特許第6297973号(P6297973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニヴェルシテ ドゥ ボルドー アンの特許一覧 ▶ アルケマ フランスの特許一覧 ▶ セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドーの特許一覧

特許6297973太陽電池の活性層または電極のための組成物
<>
  • 特許6297973-太陽電池の活性層または電極のための組成物 図000005
  • 特許6297973-太陽電池の活性層または電極のための組成物 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6297973
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】太陽電池の活性層または電極のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/00 20060101AFI20180312BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180312BHJP
   C08F 261/04 20060101ALI20180312BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20180312BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C08L51/00
   C08K3/04
   C08F261/04
   C08F265/06
   C08F279/02
   H01L31/04 150
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-508857(P2014-508857)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-513738(P2014-513738A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】FR2012050922
(87)【国際公開番号】WO2012150404
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】1153720
(32)【優先日】2011年5月2日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506256242
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ ボルドー アン
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】505041416
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】モニュエ, セバスチャン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ブロション, シリル
(72)【発明者】
【氏名】ハジオアノウ, ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】クロテ, エリク
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァロ, クリストフ
【審査官】 加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−262993(JP,A)
【文献】 特開2000−109556(JP,A)
【文献】 特開2008−166675(JP,A)
【文献】 特開2008−120999(JP,A)
【文献】 特開2007−77258(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0169451(US,A1)
【文献】 特開2004−79437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/00− 51/10
C08F 255/00−279/06
C08K 3/00− 13/08
H01L 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状幹(1)と、
化学結合を介して前記幹に結合し、それぞれが共役ポリマーからなる少なくとも2つのグラフト(2)と
からなるグラフト化コポリマーを含有する組成物において、
フラーレンおよび共役ポリマー、または
カーボンナノチューブおよび/またはグラフェン
を更に含有することを特徴とし、
線状幹(1)が、
少なくとも1つの非芳香族ビニルポリマーまたは1つの不飽和ポリオレフィンを含む線状幹(1)であって、ポリジエンからなる不飽和ポリオレフィンを含む線状幹(1)、
アクリルポリマーまたはポリアクリレートからなる線状幹(1)、または
ポリ(ビニルアルコール)からなる線状幹(1)から選択される、
組成物。
【請求項2】
前記2つのグラフト(2)が同じモル質量を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラフト(2)がポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記幹が、ポリアルキルアクリレートであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記幹が、それに両親媒性特性を付与するようにヒドロキシル官能基を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
太陽電池モジュールの有機太陽電池における、フラーレンおよび共役ポリマーを含む場合の請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項7】
電気エネルギーを発生させることができる複数の有機太陽電池からなる太陽電池(10)を含む封止材(22)を形成する少なくとも1つの層と、バックシートを形成する層とを呈し、前記太陽電池が、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物を含む、太陽電池モジュール(20)。
【請求項8】
電極における、カーボンナノチューブおよび/またはグラフェンを含む場合の請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
