特許第6297918号(P6297918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297918
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】機能兼用型センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
   G01F1/696 C
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-103133(P2014-103133)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-219123(P2015-219123A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 安冶
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−246007(JP,A)
【文献】 特開2010−237004(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0164163(US,A1)
【文献】 特開平7−55522(JP,A)
【文献】 特開2000−314645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68−1/699
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流速に応じて端子間電圧が変化するヒータ素子と、前記流体の周囲温度に対応して端子間電圧が変化する温度センサと、前記ヒータ素子の前記端子間電圧であるヒータ電位と参照電位との差分に応じた測定電位を出力する演算増幅器と、を少なくとも有するヒータ駆動回路と、
定電圧を出力する定電圧回路と、
前記演算増幅器に前記参照電位として前記温度センサの前記端子間電圧を供給するか前記定電圧を供給するかを切り換えるスイッチと、を備え、
前記参照電位として前記温度センサの前記端子間電圧が供給されるとき、前記流体の流速に応じて前記測定電位が変化する流速センサとして動作し、前記参照電位として前記定電圧が供給されるとき、前記流体の熱伝導率に応じて前記測定電位が変化する熱伝導率センサとして動作する、機能兼用型センサ。
【請求項2】
前記測定電位と前記ヒータ素子との間に接続された第1の抵抗素子と、
前記測定電位と前記温度センサとの間に接続された第2の抵抗素子と、を備え、
前記第1及び第2の抵抗素子は前記ヒータ素子と前記温度センサとともにブリッジ回路を形成する、請求項1に記載の機能兼用型センサ。
【請求項3】
前記ヒータ素子は、基板に設けられたキャビティを覆う絶縁膜のダイアフラム部分に設けられ、
前記温度センサは、前記ヒータ素子と離間させて前記基板上に設けられている、請求項2に記載の機能兼用型センサ。
【請求項4】
前記定電圧回路は、第2の演算増幅器と、直列に接続された第3の抵抗素子及び第4の抵抗素子と、を備え、
前記第3の抵抗素子と前記第4の抵抗素子とで分圧された中間電圧が前記定電圧として出力される、請求項1から3のいずれか1項に記載の機能兼用型センサ。
【請求項5】
前記定電圧回路は、複数の抵抗素子と複数のスイッチとを備え、前記複数のスイッチのオンまたはオフにより、多段階の異なる電圧を前記中間電圧として出力可能な多段階電圧駆動回路である、請求項1から3のいずれか1項に記載の機能兼用型センサ。
【請求項6】
前記多段階電圧駆動回路は、第2の演算増幅器と、n個のスイッチと、直列に接続されたn+1個の抵抗素子と、を備え、
前記n個のスイッチは、前記第2の演算増幅器の入力端子に並列に接続され、
前記第2の演算増幅器の前記入力端子は、それぞれのスイッチを介して、所定の電圧電源が印加されたn+1個の抵抗素子の隣接する各対の抵抗素子の間に電気的に接続され、
前記n個のスイッチのオンまたはオフにより、多段階の異なる電圧を前記中間電圧として切り替え可能に構成されている、請求項5に記載の機能兼用型センサ。
【請求項7】
流体の流れ方向の上流側と下流側の流体温度を検出するための一対の温度センサを少なくとも有する流速検出回路をさらに備えている、請求項1から6に記載の機能兼用型センサ。
【請求項8】
前記流速検出回路は、
流体の流れ方向の上流側の流体温度を検出するための上流側温度センサと、下流側の流体温度を検出するための下流側温度センサと、直列に接続された一対の抵抗素子と、で形成された第2のブリッジ回路と、
前記上流側温度センサと前記下流側温度センサの検出信号とに基づいて、流体の流速と流れ方向とに対応して変化する測定電位を出力する第3の演算増幅器と、
を有する、請求項7に記載の機能兼用型センサ。
【請求項9】
