特許第6298177号(P6298177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6298177-有機電子素子及びその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298177
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】有機電子素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20180312BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180312BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   B32B7/02 103
   B32B9/00 A
   B32B27/16 101
   B32B27/30 A
   B32B27/18 Z
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-563762(P2016-563762)
(86)(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公表番号】特表2017-504174(P2017-504174A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】KR2014004973
(87)【国際公開番号】WO2015108251
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0005500
(32)【優先日】2014年1月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516206037
【氏名又は名称】ヒューネット プラス
【氏名又は名称原語表記】HUNET PLUS
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ヒョク ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミ ソン
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−190612(JP,A)
【文献】 特開2010−027500(JP,A)
【文献】 特開2003−323132(JP,A)
【文献】 特開2001−264225(JP,A)
【文献】 特開2006−326899(JP,A)
【文献】 特開2005−324406(JP,A)
【文献】 特開2013−237734(JP,A)
【文献】 特開2008−266408(JP,A)
【文献】 特開2007−184279(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/036270(WO,A1)
【文献】 特開2012−096409(JP,A)
【文献】 特開2007−153978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機光電素子部が配置された基板;前記有機光電素子部を取り囲み、無機物又は有機物を含有する第1封止膜;前記第1封止膜を取り囲み、エチレン不飽和結合を含有する光硬化性物質を含む第2封止膜;及び前記第2封止膜を取り囲み、光硬化性SOG(spin on glass)物質の光硬化物を含有する第3封止膜を含み、
前記光硬化性組成物は、エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30炭化水素化合物を含み、
前記エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30炭化水素化合物は、30乃至300℃の範囲で蒸気圧が10−4torr以上であり、重量平均分子量が100乃至600である
ことを特徴とする有機電子素子。
【請求項2】
前記無機物は、金属、金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属酸窒化物、金属ホウ化物、金属酸ホウ化物、金属シリサイド、シリコン酸化物及びシリコン窒化物からなる群から選択される1種以上である
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項3】
前記有機物は、カルド系化合物、メラミン、アンメリン、アンメリド及びメラムからなる群から選択される1種以上である
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項4】
前記エチレン不飽和結合を1つ以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30光硬化性物質は、アクリル系化合物である
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項5】
前記アクリル系化合物が、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される2種以上である
請求項4に記載の有機電子素子。
【請求項6】
前記炭化水素化合物は、下記の化学式1のいずれか一つの構造で表現される
請求項1に記載の有機電子素子。
【化1】
[上記の式で、Arは置換もしくは無置換されたC6乃至C20アリール化合物又は置換もしくは無置換されたC3乃至C20ヘテロアリール化合物で、R、R’及びR”は互いに同一であるか、又は相異したもので、それぞれ独立して置換もしくは無置換されたC3乃至C20アルキル、置換もしくは無置換されたC3乃至C20ヘテロアルキルで、各R、R’及びR”の鎖が少なくとも一つ以上のエチレン不飽和結合を具備する]
