレスセンサの検出点は磁気アドレス情報板の端面から大幅に外側へ出るため、磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板より大変大きなものとなる原因となり、製品を大変高価なものとしている。
【0010】
自動搬送機は、数トンにも及ぶ重量の荷物を指示された所において積み下ろすため、所定の位置に精度良く停止させ、或いは工場内にネット状に張り巡らされた磁気ガイドテープの色々な作業ポイントを走行するため、精度良く分岐操作をしなければならない。このため、自動搬送機の走行途上にそのポイントを指示する磁気アドレス情報板を床面に張り付け、磁気アドレス情報板から発せられる磁気データを磁気アドレスセンサで精度良く信頼性の高いものにする、すなわち
1)磁気アドレスセンサの各ビットの磁気検出素子がそれぞれ磁気アドレス情報板の各ビットの情報磁極の中央に位置する時、アドレスを読み出す読み出しタイミング信号を出力してアドレスを読み取り、
2)磁気アドレスセンサの大きさを小型化することにより、使い勝手が良く安価にし、
3)自動搬送機に搭載されるインバータやモーター等が発生する電磁波によって磁気アドレスセンサのアドレス情報の読み取り誤動作を防止することを目的とする。
【0011】
この発明は、先に述べた従来の磁気アドレス情報板の問題点を解決するため、
1)精度の良い読み出しタイミング信号を発生させ、精度良くアドレスデータを読み出すことにより、アドレス検出ミスを無くし、信頼性の高いデータとしてその信号を出力する。
2)磁気アドレス情報板と共に用いられ、磁気アドレス情報板のデータを検出し自動搬送機を制御するための、磁気アドレスセンサを小型にすることにより安価にし、トータルコストを低下させる。
3)磁気アドレスセンサが確実に磁気アドレス情報板上に位置しているかを確認した後にアドレスを読み取り出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記した目的を達成するため、本発明の磁気アドレスセンサは、最下位ビット(LSB)に隣接する端部に設ける読み出しタイミング信号発生用磁極には最下位ビットに着磁された磁性と異なる磁性で着磁し、最上位ビット(MSB)に隣接する端部に設ける読み出しタイミング信号発生用磁極には最上位ビットに着磁された磁性と異なる磁性で着磁した磁気アドレス情報板を用い、磁気アドレスセンサの両端に設けた2個の読み出しタイミング信号用磁気検出素子によって検出される検出信号のうち、最終に入力される検出信号における磁束を検出した後の、磁束密度が低くなる立下りエッジでアドレスデータを読み取るタイミング信号を発生させ、その読み出しタイミング信号でアドレスデータを読み取るように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
イ)最下位ビットのアドレスデータを規定するD1(LSB)と、それに隣接する端部に設けられる読み出しタイミング信号発生用RLの磁極とが異なり、また、最上位ビットのアドレスデータを規定するD8(MSB)と、それに隣接する端部に設けられる読み出しタイミング信号発生用RMの磁極とは異なるため、磁気アドレス情報板の上方にはそれぞれ、必ず磁束密度変化率の大きな無磁気のエリアを発生させることが可能となる。このため、読み出しタイミング信号は、自動搬送機が磁気アドレス情報板の最下位ビットの方から侵入してくる場合はRLの磁気を検出した後の、磁気検出信号が減衰した立下り部で、また、最上位ビットの方から侵入してくる場合は同様にRMの磁気を検出した後の、磁気密度が減衰する立下り部で読み出し信号を発生することができる。
この点は、アドレスデータが着磁された磁気パターンに影響を受けにくく、また、変化しないため、寸法上の位置関係が磁気アドレス情報D1〜D8の中心部に、アドレスを読み出す磁気検出素子のMS1〜MS8を正確に合わせることができ、信頼性の高いアドレス情報を検出することができる。
また、読み出しタイミング信号は、磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板の上に来た時のみ出力するので、周囲の電磁波による誤動作も少なくすることが可能となる。
ロ)磁気アドレスセンサの大きさは、上記説明したようにMSL〜MSMの距離によって決まる。
