(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298081
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】走行する鉄合金シートの処理の方法およびその実施のための処理ライン
(51)【国際特許分類】
C23C 2/04 20060101AFI20180312BHJP
C23C 2/02 20060101ALI20180312BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20180312BHJP
C23C 2/16 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C23C2/04
C23C2/02
C23C2/06
C23C2/16
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-556579(P2015-556579)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-507007(P2016-507007A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】IB2013050987
(87)【国際公開番号】WO2014122500
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年10月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルニコル,マイウェン・ティフェン・ソジグ
(72)【発明者】
【氏名】ボルディニョン,ミシェル・ロジェ・ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ファンデン・エインデ,グザビエ・マルク・ジャック・エドモン・ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ファリーニャ,アナ・イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルケンス,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ノビル,ジャン−フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】スマッル,ジュリアン・クリストファー・ミシェル
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−164733(JP,A)
【文献】
特開昭62−028059(JP,A)
【文献】
特開2010−133022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの酸化され易い元素を含有する、走行する鉄合金シートの、該シート表面上に存在する酸化物を溶解または組み合わせにより除去するための処理の方法であって、溶融酸化物浴にシートを浸漬する工程を含み、
・溶融酸化物浴の粘度は0.3×10−3Pa.sから3×10−1Pa.sの間であり、浴の表面は非酸化性雰囲気に接しており、溶融酸化物は鉄に対して不活性であり;
・浴の中の走行するシートの滞留時間は少なくとも1秒であり;
・浴の出口においてシートの表面に残存する酸化物の残留物は除去され、
溶融酸化物浴の組成が、
・45%w≦B2O3≦90%w;
・10%w≦Li2O≦45%w;および
・場合によって、0.1%から20%の間の、Na2O、CaO、K2Oのうちの1つまたはいくつかのもの
からなる、処理の方法。
【請求項2】
走行するシートが、次いで、溶融金属または溶融合金のコーティング浴に浸漬される、請求項1に記載の処理の方法。
【請求項3】
溶融酸化物浴中の走行するシートの滞留時間が、1秒から10秒の間である、請求項1または2に記載の処理の方法。
【請求項4】
溶融酸化物浴にシートが入る前に、シートが熱処理を受ける、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理の方法。
【請求項5】
容易に酸化可能な元素が、Si、Mn、Al、Cr、B、Pから選択された少なくとも1つの元素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の処理の方法。
【請求項6】
コーティング浴が、溶融Znまたは溶融Zn合金の浴である、請求項2から5のいずれか一項に記載の処理の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の処理の方法を実施するための鉄合金シート(1)の処理ラインであって、
