特許第6297968号(P6297968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297968
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】締固め機械の評価装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20180312BHJP
   E01C 19/22 20060101ALI20180312BHJP
   E01C 19/34 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   E01C23/01
   E01C19/22
   !E01C19/34 B
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-261680(P2014-261680)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121478(P2016-121478A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】小倉 弘
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−345547(JP,A)
【文献】 特開昭61−117311(JP,A)
【文献】 実開平05−047034(JP,U)
【文献】 実開平05−003981(JP,U)
【文献】 特開2003−083803(JP,A)
【文献】 特開2003−166232(JP,A)
【文献】 特開昭63−241204(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0003990(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0260462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00−19/52
E01C 21/00−23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の締固め度を評価する締固め機械の評価装置であって、
振動体を加振して路面を締め固める複数の異なる機種の締固め機械に対して脱着可能に取り付ける取付手段と、
上記各締固め機械の基本振動数、及び路面の締固めに伴う上記振動体の振動加速度を周波数スペクトル解析により定量的な乱れ率として算出するために上記締固め機械毎に設定された計算式をそれぞれ記憶する記憶手段と、
上記取付手段により取り付けられている締固め機械の作動中において、該締固め機械の振動体の振動加速度に基づき基本振動数を算出する基本振動数算出手段と、
上記基本振動数算出手段により算出された基本振動数を上記記憶手段に記憶されている上記各締固め機械の基本振動数と比較し、該比較結果に基づき上記取付手段により取り付けられている締固め機械の機種を特定する機種特定手段と、
上記機種特定手段により特定された締固め機械の機種に対応する乱れ率の計算式を上記記憶手段から読み出し、該計算式を用いて上記締固め機械による締固め作業中に上記振動体の振動加速度に基づき上記乱れ率を算出し、該乱れ率に基づき路面の締固め度を評価する締固め度評価手段と
を具備したことを特徴とする締固め機械の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め機械の評価装置に係り、詳しくは締固め作業中に路面の締め固め度を評価する締固め評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の締固め機械、例えばオペレータが搭乗する搭乗型の振動ローラ車両や非搭乗型のランマ等は、道路工事等での路面の締固め作業に広く使用されている。締固め作業は路面が規定の締固め度に達するまで実施する必要があるため、従来は締固め作業を適宜中断して、作業員が密度測定(例えば、砂置換法、平板載荷法、RI密度計による計測等)を行って規定の締固め度に達したか否かを確認していた。しかしながら、このような手作業的な管理方法は多大な労力と時間を要して締固め施工を遅延させる原因になるため、締固め作業の実施中にリアルタイムで締固め度を評価・表示する評価装置が実用化されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載された評価装置は、振動ローラ車両による締固め作業中に、転圧輪の振動加速度に含まれる振動数成分と締固め度との間に相関関係が成立する点に着目し、転圧輪の振動加速度から周波数スペクトル解析により定量的な乱れ率を算出し、予め実験により取得した乱れ率と締固め度との関係に基づき、算出した乱れ率から路面の締固め度を評価・表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3908031号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された評価装置によれば、労力や時間を要することなく且つ締固め作業を中断せずにリアルタイムで締固め度を把握できることから、締固め作業を効率的に推し進めることができる。しかし、多数の締固め機械に個別に評価装置を装備すると、膨大な初期費用を要するという新たな問題が発生する。
