(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298087
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】コネクティングロッドおよび内燃機関
(51)【国際特許分類】
F16C 7/06 20060101AFI20180312BHJP
F02B 75/04 20060101ALI20180312BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
F16C7/06
F02B75/04
F02D15/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-39603(P2016-39603)
(22)【出願日】2016年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-161133(P2016-161133A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】10 2015 103 207.4
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリ シュルツ
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−196549(JP,A)
【文献】
特開2005−147172(JP,A)
【文献】
特公昭59−025883(JP,B2)
【文献】
実開平03−085712(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 7/06
F02B 75/04
F02D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクティングロッド(10)をクランクシャフトに取り付けるための大端部(11)と、コネクティングロッド(10)をシリンダのピストンに取り付けるための小端部(12)と、実効コネクティングロッド長を調節するための偏心調節デバイス(13)とを有するコネクティングロッド(10)であって、
前記偏心調節デバイス(13)が、左右に一対配置してある偏心ロッド(15、16)を有し、前記偏心ロッド(15、16)が、第1の端部によって、前記偏心調節デバイス(13)の偏心レバー(14)に係合し、第2の端部によって、前記コネクティングロッドの左右に一対配置してある油圧チャンバ(22、23)内それぞれで案内されるピストン(20、21)に係合し、前記偏心ロッド(15、16)の前記第2の端部が、球状ヘッドとして設計され、前記球状ヘッドが、それぞれの前記ピストン(20、21)にある対応する凹部(40)内に係合し、それぞれの前記ピストン(20、21)が、さらに保定要素(41)を収容し、前記保定要素(41)の一区域が、それぞれの前記偏心ロッド(15、16)の前記球状ヘッド形状の端部に当接しており、
それぞれの前記保定要素(41)が、それぞれの前記ピストン(20、21)にスナップ留めされ、すなわち、それぞれの前記保定要素(41)の一区域が、それぞれの前記ピストン(20、21)に形成されたアンダーカットの周りに、またはその中に係合する、ことを特徴とするコネクティングロッド(10)。
【請求項2】
一方で、それぞれの前記偏心ロッド(15、16)の前記球状ヘッド形状の端部の一区域が、それぞれの前記ピストン(20、21)に直接当接し、他方で、前記端部の一区域が、それぞれの前記保定要素(41)に直接当接することを特徴とする請求項1に記載のコネクティングロッド。
【請求項3】
それぞれの前記ピストンが、前記球状ヘッドに対応する前記凹部(40)を底部に有し、前記凹部(40)の直ぐ上方に、それぞれの前記保定要素(41)のための凹部(42)を有し、前記凹部(42)が、前記凹部(40)に隣接し、これにより、底部で、それぞれの前記偏心ロッド(15、16)の前記球状ヘッド形状の端部が、それぞれの前記ピストン(20、21)に直接当接し、その直ぐ上方で、それぞれの前記保定要素(41)に直接当接することを特徴とする請求項2に記載のコネクティングロッド。
【請求項4】
それぞれの前記ピストンおよびそれぞれの前記保定要素が、それぞれ軸受材料から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコネクティングロッド。
【請求項5】
それぞれの前記保定要素(41)が保定リングであり、前記保定リングが、好ましくは、その円周上の1箇所にスロットが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコネクティングロッド。
【請求項6】