・0.3×10−3Pa.sから3×10−1Pa.sの間の粘度を有する溶融酸化物浴(6)、および
・溶融酸化物浴(6)の出口において鉄合金シート(1)の表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段
を含み、
溶融酸化物浴(6)の表面は非酸化性雰囲気に接しており、溶融酸化物は鉄に対して不活性である、処理ライン。
【請求項8】
溶融酸化物浴(6)の上流に設けられた、鉄合金シート(1)を加熱するための手段(3)を含む、請求項7に記載の処理ライン。
【請求項9】
溶融酸化物浴(6)の下流に設けられた、溶融金属または溶融合金(10)で鉄合金シート(1)をコーティングするための手段(9)を含む、請求項7または8に記載の処理ライン。
【請求項10】
溶融金属または溶融合金(10)が、ZnまたはZn合金である、請求項9に記載の処理ライン。
【請求項11】
浴(6)の出口において鉄合金シート(1)の表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段が、シート表面にガスを噴出させるノズル(8)を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の処理ライン。
【請求項12】
浴(6)の出口において鉄合金シート(1)の表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段が、シート(1)のための冷却手段(11)を含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の処理ライン。
【請求項13】
浴(6)の出口において鉄合金シート(1)の表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段が、機械装置(12)を含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の処理ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、亜鉛めっきによるそのコーティングを考慮した、鋼ストリップのような、かなりの含有量の酸化され易い元素を有する鉄合金ストリップの表面の処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融めっきによる鋼ストリップの金属コーティングは、下記工程を必須として含むプロセスによって通常行なわれる:
・ストリップ表面の酸化を回避するために、不活性または還元性雰囲気下に炉内を走行する鋼ストリップを焼鈍する工程;
・液体状態にある金属の浴または合金の浴を含有する容器の中に、走行するストリップを浸漬する工程;したがって、ストリップは、これが浴を出るときに、金属/合金でコーティングされる。
・金属/合金層が平坦で規則的な厚みを有することを保証するために、液体浴からストリップが出た後に、この表面上にガスを噴出させることにより金属/合金層をぬぐい取る工程。
【0003】
この焼鈍工程中のストリップの加熱は、これが金属浴(本明細書の以下の部分において、「金属浴」または「金属層」について言うとき、Al/Al合金またはZn/Zn合金などのいかなる合金浴および対応する合金層もまた、この表現に包含されることになることを十分に理解しておく必要がある。)に入る前に、通常、直接燃焼焼鈍炉またはラジアントチューブ焼鈍炉の中で行なわれる。しかしながら、シートを加熱するこれらの炉の使用は、シートの表面に酸化物が形成される可能性があるので、コーティングの前にさらに酸洗いおよび/またはショットブラスティング工程によって酸化物を除去しなければならない。除去しないときは、鋼板表面上の液体金属の濡れ性は不十分となり、鋼表面上に無めっきを顕著に引き起こす。
【0004】
この欠点は、ストリップの組成が顕著な量のSi、Mn、Al、Cr、B、Pなどのような酸化され易い元素を含んでいる場合に、特に現われる。
【0005】
これらの元素を分離して考えるならば、この欠点が現われ得る含有量は、Si、Mn、Al、PおよびCrについては約0.5重量%でありBについては5ppmであると見なすことが可能である。しかし、これらの元素のいくつかのものが鋼の中に存在する場合、これらの範囲は著しく低くなり得る。例えば、0.2%のMn、0.02%のSiおよび5ppmのBを有する非侵入型焼付硬化鋼は、ストリップ表面まで急速に拡散し、MnおよびSiの酸化物を連続薄膜として沈殿させるBの存在により、濡れ特性に対してあまり有害でなかった小塊としてではなく濡れ不良につながる、濡れの問題を既に背負っている。