共役ポリマーがω−チオール終端である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物の共役ポリマーの合成方法であって、
事前に不活性雰囲気下に置いた容器内における量A1のω−アリル終端P3HTの複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
量A2の非極性芳香族溶媒の添加であって、A1/A2比が15から50の間である、添加と、
量A3のアルカンジチオールの添加であって、A3がA2未満である、添加と、
量A4の過酸化物またはジアゾ型のラジカル発生剤の添加であって、A4がA2未満である、添加と、
使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間の温度における、混合物の維持と、
A4において使用されているものと同様であってもなくてもよい任意選択の量A5のラジカル発生剤の添加と、
A5が非ゼロである事例において、使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間の温度における、混合物の任意選択の維持と
の逐次的段階を含む、方法。
【請求項10】
グラフト化コポリマーがポリオレフィン−g−P3HTである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物のグラフト化ポリマーの合成方法であって、
不活性雰囲気下に置いた容器内における量A1のω−チオール終端P3HTの複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
量A2の非極性芳香族溶媒の添加であって、A1/A2比が5から30の間である添加と、
25℃超における、少なくとも30分間にわたる混合物の維持と、
量A3の不飽和ポリオレフィンの添加であって、A3がA1からA2の間である、添加と、
量A4の過酸化物またはジアゾ型のラジカル発生剤の添加であって、A4がA2未満である、添加と、
使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間の温度における、混合物の維持と、
A4において使用されているものと同様であってもなくてもよい任意選択の量A5のラジカル発生剤の添加と、
A5が非ゼロである事例において、使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間の温度における、混合物の任意選択の維持と
の逐次的段階を含む、方法。
【請求項11】
グラフト化ポリマーがω−アクリレート終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物のグラフト化ポリマーの合成方法であって、
事前に不活性雰囲気下に置いた容器内における量A1のω−ヒドロキシル終端P3HTの複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
量A2の極性溶媒の添加であって、A1/A2比が2から10の間である、添加と、
量A3の塩基の添加であって、A3がA2未満である、添加と、
アクリレートクロリドの添加と
の逐次的段階を含む、方法。
【請求項12】
溶媒蒸発による、または冷メタノールからの沈殿、続いて生成物の濾過/乾燥による、前記生成物の単離の最終段階を含むことを特徴とする、請求項9、10および11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、この用途に最適な特性を呈する太陽電池モジュールの有機太陽電池のための組成物、また、ごくわずかに異なる(一成分未満)電極用の同じ組成物である。本発明は、太陽電池モジュールの有機太陽電池におけるそのような組成物の使用、およびそのような太陽電池を含む太陽電池モジュール、および電極におけるその使用にも関する。
【0002】
下記において、本発明による組成物は、太陽電池の分野に関わる技術的問題の観点から提示されるが、特に、その少なくとも1つの技術的問題の解決策(電極の製造において使用され得るグラフェンまたはカーボンナノチューブの分散)の観点から、この組成物の特に重要な多数の利点により、他の分野において存在している課題の技術的解決策として後者を想定できるようになることが、本出願人企業には明らかになっている。
【背景技術】
【0003】
化石燃料が発する温室効果ガスに関係する地球温暖化は、例えば太陽電池モジュール等、その動作中にそのようなガスを放出しない代替的なエネルギー解決策の開発につながった。太陽電池モジュールは「太陽電池」を含み、この電池は、光エネルギーを電気に変換することができる。
【0004】
多数の種類の太陽光発電パネル構造が存在する。
【0005】
現在は、「無機」太陽光発電パネル、つまり、半導体、概してシリコンの板で動作して光子を捕捉するための太陽電池を形成するパネルが主に使用されている。例として、太陽電池は、各個々のセルが太陽光発電センサの上(上部コレクタ)および下(下部コレクタ)に置かれた電子コレクタと接触している太陽光発電センサを含む、複数の個々のセルを慣例的に含む。太陽電池は光源下に置かれると継続的な電流を搬送し、これを電池の端子で回収することができる。
【0006】
無機太陽電池に加えて、有機型の太陽電池、つまりポリマーで構成される太陽電池も公知である。無機太陽電池の例に続いて、これらの有機太陽電池は光子を吸収し、束縛電子−正孔対(励起子)が発生し、光電流に寄与する。
【0007】
有機太陽電池はより安価であり、リサイクルすることができ、柔軟性のある製品または種々の立体構造(例えば建築用タイル)に拡大適用して、特に多機能システムへの組み込みにより、従来の技術ではアクセスできない市場にアクセスできるようにすることができる。それにもかかわらず、この解決策は今まで、そのような太陽電池の効率が5%未満にとどまっていることから、極めて低い全般的有効性レベルに悩まされてきた。さらに、現在、太陽電池の寿命は極めて限定されている。
【0008】
技術水準
有機太陽電池の並の性能および並の寿命は、現在困難を提示している多数の物理化学的パラメータに直接関わる。
【0009】
有機太陽電池は、電子供与材料および電子受容材料で構成される。第一の技術的問題は、電子供与および電子受容材料の混合の形態制御の観点からもたらされる。
【0010】