【請求項7】
前記光硬化性物質は、分子内にマレイミド又はオキサゾリドン構造と光硬化性(メタ)アクリレート官能基を一緒に含む
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項8】
前記第3封止膜は、ナノ・ゲッターを含む
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項9】
前記ナノ・ゲッターは、100nm以下のサイズを有する金属酸化物粒子である
請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記光硬化性SOG物質100重量部に対して前記ナノ・ゲッターが1乃至30重量部を含む
請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記第1封止膜の厚さは0.1乃至5μmで、前記第2封止膜の厚さは0.1乃至10μmであり、前記第3封止膜の厚さは1乃至50μmである
請求項1に記載の有機電子素子。
【請求項12】
有機光電素子部が配置された基板を提供する段階;前記有機光電素子部を取り囲むように無機物又は有機物を蒸着して、第1封止膜を形成する段階;前記第1封止膜を取り囲むように光硬化性組成物を塗布及び硬化して、第2封止膜を形成する段階;及び前記第2封止膜を取り囲むようにSOG(spin on glass)組成物を塗布及び硬化して、第3封止膜を形成する段階を含み、
前記光硬化性組成物は、エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30炭化水素化合物;光開始剤;及び熱安定剤、UV安定剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含み、
前記エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30炭化水素化合物は、30乃至300℃の範囲で蒸気圧が10−4torr以上であり、重量平均分子量が100乃至600である
ことを特徴とする有機電子素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1封止膜の形成は、10−2乃至10−8torrの真空下で蒸着工程によって遂行される
請求項12に記載の有機電子素子の製造方法。
【請求項14】
前記SOG組成物は、光硬化性SOG物質及び光活性物質を含む
請求項12に記載の有機電子素子の製造方法。
【請求項15】
前記光硬化性SOG物質は、重量平均分子量2,000乃至100,000である
請求項14に記載の有機電子素子の製造方法。
【請求項16】
前記SOG組成物は100nm以下のサイズを有する金属酸化物粒子を含む
請求項12に記載の有機電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子に関するものであり、より詳細には外部からの水分及び酸素が効果的に遮断されて寿命が延長される有機電子素子及びその製造方法に関するものである。
【0002】
一般的に有機電子素子は、陽極と陰極の間に提供される有機層に電荷を注入すると、発光又は電気の流れなどの現象が起きることを特徴とする素子で、選択した有機物に応じて多様な機能を果たす素子を製作することができる。
【0003】
代表的な例として、有機電界発光素子(OLED)は薄く軽く色感に優れ、次世代フラットパネルディスプレイとして注目されており、既存のガラス基板、シリコンを含む無機物基板、金属基板及びプラスチック基板又は金属箔などのフレキシブル基板上に製作が可能である。このような有機電子素子は水分及び酸素に非常に脆弱であるため、大気中に露出したとき、又は外部からの水分がパネル内部に流入したときに発光効率及び寿命が著しく減少する短所を有している。
【0004】
上記のような問題点を解決するために、ガラスキャップやメタルキャップを利用したり、ラミネート加工方法を利用した袋フィルムを使用したり、無機物を蒸着して外部から流入する水分及び酸素を遮断するための試みが行われている。また、硬化性フィルム又は硬化性材料を有機層又は金属層表面に塗布した後、硬化工程を進行して接着性及び密封性を具現する方法がある。
【0005】
しかし、ガラスキャップは機械的破損などによる大面積化の問題があり、メタルキャップの場合は基板との熱膨張係数の差による工程上の問題があり、ラミネート加工方法を利用した接着フィルムの場合はフィルム接着面の界面を介した水分及び酸素の流入などの問題があり、真空下で有機物を蒸着して真空下で無機物をスパッタする既存工程は、スパッタリング上部の界面からの水及び酸素の流入を防ぐために、真空下でスパッタ方式によって無機物を多層に蒸着しなければならないため生産性が低く、真空下で有機物と無機物を多層に形成しなければならないため量産化の問題がある。
【0006】
また、液状封止方法の場合は、化学結合の破壊と硬化の過程で生成される副産物又は硬化開始剤中の未反応残留物などが密封構造の内部に残留し、有機電子素子の駆動を妨げたり、寿命を縮めたりするなどの短所がある。この例として、特許文献1には、発光素子部上に外部の水分を遮断するための1層以上の遮断膜を有する有機発光素子について開示されており、ここでの遮断膜はドライフィルムフォトレジストをラミネートしたり、透明感光剤を塗布したりして硬化させることにより形成するものとして記載されている。
【0007】