【0006】
概して言えば、すべての高強度鋼について液体金属による濡れ不良のこの危険性も現われる。それというのも、これらは、二相鋼、TRIP(変態誘起塑性)鋼、TWIP(双晶誘起塑性)鋼、電磁鋼などのように、前記元素の少なくとも1つを含むからである。二相鋼については、Mnの量は、通常3重量%より低く、1重量%より通常低い量でCr、SiまたはAlを追加する。TRIP鋼については、Mn量は、通常2重量%より低く、最大2重量%のSiまたはAlと組み合わせる。TWIP鋼については、Mn量は、25重量%にまでなり、AlまたはSi(最大3重量%)と組み合わせる。
【0007】
大量(10重量%まで)の特にAlおよび/またはSiを含有する低密度の鋼ならびに例えば熱処理用の高Crステンレス鋼は、この現象に対しても敏感である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の目標は、かなりの量の容易に酸化可能な元素を含有する鋼ストリップ上の金属または合金のコーティングの接着を改良する方法を製鋼業者に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、少なくとも1つの酸化され易い元素を含有する、走行する鉄合金シートの処理の方法であって、溶融酸化物浴に前記シートを浸漬する工程を含み、
・前記溶融酸化物浴の粘度は0.3
×10
−3Pa.sから3
×10
−1Pa.sの間であり、前記浴の表面は、非酸化性雰囲気に接しており、また前記溶融酸化物は鉄に対して不活性であり;
・前記浴内の前記の走行するシートの滞留時間は少なくとも1秒であり;
・浴の出口で前記シートの表面に残存する酸化物の残留物は除去される、処理の方法である。
【0010】
次いで、走行するシートは、溶融金属または溶融合金のコーティング浴に浸漬されてもよい。
【0011】
前記溶融酸化物浴中の前記の走行するシートの滞留時間は、1秒から10秒の間であってよい。
【0012】
溶融酸化物浴にシートが入る前に、シートは熱処理を受けてもよい。
【0013】
溶融酸化物浴の組成は:
・45%w≦B
2O
3≦90%w;
・10%w≦Li
2O≦45%w;
・および場合によって、0.1%から20%の間の、Na
2O、CaO、K
2Oのうちの1つまたはいくつかのもの
であってよい。
【0014】
前記の容易に酸化可能な元素は、Si、Mn、Al、Cr、B、Pから選択された少なくとも1つの元素であってよい。
【0015】
前記コーティング浴は、溶融Znまたは溶融Zn合金の浴であってよい。
【0016】
本発明はまた、前記の処理方法を実施するための鉄合金シートの処理ラインであって:
・0.3
×10
−3から3
×10
−1Pa.sの間の粘度を有する溶融酸化物浴、および
・前記溶融酸化物浴の出口において前記鉄合金シートの表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去する手段
を含み、前記浴の表面は非酸化性雰囲気に接しており、前記溶融酸化物は鉄に対して不活性である、処理ラインである。
【0017】
これは、溶融酸化物浴の上流に設けられた、鉄合金シートを加熱するための手段を含んでもよい。
【0018】
これは、溶融酸化物浴の下流に設けられた、溶融金属または溶融合金で鉄合金シートをコーティングするための手段を含んでもよい。
【0019】
前記の溶融金属または溶融合金は、ZnまたはZn合金であってよい。
【0020】
前記浴の出口において前記鉄合金シートの表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段は、シート表面にガスを噴出させるノズルを含んでもよい。
【0021】
前記浴の出口において前記鉄合金シートの表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段は、シートのための冷却手段を含む。
【0022】
前記浴の出口において前記鉄合金シートの表面に残存する溶融酸化物の残留物を除去するための手段は、機械装置を含んでもよい。
【0023】
読者が理解したように、本発明は、有意のレベルで酸化可能な元素を含有している走行するシートを、1秒から5秒の少なくとも非常に短時間の間、予め定義された範囲内の粘度を有する溶融酸化物浴中に浸漬することに依拠する。これらの溶融酸化物は、シート表面に存在する酸化物と
組み合わされ、この表面から酸化物を取り除く。
【0024】