現在、この困難を克服するために、戦略は、所望の形態を取得するようにアニーリング条件を変動させることにあるが、例えば米国特許出願公開第2009/0229667号明細書から、形態を移動させることができるが安定化させない可塑剤として作用する、ハロゲン化アルキルまたはアルカンジチオール等の添加剤を添加することも公知である。それにもかかわらず、安定構造を取得することが所望されるならば、界面活性剤を導入することが必要である。特に、共役配列を有するジブロックもしくはトリブロックコポリマー、またはいかなる共役配列も含まないジブロックコポリマーが存在することが公知である。米国特許出願公開第2008/0017244号明細書も公知であるが、ここでブロックコポリマーは、電荷の輸送体(ドナー/アクセプタ)としておよび界面活性剤としても作用するが、前記第一の技術的問題を解決するものではない。
【0011】
これらの既存の解決策はいずれも、電子供与および電子受容材料の混合の形態の制御または安定化に関して極めて満足なものとはならない。
【0012】
第二の技術的問題は、活性層のレベルかまたは電極(半導体ポリマー、グラフェン、カーボンナノチューブ等)のレベルかにかかわらず、インクの調製用の液体媒質中における材料の分散の制御および安定化にある。これは、有機太陽電池の調製が、本質的に湿式経路によって、つまりインクを使用することによって行われるからである。電極については、有機発光ダイオード(OLED)等の他のタイプのデバイスにも適用可能である。
【0013】
公知の解決策は、現在、界面活性剤(イオン性または中性)等の添加剤、またはポリ(ビニルアルコール)等の親水性ポリマーを添加することにある。これらの添加剤は、特に存在する充填剤の凝固を引き起こす傾向を有することが当業者に公知であるため、完全に満足というわけではない。
【0014】
最後の問題は、慣例的に少なくとも1つの金属電極を処分する有機太陽電池における有機/無機界面の制御および安定化にある。
【0015】
現在使用されている解決策は、別の半導体ポリマーまたは自己組織化単分子層(SAM)等、前記電極に付着/接着接合している中間層の添加からなる。ここでも、これらの解決策は、問題を部分的に解決することは可能であるが、完全に満足というわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0229667号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0017244号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、特定の種類のグラフト化コポリマーと、前記コポリマーとの相乗効果をもたらす1つまたは複数の特定物質との組合せを含む、有機太陽電池の活性層および/または電極のための組成物を提供することによって、先行技術の太陽電池モジュールおよび電極の有機太陽電池の問題を解決することを意図したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本出願人企業により、種々の実験および取り扱い作業の後、特定の構造が、
− 性能の観点からであるか安定性の観点からであるかにかかわらず、有機太陽/ソーラー電池中における電子供与材料と電子受容材料との混合物の相溶化を改良すること、
− インクの品質(特にそれらの経時的な安定性)、特に電極の製造に使用され得るカーボンナノチューブおよびグラフェンの分散を改良すること、
− 金属/有機材料界面の物理化学的問題を防止すること
を可能にする最適な結果を単独で呈し得ることが見出された。
【0019】
概して、これらの技術的問題が解決されると、本発明の組成物を組み込んだ有機太陽電池または電極は、先行技術のものよりもはるかに大きいエネルギー効率を呈する。
【0020】
故に、本発明は、
− 少なくとも1つの非芳香族ビニルポリマーまたは1つの不飽和ポリオレフィンを含む線状幹(linear trunk)と、
− 化学結合を介して前記幹に結合している、それぞれが共役ポリマーからなる少なくとも2つのグラフトと
からなるグラフト化コポリマーを含み、
− フラーレンおよび共役ポリマー、または
− カーボンナノチューブおよび/またはグラフェン
を追加で含むことを特徴とする、組成物に関する。
【0021】
故に、本発明による組成物は、代替案を呈する。
【0022】
この組成物が太陽電池の全部または一部を形成するために使用されることを意図したものである事例において、前記コポリマーは、フラーレンおよび共役ポリマーと組み合わせられる。最後の2つの成分は、特に組成物の透明性ならびにその熱的および機械的抵抗性を包含する、太陽光発電分野に特有の特徴に対応するために必要である。
【0023】
さらに、用語「フラーレン」は、球、楕円体、チューブ(ナノチューブとして公知である)またはリングの形状を想起する任意の幾何学的形状をとることができる、炭素だけで構成される分子を意味すると理解されることに留意すべきである。
【0024】
この組成物が電極として使用されることを意図したものである事例において、共役ポリマーはもはや必要なく、カーボンナノチューブおよび/またはグラフェンは、それらの良好な電気伝導性により、透明性特性を要することなく所望される。
【0025】
両方の代替案において、数多くの実験の後、前記コポリマーが、前記フラーレンおよび前記共役ポリマーを用いて、または前記カーボンナノチューブおよび/もしくはグラフェンを用いて、高度に有利な結果、特に上記で言及したものを取得することを可能にすると実証されている。
【0026】
本発明の他の有利な特徴をこの後に明記する:
− 有利には、2つのグラフトは同じモル質量を有する;
− 好ましくは、前記グラフトはポリ(3−ヘキシルチオフェン)からなる;
− 有利には、不飽和ポリオレフィン性質の線状幹は、ポリジエン、好ましくはポリイソプレンまたはポリブタジエン、優先的にはポリイソプレンからなる;
− 代替的解決策によれば、不飽和ポリオレフィン性質の線状幹は、アクリルポリマーまたはポリアクリレートからなる;
− 前記幹は、有利には、ポリアルキルアクリレート、好ましくはポリ(n−ブチルアクリレート)からなってよい;
− 好ましくは、幹は、それに両親媒性特性を付与するようにヒドロキシル官能基を有する;
− 1つの可能性によれば、不飽和ポリオレフィン性質の線状幹はポリ(ビニルアルコール)からなる。
【0027】
本発明は、太陽電池モジュールの有機太陽電池における、上述した組成物の使用に関する。
【0028】
加えて、本発明は、電気エネルギーを発生させることができる複数の有機太陽電池からなる太陽電池を含む封止材を形成する少なくとも1つの層と、バックシートを形成する層とを呈し、前記太陽電池が、上述した通りの組成物を含む、太陽電池モジュールにも関する。
【0029】
最後に、本発明は、本発明による組成物またはその製造に必要な中間成分/材料の新規合成のための方法に関する。
【0030】
