【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、熱変色性インキを用いて被筆記面上に形成した熱変色性の像または筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性の像または筆跡を熱変色可能な摩擦体の製造方法であって、前記摩擦体が被筆記面上の熱変色性の像または筆跡を摩擦する際、側面に、該側面から該側面の反対側を透視可能な透明または半透明の材料からなる透視部22を備え、且つ、前記摩擦体が前記透視部の頂部外面に設けられた弾性材料からなる摩擦部を備え、前記透視部と前記摩擦部とが2色成形により固着されることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明から得られる摩擦体1は、被筆記面上の熱変色性の像または筆跡を摩擦する際、摩擦体1の側面に、該側面から該側面の反対側を透視可能な透視部22を備えたことにより、熱変色性の筆跡または像の熱変色させたい部分だけ確実に熱変色させることができる。
【0008】
【0009】
前記第1の発明から得られる摩擦体1は、前記透視部22が透明または半透明の材料からなることにより、透視部22を貫通孔により構成する場合に比べ、摩擦時の摩擦体1のぐらつきを防止できる。前記透明または半透明の材料とは、透明または半透明の合成樹脂、透明または半透明のゴムまたはエラストマー等が挙げられる。
【0010】
【0011】
前記第1の発明から得られる摩擦体1は、前記透視部22(透明または半透明の材料からなる透視部22)の頂部外面に弾性材料からなる摩擦部32を設けたことにより、適正な透視機能を有する透視部22と、適正な摩擦機能を有する摩擦部32とを確実に得ることができる。
【0012】
【0013】
前記第1の発明から得られる摩擦部32は、前記透視部22と前記摩擦部32とが2色成形により固着されることにより、透視部22と摩擦部32とが強固に固着される。
【0014】
【0015】
【0016】
本願の第2の発明は、内部に熱変色性インキを収容し、一端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先6を備え、外面に前記熱変色性インキを用いて被筆記面上に形成した熱変色性の筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な摩擦体1を備えた熱変色性筆記具であって、前記摩擦体1が前記第1の発明の製造方法から得られることを要件とする。
【0017】
前記第2の発明の熱変色性筆記具4は、前記第1の発明の製造方法から得られる摩擦体1を備えたことにより、熱変色性の筆跡または像を、熱変色させたい部分だけ確実に熱変色させることができる。
【0018】
尚、本発明で、前記摩擦部32を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0019】
前記弾性材料は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗屑が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。
【0020】
尚、本発明で、前記熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
【0021】
本発明では、
図8に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型の熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図8において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0022】
前記実質的二相保持温度域は、目的に応じて設定できるが、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦体1による摩擦熱で容易に変色することができる。