シートが浴を出る際、シートには、浴からの酸化物の少量の小滴以外の酸化物がほとんどないので、この酸化物は機械的処理またはガス吹き付け操作などの任意の適切な手段によって容易に除去され得る。これは、溶融酸化物の粘度が、適切な組成および浴温の選択により非常に低く抑えられ、ごくわずかの量の溶融酸化物だけがストリップ表面によって浴から持ち去られることによる。シートの表面は、非常にきれいであり、したがって亜鉛めっきのようなコーティングプロセスを、好ましくは同じ処理ライン上で完璧に受けられる状態にある。
【0025】
溶融酸化物浴を出てからコーティング浴の中に入る間で、シートの表面の再酸化を回避するために周辺雰囲気から走行するシートを保護することが望ましい。この目的のために、シートは、例えば、2つの浴の間で鉄に対して非酸化性雰囲気または還元性雰囲気で満たされた保護スリーブの中を走行することができる。
【0026】
本発明の方法は、少なくともいくつかの構成において、他の機能を有することもできる。特に、それは、シートが溶融酸化物浴の中により長い時間滞留することを可能にすることによって、炉の中の従来の焼鈍操作を置き換えることができる。この目的のために、溶融酸化物を通り抜けて走行するシートの滞留期間は、例えば、10秒から60秒の高い値に設定されねばならない。液体酸化物中のこの処理の別の利点は、これがストリップの幅および長さに沿って非常によい温度の均一性を得ることを可能にするということであり、温度の均一性は高強度鋼については最も重要である。
【0027】
1秒から5秒の間に溶融酸化物浴内をシートが通過することは、高い機械的耐性を得ることを可能にするという点では、鋼の構造を著しく改質するには通常十分ではないことに留意しなければならない。この場合、この方法は酸化層除去のみを確保するために従来の焼鈍の後に、走行するシートを数秒だけの間、溶融酸化物浴を通過させることによって行なわれる。
【0028】
本発明による酸化物の除去が従来の焼鈍工程の後に行なわれる場合は、焼鈍雰囲気の露点が溶融酸化物浴による酸化物除去の効率に特別な影響を及ぼさないことが判明している。したがって本発明は、従来の焼鈍工程の後に使用される場合、ストリップ表面が焼鈍中に強く酸化される恐れがあっても、通常より厳格でない焼鈍条件を使用することを可能にする。
【0029】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の説明によって一層よく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】コーティング操作を含む処理ラインの例を示し、この処理ラインは本発明を実施するために使用され得る。
【
図2】TWIP鋼を800℃において1、3、10または30秒間、酸化物浴に浸漬させた前後での、深さプロファイルのグロー放電発光分析(GDOES)を示す。
【
図3】
図2の中の1つと同じTWIP鋼を700℃において1、3、10または30秒間、酸化物浴に、浸漬させた前後での、深さプロファイルのGDOESを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1で例証されているように、冷延鋼板1は、前述のように容易に酸化可能な元素をかなりの量含有しており、このラインの異なるモジュールを連続的に走行し、一群の輸送ロール2によって移動される。次いで、この冷延シートは、純アルゴン、純窒素またはこれらのガスのうちの1つと水素との混合物のような、非酸化性雰囲気または還元性雰囲気の下に配置されたオーブン3を通過する。このオーブン3には、2つの機能があってもよい。
【0032】
第1の機能は、亜鉛めっきラインにおけるすべての連続焼鈍オーブンで満たされているので最も標準的なものであるが、この熱処理を可能にする温度までシートを昇温することにより、走行するシート1の焼鈍を行なうことであり、この熱処理がシートの全厚みにおいて行なわれるのに十分な期間の間中、炭素鋼については900℃にまで高めることができ、またはステンレス鋼については1100℃にまで高めることができる。最も一般に、この期間の持続時間は、炭素鋼については60秒であり、ステンレス鋼については数秒である。これは、主に、シートが到達する温度およびシート1の速度に依存する。必要ならば、オーブン3に、溶融酸化物浴6の中にシートが入るのに都合のよい値にシート1の温度を設定する冷却装置が続いてもよい。
【0033】
このオーブン3の第2の可能な機能は、処理の次の工程と両立する温度において、後で説明するように、シート1上で特定の冶金学上の処理を行なうことをせずに、単にシート1を加熱することである。
【0034】
次いで、鋼板1は、表面洗浄モジュール4を通過する。この洗浄モジュール4は、鉄に対して不活性な溶融酸化物の浴6を含有する容器5を含む。言いかえれば、これらの酸化物は、シート1の金属表面と化学的に反応しない。溶融酸化物浴は、浴に浸漬する前にシートの表面に存在する酸化物を単に溶解する。
