(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
タービディメトリー、ネフェロメトリーおよび比色法によるアッセイを含めて、測光法による流体中の被検体の決定のための診断アッセイは一般的であり、良く知られている。そのようなアッセイは、それらの簡易な1工程法およびそれらの短いターンアラウンド時間のため、自動分析計に適用するのに理想的な候補である。現在では、高い時間効率および経費効率で測光アッセイを実施するために、高度に自動化された分光測光分析計が臨床診断に用いられている。この分析計でのワークフローは、何らかの分離または洗浄の工程が無い単純な操作を特徴とし、一般に下記のプロトコルを伴なう:a)未知量の被検体および被検体特異的なアッセイ試薬を含有する試料(血清または血漿)を反応キュベットに分注し、b)キュベット内で、試料および試薬を指示した温度において一定期間インキュベートし、c)光度計によりキュベット内のアッセイ溶液の光信号を測定し、それを試料中の被検体の量と相関させる。
【0003】
臨床化学分析計についてタービディメトリー、ネフェロメトリーおよび比色法によるアッセイに基づく広範な試験メニューが提供されている:たとえば、Roche Diagnostics cobas(登録商標)c。cobas(登録商標)c計器におけるこれらのアッセイの検出は、照射線源としてのタングステンハロゲンランプ、単色光を発生するための回折格子、および検出器としてのフォトダイオードアレイ(340〜800nmの間の12種類の波長を生じる12のダイオード)を備えた光度計に基づく。
【0004】
適用するアッセイとの干渉を示し、結果として変異した結果および誤った結果をもたらすクリティカルな試料が、臨床検査室における日常的な生化学的試験のために提出されることがしばしばある。
【0005】
比色法およびタービディメトリー法のような光学的方法を用いる検査室試験を扱う際、試料マトリックス中の有色物質または光を散乱する物質は通常は干渉を引き起こす。そのような干渉性物質の例は、ヘモグロビン(溶血)、ビリルビン(黄疸)および脂質(脂血)であり、それらは分光測光試験に一般に用いられる波長の光を吸収または散乱する。
【0006】
溶血は重大な干渉要因であり、それは通常は血清もしくは血漿を分離する前の血液の長期貯蔵、細い針を通して血液を急速に押しやることによる剪断力、混合する際の過度の撹拌、または血清の遠心および分離の物理的作用など種々の要因による、赤血球のインビトロ損傷に起因する。インビボ溶血が起きる頻度はより低いが、それも検査室試験に対して同じ影響をもつ。溶血が試験操作に干渉するメカニズムは、放出されたヘモグロビンによる色の干渉であるが、損傷を受けた赤血球からの被検体の漏出、および赤血球成分と被検体との化学的相互作用も同様に可能性のある理由である。結果的に、ヘモグロビン干渉のため、偽りのより高い、または偽りのより低い、被検体濃度が臨床試験で得られる可能性がある。試料に白血球および血小板のような他の血球の成分が混入している可能性もある。たとえば、白血病患者の血液に細胞崩壊によって変化が生じる可能性がある;凝結に際しての血小板崩壊は、より高い濃度の細胞内血小板成分を血清中に生じる。
【0007】
溶血はさらに、生化学的、免疫学的、物理的および化学的なメカニズムにより引き起こされる可能性がある。輸血に際して、主要血液型抗原と反応する抗体により補体依存性溶血が引き起こされる場合がある。物理的溶血は、低張性、たとえば低張溶液を用いる血液希釈による、および低圧(真空)または高圧による、赤血球の破壊によって引き起こされる。機械的溶血は、血液がインビボで医療デバイス、たとえばカテーテル、心臓弁の中を流れる際に、またインビトロで不適切な遠心および高温によって起きる可能性がある。混入物質がインビトロ溶血を引き起こす可能性もある。最後に、洗剤その他の混入物質が溶血を引き起こす可能性がある。血球を分離した後、血清または血漿の赤色により溶血が検出される。300mg/L(18.8mmol/L)を超える細胞外ヘモグロビン濃度では、血清または血漿の赤色により溶血を検出できる。治療用ヘモグロビン誘導体を含む試料は、常に強い赤色を呈している。若干の分析システムは、2つの波長における試料の吸光度を比較することにより、溶血の程度を測定する。代用血液として用いられるヘモグロビン由来の酸素キャリヤーの吸光スペクトルは、天然ヘモグロビンのものと実質的に差がない。
【0008】
ビリルビンは、ヘモグロビンの酵素分解により生成する黄色色素である。ビリルビン干渉に関する研究は、大部分は遊離ビリルビンまたは水溶性ジ−タウロビリルビンを血清に添加した実験に基づいていた。ある条件下では、ビリルビン分子は干渉に対するそれらの影響が質的および量的に異なる。ビリルビンが血液中に高濃度で存在すると、コンジュゲートしたビリルビンが尿中に出現する。タンパク尿症患者では、アルブミンに結合したビリルビンが尿中に出現する可能性もある。脳内出血後に、非コンジュゲート(遊離)ビリルビンが脳脊髄液の黄変を引き起こす。血液−脳関門の透過性が増大すると、アルブミンに結合したビリルビンがCSF(脳脊髄液)中に出現する可能性がある。ビリルビンは340nm〜500nmの間の波長に高い吸光度をもつ。したがって、これらの波長を用いる分光測光試験は、ビリルビンにより引き起こされる常に高いバックグラウンド吸光度のため、限界を示す。ビリルビン干渉による結果の見掛け上の増大または低下は、アッセイおよび被検体濃度に依存する。
【0009】
脂血性試料は、脂質含量の増大のため混濁または乳濁した外観をもつ血液、血清または血漿の試料である。脂質濃度の増大は他の疾患状態、たとえば糖尿病、エタノール使用、慢性腎不全および膵臓炎に対して二次的に起きる場合がしばしばあるので、脂血性試料を避けることはできない。脂血の存在は種々のメカニズムで多くの臨床化学的試験に干渉する可能性があり、最も頻度の高いメカニズムは、脂質、主にカイロミクロンおよび超低密度リポタンパク質VLDLによる光の散乱である。結果的に、適用した波長および脂質含量によっては、決定した被検体濃度が変異している可能性がある。
【0010】
結論として、試料中のヘモグロビン、ビリルビンおよび脂質、ならびに他の干渉物質の存在は、特定の被検体の定量を目的とした測光アッセイの測定結果に正または負の干渉を引き起こす可能性がある。干渉の大きさによっては、それらの結果が誤った解釈および不適切な介入をもたらす場合がある。
【0011】
溶血、黄疸および脂血に起因する欠点を克服するために、幾つかの方法が文献中に知られている。脂血性、黄疸性および溶血性の干渉は、分析前プロセスで試料を前処理して干渉物質を除去することによって低減できる;脂血性試料の場合は、たとえば高速遠心による。しかし、そのような対策は作業負荷を増大させ、経費効率および時間効率を低下させる;そのような対策は試料の取扱いに際して誤差も生じやすい。
【0012】
他の方策は、干渉に対して感受性でない他の臨床試験を用いることである。代替試験にはその検査室に無い他の計器プラットフォームが必要となる場合があるので、これは負担が大きい可能性がある;代替試験が市販されていない可能性もある。
【0013】
溶血、黄疸および脂血により引き起こされる干渉をブランキング(blanking)処理を使用して補正するのは、この制限を克服するための代替法である。これは、アッセイ試薬を添加する前に、一度適切に希釈した状態で試料の吸光度を測定することを伴なう。測定したその吸光度を最終吸光度から減算する。このブランキング処理を実現するための方策は、2種類の異なる試薬(ブランクおよびアッセイ試薬)および2つのキュベットの使用である。この方法によって結果が改善されるが、それには試験の処理量が半減するという1つの欠点がある。他の方法はキュベットへの試薬の逐次添加を伴なう:設定時間後に第1の読取りをする;その後、アッセイ試薬を添加してインキュベートする;最後に第2の読取りを行なう。しかし、この方法では通常はわずかな改善しか達成されない。さらに、確立しているアッセイプロトコルは第1の読取りに必要なこの新たな初期の試料希釈工程と適合しない可能性がある。
【0014】
バイクロマチック(bichromatic)分析も分析結果の補正が可能であり、自動化した検査室試験にしばしば適用される。二次(副)波長を用いて干渉物質を測定する。決定すべき被検体はこの二次波長で吸光しない。この測定値を次いで被検体の測定値から減算する。これは干渉物質の吸光度が両波長において同じであることを前提とするが、これは稀な例である。したがって、バイクロマチック原理は干渉の低減にわずかな改善をもたらすにすぎないであろう。さらに、干渉物質を化学的に排除することにより干渉を処理することができる:たとえばビリルビンをビリルビンオキシダーゼで、またはビタミンCをアスコルビン酸オキシダーゼで。
【0015】
さらに、マルチチャンネル分析計は、ルーティンな化学アッセイ、イムノアッセイおよび治療薬物の分析のために設計された全自動コンピューター制御システムであり、たとえばRoche Cobas 6000は動態、エンドポイントおよび非線形反応を実施するための分光測光法を用いている。最新の分析計と同様に、このシステムは2試薬法およびバイクロマチック分光測光法の適用により、ある程度はスペクトル干渉作用を低減する。試料の質は種々の方法により決定できる。一般的方法は、試料中に存在するビリルビン、ヘモグロビンおよび脂質を定量する血清指数試験を検査室分析計で実施することである。HIL指数の実装は、試験結果の精度および質を改善した。
【0016】
しかし、HIL指数または補正法を採用してすら、誤った結果をもたらす溶血、ビリルビンおよび脂質による干渉を示す患者試料がなお多数ある。検査室試験に対する溶血、ビリルビンおよび脂質による分析干渉は、検査室医療における最も一般的な問題である。これらの変異した結果および誤った結果は、不適正な解釈、誤診、および潜在的に不適切な介入、ならびに患者にとって好ましくない転帰をもたらす可能性がある。結果的に、ヘモグロビン、ビリルビンおよび脂質の濃度が特定のカットオフレベルを超える場合には、干渉物質を除去するために分析前工程で多数の試料を前処理し、次いで再測定しなければならない。前処理および再測定は追加経費および時間損失の原因であり、両要因ともこれらのアッセイを実施する検査室にとって重大である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、干渉を示す可能性がある試料の特定の被検体の量を測光アッセイにより決定するための方法であって、検査室分析計で被検体と被検体特異的アッセイ試薬との相互作用後の反応混合物の光信号の変化から特定の被検体を定量する方法に関する。試料の決定すべき特定の被検体について多重波長についての多重校正曲線を作成し、測定結果を計器プラットフォームのデータ管理システムに記憶させる。