この発明の、磁気アドレス情報板を用いた磁気アドレスセンサに設けられる読み出しタイミング信号発生用の磁気検出素子MSLは、最下位ビット(LSB)D1を読み取るMS1側に寄せ、読み出しタイミング発生用の磁気検出素子MSMは、最上位ビット(MSB)D8を読み取るMS8側に寄せることができるため、MSL〜MSM間は短くなり、磁気アドレスセンサを小さくするとともに、磁気アドレスセンサのケース内部に耐環境用として充填するシリコンゴムやエポキシ樹脂の量を少なくすることができ、安価にすることを可能とし、磁気アドレスセンサシステム全体のコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(イ)は、この発明の磁気アドレスセンサに対して用いられる磁気アドレス情報板のアドレス0(ゼロ)を示す場合の、磁気アドレス情報板が発生する等磁束密度曲線を示し、(ロ)は、この発明の磁気アドレス情報板のアドレス255を示す場合の、磁気アドレス情報板が発生する等磁束密度曲線を示し、(ハ)は、この発明の磁気アドレス情報板のアドレス85を示す場合の、磁気アドレス情報板が発生する等磁束密度曲線を示す。
図2】(イ)は、この発明の磁気アドレスセンサを構成する磁気検出素子と磁気アドレス情報板との位置関連を示し、(ロ)は、この発明の磁気アドレスセンサにおいて、アドレス0(ゼロ)の場合における読み出しタイミング信号を発生させる検出ポイントの詳細図を示し、(ハ)は、この発明の磁気アドレスセンサにおいて、アドレスが奇数の場合における読み出しタイミング信号を発生させる検出ポイントの詳細図を示す。
図3】(イ)は、磁気検出にホールセンサを用いた場合の、ウインドコンパレータを用いてN極とS極の検出信号を論理和処理するブロック図を示し、(ロ)は、磁気検出にMRセンサを用いた場合の、コンパレータを用いてN極とS極何れの磁極をも検出するブロック図を示す。
図4】磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板の上に来た場合のみ読み出しタイミング信号を発生させるブロック図の例を示す。
図5】(イ)は、一般的な磁気アドレス情報板とその寸法の例を示し、(ロ)は、 アドレス0(ゼロ)を示す従来の磁気アドレス情報板の着磁の例を示し、(ハ)は、アドレス255を示す従来の磁気アドレス情報板の例を示し、(ニ)は、アドレス1を示す従来の磁気アドレス情報板の例を示す。
図6】(イ)は、従来の磁気アドレスセンサを構成する磁気検出素子と、磁気アドレス情報板との位置関係を示し、(ロ)は、従来の磁気アドレスセンサを用いた磁気アドレス情報板の検出図を示す。
図7-1】(イ)は、従来の磁気アドレス情報板のアドレス0(ゼロ)を示す場合の最下位ビット近辺の読み出しタイミング信号用着磁部の、磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示し、(ロ)は、従来の磁気アドレス情報板のアドレス255を示す場合の最下位ビット近辺の読み出しタイミング信号用着磁部の、磁気検出素子がレベル弁別する等磁束密度曲線の例を示す。
図7-2】(ハ)は、従来の磁気アドレス情報板のアドレス47を示す場合の磁気アドレス情報板が発生する等磁束密度曲線図を示し、(ニ)は、従来の磁気アドレス情報板のアドレス 85を示す場合の磁気アドレス情報板が発生する等磁束密度曲線図を示す。
図8】(イ)は、従来の磁気アドレスセンサに用いる磁気検出素子と、磁気アドレス情報板のアドレス0(ゼロ)を示す場合の最下位ビット近辺の等磁束密度曲線との位置関連を示し、(ロ)は、従来の磁気アドレスセンサの磁気検出素子と、磁気アドレス情報板のアドレス255を示す場合の最下位ビット近辺の等磁束密度曲線との位置関連を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の最良の実施形態について、一般に使用されている8ビットの磁気アドレス情報板を例にして図面を参照しながら説明する。
この発明において、磁気アドレス情報板の読み出しタイミング信号を発生させる磁極は、最下位ビットD1に隣接する端部のRLが最下位ビットの磁性と異なる磁性で着磁され、また、最上位ビットD8に隣接する端部のRMが最上位ビットと異なる磁性で着磁されている。したがって、必ずD1とRL及びD8とRMは、互いが異なる磁性に着磁されている。これにより、磁束密度の変化率が高い無磁気エリアをD1とRL及びD8とRM間に作ることができる。この無磁気に近付く点の磁束密度パターンは、隣り合わせの磁極が異なるため、狭く鋭角で立ち下がり、位置的に非常に安定しており、アドレス内容によって移動変化することは少ない。
