(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298166
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】高炉内の原料分布を決定するための方法およびプローブ
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20180312BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C21B7/24 302
C21B5/00 312
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-541523(P2016-541523)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-503075(P2017-503075A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2015050191
(87)【国際公開番号】WO2015104306
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】LU92351
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】508045549
【氏名又は名称】ティエムティ − タッピング メジャーリング テクノロジー エスエイアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタンパー,ジョン・フランソワ
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04776884(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第02205162(GB,A)
【文献】
特開平04−315047(JP,A)
【文献】
米国特許第05552704(US,A)
【文献】
国際公開第99/009219(WO,A1)
【文献】
特開昭62−023913(JP,A)
【文献】
特開2007−155570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00− 9/16
C21B 3/00− 5/06
G01N 27/00−27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉内における、鉄鉱石及びコークスを含む装入物の内部の原料分布を決定するための測定プローブであって、
送信面を有する送信コイル、及び、受信面を有する受信コイルを含んでなる少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサを収容する保護シェルと、
前記送信コイルに、0.5〜5MHzの周波数および1〜10mAの振幅を持つ交流電流を印加する交流電源であって、
前記送信コイルは一次交流磁界を放出し、前記一次交流磁界は前記一次交流磁界内の装入物の導電性原料に渦電流を誘導し、
前記渦電流は二次交流磁界を発生し、前記受信コイルは前記一次交流磁界および前記二次交流磁界によって発生する電流を測定する、交流電源と、
前記測定された電流を評価するための制御兼評価ユニットであって、前記電流は高炉内部の装入物の前記原料分布を示すものである、制御兼評価ユニットと、
を備えた測定プローブ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、前記保護シェル内部の支持体上に配設されている、請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
前記保護シェルは、セラミック材を含む、請求項1又は2に記載の測定プローブ。
【請求項4】
前記受信コイルの磁界は前記送信コイルの磁界と同心である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項5】
前記保護シェルは、10〜25mmの厚さを有する略環状の円筒体または平板である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項6】
前記送信コイルは1〜20cm2の送信面を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項7】
