(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記リスニング面指定手段は、上記カメラを基準として予め定められた基準平面に対し、上記リスニング面を相対的に指定することを特徴とする請求項8に記載の拡声システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットの指向特性を制御するための制御パラメータを容易に決定することができる拡声システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様による拡声システムは、2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、
上記カメラ画像表示手段に表示されている上記カメラ画像の中の1又は2以上の位置を指定するユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段とを備えて構成される。
【0009】
この様な構成によれば、スピーカーセットの音響空間を撮影したカメラ画像がカメラ画像表示手段により表示されるので、ユーザは、当該カメラ画像上の任意の位置をターゲット位置として指定することができる。また、ターゲット位置が指定されれば、カメラの画角を示す画角情報を参照することにより、撮影方向に対するずれ角を求めることができる。指向制御角は、ターゲット位置に対応する音響空間内の領域がスピーカーセットの正面方向からどれくらいずれているのかを示すものであり、上記ずれ角とカメラ及びスピーカーセットの相対的な位置関係とから求められる。
【0010】
この様な指向制御角に基づいてスピーカーセットの指向制御を行うので、ユーザがカメラ画像上で指定したターゲット位置に対応する音響空間内の領域を聴取対象としてスピーカーセットの指向特性を制御することができる。従って、スピーカーセットから見て聴取対象エリアがスピーカーセットの正面方向からどれくらいずれているのかをユーザ自身が判断する必要はなく、カメラ画像上で聴取対象エリアの位置を指定するだけで、スピーカーセットの指向特性を制御するための制御パラメータを決定することができる。
【0011】
本発明の第二の態様による拡声システムは、
2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、ユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段とを備え、上記指向制御角算出手段が、上記ターゲット位置と上記カメラの画角とに基づき、上記カメラの撮影方向に対する上記ターゲット位置のずれ角を算出し、当該ずれ角に基づいて上記指向制御角を算出するように構成される。
【0012】
本発明の第三の態様による拡声システムは、
2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、ユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段とを備え、上記ターゲット位置指定手段が、ユーザが指定した上記カメラ画像上の2以上の位置に基づいて上記カメラ画像上の領域を定め、当該領域内の所定の位置を第1ターゲット位置として特定し、上記指向制御角算出手段が、上記第1ターゲット位置と上記カメラの画角とに基づき、上記カメラの撮影方向に対する上記第1ターゲット位置のずれ角を算出し、当該ずれ角に基づいて上記指向制御角を算出するように構成される。
【0013】
本発明の第四の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記カメラが、上記スピーカーセットの正面方向と略同一の方向に向けて配置され、上記ターゲット位置指定手段が、上記スピーカーセットの位置に対応づけて予め定めれれた上記カメラ画像上の基準位置から最も遠い上記領域内の位置を上記第1ターゲット位置として特定するように構成される。
【0014】
本発明の第五の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記スピーカーセットの各スピーカーユニットには共通の音響信号が供給され、上記指向制御手段が、上記指向制御角に基づいて、隣り合うスピーカーユニット間における上記音響信号の遅延量を決定し、各スピーカーユニットについて上記遅延量を一致させるように構成される。この様な構成によれば、カメラ画像上の第1ターゲット位置に対応する音響空間内の領域を聴取対象としてカバーすることができる。
【0015】
本発明の第六の態様による拡声システムは、
2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、ユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段とを備え、上記ターゲット位置指定手段が、ユーザが指定した上記カメラ画像上の2以上の位置に基づいて上記カメラ画像上の領域を定め、上記領域内の所定の位置を第1ターゲット位置として特定するとともに、上記第1ターゲット位置とは異なる上記領域内の所定の位置を第2ターゲット位置として特定し、上記指向制御角算出手段が、上記第1ターゲット位置と上記カメラの画角とに基づき、上記カメラの撮影方向に対する上記第1ターゲット位置の第1ずれ角を算出し、当該第1ずれ角に基づいて第1指向制御角を算出するとともに、上記第2ターゲット位置と上記カメラの画角とに基づき、上記カメラの撮影方向に対する上記第2ターゲット位置の第2ずれ角を算出し、当該第2ずれ角に基づいて第2指向制御角を算出し、上記指向制御手段が、上記第1指向制御角及び上記第2指向制御角に基づいて上記スピーカーセットの指向制御を行うように構成される。
【0016】
本発明の第七の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記カメラが、上記スピーカーセットの正面方向と略同一の方向に向けて配置され、上記ターゲット位置指定手段が、上記スピーカーセットの位置に対応づけて予め定めれれた上記カメラ画像上の基準位置から最も遠い上記領域内の位置を上記第1ターゲット位置として特定する一方、上記基準位置に最も近い上記領域内の位置を上記第2ターゲット位置として特定するように構成される。
【0017】
本発明の第八の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記スピーカーセットの各スピーカーユニットには共通の音響信号が供給され、上記指向制御手段が、上記第1指向制御角に基づいて、配列の一端に配置された第1スピーカーユニットと隣り合うスピーカーユニットとの間における上記音響信号の第1遅延量を決定するとともに、上記第2指向制御角に基づいて、上記配列の他端に配置された第2スピーカーユニットと隣り合うスピーカーユニットとの間における上記音響信号の第2遅延量を決定し、上記第1スピーカーユニット及び上記第2スピーカーユニット間のスピーカーユニットについて、上記第1遅延量及び上記第2遅延量に基づく補間演算によって上記音響信号の遅延量を決定するように構成される。この様な構成によれば、第1ターゲット位置に対応する音響空間内の領域と、第2ターゲット位置に対応する音響空間内の領域とを含む領域を聴取対象としてカバーすることができる。また、各スピーカーユニットから放射される音波が領域内に効率的に配分されるので、領域内において十分な音圧を確保することができる。
