(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の放射性廃棄物収納計画支援システムの実施例を、
図1乃至
図18を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施例の放射性廃棄物収納計画支援システムの代表的な例の構成図である。
【0016】
図1において、本実施例の放射性廃棄物収納計画支援システムは、残存放射能データ割当部101、切断モデル生成処理部102、詰込状態生成処理部103、容器選択処理部104、空間線量率計算処理部105、表面線量率判定部106、詰込順制御処理部107、プラント3DモデルDB21、残存放射能評価結果DB22、収納容器仕様DB23、廃棄物モデルDB31、廃棄体収納順DB32、詰込状態表示部103d、線量率計測部106d、詰込順制御結果表示部107dとからなる。
【0017】
放射性廃棄物収納計画支援システムは、入力データとしてプラント3DモデルDB21、残存放射能評価結果DB22、収納容器仕様DB23に記憶された各種情報およびを利用する。
このうち、プラント3DモデルDB21は、放射性廃棄物の排出元となる原子力発電プラント内の全ての各機器・配管の3Dモデルを記憶している。残存放射能評価結果DB22は、プラント内の各所の残存放射能の評価結果を記憶している。収納容器仕様DB23は、放射性廃棄物を収納するための収納容器の種類ごとの各々の仕様を記憶している。線量率計測部106dは、収納容器の外表面の線量率空間分布を実測する。
【0018】
残存放射能データ割当部101は、プラント3DモデルDB21に記憶された各機器・配管の3Dモデルおよび残存放射能評価結果DB22に記憶された残存放射能の評価結果を基にして、プラント内の各機器・配管に付着していると推察される線量率(汚染残存放射能量、表面線量率等)を、各機器・配管ごとに割り当てる割当処理を実施する。
切断モデル生成処理部102は、各機器・配管の切断長さを設定の入力を受けて、プラント3DモデルDB21に記憶されたプラント内の各機器・配管の3Dモデルを基にして、プラント内に存在するすべての各機器・配管の切断箇所に関するモデル(切断モデル)を生成する。
【0019】
容器選択処理部104は、収納容器仕様DB23に記憶された放射性廃棄物を収納するための収納容器の種類ごとの各々の収納容器の仕様に基づいて、適切な収納容器の種類を選択する。
詰込状態生成処理部103は、切断モデル生成処理部102で生成された各機器・配管の切断モデルと、容器選択処理部104において選択された収納容器の種類(仕様)とから、プラント内の各機器・配管の収納容器への詰込状態モデルを生成する。
空間線量率計算処理部105は、詰込状態生成処理部103で生成された詰込状態モデルと、容器選択処理部104で選択された収納容器の仕様とから、各機器・配管を詰め込んだ状態での収納容器の表面線量率を演算する。また、放射性廃棄物を詳細に管理するためには廃棄物収納容器の内部の空間線量率も求めることが望ましいことから、空間線量率計算処理部105は、残存放射能データ割当部101で割り当てられた各機器・配管の各々の線量率(汚染残存放射能量、表面線量率等)に応じて、各機器・配管を収納した状態における収納容器の内部の線量率空間分布についても演算する。
【0020】
表面線量率判定部106は、空間線量率計算処理部105で演算した表面線量率がしきい値より小さいか否かを判定する。また、表面線量率判定部106では、線量率計測部106dにおいて実測された、生成された詰込状態モデルおよび詰込順序モデルに基づいて実際に収納容器に各機器・配管を詰め込んだ際の収納容器の外表面の線量率空間分布が、モデル通りであるかの検証判定についても実施する。
詰込順制御処理部107は、表面線量率判定部106において表面線量率がしきい値より小さいと判定されたときに、各機器・配管の重量、充填率を参照しながら各機器・配管の詰込順序モデルを生成する。この詰込順序モデルを生成する際には、プラント全体として廃棄物収納容器個数が少なくなるよう、高放射能解体物と低放射能解体物とを混在させた廃棄物収納計画となるよう、充填率をなるべく高くするよう処理を行う。また詰込順制御処理部107は、表面線量率判定部106において表面線量率がしきい値以上であると判定されたときは、切断モデル生成処理部102に対して各機器・配管の切断長さを再設定するよう促し、切断モデル生成処理部102,容器選択処理部104,詰込状態生成処理部103および空間線量率計算処理部105に対して再度詰込状態モデルを生成し直すよう制御する。更に、詰込順制御処理部107は、切断モデル生成処理部102で演算された各機器・配管の切断モデルから、各機器・配管の切断回数および作業位置を求めて、この求めた切断回数および作業位置の情報から作業者の放射性廃棄物廃棄作業時の推定被ばく量を演算する。
