特許第6298052号(P6298052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298052低分子量および超低分子量ヘパリンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298052
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】低分子量および超低分子量ヘパリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/10 20060101AFI20180312BHJP
   A61K 31/727 20060101ALN20180312BHJP
   A61P 7/02 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   C08B37/10
   !A61K31/727
   !A61P7/02
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524817(P2015-524817)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公表番号】特表2015-523451(P2015-523451A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】ES2013070575
(87)【国際公開番号】WO2014020227
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】P201231257
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】515030152
【氏名又は名称】ラボラトリオス ファルマセウティコス ロビ エス. エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】ギレルモ・フランコ・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】イボン・グティエロ・アドゥリス
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−517185(JP,A)
【文献】 特表2013−529620(JP,A)
【文献】 特表2004−509339(JP,A)
【文献】 特開2001−187802(JP,A)
【文献】 特表2004−504451(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161235(WO,A1)
【文献】 VISKOV C ET AL,Description of the chemical and pharmacological characteristics of a new hemisynthetic ultra-low-molecular-weight heparin, AVE5026,JOURNAL OF THROMBOSIS AND HAEMOSTASIS,2009年,vol. 7, no. 7,p.1143-1151
【文献】 Y. XU ET AL,Chemoenzymatic Synthesis of Homogeneous Ultralow Molecular Weight Heparins,SCIENCE,2011年,vol. 334, no. 6055,p.498-501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/10
A61K 31/727
A61P 7/02
C08B 37/10
A61K 31/727
A61P 7/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VLMWHおよび/またはLMWH組成物を得るための方法であって、
a)アルカリ金属ヘパリンまたはアルカリ土類金属ヘパリンのヘパリン酸ベンザルコニウムへの塩転移反応(transalification)と、
b)ホスファゼン塩基またはグアニジンから派生する塩基の添加を伴う、有機溶媒中での解重合と、
c)アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成する塩転移反応(transalification)とを備え、
前記有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミドおよび/またはホルムアミドから選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
工程b)と工程c)との間において、工程b)で得られた生成物を過酸化水素で処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)の後に得られた生成物を精製する請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程c)後に得られた生成物を7.5%〜12.5%(w/v)の濃度で水に溶解することによって精製し、6.5と7.25の間の値にpH調整し、5%〜10%(w/v)の濃度の塩化ナトリウムを添加し、メタノールを使用して沈殿させる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