調節可能な圧縮比を有する内燃機関であって、少なくとも1つのシリンダと、クランクシャフトとを有し、前記クランクシャフトに、少なくとも1つのコネクティングロッド(10)が係合し、前記コネクティングロッド(10)が、前記コネクティングロッド(10)を前記クランクシャフトに取り付けるための大端部(11)と、前記コネクティングロッド(10)をシリンダのピストンに取り付けるための小端部(12)と、実効コネクティングロッド長を調節するための偏心調節デバイス(13)とを有し、前記偏心調節デバイス(13)が、偏心レバー(14)と協働する偏心カム(36)と、偏心ロッド(15、16)とを有し、前記偏心ロッド(15、16)が、前記偏心レバー(14)に係合し、前記偏心ロッド(15、16)と協働する油圧チャンバ(22、23)内の油圧によって作用を及ぼされ、前記コネクティングロッド(10)が、請求項1〜5のいずれか一項に記載されているように設計されることを特徴とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のコネクティングロッド、および内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、(特許文献1)から知られている調節可能な圧縮比を有する内燃機関のコネクティングロッドを示す。ここで、コネクティングロッド10は、大端部11と小端部12とを有し、大端部11は、コネクティングロッド10をクランクシャフト(
図1には図示せず)に取り付けるために使用され、小端部12は、コネクティングロッド10を内燃機関のシリンダピストン(
図1には図示せず)に取り付けるために使用される。コネクティングロッド10には偏心調節デバイス13が割り当てられ、偏心調節デバイス13は、偏心カム(
図1には図示せず)と、偏心レバー14と、偏心ロッド15、16とを有する。偏心レバー14は、小端部12の中心17に対して偏心に配置された、中心18を有する穴を有し、偏心レバー14の穴が偏心カムを収容し、偏心カムの穴がピストンピンを収容する。偏心調節デバイス13は、実効コネクティングロッド長l
effを調節するために使用される。コネクティングロッド長は、大端部11の中心19からの偏心レバー14の穴の中心18の距離を意味するものとみなすべきである。偏心体14を回転させ、したがって実効コネクティングロッド長l
effを変えるために、偏心ロッド15、16を移動させることができる。各偏心ロッド15、16は、ピストン20、21を割り当てられ、ピストン20、21は、油圧チャンバ22、23内で可動に案内される。偏心ロッド15、16に割り当てられたピストン20、21に作用する油圧は、油圧チャンバ22、23内の油圧であり、油圧チャンバ内の油量に応じて、偏心ロッド15、16の移動が可能であったり、不可能であったりする。
【0003】
偏心調節デバイス13の調節は、内燃機関の動作サイクル中に偏心調節デバイス13に作用する内燃機関の慣性力および負荷力の作用によって開始される。動作サイクル中、偏心調節デバイス13に作用する力の作用方向は、連続的に変化する。調節運動は、偏心ロッド15、16に作用する油圧作動油によって作用を及ぼされるピストン20、21によって支援され、ピストン20、21は、偏心調節デバイス13に作用する力の力作用方向の変化による偏心調節デバイス13の戻りを防止する。ピストン20、21と協働する偏心ロッド15、16は、両側で偏心体14に取り付けられる。ピストン20、21が中で案内される油圧チャンバ22および23は、大端部11から油圧作動油ライン24および25を通して油圧作動油を供給することができる。逆止弁26および27は、油圧作動油が油圧チャンバ23および24から油圧ライン24および25に逆流するのを防止する。コネクティングロッド10の穴28に切換弁29が収容され、切換弁29の切替え位置が、油圧チャンバ22および23のどちらが油圧作動油で満たされ、油圧チャンバ22および23のどちらが空にされるかを決定し、偏心調節デバイス13の調節方向または回転方向がそれに依存する。この場合、油圧チャンバ22および23は、それぞれ、切換弁29を収容する穴28と流体ライン30および31を介して連通する。切換弁29の作動手段32、ばねデバイス33、および制御ピストン34が
図1に概略的に示されており、切換弁29のこれらの構成要素の動作は、(特許文献1)から既に知られている。
【0004】
上で説明したように、油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20、21に作用する油圧作動油は、大端部11から油圧ライン24および25を通して油圧チャンバ22、23に供給され、コネクティングロッド10は、大端部11によってクランクシャフト(
図1には図示せず)に係合し、コネクティングロッドベアリングシェル35が、クランクシャフト、すなわちそのクランクシャフトベアリングジャーナルと大端部との間に配置される。
【0005】
既に上述したように、それぞれの偏心ロッド15、16は、偏心レバー14の各端部に取り付けられる。