【0021】
廃棄物モデルDB31は、残存放射能データ割当部101におけるプラント運転終了後の残留放射性物質量の計算結果や、切断モデル生成処理部102で生成された切断モデル、詰込状態生成処理部103で生成された詰込状態モデル等を記憶する。廃棄体収納順DB32は、詰込順制御処理部107で生成された詰込順序モデル等を記憶する。
【0022】
詰込状態表示部103dは、詰込状態生成処理部103で生成された詰込状態モデルおよび
空間線量率計算処理部(線量率空間分布演算部
)105で演算された各機器・配管を詰め込んだ状態での収納容器の表面線量率や収納容器の内部の線量率空間分布を表示する。詰込順制御結果表示部107dは、詰込順制御処理部107で生成された詰込順序や作業者の放射性廃棄物廃棄作業時の推定被ばく量を表示する。
【0023】
図2に、本発明の放射性廃棄物収納計画支援システムによって放射性廃棄物の収納計画を作成する対象の一つである原子力プラント3Dモデルの例を示す。
図2に示すような原子力プラントの解体においては、機器・配管を解体後、建屋を解体する。機器・配管・コンクリート躯体は原子炉の運転に伴い材料が放射化し、また配管や機器内部への水・蒸気の循環により放射性物質による汚染がある。このため、安全な作業をするためには機器・配管内面に付着する汚染物質を適切にコントロールする必要がある。
【0024】
図3に、残存放射能データ割当部101で割り当てる各機器・配管への線量率の割り当てのうち、配管・機器内面への放射性物質の推定付着箇所のイメージの一例を示す。
図3において、例えば、熱交換器2120に接続する配管2121,2122,2123,2124や弁2125,2126等があったときに、配管属性として付与した配管肉厚を考慮し、配管内面積と残存放射能評価結果DB22から単位面積あたりの汚染量として、配管内面にハッチング21230で示したような放射性物資の推定付着量を計算する。
【0025】
図4に、本発明の放射性廃棄物収納計画支援システムの入力画面および詰込状態モデルの表示画面の一例を示す。
図4において、画面3201は、切断長の設定値3201bに加えて、処理の結果選択した収納容器のタイプの表示領域3201a、解体物の収納容器への詰込処理開始指示ボタン3201c、詰め込んだ後の収納容器の表示ボタン3201d、詰め込んだ収納容器の番号の表示列3201e、選択した収納容器のタイプの表示列3201f、解体物の充填率表示列3201g、容器に含まれる総放射能量の表示列3201h、単位重量当たりの放射能濃度表示列3201i、個々の収納容器の重量表示列3201j、収納容器の表面線量率の評価結果表示列3201k、解体物のピース数表示列3201l、線量計算開始ボタン3201mからなる。この画面3201は、詰込状態生成処理部103で生成された詰込状態モデルの一部である。
【0026】
図5に、廃棄物収納容器231の3Dモデルの一例を示す。
図5において、収納容器には、解体物を格納する際の放射性物質の総量に応じた数種類の仕様がある。放射性物質の総量[Bq/t]が増えると、遮蔽効果を得るために壁が厚いタイプの廃棄物収納容器を用いる。この廃棄物収納容器231の3Dモデルは、収納容器仕様DB23に記憶されている。
【0027】
図6に、切断モデル生成処理部102で生成される切断モデルのうち配管の切断モデルの一例を示す。
図6において、直管2112を定尺、例えば1mで切断したときに、エルボ2113との境界面、1mで切断したときに直管部分に2111のような短い直管が生成される。
【0028】
図7に、詰込状態生成処理部103で生成される詰込状態モデルのうち、配管のみを詰め込む配管詰込状態モデルの一例を示す。
図7において、切断した配管が積み重なって、上の配管は下の配管の上に自重と摩擦力で安定な形式で収納容器底面から上方向に積み重なっていく。実際には収納容器の壁方向の摩擦力もあるので、以上を考慮した剛体力学に基づく計算により詰込状態が決定される。
【0029】
図8に、詰込状態表示部103dにおいて表示される空間線量率計算処理部105で演算された収納容器の表面線量率および収納容器内部の線量率空間分布を可視化する画面の一例を示す。
図9に、
図8を垂直断面で3DCAD上で切断したときに廃棄物収納容器内外の空間線量率を可視化する画面の一例を示す。
図8において、
図5の廃棄物収納容器231に、
図6のように切断した配管を詰め、
図3で求めた配管内部の放射性物質の汚染付着量を線源として空間線量率計算処理部105によって求めた、廃棄物収納容器内外の空間線量率を透明の立方体(ボクセル)によって可視化した例311が示されている。実際には空間線量率の強度は目には見えない状態量であるが、3DCADシステム上で、線量率の大小に応じて赤から青までのグラデーションで色付けすることにより、線量率の大きい場所が目で判定することができるよう表示されている。
