特許第6298102号(P6298102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298102
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】光変調のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20180312BHJP
   G02B 26/00 20060101ALI20180312BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20180312BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G02F1/01 D
   G02B26/00
   G02B21/06
   G01J3/26
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-115847(P2016-115847)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-16107(P2017-16107A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】10 2015 110 449.0
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】504284168
【氏名又は名称】カール ツァイス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ワルド
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ フーセマン
【審査官】 下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−072478(JP,A)
【文献】 特開2008−310190(JP,A)
【文献】 特開2014−089340(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046710(WO,A1)
【文献】 特開2012−093523(JP,A)
【文献】 特表2015−510150(JP,A)
【文献】 特開平07−072443(JP,A)
【文献】 特開2012−185357(JP,A)
【文献】 特開2012−047632(JP,A)
【文献】 特開2009−180908(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0058182(US,A1)
【文献】 米国特許第06052214(US,A)
【文献】 特開2003−140266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00− 1/125
G02F 1/21− 7/00
G02B19/00−21/00
G02B21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を変調するための変調装置であって、
入射された光束(13、20、31、41、51)を、互いに異なるスペクトル領域を有する少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)に分波するスペクトル分波器(10、21、30、40、52)と、
空間光変調器(12、26、36、47、57)と、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)の異なる位置に誘導する光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)とを備え、
前記空間光変調器は、前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)を変調するように構成され、
前記光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するようにさらに構成され、
前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を結合することにより出射光束(16、27、37、48、58)を形成するようにさらに構成され
前記少なくとも2つの部分光束のうちの少なくとも2つは、互いに反対の方向に前記変調装置を通過する
調装置。
【請求項2】
前記空間光変調器(12、26、36、47、57)は、前記少なくとも2つの部分光束の振幅及び位相の少なくとも一方を互いに独立に変調するように構成される
請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの部分光束の光路長を一致させる構成要素(24)をさらに備える
請求項1に記載の変調装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの部分光束の光路長が、該光路長をバランスさせるための構成要素を用いることなく同一となるよう構成される
請求項1に記載の変調装置。
【請求項5】
前記光学機器は、前記スペクトル分波器及び前記空間光変調器を通る軸に対して実質的に対称に配置される鏡(34,35、45,46、53〜56)を有する
請求項1に記載の変調装置。
【請求項6】