【0018】
本発明の第九の態様による拡声システムは、
2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、ユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段と、上記音響空間内におけるリスニング面を指定するリスニング面指定手段と、2以上の上記ターゲット位置に基づいて、上記カメラ画像上の領域からなるターゲットエリアを決定するターゲットエリア決定手段と、上記ターゲットエリアに対応する上記リスニング面上の領域をリスニングエリアとして求めるリスニングエリア算出手段とを備え、上記指向制御手段が、上記リスニングエリアに基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行うように構成される。
【0019】
この様な構成によれば、ユーザは、2以上のターゲット位置を指定することにより、カメラ画像上の任意の領域からなるターゲットエリアを聴取対象とすることができる。また、音響空間内の平面として、リスニング面が予め指定されており、ユーザが、ターゲットエリアを指定すれば、当該リスニング面上におけるターゲットエリアに対応する領域がリスニングエリアとして求められ、当該リスニングエリアに基づいてスピーカーセットの指向制御が行われる。
【0020】
つまり、ユーザが、ターゲットエリアとして、カメラ画像上で2次元の領域を指定すれば、3次元の音響空間内における領域がリスニングエリアとして指定され、当該リスニングエリアに応じたスピーカーセットの指向制御が行われる。従って、ユーザは、所定の音圧を確保すべき3次元の聴取対象エリアを容易に指定することができ、当該聴取対象エリアに応じて、スピーカーセットの指向制御を行うことができる。また、聴取対象エリアをカメラ画像上において指定することができるため、直感的に行うことができる。
【0021】
また、音響空間内にスピーカーセットを設置し、拡声システムのカメラにより撮影されたカメラ画像上においてターゲットエリアを指定することにより、音響空間内におけるスピーカーセットの実際の位置及び向きを考慮して、聴取対象エリアを指定することができる。従って、スピーカーセットの指向特性を聴取対象エリアに精度よく一致させることができる。
【0022】
本発明の第十の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記リスニング面指定手段が、上記カメラを基準として予め定められた基準平面に対し、上記リスニング面を相対的に指定するように構成される。
【0023】
この様な構成によれば、カメラの位置及び向きによって特定される基準平面に対し、リスニング面が相対的に指定される。例えば、基準平面に対する高さ及び傾きによって、リスニング面を指定することができる。このため、ユーザがリスニング面を容易に指定することができる。また、カメラを基準としてリスニング面を指定することにより、ターゲットエリアからリスニングエリアを求める演算が容易になる。
【0024】
本発明の第十一の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記スピーカーセットを構成する2以上の上記スピーカーユニットが、筐体のフロントパネル上に2次元配置され、上記指向制御手段が、上記リスニングエリアの少なくとも境界線上において、音圧が略一定になるように、上記スピーカーユニットの位相制御を行うように構成される。この様な構成によれば、リスニングエリア内では、一定レベル以上の音圧が確保され、リスニングエリア外では、一定レベル以下の音圧となるように、スピーカーセットの指向特性を制御することができる。
【0025】
本発明の第十二の態様による拡声システムは、上記構成に加え、2以上の上記スピーカーユニットが、略同一の方向に向けた状態で筐体のフロントパネルに配設され、上記カメラが、上記スピーカーセットの正面方向と略同一の方向に向けた状態で上記フロントパネル上に配設されているように構成される。この様な構成によれば、スピーカーセットの正面方向が概ねカメラの撮影方向となるので、カメラ画像上のターゲット位置から指向制御角を求める際の構成を簡素化することができる。
【0026】
本発明の第十三の態様による拡声システムは、上記構成に加え、上記カメラが、上記スピーカーセットの最大放音角よりも画角が狭く、撮影軸を移動させる撮影方向調整機構を有し、上記リスニングエリア算出手段が、上記ターゲットエリアと上記撮影軸の向きとに基づいて、上記リスニングエリアを求めるように構成される。
【0027】
この様な構成によれば、撮影軸を移動させることにより、スピーカーセットの最大放音角よりも画角の狭いカメラであっても、最大放音角内の任意の領域をカメラ画像として撮影することができる。また、カメラ画像を撮影した際の撮影軸の向きを考慮してリスニングエリアを求めることにより、最大放音角内の任意の領域をリスニングエリアとして適切に指定することができる。
【0028】
本発明の第十四の態様による拡声システムは、
2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットと、上記スピーカーセットの音響空間を撮影するカメラであって、上記スピーカーセットとの相対的な位置関係が予め定められたカメラと、上記カメラにより撮影されたカメラ画像を表示するカメラ画像表示手段と、ユーザ操作に基づいて、上記カメラ画像上における1又は2以上のターゲット位置を指定するターゲット位置指定手段と、上記ターゲット位置に基づいて、上記スピーカーセットの正面方向に対する1又は2以上の指向制御角を求める指向制御角算出手段と、上記指向制御角に基づいて、上記スピーカーセットの指向制御を行う指向制御手段と、上記ターゲット位置として指定可能な限界エリアを保持する限界エリア記憶手段と、上記ターゲット位置指定手段により指定されたターゲット位置を上記限界エリアと比較するエリア比較手段と、上記エリア比較手段の比較結果に基づいて、ユーザ報知を行うユーザ報知手段とを備えて構成される。
【0029】
この様な構成によれば、予め定められた限界エリアとターゲット位置を比較してユーザ報知を行うので、限界エリア外の位置がターゲット位置として指定された場合に、限界エリア外であることをユーザに認識させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による拡声システムでは、ユーザがカメラ画像上の位置をターゲット位置として指定すれば、ターゲット位置に対応する音響空間内の領域がスピーカーセットの正面方向からどれくらいずれているのかを示す指向制御角を求めてスピーカーセットの指向制御が行われる。特に、ユーザが、ターゲットエリアとして、カメラ画像上で2次元の領域を指定すれば、3次元の音響空間内における領域がリスニングエリアとして指定され、当該リスニングエリアに応じたスピーカーセットの指向制御が行われる。このため、2以上のスピーカーユニットからなるスピーカーセットの指向特性を制御するための制御パラメータを容易に決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施の形態1.