解重合工程が、ジクロロメタン中で、20〜40℃の温度で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび各添加の塩基との質量容積比は、1:0.5〜1:0.05である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび各添加の塩基との質量容積比は、1:0.3〜1:0.1である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程b)と工程c)との間の前記処理において、ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび過酸化水素との質量容積比は、1:1〜1:0.01である請求項2に記載の方法。
【請求項9】
工程b)と工程c)との間の前記処理において、ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび過酸化水素との質量容積比は、1:0.2〜1:0.05である請求項2に記載の方法。
【請求項10】
平均分子量が2903 Daであり、抗第Xa因子活性(抗FXa活性)が193 IU/mgであり、抗第IIa因子活性(抗FIIa活性)が9.3 IU/mgであるLMWH。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量ヘパリン(LMWH)および超低分子量ヘパリン(VLMWH)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリンはグリコサミノグリカンとよばれる多糖類に属し、ウロン酸(L−イズロン酸またはD−グルクロン酸)とD−グルコサミンから成り、交互に結合している。L−イズロン酸は、2−O硫酸化(2−O−sulfated)することができ、D−グルコサミンは、N硫酸化および/または6−O硫酸化(6−O−sulfated)することができ、より軽度にN−アセチル化または3−O硫酸化(3−O−sulfated)する(非特許文献1)。
ヘパリンは、好ましくは、ナトリウム塩として使用されるが、他のアルカリ金属塩又はアルカリ塩として使用され、主に抗凝固剤および抗血栓剤として使用される(非特許文献2)。
【0003】
ヘパリンは、その分子量に応じて、未分画ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)、超低分子量ヘパリン(VLMWH)に分類することができる。LMWHとVLMWHはUFHの元の分子の解重合からなる。
【0004】
LMWHの抗血栓作用は、その他のヘパリンと同様に、アンチトロンビンIII(ATIII)の存在を必要とする。ヘパリンは、三元複合LMWH−ATIII−Xa因子を形成し特定の五糖配列により、アンチトロンビンに結合する。この阻害は、抗血栓作用として知られている。これとは対照的に、抗凝固作用において、トロンビンの中和には三元複合体、LMWH−ATIII−第IIa因子の形成を必要とし、そのためには、少なくとも18の糖類が必要とされる。
【0005】
ヘパリンナトリウムに関するLMWHの改良は、LMWHはヘパリンナトリウムに比べ広範囲なATIII活性化部位での濃縮に起因している。
【0006】
さらに、未分画ヘパリンおよび既知の解重合方法(酵素、亜硝酸、β脱離など)によって得られる各種LMWHまたはVLMWHにおいて、五糖類の特異的かつ排他的な二糖単位の含有量の定量化により、一般構造内の五糖類の量の決定を可能にする手段があり、N−スルホ−3−O−スルホ−D−グルコサミン(ANS、3S)に結合されるD−グルクロン酸(G)に対応する。この手段により、この二糖の割合とヘパリン構造内の五糖類、したがって、対象ヘパリンの抗FXa活性の含量との間の良好な相関を築くことができる(非特許文献3)。
【0007】
従来技術ではLMWHの調製のための種々の方法が記載されている。特許文献1には、以下の段階を含むLMWHを得る工程が記載されている。ベンゼトニウムヘパリネートの作用によるヘパリン塩の塩転移反応(transalification)、塩化ベンジルの作用によるベンゼトニウムヘパリネートのエステル化、ヘパリンベンジルエステルのナトリウム塩の精製および製造、ベンゼトニウム塩の作用によるヘパリンベンジルエステルの塩転移反応(transalification)、有機媒体中の強塩基による解重合、エステルのケン化および必要に応じて、その生成物の精製が行われる。本発明では、ヘパリンのベンジルエステル中間体の事前形成が必要であり、それと同時に、塩基として機能する、対応する第四級アンモニウムのヘパリンを生成しなければならない。本発明の方法は単純で、ベンジルエステル中間体を調製する必要性を排除することにより、合理的に工程のコストおよび時間を節約することができる。
【0008】
特許文献2には、以下の平均分子量の特性を有する低分子量ヘパリンを得るための方法が記載されている。2000−4000(Da)、抗FXa活性100〜150(IU/mg)、抗第IIa因子活性10(IU/mg)以下のLMWHは、以下の工程を含む、非水性媒体中で、ヘパリン酸ベンザルコニウム処理によって得られる。ヘパリン酸ベンザルコニウムの作用によるヘパリンナトリウムの塩転移反応(transalification)、有機媒体塩基の第一解重合、ナトリウム塩の作用によるベンザルコニウム塩の塩転移反応(transalification)、第一解重合後に得られるベンザルコニウム中間体の塩形成、有機媒体塩基の第二解重合、ナトリウム塩の作用によるベンザルコニウム塩の塩転移反応(transalification)、最終精製を行う。
【0009】
