特許第6298141号(P6298141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298141原子層成長装置および原子層成長装置排気部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298141
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】原子層成長装置および原子層成長装置排気部
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20180312BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20180312BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20180312BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20180312BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C23C16/44 J
   H01L21/31 C
   C23C16/455
   C23C16/509
   H05H1/46 M
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-230798(P2016-230798)
(22)【出願日】2016年11月29日
(62)【分割の表示】特願2015-106857(P2015-106857)の分割
【原出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-89009(P2017-89009A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】松本 竜弥
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 圭亮
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−175055(JP,A)
【文献】 特開2003−068657(JP,A)
【文献】 特開2015−073019(JP,A)
【文献】 特開2014−192379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を形成するための原子層成長装置であって、
成膜容器と、
前記成膜容器内に位置し、前記基板を保持するためのステージと、
前記ステージの上方に位置し、高周波電源と接続される電極と、
前記成膜容器に形成された、前記成膜容器内に原料ガスを供給するためのガス導入部と、
前記成膜容器に形成された、前記成膜容器から前記原料ガスを排気するための開口部を含み、
前記開口の内周面および前記開口部周りの前記成膜容器の内壁を覆うように、取り外し可能な防着材が取り付けられ、
前記成膜容器の前記内壁と前記防着材の間の空間に不活性ガスを流すことが可能である原子層成長装置。
【請求項2】
前記成膜容器の外部に位置し、前記開口部と接続する排気配管接続部と、
前記排気配管接続部と接続する排気配管を有し、
前記原料ガスは、前記排気配管を介して前記成膜容器から排出され、
前記排気配管接続部内に接続部不活性ガス供給路が形成され、
前記成膜容器の前記内壁と前記防着材の間の前記空間によって防着材不活性ガス供給路が形成され、
前記接続部不活性ガス供給路は前記防着材不活性ガス供給路と接続され、
不活性ガス供給部から供給された前記不活性ガスが、前記接続部不活性ガス供給路を介して前記防着材不活性ガス供給路に流入する請求項1記載の原子層成長装置。
【請求項3】
前記防着材は前記成膜容器の前記内壁に、ビスを用いて固定される請求項1又は2記載の原子層成長装置。
【請求項4】
前記防着材はフランジ部を有し、
前記フランジ部は前記成膜容器の前記内壁に前記ビスを用いて固定される請求項3記載の原子層成長装置。
【請求項5】
前記不活性ガスは前記ビスの位置まで流入する求項3又は4記載の原子層成長装置。
【請求項6】
前記不活性ガスは窒素またはアルゴンである請求項1〜のいずれか一項に記載の原子層成長装置。
【請求項7】
前記基板はガラス基板である請求項1〜のいずれか一項に記載の原子層成長装置。
【請求項8】
前記電極と前記ステージとの間にプラズマが発生する請求項1〜のいずれか一項に記載の原子層成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜を形成する原子層成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層成長法は、形成しようとする薄膜を構成する元素のガスを基板上に交互に供給し、基板上に原子層単位で薄膜を形成するもので、薄膜を均一に形成する技術として知られている。原子層成長法は、一般的なCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比較して、段差被覆性や膜厚制御性に優れている。
原子層成長法により薄膜の形成を繰り返し行うと、成膜容器の内表面にも薄膜が付着する。成膜容器内表面に付着した薄膜の厚さが厚くなると、堆積した薄膜が剥離し、その一部分がパーティクルとなり、基板上に形成される薄膜の質が劣化する原因となる。そのため、成膜容器の内表面に付着した薄膜を定期的に除去することが好ましい。
【0003】