<拡声システム1>
図1は、本発明の実施の形態1による拡声システム1の一構成例を示したブロック図である。この拡声システム1は、外部機器から入力された音響信号を増幅して2以上のスピーカーユニット2により出力するスピーカー装置10と、スピーカー装置10の指向特性を制御するための指向制御パラメータを生成するPC(パーソナルコンピュータ)20により構成される。
【0033】
スピーカー装置10は、音響信号の遅延量を調整することによって音響出力の指向制御が可能なアレイスピーカーであり、2以上のスピーカーユニット2からなるスピーカーセット11と、増幅器12、デジタルアナログコンバータ13、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)14及びカメラ15により構成される。
【0034】
スピーカーセット11は、各スピーカーユニット2がアレイ状に配置されたアレイユニットである。デジタルアナログコンバータ13及び増幅器12は、スピーカーユニット2ごとに設けられている。
【0035】
音響信号は、オーディオ帯域の周波数成分からなり、例えば、マイクロホンを信号源として生成される。スピーカーユニット2は、音響信号を音波に変換する拡声素子である。例えば、ダイナミック型スピーカーユニットの場合、コーン紙等の振動板と、振動板を振動させるためのボイスコイルにより構成される。
【0036】
DSP14は、デジタル演算処理により、スピーカーユニット2へ供給される音響信号の遅延量を調整する位相調整手段であり、スピーカーユニット2に対応づけて2以上の位相調整部3が設けられている。DSP14に入力された音響信号は、スピーカーユニット2ごとに分配され、位相調整部3へ供給される。各位相調整部3は、指向制御パラメータに基づいて、音響信号の位相を所定量だけ移相させる移相回路である。また、各位相調整部3は、音響信号の周波数ごとに遅延量を異ならせる。
【0037】
位相調整部3は、スピーカーユニット2ごとに設けられている。DSP14による遅延量調整後の音響信号は、デジタルアナログコンバータ13によりアナログ信号に変換され、増幅器12により増幅されてスピーカーユニット2へ供給される。
【0038】
カメラ15は、スピーカーセット11の音響空間を撮影し、カメラ画像を生成する撮像装置である。このカメラ15は、スピーカー装置10が設置される空間を撮影する。カメラ画像は、PC20からの撮影指示に基づいて生成される。例えば、一定の画角を有するデジタルカラーカメラがカメラ15として用いられ、静止画像からなるカラー画像がカメラ画像として生成される。
【0039】
PC20は、カメラ画像取得部21、モニター22、操作部23及び指向制御パラメータ生成部24を備えた端末装置であり、指向制御パラメータの作成装置として機能する。操作部23は、ユーザ操作を受け付け、所定の操作信号を生成する入力装置であり、複数の操作キーからなるキーボードと、モニター22上のポインティングオブジェクトを操作するためのポインティングデバイスからなる。
【0040】
カメラ画像取得部21は、操作部23からの操作信号に基づいて撮影指示を生成し、カメラ15からカメラ画像を取得する。例えば、撮影指示は、スピーカー装置10を音響空間内に設置した後のユーザ操作に基づいて、生成される。モニター22は、カメラ画像取得部21により取得されたカメラ画像を画面表示する表示装置である。
【0041】
指向制御パラメータ生成部24は、ユーザがカメラ画像上の位置をターゲット位置として指定すれば、ターゲット位置に対応する音響空間内の領域を聴取対象とする指向制御パラメータを生成し、DSP14に書き込む。指向制御パラメータは、位相調整部3ごとの遅延量を規定する制御情報であり、DSP14に書き込むことにより、スピーカーセット11の指向特性が制御される。
【0042】
<スピーカー装置10>
図2は、
図1のスピーカー装置10の構成例を示した斜視図であり、スピーカー装置10の一例として、筐体16のフロントパネル16aに8個のスピーカーユニット2が配設されたラインアレイスピーカーが示されている。筐体16は、上下方向に長い直方体形状からなり、フロントパネル16aは、平面形状からなる。
【0043】
各スピーカーユニット2は、共通の音響信号によって駆動されるスピーカーユニットであり、上下方向の位置を異ならせて配置されている。また、各スピーカーユニット2は、フロントパネル16aに垂直な方向をスピーカー装置10の正面方向とすべく、略同一の方向に向けた状態でフロントパネル16aに配設されている。
【0044】
カメラ15は、スピーカー装置10の正面方向、すなわち、フロントパネル16aに垂直な方向と略同一の方向に向けた状態でフロントパネル16a上に配設されている。つまり、カメラ15の撮影方向は、スピーカー装置10の正面方向と一致している。この例では、フロントパネル16aの中央部にカメラ15が配置されている。
【0045】
この様なスピーカー装置10を鉛直方向に立てた状態で音響空間内に設置した場合、各スピーカーユニット2に供給される音響信号に対し、隣り合うスピーカーユニット2間の遅延量を調整することにより、スピーカー装置10の指向特性を仰俯角方向に関して任意に制御することができる。例えば、仰俯角方向にスピーカー装置10の放音角を広げたり、或いは、狭めることができる。また、スピーカー装置10の放音方向を上側に向けたり、或いは、下側に向けることができる。放音角は、スピーカー装置10から放射される音波の広がりを示す物理量であり、一定の音圧が得られる領域を示す角度からなる。なお、放音角は、指向角と呼ばれることもある。
【0046】
なお、カメラ15の向きとスピーカーセット11の向きとの角度関係を含むスピーカーセット11との相対的な位置関係が予め定められていれば、カメラ15は、フロントパネル16a上に配設されていなくても良い。例えば、取付部材を用いることにより、フロントパネル16aから離間させてカメラ15を配置するような構成であっても良い。また、カメラ15の撮影方向は、スピーカー装置10の正面方向と一致していなくても良い。
【0047】
<カメラ画像30上のターゲット位置32>
図3は、
図1のPC20のモニター22上に表示されるカメラ画像30の一例を示した図である。スピーカー装置10は、コンサートホール、会議室のような屋内空間、又は、野外アリーナのような屋外空間を音響空間として設置される。カメラ15は、その様な音響空間を撮影し、カメラ画像30を生成する。
【0048】
このカメラ画像30は、水平な天井S及び床面Fと、鉛直な壁面Wによって囲まれた空間を撮影した撮影画像である。この例では、撮影軸の位置を中心とする上下方向のガイド線VGと、左右方向のガイド線HGとが破線より表示されている。ガイド線VGは、カメラ15の垂直画角を示す直線からなり、ガイド線HGは、カメラ15の水平画角を示す直線からなる。
【0049】
この様なカメラ画像30がモニター22上に表示されるので、ユーザは、カメラ画像30上の任意の位置をターゲット位置32として指定することができる。例えば、マウス操作によってマウスカーソル31をカメラ画像30上で移動させ、クリック操作によってターゲット位置32が指定される。また、複数回のクリック操作やドラッグ操作によって、カメラ画像30上の2次元領域が指示された場合は、当該2次元領域の中心又は重心の位置がターゲット位置32として指定される。
【0050】
ターゲット位置32が指定されれば、カメラ15の画角を示す画角情報を参照することにより、カメラ15の撮影方向に対するターゲット位置32のずれ角δを求めることができる。具体的には、カメラ画像30上の位置がターゲット位置32として指定されれば、垂直画角や水平画角を用いて、カメラ画像30上の位置座標、例えば、ピクセル単位で表された上下方向の位置座標及び左右方向の位置座標が、それぞれ上下方向のずれ角δx及び左右方向のずれ角δyに変換される。
【0051】