前記受信コイルは5〜50cm2の受信面を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項8】
複数のセンサを備えた、請求項1〜7のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記コイルは、楕円形、円形、または矩形である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の測定プローブ。
【請求項10】
高炉内部での、鉄鉱石及びコークスを含む装入物の原料分布を決定するための方法であって、
測定プローブを前記高炉の装入物内に挿入するステップであって、前記測定プローブは受信コイル及び送信コイルを持つセンサを有し、前記センサは保護シェル内部に収容されている、挿入ステップと、
前記送信コイルによって一次交流磁界が発生するように、前記送信コイルに、0.5〜5MHzの周波数および1〜10mAの振幅を持つ交流電流を印加するステップであって、前記一次交流磁界が前記装入物の導電性原料に渦電流を誘導し、前記渦電流が二次交流磁界を発生させる、印加ステップと、
前記一次交流磁界および前記二次交流磁界によって発生した電流を受信コイルにより測定するステップと、
前記電流に基づいて装入物の原料分布を評価するステップと、
を備えてなる方法。
【請求項11】
前記原料分布の前記評価は、前記高炉の分配シュートを制御するために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定プローブは、前記高炉の前記装入物内に向けて水平方向に移動する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記測定プローブは、前記高炉の内部で前記装入物の表面より下に固定的に配設される、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に高炉(溶鉱炉)内の装入物の原料分布を決定するための装置および方法に関する。本発明は、更に詳しくは、測定装置に直接接触することなく、装入物の導電率に基づいて高炉の装入物の原料分布を決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉内の原料分布を決定するための様々な方法および装置が当該技術分野で知られている。高炉内の原料分布の決定は、様々な装入物、例えばコークスおよび鉄鉱石原料の半径方向の分布の定量分析である。高炉は向流反応炉であるので、通気性はプロセスにとって重要である。それに影響を及ぼすために、均質に混合された装入物ではなく、よく定義された構成の異なる層のコークスおよび鉄鉱石原料が装入される。原料分布の決定のおかげで、高炉内の原料層の形状および厚さを決定することができ、必要ならば高炉の性能を向上させるために、調整し、かつ最適化することができる。
【0003】
高炉内の層の構造を決定するための幾つかの方法が知られている。最も一般的な方法は、各原料層の装入後に装入物表面の形状を測定するレーダプロフィロメータである。測定は装入物表面に限定され、したがって装入物表面の下でかつ装入中に発生する動的効果は記録されない。装入物の通気性を監視する代替的方法は、装入物の表面の上または下いずれかの半径方向の温度および気体分布プロファイルの測定である。この方法は、最終結果である半径方向の通気性分布および中央煙突の大きさに直接つながるが、異なる層の詳細な構造が決定されないので、この測定に基づく装入の最適化は困難である。
【0004】
異なる手法は、日本国特開2007‐155570号公報によって提案されている。高炉内部の原料の分布を測定する難しさに鑑みて、日本国特開2007‐155570号公報は、ホッパーから高炉内への原料の装入中に装入物の相対量を決定することを提案している。測定方法は、交流電流が印加される中空コイルの内側に電磁特性の異なる物質の混合物を配置すること、またはコイルの軸線方向に混合物を通過させることを特徴とする。コイルによって生じる出力電圧を測定し、その出力電圧に基づいて混合物内の物質の混合率を決定する。
【0005】
励磁コイルおよび測定コイルを同一軸線方向に配置し、次いで混合物をコイルの内側に配置するか、あるいは混合物をコイルの軸線方向に通過させ、測定コイルによって発生した出力電圧を測定する。物質の質量とコイルによって発生する出力電圧との間の関係を事前に測定することによって検量線を得、検量線に基づいて混合物内の物質の混合率を算出する。