前記ヒータ素子を挟んで、流体の流れ方向の上流側と下流側とにそれぞれ前記上流側温度センサと前記下流側温度センサが設けられ、前記上流側温度センサと前記下流側温度センサとは直列に接続されている、請求項7または請求項8に記載の機能兼用型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ素子を有する同一回路において、流速(流量)センサとしても熱伝導率センサとしても機能する機能兼用型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流速センサは流体の流速を検出するためのセンサとして使用され、熱伝導率センサは熱伝導率を検出するためのセンサとして使用されてきた。言い換えると、各センサは、それぞれ独立した検出機能を有するセンサとして、別個に構成される場合が殆どである。
【0003】
例えば流速センサとしては、特許文献1に、ヒータ素子の発熱温度が流体の周囲温度よりも常に一定温度差だけ高くなるように制御するヒータ駆動回路と、ヒータ素子の上流側および下流側に設けられた一対の温度センサによりブリッジ回路を構成し、一対の温度センサの抵抗値の変化に応じたブリッジ出力電圧から流体の流量を求める熱式流量計が開示されている。
【0004】
また熱伝導率センサを含むものとしては、特許文献2に、ヒータ素子へ段階的に定電圧を供給するように構成し、ガスの種類に応じた熱伝導率で熱がヒータ素子から奪われることによりヒータ素子の抵抗値が変化することを利用してガスの物性値を正しく評価するように構成されたガス物性値測定システムが開示されている。
【0005】
さらに流速検出機能と熱伝導率検出機能とを有するセンサとして、特許文献3には、物体の物性値を検出可能なサーモパイルを備え、流量算出部のほかに流体物性値算出部を備えたマイクロフローセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−97989号公報
【特許文献2】特開2010−237004号公報
【特許文献3】特開2001−12988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流量測定のためには、特許文献1に記載のようにヒータ素子の発熱温度を周囲温度よりも常に一定温度差だけ高くなるように制御する必要がある一方、熱伝導率の測定のためには、特許文献2に記載のようにヒータ素子に定電圧を供給する必要があるため、熱式流量計と熱伝導率センサは別個の測定装置として考えられていた。
【0008】
また特許文献3記載のマイクロフローセンサは、流量計測機能と物性値測定機能とを備えているものの、熱伝導率検出用に専用のサーモパイルという温度センサをいるので、実質的に流量センサに物性値測定センサを追加したものとなっており、温度センサとインターフェース(I/F)とを配線する接続線が増加するとともに、当該温度センサの熱伝導率検出用の専用回路が必要となっていた。そして、特許文献3記載のマイクロフローセンサは、熱伝導率検出用の温度センサを流速センサのガス組成変動に対する補正用として使用しただけであり、センサ全体としては流速センサとして機能するに過ぎなかった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みて創案されたものであり、同一回路において流速(流量)センサと熱伝導率センサとの双方の機能を有し、各機能を切り替えて個別に使用することができる機能兼用型センサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、熱式流速(流量)センサのための回路構成と熱伝導率センサのための回路構成とを鋭意比較検討した結果、ヒータ駆動回路の主要部分を共通にしながら参照電位を切り換え可能に構成することにより、流速(流量)センサとしても熱伝導率センサとしても機能させ得ることに想到した。
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明に係る機能兼用型センサは、流体の流速に応じて端子間電圧が変化するヒータ素子と、前記流体の周囲温度に対応して端子間電圧が変化する温度センサと、前記ヒータ素子の前記端子間電圧であるヒータ電位と参照電位との差分に応じた測定電位を出力する演算増幅器と、を少なくとも有する検出回路と、定電圧を出力する定電圧回路と、前記演算増幅器に前記参照電位として前記温度センサの前記端子間電圧を供給するか前記定電圧を供給するかを切り換えるスイッチと、を備え、前記参照電位として前記温度センサの前記端子間電圧が供給されるとき、前記流体の流速に応じて前記測定電位が変化する流速センサとして動作し、前記参照電位として前記定電圧が供給されるとき、前記流体の熱伝導率に応じて前記測定電位が変化する熱伝導率センサとして動作する。
【0012】
本願発明は所望により以下の構成を備えていてもよい。
【0013】
(2)前記測定電位と前記ヒータ素子との間に接続された第1の抵抗素子と、前記測定電位と前記温度センサとの間に接続された第2の抵抗素子と、を備え、前記第1及び第2の抵抗素子は前記ヒータ素子と前記温度センサとともにブリッジ回路を形成する。