ずれ角δx,δyは、ターゲット位置32に対応する音響空間内の領域がカメラ15の撮影方向からどれくらいずれているのかを示す角度からなる。例えば、ずれ角δx=−8°は、ターゲット位置32に対応する視線方向が撮影方向よりも下側に8°ずれていることを表し、ずれ角δy=10°は、ターゲット位置32に対応する視線方向が撮影方向よりも右側に10°ずれていることを表す。
【0052】
一方、ターゲット位置32に対応する音響空間内の領域がスピーカー装置10の正面方向からどれくらいずれているのかを示す指向制御角θは、上述したずれ角δx,δyと、カメラ15及びスピーカーセット11の相対的な位置関係とから求められる。指向制御パラメータは、この様な指向制御角θに応じて定められる。
【0053】
本実施の形態では、カメラ15の撮影方向がスピーカー装置10の正面方向と一致しているので、ずれ角δをそのまま指向制御角θとして用いることができる。例えば、カメラ15の垂直画角が60°、水平画角が90°であり、ターゲット位置32を示す上下方向のずれ角δx及び左右方向のずれ角δyが(δx,δy)=(−8,10)である場合、仰俯角方向の指向制御角θx及び方位角方向の指向制御角θyは、(θx,θy)=(−8,10)になる。
【0054】
<指向制御パラメータ生成部24>
図4は、
図1の指向制御パラメータ生成部24の構成例を示したブロック図である。この指向制御パラメータ生成部24は、ターゲット位置指定部101、画角情報記憶部102、指向制御角算出部103及び指向制御パラメータ決定部104により構成される。ターゲット位置指定部101は、ユーザ操作に基づいて、カメラ画像30上におけるターゲット位置32を指定する。
【0055】
画角情報記憶部102には、カメラ15の垂直画角及び水平画角といった画角情報が保持される。指向制御角算出部103は、ターゲット位置指定部101により指定されたターゲット位置32に基づいて、スピーカー装置10の正面方向に対する指向制御角θを求める。具体的には、まず、画角情報記憶部102の画角情報を参照することにより、カメラ15の撮影方向に対するずれ角δが求められる。次に、ずれ角δやカメラ15及びスピーカーセット11の相対的な位置関係、スピーカー装置10から放射される音波の放射特性に基づいて、仰俯角方向の指向制御角θが求められる。
【0056】
指向制御パラメータ決定部104は、指向制御角算出部103により求められた指向制御角θに基づいて、スピーカー装置10の指向特性を制御するための指向制御パラメータを決定する。具体的には、指向制御角θから位相調整部3ごとの遅延量を求めて指向制御パラメータが定められる。例えば、隣り合うスピーカーユニット2間における音響信号の遅延量が、全てのスピーカーユニット2について同一の値となるように、指向制御パラメータが定められる。
【0057】
本実施の形態によれば、カメラ画像30がモニター22上に表示されるので、ユーザは、当該カメラ画像30上の任意の位置をターゲット位置32として指定することができる。また、ターゲット位置32が指定されれば、画角情報を参照することにより、撮影方向に対するずれ角δや指向制御角θを求めることができる。
【0058】
この様な指向制御角θに基づいてスピーカー装置10の指向制御を行うので、ユーザがカメラ画像30上で指定したターゲット位置32に対応する音響空間内の領域を聴取対象としてスピーカー装置10の指向特性を制御することができる。従って、スピーカー装置10から見て聴取対象エリアがスピーカー装置10の正面方向からどれくらいずれているのかをユーザ自身が判断する必要はなく、カメラ画像30上で聴取対象エリアの位置を指定するだけで、スピーカー装置10の指向特性を制御するための制御パラメータを決定することができる。
【0059】
実施の形態2.
実施の形態1では、ユーザが指定したカメラ画像30上の位置をターゲット位置32として用いて、スピーカー装置10の指向特性が制御される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、ユーザがカメラ画像30上で指定した2以上の位置からカメラ画像30上の領域を定め、この領域内の所定の位置をターゲット位置32として特定する場合について説明する。
【0060】
<ターゲット位置32>
図5は、本発明の実施の形態2による拡声システム1において定められたカメラ画像30上の領域R
0と領域R
0から特定されたターゲット位置32の一例を示した図である。指向制御パラメータ生成部24のターゲット位置指定部101は、ユーザが指定したカメラ画像30上の2以上の位置に基づいて、カメラ画像30上の領域R
0を定める。例えば、マウス操作によってマウスカーソル31をカメラ画像30上で移動させ、ドラッグ操作によってカメラ画像30上の異なる2つの位置を指定することにより、矩形形状の領域が領域R
0として定められる。
【0061】
ターゲット位置指定部101は、領域R
0内の所定の位置をターゲット位置32として特定する。例えば、スピーカー装置10の位置に対応づけて予め定めれれたカメラ画像上の基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の2次元位置がターゲット位置32として特定される。例えば、基準位置P
0は、カメラ画像30における下辺の中点であり、ガイド線VG上の視野限界に相当する。
【0062】
指向制御角算出部103は、ターゲット位置32とカメラ15の画角とに基づき、カメラ15の撮影方向に対するターゲット位置32のずれ角δx,δyを算出し、当該ずれ角δx,δyに基づいて、指向制御角θを算出する。また、指向制御パラメータ決定部104は、その様な指向制御角θに基づいて、隣り合うスピーカーユニット2間における音響信号の遅延量を決定し、各スピーカーユニット2について遅延量を一致させる。
【0063】
図6は、
図5の拡声システム1におけるスピーカー装置10の放射パターンと床面F上の領域Rとの関係の一例を模式的に示した説明図である。
図7は、
図6の放射パターンと領域Rとの関係を水平方向から見た様子を示した図である。図中のスピーカー装置10は、
図2に示したものであり、長手方向を鉛直方向に一致させた状態で壁面Wに取り付けられている。また、
図7には、スピーカー装置10の正面方向SDに平行であり、かつ、スピーカー装置10を含む鉛直面により音響空間を切断した場合が示されている。
【0064】
領域Rは、カメラ画像30上の領域R
0に相当する床面F上の領域である。鉛直方向の指向制御は、隣り合うスピーカーユニット2間で音響信号の遅延量を調整することによって行われる。スピーカー装置10から放射される音波の放射パターンは、概ね円錐形状となる。このため、領域Rを聴取対象エリアとしてカバーする上で最も簡易的な方法は、基準位置Pから最も遠い領域R内の位置32Aに相当する領域R
0内の位置をターゲット位置32として特定して、仰俯角方向の指向制御角θを定めることである。
【0065】
基準位置Pは、カメラ画像30上の基準位置P
0に相当する床面F上の位置であり、カメラ15の視野限界を示すFE(フロントエンド)線上にある。本実施の形態では、基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の2次元位置をターゲット位置32として特定して、仰俯角方向の指向制御角θが定められる。この様に構成することにより、上端のスピーカーユニット2を頂点とする円錐形状の放射パターンとして、位置32Aを通る放射パターンを形成することができ、領域Rを聴取対象としてカバーすることができる。
【0066】
本実施の形態によれば、ユーザは、カメラ画像30上で複数の位置を指定することにより、カメラ画像30上の領域R
0が定められ、当該領域R
0に対応する音響空間内の領域を聴取対象としてカバーすることができる。特に、基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の位置をターゲット位置32として特定して仰俯角方向の指向制御角θを定めるので、ターゲット位置32に対応する音響空間内の領域を聴取対象としてカバーすることができる。
【0067】
実施の形態3.