【0006】
そのような方法および装置は、高炉内への原料の装入中に異なる原料の相対量を決定するには有用であるかもしれないが、装入物が装入された後、高炉の装入物内部で原料が厳密にどのように分散しているかを決定するには有用ではない。実際、原料は異なる密度および/または粒度分布を有するので、装入作業中に偏析することがある。装入物層の形成中に相互作用する物理的現象として、装入物表面上の原料の転動、衝撃力によって生じる下層における原料の浸透、上昇プロセスガスによって生じる原料の撹拌、および以前に装入された原料との混合がある。さらに、高炉内部の装入物は静止せず、下方に移動し、部分的に消費されるので、その表面プロファイルおよび形成される層の形状は時間と共に変化する。
【0007】
高炉内の層の構造を決定するためのより適切な解決策は、欧州特許出願公開第1029085号明細書で提案されている。プローブを水平方向および高炉内の装入物表面の下に繰返し挿入する。プローブの先端に配設された原料検出センサは、コークスまたは鉄鉱石原料いずれかの有無を示す。プローブの高速水平移動と低速垂直装入物下降速度との組み合わせにより、原料分布の像が得られる。
【0008】
原料検出センサは、装入物の測定可能な物理的性質に基づいて、装入物の種類を示す。高炉の技術分野では多数の方法が利用可能である。
【0009】
第1の例は透磁率である。鉱石様原料の透磁率は高い一方、コークスは、空気の透磁率と同様に低い透磁率を有する。原料分布について結論を出すべく高炉内の原料の透磁率を決定する幾つかの方法が開発されている。英国特許第2205162号明細書では、単一コイルに高炉内部の管内を移動させて、原料の透磁率を測定する。コイルのオートインダクタンスをセンサコイルで測定する。この値は、前記コイルの磁力線内の透磁性原料の存在下で増加し、この値が増加すると、鉱石が検出される。独国特許出願公開第2655297号明細書では、永久磁石を磁界センサと整列させて、高炉内に設置する。透磁性原料が永久磁石の磁力線内に存在すると、磁束は増加する。磁界センサが磁束のこの増加を示す場合、鉱石が検出される。
【0010】
独国特許出願公開第2655297号明細書のような原料分布測定における透磁率の問題は、通常、高炉炉壁付近の100℃から高炉中心の900℃以上までの大きい温度範囲が存在することである。この温度時に、原料温度はキュリー点を超えるので、鉄鉱石の透磁率は消失する。鉄鉱石III(Fe
2O
3)の場合、キュリー点は675℃であり、鉄鉱石II‐III(Fe
3O
4)の場合、キュリー点は585℃である。したがって、原料を区別する特性は消失している。キュリー点付近の温度範囲、特にキュリー点より上の温度範囲では、高炉内の原料分布を測定するために透磁率を使用することはできない。
【0011】
装入物の種類を決定するための第2の特性例は鉄鉱石の残留磁気である。独国特許出願公開第2637275号明細書では、鉱石の自己磁性を励磁するために強い磁界を発生させる。次いでこの磁界をスイッチオフし、検知装置は残留磁界を介して鉱石を検出することができる。しかし、キュリー点より上では、鉱石の自己磁性も消失するので、前述と同じ問題が生じる。
【0012】
第3の例は、欧州特許出願公開第0101219号明細書に提示されている鉱石のレーダ波吸収(radar wave absorption)である。鉱石のレーダ波吸収はコークスのそれより高い。レーダ波を放出しかつ受信するためのレーダ波アンテナを高炉内に配設する。レーダ波アンテナ間に位置する原料を、レーダ波の反射および吸収に基づいて識別する。レーダに基づく測定の不利点は、レーダ装置、特に導波管およびアンテナ部品が脆弱であり、装入物プローブの下に設置することが技術的に非常に難しいことである。
【0013】
第4の例は、欧州特許出願公開第1029085号明細書および独国特許出願公開第3105380号明細書に記載されるように、コークスおよび鉄鉱石の導電率に基づく。コークスの導電率は1300℃以上の温度まで持続することが知られているので、導電率は好ましい方法である。
【0014】
現在、欧州特許出願公開第1029085号明細書に記載されるように、プローブを高炉内に水平に装入することによって、原料分布が測定される。プローブの先端または先端付近に2つの電極が、アイソレータによって互いに離れて、かつ電気測定回路によって相互に接続された状態で、配設される。センサの先端が高炉内に挿入されたときに、電気測定回路は電気回路の信号品質を決定する。信号品質は高炉内のセンサの周囲の装入物の導電率に依存する。電極が導電性原料の層を介してつながるときに、電気回路は閉じる。センサの先端が非導電性原料の層を通過するときに、電極はつながらない。導電性原料および非導電性原料の測定間の相違のため、プローブはどの原料が近くに存在するかを決定することができる。