特許文献1では、CVD成膜やスパッタ成膜などの気相成長装置において、防着板を使用するとともに、さらに、チャンバの内壁に堆積した堆積物を非晶質膜で覆う処理方法および装置が提案されている。
さらに、特許文献2では、ALD(Atomic Layer Deposition)真空成膜装置において、反応室から排出される原料ガスが通過する排気ボックスがその内部に防着板が挿入されて構成され、排気ボックスの内壁面にシール機構が設けられ、このシール機構は、中空のシール部材からなり、該シール部材の内部にガスを連続的に導入して膨張させると、該排気ボックスの内部に向かって膨張して、挿入された防着板の表面に当接し、該排気ボックスの内壁と防着板の表面との隙間をシールするよう構成され、このシール部材には、導入したガスを吐出するための少なくとも1つの孔が設けられているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−351655号公報
【特許文献2】特開2014−192379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、従来の気相成長装置であれば、クリーニングの頻度を低減することは可能である。しかし、チャンバの内壁に堆積した堆積物や堆積物を覆う非晶質膜の厚さが所定の厚さ以上になった場合、ウェットエッチング方法を用いてクリーニングを行う必要がある。ウェットエッチング方法では、成膜容器を開放するため、成膜容器が大型になるにつれて、開放作業の手間が大きくなるため、ガスエッチング方法を用いることができる場合は、ガスエッチング方法を用いることが好ましい。しかし、ガスエッチング方法によりエッチングを行うためには、成膜容器の内壁面の薄膜の付着部分を所定の温度以上に加熱する必要があるが、ヒーターから離れた部分では、必要な加熱温度に達せず、ガスエッチングを行うのが困難になる。そのため、ガスエッチングを行いにくい場所にある程度の量の薄膜が付着した場合、成膜容器を開放してウェットエッチングを行う必要が生じるという問題がある。
【0006】
ALD装置では、原料ガス及び反応ガスは微細な隙間へ容易に侵入し、膜を形成する。このような微細な隙間に侵入したガスは、膜や粉となり、パーティクルの要因となる。よって、防着板を利用し、防着板裏面に不活性ガスを供給することで成膜室、排気ボックス本体への着膜を抑制し、パーティクル発生を回避することが可能となる。特許文献2の手法によれば、排気ボックスの下流側から上流側への反応ガス進入を抑制することが可能であるが、成膜室と排気防着板の隙間や防着板を固定するビス穴から進入する反応ガスを抑制するのは困難となるため、成膜室側の排気ボックス導入口へ膜や粉が堆積し、パーティクルの要因となる。また、着膜抑制がトラップボックス中流部のみであるため、排気配管周辺のトラップボックス下流の着膜は回避することが不可能となるため、排気ボックスのメンテナンスも必要となる。
【0007】
本発明は、排気側のクリーニングの頻度を低減し、メンテナンス作業性を向上させることができる原子層成長装置およびその排気部を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態の原子層成長装置は、
基板上に薄膜を形成するための原子層成長装置であって、
成膜容器と、
前記成膜容器内に位置し、前記基板を保持するためのステージと、
前記ステージの上方に位置し、高周波電源と接続される電極と、
前記成膜容器に形成された、前記成膜容器内に原料ガスを供給するためのガス導入部と、
前記成膜容器に形成された、前記成膜容器から前記原料ガスを排気するための開口部を含み、
前記開口の内周面および前記開口部周りの前記成膜容器の内壁を覆うように、取り外し可能な防着材が取り付けられ、
前記成膜容器の前記内壁と前記防着材の間の空間に不活性ガスを流すことが可能である。
【0009】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、
前記成膜容器の外部に位置し、前記開口部と接続する排気配管接続部と、
前記排気配管接続部と接続する排気配管を有し、
前記原料ガスは、前記排気配管を介して前記成膜容器から排出され、
前記排気配管接続部内に接続部不活性ガス供給路が形成され、
前記成膜容器の前記内壁と前記防着材の間の前記空間によって防着材不活性ガス供給路が形成され、
前記接続部不活性ガス供給路は前記防着材不活性ガス供給路と接続され、
不活性ガス供給部から供給された前記不活性ガスが、前記接続部不活性ガス供給路を介して前記防着材不活性ガス供給路に流入する。
【0010】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記防着材は前記成膜容器の前記内壁に、ビスを用いて固定される。
【0011】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記防着材はフランジ部を有し、
前記フランジ部は前記成膜容器の前記内壁に前記ビスを用いて固定される。
【0012】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記不活性ガスは前記ビスの位置まで流入する。
【0015】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記不活性ガスは窒素またはアルゴンである。
【0016】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記基板はガラス基板である。
【0017】
他の形態の原子層成長装置の発明は、前記形態の発明において、前記電極と前記ステージとの間にプラズマが発生する。