【0024】
所望により、決定すべき試料中に存在するビリルビンおよび/またはヘモグロビンおよび/または脂質および/または他の干渉物質の量を定量するために干渉試験を実施し、それぞれの干渉物質の量を前決定したカットオフ値と比較する。同時に、試料の決定すべき特定の被検体についての光信号を反応混合物において多重波長で全反応時間にわたって測定する。試料中に存在する干渉物質の量および種類に応じて校正曲線を選択する。最終的に、選択した波長(単数または複数)について選択した校正曲線との比較により、試料の決定すべき特定の被検体の量を定量する。
【0025】
本発明の方法はさらに、反応時間、校正ポイント、校正モードおよびアッセイタイプを含む特定の測定条件を提供し、それらを測定プロトコルにさらに適用する。
試料の質は種々の方法により決定できる。一般的方法は、試料中に存在するビリルビン、ヘモグロビンおよび脂質を定量する血清指数試験を検査室分析計で実施することである。これにより、血清指数および特定の被検体の光信号測定を分析計で同時に実施できる。時には、高濃度の干渉物質の場合、血清試料をそれらの色によって視覚的に分類することすら可能である。
【0026】
特定の被検体に適用するために前決定した測定用波長、反応時間、校正モード、校正ポイント数により特徴づけられる多重条件下で校正曲線を作成することによって、標準法と比較してより精確にこれらの試料の特定の被検体を測定できるようになった。干渉を低減するのに最適化した1以上の校正曲線を選択し、それにより干渉物質の許容量が拡大する。
【0027】
本発明方法の使用により、干渉を示すクリティカルな試料、たとえば溶血性、黄疸性および/または脂血性の試料を、分光測光法による市販の検査室試験を用いて対応する計器プラットフォームで測定できるようになった。本発明者らは意外にも、干渉を示す試料の精度の改善が本発明方法により実現され、こうして分析前試料処理またはアッセイ法の変更を適用する必要性、あるいは最悪の場合には試料の拒絶が避けられることを見出した。
【0028】
定義:
本明細書中で用いる用語“決定”は、測光アッセイの反応混合物の光信号の変化からタービディメトリー、ネフェロメトリーまたは比色による測定に基づいて試料中の特定の被検体を査定、診断、判定、同定、評価、定量、または分類することを意味する。
【0029】
本明細書中で用いる用語“量”は、被検体の絶対量、あるいは被検体の相対量および/または濃度、ならびに/あるいはそれらに相関づけることができる、および/またはそれらから誘導できる、いずれかの数値および/またはパラメーターを包含する。
【0030】
本明細書中で用いる用語“凝集”は、主に、高分子間の表面相互作用により架橋および大型複合体の形成が生じる化学的現象である。この大型複合体の形成によって光散乱性が増大し、それを複合体のサイズに応じて肉眼で観察でき、あるいはタービディメトリーおよびネフェロメトリーによる検出を用いて測光法によりモニターできる。
【0031】
用語“分光測光アッセイ”は、“測光アッセイ”とも呼ばれ、当技術分野で周知である。測光アッセイにはタービディメトリーおよびネフェロメトリーによるイムノアッセイならびに比色アッセイが包含される。タービディメトリーおよびネフェロメトリーによるイムノアッセイでは、特定の被検体と被検体特異的結合パートナーとの凝集に基づく反応混合物の濁度の変化から特定の被検体を定量し、一方、比色アッセイでは呈色試薬の補助によって特定の被検体を定量する。
【0032】
本発明による用語“比色アッセイ”は、高度に自動化された臨床化学分析計における臨床診断で日常的に用いられる。均質比色アッセイは、それらの簡易な1工程法およびそれらの短いターンアラウンド時間のため、自動分析計に適用するのに理想的な候補である。臨床化学分析計のための広範な検査メニューが実際に提供されている;たとえば、Roche Diagnostics cobas(登録商標)c比色アッセイは、定量すべき被検体の存在下での色の形成または変化または消失を特徴とし、その色の形成または変化または消失を一般に分光光度計により測定する。この検出された色または光は一般に可視領域にあるので、アッセイの色の変化を実際に見ることができ、したがって比色アッセイと呼ばれる。検査室分析計で行なわれる代表的な比色試験は、臨床化学試験および酵素免疫試験(CEDIA、EMIT)である。MTTアッセイ、すなわちテトラゾリウム色素を基質として用いる酸化還元アッセイは、酵素NAD(P)Hアッセイのほかに比色アッセイのさらなる例である。紫外線がしばしば用いられる;一般的な補酵素NADHおよびNADPHはそれらの還元型では紫外線を吸収するが、それらの酸化型では吸収しないからである。したがって、NADHを基質として使う酸化還元酵素は、それがこの補酵素を消費するのに伴なう340nmの波長の紫外線吸収の低下を追跡することによりアッセイできる。酵素反応の結果として光の吸収が変化しない場合ですら、連携アッセイを用いることにより、なおその酵素に分光測光アッセイを使用できる。この場合、一方の反応の生成物を、もうひとつの容易に検出できる反応の基質として用いる。連携アッセイの例は酵素ヘキソキナーゼであり、これはそれのグルコース−6−リン酸産生を、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いてNADPH産生に連携させることによってアッセイできる。そのようなアッセイは、分光計で分光測光法により検出される。cobas(登録商標)c計器におけるこれらのアッセイの検出は、照射線源としてのタングステンハロゲンランプおよび検出器としてのフォトダイオードアレイ(340〜800nmの間の12種類の波長を生じる12のダイオード)を備えた光度計に基づく。そのO.D.(光学濃度、吸光度)は有色化合物の濃度に正比例する。発色を溶液中の物質の濃度に関連づければ、その濃度は適切な波長における光の吸収の程度を決定することにより測定できる。本発明のある態様は、比色イムノアッセイにおいて特定の被検体を呈色試薬の補助により定量する本発明方法である。
【0033】
用語“呈色試薬”は、340nmから800nmまでの範囲の一般的波長をもつ光度計で測定できるアッセイの色の変化、色の形成または色の消失をもたらすいずれかのアッセイ試薬またはアッセイ試薬混合物を包含する。多くの比色アッセイが、1工程以上の反応で有色生成物を生じる酵素および対応する基質を伴なう;色の変化は、基質自体ではなくNAD/NADHなど対応する酵素補因子により誘導されてもよい。被検体と1工程以上の反応で有色生成物を生じる試薬との特異的反応に基づく比色アッセイもある。EMIT(enzyme multiplied immunoassay technique)またはCEDIA(cloned enzyme donor immunoassay)などの比色イムノアッセイにおいては、一般にβ−ガラクシトダーゼまたはデヒドロゲナーゼのようなレポーター酵素とそれの対応する基質が反応して特徴的で検出可能な吸光特性をもつ生成物を生じることにより、色が形成される。レポーター酵素と基質の反応は、一般に被検体と抗体の間の免疫反応の後に行なわれ、次いでその免疫反応により酵素反応が誘発または阻害される。他の比色試験、たとえば検査室分析計に一般的な臨床化学試験においては、被検体と酵素もしくは他のいずれかの特異的試薬またはその組合わせとの反応により、色が形成、変化または消失する。ある場合には、被検体自体が酵素として作用する。酵素反応の結果として光の吸収が変化しない場合ですら、連携アッセイを用いることにより、なおその酵素に分光測光アッセイを使用できる。この場合、一方の反応の生成物を、もうひとつの容易に検出できる反応の基質として用いる。連携アッセイの例は酵素ヘキソキナーゼであり、これはそれのグルコース−6−リン酸産生を、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼによりNADPH産生に連携させることによってアッセイできる。
【0034】
用語“タービディメトリーおよびネフェロメトリー”は、溶液の混濁の量、すなわち濁度を測定するための当技術分野で既知の方法であり、光の透過および散乱に対するこの混濁の影響を測定することに基づく。液体の混濁は微細な懸濁粒子の存在により引き起こされる。光のビームが混濁試料を通過すれば、散乱によりそれの強度が低下し、その光の散乱量はそれらの粒子の濃度、サイズおよび粒度分布に依存する。分光光度計は、免疫凝集反応から生じる粒子サイズ増大による濁度増大(すなわち、透過光の光の強度の低下)を測定する。この濁度増大は、被検体により引き起こされた免疫凝集の直接的尺度、または被検体により引き起こされた免疫凝集阻害の間接的尺度である。ネフェロメトリーでは散乱光の強度を測定し、一方、タービディメトリーでは試料を透過した光の強度を測定する。
【0035】
タービディメトリーアッセイは、入射ビームが試料を通過するのに伴なうその強度の測定を伴なう。光ビームは懸濁液を通過するか、あるいは粒子により吸収、反射または散乱される可能性がある。その結果、光が懸濁液を透過するのに伴なって光の強度は低下する。非吸光性粒子について、散乱による光の強度の低下は濁度として表わされる。
【0036】
ネフェロメトリーアッセイとは、入射ビームが試料を通過する際に入射ビームから一定の角度θで散乱した光の測定を表わす。散乱性の粒子種は急速にサイズが増大するので、ネフェロメトリーではある時間後の散乱光の強度の変化を測定する。一定の抗体−ラテックス複合体の存在下で測定した場合、散乱光は初期の抗原濃度に比例する。さらなる説明は、J.A. Molina-Bolivar et al., Journal of Macromolecular Science, Part C-Polymer Review, 45:59-98, 2005に記載されている。
【0037】