前記光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)は、第1の鏡及び第2の鏡を有し、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)は、第1の部分光束及び第2の部分光束を含み、
前記第1の鏡は、前記第1の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第2の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置され、
前記第2の鏡は、前記第2の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第1の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置される
請求項1に記載の変調装置。
【請求項7】
前記光学機器(53〜56)は、前記空間光変調器のうちの少なくとも1つ(57)又は前記スペクトル分波器(52)への前記少なくとも2つの部分光束の入射角が20°未満となるように構成される
請求項1に記載の変調装置。
【請求項8】
前記入射角は10°未満である
請求項に記載の変調装置。
【請求項9】
前記スペクトル分波器は、ダイクロイックスペクトル分波器を有する
請求項1に記載の変調装置。
【請求項10】
前記スペクトル分波器(30)は、その表面(30A)に、一のスペクトル領域の光を反射し、前記一のスペクトル領域の外の光を透過するダイクロイックレイヤを有する
請求項に記載の変調装置。
【請求項11】
前記スペクトル分波器(40)は、その第1の表面(40A)上に第1のダイクロイックレイヤを有するとともに、その第2の表面(40B)上に第2のダイクロイックレイヤを有し、
第1のダイクロイックレイヤは、第2のダイクロイックレイヤとは異なるスペクトル領域を反射する
請求項に記載の変調装置。
【請求項12】
前記少なくとも2つの部分光束(22,23、32,33、42,43,44、59,510)の光路は、前記空間光変調器(26、36、47、57)による変調を除き、機能上同一である
請求項1に記載の変調装置。
【請求項13】
前記入射された光束を生成する光源(70)を備え、
前記装置は、物体(73)を照らすよう配置される
請求項1に記載の変調装置。
【請求項14】
顕微鏡装置内に含まれる請求項1に記載の変調装置。
【請求項15】
入射された光束(13、20、31、41、51)を、互いに異なるスペクトル領域を有する少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)に分波するスペクトル分波器(10、21、30、40、52)と、
空間光変調器(12、26、36、47、57)と、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)の異なる位置に誘導する光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)とを備え、
前記空間光変調器は、前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)を変調するように構成され、
前記光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するようにさらに構成され、
前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を結合することにより出射光束(16、27、37、48、58)を形成するようにさらに構成され、
前記光学機器(11、25、34,35、45,46、53〜56)は、第1の鏡及び第2の鏡を有し、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)は、第1の部分光束及び第2の部分光束を含み、
前記第1の鏡は、前記第1の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第2の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置され、
前記第2の鏡は、前記第2の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第1の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置される
光束を変調するための変調装置。
【請求項16】
色々なスペクトル成分を有する複数の部分光束に光を分波すること、
前記複数の部分光束を前記空間光変調器上の異なる位置に誘導すること、
前記空間光変調器により、前記複数の部分光束を独立に変調すること、
変調された前記複数の部分光束を結合すること
を備え
前記複数の部分光束を誘導すること、及び、前記複数の部分光束を結合することは、前記複数の部分光束のうちの少なくとも2つが光路に沿って逆方向に向かうこととなるような方法で実行される
光変調のための方法。
【請求項17】
前記方法は、
第1の鏡及び第2の鏡を有し、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)は、第1の部分光束及び第2の部分光束を含み、
前記第1の鏡は、前記第1の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第2の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置され、