【0018】
また、本発明の他の原子層成長装置の形態は、
成膜容器と、
前記成膜容器に設けられた排気用の開口部の外側に取り付けられ、外周面が前記開口部を超える大きさを有し、筒穴側に排気路が位置する筒状の排気配管接続部と、
前記成膜容器内側に位置して前記開口部に挿入して取り付けられ、筒穴側に排気路が位置する筒状の排気防着材と、を備え、
前記排気配管接続部に、
前記排気路と区画されて、不活性ガスが流れる接続部不活性ガス供給路と、前記接続部不活性ガス供給路に設けられて前記不活性ガスが前記開口部側に流れ出る接続部不活性ガス供給口と、が設けられ、
前記排気防着材に、
前記排気路と区画されて、前記開口部内周面および前記開口部周りの前記成膜容器内壁と前記排気防着材の間の隙間により形成され、前記接続部不活性ガス供給口に連通する防着材不活性ガス供給路と、前記防着材不活性ガス供給路に設けられて前記不活性ガスが前記成膜容器内部に流れ出る防着材不活性ガス排出口と、が設けられていることを特徴とする。
【0019】
上記形態の本発明によれば、接続部不活性ガス供給路を流れる不活性ガスが防着材不活性ガス供給路に流れ、防着材不活性ガス排出口に流れ出すことで、排気防着材と成膜容器内壁や開口部、排気配管接続部との隙間に着膜が生じるのを抑止する。
【0020】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記防着材不活性ガス排出口が、前記排気防着材の全周に亘って形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記形態の本発明によれば、排気防着材と成膜容器内壁との隙間に着膜を生じるのを全周に亘り確実に防止することができる。
【0022】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記開口部の内周面と前記開口部に挿入された前記排気防着材の外周面との間の隙間が、10mm以下であることを特徴とする。
【0023】
上記形態の本発明によれば、開口部の内周面と開口部に挿入された防着材外周面との間の隙間を適切に確保することで、不活性ガスの流れを確実に確保して着膜を防止し、適正なガスの流速を得ることを容易にする。この隙間は、10mm以下が望ましい。上記隙間が10mmを超えると、適正な流速を得るためにガスの流量が多く必要になる。隙間の下限は特に限定されず、不活性ガスの流出が得られるものであればよい。部材同士を当接させる場合にも、粗面同士であれば、その隙間によりガス流出が得られる。例えば、防着材外周面を、敢えて粗面(例えばRa(算術平均粗さ)=3〜6μm)として、防着材外周面を成膜容器に当接させて取り付けるようにしてもよい。この点で、隙間の下限は、0.01mmを例示することができる。
【0024】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記開口部の周りの前記成膜容器内壁と前記排気防着材との間の隙間が、10mm以下であることを特徴とする。
【0025】
上記形態の本発明によれば、開口部の周りの成膜容器内壁と防着材との間の隙間により、不活性ガスの流れを確実に確保して着膜を防止し、適正なガスの流速を得ることを容易にする。上記隙間が10mmを超えると、ガスの流れが十分に得られない。一方、隙間の下限は特に限定されず、ガスの流出が得られるものであればよい。部材同士を当接させる場合にも、粗面同士であれば、その隙間によりガス流出が得られる。この点で、隙間の下限は、0.001mm以上を例示することができる。
【0026】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記接続部不活性ガス供給路は、前記排気路の外周側で、排気ガスの流れ方向に沿って1または複数が設けられていることを特徴とする。
【0027】
上記形態の本発明によれば、1または複数の接続部不活性ガス供給路を通して、不活性ガスを供給することができる。特に複数を設ければ、できるだけ均等にガスを供給することができる。複数の接続部不活性ガス供給路は、例えば、少なくとも排気穴の上方、下方、両側方に設けることができる。
【0028】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記排気防着材は、前記排気配管接続部の筒穴内に挿入され、前記筒穴に沿って伸長する防着排気配管を有し、該防着排気配管は前記排気防着材の筒穴に連通しており、前記筒穴および前記防着排気配管の管穴が、長さ方向において前記排気路の少なくとも一部を構成していることを特徴とする。
【0029】
上記形態の本発明によれば、防着排気配管の配置により、排気防着材と排気配管接続部との隙間および排気配管接続部の内周面が覆われて着膜が防止される。
【0030】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記防着排気配管と前記排気配管接続部の筒穴との間に、前記防着排気配管の先端に至る接続部不活性ガス第2供給路を有し、該接続部不活性ガス第2供給路の先端側に、不活性ガスが流れ出る接続部不活性ガス第2供給口が設けられていることを特徴とする。
【0031】
上記形態の本発明によれば、接続部不活性ガス第2供給路によって、防着排気配管の先端側への着膜を抑止され、排気配管接続部への着膜を抑止する。
【0032】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記接続部不活性ガス第2供給路が前記接続部不活性ガス供給路に連通していることを特徴とする。