本発明のイムノアッセイ法は、微粒子増強を伴なうかまたは伴なわない既知の凝集試験すべてについて作動する。本発明において使用するのが好ましいのは、“微粒子増強型の光散乱凝集試験”であり、これは“粒子増強型タービディメトリーイムノアッセイ(particle-enhanced turbidimetric immunoassays(PETIA))”とも呼ばれる。粒子増強型イムノアッセイは準均質アッセイであって何らかの分離または洗浄の工程を必要としないという有益性をもつので、臨床化学分析計での血清タンパク質、治療薬物および乱用薬物の定量のために臨床診断で日常的に用いられる。反応混合物中の特定の被検体と被検体特異的結合パートナーの間の光学検出を増強するために、被検体または被検体特異的結合パートナーを適切な粒子に連結させる。それにより、被検体は被検体特異的結合パートナーで被覆された粒子と反応して凝集する。被検体の量が増加するのに伴なって、凝集および複合体サイズが増大し、さらに光散乱の変化をもたらす。凝集した粒子を次いでタービディメトリーおよびネフェロメトリーによる測定により決定する。
【0038】
被検体は、被検体に対する反応性が高い少なくとも1種類の結合パートナーを保有する強い光散乱性の粒子と、被検体に対する反応性が低い少なくとも1種類の結合パートナーを保有する弱い光散乱性の粒子との混合物を含む;EP 0898169に記載。強い光散乱性の粒子は、弱い光散乱性の粒子より大きいサイズおよび/またはより高い屈折率をもつ。被検体の量を測定するための微粒子増強型の光散乱イムノアッセイに用いる微粒子試薬は、直径30〜600nmの微粒子の混合物を含み、これは、被検体に対する反応性が高いパートナーである少なくとも1種類の結合パートナーを保有する強い光散乱性の粒子と、被検体に対する反応性が低い少なくとも1種類の結合パートナーを保有する弱い光散乱性の粒子を含有する。
【0039】
微粒子の材料は、微粒子増強型の光散乱アッセイに適したいずれかの無機、有機またはポリマー材料であってよい。微粒子の材料は、微粒子増強型の光散乱アッセイに適したいずれかの無機、有機またはポリマー材料であってよい。そのような材料には、たとえばセレン、炭素、金;炭素、ケイ素またはゲルマニウムの窒化物、たとえばSi
3N
4;鉄、チタンまたはケイ素の酸化物、たとえばTiO
2またはSiO
2;およびポリマー材料、たとえばポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、エポキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(アルファナフチルメタクリレート)、ポリ(ビニルナフタレン)、またはそのコポリマー、特にスチレンと共重合性エチレン性不飽和化合物とのコポリマー、たとえばスチレン−(メタ)アクリレートコポリマーが含まれる。ポリマー材料から作成した微粒子、ならびにスチレンから重合した内側コアおよびスチレンと共重合性エチレン性不飽和化合物から共重合により形成された外側シェルからなるコア−シェル粒子が、特に適切である。粒子をベースとする大部分のアッセイは、ラテックス粒子を用い、その主なタイプはポリスチレンである。
【0040】
粒子増強型タービディメトリーイムノアッセイ(PETIA)には種々の試験様式がある;競合様式および直接様式。直接様式は、好ましくは大きいサイズをもつ被検体に適用される。これらの被検体は、多重エピトープを備えた多価抗原、たとえばタンパク質および微生物である。直接様式については、被検体と共に凝集する抗体で粒子を被覆する。
【0041】
タービディメトリーおよびネフェロメトリーによるアッセイは、競合阻害様式で実施することもできる。この様式は、小分子、たとえばハプテンを測定するために用いられることが最も多く、通常は乱用薬物検査および治療薬物モニタリングのための診断に適用される。この様式において、アッセイ試薬は、被検体特異的結合パートナーだけでなく、化学修飾された被検体をマイクロスフェア表面または他のキャリヤー分子、たとえばタンパク質(たとえば、ウシ血清アルブミン)または可溶性のポリマーもしくはオリゴマーに結合させることにより得られたものをも含有する。修飾されていない被検体と対照的に、この試薬は、分子中に多数コピーの被検体が存在するため、被検体特異的結合パートナーの存在下で凝集することができる。修飾された被検体の存在下での特定の被検体と被検体特異的結合パートナーとの凝集に基づく反応混合物の濁度の変化から、試料中の被検体を定量する。
【0042】
抗原を架橋剤に連結させる:たとえばポリハプテン;これは、EP 545350に示されるように抗体の結合部位に対して試料の抗原と競合する。この場合、可溶性ポリマー、タンパク質または微粒子が、多数コピーの抗原のためのキャリヤー分子として作用する。検査試料中の非標識抗原の量を、イムノアッセイにおいてそれが標識抗原と競合する能力により測定する。抗体上の結合部位は既に占有されているので、非標識抗原は標識抗原の結合能力を遮断する。したがって、競合イムノアッセイにおいては、アッセイに際して測定された標識がより少ないことはより多量の非標識(検査試料)抗原が存在することを意味する。
【0043】
本発明による用語“被検体(analyte)”は、いずれかの“インビトロ診断化合物”、たとえば血清タンパク質、治療薬物および乱用薬物を包含する。代表的な被検体には、抗原、ハプテン、抗体、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、癌細胞マーカー、組織細胞、ウイルス、ビタミン、核酸、農薬、酵素、酵素基質および酵素補因子が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で用いる用語“被検体”または“特定の被検体”は、試料中におけるそれの存在および/または濃度を判定すべき物質を表わす。用語“被検体”には、それに対する特異的反応パートナー(たとえば、抗体のように被検体を特異的に結合する結合分子または物質、または酵素のように被検体と特異的に反応する分子)があるか、あるいはそれに対する特異的結合パートナーを調製できる、いずれかの物質が含まれる。
【0044】
本発明に関して、用語“特定の被検体”は、試料中の測定すべき被検体それぞれについて、濃度を定量する特定の被検体それぞれに最適化されかつ被検体毎に異なる可能性がある特定の校正曲線ならびに特定の波長および反応時間を決定できることを意味する。
【0045】
本明細書中で用いる用語“被検体特異的反応パートナー”は、特定の被検体と反応して、それにより抗原−抗体免疫複合体のような反応複合体を形成するか、あるいは酵素−基質反応から生じる生成物のような新たな生成物を形成することができる。典型的な被検体特異的反応パートナーには、結合タンパク質、抗原、抗原フラグメント、抗体、抗体フラグメント、核酸、受容体、および粒子増強型の結合パートナー、酵素、基質(被検体が酵素である場合)、補因子、被検体の存在下で色の変化をもたらす特異的試薬が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の被検体に特異的であるそのような反応パートナーは、業者から入手できるか、あるいは当業者に既知の標準法に従って調製できる。被検体特異的反応パートナー対の例には、ハプテン:抗体、細胞:抗体、ビオチン:アビジン、ホルモン:受容体、ポリペプチド:抗体、オリゴヌクレオチド:相補的DNAまたはRNA、酵素−基質、酵素−補因子−基質、酵素−メディエーター−基質が含まれるが、これらに限定されない。抗体の場合のように被検体との結合複合体の形成をもたらす被検体特異的反応パートナーについては、“被検体特異的反応パートナー”の代わりに用語“被検体特異的結合パートナー”を同等に使用できる。
【0046】
本明細書中で用いる用語“抗体”は、外来物質の検知に応答して産生される免疫グロブリンを表わし、無傷分子、ならびにその機能性フラグメント、たとえばFab、F(ab’)
2、およびFvを含む。本発明のアッセイに免疫結合パートナーとして使用できる抗体には、いずれかの種のポリクローナル抗体、いずれかの種のモノクローナル抗体(キメラ抗体および/または組換え抗体を含む)が含まれる。モノクローナル抗体またはそのフラグメントは同一状態で無限量に製造できるので、一般に好ましい。
【0047】
本明細書中で用いる用語“抗原”は、抗体の抗原結合部位に結合されるそれの能力を特徴とする。抗体により認識され、それに抗体が結合する抗原領域は、“エピトープ”と呼ばれる。抗原は、動物またはヒトの体内に導入された際に、免疫応答、すなわち抗体産生を誘導できる物質である。ハプテンは、タンパク質などの大型キャリヤーに付着している場合にのみ免疫応答を誘発できる小分子である。キャリヤーは、同様にそれ自体では免疫応答を誘発しないものであってよい。身体がハプテン−キャリヤー付加物に対する抗体をいったん産生すると、小分子ハプテンも抗体に結合できる。
【0048】
本明細書中で用いる用語“試料”は、各個体の血液、すなわち全血、血漿、もしくは血清、または尿、CSF、喀痰から選択される体液の試料、あるいは分離した細胞の試料、あるいは組織または臓器からの試料を表わす。体液の試料は、周知の方法により分離できる。組織または臓器の試料は、いずれかの組織または臓器から、たとえば生検により摘出できる。分離した細胞は、体液または組織もしくは臓器から、遠心分離または細胞選別などの分離法により単離できる。好ましくは、本明細書中で述べるペプチドを発現または産生する細胞、組織または臓器から、細胞、組織または臓器の試料からの溶解物を分離する。
【0049】
本発明において用いる用語“干渉(interference)”は、試料中に存在する物質の作用であって結果の正確な値を変化させるものと定義される。本発明において用いる干渉を示す試料とは、分光測光試験に一般に用いられる波長の光を吸収もしくは散乱する1種類以上の干渉物質、たとえばヘモグロビン、ビリルビンおよび脂質、または他の干渉物質を含む試料を表わす。さらに干渉物質は、治療、乱用または免疫グロブリンに起因する薬物および医薬である。時には、高濃度の干渉物質の場合、血清試料をそれらの色により視覚的に分類することすら可能である。
【0050】