【0006】
その解決策として、単一の評価装置を複数の締固め機械に対し任意に脱着し得るように構成し、その評価装置を各締固め機械の間で流用(いわゆる使い回し)することが考えられる。ところが、評価装置により乱れ率を算出するには、それぞれの締固め機械が有する固有の情報が必要となる。具体的には、乱れ率の算出処理は予め設定された計算式が適用され(実施形態に記載の式(1)に相当)、その計算式には、締固め機械の基本振動数及び基本振動数の何次成分までかを代入する必要があり、これらの基本振動数や代入すべき振動数成分の次数は個々の締固め機械によって相違する。このため締固め機械を使用する際には、その都度これらの情報を入力する必要が生じ、入力作業が煩雑な上に、誤入力により誤った締固め度の評価がなされると路面品質を低下させてしまう可能性もある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、単一の評価装置を複数の締固め機械の間で流用して初期費用を低減可能とした上で、使用する締固め機械に対応する情報を自動的に設定して煩雑な入力作業を不要とすると共に、誤入力に起因するトラブルを未然に回避することできる締固め機械の評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の締固め機械の評価装置は、路面の締固め度を評価する締固め機械の評価装置であって、振動体を加振して路面を締め固める複数の異なる機種の締固め機械に対して脱着可能に取り付ける取付手段と、各締固め機械の基本振動数、及び路面の締固めに伴う振動体の振動加速度を周波数スペクトル解析により定量的な乱れ率として算出するために締固め機械毎に設定された計算式をそれぞれ記憶する記憶手段と、取付手段により取り付けられている締固め機械の作動中において、締固め機械の振動体の振動加速度に基づき基本振動数を算出する基本振動数算出手段と、基本振動数算出手段により算出された基本振動数を記憶手段に記憶されている各締固め機械の基本振動数と比較し、比較結果に基づき取付手段により取り付けられている締固め機械の機種を特定する機種特定手段と、機種特定手段により特定された締固め機械の機種に対応する乱れ率の計算式を記憶手段から読み出し、計算式を用いて締固め機械による締固め作業中に振動体の振動加速度に基づき乱れ率を算出し、乱れ率に基づき路面の締固め度を評価する締固め度評価手段とを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の締固め機械の評価装置によれば、単一の評価装置を複数の締固め機械の間で流用して初期費用を低減可能とした上で、使用する締固め機械に対応する情報を自動的に設定して煩雑な入力作業を不要とすると共に、誤入力に起因するトラブルを未然に回避することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の評価装置と評価装置が流用される複数の締固め機械との関係を模式的に示す説明図である。
図2】評価装置の構成を示すブロック図である。
図3】振動ローラ車両の運転席に設けられたインストルメントパネル及び取付ベースを示す斜視図である。
図4】ランマの操作ハンドルに設けられた取付ベースを示す斜視図である。
図5】振動ローラ車両の場合の加速度センサにより検出される振動加速度を示すグラフである。
図6】同じく振動加速度を周波数スペクトル解析して振動数域毎の分布として表したグラフである。
図7】ランマの場合の加速度センサにより検出される振動加速度を示すグラフである。
図8】同じく振動加速度を周波数スペクトル解析して振動数域毎の分布として表したグラフである。
図9】マイコンが実行する機種特定ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した締固め機械の評価装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の評価装置と評価装置が流用される複数の締固め機械との関係を模式的に示す説明図、図2は評価装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように本実施形態では、単一の評価装置1が締固め機械としての振動ローラ車両2とランマ3との間で流用される。評価装置1はボックス形状をなし、その内部にはマイクロコンピュータ4(以下、マイコンと称する)及びバッテリ5が収容されている。マイコン4は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供されるROMやRAM等のメモリ4a(記憶手段)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどを備えている。
【0012】
後述するようにマイコン4はバッテリ5からの電力供給を受けて、評価装置1が取り付けられている締固め機械の機種の特定処理、及び締固め作業での路面の締固め度の評価処理を実行する。そのためにメモリ4aには、評価装置1が取り付けられる可能性がある締固め機械(ここでは振動ローラ車両2及びランマ3)の基本振動数、及び各締固め機械による路面の締固めに伴う振動体(後述のように振動ローラ車両2の前部転圧輪15、ランマ3のシュー28)の振動加速度から路面の締固め度と相関する乱れ率を算出するために締固め機械毎に設定された計算式がそれぞれ記憶されている。