図1から、各偏心ロッド15、16が、それぞれ第1の端部36または37で偏心レバー14に係合し、それぞれの偏心ロッド15または16が、それぞれ反対側の第2の端部38または39によって、コネクティングロッド10の油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20または21にそれぞれ係合することが分かる。実際、偏心ロッド15、16は、接続ピンによって、両端部36、38および37、39でそれぞれ偏心レバー14およびそれぞれのピストン20、21に接続され、接続ピンは、偏心レバー14およびピストン20、21への偏心ロッド15、16のヒンジタイプの関節式の取付けを保証する。偏心ロッド15、16をそれらの第2の端部38、39でピストン20、21に接続するためのそのような接続ピンの使用は、高い部品コストおよび製造コストを要する。油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20、21への第2の端部38、39の領域での偏心ロッド15、16の取付けを改良する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2010 016 037 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規の内燃機関および新規のコネクティングロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のコネクティングロッドによって実現される。本発明によれば、偏心ロッドの第2の端部が、球状ヘッドとして設計され、球状ヘッドが、それぞれのピストンにある対応する凹部内に係合し、それぞれのピストンが、好ましくは保定リングとして設計された保定要素をさらに収容し、保定要素の一区域が、それぞれの偏心ロッドの球状ヘッド形状の端部に当接する。本発明によれば、偏心ロッドと、油圧チャンバ内で案内される、コネクティングロッドの偏心調節デバイスのピストンとの間の球体嵌合接続が提案される。この種の球体嵌合接続は、それぞれのピストンへのそれぞれの偏心ロッドの関節式の取付けのために全ての方向で自由度があり、これにより、製造および組立て公差によって引き起こされるピストンへの偏心ロッドの取付けの傾きを平衡させるまたは補償することができるという利点を有する。球体嵌合接続の保定要素によって、小さな軸方向遊びと、圧縮力および引張力の高い伝達性能とを保証することができる。
【0009】
改良形態によれば、それぞれのピストンが、球状ヘッドに対応する凹部を底部に有し、その凹部の直ぐ上方に、それぞれの保定要素のための凹部を有し、この凹部は、最初に述べた凹部に隣接する。ここで、それぞれの偏心ロッドの球状ヘッド形状の端部は、底部で、それぞれのピストンに直接当接し、その直ぐ上方で、それぞれの保定要素に直接当接する。したがって、この改良形態によれば、それぞれの偏心ロッドの領域内に形成された球状ヘッドは、ピストンに直接当接し、かつ保定要素に直接当接する。それによって、ピストンと偏心調節デバイスの偏心ロッドとの間の球体嵌合接続の特に単純な構成が保証される。
【0010】
それぞれのピストンおよびそれぞれの保定要素がそれぞれ軸受材料から構成されることが好ましい。これは、単純な構成およびより低い摩耗性で、偏心ロッドとピストンとの間の球体嵌合接続を提供する働きをする。
【0011】
本発明の改良形態によれば、それぞれの保定要素は、円周上の1箇所にスロットが設けられた保定リングとして具現化される。スロットが設けられた保定リングの使用は、組立ての面で有利である。
【0012】
好ましくは、それぞれの保定要素が、それぞれのピストンにスナップ留めされ、すなわち、それぞれの保定要素の一区域が、それぞれのピストンに形成されたアンダーカット(切込み部)の周りに、またはその中に係合する。本発明のこの実施形態は、特に単純な組立てを可能にする。保定要素とピストンとの間の溶接接合または接着接合をなくすことが可能である。保定要素は、それぞれのピストンにスナップ留めされる。
【0013】
内燃機関は、請求項7で定義される。
【0014】
本発明の好ましい改良形態は、従属請求項および以下の説明から明らかになろう。本発明の例示的実施形態を、限定はせずに、図面によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】調節可能な圧縮比を有する従来技術の内燃機関のコネクティングロッドを示す図である。
【
図2a】本発明による第1のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【
図2b】本発明による第1のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【
図2c】本発明による第1のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【