用語“溶血”は、赤血球その他の血球の細胞内成分が細胞外液中へ放出されることと定義され、種々のメカニズムで引き起こされる可能性がある。インビボまたはインビトロでの溶血は、結果を見掛け上、低下または増大させる可能性がある。細胞内濃度が細胞外濃度より10倍高い細胞成分は、溶血に際して血漿/血清中に増加する(たとえば、カリウム、乳酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)。血漿と血清の間の被検体濃度差も血球の溶解に起因する(本質的に血小板による):たとえば、ニューロン特異的エノラーゼ、カリウムおよび酸性ホスファターゼは血清中の方が高い。
【0051】
血球成分は、直接または間接的に被検体の測定に干渉する可能性がある。赤血球から放出されるアデニル酸キナーゼは、特にアッセイ混合物中のアデニル酸キナーゼ阻害剤が不適切な場合に、クレアチンキナーゼおよびCK−MB活性の増大をもたらす可能性がある。これに対し、CK−MBの免疫化学的定量はアデニル酸キナーゼによって影響されない。遊離ヘモグロビンのプソイドペルオキシダーゼ活性は、ヤンドラシック−グロフ(Jendrassik and Groof)のビリルビン法において、ジアゾニウム発色を阻害することにより干渉に関与する。血球から放出されるプロテアーゼは凝固因子の活性を低下させる可能性があり、一方、フィブリン解離生成物の形成は増大させる可能性がある。
【0052】
本発明において用いる用語“ビリルビン”は、遊離分子として、およびアルブミンに共有結合した状態で、血漿中に出現するものである。タービディメトリー原理を用いる凝固分析計において、25μmol/Lを超えるビリルビン濃度はアンチトロンビンIIIの測定値の臨床関連変化を生じる。高い方のビリルビン濃度では、ある種の凝固試験における干渉が有意であろう。アルカリ性条件下での酸化によるビリルビン吸光の低下は、脱タンパク質を行なわない改変ヤッフェ(Jaffe)法についてのビリルビン干渉の主な原因である。
【0053】
強酸性環境では、コンジュゲートしたビリルビンの吸光が紫外波長へシフトし、したがってリンモリブデン酸法によるリン酸の測定に際してそれの還元作用により干渉を引き起こす。
【0054】
ビリルビンはオキシダーゼ/ペルオキシダーゼをベースとする試験系において干渉する。ビリルビンは、それの濃度に比例して、試験系において形成されたH
2O
2と反応する可能性があり、それによってグルコース、コレステロール、トリグリセリド、尿酸およびクレアチニンの測定に用いられる酵素法の結果を一貫して低下させる。ビリルビンはアルブミンに結合する色素と競合干渉する。
【0055】
本発明において用いる用語“脂血(lipemia)”は、肉眼で見える、血清または血漿試料の混濁と定義される。これは、通常は300mg/dl(3,4mmol/L)を超えるトリグリセリド濃度で観察される。混濁の最も一般的な原因は、トリグリセリド濃度の増大である。脂質は、光の散乱および吸収により、ほぼすべての測光測定と干渉する。ブランキング処理に応じて、見掛け上の結果が増大または低下する可能性がある。高い方の濁度では、その方法の線形性の限界のため測定できない可能性がある。リポタンパク質は、有効試料水体積を減少させることにより、被検体の見掛け濃度を低下させる;血漿または血清中のリポタンパク質が取り込んだ体積が被検体濃度の計算に含まれるからである。これは、血漿または血清を炎光光度法により、およびイオン感受性電極を用いる間接測定により測定する際に、直接電位差測定と対照的に脂血血清中のナトリウムおよびカリウムの濃度が低くなる原因である。リポタンパク質が血清/血漿試料中に均一に分布していない場合、遠心後に同じ所見が生じる:水相に溶解した被検体の濃度は試料の下相より上層において低い。リポタンパク質が取り込むある種の薬物を含めて、脂質および脂溶性成分の濃度については逆のことが言える。リポタンパク質により抽出される成分は、検出用試薬、たとえば抗体に到達できない可能性がある。同様に、電気泳動法およびクロマトグラフィー法もマトリックス中に存在するリポタンパク質により影響される可能性がある。
【0056】
干渉物質の存在および量またはそれの非存在は、干渉試験により検出できる。干渉試験の例は、試料を検査室分析計で処理するのと同時に実施される“血清指数”試験である:いわゆる血清指数の実施により吸光度測定値を計算して、未知試料に存在する黄疸、溶血または脂血の準定量表示を得ることができる。主な干渉物質ヘモグロビン、ビリルビンおよび脂質について、H−指数(溶血)、I−指数(黄疸)およびL−指数(脂血)として定量指数値を求めることができる。脂血(L)の測定には波長700/660nmを用いる;この範囲は溶血および黄疸の影響がないからである。溶血(H)は600/570nmで測定され、脂血による吸光について補正が行なわれる。黄疸(I)は505/480nmで測定され、脂血および溶血による吸光について補正が行なわれる。試料を処理するのと同時に試料の質を査定することができる。Roche/Hitachi Systems/Cobas Integra Systems/cobas分析計で決定される特定の被検体についての血清指数に基づく干渉の詳細なリストが、マニュアル“Cobas,serum indices : reduction of clinical errors in laboratory medicine(Cobas,血清指数:検査室医療における臨床誤差の低減)”に示されている。
【0057】
本明細書中で用いる用語“カットオフ値”は、干渉物質の規定量を定義するために用いられる。血清指数試験の場合、干渉物質の規定量についての単位は、H(ヘモグロビンについて)、L(脂質について)およびI(黄疸について)値として表わされる血清指数値である。
【0058】
本明細書中で用いる用語“多重波長”は、当技術分野で既知の多重波長光度計で発生する波長を表わす。一般的な光度計は、タービディメトリーイムノアッセイについては分光光度計またはタービディメーターであり、ネフェロメトリーイムノアッセイについてはネフェロメーターである。好ましくは、比色アッセイならびにタービディメトリーおよびネフェロメトリーによるイムノアッセイに分光光度計が用いられる。cobas(登録商標)c計器でのこれらのアッセイの検出は、照射線源としてのタングステンハロゲンランプ、単色光を発生するための回折格子、および検出器としてのフォトダイオードアレイ(340〜800nmの12種類の波長を生じる12のダイオード)を備えた光度計に基づく。光度計、たとえばRocheの分析計cobas c(登録商標)311は、300nm〜800±2nmの12の波長を同時に測定する性能をもつ。好ましくは、波長340、376、415、450、480、505、546、570、600、660、700、800±2nmを用いる。本発明の方法は、多重波長を同時に測定する性能をもつcobas c 311のような自動分析計に用いると、特に有利である。選択した分光光度計の構造および得られる波長(デバイス毎に異なる可能性がある)に応じて、多重波長から1以上の特定の波長を選択する。測定は、好ましくは一定の温度、好ましくは20〜40℃の間、最も好ましくは37℃で実施される。
【0059】
本明細書中で用いる用語“光信号”は、反応混合物の吸光度測定を実施することにより得られる信号を表わす。光信号は、タービディメトリーおよび比色法によるアッセイの場合は吸光値であってもよく、ネフェロメトリーアッセイについては散乱光信号であってもよい。試料中の特定の被検体についての光信号を、反応混合物において多重波長で、好ましくは1回の操作で全反応時間にわたって同時に測定することができる。試料中に存在する干渉物質、たとえばビリルビンおよび/またはヘモグロビンおよび/または脂質および/または他の干渉物質に応じて、試料の決定すべき特定の被検体の量を、選択した校正曲線との比較により定量する。特定の被検体の定量のための校正曲線の選択は、さらに試料中の特定の被検体について得られる光信号の大きさに依存する可能性があり、したがって試料中の特定の被検体の濃度が低いか、中等度であるか、または高いかを考慮に入れる。
【0060】
標準試料中の被検体の既知濃度と標準試料の分析測定値(光信号)、たとえば光学濃度との相互関係をプロットすることにより予め描かれた“校正曲線(検量線)(calibration curve)”(一般に、標準曲線(standard curve)または作業曲線(working curve)とも呼ばれる)を用いて被検体の濃度を決定することは一般に実施されている。校正曲線が定量分析領域の比較的広い範囲にわたって適切な線形性をもつ場合、校正曲線は、定量分析の決定範囲の上限、下限および中間点の付近にある比較的少数の標準試料を用いて作成できる。しかし実際には、全般に線形であるというわけではない多数の校正曲線がある。特定の波長の吸光度から作成したタービディメトリー、ネフェロメトリーまたは比色法によるアッセイの校正曲線は、一般に非線形S字形校正曲線をもつ可能性があり、その場合、ゼロ付近の濃度では感度が損なわれ、高い方の濃度側では飽和状態である。S字形校正の決定にはマルチポイント校正が必要であり、その場合、複数濃度の標準試料を使用しなければならない。
【0061】
反応混合物の濁度測定に基づく凝集アッセイのための校正曲線を作成する際、反応時間のほかに波長の選択が曲線の傾き(分析感度)および達成可能な上側測定範囲にとって重要な役割をもつ。直接アッセイ様式について、小さい波長は高い傾きおよび高い信号をもつ校正曲線をもたらすことができるのに対し、高濃度領域について曲線は早期に平坦になってそれに匹敵する信号値を高濃度について生じ、結果的に検出上限も低くなる。他方、より大きい波長は小さい傾きをもつ曲線を生じる可能性はあるが、高濃度領域について区別可能な信号値を生じることができる。したがって、校正曲線を作成する目的で信号計算をするために1つの波長および対応する反応時間を選択するのは、分析感度と上側測定範囲の間での妥協である可能性がある。比色アッセイにおいても同様な状況に遭遇する。形成された有色生成物の吸光最大付近の波長を選択すると、高い信号および高い感度が保証されるが、他方で高い被検体濃度についての信号は検出器の指定光学範囲外になる可能性がある。
【0062】
本発明の校正曲線は特定の被検体について前決定され、それの計算に用いた下記のパラメーターにより特徴づけられる:波長(単数または複数)、反応時間、校正ポイント数、校正モードおよびアッセイタイプ。試料の特定の被検体を決定するために、多重波長について多重校正曲線を作成し、それぞれの校正曲線を下記の場合に最適化する:
− 無干渉試料
− 溶血性試料
− 黄疸性試料