【0013】
なお、評価装置1の電源は上記に限るものではなく、例えば評価装置1内のバッテリ5を省略して、代わりに評価装置1が現在取り付けられている締固め機械から電力供給を受けるようにしてもよい。
【0014】
評価装置1の前面には、3種のスイッチ6〜8と共に多数のLED9がグラフを模した曲線を描くように配列されており、これらのスイッチ6〜8及びLED9はマイコン4に電気的に接続されている。電源スイッチ6は評価装置1の電源のON-OFFを指令し、機種特定スイッチ7は評価装置1が取り付けられた締固め機械の機種の特定処理を指令し、評価スイッチ8は路面の締固め度の評価処理を指令する機能を奏する。また、各LED9は締固め作業中に路面の締固め度を表示する機能を奏し、締固め度の向上に伴って左側から順にLED9が点灯するようになっている。
【0015】
そして、以上のような評価装置1が振動ローラ車両2とランマ3とに任意に脱着可能となっている。そのために振動ローラ車両2のインストルメントパネル19及びランマ3の操作ハンドル26には、それぞれ同一構造の取付ベース10(取付手段)が設けられている。以下、各締固め機械の概要と取付ベース10による評価装置1の脱着について説明する。
【0016】
振動ローラ車両2は、オペレータが搭乗して運転操作する搭乗型の締固め機械であり、前部車体12及び後部車体13をアーティキュレート機構14により水平方向に屈曲可能に連結して構成されている。前部車体12には鉄輪からなる前部転圧輪15(振動体)が設けられ、後部車体13にはゴムタイヤからなる後部転圧輪16が設けられている。振動ローラ車両2に搭乗したオペレータは、ステアリング17や前後進レバー18等を操作し、それに応じて振動ローラ車両2は前部及び後部転圧輪15,16を回転させて走行しながら路面を締め固めると共に、アーティキュレート機構14により屈曲して適宜進路を変更する。図示はしないが前部転圧輪15には、偏心位置にウエイトを備えた起振体及びそれを回転駆動する油圧モータが内蔵されており、締固め作業中には、起振体の回転に伴って前部転圧輪15が加振されて路面の締固めが効率良く行われる。
【0017】
図3は振動ローラ車両の運転席に設けられたインストルメントパネル19及び取付ベース10を示す斜視図である。
インストルメントパネル19には、ステアリング17やメータ20、スイッチ21等の振動ローラ車両2の運転操作に必要な機器類が備えられると共に、インストルメントパネル19の左側には、四角状をなす取付ベース10が後方(オペレータ側)に向けて開口するように一体的に形成されている。評価装置1は取付ベース10内に嵌込み可能であり、取付ベース10の底面に設けられたマグネット22(取付手段)の磁力により取付ベース10内からの脱落を防止されると共に、評価装置1を把持して取付ベース10内から引抜き可能になっている。なお、評価装置1を取り付ける手段については、マグネット22に限るものではなく任意に変更可能であり、例えば蝶ネジ等により評価装置1を取り付けてもよい。
【0018】
一方、図1に示すようにランマ3は、本体フレーム25の操作ハンドル26をオペレータが把持して操作する非搭乗型の締固め機械であり、本体フレーム25から下方にガイディング部27を延設して下端にシュー28(振動体)を固定して構成されている。本体フレーム25内には原動機29が搭載され、本体フレーム25上に配置された燃料タンク30からの燃料供給により運転される。原動機29の回転は図示しないクランク機構により上下方向の往復運動に変換され、この往復運動がガイディング部27に内蔵された図示しないコイルスプリングを介してシュー28に伝達されて加振する。オペレータはランマ3の操作ハンドル26を把持し、アクセルレバーにより原動機29の回転を調整しながら路面上でランマ3を適宜移動させて締固めを行う。
【0019】
図4はランマ3の操作ハンドル26に設けられた取付ベース10を示す斜視図である。
操作ハンドル26はオペレータ側(図中の左方)に延設された四角枠状をなし、枠内の右側には、四角状をなして上方に向けて開口する取付ベース10が配設されている。重複する説明はしないが、上記した振動ローラ車両2と同じく、この取付ベース10内にマグネット22を利用して評価装置1を任意に脱着可能となっている。
【0020】
一方、評価装置1による締固め機械の機種の特定処理や締固め度の評価処理は、加速度センサ32からの検出情報に基づき行われる。このため、図2に示すように評価装置1には加速度センサ32が付属し、両者1,32は常に一緒に取り扱われる。また、振動ローラ車両2の前部転圧輪15及びランマ3のシュー28には、加速度センサ32を脱着可能に固定する機構、例えば加速度センサ32をボルトにより固定するための雌ネジ部等が設けられており、それぞれの締固め機械による締固め作業の際には、図1に示すように前部転圧輪15やシュー28に加速度センサ32が固定される。
【0021】