【0015】
しかし、プローブが高炉内に挿入されると、アイソレータ上に粉塵堆積物が必然的に形成される。これらの粉塵堆積物は導電性であり、電極間の短絡を形成し、正確な測定を不可能にする。大量のコークス、高ガス流速、およびおそらく追加的な燃料粒子噴射のため、高炉内には常に粉塵が存在するので、解決策は軟質セラミックスをアイソレータとして使用することである。これらのセラミックアイソレータは特定の摩耗率を有するので、測定が行われるときに、粉塵堆積物は形成されない。実際、高炉内の装入物は高温でありかつ摩耗性であるので、プローブの導入および回収時の装入物に対するアイソレータの摩擦は、測定が行われるたびにアイソレータを摩耗させ、したがって粉塵堆積物は形成されない。特定の回数の測定後に、少なくともアイソレータを交換しなければならない。これは結果的にコストを上げ、かつ定期的な保守が必要になる。
したがって、原料が高炉内に装入された後、高炉の装入物内部の原料分布を測定するためのより効率的な方法または装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】日本国特開第2007‐155570号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1029085号明細書
【特許文献3】英国特許第2205162号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第2655297号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2637275号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0101219号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第3105380号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、任意の温度時の高炉内の装入物における装入原料の原料分布を決定するための方法およびプローブを提供することにある。
【0018】
この目的は、請求項1に記載の方法および請求項11に記載のプローブによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するために、本発明は、プローブを高炉内部の装入物内に挿入することによって直接接触することなく、高炉内
において、鉄鉱石及びコークスを含む装入物における原料分布を決定するための測定プローブを提案する。
【0020】
測定プローブは、以下の構成要素を備えている。即ち、
‐少なくとも1つのセンサであって、
・送信面を有する送信コイル、及び、
・受信面を有する受信コイル、を含むセンサ;
‐センサを収容し、送信コイルおよび受信コイルを熱および摩耗から保護する保護シェル;
‐送信コイルに
、0.5〜5MHzの周波数および約1〜10mAの振幅を持つ交流電流を印加する交流電源;
‐送信コイルは一次交流磁界を放出し、それは装入物の導電性原料内に渦電流を誘導すること。渦電流は二次交流磁界を発生し、受信コイルは、一次交流磁界および二次交流磁界によって生じる電流を測定すること;
‐電流は高炉内の装入物の原料分布を示すものであって、測定された電流を評価するための制御および評価ユニット。
【0021】
測定は導電率に基づいているので、プローブは、高炉の装入物内部の原料分布を、キュリー点より上または下の原料の任意の温度時に、またはキュリー点時に、いわば実時間で決定することができる。原料の透磁率とは対照的に、導電率は、高炉内の温度範囲全体を通して信頼できる適切な特性である。
【0022】
誘導される渦電流の検出のおかげで、センサは、装入物に直接接触することなく、原料分布を決定することができる。センサは保護シェル内部に配置されるので、熱および摩耗から保護される。したがってセンサは過酷な高炉の状況に直接さらされず、したがって長持ちする。寿命に影響する主な要因は、大量の粉塵、化学反応性および腐食性雰囲気、極度の熱、および摩耗または破壊にいたる装入物からの力である。例えば欧州特許出願公開第1029085号明細書に記載されているような先行技術のセンサと比較して、測定プローブの寿命は増大する。