また、
図8の例311においてある部分の断面を可視化すると、
図9に示すように、収納容器、切断配管、コンクリートなどの充填材の材料による遮蔽の影響も考慮した容器内外の空間線量率の分布が表示される。収納容器外側の空間線量率ボクセル3111の他に、収納容器内部の空間線量率ボクセル3113、収納容器表面の空間線量率ボクセル3112、配管表面の空間線量率ボクセル3114を表現している。
【0030】
図10に、
図8や
図9に示す空間線量率の可視化画面の調整インタフェースの一例を示す。
図10において、空間線量可視化インタフェース3202は、廃棄物収納容器の番号を選択するテキスト・フィールド3202a、表示する空間線量の上限値3202b、下限値3202cを指定するトラック・バー、空間線量表示ボクセルの透過度を指定するトラック・バーからなるフィールド3202d、空間線量ボクセルの表示条件を制御するコントロール部品3202e〜3202iからなる。これらの指定を適用ボタン3202kを押すことで
図8や
図9に示すような透過度を持つ空間線量可視化ボクセルからなる収納容器3Dモデルを表示する。全ボクセルを表示する場合は3202eを指定し、ボクセル断面を表示するときには、選択ラジオ・ボタン3202fを指定して、XY、YZ、ZXのどの断面かを3202gで指定して、ボクセルの何番目かの断面となるか、3202hのトラック・バーで制御する。また、空間線量率何mSv/h以上の領域をフィルタリング表示するために、3202iのラジオ・ボタンと線量率の値を指定するテキスト・フィールド3202jがある。
【0031】
図11に、原子力プラントの解体における各機器・配管などの廃棄物に含まれる放射性核種の成分の演算結果の一覧に関する表示例を示す。
図11に示すように、廃棄物に含まれる放射性核種の成分は表221のように表現され、放射化量と汚染量を放射性核種の種類ごとに濃度で表示する。それぞれの量はプラント建屋種別、設備名、系統名、重量の属性を伴い、残存放射能データ割当部101、切断モデル生成処理部102、詰込状態生成処理部103等において体系的に計算される。以上の情報は、計算結果として
図1の廃棄物モデルDB31のようなデータベースやファイルに保存される。
【0032】
図12はプラント運転終了後の残留放射性物質量の計算例である。
図12において、残留放射能量は
図11に示す放射性核種の成分に関する表示を集約したものである。すなわち、放射化量と汚染量、そして放射化量・汚染量の和を合計放射能濃度として表現している。これらは、プラント建屋種別、設備名、系統名、重量の属性を伴い、残存放射能データ割当部101、切断モデル生成処理部102、詰込状態生成処理部103等において体系的に計算される。以上の情報は、計算結果として
図1の廃棄物モデルDB31のようなデータベースやファイルに保存される。
【0033】
次に、本実施例の放射性廃棄物収納計画支援システムの動作、処理の流れについて
図13乃至
図18を参照して以下説明する。まず、
図13を用いて全体の流れについて説明する。
【0034】
図13は、本実施例の放射性廃棄物収納計画支援システムの放射性廃棄物収納計算に関わる全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
まず、放射性廃棄物収納計画支援システムの残存放射能データ割当部101において、プラント3DモデルDB21と残存放射能評価結果DB22を基にして、機器・配管に付着する汚染残存放射能量を割り当てる割当処理を実施する(ステップS101)。
【0036】
次いで、放射性廃棄物収納計画支援システムの切断モデル生成処理部102において、
図4に示すような画面を用いて各機器・配管の初期切断長を設定する(ステップS102)。
【0037】
次いで、放射性廃棄物収納計画支援システムの詰込状態生成処理部103において、ステップS102で切断モデル生成処理部102において生成された機器・配管の切断モデルと、ステップS101で残存放射能データ割当部101で割り当てられた汚染残存放射能のデータとから、各機器・配管の汚染残存放射能のレベルを分類するとともに、機器・配管の切断モデルを生成し、
詰込状態表示
部103dに結果を表示する(ステップS103)。
【0038】
次に、放射性廃棄物収納計画支援システムの容器選択処理部104において収納容器仕様DB23を参照して収納容器を選択するとともに、詰込状態生成処理部103において収納容器仕様DB23を参照して詰込状態モデルを生成する(ステップS104)。
【0039】
次いで、放射性廃棄物収納計画支援システムの空間線量率計算処理部105において、先のステップS104において選択された収納容器の仕様と生成された詰込状態モデルの組合せとに基づいて、収納容器の表面線量率および内部の線量率空間分布を計算する(ステップS105)。