しかし、ドライフィルムフォトレジストや液状の感光材から形成された遮断膜は、外部から流入する酸素又は水分などの遮断の機能は果たすが、独自の化学組成物から必然的に発生する硬化過程での副産物や硬化開始剤中の未反応残留物などが存在し、このような残留物は素子外部に除去されず、有機物層又は金属層内部に流入し、素子の駆動を妨げたり寿命を縮めたりするなどの問題を起こす。
【0008】
また、多くの装置は、大気中の酸素及び水分又はデバイス製作時に使用される化学的気体又は液体の浸透によってデバイスの劣化を伴う。このような劣化を防止するために装置のカプセル化を適用する。様々なタイプのカプセル化された装置が公知となっている。特許文献2は、カプセル化された液晶ディスプレイ、発光ダイオード、発光ポリマー、電気発光装置及び燐光装置を記述しており、特許文献3は、集積回路、電荷結合装置、発光ダイオード、発光ポリマー、有機発光装置、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、電気光の光変色装置、太陽電池を含むカプセル化されたマイクロ電子装置を記述している。特に、特許文献4は、カプセル化された装置及びその製造方法に関する特許で、高真空下で基板上に接し、少なくとも一つのバリア層と少なくとも一つの重合体カップリング層を含む方法で製造されるカプセル化方法を説明している。しかし、このようなカプセル化方法は、酸素及び水分を遮断するためにバリア層での金属酸化物層とポリマーカップルリング層の有機層を5〜7個の多層で適用しなければならない工程が必要であるため、製造工程が複雑であり、大面積基板及び柔軟性基板への適用が難しいだけでなく、特に多層の金属酸化物層を適用するためにガスを利用したスパッタリング工程とエッチング工程が要求されるため、工程上でポリマーカップルリング層が損傷してデバイスの遮断膜特性を低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2002−0090851号
【特許文献2】米国特許第6,573,652号
【特許文献3】米国特許第6,548,912号
【特許文献4】WO2007/025140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、有機電子素子の寿命を向上させ、外部から流入する酸素と水分を効果的に遮断し、従来の封止膜製造工程で使用される化学物質の透過によって誘発される分解から安全に保護することができ、耐エッチング性に優れた封止膜が適用された新しい有機電子素子及びその製造方法を提供する。
【0011】
本発明の一側面によれば、有機光電素子部が配置された基板;前記有機光電素子部を取り囲み、無機物または有機物を含有する第1封止膜;前記第1封止膜を取り囲み、エチレン不飽和結合を含有する光硬化性物質を含む第2封止膜;及び前記第2封止膜を取り囲み、光硬化性SOG(spin on glass)物質の光硬化物を含有する第3封止膜を含む有機電子素子が提供される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、有機光電素子部が配置された基板を提供する段階;前記有機光電素子部を取り囲むように無機物または有機物を塗布及び乾燥して、第1封止膜を形成する段階;前記第1封止膜を取り囲むように光硬化性組成物を塗布及び硬化して、第2封止膜を形成する段階;及び前記第2封止膜を取り囲むようにSOG(spin on glass)組成物を塗布及び硬化し、第3封止膜を形成する段階を含む有機電子素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による複数の封止膜が適用された有機電子素子は、外部から流入する酸素、水分などの影響を受けず、素子の駆動及び寿命の低下を効果的に防止することができる。特に、本発明の製造方法による封止膜工程は、大面積工程適用が可能で、工程の単純化による経済性及び親環境的な効果を期待することができる。また、本発明の封止膜製造工程は、既存のすべての基板だけでなくフレキシブル基板を利用したロール・トゥ・ロール及び印刷工程(インク組成物、スリットコーティングなど)に適用が可能で、OLEDディスプレイ、バックライト(OLED、TFT−LCD)、照明用平板光源、フレキシブル平板用OLEDディスプレイ、フレキシブル平板用OLED照明、有機太陽電池(OPV)及び色素増感型太陽電池(DSSC)、薄膜太陽電池、OTFT(Organic Thin Film Transistor)、プリンテッドエレクトロニクス材料(Printed Electronics Materials)など多様な有機電子素子への応用が可能な長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による有機電子素子の構造を概略的に示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。次に紹介する実施例は、当業者に開示された思想を十分に伝達するために例として提供するものである。したがって、本発明は以下で説明した実施例に限定されず、別の形態に具体化することもできる。また、図面において、構成要素の幅、長さ、厚さなどは、便宜上、誇張して表現されていることもある。全体的に図面説明時に観察者の視点で説明し、一構成要素が異なる構成要素「上(うえ)に」又は「上(じょう)に」あるという時、これは他の構成要素の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にまた別の構成要素がある場合も含む。
【0016】
本発明の一側面によれば、複数の封止膜層を具備した有機電子素子が提供される。
図1は、本発明の一実施形態による有機電子素子の構造を概略的に示す断面図である。図1を参照すると、有機電子素子(100)は、有機光電素子部(120)が配置された基板(110)、第1封止膜(130)、第2封止膜(140)及び第3封止膜(150)を含む。
【0017】