【0033】
上記形態の本発明によれば、接続部不活性ガス供給路に供給された不活性ガスの一部を接続部不活性ガス第2供給路に送り出すことができる。
【0034】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記排気配管接続部に排気配管が接続されていることを特徴とする。
【0035】
上記形態の本発明によれば、排気配管を通して排ガスを移送することができる。
排気配管は、排気配管接続部に取り付け可能なものであってもよく、また、排気配管接続部に排気配管が一体になって接続されているものであってもよい。
【0036】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記排気防着材は、前記排気配管接続部の筒穴内に挿入され、前記筒穴に沿って伸長する防着排気配管を有し、前記防着排気配管は、前記排気配管接続部に接続された前記排気配管内に挿入される長さを有していることを特徴とする。
【0037】
上記形態の本発明によれば、排気配管接続部での着膜を抑止する。
【0038】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記防着排気配管は、防着排気延長管を有し、該防着排気延長管は前記排気配管に挿入される長さを有し、前記防着排気延長管は、前記排気配管が接続される側から取り付け可能であることを特徴とする。
【0039】
上記形態の本発明によれば、防着排気配管の長さを延長管で調整することができ、排気配管との接続側から容易に取り付けすることができる。
【0040】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記防着排気配管外周面は、前記排気配管内周面と隙間を有していることを特徴とする。
【0041】
上記形態の本発明によれば、防着排気配管と排気配管との幅方向の隙間によって、接続部不活性ガス供給路の一部を構成することができ、防着排気配管と排気配管との接続隙間への着膜を防止することができる。結果、排気配管接続部への着膜を抑止することができる。
【0042】
他の形態の本発明の原子層成長装置は、前記本発明の形態において、前記排気防着材は、前記開口部の周りの前記成膜容器内壁に沿い、かつ前記内壁と間隙を有するフランジを有しており、該フランジ周縁内面と前記成膜容器内壁との間に前記防着材不活性ガス排出口が設けられていることを特徴とする。
【0043】
上記形態の本発明によれば、フランジ周辺から側方に不活性ガスを排出することができ、粒子などが排ガス方向に沿って内部に侵入するのを抑止する。
【0044】
他の形態の原子層成長装置排気部は、
成膜容器に設けられた排気用の開口部の外側に取り付けられ、外周面が前記開口部を超える大きさを有し、筒穴側に排気路が位置する筒状の排気配管接続部と、
前記成膜容器内側に位置して前記開口部に挿入して取り付けられ、筒穴側に排気路が位置する筒状の排気防着材と、を備え、
前記排気配管接続部に、
前記排気路と区画されて、不活性ガスが流れる接続部不活性ガス供給路と、前記接続部不活性ガス供給路に設けられて前記不活性ガスが前記開口部側に流れ出る接続部不活性ガス供給口と、が設けられ、
前記排気防着材に、
前記排気路と区画されて、前記開口部内周面および前記開口部周りの前記成膜容器内壁と前記排気防着材の間の隙間により形成され、前記接続部不活性ガス供給口に連通する防着材不活性ガス供給路と、前記防着材不活性ガス供給路に設けられて前記不活性ガスが前記成膜容器内部に流れ出る防着材不活性ガス排出口と、が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、排気防着材を成膜容器内側から簡単に取り外すことが可能であり、排気防着材と成膜容器の隙間及び、排気防着材と排気配管接続部の隙間に不活性ガスパージを行うことができ、成膜容器及び排気配管接続部への着膜を抑制することが可能となる。これにより、パーティクル発生の抑制と成膜容器及び排気配管接続部のクリーニング頻度低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態の原子層成長装置を示す概略構成図である。
図2】同じく、図1に示される排気部周辺の拡大図および排気配管接続部側を見た拡大図である。
図3】他の実施形態における排気部周辺の拡大図である。
図4】同じく、原子層成長方法の一例を示すフローチャートである。
図5】同じく、基板の上に薄膜が形成される工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(実施形態1)
まず、図1を参照して、本実施形態の原子層成長装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態の原子層成長装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の原子層成長装置10は、原料ガスと反応ガスとを交互に供給し、基板13上に原子層単位で薄膜を形成する。その際、反応活性を高めるため、基板13を加熱させることができる。特に、本実施形態では原料ガスとしてTMA(Tri−Methyl Aluminum)を用い、その際、反応活性を高めるため、プラズマを発生させることもできる。本実施形態では、プラズマの発生に平行平板電極を用いるが、この方式に限定されない。
【0048】
成膜容器11は、ガス導入部20と、排気部30と、ヒーター14Aを有するステージ14と、上部電極12と、高周波電源15と、を備える。ヒーター14Aにより、基板13の温度を調整することができる。例えば、プラズマALDの場合、基板13を50〜200℃に加熱することができる。