【0035】
この実施形態では、鋼板1が浴6に入る場合、浴6の温度T
Bは鋼板1の温度T
S以上であり、浴6の粘度は、この温度T
Bにおいて0.3
×10
−3Pa.sから3
×10
−1Pa.sの間である。浴6の温度T
Bは600℃から900℃の間に設定され、好ましくは700℃から800℃の間に設定される。浴6は、循環ポンプに関連づけて誘導加熱手段または熱交換器などの加熱手段(図示せず)によって前記温度T
Bで維持される。
【0036】
概して言えば、浴の温度は、溶融酸化物浴が蒸発し始める温度における上限を用いて、通常600℃から1100℃の間とする。
【0037】
浴6の組成は、例えば、45重量%から90重量%の間のB
2O
3(両端値を含み、他のすべての内容物に対して)、10重量%から45重量%の間のLi
2O、および、場合によって、総含有量が0.1%から20%の間のNa
2O、CaOおよびK
2Oの中の1つまたはいくつかの酸化物である。浴6の組成は、本発明と適合する浴粘度を得るために所望の浴温と関連して選択される。
【0038】
B
2O
3は低温(460℃)で融解するが、液体状態におけるこの粘度は非常に高い。したがって、浴粘度は、主としてLi
2Oを添加することによって減少させられ、Na
2Oおよび/または他の前述の酸化物を添加することによっても減少させ得る。Li
2Oが好ましい。なぜならばこの酸化物が非常に安定であり、鋼のいかなる合金元素によっても還元されないからである。さらに、Na
2Oは、凝固酸化物の吸湿性を大きく増大させるので、この材料の取り扱いがさらに困難になる。
【0039】
例えば、重量50/50%の混合物Li
2O−B
2O
3は、650℃で融解する(その組成は共融混合物に近く、この混合物は、Li
2OとB
2O
3とが重量では47%と53%、モルでは33%と67%であり、665℃以上の温度において粘度は0.3
×10
−3Pa.s以下である。より低い温度が本発明のプロセスを有利に実施するために必要であるならば(例えば、より低い温度がよりエネルギー消費が少ないので)、Na
2O、CaOまたはK
2Oは上述の量で添加され得る。これは、600℃から680℃の間の温度において浴6のために必要な粘度を有することを可能にする。浴温が比較的高い値(例えば、900℃まで)に設定される場合は、B
2O
3とLi
2Oの含有量間のバランスによれば、Na
2Oの含有量は多くの場合10%以下で十分である。
【0040】
溶融酸化物浴6の中のシートの滞留時間は、シート1の走行速度および容器5の形状にもちろん依存する。滞留時間は、シート1の表面から除去される酸化物の量があまり多くない場合、およびこれらの酸化物がシート1へ十分に接着していない場合は、実証研究によって示されるように、1秒程度の短いものでよい。より長い滞留時間は、1秒から10秒の間で、シート1の完全な洗浄をより確実に得るのに有効であり得、るつぼの内部の浸漬長さを調節することによって例えば得ることができる。
【0041】
シート1の表面を洗浄するために必要な滞留時間に上限は存在しない。最も一般に、シート表面の洗浄が溶融酸化物浴6の唯一の機能ならば、5秒超の滞留時間を有することは有用ではないことになる。さらに、溶融酸化物浴(5)の機能がシート(1)上で熱処理を行なうことである場合は、滞留時間は著しく長くてもよく、例えば、30秒または1分である。
【0042】
浴6は、鉄に対して非酸化性雰囲気の下に配置され、N
2およびH
2ガス(例えばN
2+1%のH
2)から例えば構成される。浴6は、バブリング手段または任意の他の周知の撹拌装置などの撹拌手段(図示せず)によって好ましくは撹拌される。
【0043】
洗浄モジュール4の後で、鋼板1はワイピングモジュール7内を走行し、鋼板1の表面に残存する残留溶融酸化物は除去される。これらの残留溶融酸化物は、ストリップと溶融酸化物が反応しないことにより、および浴6の比粘度ηの値により、容易に、迅速に表面から除去され得、この工程は生産を減速させない。前記ワイピングモジュール7は、1つまたはいくつかのガスノズル8、および/またはブラシ、または鋼板1の表面に残存する溶融酸化物または凝固酸化物の小滴の除去を可能にする他の任意の手段などの任意の適切な手段を含んでもよい。酸化物がガス吹き付けによって除去される場合は、ガス吹き付けによってこれらを除去することを困難なものとする酸化物の小滴の凝固を回避するためにガスは高温(少なくとも550℃)であることが好ましい。酸化物の小滴が既に凝固している場合は、高温(450℃−550℃)において実施されるブラッシングが最適である。