最後に、特許文献3には前述の特許文献2と同様の方法が記載されているが、異なる点は形成される塩がベンゼトニウムヘパリンであることである。この方法で使用される塩基は、トリトンB、水酸化第四級アンモニウムであり、文献にはいずれの水酸化第四級アンモニウムも使用可能とあるが、この方法において塩基にどのように影響を及ぼすことができるかが教示されておらず、いずれの塩基が使用できるため、決定的要因ではないことが説明されている。
【0010】
従って、従来技術で知られているLMWHとVLMWHの調製の効率的な代替方法の開発は、業界にとって非常に有益となる可能性がある。ATIII特定五糖配列を最大限に尊重する方法を提供でき、塩化ベンジルの作用によるベンゼトニウムヘパリネートのエステル化、ベンゼトニウム塩の作用によるヘパリンベンジルエステルの塩転移反応(transalification)、前記エステルの後続のケン化などの段階を省ける可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第01955436号公報
【特許文献2】欧州特許第1070503号公報
【特許文献3】スペイン特許第2003197号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Biochem.J.(1988)Vol.254,pp.781−787
【非特許文献2】Basic principles and clinical practice(2006)pp.1673−1688
【非特許文献3】Seminears in Thrombosisand Hemostasis(2007)Vol.33,pp.478−487
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、LMWHとVLMWHを製造するための高収率かつ位置選択性の高い、より精選された新方法を発見した。さらに、本発明の工程は、他の既知の方法よりも単純である。
【0014】
本発明者らは、β−排除のメカニズムによるLMWHとVLMWHの半合成工程において、ヘパリン酸ベンザルコニウムの解重合のための基質として特別に利用することは、強塩基の作用および、立体障害としてATIIIの活性化五糖を保持するための能力を生み出すことであり、この五糖はその構造中に三硫酸化単糖が存在するため、したがって、硫酸化の程度が低い単糖に存在する分子破損の可能性よりも立体障害があることを実証した。
【0015】
本方法は、塩転移反応(transalification)の第一段階によって特徴付けられる。つまり、別の塩への塩変換の反応であり、ホスファゼン塩基を用いた解重合またはグアニジン誘導体の塩基そして、最後の塩転移反応(transalification)である。
【0016】
したがって、本発明の第一の態様は、以下の工程を含む本発明の組成物を製造する方法に関する。
a) アルカリ金属ヘパリンまたはアルカリ土類金属ヘパリンのヘパリン酸ベンザルコニウムへの塩転移反応(transalification)、
b) ホスファゼン塩基またはグアニジンから派生する塩基の添加による有機媒体基の解重合、
c) アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成する塩転移反応(transalification)である。
【0017】
本明細書に、好ましい実施形態の例示的な図面を添付するが、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】重水素水(DO)において298Kで記録された、実施例4に記載されるトリトンBで解重合される生成物の13C−H HSQCスペクトルのアノマーシグナル(H1−C1相互関係)の領域を示す。
図2】重水素水(DO)において298Kで記録された、実施例4に記載されるBEMPで解重合される生成物の13C−H HSQCスペクトルのアノマーシグナル(H1−C1相互関係)の領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、重水素水(DO)において298Kで記録された、実施例4に記載されるトリトンBで解重合される生成物の13C−H HSQCスペクトルのアノマーシグナル(H1−C1相互関係)の領域を示す。スペクトルにおいて、五糖を形成する5種の単糖類に対応する5種の相互関係ピークが観察され得る。ANSred、還元端のN−スルホ−D−グルコサミン;I2S、L−イズロン酸2−硫酸塩;ANS、3S、N−スルホ−3−O−スルホ−D−グルコサミン;G−(ANS,3S)、ANS,3SユニットおよびANS−(G)を先行するD−グルクロン酸、D−グルクロン酸環を先行するN−スルホ−D−グルコサミンである。G−(ANS,3S)ユニットのH1−C1相互関係ピークは、円により強調され(なぜならば、それは五糖の最も特徴的なシグナルであるからである)、そして種々のサンプルにおけるその存在を定量化するために基準として取られるであろう。
【0020】
図2は、重水素水(DO)において298Kで記録された、実施例4に記載されるBEMPで解重合される生成物の13C−H HSQCスペクトルのアノマーシグナル(H1−C1相互関係)の領域を示す。スペクトルにおいて、五糖を形成する5種の単糖類に対応する5種の相互関係ピークが観察され得る。ANSred、還元端のN−スルホ−D−グルコサミン;I2S、L−イズロン酸2−硫酸塩;ANS、3S、N−スルホ−3−O−スルホ−D−グルコサミン;G−(ANS,3S)、ANS,3SユニットおよびANS−(G)を先行するD−グルクロン酸、D−グルクロン酸環を先行するN−スルホ−D−グルコサミンである。G−(ANS,3S)ユニットのH1−C1相互関係ピークは、円により強調され(なぜならば、それは五糖の最も特徴的なシグナルであるからである)、そして種々のサンプルにおけるその存在を定量化するために基準として取られるであろう。