実施の形態2では、基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の位置をターゲット位置32として特定する場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の位置を第1のターゲット位置32として特定するとともに、基準位置P
0に最も近い領域R
0内の位置を第2のターゲット位置32として特定する場合について説明する。
【0068】
図8は、本発明の実施の形態3による拡声システム1においてスピーカー装置10の放射パターンと床面F上の領域Rとの関係の一例を模式的に示した説明図である。
図9は、
図8の放射パターンと領域Rとの関係を水平方向から見た様子を示した図である。
【0069】
指向制御パラメータ生成部24のターゲット位置指定部101は、基準位置P
0から最も遠い領域R
0内の2次元位置を第1のターゲット位置32として特定する一方、基準位置P
0に最も近い領域R
0内の2次元位置を第2のターゲット位置32として特定する。第1のターゲット位置32は、領域R
0の左上の頂点の位置であり、第2のターゲット位置32は、ガイド線VG上の位置である。
【0070】
指向制御角算出部103は、第1のターゲット位置32とカメラ15の画角とに基づき、カメラ15の撮影方向に対する第1のターゲット位置32のずれ角δ1を算出し、当該ずれ角δ1に基づいて、指向制御角θ1を算出する。また、指向制御角算出部103は、第2のターゲット位置32とカメラ15の画角とに基づき、カメラ15の撮影方向に対する第2のターゲット位置32のずれ角δ2を算出し、当該ずれ角δ2に基づいて、指向制御角θ2を算出する。
【0071】
指向制御パラメータ決定部104は、指向制御角θ1,θ2に基づいて、隣り合うスピーカーユニット2間における音響信号の遅延量を決定する。具体的には、指向制御角θ1に基づいて、配列の一端に配置された第1スピーカーユニット、すなわち、上端のスピーカーユニット2と隣り合うスピーカーユニット2との間における音響信号の第1遅延量が決定される。また、指向制御角θ2に基づいて、配列の他端に配置された第2スピーカーユニット、すなわち、下端のスピーカーユニット2と隣り合うスピーカーユニット2との間における音響信号の第2遅延量が決定される。また、第1スピーカーユニット及び第2スピーカーユニット間のスピーカーユニット2については、第1遅延量及び第2遅延量に基づく補間演算によって音響信号の遅延量が決定される。
【0072】
領域R内の位置32Bは、基準位置P
0に最も近い領域R
0内のターゲット位置32に相当する。本実施の形態では、指向制御角θ1に応じて、上端のスピーカーユニット2の遅延量が定められるとともに、指向制御角θ2に応じて、下端のスピーカーユニット2の遅延量を定められ、上下端以外のスピーカーユニット2については、第1遅延量及び第2遅延量に基づく補間演算によって遅延量が決定される。この様に構成することにより、上端のスピーカーユニット2を頂点とする円錐形状の放射パターンとして、位置32Aを通る放射パターンを形成し、下端のスピーカーユニット2を頂点とする円錐形状の放射パターンとして、位置32Bを通る放射パターンを形成することができる。
【0073】
具体的には、指向制御角θ1から、上端のスピーカーユニット2と隣り合うスピーカーユニット2との間の遅延量として、ディレイ時間D1が定められる。また、指向制御角θ2から、下端のスピーカーユニット2と隣り合うスピーカーユニット2との間の遅延量として、ディレイ時間D2が定められる。他のスピーカーユニット2のディレイ時間は、上下方向の位置に応じた線形補間により定められる。
【0074】
なお、上端及び下端のスピーカーユニット2以外のスピーカーユニット2について、ディレイ時間を線形補間により定めるのに代えて、所定の曲線、例えば、2次曲線やクロソイド曲線を利用してディレイ時間を定めるような構成であっても良い。また、周波数ごとの振幅や位相を任意に変化させるフィルタ処理によって、各スピーカーユニット2の遅延量調整を行うような構成であっても良い。
【0075】
本実施の形態によれば、第1のターゲット位置32に対応する音響空間内の領域と、第2のターゲット位置32に対応する音響空間内の領域とを含む領域を聴取対象としてカバーすることができる。また、各スピーカーユニット2から放射される音波が領域内に効率的に配分されるので、領域内において十分な音圧を確保することができる。
【0076】
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、スピーカー装置10がラインアレイスピーカーからなる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、2以上のスピーカーユニット2が筐体16のフロントパネル16a上に2次元配置されたスピーカー装置10に本発明を適用する場合について説明する。
【0077】
<スピーカー装置10>
図10は、本発明の実施の形態4による拡声システム1の一構成例を示した図であり、筐体16のフロントパネル16aを正面方向から見た様子が示されている。この図には、7行5列に2次元配置された16個のスピーカーユニット2と、1個のカメラ15を備えたスピーカー装置10が示されている。各スピーカーユニット2は、近接配置されている。スピーカー装置10の正面方向は、指向特性を制御する際の基準となる方向であり、筐体16の形状や各スピーカーユニット2の向き、配置態様に応じて予め定められる。
【0078】
筐体16は、エンクロージャーと呼ばれる箱体であり、左右方向に比べて、上下方向に長い形状からなる。フロントパネル16aは、鉛直に立てた円筒の周面の一部を切り出したような曲面形状からなる。
【0079】
フロントパネル16aには、左右方向に関し、2個又は3個のスピーカーユニット2が配列されている。各スピーカーユニット2は、限られたスペースにできるだけ多くのスピーカーユニット2を配置するために、左右方向に関して傾斜した角度で隣接するように配置されている。カメラ15は、撮影軸をフロントパネル16aの正面方向に向けて、フロントパネル16aの中央部に配置されている。
【0080】
図11は、
図10のスピーカー装置10の構成例を示した断面図であり、図中の(a)には、A−A切断線により筐体16を切断した場合の切断面が示され、(b)には、B−B切断線により筐体16を切断した場合の切断面が示されている。各スピーカーユニット2は、開口部の振動板を水平方向に向けて配置されている。
【0081】
筐体16のA−A切断面には、3個のスピーカーユニット2が配置されている。中央のスピーカーユニット2は、開口部をフロントパネル16aの正面方向に向けて配置され、サイド側のスピーカーユニット2は、正面方向に対し、開口部を左右方向の傾斜角φ1だけ傾斜させて配置されている。例えば、傾斜角φ1は、φ1=30度からなる。
【0082】
筐体16のB−B切断面には、2個のスピーカーユニット2が配置されている。各スピーカーユニット2は、正面方向に対し、開口部を左右方向の傾斜角φ2だけ傾斜させて配置されている。例えば、傾斜角φ2は、φ2=15度からなる。
【0083】