− 脂血性試料
− 溶血性かつ黄疸性の試料
− 溶血性かつ脂血性の試料
− 黄疸性かつ脂血性の試料
− 溶血性、黄疸性かつ脂血性の試料
− および、試料中に存在する特定の被検体の量(高、低または中)をさらに考慮に入れた試料シナリオ。
【0063】
低濃度の特定の被検体を含む黄疸性試料の例として、校正曲線は、黄疸性干渉を低減すると同時に高い分析感度を達成するのに最適化される。
測定結果を計器プラットフォームのデータ管理システムに記憶させる。試料と被検体特異的試薬を混合することにより測定試料を調製した後、反応混合物を一定の全反応時間、反応させる。反応混合物中の試料の決定すべき特定の被検体の光信号を、校正曲線の記録について前記に述べた多重波長で同時に全反応時間にわたって測定する。
【0064】
試料測定と同時に、決定すべき試料中に存在するビリルビンおよび/またはヘモグロビンおよび/または脂質および/または他の干渉物質の量を定量するための干渉試験、たとえば血清指数評価を実施し、それぞれの干渉物質の量を前決定したカットオフ値と比較する。
【0065】
最後に、干渉試験で見出された干渉に応じて校正曲線を選択する;干渉のほかに、試料中の被検体の量も、試料の光信号の大きさにより指示された校正曲線の選択のために考慮に入れることができる。
【0066】
試料中の決定すべき特定の被検体の測定と並行して、主な干渉物質を定量するために、血清指数、たとえばヘモグロビン、ビリルビンおよび脂質の血清指数の定量評価を検査室分析計で実施する。決定すべき試料について干渉物質が検出されれば、高い信号および最適感度を保証するために、その干渉物質の吸光範囲の外側であるけれども測定すべき特定の被検体のアッセイ混合物の吸光最大に近い波長をそれの定量のために選択する。
【0067】
本発明のそれぞれの干渉タイプおよびその組み合わせについて、特定の校正曲線を確立する。校正曲線は、干渉を示す試料の特定の濃度範囲について干渉を低減するのに最適化される。校正曲線は、測定用波長、反応時間、校正モード、校正ポイント数を含めた多重条件下で作成することができ、決定すべき特定の被検体それぞれについて前決定される。すべての測定結果を計器プラットフォームのデータ管理システムに記憶させ、自動的に評価する。
【0068】
これらの別の波長および反応時間の使用により(これは、干渉物質が吸収しないかまたは吸収の程度がより低い波長で測定することを意味する)、干渉(単数または複数)の低減が達成される。
【0069】
本明細書中で用いる用語“アッセイタイプ”は、分析計における2つの基本的タイプの測光アッセイを表わす:エンドポイントアッセイおよび速度アッセイ(rate assay)。測定値は光度計によって特定の時点で取得される。反応が完了した後に測定値を取得する場合、有色(または混濁)生成物の強度は試料成分の濃度の指標である。これらはエンドポイントアッセイと呼ばれる。速度アッセイについて、反応の速度は分析される試料成分の濃度または活性に比例する。測定値は反応速度として取得される。この計器で実施できるこれら2つの手法の変法、およびそれら2つの手法の組み合わせもある。
【0070】
本明細書中で用いる用語“反応時間”は、エンドポイントアッセイの場合、信号値をそれから計算するのに用いる光信号の第1(または初期)測定と第2(または最終)測定の間の期間である。第1(または初期)測定は、最終試薬を反応混合物に添加する前または添加した直後に実施される。動態測定の場合、反応時間は時間当たりの吸光度の変化を表わす数値の計算に用いる期間であってもよい。“反応時間”は、“全反応時間(complete reaction time)”と同一であるか、あるいはそれより短い可能性がある。全反応時間は、試料および被検体特異的アッセイ試薬から構成される反応混合物をそれらの混合後に反応させる時間である。
【0071】
本明細書中で用いる用語“校正モード”は、測定した信号[吸光度または(速度アッセイについては)吸光度の変化速度]と目的被検体の濃度との有効な関係の決定を表わす。そのような信号/濃度関係をグラフ表示したものが校正曲線であり、作業曲線とも呼ばれる。分析計は種々のタイプの数学モデルを用いてこの関係を記述する。これらの数学モデルが校正タイプまたは校正モードと呼ばれる。2つの基本的な校正モード、すなわち線形および非線形校正モードがある。線形校正は、キャリブレーター(校正用物質)(calibrator)濃度に対してプロットした吸光度の読みが直線上にある試験に用いられる。線形校正が2つのキャリブレーター測定に基づくならば、それは線形2ポイント校正と呼ばれる。それが2より多いキャリブレーターに基づくならば、それは線形マルチポイント校正と呼ばれる。
【0072】
非線形校正は、異なる濃度における吸光度が非線形ではあるが再現性のあるプロットを形成する試験に用いられる。少なくとも3つ、最大6つのキャリブレーターが校正のために必要である。典型的な非線形校正タイプはロッドバード(rodbard)関数である。さらに、スプライン(Spline)のように、その校正曲線が断片的に規定された補間関数である校正タイプがある。
【0073】
本明細書中で用いる校正ポイント数という用語は、校正曲線を作成するために用いられる、試料標準品とも呼ばれるキャリブレーターの数である。特定の干渉物質の干渉を低減するためにそれぞれ最適化した校正曲線の例を以下に記載する:
【0074】
本発明のある態様は、干渉を示さない試料に用いる校正曲線1である。
本発明のさらなる態様は、溶血性干渉を示す試料に最適化した校正曲線2である。
本発明のさらなる態様は、黄疸性干渉を示す試料に最適化した校正曲線3である。
本発明のさらなる態様は、脂血性干渉を示す試料に最適化した校正曲線4である。
本発明のさらなる態様は、溶血性および黄疸性または脂血性の干渉を示す試料に最適化した校正曲線5である。
【0075】
本発明のさらなる態様は、低い被検体濃度で溶血性および/または脂血性および/または黄疸性干渉を示す試料に最適化した校正曲線6である。本明細書中で用いる用語“校正曲線6”は、満足すべき検出下限の達成に最適化すると同時に干渉(単数または複数)の低減に最適化した波長における、反応混合物の光信号から作成される。校正曲線6は、低濃度の被検体に最適化する(それにより検出下限を最適化する)と同時に干渉(単数または複数)の低減に最適化した波長で記録される。
【0076】
本発明のさらなる態様は、高い被検体濃度で溶血性および/または脂血性および/または黄疸性干渉を示す試料に最適化した校正曲線7である。本明細書中で用いる用語“校正曲線7”は、満足すべき検出上限の達成に最適化すると同時に干渉(単数または複数)の低減に最適化した波長における、反応混合物の光信号から作成される。校正曲線7は、高濃度の被検体に最適化する(それにより検出上限を最適化する)と同時に干渉(単数または複数)の低減に最適化した波長で記録される。
【0077】
本発明のさらなる態様は、2より多い校正曲線の使用であり、それらは測定範囲にわたって定めることができ、それぞれ特定の濃度範囲について試料の干渉を低減するのに最適化されている。
【0078】
光信号および干渉物質に応じて、理想的には、特定の被検体の定量のために前記のように1つの適切な校正曲線を選択し、選択した校正曲線との比較によりその特定の被検体の量を定量する。
【0079】
本発明において行なうように、1つではなく多重の校正曲線を用いて作業することにより、必要なキャリブレーターの数および濃度ならびに校正曲線についての曲線フィッティング操作に関する事柄が軽減されるなど、さらなる有益性が示される可能性もある。
【0080】
特定の被検体に適用するために前決定した測定用波長、反応時間、校正モード、校正ポイント数により特徴づけられる多重条件下で校正曲線を作成することによって、標準法と比較してより高い精度でこれらの試料の特定の被検体を測定できるようになった。
【0081】
被検体濃度を計算するための特定の被検体の定量のために、選択した波長および選択した反応時間で記録した校正曲線を、下記の基準により選択する:
1.校正曲線を選択するために、試料が干渉を示すかどうか、もしイエスであればどの種類の干渉(溶血、黄疸および/または脂血)であるかの判定を、理想的には計器で自動的に行なう。この判定は、干渉試験または血清指数試験から得られたデータを用いて、それぞれの干渉物質について得られた濃度をH−指数(溶血)、I−指数(黄疸)およびL−指数(脂血)として表わしたものを、カットオフ値と比較することにより行なわれる。その結果、試料中に存在する干渉の種類が求められる:試料は干渉を示さないか、あるいは溶血性であるか、あるいは黄疸性であるか、あるいは脂血性であるか、あるいは溶血性および/または黄疸性および/または脂血性の組合わせである可能性がある。試料中に存在する干渉物質に応じて、それの定量のための校正曲線、すなわち下記のいずれかについての校正曲線を選択する:
− 無干渉試料について、最適波長L(無)および最適反応時間t(無)で記録したもの、または
− 溶血性試料について、最適波長L(H)および最適反応時間t(H)で記録したもの、または
− 黄疸性試料について、最適波長L(I)および最適反応時間t(I)で記録したもの、または
− 脂血性試料について、最適波長L(L)および最適反応時間t(L)で記録したもの、または
− 溶血性および黄疸性試料について、最適波長L(HI)および最適反応時間t(HI)で記録したもの、または
− 溶血性および脂血性試料について、最適波長L(HL)および最適反応時間t(HL)で記録したもの、または
− 黄疸性および脂血性試料について、最適波長L(IL)および最適反応時間t(IL)で記録したもの、または
− 溶血性および黄疸性および脂血性試料について、最適波長L(HIL)および最適反応時間t(HIL)で記録したもの。
【0082】
2.干渉のほかに、試料中に存在する被検体の量をも考慮に入れて校正曲線を選択することもできる:この場合、試料が高い被検体濃度または低い被検体濃度のいずれをもつかを判定するために、試料の特定の被検体について測定した光信号の大きさと前決定した閾値との比較を行なう。そのような場合、被検体の定量のための測定範囲をカバーする2つの校正曲線が作成されるであろう:
− 低濃度の試料に最適な第1波長および最適な第1反応時間で記録した第1校正曲線、ならびに
− 高濃度の試料に最適な第2波長および最適な第2反応時間で記録した第2校正曲線。