【0040】
次いで、放射性廃棄物収納計画支援システムの表面線量率判定部106において、先に選択された収納容器に先に生成された詰込状態モデルで各機器・配管を詰め込んだときに表面線量率がしきい値より小さくなるか否かを判定する(ステップS106)。
【0041】
ステップS106において表面線量率がしきい値以上になると判定されるときは、放射性廃棄物収納計画支援システムの詰込順制御処理部107において切断長、詰込量を変更して(ステップS107)、再度ステップS102からステップS106の処理を繰り返す。
【0042】
これに対し、ステップS106において表面線量率がしきい値より小さくなると判定されるときは、放射性廃棄物収納計画支援システムの表面線量率判定部106において、
線量率計測部106dで実際に各機器・配管の線量率を測定し、実測した線量率と先のステップS101の割当処理において割り当てた線量率とが一致、あるいは十分に近いか否かを判定する(ステップS106A)。
【0043】
ステップS106Aにおいて実測した線量率と割当線量率とが一致、あるいは十分に近くないと判定されるときは、ステップS107に処理を進め、再度、ステップS102からステップS106の処理を繰り返す。
【0044】
これに対し、ステップS106Aにおいて実測した線量率と割当線量率とが一致、あるいは十分に近いと判定されるときは、放射性廃棄物収納計画支援システムの詰込順制御処理部107において各機器・配管の重量、充填率を参照しながら各機器・配管の詰込順序モデルを生成するとともに、各機器・配管の切断回数および作業位置、更には作業者の放射性廃棄物廃棄作業時の推定被ばく量を演算し(ステップS108)、処理をステップS109に進める。
【0045】
次いで、生成した詰込状態モデルを廃棄物モデルDB31に格納し、詰込順序モデルを廃棄体収納順DB32に格納し(ステップS109)、処理を終了する。
【0046】
以下、
図14乃至
図18に示すフローチャートを用いて、
図13の各ステップの処理の詳細に関して説明する。以下、放射性廃棄物として配管のみで構成される場合について説明するが、機器が含まれる場合に関しても同様の処理によって処理することができる。
【0047】
まず、
図13のステップS103における配管の切断モデル生成処理の詳細について
図14を用いて説明する。
図14は配管の切断モデル生成処理の流れのフローチャートである。
図14に示す処理は、切断モデル生成処理部102において実行される。
【0048】
まず、切断モデル生成処理部102において、系統配管を選択する(ステップS1091)。
【0049】
次いで、切断モデル生成処理部102において、
図13に示すステップS101において割り当てられた配管の残存放射能の割当情報を読み込む(ステップS1092)。
【0050】
次いで、切断モデル生成処理部102において、残存放射能濃度が10
2Bq/t以下であるか否かを判定する(ステップSS1093)。残存放射能濃度が10
2Bq/t以下であると判定されるときは処理をステップSS1094に進め、10
2Bq/tより高いと判定されるときは処理をステップS1091に戻す。
【0051】
次いで、切断モデル生成処理部102において、以上の系統に関して全系統を確認完了したか否かを判定する(ステップS1094)。完了していると判定されるときはステップS1096に処理を進め、次いで、切断モデル生成処理部102において、設定した寸法で直管を切断し(ステップS1096)、処理を終了する。
【0052】
これに対し、確認が完了していないと判定されるときはステップS1095に処理を進め、切断モデル生成処理部102において、放射性配管記憶域に格納して(ステップS1095)、ステップS1091〜ステップS1094の処理を繰り返す。
【0053】
なお、本処理フローにおいては、収納容器に入るように解体物の長さを可変で切断する手法を取り入れてもよいこととする。
【0054】
次に、
図13のステップS104における詰込状態モデル生成のための準備である高線量・低線量廃棄物の分類処理の詳細について
図15を用いて説明する。
図15は高線量・低線量廃棄物の分類処理の流れのフローチャートである。
図15に示す処理は、射性廃棄物収納計画支援システムの詰込状態生成処理部103において実行される。
【0055】
図15において、まず、詰込状態生成処理部103において切断配管への線源を割り当てる(ステップS1031)。
【0056】
次いで、詰込状態生成処理部103において先のステップS1031において割り当てた線源による放射能のレベルが高レベルにあるか否かを判定する(ステップS1032)。高レベルにあると判定されるときは、当該切断配管が高レベルであるとした配管オブジェクトのメモリ領域を確保・記憶(ステップS1033)し、処理を終了する。これに対し、高レベルにないと判定されるときはステップS1034に処理を進める。