この様なスピーカー装置10を縦長状態で設置すれば、スピーカーユニット2の上下方向の位置に応じて音響信号の遅延量を異ならせることにより、仰俯角方向の指向特性を制御することができる。例えば、上下方向の放音角を広げたり、狭めたりし、或いは、放音方向を上下方向に制御することができる。
【0084】
また、スピーカーユニット2の左右方向の位置に応じて音響信号の遅延量を異ならせることにより、方位角方向の指向特性を制御することができる。例えば、左右方向の放音角を広げたり、狭めたりし、或いは、放音方向を左右方向に制御することができる。
【0085】
図11に示したスピーカー装置10では、左右方向に関して、各スピーカーユニット2が開口部を異なる方向に向けて配置されていることから、スピーカーユニット2の左右方向の位置に応じた遅延量調整により、正面方向を中心とする60度よりも広い放音角で放音させ、或いは、60度よりも狭い放音角で放音させることができる。
【0086】
<ターゲットエリア4>
図12は、
図10の拡声システム1において定められたカメラ画像30上のターゲットエリア4の一例を示した図である。ターゲットエリア4は、カメラ画像30上の2次元領域からなり、2以上のターゲット位置32に基づいて決定される。
【0087】
ユーザは、カメラ画像30上の任意の領域をターゲットエリア4として指定することができる。例えば、ターゲットエリア4は、カメラ画像30上における1つの連続領域からなり、任意の形状及びサイズの2次元領域をターゲットエリア4として指定することができる。
【0088】
具体的には、複数のターゲット位置32を指示することにより、結合線33で囲まれた領域、すなわち、三角形や四角形を含む多角形形状の領域がターゲットエリア4として指定される。結合線33は、2つのターゲット位置32を連結するガイド用の図形オブジェクトであり、ターゲットエリア4の境界を示す直線からなる。
【0089】
例えば、3以上のターゲット位置32を順に指示した場合、指示した順序でターゲット位置32が結合線33により連結され、ターゲットエリア4が定められる。この例では、4つのターゲット位置32を順に指示することにより、床面F上の矩形領域がターゲットエリア4として指定されている。
【0090】
<リスニングエリア5>
図13は、
図10の拡声システム1におけるスピーカー装置10の設置状態とリスニングエリア5との関係の一例を模式的に示した説明図である。このスピーカー装置10は、鉛直な壁面Wと、水平な床面Fからなる音響空間内に設置されている。例えば、スピーカー装置10は、床面Fから所定の高さで水平方向に向けて設置される。
【0091】
スピーカー装置10の指向制御は、ターゲットエリア4に対応するリスニング面上の領域をリスニングエリア5として求め、このリスニングエリア5内において所定の音圧が確保されるように行われる。リスニング面は、3次元の音響空間内において聴取位置を規定するための聴取対象面である。例えば、聴取者が存在する床面Fがリスニング面として指定される。或いは、床面Fから一定の高さの平面がリスニング面として指定される。具体的には、聴取者の耳の高さを考慮すれば、床面Fから1m程度の高さにある平面がリスニング面として指定される。
【0092】
リスニングエリア5は、音圧がエリア内で一定レベル以上であり、エリア外で一定レベル以下となる領域である。つまり、リスニングエリア5は、少なくともその境界線上において音圧が略一定になる領域である。
【0093】
ユーザが、ターゲットエリア4として、カメラ画像30上で2次元の領域を指定すれば、3次元の音響空間内における領域がリスニングエリア5として指定され、当該リスニングエリア5に応じたスピーカー装置10の指向制御が行われる。従って、ユーザは、所定の音圧を確保すべき3次元の聴取対象エリアを容易に指定することができる。
【0094】
ここで、聴取対象エリアは、ユーザが望む所定の音圧を確保すべき音響空間内の領域である。一方、リスニングエリア5は、ターゲットエリア4に相当するリスニング面7上の領域であり、ターゲットエリア4及びリスニング面7によって特定される聴取対象エリアの一つである。
【0095】
鉛直方向の指向制御は、上下方向の位置が異なるスピーカーユニット2間で音響信号の位相差を調整することにより行われる。つまり、スピーカーユニット2に供給される音響信号の遅延量をスピーカーユニット2の上下方向の位置に応じて異ならせることにより行われる。水平方向の指向制御は、鉛直方向の指向制御と同様に、左右方向の位置が異なるスピーカーユニット2間の位相差を調整することにより行われる。
【0096】
例えば、リスニングエリア5が長方形形状からなる場合に、リスニングエリア5内で一定の音圧を確保するように指向制御を行えば、スピーカー装置10から近い領域ほど、左右方向の放音角を広くすることにより、リスニングエリア5全体を均一な音圧でカバーすることができる。具体的には、スピーカー装置10に近い側の辺を規定する放音角φ
nは、遠い側の辺を規定する放音角φ
fよりも大きい。この様な鉛直方向及び水平方向の指向制御により、リスニングエリア5の境界線を直線化することができる。
【0097】
一般に、音波は、空間内を伝播する際に、伝搬距離に応じて減衰する。このため、スピーカー装置10から遠い領域と近い領域とで一定の音圧を確保するには、遠い領域にはより多くのスピーカーユニット2を割り振る必要がある。本実施の形態による拡声システム1では、リスニングエリア5のスピーカー装置10から遠い領域ほど、より多くの数のスピーカーユニット2を振り分けることにより、音圧レベルの均一化を達成している。
【0098】
例えば、鉛直方向の指向制御により、各スピーカーユニット2から出力される音波の合成波は、その波面が、各スピーカーユニット2を含む鉛直面上でクロソイド曲線によって表されるものになる。
【0099】
<リスニング面7>
図14は、
図10の拡声システム1におけるスピーカー装置10の設置状態とリスニングエリア5との関係の他の一例を模式的に示した説明図であり、リスニング面7が基準平面6に対し傾斜した状態が示されている。基準平面6は、カメラ15を基準として予め定められる平面である。例えば、スピーカー装置10が、カメラ15を水平方向に向けて鉛直な壁面Wに設置されている場合、水平面の一つが基準平面6として定められる。
【0100】
具体的には、スピーカー装置10から1m程度低い位置の水平面が基準平面6として定められる。リスニング面7は、この様な基準平面6に対して傾斜している場合がある。例えば、すり鉢状の傾斜面上に客席が階段状に配置された劇場を音響空間とする場合が想定される。
【0101】
この様な音響空間では、基準平面6に対する傾斜角φ及び高さhをリスニングパラメータとして指定することにより、リスニング面7が特定され、リスニングエリア5を適切に決定することができる。例えば、高さhは、リスニング面7の最大傾斜線を含む鉛直面内において、スピーカー装置10の位置における基準平面6からの高さとして指定することができる。
【0102】
<指向制御パラメータ生成部24>
図15は、
図10の拡声システム1における指向制御パラメータ生成部24の構成例を示したブロック図である。この指向制御パラメータ生成部24は、
図4の指向制御パラメータ生成部24と比較すれば、ターゲットエリア決定部105、リスニング面指定部106、リスニングエリア算出部107、限界エリア記憶部108、エリア比較部109及びユーザ報知部110を備えている点で異なる。