本発明の有機電子素子(100)で使用される基板(110)は、ガラス基板、シリコンを含む無機物基板、及び金属基板だけでなく、プラスチック基板又は金属箔などを含むフレキシブル基板に適用が可能である。前記フレキシブル基板として、好ましくは、ポリノルボルネン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(polylatic acid)などを挙げることができる。
【0018】
また、基板(110)上に配置された有機光電素子部(100)は、透明電極、有機層及び金属層などを含むことができ、光エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する役割を果たす。有機光電素子部(100)は、光信号の変化を電気信号に変換するフォトダイオードや太陽電池などの受光素子であるか、又は電気信号の変化を光信号に出力する有機電界発光素子のような発光素子であることができる。
【0019】
また、本発明の有機電子素子(100)は、例えば、OLEDディスプレイ、バックライト(OLED、TFT−LCD)、照明用フラット光源、フレキシブルフラット用OLEDディスプレイ、フレキシブルフラット用OLED照明、有機太陽電池(OPV)及び色素増感型太陽電池(DSSC)、薄膜太陽電池、OTFT(Organic Thin Film Transistor)、プリンテッドエレクトロニクス材料(Printed Electronics Materials)などであることができる。
【0020】
第1封止膜(130)は、有機光電素子部(120)を取り囲み、無機物又は有機物を含有する。第1封止膜(130)は、有機光電素子部(120)を取り囲んで保護することで、有機光電素子部(120)が外部環境による水分や酸素から汚染されることを防ぐ。
【0021】
湿式法によって第1封止膜(130)を導入する場合は、使用した有機溶剤や溶液によって有機光電素子薄膜の損傷や素子に欠陥を形成し、有機光電素子の寿命を極度に低下させることがある。したがって、第1封止膜(130)の形成は乾式法によって行うことができる。第1封止膜(130)の形成は、例えば、10−2乃至10−8torrの真空下で蒸着工程によって行うことができる。前記蒸着工程は、スパッタリング、原子層堆積(ALD)、熱蒸着(Thermal evaporation)などを含む。
【0022】
前記無機物は、金属、金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物、金属酸窒化物、金属ホウ化物、金属酸ホウ化物、金属シリサイド、シリコン酸化物、シリコン窒化物又はこれらの組み合わせから選択することができ、好ましくはスパッタリング、原子層堆積(ALD)工程による均一な薄膜形成が容易で、酸素や水分遮断特性に優れたAlOx、SiNx、HfOxの中から選択するのがよい。
【0023】
前記有機物はメラミン系化合物であることができ、具体的にカルド系化合物、メラミン、アンルリン、アンメリド及びメラムからなる群から選択される1種以上であることができる。好ましくは、前記有機物の中では熱蒸着工程による均一な薄膜形成性に優れ、ガス遮断及び水分遮断特性に優れている面でメラミンが良い。
【0024】
無機物の場合はガスや水分の遮断特性に優れているが、工程が複雑で均一な薄膜を形成するのが難しい一方で、有機物の場合は工程が単純で均一な薄膜形成が非常に容易という長所がある。特に、メラミンの場合は酸素及び水分遮断特性に優れた長所を有している。
【0025】
第1封止膜(130)の厚さは0.1乃至5μm、好ましくは0.2乃至1μmが良い。前記厚さ未満では保護能力が低下し、前記厚さを超過すると工程コストが増加して透過度が減少するため、デバイスの特性が低下することがある。
【0026】
第2封止膜(140)は、第1封止膜(130)を取り囲み、エチレン不飽和結合を具備した光硬化性物質の硬化物を含有する。第2封止膜(140)は、第1封止膜(130)を取り囲んで保護することにより、第1封止膜(130)の欠陥(defect)から水分が浸透することを防ぐ。
【0027】
第2封止膜(140)の塗布は、乾式法又は湿式法によって行うことができる。乾式法の場合、例えば高真空下で熱及び/又は気相蒸着工程方式で遂行することができる。湿式法の場合、前記光硬化性物質を含む溶液を常圧、窒素雰囲気下でスピンコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティング、インクジェットプリンティング、グラビアプリンティング、コンマコーティング、又はロール・トゥ・ロール工程などの多様な工程を利用して第1封止膜(130)上に塗布する方式で遂行することができる。塗布後、UVを照射することで光硬化されて、第2封止膜(140)を形成することができる。
【0028】
前記光硬化性物質は、エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは無置換されたC6乃至C30炭化水素化合物であることができる。前記光硬化性物質は、1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0029】
気相蒸着工程方式を進行する面で、好ましくは、前記光硬化性物質はアクリル系化合物であることができる。また、さらに好ましくは、前記アクリル系化合物はモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される2種以上であることができる。この場合、十分な硬化が行われ、薄膜形成が容易である。
【0030】
有用なアクリル系化合物には、例えば、ポリ(メタ)アクリルモノマー、例えば、ジ(メタ)アクリル含有化合物、トリ(メタ)アクリル含有化合物、より高度な官能基(メタ)アクリルを含有する化合物、及びオリゴマー性(メタ)アクリル化合物が含まれる。