図2に示すように、評価装置1にはケーブル接続部1aが設けられ、このケーブル接続部1aには電力線33及び信号線34を介して加速度センサ32が脱着可能に接続されるようになっている。これにより評価装置1内のマイコン4と加速度センサ32とが有線接続され、評価装置1から電力線33を経た電力供給により加速度センサ32が作動して前部転圧輪15やシュー28の振動加速度を検出する。また、加速度センサ32から出力された検出信号は信号線34を経て評価装置1のマイコン4に入力される。振動ローラ車両2による締固め作業中には前部転圧輪15が回転しているため、電力線33及び信号線34はスリップリング等を介して加速度センサ32に接続される。
なお、評価装置1と加速度センサ32との接続は無線を利用してもよく、その場合には加速度センサ32に電力供給のためのバッテリを備え付け、その検出情報を電波や赤外線で評価装置1に送信すればよい。
【0022】
以上のように構成された評価装置1は、以下に述べるような形態で使用される。
この種の締固め機械のエンドユーザーは、例えば工事業者やレンタル業者であり、その何れでも振動ローラ車両2及びランマ3に対して単一の評価装置1(加速度センサ32も含む)を用意しておく。工事業者の場合には、実際に締固め機械を使用する社員や下請け業者等が、振動ローラ車両2とランマ3との間で評価装置1を流用すればよい。
【0023】
また、レンタル業者の場合には、例えば評価装置1が付属しないレンタルプランと評価装置1が付属するレンタルプランとを用意し、顧客に選択させる。評価装置1無しのレンタルプランの選択時には締固め機械のみを貸し出し、評価装置1有りのレンタルプランの選択時には締固め機械と共に評価装置1及び加速度センサ32を貸し出せばよい。
【0024】
実際の締固め作業の手順は以下のとおりである。まず、振動ローラ車両2やランマ3の取付ベース10に評価装置1を取り付けると共に、その前部転圧輪15やシュー28に加速度センサ32を固定して評価装置1に対して有線接続する。評価装置1の電源スイッチ6をON操作した上で、締固め作業の開始と共に評価スイッチ8を操作する。加速度センサ32により検出された前部転圧輪15やシュー28の振動加速度が評価装置1に入力され、マイコンにより路面の締固め度が逐次評価されて(締固め度評価手段)、その評価結果に応じてLED9が点灯表示される。
【0025】
このときのマイコン4による締固め度の評価原理については、特許文献1等に開示されているため、概略的な説明にとどめる。例えば振動ローラ車両2の場合、加速度センサ32により検出された振動加速度は、横軸を時間、縦軸を加速度とした図5に示すグラフにより表わされ、そのデータを周波数スペクトル解析して振動数域毎の分布として表したものが図6のグラフである。締固め作業の開始当初は振動波形に含まれる主成分は前部転圧輪15の基本振動数の約40Hzであるのに対し、締固め作業が進行するに従って路面の硬化により前部転圧輪15への反発力が強くなり、振動波形には基本振動数の他に2次や3次の振動数成分が次第に多く含まれるようになる。
【0026】
そこで、締固め作業の進行に伴って顕著に増加する次数の振動数成分を特定し、それらの振動数成分に基づき締固め度と相関する定量的な指標として、次式(1)に従って乱れ率が算出される。
【数1】
ここに、Fは前部転圧ローラの起振力、m1 は振動ローラ車両のフレーム質量、m2 は前部転圧ローラの質量である。式(1)中の「高調波」が、各次数の振動数成分の総和を表し、この式では3次までの振動数成分が加算されるようになっている。
【0027】
このようにして算出される乱れ率と評価装置1の点灯させるべきLED9の数との関係が予め定められており、マイコン4は乱れ率に対応する数のLED9を点灯させる。振動ローラ車両2の走行(路面上での位置変位)に伴ってマイコン4により逐次乱れ率が算出され、その乱れ率に対応してLED9の点灯状態が逐次変更される。よって、オペレータはLED9の点灯数に基づき、現在の地点が十分に締固められているか否かをリアルタイムで把握でき、不足部分の締固めを速やかに実施可能となる。
【0028】
一方、例えば振動ローラ車両2による締固め作業が終了し、次いでランマ3を使用する場合には、評価装置1を振動ローラ車両2の取付ベース10から取り外してランマ3の取付ベース10に取り付ける。同様に加速度センサ32についても振動ローラ車両2からランマ3に取り付けなおす。これにより上記と同様に、ランマ3による路面の締固め度が評価装置1上のLED9の点灯数として表示される。
【0029】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、式(1)に代入する基本振動数及び振動数成分の次数は個々の締固め機械によって相違する。例えばランマ3の場合の振動加速度及び周波数スペクトル解析後の振動数域の分布は、図7,8に示すとおりである。図5,6との比較から明らかなように、ランマ3の場合には振動ローラ車両2よりも基本振動数が約70Hz程度と高く、図8から判るように、より高次の振動数域まで式(1)に代入する必要がある。換言すれば、振動ローラ車両2とランマ3とでは適用すべき乱れ率の計算式の内容が相違する。
【0030】
そこで、本実施形態では、予め振動ローラ車両2及びランマ3の作動試験を実施して、それぞれの乱れ率を算出するための最適な計算式を導出し、それらの計算式を上記のようにマイコン4のメモリ4aに記憶させているのである。そして、締固め機械の使用に際しては、自動的に計測した基本振動数に基づき機種を特定し、それに対応した計算式を選択して締固め度の評価に適用しており、以下、そのためマイコン4が実行する処理を説明する。