故に、本発明は、共役ポリマー、好ましくはω−チオール終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の合成方法であって、
− 事前に不活性雰囲気下に置いた容器内の量A1のω−アリル終端P3HTの、例えば複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
− 量A2の非極性芳香族溶媒、好ましくはトルエンの、A1/A2比が15から50の間である添加と、
− 量A3のアルカンジチオール、好ましくは1,3−プロパンジチオールの、A3がA2未満である添加と、
− 量A4の、好ましくはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の過酸化物またはジアゾ型のラジカル発生剤の、A4がA2未満である添加と、
− 使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間、典型的には40℃から130℃の間の温度における、AIBNの使用の好ましい事例では最低1時間にわたる、混合物の維持と、
− 任意選択の量A5の、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のA4において使用されているものと同様であってもなくてもよいラジカル発生剤の、A5が好ましくはA4と等しいがA4の0から10倍の間となり得る添加と、
− A5が非ゼロである事例において、使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間、典型的には40℃から130℃の間の温度における、AIBNの使用の好ましい事例では最低1時間にわたる、混合物の任意選択の維持と
の逐次的段階を含む方法に関する。
【0031】
本発明は、グラフト化コポリマーポリオレフィン−g−P3HT、好ましくはPI−g−P3HTの合成方法であって、
− 不活性雰囲気下に置いた容器内の量A1のω−チオール終端P3HTの、例えば複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
− 量A2の非極性芳香族溶媒、好ましくはトルエンの、A1/A2比が5から30の間である添加と、
− 25℃超、好ましくは40℃超における、少なくとも30分間にわたる混合物の維持と、
− 量A3の、ポリブタジエンまたは好ましくはポリ(イソプレン)等の不飽和ポリオレフィンの、A3がA1からA2の間である添加と、
− 量A4の、好ましくはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の過酸化物またはジアゾ型のラジカル発生剤の、A4がA2未満である添加と、
− 使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間、典型的には40℃から130℃の間の温度における、AIBNの使用の好ましい事例では最低1時間にわたる、混合物の維持と、
− 任意選択の量A5の、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のA4において使用されているものと同様であってもなくてもよいラジカル発生剤の、A5が好ましくはA4と等しいがA4の0から10倍の間となり得る添加と、
− A5が非ゼロである事例において、使用されるラジカル発生システムに応じて、0℃から200℃の間、典型的には40℃から130℃の間の温度における、AIBNの使用の好ましい事例では最低1時間にわたる、混合物の任意選択の維持と
の逐次的段階を含む方法にも関する。
【0032】
本発明は、ω−アクリレート終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)−グラフト化コポリマーの合成方法であって、
− 事前に不活性雰囲気下に置いた容器内の量A1のω−ヒドロキシル終端P3HTの、例えば複数の真空/分子状窒素循環による処理と、
− 量A2の極性溶媒、好ましくはテトラヒドロフランの、A1/A2比が2から10の間である添加と、
− 量A3の塩基、好ましくは第三級アミン、優先的にはトリエチルアミンの、A3がA2未満である添加と、
− 酸塩化物、好ましくは(メタ)アクリロイルクロリド、好ましくはアクリロイルクロリドの添加と
の逐次的段階を含む方法にも関する。
【0033】
有利には、上記で対象としたすべての方法は、例えば、溶媒蒸発による、または好ましくは、冷メタノールからの沈殿、続いて生成物の濾過/乾燥によるもの等、当業者に公知の技術による生成物の単離という最終段階を含む。
【0034】
次の記述は、例証としてのみ、かつ添付の図を参照することによる限定なく記されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるグラフト化コポリマーの全体的な外観を呈する図である。
図2】PVA−g−P3HTの存在下での水中におけるMWCNTの分散の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明による組成物は、その一般的定義において、
− 少なくとも1つの非芳香族ビニルポリマーまたは1つの不飽和ポリオレフィンを含む線状幹1と、
− 化学結合を介して前記幹に結合している、それぞれが共役ポリマーからなる少なくとも2つのグラフト2と
からなるグラフト化コポリマーを含む。
【0037】
グラフト化コポリマーの線状幹1については、モノマーとしてα−オレフィンを含むポリマーである。
【0038】
2から30個の炭素原子を有するα−オレフィンが好ましい。
【0039】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−トリアコンテンを挙げることができる。
【0040】
このポリオレフィンは、ポリマー鎖中において1つだけのα−オレフィンが重合される場合、ホモポリマーであってよい。例としては、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)を挙げることができる。このポリオレフィンは、ポリイソプレンまたはポリブタジエン等のポリジエンの水素化によって取得することもできる。
【0041】
このポリオレフィンは、ポリマー鎖中において少なくとも2つのコモノマーが共重合される場合、「第一のコモノマー」と称される2つのコモノマーの一方がα−オレフィンであり、「第二のコモノマー」と称される他方のコモノマーが第一のモノマーと重合することができるモノマーである、コポリマーであってもよい。
【0042】
第二のコモノマーとしては、以下のものを挙げることができる:
・ 既に言及したα−オレフィンの1つであり、これは第一のα−オレフィンコモノマーとは異なる