【0016】
図1の(イ)は、アドレス=0の場合の磁束密度の分布を示し、(ロ)は、アドレス=255の場合の磁束密度の分布を示し、(ハ)は、アドレス=85の場合の磁束密度の分布を示す。図1において、実線は、S極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、破線は、N極のセンサが検出する、レベル弁別値の等磁束密度曲線を示し、二点鎖線は、磁気アドレスセンサの設定位置を示す。
図1からも分かるように、磁気アドレス情報板端面から外側に発生している磁束については、従来のものと大きな差は無いが、この磁束密度が増加する立ち上がり点を利用することはないので、それを無視することができる。しかしながら、D1とRL及びD8とRM間に出来る磁束密度が鋭角に減衰する無磁気に近づく点は、それを読み出しタイミング信号発生に使用することができる。
【0017】
したがって、読み出しタイミング信号の発生は、
1)磁気アドレスセンサのMSM側が磁気アドレス情報板のRLからRM側に向かって侵入する場合、磁気検出素子MSLがRLを検出した後無磁気に近付くA点でMS1〜MS8の磁気検出素子が丁度D1〜D8の中央真上に来るように配置し、磁気検出素子MSLがRLを検出した後無磁気に近付く点で読み出しタイミング信号を出力すれば、MS1〜MS8はそれぞれD1〜D8の真上中央に来ているので、磁気アドレス情報板のデータを正確に信頼性高く読み取ることができる。
【0018】
この読み出しタイミング信号用の磁極は、N極或いはS極とアドレスデータで変わるため、両方の磁極を検出することができるものでなければならない。
したがって、一般的には、N極とS極のどちらでも検出することができるアナログ出力のホール素子を用いて増幅しそれをウインドコンパレータでデジタル信号化した後、N極検出信号とS極検出信号の論理和(OR)信号にすることにより、いずれの磁極で着磁されていても読み出しタイミング信号を検出することができるように構成される。この論理和信号(OR)の立下りエッジを読み出しタイミング信号として、一般的には利用する。これに関して、図3の(イ)に示す。
【0019】
図3(イ)において、ホール素子は、無磁気のときに出力電圧がおよそ電源電圧の1/2である中点電圧を出力し、磁気を印加すると磁束極性の印加方向によって出力を増減させることができる。例えばN極を印加したときに出力が増加する方向で磁気を印加すると、S極が印加される場合には出力が低下する。したがって、その信号を増幅しウインドコンパレータに入力すると、N極検出の場合はOUT Nが検出信号を出力し、S極検出の場合はOUT Sが検出信号を出力する。この両方の信号を論理和回路(OR回路)に入力すると、N、Sどちらの極性でも検出信号を出力することができる。この論理和回路出力の立下りエッジを読み出しタイミング信号とする。
【0020】
別の方法として、S極とN極の判別が不可能で磁気が有れば極性に関係なく検出することができるMR素子を用いた双極検出信号を利用しても、同様に立下りエッジを同一ポイントで発生させることができる。これを図3(ロ)に示す。また、D1〜D8の磁気検出には、単極検出素子を用いてN極だけの検出を行う場合やホール素子を用いN極だけの検出信号を用いてもよい。
【0021】
図2(イ)に、この発明に使用する磁気アドレス情報板とこの発明の磁気アドレスセンサの磁気検出素子との位置関係を示す。図2の(ロ)及び(ハ)は、この発明に使用する磁気アドレス情報板とこの発明の磁気アドレスセンサの磁気検出素子の読み出しタイミング信号発生ポイントであるA点の詳細な位置関連を示す。
【0022】
磁気アドレスセンサのMSL側が磁気アドレス情報板のRMからRL側に向かって侵入する場合は、磁気検出素子MSMがRMを検出した後、無磁気に近づくB点でMS1〜MS8のデータ読み取りタイミング信号を出力する。このD1に対するA点の距離と、D(に対するB点の距離は、異磁極が隣り合っているため磁気の変化率が大きく、アドレス変化による着磁パターンによって位置の移動が極めて少なく安定している。
【0023】