図3a】本発明による第2のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【
図3b】本発明による第2のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【
図3c】本発明による第2のコネクティングロッドの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
調節可能な圧縮比を有する内燃機関が、少なくとも1つのシリンダ、好ましくは複数のシリンダを有する。各シリンダはピストンを有し、ピストンは、コネクティングロッド10によって内燃機関のクランクシャフトに結合される。各コネクティングロッド10は、一端に小端部12を有し、他端に大端部11を有する。それぞれのコネクティングロッド10は、その大端部11によって、クランクシャフトのクランクシャフトベアリングジャーナルに係合し、これにより、コネクティングロッドベアリングシェルが、クランクシャフトベアリングジャーナルと大端部との間に位置決めされ、コネクティングロッドベアリングシェルとクランクシャフトベアリングジャーナルとの間に潤滑油被膜が生じ得る。
【0017】
調節可能な圧縮比を有する内燃機関は、各コネクティングロッド10の領域内に、それぞれのコネクティングロッド10の実効コネクティングロッド長を調節するための偏心調節デバイス13を有する。
【0018】
偏心調節デバイス13は、偏心カム、偏心レバー14、および偏心ロッド15、16を有し、偏心ロッド15、16は、圧縮比を調節するために偏心ロッドと協働する油圧チャンバ内の油圧に応じて移動させることができる。偏心ロッド15、16と協働する油圧チャンバには、それぞれのコネクティングロッドの大端部11から油圧作動油を供給することができる。
【0019】
偏心調節デバイス13の調節は、内燃機関の慣性力および負荷力の作用によって開始される。
【0020】
偏心ロッド15、16は、それらの第1の端部36、37によって偏心レバー14の両側に係合する。偏心ロッド15、16は、反対側の端部38、39によってピストン20、21に固定され、ピストン20、21は、コネクティングロッド10の油圧チャンバ22、23内で案内される。本発明は、油圧チャンバ22、23内で案内される偏心調節デバイス13のピストン20、21への、偏心調節デバイス13の偏心ロッド15、16の最適な取付けに関する。
【0021】
図2a〜
図2cは、本発明の第1の例示的実施形態を示し、すなわち、偏心ロッド15、16の第2の端部38、39の領域内での本発明によるコネクティングロッドの詳細を示す。この第2の端部38、39で、偏心ロッド15、16は、偏心調節デバイス13のピストン20、21に取り付けられている。
【0022】
本発明によれば、油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20、21に係合する偏心ロッド15、16の第2の端部38、39は球状ヘッドとして設計され、この球状ヘッドは、それぞれのピストン20、21の対応する凹部40内に係合する。
【0023】
本発明によれば、さらに、それぞれのピストン20、21は、好ましくは保定リング41として設計された保定要素を収容し、保定要素は、それぞれの偏心ロッド15または16の球状ヘッド形状の端部38または39の一区域に当接する。
【0024】
一方で、それぞれの偏心ロッド15、16の球状ヘッド形状の端部38、39の一区域は、それぞれのピストン20、21に直接当接し、他方で、端部38、39の一区域は、それぞれの保定要素または保定リング41に直接当接する。したがって、偏心ロッド15、16の第2の端部38、39とそれぞれのピストン20、21との間にこのようにして提供された球体嵌合接続は、それぞれ3つのサブアセンブリ、すなわち、偏心ロッド15、16の第2の端部38、39での球状ヘッドと、ピストン20、21と、ピストン20、21によって収容される保定要素または保定リング41とのみからなる。
【0025】
図2a〜
図2cから分かるように、それぞれのピストン20、21は、球状ヘッドに対応する凹部40を底部に有し、この凹部40に、偏心ロッド15、16の球状ヘッドが直接当接する。
【0026】
この凹部40の上、すなわち直ぐ上方に、それぞれのピストン20、21は、隣接する凹部42を有し、この隣接する凹部42は、保定要素または保定リング41を収容する働きをする。
【0027】
したがって、それぞれの偏心ロッド15、16の球状ヘッド形状の第2の端部38、39が、下側区域において、それぞれのピストン20、21、すなわち凹部40によって設けられた案内面に直接当接し、その直ぐ上方で、それぞれの保定要素または保定リング41の一区域に直接当接することを単純な様式で保証することができる。
【0028】
したがって、それぞれの偏心ロッド15、16の球状ヘッド形状の第2の端部38、39の間、および一方としてのピストン20、21と他方としての保定リング41との間にはさらなる構成要素が位置決めされない。