・ 例えば、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ブタジエンまたはイソプレン等のジエン
・ 例えば、アルキル(メタ)アクリレートという用語にまとめられるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート等の不飽和カルボン酸のエステル。これらの(メタ)アクリレートのアルキル鎖は、最大30個の炭素原子を有し得る。アルキル鎖としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシルまたはノナコシルを挙げることができる。不飽和カルボン酸のエステルとしては、メチル、エチルおよびブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
・ カルボン酸ビニルエステル。カルボン酸ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルまたはマレイン酸ビニルを挙げることができる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが好ましい。
【0043】
ポリオレフィン幹中において異なる「第二のコモノマー」が共重合されたとしても、本発明の範囲からは逸脱しないであろう。
【0044】
概して、線状幹1は、後述する通りの1つの分子からなり得る:
[式中、Rは、芳香族分子でも芳香族分子を含む分枝でもなく、かつ、nは、2以上の整数である]。
【0045】
線状幹1の生成は、当業者に完全に公知である。
【0046】
特に、エチレン/α−オレフィンコポリマーは、慣例的に、例えばチーグラー・ナッタ、メタロセンまたは有機金属重合によって等、当業者に公知のプロセスによって取得される。
【0047】
モノマーの種類および比率に応じて、ポリオレフィン幹は、半結晶性または非晶質となり得る。非晶質ポリオレフィンの事例においては、ガラス転移温度のみが観察されるのに対し、半結晶性ポリオレフィンの事例においては、ガラス転移温度および融点(必ずこちらが高い)が観察される。ガラス転移温度、場合により融点およびポリオレフィン幹の粘度についても所望の値を容易に取得することができるためには、当業者が、ポリオレフィン幹のモノマー比および分子量を選択すれば十分であろう。
【0048】
線状幹1にグラフト化されることを意図したグラフト2について、これらは共役ポリマーである。語句「共役ポリマー」は、「バンド構造」と称される特徴的な電子構造を有する共役ポリマーを意味すると理解される。これらのポリマーは、主鎖上における二重結合と単結合との交互の存在によって表される。
【0049】
当業者には公知であるように、共役ポリマーにドープすることは、概して、後者に電子を与える(還元する)こと、または後者から電子を抽出する(酸化させる)ことにある。このメカニズムは、分子の構造(幾何学)の変更、およびそれによりその電子物性、すなわちその伝導性の変更をもたらす。
【0050】
共役ポリマーの非限定的な例としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンおよびポリアニリンを挙げることができるが、より一般的には、共役ポリマーは3つの主なファミリー:
− ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、例えばポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)またはポリ[2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MDMO−PPV);
− チオフェンの重合によって生じ、硫黄複素環であるポリチオフェン(PT)、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT);
− ポリフルオレン、例えばポリ[2,7−(9,9−ジオクチルフルオレン)−alt−5,5−(48,78−ジ−2−チエニル−28,18,38−ベンゾチアジアゾール)](PFDTBT)
をまとめるものである。
【0051】
本発明による組成物に関与するために選ばれ得るすべての共役ポリマーの中でも、本出願人企業は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)を好む。
【0052】
グラフト2は、当業者に公知の従来技術によって線状幹1に結合している。この観点から、グラフト2の端部と前記線状幹1上の反応性官能基との間の従来の化学反応による、線状幹1への添加の技術について言及するが、国際公開第1995/029199号パンフレットも参照してよい。
【0053】
本発明による定義に対応するすべてのグラフト化コポリマーの中でも、本出願人企業は、3つの好ましい成分、すなわち:
− ポリ(3−ヘキシルチオフェン)がグラフト化されたポリイソプレン;
− ポリ(3−ヘキシルチオフェン)がグラフト化されたアクリレート(好ましくはポリブチルアクリレート);
− ポリ(3−ヘキシルチオフェン)がグラフト化されたポリ(ビニルアルコール)
を同定した。
【0054】
これら3つのグラフト化コポリマーを取得するための、当業者に公知の生成技術に加えて、本出願人企業は、特に取得される生成物の純度および生産コスト削減の観点から、特定の利点を呈することができる新規方法を開発した。
【0055】
P3HTがグラフト化されたポリイソプレンの合成:
まず第一に、ω−チオール終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を合成することが適切である:
質量M=1700g.mol−1(モル当たりグラム)を有する140mg(ミリグラム)のω−アリル終端P3HT(0.08mmol)を、分子状窒素/真空出口を備えた二口丸底フラスコに導入し、脱気/蒸留トルエンのビュレットによって載置しなくてはならない。その後、3回の真空/分子状窒素循環を行わなくてはならず、次いで5mlのトルエンを添加しなくてはならない。完全溶解が行われるために、混合物を45℃(セ氏)で2時間撹拌させておかなくてはならない。次いで、溶液を周囲温度に戻し、その後1g(グラム)(0.9ml)の1,3−プロパンジチオール(0.92mmol)を添加する。次いで、混合物を5分間撹拌させておかなくてはならない。次いで、3mgの再結晶アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.02mmol)を導入し、反応媒質を80℃に置くことが必要である。3時間30分間反応させた後、3mgのAIBNを再度添加することが必要である。次いで、混合物を80℃で16時間撹拌させておかなくてはならない。反応の終わりに、冷メタノール(50ml)からの沈殿を行う。生成物を濾過除去し、真空下、周囲温度で24時間乾燥させる。