【0083】
測定した試料が、閾値を超えるかまたは閾値より低いか、いずれの光信号またはこれから計算した濃度値を与えるかに応じて、2つの校正曲線のうちの1つが被検体の定量に用いられるであろう。必要であれば、高濃度、中濃度および低濃度レベル間の区別のように、より多くの濃度レベルを考慮することができる;この場合、校正曲線の選択のために2つの前決定した閾値を規定すべきである。
【0084】
本明細書中で用いる用語“第1波長”および第1反応時間は、低濃度の特定の被検体に最適化され、それにより検出下限が最大化される。それは、第1波長が第1反応時間との組合わせで、たとえば直接アッセイ様式の場合は高い信号を発生して、高い分析感度をもつ校正曲線を生じることを意味する。
【0085】
感度、分析感度、検出下限(LDL)、ブランク限界(LOB)、検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)は、ある分析法によって信頼性をもって測定できる被測定物(measurand)の最小濃度を表わすために用いられる用語である。これらの用語はすべて関連性があるが、別個の定義をもつ(参照:Lit. clin biochem rev 2008, 29, 49)。たとえば、用語“分析感度”は、校正曲線の傾きと定義される。本明細書中で用いる用語“検出下限(lower detection limit)”(LDL)は、本明細書中で下側測定範囲(lower measuring range)とも呼ばれる。LDLを推定するための代表的方法は、反復回数(たとえば、n=21)のゼロキャリブレーターまたはブランク試料を測定し、平均値xおよび標準偏差(SD)を決定することからなる。LDLは、x+2SDまたはx+3SDとして計算される。LDL決定のためのこの方法は、Kaiser (H. Kaiser, Fresenius Zeitschrift fuer analytische Chemie, 1965, 209, Nr.1, pages 1-18)により記載された方法によるものである。上昇型の校正曲線を伴なうアッセイについては、試料の少なくとも1つの光信号(少なくとも第1および第2波長で同時に全反応時間にわたって測定した試料の光信号のうち)またはこれから計算した少なくとも1つの信号値が対応する前決定した閾値よりより低ければ、第1波長および第1反応時間の校正曲線との比較により被検体の濃度を決定する。
【0086】
本明細書中で用いる用語“第2波長”および第2反応時間は、高濃度の特定の被検体に最適化され、それにより検出上限が最大化される。それは、第2波長および第2反応時間が、たとえば直接アッセイ様式の場合は上側測定範囲における異なる被検体濃度について区別可能な信号を発生して、高い上側測定範囲をもつ校正曲線を生じることを意味する。
【0087】
第1波長と第2波長は理想的には少なくとも5nmの差があるかまたは同一であり、一方、第1反応時間と第2反応時間は異なってもよく同一でもよい。
本明細書中で用いる用語“検出上限(upper detection limit)”(UDL)は、本明細書中で上側測定範囲(upper measuring range)とも呼ばれる。UDLは、信頼性をもって決定できる、試料中の被検体の最高量である。本発明において、UDLは、本方法の線形性を評価し、次いでその線形範囲内の最高濃度値をUDLとして選択することにより決定された。この方法は、一連の試料溶液からの被検体の復元率(recovery)(測定値)が被検体の実際の濃度(真の値)に比例する場合に、線形であると言われる(Arch Pathol Lab Med 2004, 128, pages 44-48)。校正曲線の形状(放物線状またはS字形の場合がある)を、その方法の測定値と真の値との関係を述べた線形性と混同してはならない。校正曲線は信号と濃度の関係を描いたものである。
【0088】
本発明に関して、用語“ダイナミックレンジ(dynamic range)”は、アッセイの測定範囲の大きさを表わし、本明細書中では検出上限(UDL)と検出下限(LDL)の比と定義する。別途指示しなければ、測定範囲という用語をLDLから始まってUDLで終わる濃度値として用いる。原則として、ダイナミックレンジを計算するために、LDL以外の感度用語、たとえばLODまたはLOQを使用でき、同様に上側測定範囲を記述するUDL以外の用語を使用できる。
【0089】
本発明の波長は、被検体測定の技術水準によるいわゆる“主波長”である。
本発明の1態様は、所望により干渉の補正および光度計ノイズの補償のためのブランク値として、さらなる波長を決定することである;これはバイクロマチック測定としても知られる(clin. Chem. 1979, 25, 1482 - 1484)。主波長それぞれについて、補正波長における信号を主波長における信号から減算することにより補正する目的でさらなる波長を記録するかどうかは任意である。
【0090】
干渉を示す試料中の特定の被検体を定量するために選択したそれぞれの波長および反応時間について、同時に測定した標準試料を用いて1つまたは多重の校正曲線を構築する。
本明細書中で用いる用語“閾値”は、本発明方法の被検体の規定された吸光値または規定された量、たとえば濃度値として表わされたものを定義するために用いられる;好ましくは濃度値が用いられる。閾値は、測定範囲をカバーするために被検体の定量に1以上の校正曲線を用いる場合に、本発明の方法に適用される。一般に2つの校正曲線、すなわち低い被検体濃度をもつ試料の定量に最適化した第1校正曲線、および高い被検体濃度をもつ試料の定量に最適化した第2校正曲線を用いる。理想的には、閾値は本発明方法の2つの校正曲線が第1校正曲線から第2校正曲線に変化するポイントから求められる。実施例2および
図3に示すように、フェノバルビタールアッセイについて、脂血性試料の定量のために2つの校正曲線を用いる;第1校正曲線は0から45μg/mLまでの濃度をカバーし、第2校正曲線は45から60μg/mLまでの濃度をカバーする。この場合、閾値は45μg/mlである。IVDアッセイについては、臨床判定値と一致しない濃度に閾値を選択することが重要である。
【0091】
閾値の選択について、通常は幅広い柔軟性がある。重要なことは、選択した閾値において両方の曲線がその方法の線形性ならびに精度および感度に関連する要件を満たすことである。たとえば、第2校正曲線は、理想的には少なくとも選択した閾値における濃度をカバーするLDLをもつべきである;また、第1校正曲線は、理想的には少なくともその選択した閾値まではその方法の線形性を示すべきである。
【0092】
本発明の校正曲線に最適な測定条件を選択するために可能な方法は下記の工程を含む:
1.最初に、多重波長で一連のデータを作成する。本発明の実施例1および2については、下記の試料の吸光値の測定を、たとえばcobas c 311分析計で得られる12の波長で同時に全反応時間にわたって実施した:
− 校正のために、少なくとも2〜6つの標準品を2回反復
− LDLの決定のために、ブランク試料(被検体濃度=0)を21回反復
− 精度(変動係数)の決定のために、少なくとも2つの試料(2つの異なる被検体濃度)を21回反復
− UDLおよび本方法の線形性の決定のために、既知UDLよりたとえば2〜4倍高い濃度をカバーする希釈系列
− 漸増量の干渉物質を含有するクリティカルな試料をシミュレートするために、被検体および漸増量の干渉物質(単数または複数)(ヘモグロビン、ビリルビンおよび/または脂質)を含有する試料。
2.無干渉試料の定量のための校正曲線に最適な波長および反応時間の選択は、従来の技術水準に従って達成される。
3.干渉物質(単数または複数)を含有する試料の定量のための校正曲線に最適な波長および反応時間の選択は、高い信号を保証し、したがって十分な感度を保証するために、その干渉物質(単数または複数)の吸光範囲の外側またはほぼ外側であるけれどもなお決定すべき被検体に特異的なアッセイ混合物の吸光最大に最も近い波長を選択することにより達成される。次いで、項目1で作成したデータを用いて最良の反応時間を試行錯誤法で選択する;
一定の被検体濃度をもち、漸増量の干渉物質(単数または複数)を加えた試料系列について、理論的な被検体濃度(無干渉試料の濃度)の復元率を、種々の条件(前記に定めた最適波長、反応時間)について試行錯誤法で決定する。理論的被検体濃度の復元率が±10%以内である場合、その濃度の干渉物質を許容される(または干渉を示さない)と規定する。高濃度の干渉物質に対して最良の許容度をもたらす波長および反応時間を選択する。これらの選択した波長および反応時間について、UDLおよびLDLを計算し、最良の測定範囲をもたらす条件(波長および反応時間)を校正曲線のために選択する。理想的には、項目2からの無干渉試料で達成される測定範囲に匹敵する測定範囲をカバーすべきである。実施例1でこの方法を適用した。
4.干渉物質を含む試料を定量すると同時にさらに被検体量を考慮に入れた校正曲線に最適な波長および反応時間の選択は、干渉(単数または複数)を低減すると同時に最適な測定範囲をもつ校正を得るという目的に従って行なわれる。この目的のために、少なくとも2つの校正曲線を定める:低い被検体濃度について第1波長および最適な第1反応時間で記録し、したがって測定範囲の下端をカバーする第1校正曲線、ならびに高い被検体濃度について第2波長および最適な第2反応時間で記録し、したがって測定範囲の上端をカバーする第2校正曲線;
最良の条件を選択するために可能な方法は下記を含む:
− 項目3に記載したようにその干渉に最適な波長(単数または複数)を選択する
− 次いで、低い被検体濃度をもつ少なくとも1つの試料系列および高い被検体濃度をもつ少なくとも1つの試料系列(それぞれの試料系列に漸増量の干渉物質(単数または複数)をスパイクしたもの)について、理論的な被検体濃度(無干渉試料の濃度)の復元率を、種々の条件(項目3に定めた最適波長、反応時間)について試行錯誤法で決定する。理論的被検体濃度が±10%以内である場合、その濃度の干渉物質を許容される(または干渉を示さない)と規定する。高濃度の干渉物質に対して最良の許容度をもたらす波長および反応時間を選択する。これらの選択した波長および反応時間について、UDL(高い被検体の試料について)およびLDL(低い被検体の試料について)を計算し、最良の測定範囲をもたらす条件(波長および反応時間)を第1校正曲線(低い被検体の試料)および第2校正曲線(高い被検体の試料)のために選択する。理想的には、項目2からの無干渉試料で達成される測定範囲に匹敵する測定範囲をカバーすべきである。実施例2でこの方法を適用した。