【0023】
本発明に係る測定プローブは粉塵に対し、特にセンサの前の保護シェル上の粉塵堆積物に対して感応しない。粉塵粒子は、非常に微弱でほとんど検出されない渦電流を生じるだけであり、それは測定結果を混乱させない。欧州特許出願公開第1029085号を実施するために必要な粉塵堆積物を除去するための摩耗の解決策は、もはや必要でない。
【0024】
さらに、日本国特開2007‐155570号公報とは対照的に、原料は中空コイルの内側を通過しない。本発明の好適な実施形態によれば、センサは保護シェルの内部に直接当着させることができる。代替的に、センサは、保護シェルの内側に当着された支持体または支持層に当着させることができる。この場合、センサは保護シェルと支持層との間に配設される。支持体は耐熱性でなければならず、かつ例えば石鹸石または雲母のように非導電性でなければならない。
【0025】
本発明の好適な実施形態によれば、前記保護シェルは、導電性ではないセラミック材を含む。センサはそれによって高炉内部の熱および摩耗に対して充分によく保護される。10〜25mmの範囲の厚さを持つ保護シェルにより、優れた測定結果が得られる。シェルは環状円筒体であることが好ましい。
【0026】
送信コイルおよび受信コイルは、送信コイルの磁束が受信コイルの磁束と同心になるように配設されることが好ましい。
【0027】
複数のセンサをプローブの先端に配設することが可能である。好適な実施形態では、コイルは、それらの磁界が周縁部だけで干渉するように設計される。その場合、同一保護シェル内部のプローブの先端に幾つかの独立センサを配設することができる。これは原料分布決定の分解能をかなり向上させる。さらに、複数のセンサのそのような配設は、先行技術で要求されるようなプローブの高速の水平速度の必要性を低減させる。
【0028】
欧州特許出願公開第1029085号に使用されるような接触電極は、高炉装入物の力を支持するのに充分な強度でなければならない。したがって、プローブ上の電極は、高温装入物に暴露される大型鋼製リングである。プローブ先端には1つの測定センサしか配置することができない。1つの測定信号しか得られないので、これは測定分解能の限界およびプローブの高い水平速度の必要性につながる。
【0029】
送信コイルは1〜20cm
2の範囲の送信面を有することが有利である。送信面の大きさは、装入物内の渦電流を励起する磁界を形成することによって、測定スポットを決定する。送信面が大きければ大きいほど、測定スポットは大きくなる。
【0030】
受信コイルは5〜50cm
2の範囲の受信面を有することが好ましい。受信信号は一次磁界によってあまり影響されず、渦電流からの二次磁界によってより大きく影響されるので、サイズが大きいほど信号強度が増大する。
【0031】
0.5〜5MHzの周波数および1〜10mAの大きさを持つ交流電流が送信コイルに印加されることが有利である。300℃時に2〜6Ω・cm、1300℃時に0.5〜2Ω・cmの抵抗率を有することが知られているコークスに充分な渦電流が発生するように、充分高い周波数が選択される。この周波数範囲で、送信コイルの信号を制御ユニットに送信するために、かなり長いケーブルを使用することができる。5MHzより高い周波数の場合、送信コイルによって発生する信号は、かなり長いケーブルを介して電子制御ユニットに確実に送信されないことがあり得る。
【0032】
妥当な信号対雑音比に対し、充分に高い大きさ(magnitude)が選択される。10mAを上回る大きさは、センサが誤作動した場合、理論的に電気火花を発生させることがあるので、安全リスクとみることができる。
【0033】
送信コイルおよび受信コイルは円形または矩形であることが好ましい。しかし、当業者はその必要性に応じて、送信コイルおよび受信コイルを形成することができる。
【0034】
プローブは、高炉内の原料分布を決定するためにプローブが高炉内に挿入されるように、高炉シェルに対して水平方向に移動可能に配設することができる。移動可能な構成のため、欧州特許出願公開第1029085号明細書に記載されるように、高炉に配設されるプローブの位置を変えることによって、高炉内の様々な水平位置の原料分布を決定することができる。反復移動中にデータを収集することによって装入物の組成(すなわち半径方向の原料分布)を測定することができるように、水平移動速度は装入物の下降速度より高いことが好ましい。
【0035】