【0056】
グラフト化コポリマーPI−g−P3HTの合成は、次の通りに行われる:
質量M=1700g.mol−1(0.07mmol)を持つ120mgのω−チオール終端P3HTを、分子状窒素/真空出口を備えた二口丸底フラスコに導入し、脱気/蒸留トルエンのビュレットによって載置する。3回の真空/分子状窒素循環を行わなくてはならず、次いで8mlのトルエンを添加しなくてはならない。その後、完全溶解が行われるために、混合物を60℃で1時間撹拌させておかなくてはならない。混合物を周囲温度に戻し、次いで、質量M=2650g.mol−1を有する40mgのポリ(イソプレン)(0.015mmol、16%の1,2ユニットおよび67%の3,4ユニット)を添加する。混合物を1時間撹拌させておかなくてはならず、次いでその後、3mgの再結晶AIBN(0.02mmol)を導入しなくてはならず、反応媒質を80℃に置かなくてはならない。3h30(3時間と30分間)反応させた後、3mgのAIBNを再度添加する。次いで、混合物を80℃で16時間撹拌させておかなくてはならない。反応の終わりに、冷メタノール(80ml)からの沈殿を行う。最後に、生成物を濾過除去し、真空下、周囲温度で24時間乾燥させなくてはならない。
【0057】
P3HTがグラフト化されたアクリレートの合成:
ω−アクリレート終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の合成は、次の通りに行われる:
質量M=2000g.mol−1を有する280mgのω−ヒドロキシル終端P3HT(0.14mmol)を、分子状窒素流下、真空下の塗装バーナーで事前に乾燥させた、分子状窒素/真空出口付きの二口丸底フラスコに導入し、新たに蒸留したテトラヒドロフラン(THF)のビュレットによって載置しなくてはならない。その後、3回の真空/分子状窒素循環を行い、次いで丸底フラスコを真空下に放置し、50mlのTHFを添加することが必要である。最後に、ポリマーの完全溶解が行われるために、混合物を40℃で少なくとも30分間撹拌させておかなくてはならない。この段階の後、混合物を周囲温度に戻さなくてはならず、次いで、2.2mlのトリエチルアミン(15.5mmol)を、分子状窒素流下、パージしたシリンジを使用して添加しなくてはならない。その後、反応媒質を0℃に冷却するために、15分間撹拌させておくことが必要である。次いで、最後に、パージしたシリンジを介してアクリロイルクロリドを滴下添加しなくてはならない。次いで、反応媒質を周囲温度に戻しながら24時間撹拌させておくことが必要である。反応の終わりに、冷メタノール(500ml)からポリマーを沈殿させる。終わりに、最終段階として、生成物を濾過し、次いで真空下、周囲温度で48時間乾燥させることが必要である。
【0058】
その後、グラフト化コポリマーPBA−g−P3HTの合成は、次の通りに行われる:
質量M=2000g.mol−1を有する100mgのω−アクリレート終端P3HT(0.05mmol)および4mgのアルコキシアミン誘導体(0.01mmol)(アルケマ(Arkema)製ブロックビルダー(Blocbuilder)(登録商標))を、分子状窒素/真空出口を備えたシュレンクチューブに導入する。その後、いかに微量の分子状酸素も除去するための3回の真空/分子状窒素循環を行うことが必要であり、これは、その後0.5mlの脱気トルエンを導入するためである。その後、完全溶解が行われるために、混合物を45℃で30分間撹拌させておかなくてはならない。その後、周囲温度に戻し、事前に蒸留および脱気した0.05mlのn−ブチルアクリレート(0.35mmol)を添加することが必要である。混合物を、周囲温度で5分間撹拌させておかなくてはならない。重合は、115℃の油浴にシュレンクチューブを直接浸すことによって開始される。5時間撹拌させておき、次いで、16時間の終わりに同じ量を再度添加するために0.05mlのn−ブチルアクリレートを再度導入することが望ましい。24時間撹拌させておくことが必要である。反応の終わりに、重合を停止させるために、操作者はシュレンクチューブを液体窒素に浸し、冷メタノール(5ml)から生成物を沈殿させ、濾過し、真空下、50℃で24時間乾燥させる。残りのマクロモノマーを、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)によって分離する。その後、ジクロロメタン/酢酸エチル(85/15)混合物によりコポリマーを回収する。生成物を冷メタノールから沈殿させ、濾過し、真空下、50℃で24時間乾燥させなくてはならない。
【0059】
P3HTがグラフト化されたポリ(ビニルアルコール)の合成:
ω−カルボン酸終端ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の合成は、次の通りに行われる:
質量M=1700g.mol−1を持つ140mgのω−アリル終端P3HT(0.08mmol)を、分子状窒素/真空出口を備えた二口丸底フラスコに導入し、脱気/蒸留トルエンのビュレットによって載置しなくてはならない。その後、3回の真空/分子状窒素循環を行い、次いで、分子状窒素流下、5mlのトルエンを添加することが必要である。完全溶解が行われるために、混合物を45℃で2時間撹拌させておかなくてはならない。周囲温度に戻し、次いで、1g(0.8ml)のメルカプトプロピオン酸(0.94mmol)を添加することが必要である。好ましくは、その後、5分間撹拌させておくことが望ましい。その後、3mgの再結晶AIBN(0.02mmol)を導入し、反応媒質を80℃に置くことが必要である。3時間30分間反応させた後、3mgのAIBNを再度添加することが必要である。次いで、80℃で16時間撹拌させておくことが望ましい。反応の終わりに、冷メタノール(50ml)から混合物を沈殿させる。最後に、生成物を濾過除去し、真空下、周囲温度で24時間乾燥させる。
【0060】
グラフト化コポリマーPVA−g−P3HTの合成は、次の通りに行われる:
平均質量M=18000g.mol−1を持つ100mgの市販のポリ(酢酸ビニル)(PVA)(0.01mmol)を、分子状窒素/真空出口を備えた一口丸底フラスコに導入し、真空下、塗装バーナーで乾燥させ、3回の真空/分子状窒素循環を行う。その後、分子状窒素流下、パージしたシリンジを使用して9mlの蒸留ジメチルスルホキシドを添加し、ポリマーの完全溶解が行われるために、60℃で加熱することが必要である。その後、60℃で2時間撹拌させておき、次いで周囲温度に戻すことが望ましい。質量M=1700g.mol−1を持つ90mgのω−カルボン酸終端P3HT(0.05mmol)を、分子状窒素/真空出口を備えたシュレンクチューブに導入し、真空下、塗装バーナーで乾燥させる。3回の真空/分子状窒素循環を行い、次いで、3mlの蒸留ジクロロメタンを添加する。次いで、混合物を周囲温度で2時間撹拌させておく。その後、この第二の溶液を、パージしたシリンジを使用して第一の溶液に滴下添加しなくてはならず、反応混合物を40℃で30分間撹拌させておく。次いで、8mgの4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム4−トルエンスルホネート(0.03mmol)を導入し、40℃のままで30分間撹拌させておくことが必要である。最後に、85mgのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.07mmol)を添加し、40℃で72時間撹拌させておくことが必要である。反応の終わりに、ジクロロメタン(100ml)からコポリマーPVA−g−P3HTを沈殿させ、濾過し、真空下、60℃で24時間乾燥させることが必要である。
【0061】
最後に、本発明による組成物は、有利には、特に有機太陽電池での用途において、数千ユニットの原子質量を超えないそれらの低分子量を特徴とする小分子を組み込むことに留意すべきである。共役ポリマーに倣って、これらの小分子は電子アクセプタまたはドナーであり、後者が電荷の輸送も容易にすること、および共役ポリマーと励起子を形成し得ることを可能にする。
【0062】
これらの小分子は、概して、他の成分(ポリマー)を含む混合物への溶解によって組成物に添加される。
【0063】
そのようなものとして:
− 60個の炭素原子で形成された化合物であり、サッカーボールのものに近い球形状を有する、C60フラーレン。用語フラーレンは、球、楕円体、チューブ(ナノチューブとして公知である)またはリングを想起する幾何学的形状をとり得る炭素だけで構成される分子を表示するものであることが上記で明記されたにもかかわらず、この分子は、本発明による組成物における添加剤として好ましい;
− 可溶性にするために変更された化学構造を有するフラーレン誘導体である、メチル[6,6]−フェニル−C61−ブタノエート(PCBM);
− カーボンナノチューブおよびグラフェン;
− 化学式C2012の炭化水素の芳香核、例えばN,N’−ジメチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI)(2個の窒素原子、2個の酸素原子および2個のメチル基CHを持つペリレン誘導体)、またはペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物(PTCDA)(6個の酸素原子を持つペリレン誘導体)からなるペリレン
が挙げられるであろう。
【0064】
太陽電池モジュールの組成物の特定応用において、UV放射は使用される組成物のわずかな黄変をもたらし得るため、その寿命の間における封止材の透明性を確実にするために、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンおよび他のヒンダードアミン等のUV安定剤およびUV吸収剤を添加してよい。これらの化合物は、例えば、ベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾールをベースにしたものであってよい。これらは、組成物の総重量の10重量%未満、好ましくは0.1から5重量%の量で添加され得る。
【0065】
封止材の製造中における黄変を限定するために、リンを含む化合物(ホスホナイトおよび/または亜リン酸塩)およびヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤を添加することも可能であろう。これらの酸化防止剤は、組成物の総重量の10重量%未満、好ましくは0.1から5重量%の量で添加され得る。
【0066】
難燃剤を添加してもよい。これらの作用物質は、ハロゲン化されていてもされていなくてもよい。ハロゲン化作用物質の中でも、臭素化生成物を挙げることができる。非ハロゲン化作用物質としては、ポリリン酸塩、ホスフィン酸塩またはピロリン酸塩、リン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、ペンタエリスリトール、ゼオライト、およびこれらの作用物質の混合物等のリンベースの添加剤も使用することができる。組成物は、これらの作用物質を、組成物の総重量に対して3%から40%の範囲の割合で含み得る。
【0067】
これが特定応用において所望されるのであれば、例えば着色または増白化合物等の顔料を、組成物の総重量に対し、概して5%から15%の範囲の割合で添加することも可能である。
【0068】
太陽電池モジュールにおける本発明による組成物の使用に関わる本発明の他の態様については、当業者は、例えば、Handbook of Photovoltaic Science and Engineering,Wiley,2003,volume 7を参照することができる。
【0069】
ここでも、本発明による組成物が、太陽光発電以外の分野においても使用され得ることに留意すべきである。特に、本発明による組成物は、太陽電池または有機発光ダイオード(OLED)のための透明電極において使用され得る。
【0070】
当業者であれば、本発明による組成物を、電子印刷デバイスのための半導体インクにおいて使用することを想定することもできるであろう。
【0071】
本発明による組成物をカーボンナノチューブの分散に使用することができ、この分散を、太陽電池またはOLED等の光電子デバイスの製造に関与する電極または他の成分の製造に使用することが可能であることに留意すべきである。
【0072】
試験配合物を形成するために用いられる材料:
下記において、本発明による組成物に対する試験を提示し、これらの組成物が、上記で列挙した最初の2つの技術的問題、すなわち、本質的に:
1.有機電池における電子供与材料と電子受容材料との混合物の相溶化の問題、
2.インクの品質および安定性を改良するために界面活性剤の品質を強化すること
の観点から満足なものであることを実証する。
【0073】
金属/有機材料界面の物理化学的問題に関して、本出願人企業により、多数の実験を通して、本発明による組成物は、少なくとも1つの金属電極を持つ有機デバイスにおいて、有機/無機界面を改良し安定化することを可能にするのが見出されたことに留意すべきである。後に、本出願人企業によって結果が提示され得る。
【0074】