【0103】
ターゲットエリア決定部105は、ターゲット位置指定部101により指定された2以上のターゲット位置32に基づいて、カメラ画像30上の領域からなるターゲットエリア4を決定する。具体的には、3以上のターゲット位置32が指定されれば、これらのターゲット位置32を連結する結合線33により囲まれた領域がターゲットエリア4として定められる。
【0104】
リスニング面指定部106は、ユーザ操作に基づいて、音響空間内におけるリスニング面7を指定する。リスニング面7は、カメラ15を基準として予め定められる基準平面6に対し、相対的に指定される。リスニングエリア算出部107は、ターゲットエリア4に対応するリスニング面7上の領域をリスニングエリア5として求める。リスニングエリア5は、カメラ画像30上の2次元位置をカメラ15の撮影軸に対する角度に変換し、上下方向及び左右方向の角度情報からリスニング面7上の2次元位置を特定することによって求められる。指向制御パラメータ決定部104は、リスニングエリア算出部103により求められたリスニングエリア5に基づいて、指向制御パラメータを決定する。
【0105】
リスニング面指定部106は、基準平面6に対する傾斜角φ及び高さhをリスニングパラメータとして受け付け、これらのリスニングパラメータに基づいて、リスニング面7を指定するための面指定データを生成し、リスニングエリア算出部107へ出力する。この面指定データには、基準平面6を特定する情報が含まれる。
【0106】
指向制御パラメータ決定部104は、リスニングエリア5の少なくとも境界線上において、音圧が略一定になるように、指向制御パラメータを定める。すなわち、リスニングエリア5内では、一定レベル以上の音圧で音響信号が到達し、リスニングエリア5外では、音響信号の音圧が一定レベル未満となるように、スピーカーユニットの遅延量を定める。
【0107】
限界エリア記憶部108には、ターゲット位置32として指定可能な限界エリアが保持される。カメラ15の画角がスピーカー装置10の最大放音角に比べて広い場合、カメラ15の視野内には、スピーカー装置10の指向制御ではリスニングエリア5に含めることができない領域が存在する。ここでいう最大放音角は、少なくとも左右方向について、指向制御により一定の音圧を確保することが可能な最大領域を示す角度からなる。限界エリアは、この様な領域をカメラ画像30上で特定するものであり、予め定められる。
【0108】
エリア比較部109は、ターゲット位置指定部101により指定されたターゲット位置32を限界エリアと比較し、その比較結果をユーザ報知部110へ出力する。ユーザ報知部110は、エリア比較部109の比較結果に基づいて、ユーザ報知を行うための報知データを生成し、モニター22へ出力する。例えば、ユーザ報知部110は、限界エリア外の位置がターゲット位置32として指定されれば、限界エリア外であることを示すメッセージをモニター22上に表示する。
【0109】
<エリア設定画面40>
図16は、
図10の拡声システム1における指向制御パラメータの生成時の動作の一例を示した図であり、モニター22上に表示されるエリア設定画面40が示されている。エリア設定画面40は、ターゲットエリア4やリスニング面7を指定するための操作画面であり、ユーザ操作に基づいて表示される。
【0110】
このエリア設定画面40には、ターゲット位置32の入力欄41、3Dビューの視点選択ボタン42、3Dビュー表示欄43、スピーカー装置10の取付位置の入力欄44、リスニング面7のフロントエンド(FE)の入力欄45及びリアエンド(RE)の入力欄46が設けられ、入力欄41の下側には、カメラ画像30が表示されている。
【0111】
入力欄41は、ターゲット位置32を指定するための操作領域であり、カメラ画像30上の位置を示す上下方向のずれ角δx及び左右方向のずれ角δyを入力することができる。つまり、ターゲットエリア4を規定するターゲット位置32は、ずれ角δx及びδyを入力欄41に入力することによっても指定することができる。また、この例では、4個のターゲット位置32が指定されているが、5個以上のターゲット位置32を指定することもできる。
【0112】
3Dビュー表示欄43には、音響空間内におけるスピーカー装置10、リスニング面7及びリスニングエリア5の位置関係が立体的に表示される。視点選択ボタン42は、3Dビュー表示欄43に表示させる音響空間の姿勢を選択するための操作アイコンであり、上、斜め、前又は横方向の視点を選択することができる。この例では、上方向の視点が選択されており、3Dビュー表示欄43には、音響空間内のスピーカー装置10及びリスニングエリア5を上方向から見た場合が表示されている。
【0113】
入力欄44は、スピーカー装置10の取付位置を指定するための操作領域であり、音響空間内における位置を示すx,y及びz座標を入力することができる。ここでは、カメラ15の位置の鉛直線をy軸、y軸と基準平面6との交点を原点、カメラ15の撮影軸と平行な基準平面6内の直線をz軸、y軸及びz軸と直交する直線をx軸としている。すなわち、y座標は、基準平面6からの高さであり、z座標は、撮影軸方向に関するスピーカー装置10からの水平距離である。
【0114】
入力欄45は、リスニング面7のFEの位置を指定するための操作領域であり、音響空間内のx,y及びz座標を入力することができる。入力欄46は、リスニング面7のREの位置を指定するための操作領域であり、音響空間内のx,y及びz座標を入力することができる。リスニング面7は、FEの位置とREの位置とをリスニングパラメータとして指定することによっても指定することができる。
【0115】
この様なエリア設定画面40において、カメラ画像30上でターゲットエリア4を指定し、スピーカー装置10の位置やリスニング面7のFE及びREの位置を指定することにより、リスニングエリア5が求められる。
【0116】
図17のステップS101〜S112は、
図10の拡声システム1における指向特性の制御時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、カメラ画像取得部21は、スピーカー装置10からカメラ画像30を取得し、モニター22上に表示する(ステップS101,S102)。
【0117】
次に、指向制御パラメータ生成部24は、ユーザ操作に基づいてカメラ画像30上のターゲット位置32を指定し、複数のターゲット位置32からターゲットエリア4を決定して限界エリアと比較する(ステップS103,S104)。このとき、指向制御パラメータ生成部24は、限界エリア外の位置がターゲット位置32として指定されていれば、ユーザ報知を行い、この処理を終了する(ステップS105,S112)。
【0118】
次に、指向制御パラメータ生成部24は、ユーザ操作に基づいて、リスニングパラメータを受け付け、リスニング面7を規定する面指定データを生成する(ステップS106,S107)。指向制御パラメータ生成部24は、面指定データに基づいて、ターゲットエリア4に対応するリスニング面7上の領域をリスニングエリア5として求める(ステップS108)。ステップS103からステップS108までの処理手順は、ターゲットエリア4又はリスニングパラメータのいずれかが変更されるごとに繰り返される(ステップS109)。