さらなる実施形態では、プローブは高炉内部で高炉シェルに、装入物の頂面より下に、固定的に配置される。プローブは高炉炉壁から短い距離に位置することが好ましく、プローブのセットアップは、独国特許出願公開第3105380号明細書に記載された「サイトブロック(citoblock)」システムと同様とすることができる。そのようなプローブは次いで、高炉内部の固定半径位置で原料の適時の展開を測定することができる。目標は、1つの半径方向位置における量および原料の種類(すなわち原料分布)を時間の関数として得ることである。
【0036】
別の態様によれば、本発明はまた、高炉の装入物内部の原料分布を決定する方法にも関する。この方法は、以下のステップを含む。
‐測定プローブを高炉の装入物内に挿入するステップ。測定プローブは受信コイルと送信コイルとを持つセンサを有し、前記センサは保護シェル内部に収容される。
‐送信コイルによって一次交流磁界が生じるように、送信コイルに
、0.5〜5MHzの周波数および約1〜10mAの振幅を持つ交流電流を印加するステップ。一次交流磁界は装入物の
導電性原料内に渦電流を誘導する。渦電流は二次交流磁界を発生させる。
‐受信コイルにより一次交流磁界および二次交流磁界によって発生した電流を測定するステップ。
‐受信コイルにおける電流に基づいて、装入物の原料分布を評価するステップ。
【0037】
電流の評価は高炉の分配シュート(distributor chute)を制御するために使用されることが好ましい。結果的に、原料の装入は、本発明に係る方法または装置によって実行される測定に基づいて適応させることができる。
【0038】
前記プローブおよび前記方法はしたがって、半径方向の原料分布、ならびに/または装入物層の形状、大きさ、および組成を決定することを可能にする。
【0039】
原料の種類を示す信号(すなわち受信コイルにより一次交流磁界および二次交流磁界によって発生する電流)は、モデルを用いて処理することが好ましい。半径全体(プローブの水平方向の移動によるx軸方向、または低コスト固定プローブの場合には1つの固定されたx点)のデータだけでなく、経時的な(垂直方向下方に移動する装入物の下降によるy軸方向の)データも収集することによって、(柱状装入物内部の原料配置という意味で)装入物の分布が測定される。高炉プロセスを理解し、最適化し、かつ必要ならば、装入シュートの原料分布プログラムを調整するために、以下でさらに詳述するようなモデル結果が使用される。
本発明のさらなる詳細および利点は、付の図面に関連する非限定実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る測定プローブの概略図である。
【
図2】本発明の好適な実施形態に係る複数のセンサ(切断側面図)の配設の概略図である。
【
図3】本発明の好適な実施形態に係る測定の磁束の概略図である。
【
図4】導電性物体がプローブに接近したときの本発明の好適な実施形態に係る測定の変形磁束の概略図である。
【
図5】幾つかの典型的な高炉原料の存在下における室温時のセンサの受信信号の大きさである。
【
図6】各々が原料分布を決定するためのセンサを備えた2つのプローブ(1つの可動プローブおよび1つの固定プローブ)を持つ高炉の概略図である。
【
図7】高炉における決定された原料分布の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の特に好適な実施形態に係る測定プローブ2の概略的構成を
図1に示す。測定プローブ2は、センサ、すなわち送信コイル4および受信コイル6と、装入物14とが直接接触することなく、導電率を介して高炉内の装入物の原料の種類を決定することができる。水平および/または垂直次元の多数の測定により、高炉の装入物における原料分布を決定することが可能になる。
【0042】
保護シェル8は、過酷な状況、特に温度変化および装入物からの力および高炉内の摩擦に耐えるセラミック材から作られる。保護シェル8は10〜25mmの範囲の厚さを有する。セラミック材は高炉装入物より硬いので、長い動作時間中に摩耗に耐えることができる。測定は高炉の動作中に実行されるので、セラミック保護シェル8は、プローブが装入物内に挿入されあるいはその中を移動されるときに、送信コイル4および受信コイル6の損傷を防止する。
【0043】