上部電極12は、ステージ14上に設置した基板13の上方に位置するように設けられ、高周波電源15と接続されている。高周波電源15が所定の周波数の高周波電流を供給することにより、上部電極12とステージ14との間でプラズマが生成される。
【0049】
成膜容器11では、ガス導入が行われる開口部11Aに、ガス導入部20が設けられている。ガス導入部20では、成膜容器11外側に筒状のインジェクタ21が配置され、成膜容器11内側から筒状のインジェクタ防着材22が開口部11A内に挿入されて取り付けられている。インジェクタ21とインジェクタ防着材22とは、ガス通路が設けられており、互いに付き合わせて設置されている。ガス通路の数は特に限定されるものではない。
ガス導入部20では、原料ガス、反応ガス、パージガスを成膜容器11内に供給する。
【0050】
また、成膜容器11では、ガス排出が行われる開口部11Bに、排気部30が設けられている。排気部30では、成膜容器11内側から筒状の排気防着材31が開口部11B内に挿入されて取り付けられ、成膜容器11外側に筒状の排気配管接続部32が取り付けられている。排気配管接続部32には、排気配管40が接続される。
【0051】
図2(A)は、ガス流れ方向に平行な成膜容器側面から見た場合の排気部30、すなわち排気防着材31および排気配管接続部32を示す拡大図である。
排気防着材31および排気配管接続部32のガスの流れは、基板13面に平行になるように開口部11Aおよび開口部11Bが形成されている。すなわち、この実施形態の原子層成長装置は、ラミナーフロー型の装置である。ただし、本発明としては、原子層成長装置がラミナーフロー型に限定されるものではない。
【0052】
排気防着材31には、図2(A)に示すように、筒穴312を有し、成膜容器11側に開口部11Bを超える大きさのフランジ311を有している。
フランジ311の外側に位置する筒状の防着材本体310は、開口部11B内周面と全周に亘って隙間を有しており、該隙間が防着材不活性ガス供給路313を構成している。この隙間の量は、本発明としては特に限定されるものではないが、0.01〜5mmの範囲が好適であり、この実施形態では1mmとする。
【0053】
また、フランジ311の内面と開口部11Bの周りの成膜容器11内壁との間には全周に亘って隙間が確保されており、該隙間も防着材不活性ガス供給路313の一部を構成している。フランジ311と成膜容器11内壁との隙間は、意図的に例えば10mm以下で設けてもよく、フランジ311の内面が粗面であれば、成膜容器11内壁に当接させてもよい。
例えば、フランジ311の内面を、敢えて粗面とし(例えばRa(算術平均粗さ)=3〜6μm)として、フランジ311内面を成膜容器11内壁に当接させて取り付けるようにしてもよい。
この粗面形状によってガスが流れる防着材不活性ガス供給路313が確保される。防着材不活性ガス供給路313は、少なくとも0.001mm以上を有するのが望ましい。
以下の実施形態2でも同様である。
【0054】
フランジ311周縁内面と成膜容器11内壁との全周に亘る隙間は、防着材不活性ガス排出口314を構成する。
なお、防着材不活性ガス供給路313は、防着材本体310の周壁によって、排気穴を構成する筒穴312とは区画されている。
防着材不活性ガス排出口314は、後述するように、防着材不活性ガス供給路313が複数本の接続部不活性ガス供給路323に接続されたシャワーヘッド構造を有している。
【0055】
筒状の排気配管接続部32は、開口部11Bを超える外周形状と、軸方向に沿った筒穴322を有しており、排気防着材31の筒穴312に連通している。この実施形態では、筒穴312、322は排気穴を構成する。なお、筒穴そのものが排気穴とならず、その内側に排気穴を有する構成とすることができる。筒穴312と筒穴322との接続部分は、面一に形成するのが望ましい。
【0056】
排気配管接続部32は、成膜容器11の外壁に取り付けられる。取り付けに際しては、排気配管接続部32の先端面と成膜容器11の外壁面との間には、Oリング330を介在させて封止性を高めている。また、排気防着材31の先端面は、取り付けた状態で、成膜容器11の外壁に倣うように位置する。これにより排気配管接続部32の先端面と排気防着材31の先端面とが付き合わせ状態になる。その際に、先端面間にOリング331を介在させてシール性を高めている。Oリング331を収納するOリング溝(図示しない)は、メンテナンス性のため排気防着材31のみに形成するようにしてもよい。
【0057】
また、排気配管接続部32では、図2(B)に示すように、筒穴322の周囲に、開口部11Bの内周面に外側の穴面が沿うように、上方側、下方側、両側方側に、それぞれ接続部不活性ガス供給路323が設けられている。図2(B)は、排気防着材31を省略して、成膜容器内側から排気配管接続部32を見た図である。
接続部不活性ガス供給路323は、ガスの流れ方向に沿って排気配管接続部32の軸方向に沿って形成され、軸方向中程でそれぞれ外周方向に向きを変えて排気配管接続部32の外周面に開口している。
【0058】
また、各接続部不活性ガス供給路323は、外周側の穴面が開口部11Bの穴面に沿う位置に形成されており、かつ、防着材不活性ガス供給路313に連通している。接続部不活性ガス供給路323が防着材不活性ガス供給路313に連通する端部は、接続部不活性ガス供給口324を構成する。なお、接続部不活性ガス供給路323断面形状は、必ずしも開口部11Bの穴面に沿う必要はない。