【0029】
図2a〜
図2cに示される例示的実施形態では、それぞれのピストン20、21の凹部40(それぞれの偏心ロッド15、16のそれぞれの球状ヘッドの一区域を収容して案内する働きをする)と、凹部42(それぞれの保定要素41を収容する働きをする)との間にショルダ43が形成される。このショルダ43は、それぞれのピストン20、21内への保定要素または保定リング41の挿入深さを定める。
【0030】
図2a〜
図2cに示される例示的実施形態では、保定リング41は、周方向で一周するカップ形状の構成要素として具現化され、これは、径方向外側の環状壁44と、径方向内側の別の環状壁45とを有する。保定リング41の径方向内側の環状壁45は、それぞれの偏心ロッド15、16の球状ヘッドの一区域を案内する働きをし、したがって軸受面を設ける。
【0031】
それぞれのピストン20、21および保定リング41のいくつかの区域、すなわち、少なくともそれぞれの偏心ロッド15、16のそれぞれの球状ヘッド38、39と直接接触する区域は、好ましくは軸受材料から構成される。それぞれのピストン20、21およびそれぞれの保定リング41を、完全にこの種の軸受材料から構成することもできる。
【0032】
図2a〜
図2cに示される例示的実施形態では、まず、保定リング41が、それぞれの偏心ロッド15、16のそれぞれの球状ヘッド形状の第2の端部38、39に取り付けられ、次いで、この予め組み立てられたユニットが、それぞれのピストン20、21に挿入される。このプロセス中、保定リング41は、特に溶接、接着結合、または圧着によってそれぞれのピストン20、21にしっかりと接続される。
【0033】
図3a〜
図3cに本発明の別の例示的実施形態が示されている。
図3a〜
図3cでの例示的実施形態は、保定リング41として具現化される保定要素が環状の設計ではなく、円周上の1箇所で中断される、またはスロット(隙間部)が設けられている点で、
図2a〜
図2cでの例示的実施形態とは異なる。したがって、
図3a〜
図3cに示される例示的実施形態では、保定リング41は、約270°の周方向広がりを有する。
【0034】
図3a〜
図3cでの例示的実施形態と、
図2a〜
図2cでの例示的実施形態との別の相違は、環状カラー46が保定リングの壁44に形成され、このカラーが、保定リング41のための位置決め補助となることである。したがって、
図3a〜
図3cにおいて、それぞれのピストン20、21での保定リング41の正確な位置合わせは、それぞれのピストン20、21の凹部40、42の間に形成されたショルダ43と共に、環状カラー46によって達成される。
【0035】
保定リング41は、それぞれのピストン21にスナップ留めすることができ、すなわち、保定リング41は、それぞれのピストン21に形成されたアンダーカット(図示せず)の周りに、またはその中に係合する。この種のスナップ接合により、保定リング41とそれぞれのピストン20、21との間の溶接接合または接着接合をなくすことが可能である。
【0036】
保定リング41のスロット付き実施形態、または円周上の1箇所に中断を有する保定リング41の実施形態(
図3a〜
図3cでの例示的実施形態に示される)は、それぞれの偏心ロッド15、16の球状ヘッド形状の端部38、39への保定リング41の取付けを容易にする。
【0037】
したがって、本発明は、偏心調節デバイス13の偏心ロッド15、16と、油圧チャンバ22、23内で案内される偏心調節デバイス13のピストン20、21との間の球体嵌合接続を提案する。この種の球体嵌合接続は、全ての方向で回転自由度を提供し、構成要素の任意の製造公差および組立て公差を補償できるようにし、このようにして、油圧チャンバ22、23内で案内されるピストン20、21への偏心ロッド15、16の最適な取付けを保証する。球体嵌合接続の保定要素41は、小さな軸方向遊びと、圧縮力および引張力の高い伝達性能とを設定するために使用される。各球体嵌合接続は、3つのサブアセンブリ、すなわち、偏心ロッド15、16の球状ヘッドと、ピストン20、21と、保定要素41とのみによって提供される。
【0038】
保定要素41およびピストン20、21の少なくともいくつかの区域は、好ましくは軸受材料から製造される。組立てを単純にするために、保定要素41は、円周上の1箇所で中断される、またはスロットが設けられる。
【0039】
それぞれの保定要素は、上端部にカラー46を有することができ、カラー46は、組立て前に既に形成されていることがあり、または組立て中にフランジ加工することによって設けられ得る。
【符号の説明】
【0040】
10 コネクティングロッド
11 大端部
12 小端部
13 偏心調節デバイス
14 偏心レバー
15、16 偏心ロッド
20、21 ピストン
22、23 油圧チャンバ
36、37 第1の端部
38、39 第2の端部
40 凹部
41 保定要素
42 凹部
43 ショルダ
44、45 環状壁
46 環状カラー