(3)前記ヒータ素子は、基板に設けられたキャビティを覆う絶縁膜のダイアフラム部分に設けられ、前記温度センサは、前記ヒータ素子と離間させて前記基板上に設けられている。
(4)前記定電圧回路は、第2の演算増幅器と、直列に接続された第3の抵抗素子及び第4の抵抗素子と、を備え、前記第3の抵抗素子と前記第4の抵抗素子とで分圧された中間電圧が前記定電圧として出力される。
(5)前記定電圧回路は、複数の抵抗素子と複数のスイッチとを備え、前記複数のスイッチのオンまたはオフにより、多段階の異なる電圧を前記中間電圧として出力可能な多段階電圧駆動回路である。
(6)前記多段階電圧駆動回路は、第2の演算増幅器と、n個のスイッチと、直列に接続されたn+1個の抵抗素子と、を備え、前記n個のスイッチは、前記第2の演算増幅器の入力端子に並列に接続され、前記第2の演算増幅器の前記入力端子は、それぞれのスイッチを介して、所定の電圧電源が印加されたn+1個の抵抗素子の隣接する各対の抵抗素子の間に電気的に接続され、前記n個のスイッチのオンまたはオフにより、多段階の異なる電圧を前記中間電圧として切り替え可能に構成されている。
(7)流体の流れ方向の上流側と下流側の流体温度を検出するための一対の温度センサを少なくとも有する流速検出回路をさらに備えている。
(8)前記流速検出回路は、流体の流れ方向の上流側の流体温度を検出するための上流側温度センサと、下流側の流体温度を検出するための下流側温度センサと、直列に接続された一対の抵抗素子と、で形成された第2のブリッジ回路と、前記上流側温度センサと前記下流側温度センサの検出信号とに基づいて、流体の流速と流れ方向とに対応して変化する測定電位を出力する第3の演算増幅器と、を有する。
(9)前記ヒータ素子を挟んで、流体の流れ方向の上流側と下流側とにそれぞれ前記上流側温度センサと前記下流側温度センサが設けられ、前記上流側温度センサと前記下流側温度センサとは直列に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る機能兼用型センサによれば、参照電位として温度センサの端子間電圧が供給されるとき、ヒータ駆動回路は温度センサが検出する周囲温度に対して一定の温度差でヒータ素子を駆動することにより、流体の流速に応じて測定電位が変化する流速センサとして機能することになり、参照電位として定電圧が供給されるとき、流体の熱伝導率に応じてヒータ素子の端子間電流が変動し測定電位が変化する熱伝導率センサとして動作することになり、したがって、本発明によれば、ヒータ素子を有する同一回路において流速センサと熱伝導率センサとの双方の機能を有し、各機能を切り替えて個別に使用することができる機能兼用型センサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの図1のII−II方向から見た断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る機能兼用型センサの斜視図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
(第1の実施の形態)
まず、図1から図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの斜視図である。図2は本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの図1のII−II方向から見た断面図である。図3は本発明の第1の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。
【0018】
第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100は、図1及び図2に示す素子構造のマイクロクロチップを用い、ヒータ駆動回路1及び定電圧回路2を図3に示すように電気回路を構成して実現される。
【0019】
図1及び図2に示すように、機能兼用型センサ100は、キャビティCが設けられた基板B、及び基板B上にキャビティCを覆うように配置された絶縁膜Mを備える。基板Bの厚みは、例えば0.5mmであるが、例示の厚みに限定されない。また、基板Bの縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度であるが、例示の寸法に限定されない。絶縁膜MのキャビティCを覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。
【0020】
さらに機能兼用型センサ100は、絶縁膜Mのダイアフラムの部分に設けられたヒータ素子RHと、基板B上に設けられた周囲温度計測用の温度センサRRと、を備える。温度センサRRも電気抵抗素子等からなる。
【0021】
ヒータ素子RHは、キャビティCを覆う絶縁膜Mのダイアフラムの部分の中心に配置されている。ヒータ素子RHは、電力が与えられて発熱し、ヒータ素子RHに接する雰囲気ガス等の流体を加熱する。第1の抵抗素子R1及び第2の抵抗素子R2は、図示しない別の回路基板上に設けられている温度センサRRは、ヒータ素子RHより遠方に配置されている。温度センサRRは、基板Bと熱的に平衡な雰囲気ガスのガス温度を、平衡ガス温度として検出する。温度センサRRは、絶縁膜Mを介してヒータ素子RHから離間されて、熱伝導性の基板B上に設けられている。そのため、温度センサRRは、ヒータ素子RHの発熱から受ける影響が少ない。