【0031】
好ましいジ(メタ)アクリル含有化合物には、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシ化脂肪族ジアクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒドゲジルド改質トリメチルプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及びトリプロピレングリコールジアクリレートが含まれる。
【0032】
好ましいトリ(メタ)アクリル含有化合物には、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリアクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチルプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレートが含まれる。
【0033】
好ましいより高度な官能基(メタ)アクリルを含有する化合物には、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリルレイト、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン改質ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが含まれる。
【0034】
好ましいオリゴマー性(メタ)アクリル化合物には、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;前述したもののポリアクリルアミド類似体、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド;及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
特に、耐エッチング性を高めるために光硬化性物質として使用される前記炭化水素化合物は、下記の化学式1で表現される化合物であることができる。
【0036】
【化1】
【0037】
上記の式で、Arは置換もしくは無置換されたC6乃至C20アリール化合物又は置換もしくは無置換されたC3乃至C20ヘテロアリール化合物で、R、R´及びR”は互いに同一であるか、又は相異したもので、それぞれ独立して置換もしくは無置換されたC3乃至C20アルキル、置換もしくは無置換されたC3乃至C20ヘテロアルキルで、各R、R´及びR”の鎖が少なくとも一つ以上のエチレン不飽和結合を具備する。
【0038】
ここで「アルキル」は直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素ラジカル又はこれらの組み合わせを含み、場合によっては鎖中に二重結合、三重結合又はこれらの組み合わせを一つ以上含むこともできる。すなわち「アルキル」はアルケニルやアルキニルを含む。
【0039】
ここで「ヘテロアルキル」は、それ自体で又は別の用語と組み合わせて、別の意味として明示されない限り、1種以上の炭素原子及びO、N、P、Si及びSからなる群から選択される1種以上の異種原子からなる安定した直鎖又は分枝鎖又は環状炭化水素ラジカル、又はこれらの組み合わせを意味し、窒素、リン及び硫黄原子は任意に酸化されることがあり、窒素異種原子は任意に4級化することがある。
【0040】
用語「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体で、又は別の用語と一緒に別の意味として明示しない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環状バージョンを示す。
【0041】
ここで「アリール」は、別の意味として明示されない限り、一緒に融合又は共有結合された単環又は多環(1個乃至3個の環)であることができる複数の不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」は、(多環の場合、それぞれの別途の環で)N、O及びSから選択される1乃至4個の異種原子を含むアリール基(又は環)を意味し、窒素及び硫黄原子は任意に酸化されて、窒素原子(複数可)は任意に4級化される。ヘテロアリール基は、炭素又は異種原子によって分子の残りに結合されることができる。
【0042】
前記アリールは、それぞれの環に適切には4乃至7個、好ましくは5又は6個の環原子を含む単一又は融合環系を含む。また、一つ以上のアリールが化学結合によって結合されている構造も含む。前記アリールの具体的な例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、フェナントリル、トリフェニルレニル、ピレニル、フェニレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどを含むが、これに限定されない。
【0043】
前記ヘテロアリールは、5乃至6員単環ヘテロアリール、及び一つ以上のベンゼン環と融合された多環式ヘテロアリールを含み、部分的に飽和されることもある。また、一つ以上のヘテロアリールが化学結合によって結合されている構造も含まれる。前記ヘテロアリール基は、環内ヘテロ原子が酸化されるか、又は4級化され、例えば、N−オキシド又は4級塩を形成する2−アリールグループを含む。
【0044】
前記アリール化合物の例として、フェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、フルオレンなどを挙げることができ、これに限定されない。
【0045】