【0021】
本発明において、用語「ホスファゼン塩基またはグアニジンから誘導される塩基」は、中性で強く、穏やかな求核性を有する塩基を示し、例えば、P1−t−Bu、P2−t−Bu、t−BuP4、BEMP(2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルヒドロ−1,3−ジアザ−2−ホスホリン)、TTMG(2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)であり、非プロトン性溶媒中で強塩基(MeCN pKa BEMP=27.6,DMSO pKa t−BuP4H=32)である。
前記の本発明の第一の態様は、以下の工程を含むVLMWH組成物および/またはLMWHを得るための方法に関する。
a) アルカリ金属ヘパリンまたはアルカリ土類金属ヘパリンのヘパリン酸ベンザルコニウムへの塩転移反応(transalification)、
b) ホスファゼン塩基またはグアニジンから派生する塩基の添加による有機媒体基の解重合、
c) アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成する塩転移反応(transalification)である。
【0022】
最終生成物が工程b)および工程c)間に精製される必要がある場合には、有機過酸化物および/または無機過酸化物が添加される。
【0023】
好ましくは、工程a)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のヘパリンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の未分画ヘパリンである。
【0024】
好ましくは、使用される過酸化物は、過酸化水素である。有機過酸化物の他の例としては、メチルエチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、アセトンペルオキシドが挙げられる。無機過酸化物の例としては、(O−2とIAおよびIIA族の金属の存在によって特徴付けられる化合物である。
【0025】
好ましくは、工程c)の後に得られた生成物は、精製される。好ましくは、生成物の精製は、5%〜20%(w/v)の濃度で水に生成物を溶解すること、6と7.5の間の値にpH調整、3%〜15%(w/v)の濃度の塩化ナトリウムの添加、アルコールによる沈殿によって行われる。好ましくは、生成物は7.5%〜12.5%(w/v)の濃度で水に溶解させ、6.5%〜7.25%の間の値にpH調整、5%〜10%(w/v)の濃度の塩化ナトリウムの添加、メタノールによる沈殿によって行われる。
【0026】
解重合の工程は、有機溶媒中で行われ、好ましくは、有機溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミドおよび/またはホルムアミドである。特に、有機溶剤は20〜40℃間の温度のジクロロメタンである。
【0027】
工程b)の解重合は、好ましくは、塩基の少なくとも2つの連続添加で行われる。特に、塩基の3回連続添加が行われる。
【0028】
ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび各添加の塩基との質量容積比は、1:0.5〜1:0.05であり、好ましくは、1:0.3〜1:0.1である。
【0029】
ヘパリン酸ベンザルコニウムおよび過酸化水素との質量容積比は、1:1〜1:0.01であり、好ましくは、1:0.2〜1:0.05である。
【0030】
好ましくは、工程c)の塩転移反応(transalification)は、酢酸ナトリウムのアルコール溶液への反応媒体の沈殿により行われ、好ましくは、メタノール溶液の酢酸ナトリウム溶液10%(w/v)で行われる。
【0031】
本発明の第二の態様は、大きな五糖画分を含む本発明の方法によって得られた生成物であり、強い抗血栓活性を有する。
【実施例】
【0032】
下記に提供される次の特定の例は、本発明の性質を例示するよう作用する。それらの例は、例示的目的のためにのみ包含され、そして本発明を制限するものではない。
【0033】
(実施例1)
ヘパリンナトリウム100gを水725mlに溶解させ、その溶液に、50%(w/v)濃度の塩化ベンザルコニウムの溶液880mlを添加した。生成物を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥した。233gのヘパリン酸ベンザルコニウムが得られた。
【0034】
先の工程で得られた10gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン30mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液に2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルヒドロ−1,3−ジアザ−2−ホスホリン、BEMP、を以下の3つに添加した。
− BEMP 1.72ml、35℃で8時間反応が維持された。
− BEMP 1.72ml、35℃で16時間反応が維持された。
− BEMP 1.72ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0035】
その溶液に、過酸化水素の溶液1mlを添加し、16時間35℃で反応を維持し、その後メタノール中10%(w/v)の酢酸ナトリウムの溶液60ml中に沈殿させた。沈殿物を遠心分離により回収し、メタノールで洗浄した。得られた生成物を5mlの水に溶解し、中和し、塩化ナトリウムを10%(w/v)の濃度まで添加し、メタノール125ml中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、35℃の真空オーブンで乾燥させた。生成物3.39gが得られた。