【0022】
基板Bの材料としては、シリコン(Si)等が使用可能であるが、例示の材料に限定されない。絶縁膜Mの材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能であるが、例示の材料に限定されない。キャビティCは、異方性エッチング等により形成されるが、例示の加工方法に限定されない。また、ヒータ素子RH及び温度センサRRのそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能であるが、例示の材料及び作製方法に限定されない。
【0023】
機能兼用型センサ100は、当該機能兼用型センサ100の底面に配置された断熱部材(基台)Iを介して、雰囲気ガスが充填されるチャンバ等に固定される。断熱部材Iを介して機能兼用型センサ100をチャンバ等に固定することにより、機能兼用型センサ100の温度が、チャンバ等の内壁の温度変動の影響を受けにくくなる。断熱部材Iの熱伝導率は、例えば10W/(m・K)以下であることが好ましいが、例示の熱伝導率に限定されない。
【0024】
図3に示すように、ヒータ駆動回路1と、定電圧回路2と、スイッチSW1とを備える。ヒータ駆動回路1は、流体の流速に応じて端子間電圧が変化するヒータ素子RHと、流体の周囲温度に対応して端子間電圧が変化する温度センサRRと、ヒータ素子RHの端子間電圧であるヒータ電位Vhと参照電位Vrとの差分に応じた測定電位を出力する第1の演算増幅器(以下、「オペアンプ」という)U1とを少なくとも有する。特に本第1の実施の形態では、ヒータ駆動回路1は、ヒータ素子RH、周囲温度計測用の温度センサRR、第1及び第2の抵抗素子R1,R2で形成されるブリッジ回路10、並びに第1のオペアンプU1で構成される。これらヒータ駆動回路1の各素子は、ヒータ素子RHが絶縁膜Mに設けられ、その他の素子は、図示しない回路基板に設けられている。第1のオペアンプU1の+入力端子は、参照電位端子となっている。参照電位端子は、直列に接続された第2の抵抗素子R2と温度センサRRとの間に設けられているため、後述する定電圧回路2の出力端子が接続されていない場合には、温度センサRRの端子間電圧が参照電位Vrとして供給される。さらに第1のオペアンプU1の+入力端子(正極入力端子)は、温度センサRRを介して接地され、第2の抵抗素子R2を介してOUT端子に電気的に接続されている。第1のオペアンプU1の−入力端子(負極入力端子)は、直列に接続された第1の抵抗素子R1とヒータ素子RHとの間のヒータ電位Vhに電気的に接続されている。ヒータ電位Vhは、ヒータ素子RHの端子間電圧に相当する。さらに第1のオペアンプU1の−入力端子は、ヒータ素子RHを介して接地され、第1の抵抗素子R1を介してOUT端子に電気的に接続されている。第1のオペアンプU1の出力端子は、当該機能兼用型センサ100のOUT端子と電気的に接続されている。
【0025】
定電圧回路2は、定電圧を出力可能に構成されている。特に本第1の実施の形態では、定電圧回路2は、直列接続された第3及び第4の抵抗素子R3,R4、及び第2のオペアンプU2で構成される。第2のオペアンプU2の出力端子は、スイッチSW1と電気的に接続されている。第2のオペアンプU2の+入力端子は、直列に接続された第3の抵抗素子R3と第4の抵抗素子R4との間の電位V34に電気的に接続されている。直列接続された第3及び第4の抵抗素子R3,R4の一端は所定の電源電圧Vccが印加され、他端は接地される。第2のオペアンプU2の−入力端子は、当該オペアンプU2の出力端子と電気的に接続されている。以上の回路構成により、第2のオペアンプU2は、バッファ回路として動作し、第3の抵抗素子R3と第4の抵抗素子R4とにより電源電圧Vccを分圧した電圧V34が定電圧として供給されるようになっている。
【0026】
スイッチSW1は、定電圧回路2の出力端子とヒータ駆動回路1の参照電位端子との間に設けられている。スイッチSW1が投入(オン)された場合には、定電圧回路2の定電圧V34が参照電圧Vrとしてヒータ駆動回路1の+入力端子に加えられ、遮断(オフ)された場合には、定電圧回路2の出力端子が電気的に切り離されて、温度センサRRの端子間電圧が参照電圧Vrとしてヒータ駆動回路1の+入力単位に加えられる。スイッチSW1は、好適には、例えば中央演算装置(CPU)等の不図示の制御装置に接続される。
【0027】
そして制御装置は、当該機能兼用型センサ100を流速センサとして機能させる場合には、スイッチSW1をオフ状態とする。この操作により、ヒータ素子RHは、周囲温度に対してある比となる温度(例えば、周囲温度が室温である場合には60℃位)で発熱する。この結果、ヒータ素子RHは、周囲の流体の流速に応じて抵抗値が変化する結果、ヒータ駆動回路1の出力、すなわち機能兼用型センサ100のOUT端子には、流体の流速に対応する電圧が測定電位として出力される。流体の流速は、配管の断面積等のパラメータに基づき流体の流量に換算可能である。すなわち、機能兼用型センサ100を流量センサとしても機能させることが可能である。