【0093】
本発明の1態様は、校正曲線を補正する例を提供することである。
本明細書中で用いる用語“全反応時間”は、特定の被検体を複数の波長で測定する期間である。2つの校正曲線の作成を目的として最良の2つの波長を選択するために、cobas c(登録商標)計器で得られる12の異なる波長で標準品を同時に測定した。この検出器の光学範囲内にある吸光値(0.0000〜3.0000の吸光度)のみを考慮に入れた。
【0094】
本発明のイムノアッセイの一般的な全反応時間は、1〜20分の範囲である。好ましくは、多重波長分光光度計型の光度計の全反応時間は、好ましくは約10分である。本発明のある態様は、特定の被検体の光信号を全反応時間中に測定するものである。最も好ましくは、特定の被検体の光信号を少なくとも第1および第2の主波長で同時に測定する。本明細書中で用いる用語“時間遅れ”は、特定の被検体を検出するための第1と第2の主波長間の期間である。本明細書中で用いる用語“同時に”は、60x秒未満の時間遅れ、たとえば10x秒未満の時間遅れ、好ましくは1x秒未満の時間遅れ、最も好ましくは1ミリ秒未満の時間遅れ、またはさらには0.1xミリ秒未満の時間遅れを意味することができる。最も好ましくは、用語“同時に”は時間遅れがないことを意味する。
【0095】
本発明のさらなる観点は、溶血性および/または黄疸性および/または脂血性および/または他の干渉を示す試料の分光測光ベースの検査室試験の干渉を低減するための方法であって、分析前試料処理の適用および/またはアッセイ法の変更なしに、測定用波長、アッセイポイント、校正ポイントおよび校正モードを含む特定の測定条件を測定プロトコルにさらに適用する方法である。
【0096】
ある態様は、さらに、試料が溶血性および/または脂血性および/または黄疸性であるかに応じて1以上の多重校正曲線を選択し、選択した校正曲線(単数または複数)との比較により特定の被検体の量を定量する、本発明による方法である。
【0097】
本発明のさらなる観点は、溶血性および/または黄疸性および/または脂血性干渉を示す可能性がある試料中の特定の被検体の量を決定する分光測光ベースの検査室試験の干渉を低減するための、測定プロトコルにさらに適用した、測定用波長、反応時間、校正ポイント、および校正モードを含む特定の測定条件の使用である。
【0098】
本発明のさらなる観点は、溶血性および/または黄疸性および/または脂血性干渉を示す可能性がある試料中の特定の被検体の量を決定するための分光測光による市販の検査室試験を用いる計器プラットフォームであって、それのデータ管理システムが、最良適合校正曲線を選択するために反応時間、校正ポイント、および校正モード、波長、血清指数のデータを処理することができる計器プラットフォームである。
【実施例】
【0099】
実施例1:CRPアッセイにおける溶血性干渉の低減
溶血性試料の干渉を低減するための本発明方法の有益性を、Rocheの市販CRP L3アッセイ、すなわちラテックス増強型タービディメトリーイムノアッセイ、およびRocheのcobas c311分析計を用いて査定した。
【0100】
計器cobas c311:
検出ユニットとして多重波長分光光度計を備えたRoche(Roche Diagnostics GmbH)のcobas c311分析計を実験に用いた。この計器は自動的に試料およびアッセイ試薬を反応セル内へピペッティングする。最大3種類の異なる試薬、R1、R2およびR3を試料に添加できる。この計器は、タングステンハロゲンランプ(12V/50W)を照射線源として用い、12の異なる波長で(340、376、415、450、480、505、546、570、600、660、700および800±2nmで)同時に、12のフォトダイオードから構成されるダイオードアレイにより吸光度を測定する。光路長は5.6mmであり、検出器の光学範囲は0.0000〜3.0000の吸光度である。各反応セルについて、水ブランクを測定し、次いで吸光度の読みを10分(本明細書中で全反応時間とも呼ばれる)に57回取得し、こうして各波長における吸光度につき合計57の測定ポイント(本発明において測光ポイントまたはアッセイポイントとも呼ばれる)が得られる。これらの測定ポイントのうち少なくとも1つを用いて濃度を計算することができる。この計器における2つの基本的タイプの測光アッセイがある:エンドポイントアッセイおよび速度アッセイ。測定を37℃で実施する。
【0101】
CRP L3アッセイ:
RocheのCRP L3試験(CRPL3,カタログNo.04956842)のアッセイ原理:ヒトCRPは、モノクローナル抗CRP抗体でコートしたラテックス粒子と共に凝集する;その凝集体をタービディメトリーにより測定する。
【0102】
すべてのRoche試験のための試薬はcobas cパックに備えられている。これらのカセットは、1〜3つの特別にデザインされた試薬ボトルを収容し、詳細な試薬および試験関連事項を含むバーコードラベルを備えている。CRP L3試験には、カセット内の2つの試薬を用いる:R1(ウシ血清アルブミンを含むTRIS緩衝液、および保存剤)およびR2(抗CRP(マウス)でコートしたラテックス粒子(グリシン緩衝液中)、免疫グロブリン(マウス)および保存剤)。CRP L3試験からのパッケージ添付文書に記載された手順を標準法として用いた。
【0103】
ピペッティング計画:2μLの試料および150μLの試薬R1を次いで反応セルに添加し、続いて24μlの希釈剤(水)で希釈した48μlのラテックス試薬R2を添加し、反応混合物を混合した。
【0104】
測定条件:測定のために、570nmを主波長として用い、800nmを補正波長として用いた。アッセイタイプは2ポイントエンドアッセイであった。2ポイントエンドアッセイは、試料ブランクを実施するエンドポイントアッセイである。この場合、2つの異なる測定ポイントにおける2つの吸光度の読みを考慮に入れる:第1の読みは通常は最終試薬の添加前または添加直後に取得される;第2の読みは最終試薬の添加後にいずれかの時点で取得される。校正曲線のための、したがって濃度計算のための吸光値は、第1の読みを第2の読みから減算することにより得られる。CRP L3について、第1の読みは測定ポイント8におけるものであって最終試薬の添加直後を意味し、第2の読みは測定ポイント18におけるものであり、これは2.0分の反応時間に対応する。校正曲線6を作成するために、Roche(カタログNo.11355279)からの6つの標準品を2回反復で、校正モードとしてスプラインを用いて測定する;これは測定したキャリブレーターの三次多項式により概算したデータポイント間の範囲にフィットし、したがって滑らかな曲線が得られる。
【0105】
干渉を査定するための手順:
CRP L3アッセイを、無干渉試料および溶血性試料について、パッケージ添付文書に記載された標準法(下記のaを参照)、および標準法と比較して他の波長を吸光度測定に用いる新規方法(下記のbを参照)により実施した。試料をcobas c311で3回反復測定した。最終的に、両方法で得られた溶血性干渉の大きさを査定した:すべてのヘモグロビン含有試料について測定したCRP濃度の復元率(中央値)を計算し、無干渉試料について得られたCRP値と比較した。初期CRP濃度値の復元率が±10%以内の場合、その試料は無干渉である;この復元率領域内に含まれる結果は報告価値のある(精確な)結果である。
【0106】
溶血性血清試料:種々の量のヘモグロビンを約154〜約1397mg/dLの間の濃度になるまで添加し、ヒトCRPを5mg/Lになるまで加えることにより調製した;
無干渉血清試料:ヒトCRPを5mg/Lになるまで加えることにより調製した。
【0107】
a)標準法:
・主波長:570nm
・副波長(補正用):800nm
・全反応時間/反応時間:10分/2.0分
・6ポイント校正
・校正モード:スプライン
・アッセイタイプ:エンドポイント(2ポイント−エンド)
b)新規方法:
・主波長:600nm
・副波長(補正用):800nm
・アッセイ時間/反応時間:10分/2.0分
・6ポイント校正
・校正モード:スプライン
・アッセイタイプ:エンドポイント(2ポイント−エンド)。
【0108】
結果:
表1に示すように、標準法を用いた場合、612のH指数(約612mg/dlのヘモグロビン濃度)まで溶血による干渉がみられない。より高いH指数について、復元率は±10%のウインドウ外である。
【0109】
表2に示すように、新規方法を用いた場合、少なくとも1397のH指数(約1397mg/dlのヘモグロビン濃度)まで溶血による干渉がみられない。
この結果は、新規方法を用いた場合にこのアッセイにより許容された溶血度に関して約2.3倍の改善を示す。言い換えると、新規方法を適用することにより、溶血性干渉が2.3倍低減した。新規方法を実装するために試薬配合の変更は必要ない;分析計のソフトウェアをプロセスの全自動処理に適合させなければならないだけである。
【0110】
新規方法をCRPL3アッセイに適用すると、波長および反応時間の変異のためアッセイ性能に若干の変化が生じる:検出上限(UDL)は標準法と同様なままであるが、検出下限(LDL)はわずかに損なわれる(0.06mg/Lから0.09mg/Lに)。
【0111】
このアッセイについて、分析計で本発明により行なわれると考えられるワークフローは下記のとおりであろう(
図2も参照):
− CRPについての校正曲線の作成:
− 標準条件下(標準法a)で記録した校正曲線
− 新規条件下(新規方法b)で記録した校正曲線
− 試料を下記のアッセイで同時に測定する:
− 血清指数アッセイおよび
− 少なくとも下記の波長でのCRPL3アッセイ:570nm、600nm、800nm
− 血清指数アッセイで得られたH指数値、およびそれとカットオフ値(H=612,H=1397)との比較に基づいて、試料中のCRPの定量のために対応する校正曲線を分析計により選択する:
− H≦612:標準条件下(標準法a)で記録した校正曲線
− H>612,H≦1397:新規条件下(新規方法b)で記録した校正曲線
− H>1397:試料の拒絶