前記第2の鏡は、前記第2の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第1の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置される
変調装置を使用して実行される
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
色々なスペクトル成分を有する複数の部分光束に光を分波すること、
前記複数の部分光束を前記空間光変調器上の異なる位置に誘導すること、
前記空間光変調器により、前記複数の部分光束を独立に変調すること、
変調された前記複数の部分光束を結合すること
を備える光変調のための方法であって、
前記方法は、
第1の鏡及び第2の鏡を有し、
前記少なくとも2つの部分光束(14,15、22,23、32,33、42,43,44、59,510)は、第1の部分光束及び第2の部分光束を含み、
前記第1の鏡は、前記第1の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第2の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置され、
前記第2の鏡は、前記第2の部分光束を前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)から前記空間光変調器(12、26、36、47、57)に誘導し、かつ、変調後の前記第1の部分光束を前記空間光変調器(12、26、36、47、57)から前記スペクトル分波器(10、21、30、40、52)に誘導するよう配置される
変調装置を使用して実行される
光変調のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は光変調のための装置及び方法に関し、特に、光の色々なスペクトル成分を個々に変調することを可能にする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器は一般に、入射光束を変調する役割を果たす。そのような変調は例えば、光束の位相及び光束の強度(振幅)の少なくとも一方に関して実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えばビーム成形のようないくつかの応用例では、光束の色々なスペクトル成分(例えば、赤、緑、青の各スペクトル成分)を互いに別々に変調できることが望ましい。
【0004】
したがって、本発明の目的の一つは、色々なスペクトル成分に対してそのような別々の変調を簡易かつ効果的に実現する変調装置及び変調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1による変調装置を用いて、及び、請求項16による方法を用いて実現される。従属請求項は、さらなる実施の形態を定義する。
【0006】
第1の側面によれば、入射ビームを互いに異なるスペクトル領域を有する少なくとも2つの部分光束に分波するスペクトル分波器と、空間光変調器と、前記少なくとも2つの部分光束を前記空間光変調器の異なる位置に誘導する光学機器とを備え、前記空間光変調器は、前記少なくとも2つの部分光束を変調するように構成され、前記光学機器は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を前記空間光変調器から前記スペクトル分波器に誘導するようにさらに構成され、前記スペクトル分波器は、変調後の前記少なくとも2つの部分光束を結合することにより出射光束を形成するようにさらに構成される、光束を変調するための変調装置が提供される。
【0007】
したがって、単一の空間光変調器を用いることによる光束の色々なスペクトル成分の簡易な変調が実現される。スペクトル分波器は、部分光束を分波すること、及び、部分光束を結合することの両方の役割を果たす単一のスペクトル分波器要素を有すればよい。ただし、例えば多数の部分光束を生成するためには、直列に配置された複数のスペクトル分波器要素というアレンジもまた利用可能であり、そのようなアレンジは、それら多数の部分光束を分波すること、及び、それら多数の部分光束を結合することの両方の役割を果たす。
【0008】
前記空間光変調器は、前記少なくとも2つの部分光束の振幅及び位相の少なくとも一方を互いに独立に変調するように構成されてもよい。
【0009】
前記変調装置は、構成要素、とりわけ、前記少なくとも2つの部分光束の光路長を一致させる独立した(他の機能を有しない)構成要素をさらに備えることとしてもよい。
【0010】
前記変調装置は、前記少なくとも2つの部分光束の光路長が、該光路長をバランスさせるための(特に独立した)構成要素を用いることなく同一となるよう構成されてもよい。
【0011】
そのような構造によれば、例えば光路を一致させるための独立した構成要素が不要となり、及び/又は、コンパクトな構造が実現され得る。
【0012】
部分光束の光路は、機能的に同一であってよい。つまり、部分光束は、さらなる構成要素なしに全く同じ光路長をもたらす全く同じ材料(例えば、ガラス、空気など)内における全く同じ経路を通過し、全く同じ光部品(例えば、鏡)によって影響される、ということである。したがってここでは、空間光変調器による部分光束の色々な変調という点での違いのみが発生する。
【0013】