【0057】
次いで、詰込状態生成処理部103において先のステップS1031において割り当てた線源による放射能のレベルが中レベルより高く高レベル以下であるか否かを判定する(ステップS1034)。中レベルより高く高レベル以下であると判定されるときは、当該切断配管が中レベルより高く高レベル以下であるとした配管オブジェクトのメモリ領域を確保・記憶(ステップS1035)し、処理を終了する。これに対し、中レベルより高く高レベル以下でないと判定されるときはステップS1036に処理を進める。
【0058】
次いで、詰込状態生成処理部103において先のステップS1031において割り当てた線源による放射能のレベルが低レベルより高く中レベル以下であるか否かを判定する(ステップS1036)。低レベルより高く中レベル以下であると判定されるときは、当該切断配管が低レベルより高く中レベル以下であるとした配管オブジェクトのメモリ領域を確保・記憶(ステップS1037)し、処理を終了する。これに対し、低レベル以下であると判定されるときは当該切断配管が非放射性配管であるとした配管オブジェクトのメモリ領域を確保・記憶(ステップS1038)し、処理を終了する。
【0059】
次いで、
図13のステップS104における詰込状態モデル生成の詳細について
図16を用いて説明する。
図16は線量率計測結果に基づく廃棄物収納順判定処理の流れのフローチャートである。
図16に示す処理は、詰込状態生成処理部103、容器選択処理部104および空間線量率計算処理部105において実行される。
【0060】
まず、容器選択処理部104において、収納容器仕様DB23を参照することによって低レベルの廃棄物収納容器を設定する(ステップS1041)。
【0061】
次に、詰込状態生成処理部103において、先の
図15での処理で分類した解体配管を放射能レベル別にソートする(ステップS1042)。
【0062】
次いで、詰込状態生成処理部103において、
図15の処理により記憶域に格納した解体配管オブジェクトを記憶域から一本取り出す(ステップS1043)。
【0063】
次に、詰込状態生成処理部103において、先のステップS1041において選択した廃棄物収納容器内に先のステップS1043において取り出した解体配管を詰めるための空き空間を検索する(ステップS1044)。
【0064】
その後、詰込状態生成処理部103において、先のステップS1044で選択した配管の放射能が高レベルであるか否かを判定する(ステップS1045)。配管の放射能が高レベルであるときは、重力を無視して収納容器中央部から順に解体配管を配置(ステップS1046)し、ステップS1048に処理を進める。これに対してステップS1043で選択した配管の放射能が高レベルではない場合、収納容器の底・天井・壁側部に配置(ステップS1047)し、ステップS1048に処理を進める。なお、ここでいう高レベルとは、予め放射能、表面線量率などからしきい値を決めておくことにより判定するものとする。
【0065】
次いで、空間線量率計算処理部105において、廃棄物収納容器の表面も含む空間の線量率を計算する(ステップS1048)。
【0066】
その後、空間線量率計算処理部105において、先のステップS1048において演算された廃棄物収納容器の表面線量率が2mSv/hより小さいか否かを判定する(ステップS1049)。表面線量率が2mSv/hより小さいときはステップS1043に処理を戻し、ステップS1043〜ステップS1049の処理を繰り返すことによって更に配管を詰めるよう処理を行う。これに対し、表面線量率が2mSv/h以上であると判定されるときはステップS1050に処理を進める。
【0067】
次いで、容器選択処理部104において、収納容器仕様DB23を参照して現在選択されている収納容器より放射線の遮蔽能力が1レベル上の収納容器があるか否か判定する(ステップS1050)。1レベル上の放射能・線量率の制約を満足する廃棄物収納容器を検討でき、また1レベル上の容器があると判定されるときは、収納容器を選択し直して新たな収納容器として設定し(ステップS1051)、ステップS1048に処理を戻して、再度、収納容器内外の空間線量率を計算する。これに対し、1レベル上の収納容器がないと判定されるときはステップS1052に処理を進め、詰込状態生成処理部103において収納容器の表線量量率が2mSv/h以下になるまで解体配管を収納容器から除去して(ステップS1052)、記憶域に戻したあと処理を終了する。
【0068】
次いで、
図13のステップS108における詰込順序モデル生成の詳細について
図17を用いて説明する。
図17は廃棄物収納制約に基づく切断した配管の収納処理の流れのフローチャートである。