【0028】
また制御装置は、当該機能兼用型センサ100を熱伝導率センサとして機能させる場合には、スイッチSW1をオン状態とする。この操作により、ヒータ素子RHは定電圧駆動され、周囲の流体の熱伝導率に応じて抵抗値が変化する結果、ヒータ駆動回路1の出力、すなわち機能兼用型センサ100のOUT端子には、周囲の流体の熱伝導率に対応する電圧が測定電位として出力される。すなわち、機能兼用型センサ100を熱伝導率センサとしても機能させることが可能である。以下、さらに具体的に説明する。
【0029】
第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100は、スイッチSW1がオフ(OFF)の場合、当該機能兼用型センサ100は、流速センサとして機能する。スイッチSW1がオフの場合、ヒータ駆動回路1は、第2のオペアンプU2と第3の抵抗素子R3及び第4の抵抗素子R4からなる定電圧回路2と切り離される。第1のオペアンプU1は、温度センサRRの端子間電圧を参照電圧Vrとして、ヒータ素子RHのヒータ電圧Vhとの差分を演算結果として出力するようになる。このため、ヒータ素子RHは、周囲温度計測用の温度センサRRに対してある一定の温度差を保持して制御(定温度差駆動)されることになり、第1のオペアンプU1の出力電圧は、流体の流速に対応する値を示すようになり、機能兼用型センサ100は流速センサとして動作する。
【0030】
例えば、流体が流れると、強制対流によってヒータ素子RHの放熱状態が高まり、ヒータ素子RHの温度が低下、即ち電圧が低下する。しかし、ヒータ素子RHは、一定の温度差を保持して制御されるため、第1のオペアンプU1の出力電圧が上昇し、流速に比例した信号電圧がOUT端子に出力される。
【0031】
他方、スイッチSW1がオン(ON)の場合、当該機能兼用型センサ100は、熱伝導率センサとして機能する。当該機能兼用型センサ100は、スイッチSW1がオンの場合、直接接続された第3の抵抗素子R3と第4の抵抗素子R4の分圧V34が第2のオペアンプU2経由で定電圧の参照電位Vrとして第1のオペアンプの+入力端子に加えられる。例えば、第3の抵抗素子R3と第4の抵抗素子R4の分圧を1Vとすると、温度センサRRと第2の抵抗素子R2との間に電気的に接続された第1のオペアンプU1の+入力端子に1Vが加えられる。そして、第1の抵抗素子R1とヒータ素子RHとの間に電気的に接続された第1のオペアンプU1の対となる−入力端子も定電圧駆動により1Vとなる。
【0032】
すなわち、スイッチSW1がオンの場合は、電源電圧Vcc、第3の抵抗素子R3及び第4の抵抗素子R4で設定された電圧値で定電圧がヒータ素子RHに印加され、熱伝導率センサとして動作する。流体はそのガス種によって異なる熱伝導率を有するため、ヒータ素子RHから奪われる熱量がガス種によって異なる。すなわち、ガス種に応じて決まる電流がヒータ素子RHに流れ、ガス種に対応した電圧がOUT端子に出力される。
【0033】
以上、第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100によれば、ヒータ素子RHを有する同一の回路においてスイッチSW1をオン・オフ制御することによって、第1のオペアンプに対する参照電位Vrを、定電圧回路2の設定する定電圧としたり流体の周囲温度を検出する温度センサRRの端子間電圧としたりを切り替えることが可能である。したがって、第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100では、流速(流量)センサと熱伝導率センサの機能を兼用させることができ、しかも熱伝導率センサのために、新たなセンサや付随するインターフェース(I/F)線、専用の電気回路を追加する必要がない。
【0034】
ところで、スイッチSW1がオフの場合であっても、第1のオペアンプU1のヒータ駆動回路1は熱伝導率センサとしても機能しうる。しかし、このヒータ駆動回路1は、センサの熱時定数と回路の周波数特性によって信号発振が重畳することで、S/N比の悪い信号となることがある。そのため、スイッチSW1をオンにして定電圧で駆動したほうがS/N比を高い信号にすることができる。第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100によれば、ヒータ素子RH、周囲温度計測用の温度センサRR及びGNDの3本線のみで流速(流量)又は熱伝導率を検出可能であるので、配線数が少なくて済むという優れた効果を奏する。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200について説明する。図4は本発明の第2の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。なお、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200は、第1のスイッチSW1を介して電気的に接続された定電圧回路202の構成が第1の実施の形態と異なる。当該定電圧回路202は、複数のスイッチのオン・オフにより、多段階の電圧を切り替え可能な多段階電圧駆動回路である。