測定プローブ2は送信コイル4および受信コイル6を含む。動作中に、送信コイル4は一次交流磁界を発生し、受信コイル6は交流磁界を受信する。送信コイル4および受信コイル6は保護シェル8上に直接配設される。プローブは、可動プローブの場合には約5mの長さ、固定プローブの場合には約1mの長さを有する。センサを高炉内に挿入することができるように、センサはプローブの先端付近に配設される。送信コイル4および受信コイル6は、導電性ワイヤ(図示せず)によって高炉の外側に位置する評価および制御ユニット10に電気的に接続される。
【0044】
図1の測定プローブ2を上から見ると、送信コイル4および受信コイル6は円形形状を有し、保護シェル8によって装入物14から分離される。送信コイル4および受信コイル6は、それらの磁界が同心になるように配設されている。送信コイル4の表面は1〜20cm
2の間であり、受信コイル6の表面は5〜50cm
2の間である。したがって2つのコイルの表面の比率(送信コイル:受信コイル)は1:1〜1:50の間である。
【0045】
測定範囲すなわち測定される原料のボリュームは、交流磁界を発生しかつ受信するためのパラメータの一部を変更することによって、適応させることができる。送信コイル4に印加される信号の周波数を増減させることができ、かつ/または送信コイル4および/もしくは受信コイル6の表面を増減させることができる。交流磁界の測定ボリュームは、それに応じて低減、拡大、または調整することができる。本発明のこの特定の好適な実施形態では、測定されるボリュームは大まかに楕円半球に相応する。
【0046】
受信コイル6の表面は、装入物14と測定センサとの間に配設された保護シェルを介して装入物の原料分布を決定することができるように選択される。装入物14とコイル4、6との間の最小距離は、保護シェルの厚さによって決定される。感度が充分でない場合、受信コイル6の表面を拡大するか、あるいはシェルの厚さを低減しなければならない。
【0047】
高炉における原料分布の決定を向上させるために、プローブの先端付近に複数のセンサを並列して配設することができる。渦電流は局所的な効果にすぎないので、システムの設計が適切であれば、それらは他のコイル104a、104b、104c、または104dによって誘導される渦電流と干渉しない。局所的分解能が高まるように、原料の種類は幾つかの位置で同時に検出される。その結果、測定信号の数および測定分解能を希望通りに増大し、設計することができる。
図2で、保護シェル8は環状円筒体であり、その中に4つのセンサが配設される。各個別センサの測定ボリュームは、円筒体外周の約4分の1を網羅する。この特定の実施形態では、環状円筒体が水平プローブの先端に設置される場合、測定スポットは頂部に1つ、中心に2つ、底部に1つ存在する。原料の種類は3つの異なる垂直方向位置で検出され、測定センサが1つだけのプローブと比較して、3倍高い垂直方向の測定分解能に寄与する。
【0048】
図2の送信コイル104a、104b、104c、および104d、ならびに
図1の送信コイル4は、
図1に示す交流電源12に作動的に接続される。動作中に、送信コイルに印加された交流電流は、
図3および
図4に示すように一次交流磁界16を放出する。正確な測定値および良好な結果を得るために、周波数が約2MHz、大きさが約5mAの交流電流が印加される。
【0049】
図3では、導電性原料は一次交流磁界16の範囲内に持ち込まれておらず、導電性原料に渦電流は誘導されず、二次交流磁界は発生しない。導電性原料の抵抗を測定することができるためには、その前に、導電性物体が一次交流磁界16の範囲内に存在しなければならない。一次交流磁界16はとりわけ送信コイル4の大きさおよび形状によって制限される。
【0050】
図4では、装入物14が一次交流磁界16内に持ち込まれている。
図5の一次交流磁界16は装入物14内に渦電流18を誘導する。誘導された渦電流18は二次交流磁界20を発生させる。制御および評価ユニット10は、受信コイル6によって測定される一次交流磁界16および二次交流磁界20に基づいて測定値を評価する。受信コイル6における電流量は、装入物14の電気抵抗を示す。
【0051】
図5に受信コイルの電流出力を提示する。装入物14が鉱石である場合、または装入物が存在しない場合、受信コイル6における測定電流は5mA以上である。コークスが一次交流磁界内に存在する場合、受信コイルにおける電流は5mAより低く、典型的には原料が存在しない場合の値より約10%低く、したがって4.5mAもの低さになる。
【0052】