接続部不活性ガス供給路323は、排気配管接続部32の内周壁によって排気穴を構成する筒穴322と区画されている。
【0059】
接続部不活性ガス供給路は、排気配管接続部に1箇所以上を備えるのが望ましい。例えば、排気配管接続部の幅と高さのアスペクト比が10:1のような直方体形状では、排気配管接続部の上部側と下部側の2箇所に設け、排出口側でシャワーヘッド構造とすることが好ましい。これにより防着材不活性ガス供給路もしくは防着材不活性ガス排出口に均一にガスを供給することが可能となる。排気配管接続部が円形である場合においても、複数箇所の不活性ガス供給路を備えることで防着材不活性ガス供給路もしくは防着材不活性ガス排出口内の圧力均一性は向上する。
【0060】
排気配管接続部32には、筒穴322に連通するように排気穴402を有する排気配管40が接続されている。
【0061】
上記構成によって、成膜容器11から排気されるガスは、筒穴312、322、排気穴402を通して成膜容器11外に排出される。
また、接続部不活性ガス供給路323には、図示しない不活性ガス供給部から不活性ガスが供給され、該不活性ガスは、複数の接続部不活性ガス供給路323を通して、排気防着材側に送られ、接続部不活性ガス供給口324、防着材不活性ガス供給路313を通して防着材不活性ガス排出口314から成膜容器11内に不活性ガスが排出される。不活性ガスには例えば窒素、アルゴンなどを用いることができる。
上記不活性ガスの排出によって、排気防着材31と開口部11Bとの隙間への着膜が抑止され、さらに、排気配管接続部32と排気防着材31との隙間への着膜が抑止される。
【0062】
(実施形態2)
次に、排気部の構成を変更した他の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、排気部を除く他の構成は、実施形態1と同様であり、ここではその説明を省略する。
この実施形態の排気部30Aは、前記実施形態1と同様に、成膜容器11に設けられた排気用の開口部11Bに取り付けられる。排気部30Aは、筒状の排気防着材34と筒状の排気配管接続部35とを有している。
【0063】
排気防着材34は、筒穴342を有し、成膜容器11側に開口部11Bを超える大きさのフランジ341を有している。
排気防着材34の成膜容器11への固定は、例えば2mm厚さのシムをフランジ341と成膜容器11内壁とに挿入し、ビス38で固定する。ビス38は、複数箇所で用いられる。その数は特に限定されない。
フランジ341外側に位置する筒状の防着材本体340は、開口部11Bの軸方向範囲で、開口部11Bの内周面と全周に亘って隙間を有しており、該隙間が防着材不活性ガス供給路343を構成している。この隙間の量は、本発明としては特に限定されるものではないが、0.01〜5mmの範囲内が好適である。この実施形態では1mmとする。
【0064】
また、フランジ341の内面と開口部11Bの周りの成膜容器11内壁との間には、全周に亘って隙間が確保されており、該隙間も防着材不活性ガス供給路343の一部を構成している。フランジ341と成膜容器11内壁との隙間は、意図的に例えば10mm以下で設けてもよく、フランジ341の内面が粗面であれば、成膜容器11内壁に当接させてもよい。この粗面形状によってガスが流れる防着材不活性ガス供給路343が確保される。防着材不活性ガス供給路343は、少なくとも0.001mm以上を有するのが望ましい。
【0065】
フランジ341周縁内面と成膜容器11内壁との全周に亘る隙間は、防着材不活性ガス排出口344を構成する。
防着材不活性ガス供給路343は、筒状の防着材本体340の周壁によって筒穴342とは区画されている。
なお、防着材不活性ガス排出口344は、後述するように、防着材不活性ガス供給路343が複数本の接続部不活性ガス供給路353に接続されたシャワーヘッド構造を有している。
さらに、排気防着材34は、排気防着材本体340の内周側に連なって軸方向外側に伸長する防着排気配管340Aを有しており、その管穴342Aは筒穴342に連通している。
【0066】
一方、筒状の排気配管接続部35は、開口部11Bを超える外周形状と、軸方向に沿った筒穴352を有している。
排気配管接続部35は、成膜容器11の外壁に取り付けられ、取り付けに際しては、排気配管接続部35の先端面と成膜容器11の外壁面との間には、Oリング332を介在させて封止性を高めている。また、排気防着材34の先端面は、取り付け後に、成膜容器外壁面に倣うように位置する。これにより排気配管接続部35の先端面と排気防着材34の先端面とが付き合わせ状態になる。
【0067】
また、排気配管接続部35では、筒穴352の外周側周囲で排気防着材34側に、上方側、下方側、両側方側に、それぞれ接続部不活性ガス供給路353が形成されている。接続部不活性ガス供給路353は、ガスの流れ方向に沿って排気配管接続部35の軸方向に沿って形成され、軸方向前方に近い位置でそれぞれ外周方向に向きを変えて排気配管接続部35の外周面に開口している。
【0068】
また、各接続部不活性ガス供給路353は、外周側の穴面が開口部11Bの穴面に沿う位置に形成されており、かつ、防着材不活性ガス供給路343に連通している。接続部不活性ガス供給路353が防着材不活性ガス供給路343に連通する端部は、接続部不活性ガス供給口354を構成する。なお、接続部不活性ガス供給路353断面形状は、必ずしも開口部11Bの穴面に沿う必要はない。
接続部不活性ガス供給路353は、排気配管接続部35の周壁および防着排気配管340Aによって、排気穴を構成する筒穴342と区画されている。
【0069】