【0036】
解重合生成物2gを、水14.5mlに溶解させ、その溶液に、50%(w/v)の濃度の塩化ベンザルコニウムの水溶液17.6mlを添加した。生成物を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥した。得られた生成物4.84gを14.5mlのジクロロメタンに溶解し、35℃に加温した。BEMP 0.83mlを添加し、35℃で16時間反応が維持された。時間経過後、26mlのメタノール中の酢酸ナトリウムの溶液10%(w/v)に沈殿させた。沈殿物を遠心分離により回収し、メタノールで洗浄した。得られた生成物を5mlの水に溶解し、中和し、塩化ナトリウムを10%(w/v)の濃度まで添加し、メタノール50ml中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、35℃の真空オーブンで乾燥させた。生成物1.32g(収率52.1%)が得られた。得られた生成物の特性は以下の通りであった。
− 平均分子量:2903 Da
− 抗FXa活性:193 IU/mg
− 抗第IIa因子活性:9.3 IU/mg
【0037】
(実施例2)
ヘパリンナトリウム50gを水365mlに溶解させ、その溶液に、50%(w/v)の濃度の塩化ベンザルコニウムの溶液221gを加えた。生成物を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥した。128.18gのヘパリン酸ベンザルコニウムが得られた。
【0038】
先の工程で得られた5gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン15mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液にBEMPを以下の3つに添加した。
− BEMP 0.86ml、35℃で8時間反応が維持された。
− BEMP 0.86ml、35℃で16時間反応が維持された。
− BEMP 0.86ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0039】
その溶液に、過酸化水素の溶液0.50mlを添加し、16時間35℃で反応を維持し、その後メタノール中の酢酸ナトリウムの溶液30ml中10%(w/v)に沈殿させた。沈殿物を遠心分離により回収し、メタノールで洗浄した。得られた生成物を2.5mlの水に溶解し、中和し、塩化ナトリウムを10%(w/v)の濃度まで添加し、メタノール75ml中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、35℃の真空オーブンで乾燥させた。生成物1.40gが得られた。
【0040】
解重合生成物1.40gを、水10mlに溶解させ、その溶液に、50%(w/v)の濃度の塩化ベンザルコニウムの溶液6.18gを添加した。生成物を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥した。得られた3.40gを10mlのジクロロメタンに溶解し、35℃に加温した。その溶液にBEMPを以下の3つに添加した。
− BEMP 0.58ml、35℃で8時間反応が維持された。
− BEMP 0.58ml、35℃で16時間反応が維持された。
− BEMP 0.58ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0041】
その溶液に、過酸化水素の溶液0.34mlを添加し、16時間35℃で反応を維持し、その後メタノール中の酢酸ナトリウムの溶液20ml中10%(w/v)に沈殿させた。沈殿物を遠心分離により回収し、メタノールで洗浄した。得られた生成物を1.7mlの水に溶解し、中和し、塩化ナトリウムを10%(w/v)の濃度まで添加し、メタノール50ml中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、35℃の真空オーブンで乾燥させた。生成物0.85gが得られた(収率43.6%)。得られた生成物の特性は次の通りである。
− 平均分子量:2787 Da
− 抗FXa活性:121.5 IU/mg
− 抗第IIa因子活性:8.2 IU/mg
【0042】
(実施例3)
実施例2で得られた生成物0.50gを5mlの水に溶解し、中和し、塩化ナトリウムを10%(w/v)の濃度まで添加し、メタノール6ml中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、メタノールで洗浄し、35℃の真空オーブンで乾燥させた。生成物0.13gが得られた。得られた生成物の特性は次の通りである。
− 平均分子量:3534 Da
− 抗FXa活性:125.2 IU/mg
− 抗第IIa因子活性:19.4 IU/mg
【0043】
前の段落と同じ工程を繰り返したが、塩基をBEMPからTTMGに変更した。
【0044】
得られた生成物の特性は次の通りである。
− 平均分子量:3704 Da
− 抗FXa活性:118.5 IU/mg
− 抗第IIa因子活性:16.2 IU/mg
【0045】
(実施例4、比較例)
この例では、本発明の方法における塩基の変更の影響が調査された。本発明の方法におけるホスファゼン塩基の使用の影響を実証するため、トリトンBとBEMPと同様の試験を実施した。
【0046】