原料の種類を検出するために、受信コイルの電流は閾値24と比較される。本発明のこの特定の好適な実施形態では、閾値24は4.9mAに設定される。当業者は必要に応じて閾値24を調整することが可能である。これは通常、較正中に行われる。測定プローブを較正するために、一次交流磁界16内に導電性物体は存在しないが、コークス粉塵が存在するときに、AC電流が交流送信コイル4に印加される。これは較正値22につながる。測定ノイズを考慮に入れ、かつ粉塵の影響を防止するために、閾値24は少し低く定義される。閾値24未満の受信コイルの電流の各変化は、一次交流磁界16内の導電性装入物14の存在を示す。
【0053】
受信コイル6の電流は中でも特に、装入物14の導電率の関数である。導電率は高炉内の温度範囲全体で信頼できる特性である。したがって、それは原料分布を決定するための特性として適している。システムは導電性に対して良好な応答を有するように設計される。程度は劣るが、二次交流磁界20はキュリー点未満の温度で、装入物14の透磁率に依存する。透磁率の影響は較正値22から約+2%以下である。コークスが存在する場合の測定信号は較正値22から0〜−10%の間であるので、この影響は重要でない。温度または一定磁束の変化は測定値に影響しない。小さいコークスおよび粉塵粒子は測定値に対し目立った影響を持たない。
【0054】
測定を実行するために、
図6に示されたプローブは高炉内に挿入される。この高炉では、その中の原料分布を決定するために、可動プローブのみならず固定プローブも使用される。以下では、可動プローブの原理だけを記載する。水平方向に移動可能な測定プローブの先端付近に、少なくとも1つのセンサ2が配設される。プローブは、約10mの直径を有する高炉内に挿入される。測定は、装入物の表面より約4m下で、典型的には原料が軟化し始める前の領域で行われる。高炉シェルから高炉中心に移動して高炉シェルに戻るまで約50秒かかる。高速水平移動が順次繰り返される。同時に、装入物はゆっくりと、しかし約12cm/分の速度で絶えず下降する。
【0055】
測定信号は至るところで連続的に記録され、閾値24と比較される。このようにして、
図7に示すような原料分布の画像が得られる。センサ2から受信したデータは、x軸が高炉の半径を表し、y軸が高炉の高さを表すところの、x−yグラフに配置される。
図7における画素は、高炉内の測定された原料分布に対応する。各画素は装入物の約10cm×10cmの範囲を表す。高炉中心から半径1.3mまでは、コークス26だけが存在することを明瞭に認識することができる。プロセスガスは基本的に中央煙突に沿ってコークス26内を上方に通過することができるが、鉱石様装入物28の層を通過することは難しい。これは、上方に逃げるプロセスガスのための中央煙突である。更に(各)層は、プロセスガスが鉱石様原料層の底部と接触することができるように配設される。
【0056】
更に、生の測定信号からより多くの情報を抽出する信号処理法を適用することが可能である。例えば、コークスと鉱石様原料との単なる弁別の代わりに、画素(ピクセル)へのラスタ化処理時に原料混合物値を得ることができる。さらに、受信電流量信号の変動からコークス粒径に関する情報を抽出することができる。
【0057】
本発明のこの特定の好適な実施形態で原料分布が測定される温度は、高炉炉壁付近の約100℃から高炉中心の900℃またはそれ以上までの範囲である。特に高炉の、内径(内半径)がせいぜい1mまでの中央煙突では、温度は極端なピークに達する。他方、この煙突の大きさは、測定の結果得られる主要な情報の1つである。高炉で使用される典型的な鉄鉱石の場合、キュリー点はこれらの温度より充分に低い。鉱石様原料をコークスから弁別する磁気特性は消失する。しかし、測定は導電率に基づいており、コークスの導電率は現温度で損なわれないので、原料分布はキュリー点、それより上、またはそれより下の温度であって原料の融点より下の温度で決定される。
【0058】
最後に、高炉の装入シュートの原料分布プログラムは、所望の原料分布に従って調整される。望ましくない原料分布が決定された場合、装入シュートの原料分布プログラムは修正される。目標は、装入を最適化することによって、高炉の効率、生産性、および寿命を高めることである。
【符号の説明】
【0059】
2 プローブ(探針、探査器)
4 送信コイル
6 受信コイル
8 保護シェル
10 評価および制御ユニット
12 交流電源
14 導電性装入物
16 一次交流磁界
18 渦電流
20 二次交流磁界
22 物体が存在しない状態の信号レベル
24 コークス検出のための信号レベル閾値
26 コークス原料
28 鉱石様原料(ore-like material)
108 保護シェル
104a、104b、104c、104d 送信コイル
106a、106b、106c、106d 受信コイル