図17に示す処理は、詰込順制御処理部107において実行される。
【0069】
まず、詰込順制御処理部107において、
図13のステップS104,
図16に示す処理で生成した、詰め込んだ解体配管の詰込状態モデルを受信する(ステップS1071)。
【0070】
次に、詰込順制御処理部107において、収納容器、コンクリートなどの充填材を含む解体配管の重量が20tより軽いか否かを判定する(ステップS1072)。重量が20t以上であると判定されるときはステップS1075に処理を進め、20tより軽いと判定されるときはステップS1073に処理を進め、詰込順制御処理部107において、収納容器の解体配管の充填率が10%より低いか否かを判定する(ステップS1073)。充填率が10%より低いときはステップS1074に処理を進めて非放射性配管を底、上、側部に配置し、ステップS1072、ステップS1073の処理を繰り返す。これに対して先のステップS1073において充填率が10%以上であると判定されるときはステップS1075に処理を進める。
【0071】
次に、詰込順制御処理部107において、解体配管重心と解体配管の摩擦力をもとに剛体力学に基づく配管積み重ね状態が安定化する配置を計算する(ステップS1075)。
【0072】
次いで、詰込順制御処理部107において、収納容器内の線源付着と充填材の詰め方などの情報を整理して、
詰込順制御結果表示
部107dに結果を表示(ステップS1076)し、処理を終了する。
【0073】
次いで、
図13のステップS108における作業者の放射性廃棄物廃棄作業時の被ばく量の演算処理の詳細について
図18を用いて説明する。
図18は切断回数、切断位置から被ばく線量を推定する計算処理の流れのフローチャートである。
図18に示す処理は、詰込順制御処理部107において実行される。
【0074】
まず、詰込順制御処理部107において、
図13のステップS103で生成した切断モデルから、解体配管の口径、切断位置を受信する(ステップS1081)。
【0075】
次いで、詰込順制御処理部107において、切断位置周辺の線量率(
図13のステップS101で割り当てた計算値、もしくは実測値)を受信する(ステップS1082)。
【0076】
次いで、詰込順制御処理部107において、個々の切断作業における被ばく線量を作業時間と線量率の積を基にして計算する(ステップS1083)。
【0077】
次いで、詰込順制御処理部107において、以上の個々の作業における被ばく線量と作業員の積の総和を求める(ステップS1084)。
【0078】
その後、詰込順制御処理部107において、全ての切断配管分の積の総和の演算が終了したか否かを判定(ステップS1085)し、終了しているときは処理を終了し、終了していないときは処理をステップS1081に戻す。
【0079】
次いで、詰込順制御処理部107において、全切断作業分繰り返す。
【0080】
上述した本発明の放射性廃棄物収納計画支援システムの実施例では、残存放射能データ割当部101,切断モデル生成処理部102,詰込状態生成処理部103,容器選択処理部104および空間線量率計算処理部105において収納容器の内外の線量率空間分布を計算し、表面線量率判定部106において演算した線量率空間分布を判定し、詰込順制御処理部107において高線量率の発生源となる切断部品の配置位置と低線量・高線量部品の組み合わせで収納容器外の線量率を低減するよう繰り返し演算を実施するよう処理を行う。
【0081】
これによって、従来は机上計算に依っていた収納計画を、3D設計モデルに基づく計算で自動化することができ、業務効率の向上が可能となる。例えば、高いレベルの放射性物質が付着している解体廃棄物の収納方法を改善することが可能となるとともに、廃棄物収納容器における線量率低減に効果的な解体物の収納状態が事前に検討可能となり、放射性廃棄物を安全かつ効率的に保管することができ、更に作業員の被ばく線量を低減することができる。
【0082】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。
【0083】
また、上述した各構成、各部、機能、各DB等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、上述した各構成、機能等は、CPU等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HD(Hard Disk)に格納すること以外に、メモリや、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
【0084】
また、各実施例において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。