前記光学機器は、前記スペクトル分波器及び前記空間光変調器を通る軸に対して実質的に対称に配置される鏡を有してもよい。この場合において、実質的に対称とは、互いに対して実質的に対称である複数の鏡が軸から20%以上、例えば10%以上異ならない距離にあり、及び/又は、それらの鏡のアライメントが互いに対して対称であり、その偏差が±15%、例えば±10%を超えないことを意味することができる。この場合において、その対称性は、具体的には、鏡の光学的に使用される部品に関連する。他の実施の形態では、「実質的に対称」は、「製作公差の範囲内の対称」を意味し得る。他の実施の形態では、非対称な鏡の配置もまた、使用され得る。
【0014】
前記少なくとも2つの部分光束のうちの少なくとも2つは、互いに反対の方向に前記変調装置を通過してもよい。
【0015】
前記光学機器は、第1の鏡及び第2の鏡を有してもよく、前記少なくとも2つの部分光束は、第1の部分光束及び第2の部分光束を含んでもよい。この場合において、前記第1の鏡は、前記第1の部分光束を前記スペクトル分波器から前記空間光変調器に誘導し、かつ、変調後の前記第2の部分光束を前記空間光変調器から前記スペクトル分波器に誘導するよう配置され、前記第2の鏡は、前記第2の部分光束を前記スペクトル分波器から前記空間光変調器に誘導し、かつ、変調後の前記第1の部分光束を前記空間光変調器から前記スペクトル分波器に誘導するよう配置される。
【0016】
前記光学機器は、前記空間光変調器及び前記スペクトル分波器の少なくとも一方への前記少なくとも2つの部分光束の入射角が20°未満となるように設計されてもよい。
【0017】
前記入射角は、具体的には10°未満であってもよい。
【0018】
そのような小さな入射角は、高効率なスペクトル分波器が必要である場合、例えば低信号強度のケースで特に有利である。
【0019】
前記スペクトル分波器は、ダイクロイックスペクトル分波器を有してもよい。
【0020】
この場合において、前記スペクトル分波器は、側面に、一のスペクトル領域の光を反射し、前記一のスペクトル領域の外の光を透過するダイクロイックレイヤを有してもよい。
【0021】
前記スペクトル分波器はまた、その第1の表面上に第1のダイクロイックレイヤを有するとともに、その第2の表面上に第2のダイクロイックレイヤを有してもよい。この場合において、第1のダイクロイックレイヤは第2のダイクロイックレイヤとは異なるスペクトル領域を反射する。
【0022】
加えて、物体を照らすための照明装置が提供される。この照明装置は、光源と、上述した変調装置とを備える。
【0023】
さらに、上述した変調装置及び上述した照明装置の少なくとも一方を備える顕微鏡装置が提供される。
【0024】
第2の側面によれば、色々なスペクトル成分を有する複数の部分光束に光を分波すること、前記複数の部分光束を前記空間光変調器上の異なる位置に誘導すること、前記空間光変調器により、前記複数の部分光束を独立に変調すること、変調された前記複数の部分光束を結合することを備える光変調のための方法が提供される。
【0025】
この場合において、前記複数の部分光束を誘導すること、及び、前記複数の部分光束を結合することは、前記複数の部分光束のうちの少なくとも2つが光路に沿って逆方向に向かうこととなるような方法で実行されてもよい。
【0026】
前記方法は、上述した変調装置を使用して実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施の形態による光変調装置を示すブロック図である。
図2】さらなる実施の形態による光変調装置を示す図である。
図3A】さらなる実施の形態による光変調装置を示す図である。
図3B図3Aに倣う光変調装置の変調を示す図である。
図4】さらなる実施の形態による光変調装置を示す図である。
図5】さらなる実施の形態による光変調装置を示す図である。
図6】一実施の形態による方法を説明するためのフロー図である。
図7】一実施の形態による光学装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の様々な実施の形態について、詳細に説明する。これらの実施の形態は説明のためのものに過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に、複数の要素を使用する実施の形態の描写は、実施の形態を実施するためにこれらの要素のすべてが必要になるという趣旨に解釈されるべきでない。むしろ、他の実施の形態は、より少ない要素及び/又は代替の要素を含み得る。また、例えば光学配置内で慣習的に使用される要素のようなさらなる要素が、図示した要素に加えて準備され得る。異なる実施の形態の要素は、そうでないことが示されない限り、互いに結合され得る。変形、修正、及び、実施の形態のひとつのために記述される詳細は、他の実施の形態にも適用され得る。
【0029】
以下で議論される実施の形態は、複数の空間光変調器を備える。各空間光変調器は、一体的に具体化される装置、特に、空間光変調器の異なる側面への入射光が異なる方法で変調され得るものを意味すると理解されるべきである。そのような複数の空間光変調器は、それらの広がりの中において並進的に不変な方式で構築され得る。つまり、複数の空間光変調器は、互いに対してオフセットを持って配置される同一タイプの多様な要素からなり得る。この場合において、この応用例の文脈では、空間光変調器という用語は、光の位相変調を行う空間光変調器と、光の振幅を変調する空間光変調器との両方のため、及び、それらの組み合わせのために使用される。位相を変調する光変調器は、例えば液晶や、例えばいわゆるLCOS−SLM(シリコン上液晶空間光変調器)に基づいて構築され得る。振幅を変調する空間光変調器の一例は、デジタルかつマイクロな鏡の配置(DMD。「デジタル・マイクロミラー・デバイス」の短縮形)である。しかしながら、本発明の文脈では、他のタイプの空間光変調器もまた、使用され得る。