【0031】
図9はマイコン4が実行する機種特定ルーチンを示すフローチャートであり、評価装置1の機種特定スイッチ7が操作されると当該ルーチンがマイコン4により実行される。
例えば振動ローラ車両2を使用する場合、オペレータは機種特定スイッチ7を操作し、締固め作業時と同様に起振体を作動させながら振動ローラ車両2を走行させる。なお、車両2を停車させたまま起振体を作動させて前部転圧輪15を加振してもよい。ランマ3の場合も同様であり、実際に締固め作業を実施してもよいし、原動機29を運転してシュー28を加振するだけでもよい。
【0032】
マイコン4は、機種特定スイッチ7が操作されると図9のルーチンを開始し、ステップS1で所定間隔(例えば10msec毎)に加速度センサ32からの振動加速度を読み込み、自己のメモリ4aに逐次保存する。この処理を所定時間に亘って繰り返すとステップS2に移行し、保存した振動加速度のデータに基づき次式(2)に従って基本振動数を算出する(基本振動数算出手段)。
【数2】
ここに、aは振動加速度の波形から求めた最大加速度、Aは同じく波形の最大振幅である。
【0033】
続くステップS3では、算出した基本振動数に基づき締固め機械の機種を特定する。即ち、算出した基本振動数をメモリ4aに記憶されている各締固め機械の基本振動数と比較し、基本振動数が一致している締固め機械に評価装置1が取り付けられているものと見なす(機種特定手段)。
【0034】
そして、ステップS3で振動ローラ車両2と特定した場合には、ステップS4で振動ローラ車両2に対応する計算式をメモリ4aから読み出し、ステップS3でランマ3と特定した場合には、ステップS5でランマ3に対応する計算式をメモリ4aから読み出した後にルーチンを終了する。
【0035】
従って、その後の締固め作業では、読み出した計算式に基づき上記の手順で乱れ率が算出され、LED9により締固め度の表示がなされる。
なお、機種特定スイッチ7を省略して、評価スイッチ8が操作されたときに、まず機種の特定処理を行い、その後に選択した計算式に基づき締固め度の評価処理を開始してもよい。
【0036】
以上のように本実施形態の締固め機械の評価装置1によれば、振動ローラ車両2とランマ3との間で単一の評価装置1を流用しているため、これらの振動ローラ車両2及びランマ3を購入する際の初期費用を最小限に抑制することができる。そして、締固め機械を使用する際には、基本振動数を自動的に計測して現在評価装置1が取り付けられている締固め機械を特定し、それに対応する計算式をメモリ4aから読み出して乱れ率の算出処理に適用している。よって、使用の際の煩雑な入力作業が一切不要になると共に誤入力の可能性もなくなるため、常に適切な締固め度の評価に基づき良好な路面品質を実現することができる。
【0037】
また、振動ローラ車両2の前部転圧輪15やランマ3のシュー28に加速度センサ32を任意に固定可能としているため、評価装置1のみならず加速度センサ32についても振動ローラ車両2とランマ3との間で流用可能となる。よって、単一の加速度センサ32のみで振動ローラ車両2とランマ3とを稼働でき、その初期費用を一層低減することができる。
【0038】
また、このように加速度センサ32を流用することなく、予め振動ローラ車両2の前部転圧輪15とランマ3のシュー28にそれぞれ加速度センサ32を設けてもよい。この場合には、前部転圧輪15やシュー28に加速度センサ32を固定する手間が省けるという別の効果が得られ、締固め機械に評価装置1を取り付けた際には、加速度センサ32からの電力線33及び信号線34を評価装置1のケーブル接続部1aに接続するだけでよくなる。
【0039】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、振動ローラ車両2とランマ3との間で評価装置1を流用したが、これらに限定されるものではなく、振動体を加振して路面を締め固める締固め機械であれば任意に変更可能である。例えば搭乗型のマカダムローラ、或いは非搭乗型のプレートコンパクタやハンドガイドローラに適用し、これらの締固め機械の間で評価装置1を流用するようにしてもよい。
また上記実施形態では、評価装置1に設けたLED9の点灯状態により乱れ率を表示したが、これに限るものではない。例えば、締固め作業の繰り返しにより良好な締固め度に対応する乱れ率に達した時点で、ライトを点灯させてオペレータに報知するようにしてもよい。また、このような視覚的な報知に代えて音を利用してもよく、例えば乱れ率を数値として読み上げたり、或いは乱れ率の変化に応じてブザーから発する報知音の音階を低音から高音に段階的に切り換えたり、或いは断続音の周期を早めたりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 評価装置、2 振動ローラ車両(締固め機械)、3 ランマ(締固め機械)、4 マイコン(基本振動数算出手段、機種特定手段、締固め度評価手段)、4a メモリ(記憶手段)、10 取付ベース(取付手段)、15 前部転圧輪(振動体)、22 マグネット(取付手段)、28 シュー(振動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9