【0037】
すなわち、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200の定電圧回路202は、第2のオペアンプU2、第2及び第3のスイッチSW2,SW3及び第3から第5の抵抗素子R3,R4,R5を備える。直列に接続された第3から第5の抵抗素子R3,R4,R5の一端が所定の電源電圧Vccが印加され、他端は接地される。第2のオペアンプU2の+入力端子には、第2のスイッチSW2と第3のスイッチSW3が並列に接続されている。第2のオペアンプU2の+入力端子は、第2のスイッチSW2を介して、直列に接続された第3から第5の抵抗素子R3,R4,R5のうちの第3の抵抗素子R3と第4の抵抗素子R4との間の分圧V34に電気的に接続されている。また第2のオペアンプU2の+入力端子は、第3のスイッチSW3を介して、直列に接続された第3から第5の抵抗素子R3,R4,R5のうちの第4の抵抗素子R4と第5の抵抗素子R5との間の分圧V45に電気的に接続されている。第2のオペアンプU2の−入力端子は、当該オペアンプU2の出力端子と電気的に接続され、バッファ回路を構成している。
【0038】
第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200は、基本的に第1の実施の形態に係る機能兼用型センサ100と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200では、第1のスイッチSW1をオフ制御することで、ヒータ駆動回路1を流速センサとして動作させる。他方、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200では、第1のスイッチSW1をオン制御することで、ヒータ駆動回路1を熱伝導率センサとして動作させる。
【0039】
特に、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200では、ヒータ素子RHの温度設定を2段階で切り替えることができる。すなわち、第2のスイッチSW2をオン制御し、第3のスイッチSW3をオフ制御とすることで、ヒータ素子RHに高い定電圧を印加することができる。また、第2のスイッチSW2をオフ制御し、第3のスイッチSW3をオン制御とすることで、ヒータ素子RHに低い定電圧を印加することができる。
【0040】
定電圧としては上記したような2段階に限らず、さらに多段の定電圧を提供可能に構成することもできる。すなわち、第2のオペアンプU2の+入力端子にn個のスイッチを並列接続するとともに、各スイッチを介してn+1個の抵抗素子の隣接する対の抵抗素子の間に接続すれば、ヒータ素子RHの温度を3段階,4段階,5段階と切り替えることが可能になる。ヒータ素子RHの発熱温度を多段階に切り替えることにより、複数種類の混合ガスである天然ガスの発熱量を正確に計測することが可能になる。天然ガスは、メタン、エタン、ブタン及びプロパンの4種のガスの混合ガスであり、ガス種に応じて熱伝導率の変化が異なる。ヒータ素子RHの温度が1段階であると、発熱温度が50〜60℃で固定され、当該温度に適するガスの熱伝導率が計測される。ヒータ素子RHの温度が多段階であると、発熱温度が多段階になって広いレンジで熱伝導率を計測でき、ガス種を判定することができる。よって、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200によれば、例えば1V固定の定電圧を複数の分圧を設けて、1Vと2Vに切り替えることができるという有利な効果を奏する。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300について説明する。図5は本発明の第3の実施の形態に係る機能兼用型センサの回路図である。なお、第2の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
図5及び図6に示すように、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300は、流速検出回路301を有する点が第2の実施の形態と異なる。すなわち、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300は、図5に示す素子構造のマイクロクロチップを用い、図6に示すヒータ駆動回路1、流速検出回路301及び定電圧回路202を構成して実現される。図5に示すように、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300は、図1の素子構造に加え、絶縁膜Mのダイアフラムの部分に、ヒータ素子RHを挟むように上流側温度センサRUと下流側温度センサRDを配置している。上流側温度センサRU及び下流側温度センサRDも電気抵抗素子等からなる。