【0030】
図1は、様々な実施の形態の基礎的な機能を説明するためのブロック図を示している。図1の実施の形態では、光束13は、スペクトル分波器10上に誘導される。スペクトル分波器10は、異なるスペクトル領域(すなわち、異なる波長範囲を有する成分)を有する少なくとも2つの部分光束14,15に光束13を分波し、これらは光学機器11によって、空間光変調器12の個々の位置に誘導される。個々の部分光束のスペクトル領域は、狭帯域のスペクトル領域(例えば実質的に単一波長)、又は、波長のインターバルを含むより広いスペクトル領域のいずれであってもよい、ということを考慮に入れるべきである。
【0031】
部分光束14,15は、異なる位置で空間光変調器12に入射されるので、異なる方法で(空間光変調器の対応する部分の駆動によって)変調され得る。空間光変調器12からは、そうして変調された部分光束14',15'が光学機器11を介してスペクトル分波器10に戻るように誘導され、そこで部分光束14',15'は、単一の出射ビーム16を形成するように結合される。この目的のために、光学機器11は、例えばレンズ及び鏡の少なくとも一方のような様々な光学要素を有し得る。さらに、光学機器11は、部分光束14,14'のための光路長が部分光束15,15'のための光路長に等しいことを確実にする要素を含み得る。この目的のために、例えば、部分光束14,14'又は15,15'の一方は単純に、他方と光路長を一致させるために空気とは異なる反射率を有する適切な材料を通って誘導され得る。
【0032】
図1に示した構造を使用すると、光束13の色々なスペクトル成分の簡易な変調が実行され得る。具体的には、単一の空間光変調器及びビーム分波器と、光学機器11とのみが必要となる。そのための実装の可能性が、図2図5を参照して以下に記述される。
【0033】
図2は、一実施の形態による変調装置を示している。この変調装置は、スペクトル分波器として、入射光束20のうち、例えば第1のスペクトル領域の第1の部分光束22を反射する一方、第2のスペクトル領域の第2の部分光束23を透過させるダイクロイックコーティングを側面21A上に有するダイクロイック構成要素21を備える。このダイクロイック構成要素21は、それ自体周知の方法で、薄膜干渉フィルタ、又は、他の干渉計として構成され得る。
【0034】
各ケースにおいてそこで変調されるために、第2の部分光束23は第1の位置で空間光変調器26に移り、第1の部分光束22は、鏡25を介して、空間光変調器26の第2の位置に誘導される。各部分光束は、こうして空間光変調器26によって互いに独立に変調され、図示される逆向きの光路を実質的に介してダイクロイック構成要素21に戻り、結合されて出射光束27を形成し、鏡28を介して結合される。ダイクロイック構成要素21はしたがって、部分光束に分波すること、及び、部分光束を結合することの両方の役割を有する。
【0035】
図示した例では、第1の部分光束22によってカバーされる経路長が第2の部分光束23によってカバーされる経路長より長くなっていることから、光路長を一致させるための構成要素24、例えばガラス要素が、第1の部分光束22の経路内に配置される。
【0036】
図3Aでは、さらなる実施の形態が説明される。
【0037】
図3Aの実施の形態では、入射光束31は、図2のダイクロイック構成要素21と類似の態様で光束31を第1のスペクトル領域の第1の部分光束32と第2のスペクトル領域の第2の部分光束33とに分波するコーティングを側面30A上に有するダイクロイック構成要素30に突き当たる。第1の部分光束32は、鏡35を介して空間光変調器36上の第1の位置に誘導され、第2の部分光束33は、鏡34を介して空間光変調器36上の第2の位置に誘導される。変調された第1の部分光束はその後、鏡34を介してダイクロイック構成要素30に戻るよう誘導され、そこで、鏡35を介してダイクロイック構成要素30に戻るよう誘導される変調された第2の部分光束と結合され、出射光束37を形成する。
【0038】
図3Aで明らかなように、この構造は、軸38に対してほぼ対称であり、第1の部分光束32及び第2の部分光束33は反対方向に配置を通過する(図示した例では、第1の部分光束32は反時計回りに、第2の部分光束33は時計回りに、それぞれ配置を通過する)。このケースでは、鏡34,35は、第1の部分光束を曲折させること、及び、第2の部分光束を曲折させることの両方のために使用される。この場合において、実質的に対称とは、互いに対して実質的に対称である鏡34,35が軸38から20%以上、例えば10%以上異ならない距離にあり、及び/又は、鏡34,35のアライメントが互いに対して対称であり、その偏差が±15%、例えば±10%を超えないことを意味することができる。この場合において、その対称性は、具体的には、鏡の光学的に使用される部品、すなわち、実際にも使用される鏡のような反射面を構成する部品に関連する。他の実施の形態では、「実質的に対称」は、「製作公差の範囲内の対称」を意味し得る。
【0039】