P3HT(PI−g−P3HT)がグラフト化されたポリオレフィン、P3HT(PBuA−g−P3HT)がグラフト化されたポリアクリレートおよびポリ(ビニルアルコール)(PVA−g−P3HT)型のコポリマーを、共役ポリマー、P3HT、およびフラーレン、PCBMの混合物で構成される有機太陽電池の活性層の相溶化剤として試験した。
【0075】
1)活性層の相溶化剤としてのグラフト化コポリマーの使用(上述の問題1):
試験配合物およびフィルムの生成:
この事例において、試験セルは、制御雰囲気(酸素および水分の非存在、10ppm未満の含有量で測定した場合)下、グラフト化コポリマー、P3HTおよびPCBMの1つを含む配合物から出発して調製した。配合物は下記の手法で作製する:
【0076】
異なる量の相溶化剤(P3HT/PCBMの量に対して0から10重量%)を、オルト−ジクロロベンゼン中のP3HT/PCBM(1/1混合物、全体濃度40mg.ml−1)の溶液に導入する。次いで、このようにして調製した溶液を、完全溶解させるために、50℃(セ氏温度)で16時間撹拌させておく。さらに、ガラス基板上のITO(スズをドープした酸化インジウムIn)を、超音波浴中で洗浄する。これは、最初のステップではアセトン中、次いでエタノール中、最後にイソプロパノール中で行う。各洗浄作業を15分間続ける。基板を乾燥させてUV/オゾンで15分間処理した後、PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)=PEDOTおよびポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)=PSS)の薄層を、当業者に周知のスピンコーティング技術によって、1分間当たり5千回転(5000回転/分)の速度で堆積させ、その後、動的真空下、110℃のオーブン内で乾燥させる。PEDOT−PSS層の厚さは、50nm(ナノメートル)である。これは、アルファステップ(Alpha−step)IQ表面(Surafe)プロファイラデバイスを使用して測定した。その後、活性層、異なる量の相溶化剤(PTFE膜を使用して濾過したもの、直径0.2μmの細孔付き)を加えたP3HT/PCBM混合物に、不活性雰囲気下、上記のスピンコーティングによってPEDOT−PSS層を堆積させた。活性層の厚さは、80から100nmの間である。カソード(アルミニウム)を、シャドウマスクにより10−7mbar(ミリバール)の圧力で熱的に堆積させた。デバイスの活性表面面積は8.4mm(平方ミリメートル)である。デバイスの製造には、標準構成:ガラス/ITO/PEDOT−PSS/活性層/アルミニウムを用いた。カソードを堆積させた後、熱アニーリングを、加熱板上、165℃で20分間行う。その後、任意の特徴付けの前に、デバイスを周囲温度に冷却する。すべての手順は、PEDOT−PSS層の堆積が行われた後に、グローブボックス内、ある量の粉塵および0.1ppm(パーツ・パー・ミリオン)未満の分子状酸素を加えた不活性雰囲気(分子状窒素)下で行った。
【0077】
フィルムに対して行った試験:
デバイスに対する電流/電圧測定は、ケースレー(Keithley)4200SCSデバイスにより、暗所にて100mW.cm−2(ミリワット・パー・平方センチメートル)の照明下、AM1.5Gフィルター付きのK.H.S.ソーラー・セル・テスト(SOlarCellTest)575シミュレータデバイスを使用して行った。接点は、カールサス(Karl Suss)PM5型のプローブを使用して作った。試料1つ当たり4つのダイオードがある。性能の再現性を確認するために、測定は8つの異なるソーラーダイオードに対して行った。
【0078】
ソーラー電池の太陽光発電効果を、下記のパラメータ:開路電圧(Voc)、短絡電流(JSC)および曲線因子(FF)によって特徴付ける。電力変換効率(PCE)は、発生した電力対入射光の電力(Pin)の比:
PCE=(Voc*JSC*FF)/Pin
である。
【0079】
行った試験の結果:
PCEは、165℃でのアニーリング前およびアニーリング後に、各組成物について数回測定した。シリーズに応じて、基準セル(コポリマーの添加なし)についてアニーリング後に取得されたPCEはおよそ4.5%であり、故にこれは先行技術による試験に対応する。
【0080】
本発明による組成物を用いたアニーリング前後の、PCEに対するコポリマーの添加の相対的効果(改良のパーセンテージとして)を、下記の表に示す。本発明による組成物で提示されている結果は、性能における大幅な強化を示し、これは、先行技術の基準セルとの関係で考慮される。
【0081】
アニーリング後の改良は、形態および性能に対する添加剤の真の効果を示している。アニーリング前のさらに大きな改良は、活性層のプロセス可能性に対するプラス効果(最適な形態のより速い生成)、故に、アニーリング時間および/または温度、故に生産コストを削減する可能性を示す。
【0082】
2)カーボンナノチューブの分散をベースとするインクの品質(それらの安定性)における改良(上述の問題2):
試験配合物およびフィルムの生成:
研究されるインク(分散)は、水に分散させた多壁カーボンナノチューブ(MWCNT、アルケマ(登録商標))から、イオン性界面活性剤を添加することなく調製した。
【0083】
基準配合物は、0.1%(総量に対する重量で)のMWCNTを含む。使用される水の総体積は、配合物のそれぞれにつき5mlである。
【0084】
0.5%(総量に対する重量で)の添加剤をこの基準配合物(=技術水準)に添加する:この添加剤は、PVA−g−P3HT型のグラフト化コポリマーまたは同等のモル質量のポリ(ビニルアルコール)(PVA)(=技術水準)のいずれかである。
【0085】
フィルムに対して行った試験:
すべての配合物を音波処理器に20分間供した。
【0086】
分散を最初は肉眼で、次いでスライドガラスに載せて光学顕微鏡で、最後に、ガラスへの堆積および乾燥後に原子間力顕微鏡(AFM)で観察する。
【0087】
行った試験の結果:
【0088】
本発明による配合物の事例において、分散は極細であり、顕微鏡法で観察される最大粒子のサイズはミクロン規模である。均質なフィルムはこれらの分散から調製されたものであり、その結果を図2に見られるAFM(原子間力顕微鏡法)において確認する。
【0089】
7日間熟成させた後、分散は変化しておらず、依然として安定なままである。
【0090】
これらの結果は、本発明により、太陽電池の調製のためのプロセス中に、および他のタイプのデバイス(例えばOLED)においても、この材料の層(特に電極)を容易に形成するために使用され得る安定なMWNTCインクを取得することが可能であることを示している。
図1
図2