排気配管接続部35では、筒穴352は、排気配管接続部35の外側端で閉じられており、側方に空けた取り付け穴35Aに側方から連通している。
筒穴352内には、終端に至る直前まで小隙間を残して防着排気配管340Aが伸長して、その終端が閉じられており、終端近くで、防着排気配管340A側方に、取り付け穴35Aに向けた連結穴340Bが形成されている。
防着排気配管340Aの外周面と、排気配管接続部35の筒穴352の内周面との間には隙間が設けられており、該隙間が接続部不活性ガス第2供給路355を構成している。
【0070】
接続部不活性ガス第2供給路355は、排気配管接続部35の成膜容器側先端であって、排気防着材34との接面部に接続部不活性ガス供給路353と連結する連結路を有している。
防着材不活性ガス供給路343と、接続部不活性ガス第2供給路355との合計ガスコンダクタンスの比は0.01〜100であることが好ましく、さらには1:1であることが好ましい。成膜容器11側と排気配管41側へ等量の不活性ガスを供給するためである。ガスコンダクタンスは不活性ガス供給路の流路幅と流路長により制御することが可能である。
【0071】
さらに、取り付け穴35Aには、排気配管41が取り付けられており、両者の接合面間には、Oリング333が介在されて封止性を高めている。防着排気配管340Aでは、連結穴340Bに排気配管41の方向に伸びる防着排気延長管340Cが接続されている。防着排気延長管340Cは、排気配管41を排気配管接続部35から取り外した状態で、排気配管41の取り付け側から取り付け穴35Aを通して容易に取り付けを行うことができる。防着排気延長管340Cの管穴342Bは、管穴342A、筒穴342に連通している。
【0072】
防着排気延長管340C外周面と、筒穴352内周面、取り付け穴35A内周面、排気配管41内周面との間には、隙間が確保されており、これら隙間まで、前記した接続部不活性ガス第2供給路355が延伸している.防着排気延長管340Cの先端位置にある接続部不活性ガス第2供給路355は、接続部不活性ガス第2供給口356を構成する。
【0073】
排気配管41は、例えば内径150mmの配管を用いることができる。この場合、防着排気延長管340Cは、例えば内径100mm、高さ100mmの円筒を用いることができ、防着排気配管340Aとビスで固定可能なようにフランジを有するのが望ましい。防着排気延長管340Cの取り付けは、防着排気配管340Aを成膜容器開口部11B側に取り付けた後、排気配管41を取り外した後に可能となる。
【0074】
上記構成によって、成膜容器11から排気されるガスは、筒穴342、管穴342A、342Bを通して成膜容器11外に排出される。筒穴342、管穴342A、342Bは、排気穴を構成する。
また、接続部不活性ガス供給路353には、図示しない不活性ガス供給部から不活性ガスが供給され、該不活性ガスは、複数の接続部不活性ガス供給路353を通して、排気防着材側に送られ、接続部不活性ガス供給口354、防着材不活性ガス供給路343を通して防着材不活性ガス排出口344から成膜容器11内に不活性ガスが排出される。不活性ガスには例えば窒素、アルゴンなどを用いることができる。
【0075】
上記不活性ガスの排出によって、排気防着材34、開口部11B、排気配管接続部35との隙間への着膜が抑止される。また、排気配管接続部35の筒穴側は、防着排気配管340Aで覆われており、着膜が防止される。
さらに、接続部不活性ガス供給路353に送られた不活性ガスの一部は、接続部不活性ガス第2供給路355に送られ、防着排気配管340Aと防着排気延長管340Cとの接続部の隙間周辺、排気配管接続部35と排気配管41との接続部の隙間周辺を通って、防着排気延長管340Cの先端から排気配管41の管路方向に沿って排出される。
上記不活性ガスの排出によって、防着排気配管340Aと排気配管接続部35との隙間、防着排気配管340Aと延長管340Cとの隙間に対する着膜を抑制することができる。
この結果、開口部11B及び排気配管接続部35をメンテナンスフリーとすることができる。
【0076】
次に、上記原子層成長装置10における処理手順を説明する。
図4は、本実施形態の原子層堆積方法の一例を示すフローチャートである。図5(a)〜(d)は、基板Sの上に薄膜が形成される工程を示す図である。
【0077】
まず、原料ガス供給部が成膜容器11の内部に原料ガスを供給する(ステップs1)。具体的には、ガス導入部20に原料ガスを供給する(ステップs1)。原料ガスは、成膜容器11の内部に供給される。原料ガスは、例えば、0.1秒間、成膜容器11の内部に供給する。図5(a)に示されるように、ステップs1によって、成膜容器11の内部に原料ガス110が供給され、基板Sの上に原料ガス110が吸着して、吸着層102が形成される。
【0078】
また、ステップs1において、インジェクタ21の内表面およびインジェクタ防着材22の外表面に不活性ガスを供給する。また、排出部30では、排気配管接続部および排気防着材にも不活性ガスを供給する。
本実施形態では、ステップs1のみでなく、後述するステップs2〜4も含めて、常に不活性ガスを供給する。そのため、ステップs1において、成膜容器11の内部に原料ガスを供給する際に、成膜容器11とインジェクタ防着材22との隙間および成膜容器11と排気防着材31との隙間に原料ガスが入り込むのを抑制することができる。
【0079】
次に、原料ガスの供給を停止し、ガス導入部でパージガスを供給する(ステップs2)。パージガスは、成膜容器11の内部に供給される。原料ガスは、排気部30から成膜容器11の外部に排出される。