図3Aの実施の形態では、第1の部分光束32の光学的な光路は、第2の部分光束33の光学的な光路と同じ長さである。さらに、ダイクロイック構成要素30内における両部分光束の経路は同じ長さである。したがって、(図2における構成要素24のような)異なる光路長をバランスさせるための追加の構成要素は不要である。さらに、図2の実施の形態と比べてそのような実装のケースでは、可能ならば、第1の部分光束32が空間光変調器36に突き当たる位置を第2の部分光束33が空間光変調器36に入射する位置により近いものとし、その結果として、空間光変調器36をより小さく設計することが可能になる。これは、例えば経費節約につながり得る。さらに、両部分光束は、同じ又は相互に対応する光学要素(例えば、鏡34,35)によって影響される。部分光束32,33の光路はしたがって機能的に同一であり、このケースでは、空間光変調器の上流と下流の両方においてさえ、実質的に機能的に同一である。
【0040】
これは、図3Aに示した実施の形態における実質的に対称な構造によって実現される。他の実施の形態では、この構造は非対称であってもよいが、光束の光路長はなおも機能的に同一であり得る。図3Bは、一例として、図3Aに倣う実施の形態の変調を示している。図3A図3Bとでは構成要素の配置のみが異なっており、相互に対応する構成要素は同じ参照符号により識別される。ただし、図3Bにおいては'が補充されている(例えば、図3Aの34と図3Bの34')。図3Bでは、ダイクロイック構成要素30'、鏡34',35'、及び空間光変調器36'は実質的に長方形状に配置され、部分光束32',33'の光路は、図3Aと同様に実質的に同一となっている(光変調器36'による異なる影響があり得ることは別として)。図3Bに図示されるもの以外の非対称の配置もまた可能である。
【0041】
図2図3A、及び図3Bに示した実施の形態では、入射光束は2つのスペクトル的に異なる部分光束に分波される。しかしながら、3つ以上の部分光束に分波することもまた可能である。図4は、入力ビーム41が3つの部分光束42〜44に分波される実施の形態を示している。図4の実施の形態の基礎的な構造は、図3Aに示した実施の形態に対応している。具体的には、図4の鏡45は実質的に図3Aの鏡35に対応し、図4の鏡46は実質的に図3Aの鏡34に対応し、図4の実施の形態の空間光変調器47は実質的に図3Aの空間光変調器36に対応する。図3Aでは、ダイクロイック構成要素30がスペクトル分波器として機能しているのに対し、図4は、入射光束41を、異なるスペクトル領域を有する3つの部分光束42,43,44に分波するダイクロイックスペクトル分波器を有している。
【0042】
この目的のために、ダイクロイック構成要素40は、第1の部分光束42に対応するスペクトル領域を反射し、第2の部分光束43及び第3の部分光束44に対応するスペクトル領域を透過させる第1のコーティングを第1の側面40Aに有する。第2の側面40Bには、ダイクロイック構成要素40は、第2の部分光束43のスペクトル領域に対応する光を反射し、そうない限り、(例えば、第1の部分光束42及び第3の部分光束44のスペクトル領域に対応する)光を透過させるコーティングを有する。結果として、図4から明らかなように、第1の部分光束42、第2の部分光束43、及び第3の部分光束44は、空間光変調器47の3つの異なる位置に誘導され、そこで、例えばそれらの位相及びそれらの振幅の少なくとも一方に関して、別々に変調され得る。図示したように、ビームはその後、ダイクロイック構成要素40によって再び結合され、出射光束48を形成する。図4から同様に明らかなように、カバーされる光路長は部分光束42,43,44のすべてについて同一であり、その結果として、この実施の形態でも、(例えば図2の構成要素24のような)光路長の違いをバランスさせるための追加の構成要素は不要である。ここでまた、部分光束の光路は、機能的に同一である。図4図3Aに類似する実質的に対称な配置を示しているけれども、例えば図3Bに対応する非対称な配置も、ここでは同様に可能である。
【0043】
この場合において、図4の装置の中では、第1の部分光束42及び第2の部分光束43は反時計回りに装置を通過しており、第3の部分光束44は時計周りの方向に装置を通過している。
【0044】
したがって、図3及び図4の実施の形態においては、すべての部分光束が、空間光変調器36,47による意図的な位相操作を除き、同じ光学的経路を通過している。
【0045】
3つより多数の部分光束もまた可能であることに注意すべきである。この目的のため、例えば、空間光変調器上の異なる位置に誘導され、そこで位相及び振幅の少なくとも一方について操作され、その後再結合される所望の数の個別ビームを実質的に生成するために、複数のスペクトル分波器が直列に配置され得る。
【0046】
図5には、さらなる実施の形態が図示される。図5の実施の形態では、図3Aにおける実施の形態に類似する方法で、スペクトル分波器52を用いて、入ってくる光束51が第1の部分光束59と第2の部分光束510とに分波される。このケースでは、スペクトル分波器52は、図3Aにおけるダイクロイック構成要素30と実質的に同様に実装され得る。第1の部分光束59と第2の部分光束510とはその後、空間光変調器57上の異なる位置に誘導され、最終的に、スペクトル分波器52内で出射光束58を形成するために再び結合される。第1の部分光束59は反時計回りに装置を通過し、第2の部分光束510は時計回りに装置を通過する。
【0047】