【0043】
図6に示すように、流速検出回路301は、上流側温度センサRU、下流側温度センサRD、第6及び第7の抵抗素子R6,R7で形成されるブリッジ回路310、並びに第3のオペアンプ(計測アンプ)U3で構成される。第3のオペアンプU3の+入力端子は、直列に接続された第6の抵抗素子R6と第7の抵抗素子R7との間の分圧V67に電気的に接続されている。第6の抵抗素子R6には所定の電源電圧Vbが印加され、第7の抵抗素子R7は接地される。第3のオペアンプU3の−入力端子は、直列に接続された上流側温度センサRUと下流側温度センサRDとの間の分圧Vudに電気的に接続されている。上流側温度センサRUは所定の電源電圧Vbが印加され、下流側温度センサRDは接地される。第3のオペアンプU3の出力端子は、当該機能兼用型センサ300のOUT2端子と電気的に接続される。OUT2端子は、例えば中央演算装置(CPU)等の不図示の制御装置に接続される。
【0044】
第3の実施の形態に係る機能兼用型300は、図1の素子構造を備え、第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200のヒータ駆動回路1及び定電圧回路202を備えている。したがって、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300は、基本的に第2の実施の形態に係る機能兼用型センサ200と同様の作用効果を奏する。すなわち、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300では、ヒータ素子RHの温度設定を2段階で切り替えることができる。第2のスイッチSW2をオン制御し、第3のスイッチSW3をオフ制御とすることで、ヒータ駆動回路1に高い定電圧V34を印加することができる。また、第2のスイッチSW2をオフ制御し、第3のスイッチSW3をオン制御とすることで、ヒータ駆動回路1に低い定電圧V45を印加することができる。
【0045】
特に、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300では、図1の素子構造に加え、図5に示すように、ヒータ素子RHを挟んで上流側温度センサRUと下流側温度センサRDを配置した流速回路301を備えている。したがって、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300では、第1のスイッチSW1をオフ制御すると、流速回路301のOUT2端子からは、流れ方向Fが正方向から逆方向に変化するに従って対応する電圧が出力される。したがって、第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300では、OUT2端子からの出力が、流体の流れ方向Fが逆方向から正方向に変化する場合に、一義的に定まる電圧値を示すようになる。すなわち、流速のみならず、流れ方向Fが正方向であるか、もしくは逆方向であるかを電圧値から直接読み取ることができる(図5参照)。なお、このとき、ヒータ駆動回路1のOUT1端子からも流速に対応する電圧値が出力されるが、流体の流れ方向Fが正方向であっても逆方向であっても同一の絶対値である流速については同じ電圧値が出力されることになるため、流体の流れ方向を判定することはできない。
【0046】
また、第1のスイッチSW1をオン制御すると、第2のスイッチSW2と第3のスイッチSW3によって選択された定電圧が参照電位Vrとして第1のオペアンプU1に供給され、流体の熱伝導率を示す熱伝導率信号がOUT1端子から出力される。すなわち第3の実施の形態に係る機能兼用型センサ300によれば、流体の流れ方向についても検出可能な流速センサに熱伝導率センサの機能を兼用させることが可能である。
【0047】
〔その他の実施の形態〕
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0048】
例えば、第1の実施の形態の当該機能兼用型センサ100に加えて、第3の実施の形態の流速検出回路301を付加するように構成してもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0049】
1 検出回路
2,202 ヒータ駆動回路
10 ブリッジ回路
100,200,300 機能兼用型センサ
301 熱伝導率検出回路
B 基板
C キャビティ
F 流れ方向
M 絶縁膜
RH ヒータ素子
RR 周囲温度計測用の温度センサ
R1〜R7 抵抗素子
RU 上流側温度センサ
RD 下流側温度センサ
SW1,SW2,SW3 スイッチ
U1,U2,U3 演算増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6