前記ヘテロアリール化合物の例として、ピリジン、ピリミジン、ベンゾオキサゾール、テトラヒドロピラン、フラン、チオフェン、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、ティアゾール、トリアゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、キノール、イソキノール、トリアジン、インドール、インダゾール、イミダティアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾールなどを挙げることができ、これに限定されない。
【0046】
本明細書に記載した「置換もしくは無置換された」という表現で、「置換」は炭化水素内の水素原子一つ以上がそれぞれ、互いに独立的に、同一であるか、又は相異した置換基で代替されることを意味する。有用な置換基は以下を含むが、これに限定しない。
【0047】
このような置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO;−OH;−F、−Cl、−Br、−CN、−NO又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C20アルキル基;−F、−Cl、−Br、−CN、−NO又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C20アルコキシ基;C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C30アリール基;C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C30ヘテロアリール基;C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C20シクロアルキル基;C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、−F、−Cl、−Br、−CN、−NO2又は−OHに置換もしくは無置換されたC−C30ヘテロシクロアルキル基;及び−N(G)(G)で表示される基からなる群から選択された一つ以上であることができる。このとき、前記G及びGは互いに独立的に、それぞれ水素;C−C10アルキル基;又はC−C10アルキル基に置換もしくは無置換されたC−C30アリール基であることができる。
【0048】
例えば、前記光硬化性物質は、分子内にマレイミド又はオキサゾリドン構造と光硬化性(メタ)アクリレート官能基を一緒に含む化合物であることができる。
【0049】
特に、光硬化性物質は、気相蒸着工程を適用する乾式法では重量平均分子量が100乃至600以下であり、300℃以下で蒸気圧が10−4torr以上であることが好ましく、湿式法を適用する場合は薄膜の厚さ、コーティング特性及び薄膜の均一度を維持するために、300乃至2,000の重量平均分子量を有する光硬化性物質を使用することが好ましい。
【0050】
第2封止膜(140)の厚さは、0.1乃至10μmであることができ、好ましくは1乃至5μmの厚さを有するのが良い。薄膜の厚さが0.1μm未満の場合、光硬化反応が急速に進行するが封止膜特性が低下し、厚さが10μmを超過すると、光硬化反応が遅いため封止膜の十分な硬化が起こりにくく封止膜特性が低下することがある。
【0051】
一方、第3封止膜(150)は、第2封止膜(140)を取り囲み、光硬化性SOG(spin on glass)物質の光硬化物を含有する。SOG物質は、電気的な絶縁特性に優れ、透明で機械的強度が非常に優れたフィルム特性を有する。SOG物質は有機シラン化合物であることができ、例えば有機シランの酸化水分解生成物を利用して光硬化が可能な(メタ)アクリレート官能基を導入して、高分子物質を製造することができる。SOG高分子物質にUV照射によって光反応を起こすことができる光活性物質を混合してコーティング溶液を製造した後、基板上にスピンコーティングで塗布し、UV照射によって硬化させてSOG層を形成させることができる。
【0052】
前記SOG物質は、例えば、シロキサン(siloxane)、水素シルセスキオキサン(hydrogen silsequioxane(HSQ))、メチルシルセスキオキサン(methylsilsequioxane(MSQ))、パーヒドロポリシラザン(perhydropolysilazane)、ポリシラザン(polysilazane)、ジビニルシロキサン・ビス・ベンゾシクロブテン(divinyl siloxane bis−benzocyclobutane;DVS−BCB)などであることができる。
【0053】
第3封止膜(150)は、常圧、窒素雰囲気下でインクジェットプリンティング、スリットコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなどで形成が可能であり、提示した方法に制限されない。第3封止膜(150)を製造するために使用される光硬化性SOG物質は、重量平均分子量2,000乃至100,000の範囲の物質を使用することが可能で、厚さ調節と薄膜の特性を均一に維持するためには、重量平均分子量5,000乃至50,000の範囲の物質を使用することが好ましい。
【0054】
第3封止膜(150)は、ナノ・ゲッターをさらに含むことができる。主に金属酸化物からなるナノ・ゲッターは、ナノメートルサイズの多孔性を有する物質で、吸湿性が非常に優れているため、SOG物質と混合して使用することにより、外部からの水分を効果的に遮断することができるため、封止膜として優れた効果を示すことができる。
【0055】