2)しかしながら、自動搬送機には走行用モーターのスピード制御用にパワーの大きなインバータが搭載され、過大な漏れ磁束を発生させるとともにパワーの大きなコモンモードノイズを発生している。このため、この発明の磁気アドレスセンサにおいては、これらの環境で誤動作を避けるために、MSL或いはMSMのどちらか早く磁気アドレス情報板の磁気を検出した信号をラッチ保存して、磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板の上に来たことを確認した後、最後に入力される他方の信号の立下りエッジで読み出しタイミング信号を発生し、D1〜D8の磁気情報を読み取るようにしている。これについて、図4を用いて説明する。
【0024】
MSL及びMSMの磁気センサは、各々増幅器を介しウインドコンパレータで比較検出されて、N極、S極の検出信号として出力し、論理和回路にて処理された後、それぞれMSL、MSMの磁気検出信号を発生する。その検出信号は、それぞれラッチ記憶されるとともに、信号の立下り信号を微分しやすくするために反転回路にて反転した後、立ち上がり信号にして微分回路にて微分される。したがって、先に入力されラッチされた検出信号と後から入力される微分出力とが論理積回路で処理されると、最後に入力されるMSL或いはMSMの磁気検出立下りエッジで読み出し信号を発生する。
【0025】
図4からも明らかなように、2個の信号はどちらが先でどちらが後でも全く同様の読み出しタイミング信号を発生させることが可能となる。すなわち、磁気アドレスセンサが磁気アドレス情報板の上に来たことを確認しないと読み出しタイミング信号を発生することができないので、信頼性の高い磁気アドレスセンサにすることができる。
【0026】
3)上記した説明からも明らかなように、読み出しタイミング信号発生用の磁気検出素子は、従来品と異なり、MSLはMS1側に、MSMはMS8側に寄せることができる。磁気アドレスセンサの大きさは、MSLからMSMまでの距離で決まるため、従来の方法に比べ大幅に小さくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係る磁気アドレスセンサは、無人化、省人化された工場や倉庫などの設備内で搬送機に材料、製品等を載せて搬送する自動搬送システムの分野において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0028】
N、S 磁気の極性
RL 磁気アドレス情報板の最下位ビットに隣接する端部に設けられ、自動搬送機が最下位ビット方向から侵入する場合の、読み出し信号を発生するための磁極
RM 磁気アドレス情報板の最上位ビットに隣接する端部に設けられ、自動搬送機が最上位ビット方向から侵入する場合の、読み出し信号を発生するための磁極
L 磁気アドレスセンサの最下位ビット検出用磁気検出素子と、最下位ビットに隣接する端部の読み出しタイミング信号発生用の磁気検出素子との間の距離、或いは、磁気アドレスセンサの最上位ビット検出用磁気検出素子と、最上位ビットに隣接する端部の読み出しタイミング信号発生用の磁気検出素子との間の距離
L1 最下位ビットのデータ用磁極とその隣の読み出しタイミング信号発生用磁極、或いは、最上位ビットのデータ用磁極とその隣の読み出しタイミング信号発生用磁極とが同じ場合の磁気アドレス情報板端面からはみ出す検出点までの距離
L2 最下位ビットのデータ用磁極とその隣の読み出しタイミング信号発生用磁極、或いは、最上位ビットのデータ用磁極とその隣の読み出しタイミング信号発生用磁極とが異なる場合の磁気アドレス情報板端面からはみ出す検出点までの距離
D1〜D8 着磁されたアドレスデータ
D1 着磁されたアドレスを規定するための最下位ビット
D8 着磁されたアドレスを規定するための最上位ビット
MSL 磁気アドレスセンサの最下位ビットに隣接する端部に設けられ、自動搬送機が最下位ビット方向から侵入する場合の、RLの磁束を検出し、読み出し信号を発生するための磁気検出素子
MSM 磁気アドレスセンサの最上位ビットに隣接する端部に設けられ、自動搬送機が最上位ビット方向から侵入する場合の、RMの磁束を検出し、読み出し信号を発生するための磁気検出素子
MS1〜MS8 磁気アドレスセンサのアドレスデータを検出する磁気検出素子
MS1 最下位ビットのアドレスデータを検出するための磁気検出素子
MS8 最上位ビットのアドレスデータを検出するための磁気検出素子
P 磁気データの着磁ピッチ
A 自動搬送機が最下位ビット方向から侵入する場合の読み出し信号発生ポイント
B 自動搬送機が最上位ビット方向から侵入する場合の読み出し信号発生ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8