【0044】
次いで、鋼板1は、従来知られているように、鋼板1が溶融亜鉛または溶融亜鉛合金の浴10に浸漬される亜鉛めっきモジュールなどのコーティングモジュール9内を、走行する。
【0045】
オーブン3の中へ入ってからコーティング浴10の中へ入るまで、鋼板1は、中性(N
2)雰囲気または還元性(N
2−H
2)雰囲気が維持される1つ14またはいくつかの筒口部による非酸化性雰囲気の下に配置される。
【0046】
鋼板1の温度T
Sが、鋼板1が亜鉛めっき浴10に入る際に、あまりに高すぎて、亜鉛コーティングの良好な接着を保証することができない場合、鋼板1は、コーティングモジュール9の前に配置された冷却モジュール11内を場合によって走行してもよい。
図1に示された例において、この冷却モジュール11は、ワイピングモジュール7の直後に配置されるが、これはコーティングモジュール9側に配置されてもよい。冷却モジュール11をコーティングモジュール9から比較的遠くに配置することは、これらの間に1セットのブラシ12を配置することが容易にできるので、シート1の表面に残存している可能性のある、凝固酸化物を残らず除去することができる。この冷却モジュールは、例えば、鋼板1に水を噴出させるノズルを含んでもよく、または標準的な溶融めっきラインの中で一般に使用される任意の冷却モジュールであってもよい。冷却モジュール11は、存在する場合には、コーティング操作を良好に実行することと両立する温度においてシート1を調整せねばならない。シート1がコーティング浴10に入るとき、この温度は、Znコーティングの接着を損なわないためにあまり高くあってはならない。また、これは過度にコーティング浴10を冷却しないためにあまり低くあってはならない。最も一般に、この温度は、コーティング浴の温度より約10℃−20℃高く設定され得る。
【0047】
コーティング浴10から出た後で、シート1は、当技術分野で知られているようにコーティング層の厚みを設定する装置13(ガス吹き付け装置など)によって処理される。
【0048】
亜鉛めっき工程は、記載の例において、シート1の洗浄と同じ処理ライン上で行なわれる。しかし、もしシート1の表面の再酸化が亜鉛めっき(または任意の他の型のコーティング操作)の前に注意深く回避されるならば、個別のライン上でそれを行なうことが考えられる。
【0049】
浴6においては、本発明によれば、溶融酸化物は、シート1の表面に残存する酸化物と
組み合わされて、この表面からこれらを除去する。
【0050】
図2は、Mn酸化物が、N
2+5%H
2+0.04%H
2Oを含有するラジアントチューブ炉内での焼鈍中に20%のMnを含有するTWIP鋼の表面で成長し(破線の下の灰色領域)、800℃において50%のB
20
3および50%のLi
2Oを含有する参照酸化物浴に1秒の短い浸漬の後に全く完全に除去されることを示す。より長い浸漬時間は、界面化学に影響しない。
【0051】
このような試験に使用されたTWIP鋼の組成は、23%のMnを含んでいる。
【0052】
図3は、酸化物浴の温度が700℃で維持され、すべての試験条件が
図2の試験と同一の場合に、同じ観察がなされることを示す。
【0053】
本発明の第2の実施形態において、オーブン3は、なくしてもよい。また、通常実施される焼鈍操作は、溶融酸化物浴自体の中で行なわれ、ここで:
・浴温は、焼鈍によって要求される冶金学的な変化を得ることを可能にする値で設定され;
・浴6の中のシート1の滞留時間は、これらの冶金学的な変化を得るためには十分に長く;数秒から、例えば30秒または60秒までであり;これらの持続時間は、この目的のためにたいていの場合十分であり、シートの組成および厚さに依存し、さらに所望の冶金学的な変化の動力学に依存する。
【0054】
さらに、第1の熱処理はオーブン3中で行なわれてもよく、同じまたは異なる温度における第2の処理は溶融酸化物浴5中で行なわれてもよい。
【0055】
本発明は、酸化され易い元素を大量に含有する次の種別の鋼に特に効率的である:
・0.1重量%までのTiを含有してもよい非侵入型の鋼;
・1重量%までのSi、Crおよび/またはAlとともに約3重量%までのMnを含有してもよいDP500からDP1500鋼などの二相鋼;
・例えば約1.6重量%のMnおよび1.5重量%のSiを含有するTRIP780鋼のような、TRIP鋼;
・Pを含有するTRIPまたは二相鋼;
・非常に高いMn含有量(典型的には17重量%−25重量%)を有するTWIP鋼、
・例えば10重量%までのAlを含有してもよいFe−Al鋼などの低密度鋼;
・非常に高いクロム含有量(典型的には13重量%−25重量%)を他の合金元素(Si、Mn、Al・・・)と組み合わせて有するステンレス鋼。