前記ナノ・ゲッターは、100nm以下のサイズを有する金属酸化物粒子であることができる。前記金属酸化物粒子は、CaO、MgO、SiO、BaO、TiO、ZrO、CrOなどであることができる。好ましくは、前記光硬化性SOG物質100重量部に対して前記ナノ・ゲッターを1乃至30重量部含むことができる。前記ナノ・ゲッターを前記範囲未満で使用する場合は水分や酸素遮断特性が減少し、前記範囲を超えて使用する場合はSOG溶液中での分散特性が減少し、均一な封止膜を形成するのが難しく、膜欠陥が発生して封止膜特性が低下することがある。
【0056】
第3封止膜(150)は、光硬化性SOG単層の形態又はナノ・ゲッターを含む光硬化性SOG単層の形態を有するか、又はSOG層及びナノ・ゲッターを含むSOG層が積層された形態を有することができる。
【0057】
第3封止膜(150)の厚さは、1乃至50μmの範囲で適用するのが好ましい。1μm未満の厚さの場合、光硬化速度は速いが非常に薄く封止膜特性が低下し、50μmを超過する厚さの場合、光硬化速度が遅く、硬化が進行し過ぎた場合は薄膜にクラックが発生して薄膜の欠陥が生じ、封止膜特性が急激に低下することがある。第3封止膜(150)が最も好ましい厚さである10乃至30μmの範囲を有する場合、最も優れた封止膜の特性を示すことができる。
【0058】
第3封止膜(150)が第2封止膜(140)を取り囲んで保護することで、水分と酸素の遮断特性を向上させることができ、特に、SOGとナノ・ゲッターを含む第3封止膜の場合、薄膜の機械的特性に優れているため、外部からのスクラッチによる欠陥による水分及びガス遮断特性の低下を効果的に向上させることができ、何よりも厚膜を生成する工程条件でもクラックの発生なしに厚膜形成が可能であるため、フレキシブルデバイスに適用することができる長所がある。
【0059】
上述したとおり、本発明による有機電子素子はバリア特性に優れた封止膜を採用することで、外部から水分及び酸素を効果的に遮断して、耐エッチング性に優れ、卓越した長寿命性を有する。
【0060】
本発明の別の側面によれば、複数の封止膜層を具備した有機電子素子の製造方法が提供される。前記製造方法は、有機光電素子部が配置された基板を提供する段階;前記有機光電素子部を取り囲むように無機物又は有機物を塗布及び乾燥して、第1封止膜を形成する段階;前記第1封止膜を取り囲むように光硬化性組成物を塗布及び硬化して、第2封止膜を形成する段階;及び前記第2封止膜を取り囲むようにSOG(spin on glass)組成物を塗布及び硬化して、第3封止膜を形成する段階を含む。
【0061】
前記第1封止膜の形成は、10−2乃至10−8torrの真空下で蒸着工程によって遂行することができる。
【0062】
前記第2封止膜を形成するために使用される前記光硬化性組成物は、光重合性モノマーで、エチレン不飽和結合を1個以上具備した置換もしくは不置換されたC6乃至C30炭化水素化合物、光開始剤及び添加剤を含む。
【0063】
前記第2封止膜に使用される前記光硬化性組成物には、光硬化が可能なエチレン不飽和結合1個以上を有する光重合性モノマーを単独又は2種類以上使用することができる。
【0064】
前記光開始剤は、有機過酸化物、アゾ化合物、キニーネ、ニトロ化合物、アシルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、ベンゾフェノンなどが含まれる。購入可能な光開始剤は、チバガイギー(Ciba Geigy)から商標名ダロキュア(Daracur)TM1173、ダロクール(Darocur)TM4265、イルガキュア(Irgacure)TM651、イルガキュアTM184、イルガキュアTM1800、イルガキュアTM369、イルガキュアTM1700、イルガキュアTM907、イルガキュアTM819で、また、アセトコーポレーション(Aceto Corp.)(米国ニューヨーク州レイク・サクセス所在)から商標名UVI−6976及びUVI−6992で購入可能なものが含まれる。フェニル[p−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモナートは、ゲレスト(Gelest)(米国ペンシルバニア州タリータウン所在)から購入可能な光開始剤である。ホスフィンオキシド誘導体には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである、バスフ(BASF)(米国ノースカロライナ州シャーロット所在)から入手可能なルシリン(Lucirin)TM TPOが含まれる。前記光開始剤は、前記炭化水素化合物100重量部を基準として、約0.1乃至10重量部、又は約0.1乃至5重量部の濃度で使用することができる。
【0065】
前記光開始剤として、50nm以下の範囲でUV吸収波長を有するものを使用することが可能である。特に、380nm乃至410nm範囲で吸収波長を有する光開始剤を使用することが好ましい。光開始剤は、光硬化効果を最大化するために1種類以上を使用することができる。
【0066】
また、前記添加剤として熱安定剤、UV安定剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種以上が含むことができ、その他多様な種類の添加剤を使用することができる。
【0067】
前記第3封止膜の形成のために使用される前記SOG組成物は、光硬化性SOG(spin on glass)物質及び光活性物質及び/又はナノ・ゲッターを含むことができる。前記光硬化性SOG物質の重量平均分子量は2,000乃至100,000であることができる。前記ナノ・ゲッターは100nm以下のサイズを有する金属酸化物粒子であることができる。
【0068】
前記光活性物質の例として、450nm以下の範囲でUV吸収波長を有する光開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などであることができる。特に、前記光活性物質として300nm乃至410nm範囲で最大吸収波長を有する光開始剤を使用することが好ましい。