ヘパリンナトリウム50gを水に溶解させ、その溶液に、50%(w/v)の濃度の塩化ベンザルコニウムの溶液221gを添加した。生成物を濾過し、水で洗浄し、凍結乾燥した。128.18gのヘパリン酸ベンザルコニウムが得られた。
【0047】
先の工程で得られた25gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン75mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液にトリトンBを以下の3つに添加した。
− トリトンB 6.25ml、35℃で8時間反応が維持された。
− トリトンB 6.25ml、35℃で16時間反応が維持された。
− トリトンB 6.25ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0048】
その溶液に、過酸化水素の溶液2.5mlを添加し、続いて、対応するナトリウム塩を得るために精製した。得られた生成物は、前記の条件と比率に従い、ベンザルコニウム塩を得るために、塩転移反応させる。
【0049】
先の工程で得られた15.68gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン47mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液にトリトンBを以下の3つに添加した。
− トリトンB 3.92ml、35℃で8時間反応が維持された。
− トリトンB 3.92ml、35℃で16時間反応が維持された。
− トリトンB 3.92ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0050】
以下によって特徴づけられる生成物が得られた。
− 平均分子量:2387 Da
− 抗FXa活性:94 IU/mg
【0051】
同様の試験を行ったが、塩基性BEMPを解重合に使用した。
【0052】
5gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン15mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液にBEMPを以下の3つに添加した。
− BEMP 0.86ml、35℃で8時間反応が維持された。
− BEMP 0.86ml、35℃で16時間反応が維持された。
− BEMP 0.86ml、35℃で8時間反応が維持された。
【0053】
その溶液に、過酸化水素の溶液0.5mlを添加し、続いて、対応するナトリウム塩を得るために精製した。得られた生成物は、前記の条件と比率に従い、ベンザルコニウム塩を得るために、塩転移反応させる。
【0054】
先の工程で得られた3.40gのヘパリン酸ベンザルコニウムをジクロロメタン10mlに溶解し、35℃に加温した。その溶液にBEMPを以下の3つに添加した。
− BEMP 0.58ml、35℃で8時間反応が維持された。
− BEMP 0.58ml、35℃で16時間反応が維持された。
− BEMP 0.58ml、35℃で8時間反応が維持された。
以下によって特徴づけられる生成物が得られた。
− 平均分子量:2787 Da
− 抗FXa活性:121.5 IU/mg
【0055】
本比較例では、ホスファゼン塩基が本工程内で、得られた生成物の抗FXa活性を非常に著しく増加させて行くことを確認できる。
【0056】
サンプル中の単糖類の平均含有量は、Marco Guerrini et al.に記載の方法により13C−H HSQC(Heteronuclear Single Quantum Coherence)定量的二次元検定を用いて、核磁気共鳴(NMR)技術によって決定される。二次元で達成される解像度の増加は、一次元スペクトルに重複するシグナルを定量化するため、本技術は、複合炭水化物の研究にとって特に重要である。これらの分子は、一次元Hスペクトルにおいて重大な重複を有し、定量化の1Dにおいて分離されたピーク面積の決定を妨げる。
【0057】
天然のヘパリンから得られたGAG中に存在するN−スルホ−3−O−スルホ−D−グルコサミンG−(ANS、3S)に結合されるD−グルクロン酸の単位の量は、M.Guerrini et al.によって記載されているように、その抗Xa活性と直接相互作用できる。この二糖は、抗トロンビンIIIとの相互作用を担当する五糖に属し、活性配列でのみ検出される。直接結合した水素とグルクロン酸のこの種のアノマー炭素の相関信号は、特徴領域に現れ、HSQCスペクトルにおいて重複がなく、したがってサンプル中五糖の割合を定量化することができる。
【0058】
トリトンBおよびBEMPを解重合することにより得られた生成物の13C−H HSQCは、添付の図1および2にそれぞれ示されているが、各図では五糖の酸単位グルクロンに対応するアノマープロトンの相関信号H−13Cが、円により強調されている。
【0059】
スペクトルにおけるこのシグナル強度測定により五糖の割合を決定することが可能になる。
【0060】
〔表1〕トリトンBおよびBEMPを用いた異なる分画
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、トリトンBの代わりに塩基BEMPを使用することは、ATIIIの活性化五糖類を多く維持する解重合反応において高い選択性が得られ、そして、トリトンBで解重合したものと比較し、BEMPで解重合した生成物中で、ANS、3Sの%は、ほぼ93%、およびG−ANS、3Sの%は、25%増加したが、この五糖画分は、本発明に係る方法によって得られる生成物に明確に保持され、これらの生成物に高い活性を与え、反応選択率を高めることによって、本発明に係る方法の収率を達成し得る。
図1
図2