部分光束59,510を誘導するため、図5の装置は、図示するように配置された4つの鏡53,54,55,56を備えている。この配置もまた、具体的には、スペクトル分波器52及び空間光変調器57を通る軸に対してほぼ対称である。図5の実施の形態では、鏡53,56は、スペクトル分波器52及び空間光変調器57の少なくとも一方へのビームの入射角(光学で通常そうであるように、垂直に対して測定したもの)が、例えば図3及び図4に示した実施の形態でのものより小さくなるよう配置される。例として、図5の実施の形態では、スペクトル分波器52及び空間光変調器57の少なくとも一方への入射角を20°未満、好ましくは10°未満とすることが可能になる。これは、例えば使用されるコーティングに依存するスペクトル分波器52の効率を増加させることができ、このことは、いくつかの応用例における低信号強度のケースで特に重要となり得る。
【0048】
図5のケースでは、配置により多くの自由があるより多くの鏡を用い、一方で、部分光束に対して機能的に同一の光路がなおも達成可能である非対称の配置もまた可能である。
【0049】
図6は、一実施の形態による方法のフロー図を示している。図6の方法は、図1図5を参照して議論した装置を用いて実行されることができ、しかしまた、各装置によって独立して実行されることもできる。
【0050】
ステップ60では、例えばダイクロイック構成要素によって、光束が異なるスペクトル成分を有する複数の部分光束に分波される。ステップ61では、異なる部分光束が空間光変調器上の異なる位置に誘導され、そこで変調される。ステップ62では、出射光束を形成するためには、変調された部分光束が最終的に再結合される。
【0051】
図1図6を参照して議論した装置及び方法は、様々な応用例で使用され得る。1つの応用例は、例えば顕微鏡による検査のための物体のマルチスペクトル照明である。図7には、簡単にした例が図示されている。
【0052】
図7の実施の形態において、光源70は、相対的に広いスペクトル領域にわたって広がる光束を生成する。光束のタイプは、それぞれの応用例に依存する。光源70は、例えば白色灯であってよいが、所望のスペクトル領域で光を発生するいくつかの他の光源でもあり得る。この目的のため、複数の光源、例えば異なる色の複数の光源を結合することもまた可能である。
【0053】
光源70によって生成される光は、図1図5を参照して説明したように構成され得る変調装置71に供給される。ここで光は、空間光変調器によって振幅及び位相の少なくとも一方について変調され、少なくとも2つの異なるスペクトル成分が互いに独立に変調され得る。こうして変調された光束はその後、光学機器72を介して物体73上に誘導される。この目的のため、光学機器72は、例えばレンズ及び鏡を含むことができる。物体73はその後、例えば顕微鏡対物レンズ(図示せず)によって検視され得る。この場合において、図示した照明装置は顕微鏡のための照明装置であろう。
【0054】
この種の照明装置の具体的な応用例は、光シート顕微鏡のためのビーム成形である。例として、色々なスペクトル成分の位相の変調によって、ベッセルビーム又はマシュービームが具体的に形成され得る。他の望ましいビーム形(すなわち、ビームプロファイル)もまた、実現され得る。これは、慣習的には、アキシコン位相又はバイナリ格子によって行われ得る。しかしながら、この場合においては、位相(アキシコン位相、すなわち、使用されるアキシコンの円錐面の角度)又は他にバイナリ格子の格子係数は、特定の波長のために設計されている。もしアキシコン又は格子がそのためには正確に設計されていない色々な波長を有する光が使用されるならば、回折効率が変化し、ビームが最適に成形されることはない。このことは、例えば光シート顕微鏡において、解像度の損失を引き起こすであろう。
【0055】
本発明による変調装置を有する図7に示した照明装置の使用は、上で議論したように、光シート顕微鏡が、単一の変調装置とともに、質の損失なく2つ、3つ、又はより多くの波長を同時に用いて実行され得ることを意味する。
【0056】
他の可能な応用例は、例えば蛍光顕微鏡における照明ビーム及び検出光束の色々な操作である。蛍光顕微鏡においては、照明ビーム及び検出光は一般に、ストロークシフトの結果として色々な波長を有する。加えて、検出光は、色々な波長の全範囲を含み得る。多くの蛍光顕微鏡において、検出光と照明光束は、部分的に共有されたビーム経路を有する。この共有されたビーム経路内に上で議論した装置を用いると、照度及び位相に関するこれらのビームの照明操作を、照明光と検出光とで別々に実行することが可能になる。
【0057】
これらの可能な応用例は単に例を構成するものに過ぎず、議論した装置及び方法は、色々なスペクトル領域の光を振幅及び位相の少なくとも一方に関して異なるように調節しようとする場合に、常に使用可能である。
【0058】
上述した実施の形態は例示のためのものに過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
10,52 スペクトル分波器
11,72 光学機器
12,26,36,47,57 空間光変調器
13,20,31,41,51 入射光束
14,14',15,15',22,23,32,33,42〜44,59,510 部分光束
16,27,37,48,58 出射光束
21,30,40 ダイクロイック構成要素
21A ダイクロイック構成要素21の側面
24 光路長を一致させるための構成要素
25,28,34,35,45,46,53〜56 鏡
30A ダイクロイック構成要素30の側面
38 軸
40A,40B ダイクロイック構成要素40の側面
70 光源
71 変調装置
73 物体
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7