【0069】
以下、本発明を好ましい実施例及び比較例を介して説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の説明を助けるために便宜上紹介するものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例]
有機発光素子が適用された基板上に第1封止膜として、AlOx層を0.5μmの厚さで蒸着した。続いて、第2封止膜として、10−2〜10−4torr、150〜200℃に維持された真空条件下で光硬化性物質を前記第1封止膜上に蒸着した。前記光硬化性物質として、1官能性物質としてドデカンジオールアクリレート(dodecanediol acrylate、DA)5〜20重量%、2官能性物質としてドデカンジオールジメタクリルレート(dodecandiol dimethacrylate、DMA)10〜95重量%、3官能性物質としてトリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate、A−TMPT)又はトリアリルトリメリテート(Triallyl trimellitate、TATM)5〜40重量%を使用した。
【0071】
また、光硬化性物質と一緒に使用する光開始剤としては、バスフ(BASF)(米国ノースカロライナ州シャーロット所在)から入手可能なルシリン(Lucirin)TM TPOを前記光硬化性物質比1〜10重量%使用した。光硬化性物質を含む有機物層を目的に応じて1〜5μmの厚さに蒸着した。光硬化性有機物層を蒸着した後は、UV照射によって光硬化工程を進行して薄膜を形成した。
【0072】
次に第2封止膜を形成した後は、常温/常圧、窒素雰囲気に維持された条件下で、溶液コーティング工程を使用して光硬化性SOG層を前記第2封止膜を取り囲むように形成させた。光硬化性SOG層で使用する物質は、5,000〜50,000の範囲の重量平均分子量を有する物質を使用することが好ましく、また、光硬化性SOG層はナノ粒子サイズを有するMgOをナノ・ゲッター(nanogetter)物質として含むSOG層を使用することが最も好ましい。より詳細な封止膜の構成と特性の結果は、それぞれ表1、表2に示した。参考までに、本実施例で有機発光素子が配置された基板を使用したが、有機発光素子以外に多様な有機光電素子部が適用されたすべての有機電子素子の製造に本製造方法を適用することができる。
【0073】
(薄膜特性評価)
実施例1乃至31、比較例1及び2によって製造された封止膜の薄膜特性として、薄膜均一性、クラック(Crack)発生有無、水分透過度(WVTR)、酸素透過度(OTR)などを測定して表2に結果を示した。
【0074】
(1)薄膜均一性
10cmx10cmのガラス基板にAlOx層を蒸着した後、第2封止膜層と第3封止膜を順に蒸着して封止膜薄膜を形成した。蒸着が完了した各基板について、20ポイントずつ厚さを測定して薄膜の均一性を評価した。薄膜の均一性が90%以上の場合「O」、80%以上の場合「△」、80%以下の場合「X」を表記した。
【0075】
(2)クラック(Crack)発生有無
10cmx10cmのガラス基板にAlOx層を蒸着した後、第2封止膜層と第3封止膜を順に蒸着して硬化させて封止膜を形成した。蒸着が完了した10cmx10cm基板で一定に5ポイントをサンプリングして薄膜の表面を電界放出走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察し、クラック(crack)の発生有/無を確認した。薄膜でクラックの発生がなければ「X」、薄膜でクラックが発生すれば「O」と表記した。
【0076】
(3)酸素透過度
温度23℃、湿度0%RHの条件で、米国モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名「オックストラン」(登録商標)(「OXTRAN」2/20))を使用してJIS K7126(2000年版)に記載されたB法(等圧法)に基づいて、酸素透過度を測定した。1つのサンプルから2枚の試験片を切り取って、それぞれの試験片に対して測定を1回ずつ行い、2つの測定値の平均値をそのサンプルの酸素透過度の値とした。
【0077】
(4)水分透過度
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名、「パーマトラン」(登録商標)(「Permatran」W3/31))を使用してJIS K7129(2000年版)に記載されたB法(赤外線センサー法)に基づいて測定した。1つのサンプルから2枚の試験片を切り取って、それぞれの試験片に対して測定を1回ずつ行い、2つの測定値の平均値をそのサンプルの水分透過度の値とした。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
前記表1と表2に示されているとおり、PETフィルムに形成された各封止膜は実施例1乃至31でみられるように、いかなる層も包含しないPETフィルムからなる比較例1及びPETフィルムと有機高分子層からなる封止膜構造である比較例2に比べて、水分透過度及び酸素透過度の特性がすべて非常に優れていることが分かる。特に、AlOx基板上に単独の光硬化性物質のみを使用した実施例26乃至実施例31に比べて、2種以上の光硬化性物質を使用した実施例1乃至25の水分透過度及び酸素透過度の特性がより優れている。
【0081】
前記各実施例と比較例の結果から明らかなように、本発明の封止膜は3層構造を有することで、酸素及び水分に対する遮断特性が非常に優れていることを確認することができる。

図1