パージガスは、例えば、0.1秒間、成膜容器11の内部に供給する。排気部30が成膜容器11の内部の原料ガス110やパージガス112を排気する。排気部30は、例えば、2秒間、成膜容器11の内部の原料ガス110やパージガス112を排気する。図5(b)に示されるように、ステップs2によって、成膜容器11の内部にパージガス112が供給され、基板Sの上に吸着していない原料ガス110が成膜容器11からパージされる。
【0080】
次に、成膜容器11の内部に反応ガスを供給する(ステップs3)。具体的には、ガス導入部20を通して反応ガスを供給する(ステップs3)。反応ガスは、ガス導入部20の通路を通って、成膜容器11の内部に供給される。反応ガスは、例えば、1秒間、成膜容器11の内部に供給される。図5(c)に示されるように、ステップs3によって、成膜容器11の内部に反応ガス114が供給される。
【0081】
また、ステップs3においても、インジェクタ21の内表面やインジェクタ防着材22の外表面や排気部30で不活性ガスを供給する。そのため、ステップs3において、成膜容器11の内部に反応ガスを供給する際に、成膜容器11とインジェクタ防着材22との隙間および成膜容器11と排気防着材31との隙間に反応ガスが入り込むのを抑制することができる。
【0082】
次に、反応ガスの供給を停止し、ガス導入部20にパージガスを供給する(ステップs4)。パージガスは、成膜容器11の内部に供給される。パージガスは、排気部30から成膜容器11の外部に排出される。パージガスは、例えば、0.1秒間、成膜容器11の内部に供給される。排気部30が、成膜容器11の内部の反応ガス114やパージガス112を排気する。図5(d)に示されるように、ステップs4によって、成膜容器11の内部にパージガス112が供給され、反応ガス114が成膜容器11からパージされる。
【0083】
以上説明したステップs1〜s4により、基板Sの上に一原子層分の薄膜層104が形成される。以下、ステップs1〜s4を所定回数繰り返すことにより、所望の膜厚の薄膜層104を形成することができる。
【0084】
本実施形態の原子層成長装置10では、不活性ガスがインジェクタ21の内表面およびインジェクタ防着材22の外表面を流れるため、成膜容器11とインジェクタ21との隙間に原料ガスや反応ガスが入り込むのを抑制することができる。そのため、成膜容器11とインジェクタ21との隙間に薄膜が付着するのを抑制することができる。また、排気部30も同様に薄膜の付着が防止される。
【0085】
また、例えば、原料ガスとしてTMAを用い、反応ガスとしてOを用いて形成されるアルミナ膜は、BClガスによりガスエッチングを行うことができる。BClガスによりアルミナ膜をガスエッチングするためには、例えば、500℃程度の高温に加熱する必要がある。
ヒーター14Aの付近に位置する成膜容器11の内壁は、ヒーター14Aにより500℃程度の高温に加熱することが可能となる。そのため、ヒーター14Aの付近に位置する成膜容器11の内壁に付着した薄膜は、ガスエッチングにより除去することが可能となる。
【0086】
以上のように、本実施形態によれば、成膜容器11の内壁に薄膜が付着するのを抑制でき、また、内壁に付着した薄膜をガスエッチングにより除去することができるので、ウェットエッチングによるクリーニングの頻度を低減させることができる。
【実施例1】
【0087】
実施形態1の成膜容器11および図3に示す排気部30Aの構造を用いて、370mm×470mmのG2ガラス基板にAlON薄膜を形成した。液体原料(Al源)としてTMA(トリメチルアルミニウム)、反応ガスとして酸素プラズマおよび窒素プラズマを用いた。成膜は図4に示したシーケンスとした。不活性ガスは、流量を500sccm(80℃)とし、成膜シーケンス中、常時供給とした。
20μmの成膜を実施した後、防着材不活性ガス供給路、接続部不活性ガス供給路、接続部不活性ガス第2供給路部分にあたる排気防着材、排気配管接続部の内壁の膜厚を目視にて観察したところ、目視で観察されるAlNO薄膜の干渉膜は観測されず、その堆積量は50nm以下であることが確認された。排気部のメンテナンスは排気防着材及びビス、排気配管、防着排気延長管のみであり、開口部、排気配管接続部はメンテナンスフリーとすることが可能となった。
【0088】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 原子層成長装置
11 成膜容器
11A 開口部
11B 開口部
13 基板
14 ステージ
14A ヒーター
15 高周波電源
20 ガス導入部
21 インジェクタ
22 インジェクタ防着材
30 排気部
30A 排気部
31 排気防着材
32 排気配管接続部
34 排気防着材
35 排気配管接続部
35A 取り付け穴
38 ビス
40 排気配管
41 排気配管
310 防着材本体
311 フランジ
312 筒穴
322 筒穴
313 防着材不活性ガス供給路
314 防着材不活性ガス排出口
323 接続部不活性ガス供給路
324 接続部不活性ガス供給口
330 Oリング
331 Oリング
332 Oリング
333 Oリング
340A 防着排気配管
340B 連結穴
340C 防着排気延長管
341 フランジ
342 筒穴
342A 管穴
342B 管穴
343 防着材不活性ガス供給路
344 防着材不活性ガス排出口
352 筒穴
353 接続部不活性ガス供給路
354 接続部不活性ガス供給口
355 接続部不活性ガス第2供給路
356 接続部不活性ガス第2供給口
S 基板
102 吸着層
104 薄膜層
110 原料ガス
112 パージガス
114 反応ガス
図1
図2
図3
図4
図5