− 光信号と選択した校正曲線との比較による試料中のCRP量の決定。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
実施例2:フェノバルビタールアッセイにおける脂血性干渉の低減
脂血性試料の干渉を低減するための本発明方法の有益性を、Rocheの市販フェノバルビタールアッセイ、すなわちラテックス増強型タービディメトリーイムノアッセイ(KIMS:kinetic interaction of microparticles in a solution(溶液中における微粒子の力学的相互作用))、およびRocheのcobas c311分析計を用いて査定した。
【0115】
計器cobas c311:
検出ユニットとして多重波長分光光度計を備えたRoche(Roche Diagnostics GmbH)のcobas c311分析計を実験に用いた。この計器は自動的に試料およびアッセイ試薬を反応セル内へピペッティングする。最大3種類の異なる試薬、R1、R2およびR3を試料に添加できる。この計器は、タングステンハロゲンランプ(12V/50W)を照射線源として用い、12の異なる波長で(340、376、415、450、480、505、546、570、600、660、700および800±2nmで)同時に、12のフォトダイオードから構成されるダイオードアレイにより吸光度を測定する。光路長は5.6mmであり、検出器の光学範囲は0.0000〜3.0000の吸光度である。各反応セルについて、水ブランクを測定し、次いで吸光度の読みを10分(本明細書中で全反応時間とも呼ばれる)に57回取得し、こうして各波長における吸光度につき合計57の測定ポイント(本発明において測光ポイントまたはアッセイポイントとも呼ばれる)が得られる。これらの測定ポイントのうち少なくとも1つを用いて濃度を計算することができる。この計器における2つの基本的タイプの測光アッセイがある:エンドポイントアッセイおよび速度アッセイ。測定を37℃で実施する。
【0116】
フェノバルビタールアッセイ:
Rocheのフェノバルビタール試験(カタログNo.04490924)のアッセイ原理:フェノバルビタール抗体を微粒子に共有結合させ、薬物誘導体を高分子に連結させる。溶液中における微粒子の力学的相互作用は、薬物コンジュゲートが高分子上の抗体に結合することにより誘導され、試料中にフェノバルビタールが存在することにより阻害される。血清試料中の薬物コンジュゲートとフェノバルビタール間に、微粒子上のフェノバルビタール抗体への結合に対する競合反応が起きる。その結果生じる力学的相互作用は、試料中に存在する薬物の量に反比例する。
【0117】
すべてのRoche試験のための試薬はcobas cパックに備えられている。これらのカセットは、1〜3つの特別にデザインされた試薬ボトルを収容し、詳細な試薬および試験関連事項を含むバーコードラベルを備えている。フェノバルビタール試験には、カセット内の2つの試薬を用いる:R1(フェノバルビタールコンジュゲートを含む緩衝液、保存剤および安定剤)およびR2(フェノバルビタール抗体(マウス モノクローナル抗体)でコートしたラテックス粒子(緩衝液中)、保存剤および安定剤)。フェノバルビタール試験からのパッケージ添付文書に記載された手順を標準法として用いた。
【0118】
ピペッティング計画:2μLの試料および93μLの試薬R1を次いで反応セルに添加し、続いて93μlのラテックス試薬R2を添加し、反応混合物を混合した。
測定条件:測定のために、600nmを主波長として用い、800nmを補正波長として用いた。アッセイタイプは2ポイントエンドアッセイであった。2ポイントエンドアッセイは、試料ブランクを実施するエンドポイントアッセイである。この場合、2つの異なる測定ポイントにおける2つの吸光度の読みを考慮に入れる:第1の読みは通常は最終試薬の添加前または添加直後に取得される;第2の読みは最終試薬の添加後にいずれかの時点で取得される。校正曲線のための、したがって濃度計算のための吸光値は、第1の読みを第2の読みから減算することにより得られる。フェノバルビタールについて、第1の読みは測定ポイント10におけるものであって最終試薬の添加直後を意味し、第2の読みは測定ポイント49におけるものであり、これは6.5分の反応時間に対応する。校正曲線を作成するために、Roche(カタログNo.03375790)からの6つの標準品を2回反復で、校正モードとしてRCM(Rodbard関数)を用いて測定する。
【0119】
干渉を査定するための手順:
フェノバルビタールアッセイを、無干渉試料および脂血性試料について、パッケージ添付文書に記載された標準法(下記のaを参照)、および標準法と比較して他の波長を吸光度測定に用いる新規方法(下記のbを参照)により実施した。試料をcobas c311で3回反復測定した。最終的に、両方法で得られた脂血性干渉の大きさを査定した:すべての脂質含有試料について測定したフェノバルビタール濃度の復元率(中央値)を計算し、無干渉試料について得られたフェノバルビタール値と比較した。初期フェノバルビタール濃度値の復元率が±10%以内の場合、その試料は無干渉である;この復元率領域内に含まれる結果は報告価値のある(精確な)結果である。
【0120】
脂血性血清試料:種々の量のintralipidを約6〜約1903mg/dLの間の濃度になるまで添加し、フェノバルビタールをそれぞれ5および45μg/mLになるまで加えることにより調製した;
無干渉血清試料:フェノバルビタールをそれぞれ5および45μg/mLなるまで加えることにより調製した。
【0121】
a)標準法:
・主波長:600nm
・副波長(補正用):800nm
・全反応時間/反応時間:10分/6.5分
・6ポイント校正
・校正モード:RCM(Rodbard)
・アッセイタイプ:エンドポイント(2ポイント−エンド)
b)新規方法:
フェノバルビタール濃度5μg/mLについて:
・主波長:505nm
・副波長(補正用):800nm
・全反応時間/反応時間:10分/6.5分
・6ポイント校正
・校正モード:RCM(Rodbard)
・アッセイタイプ:エンドポイント(2ポイント−エンド)
フェノバルビタール濃度45μg/mLについて:
・主波長:450nm
・副波長(補正用):800nm
・全反応時間/反応時間:10分/3.6分
・6ポイント校正
・校正モード:RCM(Rodbard)
・アッセイタイプ:エンドポイント(2ポイント−エンド)。
【0122】
結果:
表3に示すように、フェノバルビタール濃度5μg/mLについて、標準法を用いた場合、598のL指数(約598mg/dlのintralipid濃度)まで脂血による干渉がみられない。より高いL指数について、復元率は±10%のウインドウ外である。
【0123】
表4に示すように、フェノバルビタール濃度5μg/mLについて、新規方法を用いた場合、902のL指数(約902mg/dlのintralipid濃度)まで脂血による干渉がみられない。
【0124】
表5に示すように、フェノバルビタール濃度45μg/mLについて、標準法を用いた場合、802のL指数(約802mg/dlのintralipid濃度)まで脂血による干渉がみられない。より高いL指数について、復元率は±10%のウインドウ外である。
【0125】
表6に示すように、フェノバルビタール濃度45μg/mLについて、新規方法を用いた場合、1262のL指数(約1262mg/dlのintralipid濃度)まで脂血による干渉がみられない。
【0126】
これらの結果は、新規方法を用いた場合にこのアッセイにより許容された脂血度に関して約1.5倍の改善を示す(表7を参照)。言い換えると、新規方法を適用することにより、溶血性干渉が1.5倍低減した。新規方法を実装するために試薬配合の変更は必要ない;分析計のソフトウェアをプロセスの全自動処理に適合させなければならないだけである。
【0127】
新規方法をフェノバルビタールアッセイに適用しても、波長および反応時間の変異によるアッセイ性能の変化は生じない:UDLおよびLDLは標準法と同様なままである。
したがって、このアッセイについて分析計で本発明により行なわれると考えられるワークフローは下記のとおりであろう(
図3も参照):
1. フェノバルビタールについての校正曲線の作成:
− 標準条件下(標準法a)で記録した校正曲線
− 新規条件下(新規方法b)で記録した2つの校正曲線
2. 試料を下記のアッセイで同時に測定する:
− 血清指数アッセイおよび
− 少なくとも下記の波長でのフェノバルビタールアッセイ:450nm、505nm、600nm、800nm
3. 血清指数アッセイで得られたL指数値、およびそれとカットオフ値(L1=598,L2=902,L3=1262)との比較に基づいて、
かつ試料のフェノバルビタールアッセイで得られた光信号と前決定した閾値T1(T1は、標準法で測定した45μg/mLのフェノバルビタール濃度に対応する校正曲線における光信号であってよい)との比較によるフェノバルビタール濃度のおおまかな推定に基づいて、
試料におけるフェノバルビタールの定量のために対応する校正曲線を分析計により選択する:
− L≦598 → フェノバルビタール濃度とは無関係に、標準条件下(標準法a)で記録した校正曲線;
− L>598 → 実測L指数に基づいて、かつフェノバルビタールアッセイにおいて試料から測定された光信号と前決定した閾値との比較による試料のおおまかなフェノバルビタール濃度に基づいて、校正曲線を選択する;
− L>598かつL≦902であれば、かつ
測定した光信号が<45μg/mLのフェノバルビタール濃度を指示すれば:
→ 新規条件下(新規方法b,5μg/mLのフェノバルビタールについての条件)で記録した校正曲線;
− L>598かつL>902であれば、かつ
測定した光信号が<45μg/mLのフェノバルビタール濃度を指示すれば:
→ 試料の拒絶;
− L>598かつL≦1262であれば、かつ
測定した光信号が≧45μg/mLのフェノバルビタール濃度を指示すれば:
→ 新規条件下(新規方法b,45μg/mLのフェノバルビタールについての条件)で記録した校正曲線;
− L>598かつL>1262であり、かつ
測定した光信号が≧45μg/mLのフェノバルビタール濃度を指示すれば:
→ 試料の拒絶;
4. 光信号と選択した校正曲線との比較による試料中のフェノバルビタール量の決定。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】