【0119】
次に、指向制御パラメータ生成部24は、求めたリスニングエリア5に基づいて、スピーカー装置10の指向特性を規定する指向制御パラメータを決定し、スピーカー装置10のDSP14に書き込んでこの処理を終了する(ステップS110,S111)。
【0120】
本実施の形態によれば、ユーザがターゲットエリア4を指定すれば、リスニング面7上におけるターゲットエリア4に対応する領域がリスニングエリア5として求められ、当該リスニングエリア5に基づいてスピーカー装置10の指向制御が行われる。このため、ユーザは、所定の音圧を確保すべき聴取対象エリアを容易に指定することができ、当該聴取対象エリアに応じて、スピーカー装置10の指向制御を行うことができる。また、カメラ画像30上でターゲットエリア4を指定すれば良いので、聴取対象エリアの指定を直感的に行うことができるとともに、聴取対象エリアの変更も容易である。
【0121】
また、音響空間内にスピーカー装置10を設置し、カメラ15により撮影されたカメラ画像30上においてターゲットエリア4を指定することにより、音響空間内におけるスピーカー装置10の実際の位置及び向きを考慮して、聴取対象エリアを指定することができる。従って、スピーカー装置10の指向特性を聴取対象エリアに精度よく一致させることができる。
【0122】
さらに、予め定められた限界エリアとターゲット位置32を比較してユーザ報知を行うので、限界エリア外の位置がターゲット位置32として指定された場合に、限界エリア外であることをユーザに認識させることができる。
【0123】
なお、実施の形態1〜4では、スピーカー装置10の最大放音角よりも広い画角を有するカメラ15を備えたスピーカー装置10の例について説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、カメラ15は、スピーカーセット11の最大放音角よりも画角が狭く、撮影軸を移動させる撮影方向調整機構を有するような構成であっても良い。
【0124】
<ドーム型カメラ>
図18は、筐体16のフロントパネル16a上に配設されるカメラ15の他の構成例を示した斜視図である。このカメラ15は、上下方向及び左右方向の最大放音角よりも画角が狭く、上下方向及び左右方向に撮影軸8を移動させることができる撮影方向調整機構を備えたドーム型カメラであり、監視用のモニターカメラ等と同様の構成からなる。
【0125】
撮影方向調整機構は、撮像部51をチルト方向54に回転可能に支持する支持部52と、支持部52をパン方向53に回転させる回転台部50により構成される。例えば、カメラ15は、パン方向53の回転軸が筐体16のフロントパネル16aに垂直となるように筐体16に取り付けられる。リスニングエリア算出部107は、ターゲットエリア4のカメラ画像30上の位置と、当該カメラ画像30を撮影した際の撮影軸8の向きとに基づいて、リスニングエリア5を求める。
【0126】
この様に構成すれば、撮影軸8を移動させることにより、最大放音角よりも画角の狭いカメラ15であっても、最大放音角内の任意の領域をカメラ画像30として撮影することができる。また、カメラ画像30を撮影した際の撮影軸8の向きを考慮してリスニングエリア5を求めることにより、最大放音角内の任意の領域をリスニングエリア5として適切に指定することができる。
【0127】
また、実施の形態4では、予め指定されたリスニング面7上の領域としてリスニングエリア5が求められる場合の例について説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、撮影領域を互いに重複させて複数のカメラを設け、カメラ画像上のターゲットエリア4をカメラ間で比較してリスニングポイントまでの距離を判定することにより、リスニングエリア5を求めるような構成であっても良い。
【0128】
具体的には、撮影領域が互いに重複している第1カメラ及び第2カメラが、カメラ15としてスピーカー装置10に設けられる。リスニングエリア算出部107は、第1カメラにより撮影された第1カメラ画像上のターゲットエリア4と、第2カメラにより撮影された第2カメラ画像上のターゲットエリア4とを比較し、リスニングポイントまでのリスニング距離Dを判定する。
【0129】
リスニングポイントは、音響空間において聴取位置を規定するための聴取対象ポイントであり、第1カメラ画像上の位置と、第2カメラ画像上の位置とを比較することにより、リスニング距離Dが求められる。例えば、第1及び第2カメラの視差を利用した三角測量により、リスニング距離Dを求めることができる。この様に構成することにより、リスニング面7を指定しなくても、リスニングエリア5が求められるので、指向制御パラメータの指定をさらに容易化することができる。
【0130】
また、リスニングエリア5を指定するその他の方法として、リスニングポイントにマイクロホンを設置し、スピーカーセット11の指向特性を変化させた際のマイクロホンの集音信号を解析して、マイクロホンまでの距離及び角度を特定することが考えられる。具体的には、スピーカーセット11の放音方向を順に変化させた際の集音信号を解析し、最大音圧が得られた放音方向に基づいて、スピーカー装置10から見たマイクロホンの角度を判定する。また、音響信号の到達時間からマイクロホンまでの距離を判定する。この様にして得られたマイクロホンの角度及び距離に基づいて、リスニングエリア5が特定される。
【0131】
また、実施の形態1〜4では、スピーカーセット11の指向制御が音響信号の遅延量をスピーカーユニット2ごとに調整することによって行われる場合の例について説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、スピーカー装置10の上下方向に関する指向制御は、遅延量調整により行い、左右方向に関する指向制御は、音量調整により行うような構成であっても良い。
【0132】
具体的に説明すれば、指向制御パラメータ決定部104は、スピーカーユニット2に供給される音響信号の遅延量をスピーカーユニット2の上下方向の位置に応じて異ならせるとともに、スピーカーユニット2の左右方向の位置に応じて音量を異ならせる。例えば、スピーカー装置10の正面方向よりも右側に放音方向を向ける場合は、フロントパネル16aを正面方向から見て左側のスピーカーユニット2ほど音量を大きくする。
【0133】
或いは、フロントパネル16aを正面方向から見て左側のスピーカーユニット2の音量を中央のスピーカーユニット2と同じレベルとする一方、右側のスピーカーユニット2の音量を無音レベルとする。この様に構成すれば、音響信号の遅延量を調整することにより、スピーカーセット11の上下方向の指向特性を効果的に制御するとともに、左右方向の指向特性は、スピーカーユニット2の音量を調整することによって簡易的に行うことができる。
【0134】
また、実施の形態1〜4では、スピーカー装置10の指向制御をスピーカーユニット2の位相制御によって行う場合の例について説明したが、本発明は、スピーカー装置10の指向制御をこれに限定するものではない。例えば、スピーカーユニット2の取付角度を調整する角度調整機構を設け、スピーカーユニット2の向きを制御することによって、スピーカー装置10の指向制御を行うようなものにも本発明は適用することができる。